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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】測定用プローブ
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20230901BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
G01B5/00 B
G01B11/00 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019195529
(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公開番号】P2021067648
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】久保 圭司
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆史
(72)【発明者】
【氏名】土居 正照
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 信
(72)【発明者】
【氏名】臼井 幸也
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 隆憲
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-019504(JP,A)
【文献】特開2006-343249(JP,A)
【文献】特開2001-317933(JP,A)
【文献】特表2013-512424(JP,A)
【文献】特開2016-070667(JP,A)
【文献】特開2016-161515(JP,A)
【文献】特開平05-209741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00
G01B 11/00
G01B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定物の表面を走査することにより、前記測定物の表面の形状を測定する測定用プローブであって、
スタイラスを有する第1可動部と、
Z方向に移動可能に前記第1可動部と連結される第2可動部と、
内部に前記第2可動部を収容する空間が設けられ、前記Z方向に移動可能に前記第2可動部と連結される第3可動部と、
前記第1可動部の前記Z方向における第1位置を測定する第1位置測定部と、
前記第2可動部の前記Z方向における第2位置を測定する第2位置測定部と、
前記第3可動部の前記Z方向における第3位置を測定する第3位置測定部と、
を備え、
第1相対位置は、前記第1位置と前記第2位置とに基づいて算出され、
第2相対位置は、前記第1位置と前記第3位置とに基づいて算出され、
前記第1可動部に対する前記第2可動部の前記Z方向における前記第1相対位置と、前記第1可動部に対する前記第3可動部の前記Z方向における前記第2相対位置と、が一定に維持される、
測定用プローブ。
【請求項2】
さらに、
前記第1可動部と前記第2可動部とを連結する第1スプリングと、
前記第2可動部と前記第3可動部とを連結する第2スプリングと、
を備える、
請求項1に記載の測定用プローブ。
【請求項3】
前記第2可動部の質量が前記第3可動部の質量の1/100以下である、
請求項1または2に記載の測定用プローブ。
【請求項4】
前記第1位置測定部、前記第2位置測定部、および前記第3位置測定部が、前記測定用プローブの内部に画定される空間に設けられている、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の測定用プローブ。
【請求項5】
前記第1位置測定部は、第1光源を含み、
前記第2位置測定部は、第2光源を含み、
前記第3位置測定部は、第3光源を含み、
前記第1光源、前記第2光源、および前記第3光源はそれぞれ、前記Z方向に平行に光が発射されるよう配置される、
請求項4に記載の測定用プローブ。
【請求項6】
前記測定用プローブは、前記第1相対位置と前記第2相対位置とを、予め記憶された所定の位置にリセットされる、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の測定用プローブ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の測定用プローブを備える、
形状測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定物を走査測定する形状測定装置の測定用プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のオプトエレクトロニクス技術の進歩により、ディジタル放送の4Kから8Kへの高精細化が進展している。この結果、ディジタルカメラ等において、またはスマートフォン等のモバイル機器に使用されるカメラにおいて、画質向上が要請されている。これらのカメラ等に使用されるレンズの表面形状は、設計形状に対しての誤差が、たとえば0.03μm(30nm)以下であることが求められ、高精度レンズへの要望が高まりつつある。
【0003】
その中で、レンズの表面形状について高精度な測定を行う形状測定装置も、より高精度な測定へのニーズが高まっている。そこで、特許文献1に記載のプローブを用いて測定する測定手法が提案されている。
