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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20230901BHJP
   H01M 8/04007 20160101ALI20230901BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20230901BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20230901BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04 J
H01M8/04007
H01M8/04746
H01M8/10 101
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019090924
(22)【出願日】2019-05-13
(65)【公開番号】P2019216090
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2018111805
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】フアヨル マリン
(72)【発明者】
【氏名】田村 聡
(72)【発明者】
【氏名】北沢 暢祐
(72)【発明者】
【氏名】林 隆夫
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/118481(WO,A1)
【文献】特開2010-282907(JP,A)
【文献】特表2005-528552(JP,A)
【文献】特開2015-222708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04
H01M 8/04007
H01M 8/04746
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード及びアノードを有し、前記カソードにおいてメディエータを還元させることによって電力を生成する燃料電池と、
前記カソードによって還元された前記メディエータを酸化させる再生器と、
前記カソードと前記再生器とを連通させ、前記カソードから排出された前記メディエータを前記再生器に導く第一経路と、
前記再生器と前記カソードとを連通させ、前記再生器において酸化された前記メディエータを前記カソードに戻す第二経路と、
前記第一経路における前記メディエータを含む第一流体と、前記第二経路における前記メディエータを含む第二流体とを熱交換させる第一熱交換器とを備え、
前記第二経路の少なくとも一部は、前記第一経路を形成する材料の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料で形成され、
前記再生器に酸化剤を供給する酸化剤供給経路と、
前記酸化剤供給経路における前記酸化剤と、前記第二経路における前記メディエータを含む第二流体とを熱交換させる第二熱交換器と、をさらに備えた、
燃料電池システム。
【請求項2】
前記第二経路から1秒間に放出される熱量は、前記第一経路から1秒間に放出される熱量よりも大きい、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記第一経路の少なくとも一部を覆う断熱材をさらに備えた、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記第二経路上に配置され、前記再生器において酸化された前記メディエータを貯留するタンクをさらに備えた、請求項1~のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記タンクに接続され、前記メディエータを希釈する液体を前記タンクに供給する給液経路と、
前記給液経路における前記液体の流量を調整する制御器と、をさらに備えた、
請求項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記第二経路は、前記再生器と前記タンクとを接続している上流経路を含み、
前記上流経路は、前記再生器から前記タンクまで延びている第一部位と、前記メディエータを前記第一部位の少なくとも一部を迂回させつつ冷却させる第二部位と、を有し、
前記制御器は、前記第一部位における前記メディエータの流量及び前記第二部位における前記メディエータの流量を調整する、
請求項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記再生器の少なくとも一部を覆う断熱材をさらに備えた、請求項1~のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記再生器の内部を加熱するヒータをさらに備えた、請求項1~のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化還元対を含有している陰極液を用いた燃料電池システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、燃料電池スタック及び再生セクションを備えた燃料電池アセンブリが記載されている。燃料電池スタックは膜電極アセンブリを備え、膜電極アセンブリはアノード及びカソードを備えている。酸化還元対を含有している陰極液は、燃料電池スタックに供給され、膜電極アセンブリのカソードに流動接触した後、再生セクションに供給される。再生セクションには、供給デバイスによって酸化剤が供給される。陰極液中の酸化還元対は、カソードにおける反応によって還元される。陰極液は、カソードで反応した後、カソードから遠ざかり再生セクションに向かう。再生セクションに供給された酸化剤は、陰極液中の酸化還元対を少なくとも部分的に酸化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2017-500692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、燃料電池の耐用期間を延ばす観点から改良の余地を有する。そこで、本開示は、燃料電池の耐用期間を延ばすのに有利な燃料電池システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
