(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】マイクロフォン及び車載用マイクロフォン
(51)【国際特許分類】
H04R 1/22 20060101AFI20230901BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
H04R1/22 320
H04R1/02 106
(21)【出願番号】P 2019010166
(22)【出願日】2019-01-24
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土井 一素
(72)【発明者】
【氏名】白矢 優貴
【審査官】佐久 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-131115(JP,A)
【文献】特開2011-155450(JP,A)
【文献】国際公開第2010/134244(WO,A1)
【文献】米国特許第09014394(US,B1)
【文献】特開2017-183911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00-1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の音孔を有するプリント基板と、
前記第1の音孔を覆うように前記プリント基板上に実装されたマイクロフォン素子と、
第2の音孔を有し、前記第2の音孔と前記第1の音孔とが対向するように前記プリント基板を収納するマイクロフォン筐体と、
前記第2の音孔と前記第1の音孔の間に配設されて、前記第1の音孔及び前記第2の音孔と連通する第3の音孔と、前記第3の音孔の一端側で前記プリント基板と当接する第1の当接面と、前記第3の音孔の他端側で前記マイクロフォン筐体と当接する第2の当接面を有する鍔部と、を有するブッシュと、
前記第3の音孔内に設けられ、前記第1の音孔の幅よりも大きな幅を有する導電性の第1のフィルタと、を備え、
前記マイクロフォン素子は、外部からの音波を、前記第2の音孔、前記第3の音孔及び前記第1の音孔を経由して収音し、
前記プリント基板は、アースランドを有し、
前記アースランド及び前記第1のフィルタが接触し、電気的に導通するマイクロフォン。
【請求項2】
前記第1のフィルタがソリッドフィルタである
請求項1に記載のマイクロフォン。
【請求項3】
前記第1のフィルタが撥水性材料により形成され、又は、前記第1のフィルタの少なくとも表面の一部に撥水加工が施されている
請求項1又は2に記載のマイクロフォン。
【請求項4】
前記第3の音孔を塞ぐようにして設けられた撥水性の第2のフィルタをさらに備えた
請求項1-3の何れか一項に記載のマイクロフォン。
【請求項5】
第1の音孔を有するプリント基板と、
前記第1の音孔を覆うように前記プリント基板上に実装された
MEMS工法によって形成されたマイクロフォン素子と、
第2の音孔を有し、前記第2の音孔と前記第1の音孔とが対向するように前記プリント基板を収納するマイクロフォン筐体と、
前記第2の音孔と前記第1の音孔の間に配設されて、前記第1の音孔及び前記第2の音孔と連通する第3の音孔と、前記第3の音孔の一端側で前記プリント基板と当接する第1の当接面と、前記第3の音孔の他端側で前記マイクロフォン筐体と当接する第2の当接面を有する鍔部と、を有するブッシュと、
前記ブッシュに設けられたフェルト貼り付け穴と、
前記フェルト貼り付け穴において、前記第3の音孔を塞ぐようにして設けられたフェルトと、を備え、
前記マイクロフォン素子は、外部からの音波を、前記第2の音孔、
前記フェルト貼り付け穴、前記第3の音孔及び前記第1の音孔
という順番で収音し、
前記フェルト貼り付け穴の深さは、前記フェルトの厚みよりも大きい、
車載用マイクロフォン。
【請求項6】
前記第3の音孔内に設けられた第1のフィルタをさらに備えた
請求項5に記載の
車載用マイクロフォン。
【請求項7】
前記第1のフィルタがソリッドフィルタである
請求項6に記載の
車載用マイクロフォン。
【請求項8】
前記第1のフィルタが導電性である
請求項6又は7に記載の
車載用マイクロフォン。
【請求項9】
前記第1のフィルタが撥水性材料により形成され、又は、前記第1のフィルタの少なくとも表面の一部に撥水加工が施されている
請求項6-8の何れか一項に記載の
車載用マイクロフォン。