【0004】
また、特許文献2のように、2つの計測手段の信号データを加減算して測定位置を得る手法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3000819号公報
【文献】特開昭61-200419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の測定用プローブは、プローブの測定力の低減と、プローブの高速応答という点において、未だ改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の測定用プローブは、
測定物の表面を走査することにより、前記測定物の表面の三次元形状等を測定する測定用プローブであって、
スタイラスを有する第1可動部と、
Z方向に移動可能に前記第1可動部と連結される第2可動部と、
内部に前記第2可動部を収容する空間が設けられ、前記Z方向に移動可能に前記第2可動部と連結される第3可動部と、
前記第1可動部の前記Z方向における第1位置を測定する第1位置測定部と、
前記第2可動部の前記Z方向における第2位置を測定する第2位置測定部と、
前記第3可動部の前記Z方向における第3位置を測定する第3位置測定部と、
を備え、
第1相対位置は、前記第1位置と前記第2位置とに基づいて算出され、
第2相対位置は、前記第1位置と前記第3位置とに基づいて算出され、
前記第1可動部に対する前記第2可動部の前記Z方向における前記第1相対位置と、前記第1可動部に対する前記第3可動部の前記Z方向における前記第2相対位置と、が一定に維持される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によると、測定力の低減と高速応答とが可能な測定用プローブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施の形態1にかかる測定用プローブを備える形状測定装置の全体構成図である。
図2図1の形状測定装置の概略構成を示すブロック図である。
図3図1の形状測定装置に搭載される測定用プローブの模式図である。
図4図1の形状測定装置に搭載される測定用プローブの概略構成を示す図である。
図5】測定用プローブがZ方向に下降したときの図である。
図6図4の測定用プローブがZ方向に上昇したときの図である。
図7】15mgfの測定力による測定結果を示すグラフである。
図8】1.7mgfの測定力による測定結果を示すグラフである。
図9図7のグラフの横軸の範囲を小さくしたグラフである。
図10図9のグラフの領域P1を拡大したグラフである。
図11図9のグラフの領域P2を拡大したグラフである。
図12図8のグラフの横軸の範囲を小さくしたグラフである。
図13図12のグラフの領域P3を拡大した図である。
図14図12のグラフの領域P4を拡大したグラフである。
図15】特許文献1に記載された測定用プローブを示す図である。
図16】特許文献2に記載された測定機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示に至った経緯)
高精度な測定を行う形状測定装置において、高精度測定のニーズが高まっており、特許文献1のように、プローブを用いて測定する測定手法が提案されている。特許文献1では、可動部を0.2gという軽量なエアスライダで構成し、マイクロスプリングで支持することにより、測定物への圧力を30mgf以下に抑制することができる。また、特許文献2のように、2つの計測手段の信号データを加減算して測定位置を得る手法も提案されている。
【0011】
レンズの薄型化およびレンズの光学特性改善のために、表面の軟らかいプラスチック材料が使用されるプラスチックレンズにおいては、プローブの測定力の低減と、プローブの高速応答が求められている。
【0012】
図15は、特許文献1に記載された測定用プローブを示す図である。図15に示すように、特許文献1に記載の測定用プローブ100は、マイクロスプリング101、スタイラス102、フォーカス検出量レーザ103、プローブユニット104、周波数安定化He-Neレーザ105、Z軸ステージ106、マイクロエアスライダ110により構成されている。スタイラス102とマイクロエアスライダ110との重量が、マイクロスプリング101により支持されている。測定用プローブ100は、XY方向への走査時に、マイクロスプリング101のひずみ量としてマイクロスプリング101の変位量を半導体レーザ光学系により計測する。この変位量をフィードバックした状態でXY方向に走査して形状を測定することにより、一定の測定力により測定物109の測定面の形状を測定する。このように、マイクロスプリング101のひずみ量を一定にフィードバックした状態で、XY方向に走査して形状を測定することにより、一定の測定力に保つことができる。
【0013】
また、図15に示すように、測定物109の測定においては、傾いた測定面を測定する場合がある。たとえば、スマートフォン等のカメラのレンズ表面は、およそ75°傾いた測定面を有している。このような場合においても、測定用プローブ100の測定力を検出し、マイクロスプリング101の変形量を一定に保つことが求められる。傾いた測定面において、測定用プローブ100をXY方向に走査すると、測定面の傾斜によりZ方向へZ軸ステージ106を移動させることが求められる。図15に示すように、測定面がY軸まわりに75°傾いていると、測定力を一定に保つために、Z方向において、X方向への移動速度のtan75°(≒3.73)倍の速度で移動することが求められる。