カソード及びアノードを有し、前記カソードにおいてメディエータを還元させることによって電力を生成する燃料電池と、
前記カソードによって還元された前記メディエータを酸化させる再生器と、
前記カソードと前記再生器とを連通させ、前記カソードから排出された前記メディエータを前記再生器に導く第一経路と、
前記再生器と前記カソードとを連通させ、前記再生器において酸化された前記メディエータを前記カソードに戻す第二経路と、
前記第一経路における前記メディエータを含む第一流体と、前記第二経路における前記メディエータを含む第二流体とを熱交換させる第一熱交換器と、を備えた、
燃料電池システムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
上記の燃料電池システムは、燃料電池の耐用期間を延ばすのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の燃料電池システムの一例を示す図である。
図2図2は、本開示の燃料電池システムの別の一例を示す図である。
図3図3は、本開示の燃料電池システムのさらに別の一例を示す図である。
図4図4は、本開示の燃料電池システムのさらに別の一例を示す図である。
図5図5は、本開示の燃料電池システムのさらに別の一例を示す図である。
図6図6は、本開示の燃料電池システムのさらに別の一例を示す図である。
図7図6の燃料電池システムにおける処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見)
固体高分子型燃料電池等の燃料電池のカソードにおける酸素の還元反応の反応速度は遅く、このことは燃料電池における発電のための反応の効率を低下させる主たる要因である。このため、燃料電池において、還元されやすいメディエータを含む溶液をカソードに供給することが考えられる。この場合、カソードにおいて白金を不要にできる。
【0010】
カソードにおいて還元されたメディエータは、酸化剤によって酸化されることによって再生され、カソードに再度供給できる。これにより、メディエータの還元とメディエータの再生とを繰り返し行うことができる。一方、メディエータの酸化に伴う発熱により、カソードに向かって流れる、酸化されたメディエータを含む溶液は高温になりやすい。燃料電池には、高分子電解質膜等の構成要素が含まれる。本発明者らは、カソードに供給されるメディエータを含む溶液の温度が高いと、高分子電解質膜等の構成要素が熱によって劣化しやすく、燃料電池の耐用期間が延びにくいことを新たに見出した。そこで、本発明者らは、メディエータを用いつつ燃料電池の耐用期間を延ばすのに有利な技術について日夜検討を重ねた。その結果、本発明者らは、酸化されたメディエータをカソードに導く経路に関する工夫を新たに見出し、本開示の燃料電池システムを案出した。
【0011】
(本開示に係る態様の概要)
本開示の第1態様に係る燃料電池システムは、
カソード及びアノードを有し、前記カソードにおいてメディエータを還元させることによって電力を生成する燃料電池と、
前記カソードによって還元された前記メディエータを酸化させる再生器と、
前記カソードと前記再生器とを連通させ、前記カソードから排出された前記メディエータを前記再生器に導く第一経路と、
前記再生器と前記カソードとを連通させ、前記再生器において酸化された前記メディエータを前記カソードに戻す第二経路と、
前記第一経路における前記メディエータを含む第一流体と、前記第二経路における前記メディエータを含む第二流体とを熱交換させる第一熱交換器と、を備える。
【0012】
第1態様によれば、第二経路は、再生器において酸化されたメディエータをカソードに戻す。このため、カソードに供給されるメディエータの温度が低減され、燃料電池の構成要素が劣化しにくい。これにより、燃料電池システムにおいて、燃料電池の耐用期間が延びやすい。
【0013】
具体的には、第二経路におけるメディエータを含む第二流体の温度は、再生器におけるメディエータの酸化に伴う発熱により、第一経路におけるメディエータを含む第一流体の温度より高い。このため、第一熱交換器における第一流体と第二流体との熱交換により第二流体が冷却される。その結果、カソードに供給されるメディエータの温度が低下し、燃料電池の耐用期間が延びやすい。加えて、第一熱交換器における第一流体と第二流体との熱交換により第一流体が加熱され、再生器に供給されるメディエータの温度が高まりやすい。このため、再生器の内部の温度が所望の温度に保たれやすく、メディエータの酸化反応の反応速度を高めることができる。
【0014】
本開示の第2態様において、例えば、第1態様に係る燃料電池システムでは、前記第二経路から1秒間に放出される熱量は、前記第一経路から1秒間に放出される熱量よりも大きい。第2態様によれば、第二経路から放出される熱量が大きく、第二経路においてメディエータが適切に冷却されやすい。これにより、カソードに供給されるメディエータの温度がより確実に低下し、燃料電池の耐用期間が延びやすい。加えて、第一経路から放出される熱量が少なく、再生器に供給されるメディエータの温度が低下しにくい。これにより、再生器の内部の温度が所望の温度に保たれやすく、メディエータの酸化反応の反応速度を高めることができる。
【0015】
本開示の第3態様において、例えば、第1態様又は第2態様に係る燃料電池システムでは、前記第二経路の少なくとも一部は、前記第一経路を形成する材料の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料で形成されている。第3態様によれば、第二経路におけるメディエータの熱が第二経路の外部に伝わりやすく、第二経路におけるメディエータが冷却されやすい。これにより、カソードに供給されるメディエータの温度がより確実に低減され、燃料電池の耐用期間が延びやすい。
【0016】
