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特許7340734断熱体およびこれを用いた断熱シート、ならびに断熱体の製造方法
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  • 特許-断熱体およびこれを用いた断熱シート、ならびに断熱体の製造方法 図1
  • 特許-断熱体およびこれを用いた断熱シート、ならびに断熱体の製造方法 図2
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  • 特許-断熱体およびこれを用いた断熱シート、ならびに断熱体の製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】断熱体およびこれを用いた断熱シート、ならびに断熱体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/02 20060101AFI20230901BHJP
   C01B 33/16 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
F16L59/02
C01B33/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020509808
(86)(22)【出願日】2019-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2019009556
(87)【国際公開番号】W WO2019188158
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2018067343
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 千尋
(72)【発明者】
【氏名】臼井 良輔
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/029997(WO,A1)
【文献】特開2008-081946(JP,A)
【文献】登録実用新案第3186878(JP,U)
【文献】国際公開第2014/109288(WO,A1)
【文献】特開2015-068465(JP,A)
【文献】特開2003-064566(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003545(WO,A1)
【文献】特開2009-299893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/02
C01B 33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布と、
前記不織布の内部の空間に担持されたキセロゲルと、を備えた断熱体であって、
前記断熱体を構成する前記不織布のすべてにおいて、前記キセロゲルが前記不織布の内部の空間に担持されており、
前記断熱体は、前記断熱体の少なくとも一面に設けられた複数個の突起を有し、
前記断熱体の前記突起が設けられていない部分の厚さをtとしたとき、前記突起の高さを、0.05t以上、0.15t以下とした、
断熱体。
【請求項2】
記不織布は、ポリエチレンテレフタレートからなる、
請求項1に記載の断熱体。
【請求項3】
記突起の高さが、0.015mm以上、0.045mm以下である、
請求項1又は2に記載の断熱体。
【請求項4】
前記突起の上面は、凸面形状を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の断熱体。
【請求項5】
前記断熱体の前記突起が設けられていない部分の厚さをtとしたとき、前記突起間の最短距離を、30t以上、80t以下とした請求項1~4のいずれか1項に記載の断熱体。
【請求項6】
前記突起を前記断熱体の両面に設け、両側の面にある前記突起の位置を平面視にて互いに異ならせた請求項1~5のいずれか1項に記載の断熱体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の断熱体と、
前記断熱体の全体を覆う絶縁フィルムと、を備え、
前記突起の周辺において、前記断熱体と前記絶縁フィルムとの間に空間が設けられた、
断熱シート。
【請求項8】
複数の断熱体と、
前記複数の断熱体の全体を覆う絶縁フィルムと、
前記複数の断熱体の間に配置される絶縁シートと、を備え、
前記複数の断熱体のそれぞれは、不織布と、前記不織布の内部の空間に担持されたキセロゲルと、を有するとともに、前記断熱体の少なくとも一面に設けられた複数個の突起を有し、
前記断熱体を構成する前記不織布のすべてにおいて、前記キセロゲルが前記不織布の内部の空間に担持されており、
前記複数の断熱体は、前記突起を設けた面同士を対向させて重ねられ、
前記複数の断熱体は、前記突起を設けた面の間に前記絶縁シートを挟み、
前記複数の断熱体の前記突起を設けた面とは反対側の面が前記絶縁フィルムで覆われており、
前記突起の周辺において、前記断熱体と前記絶縁シートとの間に空間が設けられた
断熱シート。
【請求項9】
内部に空間を有する不織布を所定のゾル溶液に浸漬し、前記不織布の内部の空間にキセロゲルを含浸させる工程と、
前記キセロゲルを含侵させた前記不織布を乾燥させて断熱体を得る工程と、
前記キセロゲルが完全に乾燥していない状態で前記不織布の少なくとも一方の面の一部を真空吸着することにより複数個の突起を形成する工程と、
前記断熱体の表面を絶縁フィルムで覆う工程と、
を備えた、断熱体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、断熱対策として用いられる断熱体およびこれを用いた断熱シート、ならびに断熱体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年省エネルギー化が大きく叫ばれているが、その実現方法として機器の保温によりエネルギー効率を向上させるものもある。この保温を実現するために、断熱効果に優れた断熱シートが求められている。そのため、不織布にシリカキセロゲルを担持させることにより空気よりも熱伝導率を低くした断熱体を用いることがある。
【0003】
なお、この技術に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-136859号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら上記断熱体は、基本的に平坦な構造をしているため、機器の中で位置合わせをしようとしても、最初に置いた場所に貼りついてしまい、位置あわせすることが難しくなる場合があった。
