(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】車載電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20230901BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230901BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
H02J1/00 306B
H01M10/48 P
H02J7/00 B
(21)【出願番号】P 2019161635
(22)【出願日】2019-09-05
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2018168426
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】影山 洋一
(72)【発明者】
【氏名】愛宕 克則
(72)【発明者】
【氏名】西中 大貴
(72)【発明者】
【氏名】竹中 一雄
(72)【発明者】
【氏名】平城 久雄
(72)【発明者】
【氏名】薛 侑吾
(72)【発明者】
【氏名】東出 貴司
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-213384(JP,A)
【文献】特開2005-204421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00 - 1/16
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 - 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部と、
出力部と、
前記入力部と前記出力部とを接続する導電路線部と、
高電位電極と低電位電極とを有し、前記高電位電極に前記導電路線部が接続される蓄電部と、
前記低電位電極と接地間に接続された可変電圧部と、
前記蓄電部と前記可変電圧部とに接続されて、前記可変電圧部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記蓄電部の
充電期間および放電期間に、前記高電位電極と前記低電位電極との電位差へ前記可変電圧部の電圧を加算した値を所定の一定値とするように、前記可変電圧部の電圧を制御する、
車載電源システム。
【請求項2】
前記蓄電部はキャパシタを蓄電素子として用いた、
請求項1に記載の車載電源システム。
【請求項3】
前記可変電圧部は、前記出力部の電圧を用いて電位差を生成するコンバータであり、
前記放電期間における前記可変電圧部の電位差は前記蓄電部が有する電位差よりも小さな値である、
請求項1に記載の車載電源システム。
【請求項4】
前記可変電圧部は、前記出力部の電圧を用いて電位差を生成するコンバータであり、
前記放電期間における前記可変電圧部の電位差は前記蓄電部が有する電位差よりも大きな値である、
請求項1に記載の車載電源システム。
【請求項5】
前記充電期間は、前記入力部の電圧が入力閾電圧よりも高いときに設けられる、
請求項
1に記載の車載電源システム。
【請求項6】
前記制御部に接続された外部信号受信部をさらに備え、
前記放電期間は、前記外部信号受信部が車両起動信号を受信しているときに前記入力部の電圧が入力閾電圧よりも低くなったときに始められる、
請求項1に記載の車載電源システム。
【請求項7】
前記制御部に接続された外部信号受信部をさらに備え、
前記放電期間は、前記外部信号受信部が緊急起動信号を受信したときに始められる、
請求項1に記載の車載電源システム。
【請求項8】
入力部と、
出力部と、
前記入力部と前記出力部とを接続する導電路線部と、
高電位電極と低電位電極とを有し、前記高電位電極に前記導電路線部が接続される蓄電部と、
前記低電位電極と接地間に接続された可変電圧部と、
前記蓄電部と前記可変電圧部とに接続されて、前記可変電圧部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記蓄電部の放電期間に、前記高電位電極と前記低電位電極との電位差へ前記可変電圧部の電圧を加算した値を所定の一定値とするように、前記可変電圧部の電圧を制御し、
前記可変電圧部は、前記出力部の電圧を用いて電位差を生成するコンバータであり、
前記放電期間における前記可変電圧部の電位差は前記蓄電部が有する電位差よりも小さな値である、
車載電源システム。
【請求項9】
入力部と、
出力部と、
前記入力部と前記出力部とを接続する導電路線部と、
高電位電極と低電位電極とを有し、前記高電位電極に前記導電路線部が接続される蓄電部と、
前記低電位電極と接地間に接続された可変電圧部と、