本開示の第4態様において、例えば、第1態様~第3態様のいずれか1つの態様に係る燃料電池システムは、前記第一経路の少なくとも一部を覆う断熱材をさらに備える。第4態様によれば、断熱材によって、第一経路においてメディエータの温度が低下しにくい。その結果、再生器の内部の温度が所望の温度に保たれやすく、メディエータの酸化反応の反応速度を高めることができる。
【0017】
本開示の第5態様において、例えば、第1態様~第4態様のいずれか1つの態様に係る燃料電池システムは、前記再生器に酸化剤を供給する酸化剤供給経路と、前記酸化剤供給経路における前記酸化剤と、前記第二経路における前記メディエータを含む第二流体とを熱交換させる第二熱交換器と、をさらに備える。多くの場合、酸化剤供給経路を通って再生器に供給される酸化剤(例えば、空気)の温度は、第二経路におけるメディエータを含む第二流体の温度より低い。このため、第二熱交換器における酸化剤と第二流体との熱交換により第二流体が冷却される。その結果、カソードに供給されるメディエータの温度が低下し、燃料電池の耐用期間が延びやすい。加えて、第二熱交換器における酸化剤と第二流体との熱交換により酸化剤が加熱され、再生器に供給される酸化剤の温度を高めることができる。このため、再生器の内部の温度が所望の温度に保たれやすく、メディエータの酸化反応の反応速度を高めることができる。
【0018】
本開示の第6態様において、例えば、第1態様~第5態様のいずれか1つの態様に係る燃料電池システムは、前記第二経路上に配置され、前記再生器において酸化された前記メディエータを貯留するタンクをさらに備える。第6態様によれば、再生器において酸化されたメディエータをタンクに貯留できるので、再生器を小型化しやすい。これにより、再生器の内部を所望の温度に保つために再生器の外部から供給すべきエネルギー量が少なくて済み、燃料電池システムの効率を高めることができる。
【0019】
本開示の第7態様において、例えば、第6態様に係る燃料電池システムは、前記タンクに接続され、前記メディエータを希釈する液体を前記タンクに供給する給液経路と、前記給液経路における前記液体の流量を調整する制御器と、をさらに備える。第7態様によれば、必要に応じて給液経路によってタンクに供給された液体によってメディエータを希釈できるので、メディエータの濃度を所望の範囲に調整できる。加えて、タンクにおけるメディエータの温度を所望の範囲に調整できる。
【0020】
本開示の第8態様において、例えば、第7態様に係る燃料電池システムでは、前記第二経路は、前記再生器と前記タンクとを接続している上流経路を含み、前記上流経路は、前記再生器から前記タンクまで延びている第一部位と、前記メディエータを前記第一部位の少なくとも一部を迂回させつつ冷却させる第二部位と、を有し、前記制御器は、前記第一部位における前記メディエータの流量及び前記第二部位における前記メディエータの流量を調整する。第8態様によれば、第一部位におけるメディエータの流量及び第二部位におけるメディエータの流量の調整により、タンクに供給されるメディエータの温度を所望の範囲に調整できる。
【0021】
本開示の第9態様において、例えば、第1態様~第8態様のいずれか1つの態様に係る燃料電池システムは、前記再生器の少なくとも一部を覆う断熱材をさらに備える。第9態様によれば、断熱材によって再生器の内部が所望の温度に保たれやすい。加えて、再生器の内部を所望の温度に保つために再生器の外部から供給すべきエネルギー量が少なくて済み、燃料電池システムの効率が高まりやすい。
【0022】
本開示の第10態様において、例えば、第1態様~第9態様のいずれか1つの態様に係る燃料電池システムは、前記再生器の内部を加熱するヒータをさらに備える。第10態様によれば、必要に応じてヒータを発熱させることによって、再生器の内部を所望の温度に保つことができる。
【0023】
(実施形態)
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は例示に過ぎず、本開示の燃料電池システムは以下の実施形態に限定されない。
【0024】
図1に示す通り、燃料電池システム1aは、燃料電池10と、再生器20と、第一経路21と、第二経路22とを備えている。燃料電池10は、カソード11及びアノード12を有し、カソード11においてメディエータを還元させることによって電力を生成する。再生器20は、カソード11によって還元されたメディエータを酸化させる。第一経路21は、カソード11と再生器20とを連通させており、カソード11から排出されたメディエータを再生器20に導く。第二経路22は、再生器20とカソード11とを連通させており、再生器20において酸化されたメディエータを冷却させながらカソード11に戻す。
【0025】
燃料電池システム1aにおいて、燃料及びメディエータを再生するための酸化剤は、特に限定されない。燃料電池システム1aにおいて、例えば、燃料として水素が用いられ、酸化剤として空気が用いられる。図1において、実線の矢印は燃料の流れを示し、破線の矢印はメディエータの流れを示し、一点鎖線の矢印は酸化剤の流れを示す。
【0026】
燃料電池10は、例えば、固体高分子形燃料電池である。カソード11の電極の材料は、固体高分子形燃料電池のカソードの電極の材料として公知の材料でありうる。なお、カソード11の電極の材料は、通常の固体高分子形燃料電池のカソードの電極の材料に含まれている白金を含んでいなくてもよい。なぜなら、メディエータは、カソード11において酸素よりも還元しやすく、酸化剤を活性化させる触媒が不要だからである。アノード12の電極の材料は、固体高分子形燃料電池のアノードの電極の材料として公知の材料でありうる。燃料電池10は、典型的には、電解質膜13をさらに備える。電解質膜13は、カソード11とアノード12との間に配置され、プロトン伝導性を有する。電解質膜13によってカソード11とアノード12とが仕切られている。電解質膜13の材料は、ナフィオン(登録商標)等の固体高分子形燃料電池の電解質の材料として公知の材料でありうる。
【0027】
