(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】チップ抵抗器
(51)【国際特許分類】
H01C 1/142 20060101AFI20230901BHJP
H01C 7/00 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
H01C1/142
H01C7/00 110
H01C7/00 530
(21)【出願番号】P 2020548304
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 JP2019034936
(87)【国際公開番号】W WO2020059514
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2018173178
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】山本 麻実
(72)【発明者】
【氏名】中山 祥吾
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/037279(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/114673(WO,A1)
【文献】特開2013-070108(JP,A)
【文献】特開2008-084905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 1/142
H01C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
前記絶縁基板の上面の両端部に設けられた一対の第1上面電極と、
前記絶縁基板の上面に設けられ、かつ前記一対の第1上面電極間に形成された抵抗体と、
前記一対の第1上面電極の上面に形成された一対の第2上面電極と、
前記抵抗体と前記一対の第2上面電極の一部とを覆うように設けられた保護膜と、
少なくとも前記一対の第2上面電極と電気的に接続されるように前記絶縁基板の両端面に設けられた一対の端面電極と、
前記一対の第2上面電極の一部と前記一対の端面電極の表面とに形成されためっき層とを備え、
前記一対の第2上面電極は樹脂に金属を含有させた材料で構成され、
前記一対の第2上面電極の弾性率が10
6Pa以上かつ10
8Pa以下である
チップ抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、各種電子機器に使用される厚膜抵抗体で形成された小形のチップ抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のチップ抵抗器は、
図4に示すように、絶縁基板1と、この絶縁基板1の上面の両端部に設けられた一対の第1上面電極2と、絶縁基板1の上面に設けられ、かつ一対の第1上面電極2間に形成された抵抗体3と、を備えていた。さらに、一対の第1上面電極2を覆う一対の第2上面電極4と、少なくとも抵抗体3を覆う保護膜5と、一対の第2上面電極4と電気的に接続されるように絶縁基板1の両端面に設けられた一対の端面電極6と、一対の第2上面電極4の一部と一対の端面電極6の表面に形成されためっき層7とを備えていた。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
上記した従来のチップ抵抗器においては、チップ抵抗器への通電が繰り返されることにより、温度変化による応力が実装用はんだ層(以下、図示せず)に集中して、実装用はんだ層とチップ抵抗器との接合部分であるめっき層7に熱応力が発生しやすくなる。
【0006】
そして、一対の第2上面電極4は応力が生じためっき層7と接しているため、一対の第2上面電極4にも応力が加わり、これにより、一対の第2上面電極4にクラックが発生する可能性があるため、一対の第1上面電極2が露出して、耐硫化特性が悪化する可能性があるという課題を有していた。
【0007】
本開示は上記従来の課題を解決するもので、耐硫化特性の悪化を抑制することができるチップ抵抗器を提供することを目的とするものである。
【0008】
第1の態様に係るチップ抵抗器は、絶縁基板と、一対の第1上面電極と、抵抗体と、一対の第2上面電極と、保護膜と、一対の端面電極と、めっき層とを備える。一対の第1上面電極は、絶縁基板の上面の両端部に設けられている。抵抗体は、絶縁基板の上面に設けられ、かつ一対の第1上面電極間に形成されている。一対の第2上面電極は、一対の第1上面電極の上面に形成されている。保護膜は、抵抗体と、一対の第2上面電極の一部と、を覆うように設けられている。一対の端面電極は、少なくとも一対の第2上面電極と電気的に接続されるように絶縁基板の両端面に設けられている。めっき層は、一対の第2上面電極の一部と一対の端面電極の表面とに形成されている。一対の第2上面電極は樹脂に金属を含有させた材料で構成されている。一対の第2上面電極の弾性率は、106Pa以上かつ108Pa以下である。
【0009】
本開示のチップ抵抗器は、一対の第2上面電極の弾性率を108Pa以下としているため、応力を吸収し易くなり、これにより、一対の第2上面電極にクラックが発生する可能性を低減でき、さらに、弾性率を106Pa以上としているため、めっき層と一対の第2上面電極との密着性が向上し、めっき層と一対の第2上面電極の界面で一対の第2上面電極が剥がれるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施の形態におけるチップ抵抗器の断面図
【
図2】同チップ抵抗器において、一対の第2上面電極の弾性率と、一対の第2上面電極のクラック発生率、一対の第2上面電極の剥がれ発生率との関係を示す図
【
図3】同チップ抵抗器において、周囲温度と、一対の第2上面電極の弾性率との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本開示の一実施の形態におけるチップ抵抗器の断面図である。
【0012】
本開示の一実施の形態におけるチップ抵抗器は、