【請求項10】
前記フェルトは、両面テープにより設置される
請求項5-9の何れか一項に記載の
車載用マイクロフォン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マイクロフォンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、騒音が大きい環境下でも、騒音を構造的に入りづらくする、あるいは、複数の素子を用いて指向性合成や雑音抑圧といった信号処理を行うことによって騒音を小さくするといった、より高性能のマイクロフォンモジュールが開発されている。このような高性能のマイクロフォンモジュールは、車両内でのハンズフリー通話用や音声認識用などとして普及してきている。例えば特許文献1に開示されているようなMEMS工法などを用いた面実装可能、かつ、小型・薄型の実装型マイクセンサーを活用した小型・薄型マイクロフォンモジュール構造の先行技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイク性能の向上には、マイクセンサーの音孔の周辺での音漏れの防止、複数経路での音の進入による騒音自体の侵入の防止、および、複数のマイクセンサーの信号を利用した信号処理性能の劣化の防止が必要となる。このため、シーリング機能を備えた構造、すなわち構成部品間がシーリングされた構造が必須となる。
【0005】
しかしながら、前述した従来の車載用マイクロフォンでは、マイクロフォンとベゼルとのシーリングを担うブッシュに関して次のような課題がある。つまり、ブッシュとベゼルとの接触面積を大きく取ることができず高いシーリング性能を確保できない、あるいは、前記接触面積を大きく取ろうとすると実装面積を大きくとることができず、小型化に支障が生じる。
【0006】
また、シーリングを強化するためには、ベゼルとケースとの間に、シーリング用の部品もしくは粘着剤などを設けることが可能であるが、部品点数の増加や作業工数の増加が発生し、コストアップの要因となる。
【0007】
更に、近年、例えばハンズフリーのワイドバンド化/スーパーワイドバンド化など、車載マイクロフォンに対して広帯域での周波数特性の平坦化が要求されている。しかし、車載マイクロフォンの小型化に伴い音道が細長くなるといった形状的な理由により共鳴が引き起こされてしまい、これが上記の周波数特性の要求を満たすうえで支障となる可能性がある。
【0008】
本開示の目的は、小型化を保持しつつ、シーリング性能を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決する主たる本開示は、第1の音孔を有するプリント基板と、前記第1の音孔を覆うように前記プリント基板上に実装されたマイクロフォン素子と、第2の音孔を有し、前記第2の音孔と前記第1の音孔とが対向するように前記プリント基板を収納するマイクロフォン筐体と、前記第2の音孔と前記第1の音孔の間に配設されて、前記第1の音孔及び前記第2の音孔と連通する第3の音孔と、前記第3の音孔の一端側で前記プリント基板と当接する第1の当接面と、前記第3の音孔の他端側で前記マイクロフォン筐体と当接する第2の当接面を有する鍔部と、を有するブッシュと、前記第3の音孔内に設けられ、前記第1の音孔の幅よりも大きな幅を有する導電性の第1のフィルタと、を備え、前記マイクロフォン素子は、外部からの音波を、前記第2の音孔、前記第3の音孔及び前記第1の音孔を経由して収音し、前記プリント基板は、アースランドを有し、前記アースランド及び前記第1のフィルタが接触し、電気的に導通するマイクロフォンである。
また、本開示は、第1の音孔を有するプリント基板と、前記第1の音孔を覆うように前記プリント基板上に実装されたマイクロフォン素子と、第2の音孔を有し、前記第2の音孔と前記第1の音孔とが対向するように前記プリント基板を収納するマイクロフォン筐体と、前記第2の音孔と前記第1の音孔の間に配設されて、前記第1の音孔及び前記第2の音孔と連通する第3の音孔と、前記第3の音孔の一端側で前記プリント基板と当接する第1の当接面と、前記第3の音孔の他端側で前記マイクロフォン筐体と当接する第2の当接面を有する鍔部と、を有するブッシュと、前記ブッシュに設けられたフェルト貼り付け穴と、前記フェルト貼り付け穴において、前記第3の音孔を塞ぐようにして設けられたフェルトと、を備え、前記マイクロフォン素子は、外部からの音波を、前記第2の音孔、前記第3の音孔及び前記第1の音孔を経由して収音し、前記フェルト貼り付け穴の深さは、前記フェルトの厚みよりも大きい、マイクロフォンである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、小型化を保持しつつ、シーリング性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施の形態1の車載用マイクロフォンの構造を示す模式図