【0014】
Z軸ステージ106の重量は、たとえば、およそ2kgであるため、Z方向への移動速度が制限されることがあり、傾いた側面に対して所望の速度でZ軸ステージを移動させることができないという問題が生じる。また、測定物109の測定面における微細な凹凸の変化に追随するように、測定力を一定の低い値に保ったままXY方向に走査して測定することが難しいという課題がある。
【0015】
また、約2kgのZ軸ステージ106の重量により、低い測定力でのフィードバックを行うことができないという課題がある。さらに、レーザの空気揺らぎの影響により、マイクロスプリング101のひずみ量を低く設定することができず、低い測定力で測定を行うことが難しいという課題がある。
【0016】
図16は、特許文献2に記載された測定機を示す図である。図16に示すように、特許文献2に記載の測定機120は、測定用プローブ121と、プローブ支持部材122と、移動機構123と、第1計測手段124と、第2計測手段125とを備える。第1計測手段124は、移動機構123による移動量を計測し、第2計測手段125は、プローブ支持部材122に対するプローブの変位量を計測し、かつ、第1計測手段124よりも高分解能を有する。図示されていない演算処理装置において、第1計測手段124および第2計測手段125の出力信号データを加減算し、測定用プローブ121と測定物の測定箇所との相対移動変位量または被測定箇所の座標を求めることにより、高速な測定を可能にしている。
【0017】
しかし、特許文献2のように、2つの計測手段の信号データを加減算して測定位置を得る手法では、測定ストローク全長にわたって均一な精度とすることが困難であるという課題がある。また、第1計測手段124および第2計測手段125の出力信号を加減算して位置を求めるため、測定結果に誤差が生じることがあるという課題がある。
【0018】
そこで、本発明者らは、これらの課題を解決するための測定用プローブを検討し、以下の構成を考案した。
【0019】
本開示の一態様に係る測定用プローブは、
測定物の表面を走査することにより、前記測定物の表面の三次元形状等を測定する測定用プローブであって、
スタイラスを有する第1可動部と、
Z方向に移動可能に前記第1可動部と連結される第2可動部と、
内部に前記第2可動部を収容する空間が設けられ、前記Z方向に移動可能に前記第2可動部と連結される第3可動部と、
前記第1可動部の前記Z方向における第1位置を測定する第1位置測定部と、
前記第2可動部の前記Z方向における第2位置を測定する第2位置測定部と、
前記第3可動部の前記Z方向における第3位置を測定する第3位置測定部と、
を備え、
第1相対位置は、前記第1位置と前記第2位置とに基づいて算出され、
第2相対位置は、前記第1位置と前記第3位置とに基づいて算出され、
前記第1可動部に対する前記第2可動部の前記Z方向における前記第1相対位置と、前記第1可動部に対する前記第3可動部の前記Z方向における前記第2相対位置と、が一定に維持される。
【0020】
このような構成により、プローブの測定力の低減と、プローブの高速応答とが可能になる。
【0021】
さらに、
前記第1可動部と前記第2可動部とを連結する第1スプリングと、
前記第2可動部と前記第3可動部とを連結する第2スプリングと、
を備えていてもよい。
【0022】
このような構成により、Z方向において高精度な測定が可能になる。
【0023】
前記第2可動部の質量が前記第3可動部の質量の1/100以下であってもよい。
【0024】
このような構成により、プローブの測定力を低く保ったまま測定することができる。
【0025】
前記第1位置測定部、前記第2位置測定部、および前記第3位置測定部が、前記測定用プローブの内部に画定される空間に設けられていてもよい。
【0026】
このような構成により、空気揺らぎによる変動の影響を低減することができる。また、測定用プローブの組立が容易になり、低コストで製造することができる。
【0027】
前記第1位置測定部は、第1光源を含み、
前記第2位置測定部は、第2光源を含み、
前記第3位置測定部は、第3光源を含み、
前記第1光源、前記第2光源、および前記第3光源はそれぞれ、前記Z方向に平行に光が発射されるよう配置されてもよい。
【0028】
このような構成により、各光源からの光の近傍の気温、気圧がほぼ同一に維持されるため、空気揺らぎの影響を低減させることができ、高精度かつ高安定に測定力を制御することができる。
【0029】
前記第1相対位置と前記第2相対位置とが、予め記憶された所定の位置にリセットされてもよい。
【0030】
このような構成により、測定誤差を低減した測定用プローブを提供することができる。
【0031】
本開示の一態様にかかる形状測定装置は、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の測定用プローブを備える。
【0032】
このような構成により、測定力を低減し、高速応答を実現した形状測定装置を提供することができる。
【0033】
以下、実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0034】
(実施の形態1)
[形状測定装置の全体構成]
図1は、本開示の実施の形態1にかかる測定用プローブを備える形状測定装置の全体構成図である。図2は、図1の形状測定装置の概略構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態において、X方向は幅方向、Y方向は奥行方向、Z方向は高さ方向を示す。