燃料電池10の運転期間中に、アノード12には、例えば、水素ガスを含む燃料ガスが供給される。水素は、アノード12においてプロトンH+と電子e-とに分離される。その後、プロトンは電解質膜13を伝ってカソード11に移動し、電子e-は外部回路(図示省略)を通ってカソード11に移動する。燃料電池10の運転期間中に、カソード11には、例えば、メディエータを含む溶液が供給される。この溶液において、メディエータは酸化体Medoxの状態である。メディエータの酸化体Medoxはカソード11において還元され、メディエータは還元体Medredに変化し、燃料電池10の外部に移動する。メディエータの還元体Medredを含む溶液は、第一経路21を通って再生器20に供給される。再生器20において、酸化剤の有効成分である酸素によってメディエータの還元体Medredが酸化され、メディエータは酸化体Medoxに変化する。これにより、メディエータが再生される。再生器20において再生されたメディエータは、第二経路22を通ってカソード11に供給される。
【0028】
メディエータの還元体Medredの酸化は、典型的には発熱反応である。このため、再生器20の内部の温度は高温(例えば、100℃)になりやすい。このため、仮に、再生器20において再生されたメディエータを含む溶液の温度が保たれたままその溶液がカソード11に供給されると、電解質膜13等の燃料電池10の構成要素が劣化しやすい。しかし、燃料電池システム1aの第二経路22は、再生器20において酸化されたメディエータを冷却させながらカソード11に導く。このため、カソード11に供給されるメディエータを含む溶液の温度が所定の温度(例えば、80℃以下)に低下し、燃料電池10の構成要素が劣化しにくい。その結果、燃料電池システム1aにおいて、燃料電池10の耐用期間が延びやすい。また、メディエータを含む溶液によって燃料電池10を冷却することも可能である。
【0029】
例えば、燃料電池システム1aにおいて、第二経路22から1秒間に放出される熱量は、第一経路21から1秒間に放出される熱量よりも大きい。これにより、第二経路22がより適切に冷却され、カソード11に供給されるメディエータを含む溶液の温度が適切な温度になりやすい。その結果、燃料電池10の耐用期間が延びやすい。再生器20においてメディエータの酸化の反応速度を高める観点から、再生器20の内部の温度が高いことが有利である。燃料電池システム1aの通常運転において第一経路21から放出される熱量が少ないので、再生器20に供給されるメディエータを含む溶液の温度が低下しにくく、再生器20の内部の温度が所望の温度に保たれやすい。その結果、再生器20においてメディエータの酸化反応の反応速度が高まりやすい。例えば、燃料電池システム1aの通常運転において、第二経路22から1秒間に放出される熱量は、第一経路21から1秒間に放出される熱量よりも大きい。なお、燃料電池システム1aの通常運転において、所定の出力(例えば、100W以上)での発電が所定期間継続される。
【0030】
燃料電池システム1aにおいて、例えば、第二経路22の少なくとも一部は、第一経路21を形成する材料の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料で形成されている。これにより、第二経路22におけるメディエータを含む溶液の熱が第二経路22の外部に伝わりやすく、メディエータを含む溶液が第二経路22において冷却されやすい。これにより、カソード11に供給されるメディエータの温度がより確実に低減され、燃料電池10の耐用期間が延びやすい。なお、第一経路21を定める管の材料の熱伝導率及び第二経路22を定める管の材料の熱伝導率のそれぞれは、例えば、25℃における値を意味する。
【0031】
燃料電池システム1aにおいて、例えば、第二経路22の長さは、第一経路21の長さよりも長い。この場合、第二経路22において、メディエータを含む溶液から放出される熱量が大きくなりやすく、第二経路22においてメディエータを含む溶液が適切に冷却されやすい。例えば、第二経路22を定める管の表面積は、第一経路21を定める管の表面積よりも大きい。この場合も、第二経路22において、メディエータを含む溶液から放出される熱量が大きくなりやすい。第二経路22を定める管は金属材料でできていてもよい。第二経路22を定める管にはフィンが取り付けられていてもよい。第二経路22を定める管の少なくとも一部は、空気が通過可能な空間と接していてもよい。例えば、燃料電池システム1aは、吸気口及び排気口を有する筐体(図示省略)を備え、第二経路22を定める管の少なくとも一部がその筐体の吸気口から排気口に延びる空気の流路に接していてもよい。燃料電池システム1aは、例えば、ファン又はブロワ(図示省略)をさらに備えていてもよい。例えば、ファン又はブロワの作動により、第二経路22を定める管の少なくとも一部を横切る空気の流れが生じる。
【0032】
メディエータは、酸素ガスよりも還元されやすく、還元と酸化とを繰り返すことができる物質である限り、特に制限されない。メディエータは、例えば、ポリオキソメタレート、金属イオン、又は金属錯体である。ポリオキソメタレートとして、リンモリブデン酸、リンバナジウム酸、リンタングステン酸などを使用できる。また、ポリオキソメタレートは、例えば、バナジウム、モリブデン、及びタングステン等の金属を有している。金属錯体としては、ポルフィリン金属錯体、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル)を配位子として有する金属錯体、オキシダーゼ又はその誘導体を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。オキシダーゼとしては、ガラクトースオキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどが挙げられる。
【0033】
メディエータは、典型的には、溶液に含まれた状態でカソード11と再生器20との間を循環する。溶液におけるメディエータの濃度が高いほど、カソード11においてメディエータが還元される反応の反応速度が高くなる。このため、水等の所定の溶媒に対して、メディエータが使用温度において高い溶解度を示すことが有利である。複数の種類のメディエータがメディエータ溶液に含まれていてもよい。溶媒の種類も特に限定されない。メディエータの溶液における溶媒は例えば水であり、メディエータの溶液には、硫酸及びリン酸などの酸成分が含まれていてもよい。メディエータの溶液のpHは酸性であってもよい。メディエータの溶液に適切な電解質が含まれていてもよい。
【0034】