【
図2】本開示の実施の形態2の車載用マイクロフォンの構造を示す模式図
【
図3】本開示の実施の形態3の車載用マイクロフォンの構造を示す模式図
【
図4】本開示の実施の形態1の変形例の車載用マイクロフォンの構造を示す模式図
【
図5】本開示の実施の形態3の変形例の車載用マイクロフォンの構造を示す模式図
【
図6】本開示の実施の形態3の変形例の車載用マイクロフォンの構造を示す模式図
【
図7】本開示の実施の形態1の変形例の車載用マイクロフォンの構造を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下に示す各実施の形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の各実施の形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除するものではない。また、各実施の形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに、各実施の形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0013】
また、各実施の形態を説明するための全図において、同一要素は原則として同一の符号を付し、その説明を省略することもある。
【0014】
尚、以下では、下音孔型実装マイクセンサー43が到来する音波を収音する方向を下方とした例を説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本開示の実施の形態1の車載用マイクロフォンの構造を示す模式図である。
【0016】
本実施形態の車載用マイクロフォンは、下音孔型実装マイクセンサー43(マイクロフォン素子)と、プリント基板41と、コネクタ10と、ブッシュ30と、パネル20と、ベゼル50とを備える。
【0017】
ここでは、車載用マイクロフォンは、パネル20とベゼル50とコネクタ10とで形成される収納空間内に、プリント基板41を収納する構成となっている。換言すると、パネル20、ベゼル50及びコネクタ10とによって、マイクロフォン筐体を構成している。
【0018】
より詳細には、プリント基板41には、収音用のプリント基板音孔46(第1の音孔)が形成され、プリント基板音孔46上に当該プリント基板音孔46を覆うように下音孔型実装マイクセンサー43が配設されている。下音孔型実装マイクセンサー43は、例えば、MEMS工法によって形成された表面実装型のシリコンマイクである。
【0019】
また、プリント基板41には、電気回路を形成するための実装部品42が配設され、当該実装部品42には、コネクタ10のコネクタピン11が接続されている。そして、下音孔型実装マイクセンサー43で生成された電気信号は、実装部品42及びコネクタピン11を介して、外部に出力される。
【0020】
プリント基板41の直下には、シーリング材としてブッシュ30が配設されている。ブッシュ30は、プリント基板音孔46と後述のベゼル音孔51(第2の音孔)との間に配設されている。
【0021】
ブッシュ30は、プリント基板音孔46の周囲に設置される。ブッシュ30には、その側面下端に外鍔状のブッシュシーリングリブ32(鍔部)が備えられている。
【0022】
ブッシュ30は、上下方向に延在するブッシュ音孔31(第3の音孔)と、プリント基板41の下面と当接する当接面81(第1の当接面)と、ベゼル50の下方側の内面と当接する当接面82(第2の当接面)とを有している。
【0023】
ブッシュ音孔31は、プリント基板音孔46と、プリント基板音孔46に対向配置されたベゼル音孔51とを連通させるように配設されている。そして、ベゼル音孔51に進入した音波は、当該ブッシュ音孔31とプリント基板音孔46を経由して、下音孔型実装マイクセンサー43に伝搬する。
【0024】