前記蓄電部と前記可変電圧部とに接続されて、前記可変電圧部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記蓄電部の放電期間に、前記高電位電極と前記低電位電極との電位差へ前記可変電圧部の電圧を加算した値を所定の一定値とするように、前記可変電圧部の電圧を制御し、
前記可変電圧部は、前記出力部の電圧を用いて電位差を生成するコンバータであり、
前記放電期間における前記可変電圧部の電位差は前記蓄電部が有する電位差よりも大きな値である、
車載電源システム。
【請求項10】
入力部と、
出力部と、
前記入力部と前記出力部とを接続する導電路線部と、
高電位電極と低電位電極とを有し、前記高電位電極に前記導電路線部が接続される蓄電部と、
前記低電位電極と接地間に接続された可変電圧部と、
前記蓄電部と前記可変電圧部とに接続されて、前記可変電圧部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記蓄電部の放電期間に、前記高電位電極と前記低電位電極との電位差へ前記可変電圧部の電圧を加算した値を所定の一定値とするように、前記可変電圧部の電圧を制御し、
前記制御部に接続された外部信号受信部をさらに備え、
前記放電期間は、前記外部信号受信部が車両起動信号を受信しているときに前記入力部の電圧が入力閾電圧よりも低くなったときに始められる、
車載電源システム。
【請求項11】
入力部と、
出力部と、
前記入力部と前記出力部とを接続する導電路線部と、
高電位電極と低電位電極とを有し、前記高電位電極に前記導電路線部が接続される蓄電部と、
前記低電位電極と接地間に接続された可変電圧部と、
前記蓄電部と前記可変電圧部とに接続されて、前記可変電圧部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記蓄電部の放電期間に、前記高電位電極と前記低電位電極との電位差へ前記可変電圧部の電圧を加算した値を所定の一定値とするように、前記可変電圧部の電圧を制御し、
前記制御部に接続された外部信号受信部をさらに備え、
前記放電期間は、前記外部信号受信部が緊急起動信号を受信したときに始められる、
車載電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種車両に使用される車載電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の車載電源1について図面を用いて説明する。
図9は従来の車載電源1の構成を示した回路ブロック図であり、車載電源1は充電回路2と蓄電池3と放電回路4とを有していた。ここで、車両バッテリー5が正常な状態であるときには、車両バッテリー5から供給される電力が充電回路2によって蓄電池3へ蓄えられ、そして、蓄電池3に蓄えられた電力は必要に応じて放電回路4によって負荷6へと供給されていた。その一方で、車両バッテリー5が異常な状態となったときには、充電回路2は停止状態となり蓄電池3に蓄えられた電力は、制御回路(図示せず)からの指示によって動作を行う放電回路4を通じて蓄電池3から負荷6へと供給されていた。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特に放電回路4が昇圧動作を行うことによって蓄電池3の電力を負荷6へ供給する場合、車両バッテリー5が異常な状態となり蓄電池3への電力供給が絶たれたときには、蓄電池3が放電によって蓄電池3の電圧が低下して所定電圧よりも低くなると放電回路4が昇圧動作できなくなり、車載電源1は負荷6へ電力を供給できなくなっていた。
【0006】
これは言い換えると、車載電源1は蓄電池3の電力を出力しきれず蓄電池3に所定の電力を残した状態で動作を停止するという課題を有するものであった。
【0007】
そこで本発明は、蓄電部に蓄えられた電力を効率よく利用することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、この目的を達成するために本発明は、入力部と、出力部と、前記入力部と前記出力部とを接続する導電路線部と、高電位電極と低電位電極とを有し、前記高電位電極に前記導電路線部が接続される蓄電部と、前記低電位電極と接地間に接続された可変電圧部と、前記蓄電部と前記可変電圧部とに接続されて、前記電圧可変部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記蓄電部の放電期間に、前記高電位電極と前記低電位電極との電位差へ前記可変電圧部の電圧を加算した値を所定の一定値とするように、前記可変電圧部の電圧を制御する、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、蓄電部に残存する電力が少なく、蓄電部の電圧が低下している状況下で蓄電部から電力を放電するときに、蓄電部の電圧に可変電圧部の電圧が重畳されることで蓄電部が有する電圧よりも高い電圧を出力部から外部へと出力することができるので、