【0035】
図1および図2に示すように、形状測定装置90は、測定用プローブ1と、Z軸ステージ2と、XYステージ3と、周波数安定化Ne-Neレーザ4と、X軸基準ミラー5と、Y軸基準ミラー6と、Z軸基準ミラー7と、上部石定盤8および下部石定盤91と、X軸レーザ出射部10と、Y軸レーザ出射部11と、演算処理部94と、制御部95とを備える。形状測定装置90は、測定物9の表面形状を測定するのに使用される。
【0036】
測定物9を保持する下部石定盤91に、XY軸方向に移動可能に、XYステージ3が配置されている。また、XYステージ3上には、上部石定盤8が配置され、上部石定盤8の上に測定物9のXYZ座標位置を測定するための周波数安定化He-Neレーザ4が配置されている。
【0037】
測定用プローブ1は、Z軸ステージ2を介して上部石定盤8に取り付けられている。XYステージ3は、XYステージ3の下側に配置されてモータ駆動のY軸ステージ3Yと、XYステージ3の上側に配置されてモータ駆動のX軸ステージ3Xとで構成されている。周波数安定化He-Neレーザ4により周波数安定化He-Neレーザ光96が出射され、出射された周波数安定化He-Neレーザ光96が、上部石定盤8に配置された光学系92を介して、X、Y、Z軸の3方向のレーザ光に分岐されたのち、ナノメートルオーダーの高い平面度を持つ、X軸基準ミラー5と、Y軸基準ミラー6と、Z軸基準ミラー7とにそれぞれ反射させる。
【0038】
このように構成することにより、X座標検出装置93Xと、Y座標検出装置93Yと、測定用プローブ1のZ方向位置を検出するZ座標検出装置93Zとにより、ナノメートルオーダーの超高精度で、測定物9の表面のXYZ座標を測定できる。X座標検出装置93XとY座標検出装置93YとZ座標検出装置93Zとには、演算処理部94が接続されて、座標検出装置93XとY座標検出装置93YとZ座標検出装置93Zとから入力された測定データを演算処理部94で演算処理して、測定物9の表面の三次元座標データを得て、形状測定を行うことができる。これらのユニット、すなわち、測定用プローブ1と、Z軸ステージ2と、XYステージ3と、周波数安定化He-Neレーザ4と、X軸レーザ出射部10と、Y軸レーザ出射部11とX座標検出装置93Xと、Y座標検出装置93Yと、Z座標検出装置93Zと、演算処理部94となどは、制御部95により動作制御され、自動的に形状測定装置90での計測動作を行うように構成されている。
【0039】
形状測定装置90は、たとえばレンズ等の測定物9の表面において、測定用プローブ1をXY方向に走査することにより、測定物9の表面のXYZ座標データ列を求める。制御部95により、測定用プローブ1のXY座標位置におけるZ座標データの列が演算処理されて、測定物9の形状測定を行う。すなわち、形状測定装置90は、XY方向に測定用プローブ1を走査してXYZ座標を取得し、測定物9の3次元形状を測定する。
【0040】
なお、形状測定装置90は、測定用プローブ1をXY方向において固定してZ方向にのみ移動し、測定物9をXY方向に移動させて測定物9の形状を測定するよう構成されていてもよい。
【0041】
また、形状測定装置90において、測定用プローブ1に対するX軸レーザ出射部10およびY軸レーザ出射部11の位置は静的である。具体的には、XYステージ3によって測定用プローブ1がXY方向に移動しても、測定用プローブ1に対するX軸レーザ出射部10およびY軸レーザ出射部11の距離は、一定で変化しないよう構成されている。測定用プローブ1に対するX軸レーザ出射部およびY軸レーザ出射部11が一定の距離を保つよう構成することによって、X方向およびY方向に出射されたレーザ光により、測定用プローブ1の中心からX軸基準ミラー5およびY軸基準ミラー6までの距離を高精度に測定することが可能である。
【0042】
[測定用プローブの全体構成]
図3および図4を参照して、本開示の測定用プローブ1の構成を示す。図3は、図1の形状測定装置に搭載される測定用プローブの模式図である。図4は、図1の形状測定装置に搭載される測定用プローブの概略構成を示す図である。
【0043】
測定用プローブ1は、図3および図4に示すように、第1可動部12と、第2可動部13と、第3可動部14と、第1位置測定部15と、第2位置測定部16と、第3位置測定部17と、第1駆動部(VCM)37と、第2駆動部(リニアモータ)18とを備える。第1可動部12と第2可動部13とが第1スプリング22により連結され、第2可動部13と第3可動部14とが第2スプリング34により連結されている。測定物9のZ方向の座標を測定する際に、第1可動部12と軽量な第2可動部13とが小さいストローク(たとえば、50~100μm)でZ方向に移動し、第2可動部13に比較して重量がある第3可動部14が大きいストローク(たとえば、40~80mm)でZ方向に移動する。このように、軽量な第2可動部13と重量がある第3可動部14とを組み合わせることにより、測定物9への低測定力を維持しつつ、Z方向へ測定用プローブ1を高速に移動させることができる。
【0044】
<第1可動部>