ブッシュ30は、プリント基板41との当接面81及びベゼル50との当接面82において、プリント基板41の下面及びベゼル50の下方側の内面と密着するように当接している。
【0025】
当接面81は、ブッシュ音孔31の上端側においてプリント基板41の下面と当接する部位である。この当接面81は、ブッシュ音孔31の周囲を囲繞するようにして、プリント基板41の下面と当接する。
【0026】
当接面82は、ブッシュ音孔31の下端側においてベゼル50の下方側の内面と当接する部位であり、ブッシュシーリングリブ32の下面である。当接面82は、ブッシュ音孔31の周囲を囲繞するようにして、ベゼル50の下方側の内面と当接する。当接面82は、外鍔状のブッシュシーリングリブ32の下面により構成される。
【0027】
ブッシュ30は、弾性材料で形成され、当接面81及び当接面82においては、プリント基板41の下面及びベゼル50の下方側の内面に密着している。これによって、ブッシュ30は、ベゼル音孔51から進入した音波がブッシュ音孔31から漏れ出たり、ベゼル音孔51以外の領域から進入した音波が回り込んで、ブッシュ音孔31及びプリント基板音孔46に入り込んだりすることを防止する。上述したとおり当接面82が、外鍔状のブッシュシーリングリブ32の下面により構成されるので、ブッシュシーリングリブ32を設けない場合に比べて、当接面82の面積すなわちブッシュ30とベゼル50との接触面を増加することができる。これにより、音波のベゼル音孔51からの漏出や、音波がベゼル音孔51以外の領域からの進入を効果的に防止できる。
【0028】
マイクロフォンモジュールの性能としては、ベゼル50を設けない構造であっても達成可能であるが、本実施形態の車載用マイクロフォンでは、上述のとおりパネル20の周囲に外装用部品としてベゼル50がさらに備えられている。車両用マイクロフォンモジュールなど、複数デザインに対応する必要があるマイクロフォンモジュールでは、外装用部品であるベゼル50を別途設置することが一般的である。
【0029】
ベゼル50内に設けられたベゼルスリット52に、コネクタ10に設けられた勘合爪12が嵌合されることにより、ベゼル50とコネクタ10とが組み付けられる。
【0030】
このとき、プリント基板41の下面と、パネル20の下側の内面との間の寸法は、ブッシュ30の外形の高さと同じか、あるいはブッシュ30の外形の高さのほうが大きくなるように設定されている。後者の場合は、ブッシュ30が圧縮されることとなる。
【0031】
更に、防塵や外観性の確保など、必要に応じて、ブッシュ30のベゼル50側を塞ぐように、フェルト25を、両面テープなどを使用して設置してもよい。ブッシュ30に設けられたフェルト貼り付け穴33(フェルト25を貼り付けるための凹所)の深さを、フェルト25の厚みよりも大きく設定することで、フェルト25によるシーリング性能を確保できる。フェルト25は、本発明の第2のフィルタを構成する。第2のフィルタは、音波を通し、防塵機能を有するものであればよく、フェルトに限定されない。
【0032】
なお、フェルト25を撥水性材料により形成することで、ブッシュ音穴31を経由して液体が下音孔型実装マイクセンサー43まで到達するのを抑制することができる。
【0033】
話者が発した声などの収音対象音は、本来、収音対象音経路を通って下音孔型実装マイクセンサー43に入る。すなわち、前述の収音対象音は、本来、ベゼル50に設けられたベゼル音孔51、ブッシュ30内に設置されたブッシュ音孔31、および、プリント基板音孔46をこの順に通過して下音孔型実装マイクセンサー43に入る。
【0034】
下音孔型実装マイクセンサー43に入った収音対象音は、下音孔型実装マイクセンサー43にて電気信号に変換される。その電気信号は、プリント基板41上の電気回路により、出力信号に変換され、コネクタピン11から出力される。
【0035】
この際、ブッシュシーリングリブ32とベゼル50との間のシーリング、換言すればブッシュシーリングリブ32における当接面82のシーリングが悪い場合、前述の本来の収音対象音経路以外から収音対象音が進入する。この場合、本来の収音対象音経路との経路差に起因して、収音対象音に位相ズレが発生することから、エコーが発生する。
【0036】