図1に示す通り、燃料電池システム1aは、例えば、ポンプ30をさらに備えている。ポンプ30の作動により、メディエータを含む溶液が第一経路21を通って再生器20に導かれ、かつ、メディエータを含む溶液が第二経路22を通ってカソード11に戻る。ポンプ30は、例えば、第二経路22上に配置されている。ポンプ30は、第一経路21上に配置されてもよい。ポンプ30は、例えば、ピストンポンプ、プランジャポンプ、ギヤポンプ、及びベーンポンプ等の容積式ポンプである。第一経路21又は第二経路22上には、メディエータの流量を調整するためのレギュレータが配置されていてもよい。
【0035】
燃料電池システム1aは、例えば、送り路15a及び回収路15bをさらに備えている。送り路15a及び回収路15bのそれぞれはアノード12に接続されている。送り路15aを通って水素を含む燃料がアノード12に供給され、未反応の燃料が回収路15bを通って燃料電池10から回収される。
【0036】
燃料電池システム1aは、例えば、酸化剤供給経路45をさらに備えている。酸化剤供給経路45によって、再生器20に酸化剤が導かれる。燃料電池システム1aは、例えば、ブロワ40をさらに備え、ブロワ40によって送り出された空気が酸化剤供給経路45を通って再生器20に供給される。例えば、ブロワ40の作動により、外気が取り込まれ、酸化剤供給経路45に送り出される。
【0037】
再生器20は、メディエータの還元体を含む溶液と酸化剤とを接触させることができる限り、特定の形態に限定されない。再生器20は、槽型の反応器として構成されていてもよいし、管型の反応器として構成されていてもよい。再生器20において、例えば、メディエータを含む溶液が貯留されている。この場合、酸化剤供給経路45を通過した空気は、例えば、再生器20に貯留されたメディエータを含む溶液中に吹き込まれる。メディエータの溶液は、噴流又は微細な液滴(ミスト)として存在していてもよい。この場合、例えば、メディエータの溶液の噴流又は微細な液滴に向かって酸化剤供給経路45の出口から空気が吹き出される。これにより、メディエータの溶液と再生器20の内部に存在するガスとの界面の面積が大きくなり、メディエータの酸化の反応速度が高まりやすい。
【0038】
燃料電池システム1aは、例えば、ガス排出経路47をさらに備えている。再生器20では、メディエータの酸化に伴い水が生成される。上記の通り、再生器20の内部は比較的高い温度に保たれうるので、生成された水の一部は蒸発して水蒸気になる。再生器20における水蒸気は、再生器20から排出され、ガス排出経路47を流れる。これにより、再生器20の内部のメディエータの溶液におけるメディエータの濃度の低下を防止できる。その結果、燃料電池10における発電効率の低下を防止できる。ガス排出経路47を通じて、未反応の酸化剤が再生器20の外部へと排出されてもよい。
【0039】
図1に示す通り、燃料電池システム1aは、例えばヒータ25をさらに備えている。ヒータ25は、再生器20の内部を加熱する。ヒータ25によって再生器20の内部を加熱することにより、メディエータの酸化に伴い生成された水が蒸発しやすい。なお、メディエータは通常揮発しない。これにより、再生器20から水を排出でき、再生器20の内部のメディエータの溶液におけるメディエータの濃度の低下を阻止できる。また、再生器20の内部の温度が所望の範囲に保たれ、メディエータの酸化反応の反応速度が高まる。
【0040】
ヒータ25の構成は、再生器20の内部を加熱できる限り特に制限されない。ヒータ25は、例えば、抵抗加熱式の電気ヒータ又は加熱用の熱媒体の流路を有するヒータでありうる。ヒータ25は、例えば、再生器20の外面に取り付けられている。例えば、ヒータ25は、再生器20の外面の少なくとも一部を覆っている。ヒータ25は、再生器20の外面の少なくとも一部を取り囲んでいてもよい。ヒータ25は、再生器20の内部に配置されていてもよい。燃料電池システム1aは、例えば、撹拌機(図示省略)をさらに備えていてもよい。この場合、撹拌機は、再生器20の内部のメディエータの溶液を撹拌する。これにより、再生器20の内部のメディエータの溶液の温度が空間的に均一に保たれやすい。
【0041】
ヒータ25は、再生器20においてメディエータの酸化がなされている期間中に常に発熱している必要はない。メディエータの酸化は、多くの場合発熱反応である。メディエータの酸化に伴う発熱により、メディエータの溶液におけるメディエータの濃度の低下を防止する観点から、再生器20の内部の温度が適切に保たれているのであれば、ヒータ25は停止していてもよい。一方、例えば、外気温の低下等の理由により、再生器20の内部の温度が所望の範囲に保つことが難しい場合には、ヒータ25が発熱する。燃料電池システム1aは、温度センサ(図示省略)をさらに備えていてもよい。この温度センサは、例えばサーミスタを利用した温度センサ又は熱電対を利用した温度センサであり、再生器20の内部の温度を検出する。例えば、温度センサによって検出された温度に基づいて、ヒータ25の発熱が制御される。場合によっては、ヒータ25は省略可能である。
【0042】
燃料電池システム1aは、様々な観点から変更可能である。例えば、燃料電池システム1aは、酸化剤供給経路45を流れる酸化剤とガス排出経路47を流れるガスとを熱交換させる熱交換器をさらに備えるように変更されてもよい。酸化剤供給経路45を流れる酸化剤とガス排出経路47を流れるガスとの熱交換により、酸化剤供給経路45を流れる酸化剤を加熱でき、再生器20に供給される酸化剤の温度を高めることができる。その結果、メディエータの酸化反応の反応速度が高まりやすい。加えて、酸化剤供給経路45を流れる酸化剤とガス排出経路47を流れるガスとの熱交換により、ガス排出経路47を流れるガスが冷却され、このガスを安全に燃料電池システム1aの外部に排出できる。この場合、熱交換器と再生器20との間で酸化剤供給経路45の少なくとも一部を覆う断熱材が設けられていてもよく、再生器20と熱交換器の間でガス排出経路47の少なくとも一部を覆う断熱材が設けられていてもよい。例えば、燃料電池システム1aは、この熱交換器とともに、酸化剤供給経路45を流れる酸化剤を加熱するヒータをさらに備えていてもよい。この場合、このヒータは、例えば、熱交換器における酸化剤の出口と第一経路の出口との間を流れる酸化剤を加熱する。