【0006】
上記問題を解決するために、本開示の断熱体は、内部の空間にキセロゲルを担持した不織布と、この不織布の少なくとも一面に設けられた複数個の突起と、を有する。
【0007】
上記構成により、位置合わせが容易な断熱体および断熱シートが得られるとともに、さらにこの突起を用いて断熱効果を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施の形態における断熱体の断面図
図2】本開示の一実施の形態における断熱体の上面図
図3】本開示の一実施の形態における別の断熱体の断面図
図4】本開示の一実施の形態における断熱シートの断面図
図5】本開示の一実施の形態における別の断熱シートの断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施の形態における断熱シートについて、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は本開示の一実施の形態における断熱体の断面図であり、図2は本発明の一実施の形態における断熱体の上面図である。
【0011】
断熱体12は、内部に空間を有するポリエチレンテレフタレート(以下PETと記す)からなる不織布11の空間にシリカキセロゲル(図示しない)を担持させることにより構成されている。この不織布11は、平均繊維太さ約10μmのPET繊維からなり、不織布11の中で空間の占める割合は約90%となっている。このシリカキセロゲルは内部にナノサイズの空間を有しているため、このシリカキセロゲルが充填されている部分の熱伝導率は、0.018~0.024W/m・Kと、空気の熱伝導率よりも小さいものとなっている。なおこのシリカキセロゲルは、ゲルが乾燥した状態の広義のキセロゲルであり、通常の乾燥だけでなく、超臨界乾燥、凍結乾燥等の方法によって得られたものでもかまわない。
【0012】
ここで断熱体12の厚さは約0.3mm、大きさは約100mm角となっている。断熱体12の一方の面にはその一部を隆起させた突起13が設けられ、この突起13の、前記一方の面からの高さは約0.03mm、直径約3mm、突起13どうしの中心間の最短距離が約15mmになるように配置されている。
【0013】
このようにすることにより、突起13が設けられた面を、設置する位置に置いても突起のみで接触するため、貼りつくことはない。そのため位置の微調整等が行いやすくなる。さらに突起13の分で厚さが増える分、断熱効果を向上させることができる。
【0014】
突起13の前記高さは、断熱体12の厚さをtとしたとき、0.05t以上、0.15t以下とすることが望ましい。この高さが0.05tよりも小さくなると本開示にかかる発明の効果が小さくなり、0.15tよりも大きくなると形状を保つことが難しくなるためである。
【0015】
また突起13の配置は、断熱体12の厚さをtとしたとき、突起13間の最短距離を、30t以上、80t以下とすることが望ましい。この距離が30tよりも小さくなると接触面積が増え本開示にかかる発明の効果が小さくなり、80tよりも大きくなると断熱体12がたわんでしまい、本開示にかかる発明の効果が小さくなるためである。
【0016】
また図3のように断熱体12の両面に突起13を設けても良い。この場合、突起13の位置を両面間で異ならせることが望ましい。断熱体12に突起13を設けようとすると突起13付近で歪が生じやすいため、両面間で位置を異ならせることが望ましい。
【0017】
図4は本開示の一実施の形態における断熱体を用いた断熱シートの断面図である。断熱体12は、図1と同様に内部に空間を有するPETからなる不織布の空間にシリカキセロゲルを担持させることにより構成されている。断熱体12の厚さは約0.3mmであり、高さ約0.03mmの突起13が、突起13どうしの中心間の最短距離が約15mmになるように配置されている。この断熱体12を厚さ約0.01mmでPETからなる絶縁フィルム14で全体を覆って断熱シート15を構成している。突起13の高さより薄い絶縁フィルム14でこの断熱体12を覆うことにより、絶縁フィルム14は断熱体12の表面に沿って変形させることができ、設置位置に貼りつきにくい断熱シート15とすることができる。また突起13の周辺は微小な空間17ができ、これを絶縁フィルム14内に閉じ込めるため、断熱効果をさらに向上させることができる。
【0018】
図5は本開示の一実施の形態における断熱体を用いた別の断熱シートの断面図である。断熱体12を2枚重ねで全体を絶縁フィルム14で覆うことによって断熱シート15を構成している。断熱体12の対向する面にはいずれも突起13が設けられ、断熱体12の間に絶縁シート16が挟まれている。対向する面に設けられた突起13の位置はお互いに異ならすことがより望ましい。この絶縁シート16にはPET等の空気を通さないシートを用いることが望ましい。このように構成することにより、断熱体12どうしに挟まれた領域の空間が絶縁シート16で区切られ、空気の対流による熱伝導を妨げることができ、断熱効果をさらに向上させることができる。
【0019】
次に、本開示の一実施の形態における断熱体の製造方法について説明する。
【0020】
まず厚さ約0.3mmのPETからなる不織布を準備する。この不織布を例えばケイ酸ナトリウム水溶液に塩酸を添加してなるゾル溶液に浸漬し、不織布の内部空間の中にゾル溶液を含浸させる。このゾル溶液をゲル化させ、疎水化、乾燥することにより、不織布の内部空間にシリカキセロゲルを充填させる。このゾル溶液が完全に乾燥する前に、不織布の表面の一部のみ真空で吸着することにより、吸着された部分が盛り上がって突起となり、これを完全に乾燥させることにより、表面に複数個の突起を有する断熱体を得ることができる。
【0021】
突起の大きさ、配置、高さ等は、真空吸着板の穴の形状、配置、真空引きの強さによって所定のものを実現することができる。
【0022】
その後、断熱体12を2枚重ねで全体を絶縁フィルム14で覆う。このようにして、断熱シート15を得る。
【0023】
なお、上記実施の形態においては、不織布11、突起13、絶縁フィルム14の材料をいずれもPETとしたが、PET以外の樹脂材料でもよい。また、不織布11、突起13および絶縁フィルム14の材料は、互いに異なっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本開示に係る断熱体およびこれを用いた断熱シートは位置合わせを容易とすることができ産業上有用である。
【符号の説明】
【0025】
11 不織布
12 断熱体
13 突起
14 絶縁フィルム
15 断熱シート
16 絶縁シート
17 空間
図1
図2
図3
図4
図5