また、下音孔型実装マイクセンサー43が複数ある場合には、位相ずれが生じた音波により生成された信号が混在し、信号処理の過程でも、マイクロフォンモジュールの性能劣化を引き起こす。また、車両に対する実際の搭載例には、コネクタ10上部からノイズが進入する例もあり、当接面81あるいは当接面82からノイズが進入するおそれもある。そのため、上記のごとくノイズ低減のためのシーリング構造が、マイクロフォンモジュール性能の劣化を防ぐこととなる。
【0037】
本実施の形態では、ブッシュ30は、ブッシュシーリングリブ32を含めて、軟式材料(弾性材)にて製造し、かつ、プリント基板音孔46からベゼル音孔51へと連結されるブッシュ音孔31を有する。この結果、マイクモジュールの全体構造の小型・薄型化を実現した上で、当接面81あるいは当接面82のシーリングを高性能に達成し、かつ、シーリングを強化するためのベゼル50とパネル20との間のシーリング用の部品もしくは粘着剤などが不要であることから、安価かつ構成することが可能となる。
【0038】
なお、下音孔型実装マイクセンサー43が複数ある場合は、各下音孔型実装マイクセンサー43のプリント基板音孔46のそれぞれに対して、1組のベゼル音孔51およびブッシュ音孔31を設置するのが好ましい。これにより、下音孔型実装マイクセンサー43に入力される音がより均一になり、信号処理の性能がより向上する。この場合、複数のブッシュ音孔31をそれぞれ同じ形状とすることにより、下音孔型実装マイクセンサー43に入力される音がより均一となり、信号処理の性能がより向上する。
【0039】
なお、
図4に示すごとく、
図1示す構成よりもベゼル音孔51を大きく取り、ブッシュ30の当接面82以外の部分にフェルト25を貼り付け、ブッシュ音孔31を小さくしてもよい。これにより、当接面81あるいは当接面82のシーリングを高性能に達成したうえで、車載マイクロフォンの更なる小型化が可能となる。すなわち、
図4に示す構成では、ベゼル音孔51を、ブッシュ音孔31をよりも大きくすることで、フェルト25を直接にブッシュ30に貼り付けることができ、フェルト25が、ブッシュ30とベゼル50との間に介在しない。したがって、フェルト25とブッシュ30とのシーリング性を向上でき、車載マイクロフォンをさらに小型化できる。
【0040】
また、プリント基板41、実装部品42及び下音孔型実装マイクセンサー43からなる実装マイクセンサーを使用することにより、リード線などのマイクープリント基板との接続用部品が不要となり、部品点数の省略が可能となる。したがって、マイクモジュール全体構造の小型・薄型化をした上で、マイク性能向上のためのベゼル-マイクモジュール間のシーリングも同時に達成できる。
【0041】
また、
図7に示すごとく、ベゼル50にザグリ加工を行って凹所53を設け、この凹所53の下面を当接面82としてもよい。これにより、ブッシュ30がより下方に配置されるようになり、ブッシュ30上の下音孔型実装マイクセンサー43をベゼル50の下側の表面に近づけることができる。すなわち、収音対象音経路を短くして、収音対象音経路による周波数特性への影響を低減できる。
【0042】
かつ、部品点数や作業工数を増やすことがないため、高性能、かつ、安価なマイクロフォンを提供することが可能となる。
【0043】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2の車載用マイクロフォンの構造を示す模式図である。
【0044】
図2に示す実施の形態2の車載用マイクロフォンでは、フェルト25(
図1参照)に替えて、ブッシュ音孔31内に、ソリッドフィルタ60(第1のフィルタ)を有している。ここで、ソリッドフィルタ60とは、微細空洞を有し、比較的硬く形状が一定の固体により形成される音響フィルタであり、例えば微細空洞を有した焼結体である。微細空洞を有した物体は、それを通過する音の高域特性を下げる効果がある。したがって、ブッシュ音孔31内にソリッドフィルタ60を設ければ、例えば車載用マイクロフォンの小型化に伴いブッシュ音孔31などの音道が細くなった場合、あるいは、長くなった場合に発生する高域での共鳴を相殺する効果が得られる。すなわち、下音孔型実装マイクセンサー43に印加される音の、特に高域に対する周波数特性を調整して周波数特性を平坦化できる。したがって、車載マイクロフォンを使用するアプリケーションからのマイクへの広帯域での周波数特性の平坦化の要求に対して、ソリッドフィルタ60を設けることは有効である。また、ソリッドフィルタ60は、形状が一定しているため、布により形成された音響フィルタに比べて取り扱いが容易である。なお、ソリッドフィルタ60に替えて固体ではない軟性のフィルタを使用してもよい。