【0043】
ガス排出経路47を流れるガスには水蒸気が含まれる。このため、上記の変形例によれば、熱交換器において凝縮水が生成されうる。このように、熱交換器は、凝縮器として機能しうる。例えば、熱交換器には排水経路が接続されており、凝縮水は排水経路を通って熱交換器の外部に排出される。凝縮水は、燃料電池システム1aにおける所定のプロセスに利用されてもよい。
【0044】
燃料電池システム1aは、図2に示す燃料電池システム1b、図3に示す燃料電池システム1c、図4に示す燃料電池システム1d、図5に示す燃料電池システム1e、又は図6に示す燃料電池システム1fのように変更されてもよい。燃料電池システム1b~1fは、特に説明する場合を除き、燃料電池システム1aと同様に構成されている。燃料電池システム1aの構成要素と同一又は対応する燃料電池システム1b~1fの構成要素には、同一の符号を付し詳細な説明を省略する。燃料電池システム1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、燃料電池システム1b~1fにも当てはまる。
【0045】
図2に示す通り、燃料電池システム1bは、第一断熱材26をさらに備えている。第一断熱材26は、第一経路21の少なくとも一部を覆っている。空気層をなす中空の部材も第一断熱材26に該当しうる。第一断熱材26によって、第一経路21においてメディエータを含む溶液の温度が低下しにくい。その結果、再生器20の内部の温度が所望の温度に保たれやすく、メディエータの酸化反応の反応速度が高まりやすい。加えて、再生器20の内部を所望の温度に保つために再生器20の外部から供給すべきエネルギー量が少なくて済み、燃料電池システム1bの効率が高まりやすい。第一断熱材26は、第一経路21の全体を覆っていてもよい。ここで、「覆っている」は、断熱材が第一経路21をなす部材と接して断熱される構成と、断熱材が空間又は部材を介して第一経路21を覆う構成とを含みうる。
【0046】
図2に示す通り、燃料電池システム1bは、例えば、第二断熱材27をさらに備えている。第二断熱材27は、再生器20の少なくとも一部を覆っている。空気層をなす中空の部材も第二断熱材27に該当しうる。第二断熱材27によって再生器20の内部が所望の温度に保たれやすい。加えて、再生器20の内部を所望の温度に保つために再生器20の外部から供給すべきエネルギー量が少なくて済み、燃料電池システム1bの効率が高まりやすい。第二断熱材27は、再生器20の全体を覆っていてもよい。ここで、「覆っている」は、断熱材が再生器20と接して断熱される構成と、断熱材が空間又は部材を介して再生器を覆う構成とを含みうる。
【0047】
断熱材の材料は特に限定されない。断熱材の材料としては、樹脂、金属、ガラス、セラミックなどが挙げられる。断熱材の構成も特に限定されない。断熱材の構成としては、発泡体、繊維集合体などが挙げられる。
【0048】
図3に示す通り、燃料電池システム1cは、第一熱交換器51をさらに備えている。第一熱交換器51は、第一経路21におけるメディエータを含む第一流体と、第二経路22におけるメディエータを含む第二流体とを熱交換させる。第二経路22におけるメディエータを含む第二流体の温度は、典型的には、再生器20におけるメディエータの酸化に伴う発熱により、第一経路21におけるメディエータを含む第一流体の温度より高い。このため、第一熱交換器51における第一流体と第二流体との熱交換により第二流体が冷却される。その結果、カソード11に供給されるメディエータの温度が低くなりやすく、燃料電池10の耐用期間が延びやすい。加えて、第一熱交換器51における第一流体と第二流体との熱交換により第一流体が加熱され、再生器20に供給されるメディエータを含む溶液の温度が高まりやすい。このため、再生器20の内部の温度が所望の温度に保たれやすく、メディエータの酸化反応の反応速度が高まりやすい。
【0049】
燃料電池システム1cは、例えば、断熱材24をさらに備えている。断熱材24は、再生器20と第一熱交換器51における第二流体の入口との間において第二経路22を覆っている。これにより、第一熱交換器51に供給される第二流体の温度が高く保たれる。このため、第一熱交換器51に供給される第二流体の温度が第一熱交換器51に供給される第一流体の温度よりも高く、第一熱交換器51における第一流体と第二流体との温度差が大きくなりやすい。これにより、第一熱交換器51における第一流体と第二流体との熱交換の効率が高まる。なお、第一熱交換器51を通過した第二流体は、第一熱交換器51における第二流体の出口とカソード11との間の第二経路22においてさらに冷却される。このため、適切に冷却されたメディエータがカソード11に供給される。例えば、第一熱交換器51における第二流体の入口と再生器20との間の第二経路22の長さは、第一熱交換器51における第二流体の出口とカソード11との間の第二経路22の長さよりも短い。この場合、第一熱交換器51における第一流体と第二流体との温度差が大きくなるとともに、第一熱交換器51における第二流体の出口とカソード11との間の第二経路22においてメディエータが適切に冷却される。ここで、「覆っている」は、断熱材24が第二経路22をなす部材と接して断熱される構成と、断熱材24が空間又は部材を介して第二経路22を覆う構成とを含みうる。
【0050】
第一熱交換器51は、第一流体と第二流体との熱交換が可能である限り、制限されない。第一熱交換器51は、例えば、以下の(i)~(iii)の少なくとも1つの特徴を有する。第一熱交換器51は、例えば、プレート式熱交換器、二重管式熱交換器、又はシェルアンドチューブ式熱交換器でありうる。
(i)第二経路22が第一経路21の近傍に配置されている。
(ii)第二経路22をなす部材が第一経路21をなす部材と接触している。
(iii)第二経路22と第一経路21とが熱交換の観点から適切な部材によって仕切られている。
【0051】
燃料電池システム1cは、例えば、第一断熱材26及び第二断熱材27を備えている。一方、例えば、第一熱交換器51における第一流体と第二流体との熱交換により、第一流体が十分に加熱されるのであれば、第一断熱材26及び第二断熱材27の少なくとも一つは省略されてもよい。