第1可動部12は、図4に示すように、エアスライダ19と、エアスライダ19の一端に配置されたスタイラス20と、エアスライダ19の他端に配置された第1ミラー21とを有する。第1可動部12のエアスライダ19は、第3可動部14のエア軸受部23に挿入され、Z方向に移動可能である。測定用プローブ1における測定子であるスタイラス20は、Z方向に移動可能であり、XY方向に剛性を持つエアスライダ19により支持されている。エアスライダ19の可動部分は、短冊状の第1スプリング22により自重を支持されている。第1スプリング22は、第1可動部12と第2可動部13とを移動可能に連結している。エアスライダ19は、3~15μmのエアギャップによりXY方向の剛性を維持し、第3可動部14のエア軸受部23に挿入されている。
【0045】
また、測定用プローブ1には、XY方向の微小な傾きを検出する検出光学系LTが設けられている。検出光学系LTは、光源LSを有し、光源LSからのレーザ光43をミラー46に反射させる。検出光学系LTは、スタイラス20が測定物9の表面における摩擦力によりXY方向に力を受けたとき、スタイラス20のX方向を軸とした傾き(図1のB方向の傾き)とY方向を軸とした傾き(図1および図4のA方向の傾き)を検出することができる。
【0046】
<第2可動部>
第2可動部13は、Z方向に移動可能に第1可動部12と連結され、後述する第3可動部14の空間24に収容されている。第2可動部13は、第2ミラー25を有し、第3可動部14の空間24において、第2可動部13と第3可動部14とを連結する第2スプリング34により第3可動部14と移動可能に連結されている。第2可動部13は、中空のカップ状のカップスライダ40を有し、カップスライダ40がZ方向に移動可能に構成されている。カップスライダ40は、3~15μmのエアギャップによりXY方向の剛性を維持し、第3可動部14のエア軸受部41に挿入されている。すなわち、第2可動部13は、第2スプリング34により、Z方向に移動可能にその自重を支持されている。また、第2可動部13のカップスライダ40の底に設けられた支持球42により第1スプリング22が支持されている。したがって、第2可動部13は、第1可動部12を第1スプリング22および支持球42により支持している。第2可動部13は、自重が約5gと軽量であり、Z方向に高速に移動可能である。後述するように第3可動部14の質量は約2kgであり、第2可動部13の質量は、第3可動部14の質量の1/100以下であるとよい。好ましくは、第2可動部13の質量は、第3可動部14の質量の1/200以下であるとよい。さらに好ましくは、第2可動部13の質量は、第3可動部14の質量の1/400以下であるとよい。
【0047】
第1可動部12のZ方向の座標は、第1位置測定部15の第1光源26からのレーザ光27を第3可動部14に設けられたレンズ33により第1ミラー21に集光し、干渉計により測定することで求めることができる。
【0048】
エアスライダ19のZ位置を測定する第1位置測定部15の第1光源26からのレーザ光27と、スタイラス20のXY方向への走査による傾きを検出する検出光学系LTからのレーザ光43とが、第2可動部13の中空部分を通過する。
【0049】
第2可動部13の外周に円筒状のコイル36が設けられており、コイル36が第3可動部14の内周に設けられたマグネット35と組み合わさることにより、簡素な構造で推力を発生するボイスコイルモータ(VCM)37が構成される。VCM37により、第2可動部13をZ方向に駆動することができる。VCM37により、第2可動部13がZ方向の上下に高速移動されるが、第2可動部13の自重は第2スプリング34にて支持されているため、低消費電力で駆動させることができる。このため、精密測定の際に問題となる熱の発生を抑制することができる。
【0050】
第2可動部13は、測定による外力が加わらないため、倒れが発生しない。そのため、第2可動部13のX方向を軸とした傾き(図1のB方向の傾き)とY方向を軸とした傾き(図1および図2のA方向の傾き)に対する剛性は低くてもよい。また、Z方向以外のメカ移動精度は不問である。カップスライダ40のエアギャップの製造公差は約20μmであり、エア軸受としての精度は緩く、低コスト化も容易である。
【0051】
第2可動部13のZ方向の座標は、第2位置測定部16の第2光源28からのレーザ光29を、第3可動部14に設けられたレンズ32により第2ミラー25に集光した光を干渉計により測定することにより求められる。
【0052】
<第3可動部>
第3可動部14は、内部に第2可動部13を収容する空間24が設けられ、Z方向に移動可能に第2可動部13と連結される。第3可動部14は、内部に空間24が形成された有底の筒状である。第3可動部14の底部には、第1可動部12のエアスライダ19をZ方向に移動可能に保持するエア軸受部23が設けられている。第3可動部14の内底、すなわち底の第2可動部13が配置される側には、第2スプリング34が配置されている。第2スプリング34は、第3可動部14の内部の空間24に収容された軽量な第2可動部13の自重をZ方向の上方に支持している。すなわち、第2可動部13と第3可動部14とは、第2スプリング34により移動可能に連結されている。第3可動部14のZ方向の座標は、第3位置測定部17の第3光源30からのレーザ光31を、第3ミラー47に集光した光を干渉計により測定することにより求められる。第3可動部14は、リニアモータ18によりZ方向に駆動される。リニアモータ18は、マグネット38とコイル39により構成されている。また、第3可動部14の自重は約2kgであり、図示されていないセラミックステージにより真直度が10nm以下となるよう構成されている。
【0053】
<第1位置測定部>