蓄電部の電圧が昇圧可能電圧以上である必要がなくなる。このため、蓄電部に残存する電力が少なく、蓄電部の電圧が低下している状況下で蓄電部から電力の放電が継続可能となり、蓄電部に蓄えられた電力を効率よく利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態における車載電源システムの構成を示す第1回路ブロック図
【
図2】本発明の実施の形態における車載電源システムの構成を示す第2回路ブロック図
【
図3】本発明の実施の形態における車載電源システムの第1の動作タイミングチャート
【
図4】本発明の実施の形態における車載電源システムの構成を示す第3回路ブロック図
【
図5】本発明の実施の形態における車載電源システムの第2の動作タイミングチャート
【
図6】本発明の実施の形態における車載電源システムの構成を示す第4回路ブロック図
【
図7】本発明の実施の形態における車載電源システムの構成を示す第5回路ブロック図
【
図8】本発明の実施の形態における車載電源システムの構成を示す第6回路ブロック図
【
図9】従来の車載電源の構成を示した回路ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0012】
(実施の形態)
図1は本発明の実施の形態における車載電源システム7の構成を示す回路ブロック図である。車載電源システム7は、入力部8と出力部9と導電路線部10と蓄電部11と可変電圧部12と制御部13とを含む。導電路線部10は、入力部8と出力部9とを接続する。蓄電部11は高電位電極11Aと低電位電極11Bとを有する。蓄電部11の高電位電極11Aは導電路線部10に接続されている。可変電圧部12は蓄電部11の低電位電極11Bと接地Gとに接続されている。制御部13は、蓄電部11と可変電圧部12に接続されている。また、制御部13は可変電圧部12の動作を制御する。
【0013】
制御部13は、蓄電部11の放電期間に、蓄電部11の高電位電極11Aと低電位電極11Bとの電位差へ可変電圧部12の電圧を加算した値を所定の一定値とするように、可変電圧部12の電圧を制御する。
【0014】
以上の構成および動作によって、車載電源システム7は特に放電期間において蓄電部11に蓄えられた電力の大部分を放電、出力させることができるので、蓄電部11に蓄えられていた電力は効率よく利用される。車載電源システム7は、蓄電部11に残存する電力が少なく蓄電部11の電圧が低下している状況下でも、あるいは、蓄電部11に残存する電力が多く蓄電部11の電圧が満充電に近い状況下でも、蓄電部11から電力を放電するときに、蓄電部11と出力部9との間に昇圧コンバータを設けることなく所定の電圧を出力することができる。車載電源システム7は、蓄電部11から電力を放電するときに、蓄電部11の電圧に可変電圧部12の電圧を重畳させることで蓄電部11が有する電圧よりも高い電圧である所定の一定値を、出力部9から外部へと出力することができる。このため、蓄電部11の電圧が昇圧されることが可能な電圧以上である必要がなくなる。したがって、蓄電部11に残存する電力が少なく、蓄電部11が有する電位差が小さくなってい
る状況下であっても蓄電部11が有する電力の放電が継続可能となり、車載電源システム7は蓄電部11に蓄えられた電力を効率よく利用することができる。いいかえると、車載電源システム7は多くの電力を、長い期間にわたって出力することができる。
【0015】
以下で、
図1の回路ブロック図、
図2の本発明の実施の形態における車載電源システム7の構成を示す第2回路ブロック図、および
図3の本発明の実施の形態における車載電源システム7の第1の動作タイミングチャートを用いて、車載電源システム7の構成および動作について詳細に説明する。先にも述べたように車載電源システム7は、入力部8と出力部9と導電路線部10と蓄電部11と可変電圧部12と制御部13とを含む。
【0016】
入力部8は車両用バッテリー14に接続されていて、車載電源システム7は車両用バッテリー14から電力の供給を受けて、車両用バッテリー14からの電力によって蓄電部11は充電される。ここでは図示していないが、車両用バッテリー14とともに発電機から車載電源システム7は電力の供給を受けてもよい。
【0017】
出力部9は車両負荷15に接続されていて、車載電源システム7は、蓄電部11に蓄えられていた電力を放電させることによって、車両負荷15を駆動させる。また、車両負荷15は、車載電源システム7から電力の供給を受けた時点で駆動を始めても、あるいは、車載電源システム7から電力の供給を受け、そのうえで車両負荷15の内部などに設けられた開閉器(図示せず)が閉じられることによって双方の条件が揃った時点で駆動を始めても、いずれであってもよい。
【0018】