【0045】
なお、周波数の高域の振幅を下げる手法として、実施の形態1においてフェルト25に通気度の低いものを使用することも考えられるが、フェルト25を使用してシーリング性能を保持するためには、フェルト貼り付け穴33が必要となる。本実施の形態2の車載マイクロフォンでは、フェルト25に替えてソリッドフィルタ60を使用するので、フェルト貼り付け穴33が不要になる。したがって、本実施の形態2の車載マイクロフォンは、フェルト貼り付け穴33の面積分だけ、小型化に対して有利となる。すなわち、本実施の形態2の車載マイクロフォンは、実施の形態1と同様のシーリング性能と信号処理との各優位性を保持した上で、車載マイクロフォンに印加される音の周波数特性の良好な調整および車載マイクロフォンの更なる小型化を達成できる。
【0046】
なお、ソリッドフィルタ60を、撥水性の材料により形成することで、もしくは、ソリッドフィルタ60の少なくともベゼル側の面61(以下「ソリッドフィルタベゼル側面61」という)に撥水加工を施すことで、ブッシュ音穴31経由での下音孔型実装マイクセンサー43への液体の侵入を抑制できる。
【0047】
(実施の形態3)
図3は、本開示の実施の形態3の車載用マイクロフォンの構造を示す模式図である。
【0048】
図3に示す本実施の形態3の車載用マイクロフォンでは、ソリッドフィルタ60を金属などの導電性材質とする、もしくは、ソリッドフィルタ60に金属メッキするなどしてその表面を導電性としている。
【0049】
更にプリント基板41に設けたプリント基板アースランド47とソリッドフィルタ60と接触させもしくは接合し、ソリッドフィルタ60とプリント基板アースランド47とを電気的に導通させている。
【0050】
この構造により、実施の形態2の効果に加えて、ソリッドフィルタ60に電波ノイズや静電気に対するシールド性能を付与して、ブッシュ音孔31側から侵入してくる電波ノイズあるいは静電気に対して耐性を付与できる効果が得られる。
【0051】
なお、ソリッドフィルタ60を導電性かつ撥水性とする、あるいは、少なくともソリッドフィルタベゼル側面61に撥水加工処理を施すことで、液体がブッシュ音孔31経由して下音孔型実装マイクセンサー43に侵入することを抑制できる。
【0052】
なお、
図5または
図6に示す車載用マイクロフォンは、
図3に示す実施の形態3の構成に対して、撥水性材料で形成したフェルト25をブッシュ音孔31のベゼル50側を塞ぐように設けたものである。
【0053】
換言すれば、
図5に示す車載用マイクロフォンは、
図1に示す車載用マイクロフォンの構成に対して、フェルト25を撥水性とし、プリント基板41に設けたプリント基板アースランド47と、ブッシュ音穴31内に設けた導電性のソリッドフィルタ60とを電気的に導通させたものである。また、
図6に示す車載用マイクロフォンは、
図4に示す車載用マイクロフォンの構成に対して、フェルト25を撥水性とし、プリント基板41に設けたプリント基板アースランド47と、ブッシュ音穴31内に設けた導電性のソリッドフィルタ60とを電気的に導通させたものである。
【0054】
図5および
図6に示す車載用マイクロフォンにおいても、ブッシュ音孔31側から侵入してくる電波ノイズあるいは静電気に対して耐性を付与でき、かつ、ブッシュ音穴31経由にて下音孔型実装マイクセンサー43に液体が侵入することを抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示の車載用マイクロフォンは、例えば車両内などの高性能かつ小型・薄型を必要とされるマイクロフォンモジュールなどに利用される。
【符号の説明】
【0056】
10 コネクタ
11 コネクタピン
20 パネル
22 勘合爪
25 フェルト(第2のフィルタ)
30 ブッシュ
31 ブッシュ音孔(第3の音孔)
32 ブッシュシーリングリブ(鍔部)
33 フェルト貼り付け穴
41 プリント基板
42 実装部品
43 下音孔型実装マイクセンサー(マイクロフォン素子)
46 プリント基板音孔(第1の音孔)
47 プリント基板アースランド
50 ベゼル
51 ベゼル音孔(第2の音孔)
52 ベゼルスリット
53 凹所
60 ソリッドフィルタ(第1のフィルタ)
61 ソリッドフィルタベゼル側面
81 当接面(第1の当接面)
82 当接面(第2の当接面)