第1位置測定部15は、第1可動部12のZ方向における第1位置L1(図3参照)を測定する。第1位置測定部15は、第1光源26を有し、第1光源26からのレーザ光27を第1ミラー21に反射させることにより第1可動部12のZ方向における第1位置L1を測定する。すなわち、第1位置L1は、第1ミラー21のZ方向の位置である。第1位置測定部15は、図4に示すように、第1光源26からのレーザ光27を、第3可動部14に固定されたレンズ33を通して第1ミラー21に照射することにより、第1ミラー21のZ方向の位置を測定し、第1位置L1を決定する。測定された第1位置L1の情報は、測定物9の形状測定データとして使用される。また、第1位置測定部15には、半導体レーザ光学系が設けられている。半導体レーザ光学系は、図示されていないダイクロックミラーにより周波数安定化He-Neレーザ4とは波長の異なる半導体レーザの光を第1ミラー21に照射することにより、第1ミラー21の初期絶対高さを測定する。
【0054】
<第2位置測定部>
第2位置測定部16は、第2可動部13のZ方向における第2位置L2を測定する。第2位置測定部16は、第2光源28のレーザ光29が、第3可動部14に設けられたレンズ32を通して第2ミラー25に反射されることにより、図示されていない干渉計において第2可動部13のZ方向における第2位置L2を測定する。すなわち、第2位置L2は、第2ミラー25のZ方向の位置である。
【0055】
<第3位置測定部>
第3位置測定部17は、第3可動部14のZ方向における第3位置L3を測定する。第3位置測定部17は、第3光源30からのレーザ光31を第3可動部14に設けられた第3ミラー47に反射させることにより、図示されていない干渉計において第3可動部14のZ方向における第3位置L3を測定する。すなわち、第3位置L3は、第3ミラー47のZ方向の位置である。
【0056】
図3に示すように、第1相対位置R1は第1可動部12に対する第2可動部13のZ方向の相対位置であり、第2相対位置R2は第1可動部12に対する第3可動部14のZ方向の相対位置である。第1位置L1、第2位置L2、および第3位置L3に基づいて、第1相対位置および第2相対位置が算出される。本実施の形態では、第1相対位置R1および第2相対位置R2の算出は、演算処理部94により実行される。
【0057】
<駆動部>
測定用プローブ1は、第3可動部14をZ方向に駆動する第2駆動部18と、第2可動部13をZ方向に駆動する第1駆動部37とを有する。なお、第1駆動部37は前述のVCM37に相当し、第2駆動部18は前述のリニアモータ18に相当する。VCM37が第2可動部13をZ方向に駆動し、リニアモータ18が第3可動部14をZ方向に駆動する。すなわち、第1駆動部37は第2可動部13をZ方向に駆動し、第2駆動部18は第3可動部14をZ方向に駆動する。
【0058】
第1駆動部37および第2駆動部18は、第1相対位置R1と第2相対位置R2とが一定になるように制御される。本実施の形態では、制御部95が、第1相対位置R1と第2相対位置R2とが一定になるよう、リニアモータ18およびVCM37を制御する。
【0059】
[測定力の制御]
測定用プローブ1から測定物9に加わる測定力は、スタイラス20が測定物9に接触したときの、スタイラス20を支持する第1スプリング22のたわみ量に基づいて制御する。低い測定力を安定して実現するために、第1スプリング22に加わる力、および第2スプリング34に加わる力の両方を制御する。第1スプリング22および第2スプリング34に加わる力を検出するには、第1スプリング22および第2スプリング34の変形量をナノメートルオーダーの高精度かつ高安定に測定する。
【0060】
第1スプリング22の変形量は、第1位置測定部15による第1ミラー21のZ方向の座標(第1位置L1)と、第2位置測定部16による第2ミラー25のZ方向の座標(第2位置L2)とを測定し、その差分(第1相対位置R1)を算出することにより測定する。また、第2スプリング34の変形量は、第1位置測定部15による第1ミラー21のZ方向の座標(第1位置L1)と、第3位置測定部17により第3ミラー47のZ方向の座標(第3位置L3)とを測定し、その差分(第2相対位置R2)を算出することにより測定する。第1位置測定部15、第2位置測定部16、および第3位置測定部17によるレーザ測長は、高い線形性を備え、微小計測に有効である。なお、具体的な測定力の算出のために、予め第1スプリング22のバネ定数KA(N/m)および第2スプリング34のバネ定数KB(N/m)を測定しておくとよい。
【0061】
第1スプリング22および第2スプリング34の変形量の測定は、まず、測定用プローブ1を上部に移動し、スタイラス20が測定物9の測定面に非接触の状態で、第1光源26、第2光源28、および第3光源30のレーザ測長値を同時に取得する。このとき、測定用プローブ1には振動等が加わらないようにするとよい。スタイラス20が測定物9の測定面に接触していないときの第1光源26のレーザ測長値をZ2Z、第2光源28のレーザ測長値をZ4Z、第3光源30のレーザ測長値をZ5Zとする。また、スタイラス20が測定物9に接触しているとき、すなわち測定中の第1光源26のレーザ測長値をZ2、第2光源28のレーザ測長値をZ4、第3光源30のレーザ測長値をZ5とする。これらの値を図示されていないメモリに記憶する。
【0062】
測定物9に加わる測定力MFは、数1の式で表される。
【0063】
(数1)
MF=KA×{(Z2-Z4)-(Z2Z-Z4Z)}
【0064】