【0052】
図4に示す通り、燃料電池システム1dは、第二熱交換器52をさらに備えている。第二熱交換器52は、酸化剤供給経路45における酸化剤と、第二経路22におけるメディエータを含む第二流体とを熱交換させる。典型的には、酸化剤供給経路45を通って再生器20に供給される酸化剤(例えば、空気)の温度は、第二経路22におけるメディエータを含む第二流体の温度より低い。このため、第二熱交換器52における酸化剤と第二流体との熱交換により第二流体が冷却される。その結果、カソード11に供給されるメディエータの温度が低くなりやすく、燃料電池10の耐用期間が延びやすい。加えて、第二熱交換器52における酸化剤と第二流体との熱交換により酸化剤が加熱され、再生器20に供給される酸化剤の温度が高まりやすい。このため、再生器20の内部の温度が所望の温度に保たれやすく、メディエータの酸化反応の反応速度が高まりやすい。
【0053】
第二熱交換器52は、酸化剤と第二流体との熱交換が可能である限り、制限されない。第二熱交換器52は、例えば、以下の(I)~(III)の少なくとも1つの特徴を有する。
第二熱交換器52は、例えば、プレート式熱交換器又はフィンチューブ式熱交換器でありうる。
(I)第二経路22が酸化剤供給経路45の近傍に配置されている。
(II)第二経路22をなす部材が酸化剤供給経路45をなす部材と接触している。
(III)第二経路22と酸化剤供給経路45とが熱交換の観点から適切な部材によって仕切られている。
【0054】
図5に示す通り、燃料電池システム1eは、タンク29をさらに備えている。タンク29は、第二経路22上に配置され、再生器20において酸化されたメディエータを貯留する。このため、再生器20を小型化しやすい。これにより、再生器20の内部を所望の温度に保つために再生器20の外部から供給すべきエネルギー量が少なくて済み、燃料電池システム1eの効率が高まりやすい。タンク29は、例えば、第二経路22において再生器20とポンプ30との間に配置されている。タンク29は、第二経路22においてポンプ30とカソード11との間に配置されていてもよい。
【0055】
燃料電池システム1eは、例えば、弁28をさらに備えている。弁28は、例えば、第二経路22上に配置されている。弁28は、例えば、第二経路22において再生器20とタンク29との間に配置されている。弁28は、例えば、電磁弁等の開閉弁又は電動弁等の流量調節弁でありうる。弁28の制御により、第二経路22におけるメディエータを含む溶液の流れを調節できる。
【0056】
燃料電池システム1eにおいて、例えば、第一熱交換器51における第一流体と第二流体との熱交換により、第一流体が十分に加熱されるのであれば、第一断熱材26及び第二断熱材27の少なくとも一つは省略されてもよい。また、燃料電池システム1eにおいて、例えば、再生器20が十分に小さいのであれば、第一熱交換器51は省略されてもよい。
【0057】
図6に示す燃料電池システム1fは、特に説明する場合を除き、燃料電池システム1eと同様に構成されている。燃料電池システム1fは、給液経路60と、制御器70とをさらに備えている。給液経路60は、タンク29に接続されており、メディエータを希釈する液体をタンクに供給する。メディエータを希釈する液体は、例えば水である。制御器70は、給液経路60における液体の流量を調整する。
【0058】
燃料電池システム1fが安定的に運転されるために、カソード11に供給されるメディエータの溶液におけるメディエータの濃度は所定の範囲に保たれていることが望ましい。上記の通り、再生器20においてメディエータの溶液のメディエータの濃度が低下することを防止するために、メディエータの溶液の溶媒の一部が蒸発するように再生器20の内部の温度が高く保たれている。このため、再生器20から排出されたメディエータの溶液におけるメディエータの濃度が高くなりすぎる可能性がある。燃料電池システム1fによれば、タンク29において、給液経路60を通過してタンク29に供給された液体によってメディエータを希釈できるので、メディエータの濃度を所望の範囲に調整できる。
【0059】
燃料電池システム1fは、例えば、弁64をさらに備えている。弁64は、例えば、給液経路60上に配置されている。弁64は、例えば、電磁弁等の開閉弁又は電動弁等の流量調節弁でありうる。制御器70が弁64を制御することにより、給液経路60における液体の流量が調整される。例えば、制御器70は、所定のプログラムが実行可能に格納されたデジタルコンピュータであり、制御器70と弁64とは、制御器70から送信された制御信号を弁64が受信できるように有線又は無線によって接続されている。
【0060】
燃料電池システム1fは、例えば、センサ29aをさらに備えている。センサ29aは、タンク29に貯留されたメディエータ溶液のpH、静電ポテンシャル、及びメディエータの濃度からなる群より選ばれる少なくとも1つを検出する。例えば、センサ29aは、制御器70と有線又は無線によって接続されており、制御器70は、センサ29aによる検出値を示す情報を取得できる。制御器70は、センサ29aによる検出値を示す情報に基づいて、タンク29に供給されるべき液体の量を決定する。さらに、制御器70は、その決定結果に基づいて弁64を制御するための制御信号を生成し、弁64に向かって送信する。
【0061】
給液経路60を流れる液体は、メディエータを希釈できる限り特に制限されない。給液経路60を流れる液体は、例えば、水である。給液経路60を流れる液体の供給源は特に制限されない。例えば、ガス排出経路47を流れる水蒸気を凝縮させて得られた凝縮水を給液経路60によってタンク29に供給してもよい。この場合、凝縮水をメディエータの希釈のために有効に利用できる。
【0062】
燃料電池システム1fにおいて、第二経路22は、例えば、上流経路22uを含んでいる。上流経路22uは、再生器20とタンク29とを接続している。上流経路22uは、第一部位22fと、第二部位22sとを有する。第一部位22fは、再生器20からタンクまで延びている。第二部位22sは、メディエータを第一部位22fの少なくとも一部を迂回させつつ冷却させる。制御器70は、例えば、第一部位22fにおけるメディエータの流量及び第二部位22sにおけるメディエータの流量を調整する。