図1に示すように、絶縁基板11と、一対の第1上面電極12と、抵抗体13と、一対の第2上面電極14と、保護膜15と、一対の端面電極16と、めっき層17とを備えている。一対の第1上面電極12は、絶縁基板11の上面の両端部に設けられている。抵抗体13は、絶縁基板11の上面に設けられ、かつ一対の第1上面電極12間に形成されている。一対の第2上面電極14は、一対の第1上面電極12の上面に形成されている。保護膜15は、抵抗体13と一対の第2上面電極14の一部を覆っている。一対の端面電極16は、少なくとも一対の第2上面電極14と電気的に接続されるように絶縁基板11の両端面に設けられている。めっき層17は、一対の第2上面電極14の一部と一対の端面電極16の表面に形成されている。
【0013】
また、一対の第2上面電極14は樹脂に金属を含有させた材料で構成され、一対の第2上面電極14の弾性率が106Pa以上、108Pa以下となっている。
【0014】
上記構成において、絶縁基板11は、Al2O3を96%含有するアルミナで構成され、その形状は上面視矩形状となっている。
【0015】
また、一対の第1上面電極12は、絶縁基板11上面の両端部に設けられ、銀からなる厚膜材料を印刷、焼成することによって形成されている。なお、絶縁基板11裏面の両端部に裏面電極12aを形成してもよい。
【0016】
さらに、抵抗体13は、絶縁基板11の上面において、一対の上面電極12間に、銀パラジウム、酸化ルテニウム、または銅ニッケルからなる厚膜材料を印刷した後、焼成することによって形成されている。なお、抵抗体13は棒状としてもよい。さらに、抵抗体13に抵抗値調整用のトリミング溝(図示せず)を設けてもよい。
【0017】
また、一対の第2上面電極14は、一対の第1上面電極12の少なくとも一部の上面に形成され、抵抗体13と電気的に接続している。さらに、一対の第2上面電極14の互いに対向する(内側に向かう)端部は保護膜15に覆われている。すなわち、一対の第2上面電極14の上面に保護膜15とめっき層17の境界がある。
【0018】
そして、一対の第2上面電極14は、銀と樹脂からなる厚膜材料を印刷、焼成することによって形成されている。一対の第2上面電極14には銀が40wt%以上かつ60wt%以下含有されている。
【0019】
一対の第2上面電極14を構成する樹脂は、分子量が650以下で、ヒドロキシフェニル型(4官能基が両端に2個ずつ有する)を持つエポキシ樹脂である。
【0020】
保護膜15は、抵抗体13と、少なくとも抵抗体13の上面に位置する一対の第2上面電極14とを直接覆うように形成されている。保護膜15は、アルミナまたはシリカからなるフィラーとエポキシ樹脂とで構成されている。
【0021】
一対の端面電極16は、絶縁基板11の両端部に設けられ、一対の第1上面電極12、一対の第2上面電極14と電気的に接続されるように、Agと樹脂からなる材料を印刷することによって形成される。
【0022】
さらに、この一対の端面電極16の表面には、Niめっき層、Snめっき層からなるめっき層17が形成されている。このとき、めっき層17は、一対の第2上面電極14の一部と接続され、かつ保護膜15と接する。
【0023】
上記したように本開示の一実施の形態においては、一対の第2上面電極14の弾性率を108Pa以下としているため、応力を吸収し易くなる。これにより、一対の第2上面電極14にクラックが発生する可能性を低減できる。さらに、弾性率を106Pa以上としているため、めっき層17と一対の第2上面電極14との密着性が向上する。これにより、めっき層17と一対の第2上面電極14の界面で一対の第2上面電極14が剥がれるのを防止できるという効果が得られる。
【0024】
すなわち、一対の第2上面電極14を構成する樹脂は、その両端に反応基が2つあるため、結合部は2点で繋がり、直鎖的になり柔らかく、一対の第2上面電極14の弾性率を108Pa以下とすることができる。一対の第2上面電極14の弾性率を108Pa以下と柔らかくしているため、めっき層17から受けた応力を吸収でき、これにより、一対の第2上面電極14にクラックが発生して、一対の第1上面電極12が露出し、耐硫化特性が悪化するのを防止できる。
【0025】
なお、弾性率が106Paより小さくなると、一対の第2上面電極14が変形しやすくなるため、その変形にめっき層17のニッケルめっき層が追従できない。これにより、ニッケルめっき層と一対の第2上面電極14の界面で第2上面電極14が剥がれたり、第2上面電極14自体の強度が保てず、第2上面電極14内部が破断したりという不具合が生じる。
【0026】
図2は、一対の第2上面電極14の弾性率と、一対の第2上面電極14のクラック発生率、一対の第2上面電極14の剥がれ発生率との関係を示す図である。
【0027】
図2から明らかなように、一対の第2上面電極14の弾性率が10
8Paより大きくなると、急激にクラック発生率が増加することが分かる。
【0028】
一方、一対の第2上面電極14の弾性率が106Paより小さくなると、急激に剥がれ発生率が増加することが分かる。
【0029】
図3は、一対の第2上面電極14の弾性率と、周囲温度との関係を示す図である。
図3において、一対の第2上面電極14は、サンプルAと表記される。
【0030】
なお、サンプルAと同様の構成であるが、分子量が約50000のビスフェノールA型ノボラック型のエポキシ樹脂を含有する電極について、サンプルBとして検討した。当該サンプルBについて、サンプルAとともに、
図3に弾性率と、周囲温度との関係を示した。
【0031】
図3から明らかなように、本願の一対の第2上面電極14は、周囲温度が変化しても一対の第2上面電極14の弾性率はほとんど変化しない。一対の第2上面電極14を構成する樹脂は、その両端に反応基が2つあるため、加熱されても分解しにくいからと考えられる。
【0032】
したがって、周囲が例えば200℃の高温下でも、耐硫化特性が悪化するのを防止でき、かつ、一対の第2上面電極14が剥がれるのを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本開示に係るチップ抵抗器は、耐硫化特性が悪化するのを防止できるという効果を有するものであり、特に、各種電子機器に使用され厚膜抵抗体で形成された小形のチップ抵抗器等において有用となるものである。
【符号の説明】
【0034】
11 絶縁基板
12 第1上面電極
13 抵抗体
14 第2上面電極
15 保護膜
16 端面電極
17 めっき層