第1スプリング22のたわみ量を高精度かつ高安定に測定することにより、測定力を正確に算出することができる。第1スプリング22のたわみ量を高精度かつ高安定に測定するには、レーザ測長の動作中に測定用プローブ1にはドリフト等がなく安定しているとよい。しかし、レーザ測長では、近傍の気温および気圧が不均一であると、屈折率の変化が発生し、測定位置の誤差が生じることがある。
【0065】
測定物9が、たとえば、スマートフォン等のカメラに使用されるような、厚さが0.2mm以下のプラスチックレンズである場合、測定物9を変形させずに測定するには、測定力が2mgf以下であるとよい。2mgf以下の測定力になるよう制御するには、たとえば、バネ定数KAが20N/mのスプリングを第1スプリング22に採用し、第1スプリング22のたわみ量をおよそ1μmにコントロールするとよい。そのために、たわみ量の1/10の0.1μm以下の精度と安定性で、第1スプリング22の位置を安定的に計測するとよい。
【0066】
なお、レーザ測長の場合、計測誤差は、気温では-1ppm/℃(=-1e-6/℃)であり、1℃の温度変化はレーザ光27およびレーザ光29の光路高さ差が40mmの部材で、0.04μmの計測誤差に相当する。また、計測誤差は、気圧では0.27ppm/hPaであり、形状測定装置90の設置されている環境では、たとえば、部屋の扉の開閉で10~20Pa(0.1~0.2hPa)の気圧変化が生じ、レーザ光27およびレーザ光29の光路高さ差が40mmの部材で、0.015~0.03μmの計測誤差に相当する。
【0067】
第1光源26、第2光源28、および第3光源30のレーザ測長時の光の通る経路が近接していると、気温および気圧の変化によるZ方向の位置の測定精度の低下を避けることができる。そこで、第1位置測定部15、第2位置測定部16、および第3位置測定部17が、測定用プローブ1の内部に画定される空間に設けられる。ここで、測定用プローブ1の内部に画定される空間とは、後述する図5および図6において、信号処理部44と、リニアモータ18と、第3可動部14とで確定される閉じられた空間45である。第1光源26、第2光源28、および第3光源30はそれぞれ、Z方向に平行に、レーザ光27、29、31が発射されるよう配置される。このような光源の配置により、測定用プローブ1がZ方向に移動しても、それぞれのレーザ光27、29、31の近傍の気温、気圧はほぼ同一に維持される。したがって、それぞれ光源26、28、30のレーザ測長値の微小な差により制御する場合でも、高精度かつ高安定にスタイラス20による測定力をコントロールすることができる。
【0068】
上述したように、第1光源26、第2光源28、および第3光源30を近傍した位置に配置し、それぞれの光源26、28、30からのレーザ光27、29、31の光軸が平行になるように第1位置測定部15、第2位置測定部16、および第3位置測定部17が配置されるとよい。
【0069】
図5は、測定用プローブ1がZ方向に下降したときの図である。図6は、測定用プローブ1がZ方向に上昇したときの図である。図5に示すように、第1光源26は、測定物9の測定位置のZ方向の位置を測定するため、エアスライダ19のZ方向の中心位置の延長線上に設けられ、第1光源26からのレーザ光27は、第3可動部14に固定されたレンズ33を通り第1ミラー21に到達する。
【0070】
また、第2光源28は、第2可動部13のZ方向の位置を測定するため、レーザ光29の中心が、第1光源26からのレーザ光27の光軸に対してX+方向に位置するよう設けられ、レンズ32を通り第2ミラー25に到達する。
【0071】
また、第3光源30は、第3可動部14のZ方向の位置を測定するため、レーザ光31の中心が、第1光源26からのレーザ光27の光軸に対してX-方向に位置するよう設けられる。
【0072】
このように、信号処理部44と測定用プローブ1との間の空間45にそれぞれの光源26、28、30からのレーザ光27、29、31の光路が設けられると、それぞれのレーザ光27、29、31の近傍の気温および気圧等の条件が同一となる。そのため、それぞれのレーザ光27、29、31によるレーザ測長値は、外乱によるZ方向の位置測定の揺らぎが同じ変化となり、測定物9に加わる測定力を検出するための、数1の式のZ2-Z4および数2の式のZ4-Z5の値は、揺らぎの影響を受けない。
【0073】
上述したように、本実施の形態において、空間45において、それぞれの光源26、28、30からのレーザ光27、29、31のレーザ測長の気温および気圧等の条件がほぼ同一になるようにする。その結果、スタイラス20を支持する第1スプリング22の位置を高速かつ高精度に測定することができる。
【0074】
また、位置測定の揺らぎの時間変化により発生するドリフトを避けるため、測定物9の測定が終了し、次の測定を開始する直前に、測定物9にスタイラス20の先端が接触していない状態とする。この状態で、制御部95は、第1相対位置R1と第2相対位置R2とを予め記憶された所定の値に設定する。このとき、制御部95は、測定力を一定にして局所的な気温および気圧の変動で変動したそれぞれの光源26、28、30のレーザ測長値をリセットするリセット処理を行う。すなわち、測定物の測定を開始する前に、制御部95は、第1相対位置R1の値および第2相対位置R2の値を、予め記憶された所定の値に戻すリセット処理を行う。
【0075】
図6に示すように、測定用プローブ1がZ方向に30mm~120mm程度のストロークで上昇して測定物9の測定を行う。図5および図6に示すように、信号処理部44と測定用プローブ1との間には、測定用プローブ1がZ方向に移動するための空間45が設けられている。それぞれのレーザ光27、29、31が同一の空間45に向けて照射され、空間45内では気温および気圧等はほぼ同一である。このため、レーザ光27、29、31において、空気揺らぎの影響を最小にすることができ、測定用プローブ1がZ方向に移動しても、測定力を一定に制御することができる。