図示はしていないが、入力部8および出力部9は特定の機能を有した構成である必要はなく、固定具や溶接などを用いて電気的に接続が可能な端子や、あるいは、溶接などで接続が可能な導体であってよい。
【0019】
導電路線部10は、入力部8と出力部9とを接続する。導電路線部10は車載電源システム7の配線基板(図示せず)に配線パターンとして設けられても、あるいは、ケーブルや銅板状のバスバとして設けられてもよい。いずれの場合であっても、導電路線部10には充電時や放電時に大きな電流が流れる。このため、導電路線部10は通電方向に大きな断面積を有した電流容量が大きな導体であることが望ましい。
【0020】
蓄電部11は、高電位電極11Aと低電位電極11Bとを有し、高電位電極11Aは導電路線部10に接続点16で接続されている。蓄電素子そのものが蓄電部11であってもよい。ここでは図示していないが、蓄電部11は蓄電素子と蓄電部11専用の保護回路や制御回路や蓄電素子の余剰電力を放電する放電回路などを併せて有していてもよい。また、蓄電部11の蓄電素子は、鉛バッテリーやリチウムイオンバッテリーなどの化学二次電池であっても、電気二重層キャパシタなどのキャパシタ二次電池であってもかまわない。
【0021】
先にも述べたように、車載電源システム7は、蓄電部11に残存する電力が少なくなり蓄電部11の両端の電位差が小さくなることで蓄電部11の電圧が低下して、蓄電部11の電圧を昇圧させるには不適切な状況下であっても蓄電部11から電力の放電を継続可能とする。したがって、車載電源システム7の蓄電部11に適用する蓄電素子には、キャパシタ二次電池を用いることで、車載電源システム7は有効に動作することが可能となる。これは、長時間の放電後に急激に蓄電残量が低下する化学二次電池に対して、キャパシタ二次電池は放電時間に応じて概ね近似した蓄電残量の低下率を有し、電力を残したうえで昇圧させるには電圧不足となる状態に早い時点到達するためである。
【0022】
可変電圧部12は蓄電部11の低電位電極11Bと接地Gとに接続されている。また、可変電圧部12の高電位電極12Aが蓄電部11の低電位電極11Bに、可変電圧部12
の低電位電極12Bが接地Gに接続されている。蓄電部11と可変電圧部12とは直列に接続されているので、可変電圧部12は、可変である直流電圧を蓄電部11の直流電圧に重畳させる。
【0023】
制御部13は、蓄電部11と可変電圧部12に接続されている。厳密には、制御部13は蓄電部11の高電位電極11Aの電圧を検出し、さらに制御部13は蓄電部11の低電位電極11Bの電圧を検出する。またさらに制御部13は可変電圧部12の高電位側の電圧を検出してもよい。可変電圧部12の高電位側の電圧は蓄電部11の低電位電極11Bの電圧と概ね同じ値となる。またさらに、制御部13は入力部8および出力部9の電圧を検出する。そして、制御部13は可変電圧部12の動作を制御する。
【0024】
まず制御部13における、充電に関する制御および放電に関する制御について説明する。制御部13の可変電圧部12に対する制御は、停止期間と充電期間と維持期間と放電期間とに分割される。停止期間は、制御部13に接続された外部信号受信部17が車両起動信号SIG1を受信する前の状態である。車両起動信号SIG1は車載電源システム7が搭載されている車両18の制御装置(図示せず)から、車両18が起動すると発せられる信号である。また、車両18が起動すると、起動前に遮断状態であった連動スイッチ19が接続状態へと切り替えられる。タイミングチャートでは、外部信号受信部17が車両起動信号SIG1を受信する前の状態で車両起動信号SIG1はOFFとし、外部信号受信部17が車両起動信号SIG1を受信する状態で車両起動信号SIG1はONとして、それぞれ示されている。
【0025】
停止期間では、車両用バッテリー14に端子電圧VBは存在するものの、連動スイッチ19は遮断状態であるため入力部8において車両用バッテリー14の端子電圧VBは検知されない。このとき、車両用バッテリー14から通常路線部20を経て車両負荷15へと電圧が印加されているので、出力部9では車両用バッテリー14の端子電圧VBが検出される。実際には通常路線部20に整流素子21が接続されているため、整流素子21による電圧降下が生じ、出力部9で検出される電圧はVBよりも低い値となる。
【0026】
また停止期間では、蓄電部11の高電位電極11Aと低電位電極11Bとの電位差である第1電位差VDは、概ね基礎電圧VD1に制御されている。基礎電圧VD1は、特に蓄電部11に適用されている蓄電素子が電気二重層キャパシタである場合には、長時間の充電状態において電気二重層キャパシタの劣化が進行しにくい水準の値に低く抑えることが望ましい。また、後述する充電期間において充電時間が短縮されるように基礎電圧VD1は、電気二重層キャパシタの劣化が進行しにくい水準であって所定の値以上であることが望ましい。
【0027】