【0063】
第一部位22fにおけるメディエータの流量及び第二部位22sにおけるメディエータの流量を調整することにより、上流経路22uにおけるメディエータの溶液からの放熱量を調整できる。このため、タンク29に供給されるメディエータの溶液の温度を調整できる。例えば、第一部位22fにおけるメディエータの流量が第二部位22sにおけるメディエータの流量より大きいと、これらの流量が逆の関係にある場合に比べて、タンク29に供給されるメディエータの溶液の温度が高くなりやすい。給液経路60を通ってタンク29に供給される液体の温度は、例えば、所望の温度より低くなる可能性がある。燃料電池システム1fによれば、給液経路60を通ってタンク29に供給される液体の温度に合わせて、タンク29に供給されるメディエータの溶液の温度を調整できる。その結果、タンク29に貯留されたメディエータの溶液の温度を所望の範囲に調整できる。
【0064】
図6に示す通り、第二部位22sは、例えば、第一部位22fの一部を迂回して延びている。また、第二部位22sの一部は、例えば、第一熱交換器51に配置されている。この場合、第二部位22sにおけるメディエータの溶液と第一経路21におけるメディエータの溶液との熱交換により、第二部位22sにおけるメディエータが冷却される。なお、燃料電池システム1fにおいて、第一熱交換器51は省略されてもよい。
【0065】
図6に示す通り、第一部位22fの少なくとも一部は、断熱材によって覆われていてもよい。これにより、第一部位22fを流れるメディエータの溶液が保温される。この場合、第一部位22fではメディエータの溶液が保温され、第二部位22sではメディエータの溶液が冷却される。このため、タンク29に供給されるメディエータの溶液の温度の調整可能なレンジが広い。なお、第一部位22fは、断熱材によって覆われていなくてもよい。
【0066】
燃料電池システム1fは、例えば、温度センサ29b及び温度センサ62をさらに備えている。温度センサ29bは、タンク29におけるメディエータ溶液の温度を検出する。温度センサ29bは、例えば、タンク29の内部に配置されている。温度センサ62は、メディエータを希釈するための液体の温度を検出する。温度センサ62は、例えば、給液経路60上に配置されている。温度センサ62は、メディエータを希釈するための液体が貯留されたタンク(図示省略)に配置されていてもよい。温度センサ29b及び温度センサ62のそれぞれは、制御器70と有線又は無線によって接続されており、制御器70は、温度センサ29b及び温度センサ62による検出温度を示す情報を取得できる。これにより、制御器70は、温度センサ29b及び温度センサ62による検出温度に基づいて、第一部位22fにおけるメディエータの流量及び第二部位22sにおけるメディエータの流量を調整できる。例えば、制御器70は、弁28を制御することにより、第一部位22fにおけるメディエータの流量及び第二部位22sにおけるメディエータの流量を調整する。
【0067】
燃料電池システム1fにおいて、弁28は、例えば、第一部位22f上に配置されている。弁28は、第二部位22sに配置されていてもよい。また、弁28は、第一部位22fと第二部位22sとを接続していてもよい。この場合、弁28は、三方弁でありうる。
【0068】
燃料電池システム1fにおいて、タンク29の少なくとも一部は断熱材によって覆われていてもよい。なお、タンク29は、断熱材によって覆われていなくてもよい。例えば、タンク29とカソード11との間の第二経路22の長さが短い場合には、タンク29は、断熱材によって覆われていなくてもよい。また、タンク29とカソード11との間の第二経路22における放熱量を考慮して制御器70が動作する場合には、タンク29は、断熱材によって覆われていなくてもよい。
【0069】
燃料電池システム1fのタンク29においてメディエータの溶液のメディエータの濃度及び温度を調整するための処理の一例を説明する。例えば、燃料電池システム1fの運転中に、図7に示す処理が定期的に実行される。ステップS1において、制御器70は、センサ29aによる検出値Vdを取得する。次に、ステップS2において、制御器70は、検出値Vdが所定値以上であるか否かを判断する。この所定値は、カソード11に供給されるのに適した、メディエータの溶液におけるメディエータの濃度の上限に対応している。ステップS2における判断結果が肯定的であると、ステップS3に進み、制御器70は、給液経路60における液体の流量が増加するように弁64を制御する。例えば、制御器70は、弁64の開度を増加させる。次に、ステップS4に進み、制御器70は、温度センサ29bによる検出温度Tt及び温度センサ62による検出温度Tsを取得する。次に、ステップS5に進み、制御器70は、検出温度Tt及び検出温度Tsに基づいて、弁28を制御する。例えば、制御器70は、検出温度Ttが目標温度に近づくように、弁28の開度を調整する。ステップS5の後、一連の処理が終了する。
【0070】
ステップS2における判断結果が否定的であると、ステップS6に進み、制御器70は、給液経路60における液体の流量が減少するように弁64を制御する。例えば、制御器70は、弁64の開度を減少させる。次に、ステップS7に進み、制御器70は、温度センサ29bによる検出温度Tt及び温度センサ62による検出温度Tsを取得する。次に、ステップS8に進み、制御器70は、検出温度Tt及び検出温度Tsに基づいて、弁28を制御する。例えば、制御器70は、検出温度Ttが目標温度に近づくように、弁28の開度を調整する。その後、一連の処理が終了する。
【0071】
燃料電池システム1a~燃料電池システム1fにおける各構成要素は、技術的に矛盾しない限り組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0072】
1a、1b、1c、1d、1e、1f 燃料電池システム
10 燃料電池
11 カソード
12 アノード
20 再生器
21 第一経路
22 第二経路
25 ヒータ
26 第一断熱材
27 第二断熱材
29 タンク
51 第一熱交換器
52 第二熱交換器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7