【0076】
数1の式により算出される測定力MFが一定となるように、第2可動部13をZ方向に高速移動させる。このとき、第2可動部13だけでなく、リニアモータ18のコイル39にフィードバックすることで第3可動部14を移動させる。このように、測定用プローブ1をZ方向に移動させ、同時に、周波数安定化He-Neレーザ4をZ軸基準ミラー7に照射することにより、測定物9の測定面のZ方向の変位を測定する。この状態で、XY方向に測定用プローブ1全体を走査し、測定物9の形状を測定する。このようにして、低い測定力を維持しつつ、より信頼性の高い形状測定を行うことができる。
【0077】
測定用プローブ1をXY方向に走査することにより、測定用プローブ1に傾きが発生した場合、予め記憶されたスタイラス20の回転中心位置からの距離と角度との乗算を求める。このようにして、測定物9の測定面が傾斜している場合にも、測定用プローブ1の先端のXY位置を補正し、測定値として用いることで、高精度な測定を行うことができる。また、低い測定力を維持することができるので、エアスライダ19で支持しているスタイラス20の倒れを防止し、高精度な測定を行うことができる。
【0078】
[測定例]
図7図14を参照して、本開示の測定用プローブ1を用いて測定したサンプルデータ例を示す。図7は、15mgfの測定力による測定結果を示すグラフである。図8は、1.7mgfの測定力による測定結果を示すグラフである。図9は、図7のグラフの横軸の範囲を小さくしたグラフである。図10は、図9のグラフの領域P1を拡大したグラフである。図11は、図9のグラフの領域P2を拡大したグラフである。図12は、図8のグラフの横軸の範囲を小さくしたグラフである。図13は、図12のグラフの領域P3を拡大した図である。図14は、図12のグラフの領域P4を拡大したグラフである。図7図14において、縦軸Zdは、設計形状とZ方向との差を示し、横軸はX座標を示す。また、測定物としてR5.55mmの球を使用し、X方向に60°まで測定を実施した。測定条件は、速度1mm/s、ピッチ0.001mmである。
【0079】
図7および図8に示すように、測定力を15mgfから1.7mfgに下げることにより、スタイラス20の測定力による傾きが小さくなり、レンズの曲率が正しい値で計測されていることがわかる。
【0080】
また、図9ないし図14に示すように、測定力を15mfgから1.7mgfに下げることにより、測定物9の測定面に残っていたディンプル状の凹凸を、実形状に即した形状で測定することができていることがわかる。図9の領域P1および領域P2を拡大した図10および図11と、図12の領域P3および領域P4を拡大した図13および図14とを比較すると、図13および図14の方が、凸形状が大きな形状として測定されている。すなわち、測定力が低い方が、実形状に即した測定をすることができる。
【0081】
[効果]
本開示の測定用プローブ1によると、第1可動部12、第2可動部13、第3可動部14、第1位置測定部15、第2位置測定部16、第3位置測定部17、第1駆動部37、および第2駆動部18を備え、プローブの測定力の低減と、プローブの高速応答とが可能になる。
【0082】
また、第1可動部12と第2可動部13とを第1スプリング22により連結することにより、測定力を低い値に維持しつつ、測定用プローブ1の高速応答が可能になる。
【0083】
さらに、第1位置測定部15、第2位置測定部16、および第3位置測定部17が平行に設けられていることにより、組立時の光軸調整が容易である。また、レーザ光27、29、31に対する空気揺らぎの影響を同一にすることが可能であるため、測定力の制御に影響を与えることなく、低い測定力かつ高精度な測定が可能である。
【0084】
また、測定物9が、たとえば75°の高傾斜面を有する場合にも、ナノメートルオーダーの高精度に、かつ空気揺らぎによる外乱からの影響を抑制して測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本開示の測定用プローブは、Z方向に移動する軽量なカップ状の第2可動部により、スタイラスを支持する第1スプリングを支持する。測定した表面の凹凸形状に応じ、Z方向に高速に一定の測定力で測定することができる。また、高速で移動させる第2可動部は、Z方向以外の姿勢精度が求められない。Z方向の位置測定のための光源が同一部位に設置されているため、組立調整が容易である。光源からの光の光軸が、同じ空間に位置するため、レーザ測長の空気揺らぎの影響を受けずに、高速、かつ低い測定力で測定を行うことができる。
【符号の説明】
【0086】
1 測定用プローブ
9 測定物
12 第1可動部
13 第2可動部
14 第3可動部
15 第1位置測定部
16 第2位置測定部
17 第3位置測定部
18 リニアモータ
19 エアスライダ
20 スタイラス
21 第1ミラー
22 第1スプリング
23 エア軸受部
24 空間
25 第2ミラー
26 第1光源
27 レーザ光
28 第2光源
29 レーザ光
30 第3光源
31 レーザ光
34 第2スプリング
37 VCM
L1 第1位置
L2 第2位置
L3 第3位置
R1 第1相対位置
R2 第2相対位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16