またさらに停止期間では、可変電圧部12の高電位電極12Aと低電位電極12Bとの電位差である第2電位差はゼロである。制御部13は、可変電圧部12の高電位電極12Aと低電位電極12Bとの電圧を検出してもよいが、可変電圧部12の高電位電極12Aは、蓄電部11の低電位電極11Bと同電位であるので蓄電部11の低電位電極11Bの電圧が代用されてよい。また、可変電圧部12の低電位電極12Bは接地されているので、第2電位差は蓄電部11の低電位電極11Bの電圧としてよい。
【0028】
次に、充電期間について説明する。充電期間では、充電期間が始まるT1の時点で連動スイッチ19は遮断状態から接続状態へと切り替えられているので、入力部8において車両用バッテリー14の端子電圧VBがそのまま検出される。そして、車両用バッテリー14の端子電圧VBを用いて蓄電部11への充電が行われる。
【0029】
充電期間が始まる以前、いいかえると停止期間では蓄電部11の第1電位差VDは基礎
電圧VD1であったが、充電期間で蓄電部11の第1電位差VDは基礎電圧VD1から設定電圧VD2まで上昇させられる。設定電圧VD2は概ね蓄電部11の満充電電圧に相当、あるいは、蓄電部11の満充電電圧よりも低く過充電とならない値に相当する。そして、予め設定される設定電圧VD2は車両用バッテリー14の端子電圧VBの値が設定可能な範囲の上限値となる。したがって、蓄電部11の蓄電素子の定格電圧は車両用バッテリー14の定格電圧よりも高くする必要がある。また、設定電圧VD2は車両負荷15を駆動することが可能な電圧値以上である。
【0030】
このときも、車両用バッテリー14から通常路線部20を経て車両負荷15へと電圧が印加されているので、出力部9では車両用バッテリー14の端子電圧VBが検出される。実際には通常路線部20に整流素子21が接続されているため、整流素子21による電圧降下が生じ、出力部9で検出される電圧はVBよりも低い値となる。
【0031】
充電期間では、制御部13が蓄電部11へ流す充電電流に応じて可変電圧部12の第2電位差VIを変化させて蓄電部11が充電されても、あるいは、可変電圧部12の第2電位差VIはゼロのままで固定されて車両用バッテリー14の端子電圧VBそのものによって蓄電部11が充電されてもよい。いいかえると、制御部13は、可変電圧部12の第2電位差VIによって蓄電部11へ流す充電電流や充電期間であるT1の時点からT2の時点までに要する時間を制御する。
【0032】
タイミングチャートでは、一例として可変電圧部12のそれまではゼロであった第2電位差VIは、T1の時点で初期電位差VI1に切り替えられ上昇する。そして、充電期間が終了するT2の時点まで漸減させられる。第2電位差VIは、タイミングチャートのように直線状に漸減してもあるいは曲線状に低下させても、あるいは間欠的に切り替え制御する形態で階段状に低下させてもよい。例えば、蓄電部11に適用されている蓄電素子が電気二重層キャパシタである場合には、第2電位差VIをT1の時点で初期電位差VI1とすることで、電荷の蓄積量が少なく大電流が流れ易くなっている状態の電気二重層キャパシタに流れる電流を抑制すればよい。
【0033】
ここで初期電位差VI1の値は、先述の設定電圧VD2と基礎電圧VD1の差として設定すればよい。いいかえると、基礎電圧VD1に初期電位差VI1を加えた値が設定電圧VD2となるように制御部13は可変電圧部12を制御する。そして、充電期間においては、第1電位差VDは充電が進行するにしたがって上昇し、第2電位差VIは第1電位差VDの上昇に対応する形で低下し、第1電位差VDに第2電位差VIを加えた値が設定電圧VD2となるように制御部13は可変電圧部12を制御する。つまり、充電期間において、第1電位差VDに第2電位差VIを加算した値を設定電圧VD2の一定値として制御部13は可変電圧部12を制御する。これにより、制御部13は可変電圧部12の第2電位差VIを制御することで、蓄電部11の充電状態を制御できる。
【0034】
ここで、設定電圧VD2は車両用バッテリー14の端子電圧VBが上限値となることから、第2電位差VIは必ず車両用バッテリー14の端子電圧VBよりも低い値となる。このため、第2電位差VIを発生させる可変電圧部12は出力部9に給電路12Pによって接続されて、充電期間については出力部9の電圧を用いて第2電位差VIを生成する降圧コンバータとしてもよい。降圧コンバータは電力の変換効率が高い。そして、上記の動作では電圧の変化を生じさせるために可変電圧部12は設けられているため、可変電圧部12における電力の消費は非常に小さい。このため、可変電圧部12が出力部9の電圧を用いて動作する降圧コンバータであっても出力部9や車両負荷15に対しての影響は非常に小さく抑えられる。また、設定電圧VD2は車両用バッテリー14の正常時の端子電圧VBよりも低い値とすればよい。これにより、車両用バッテリー14が端子電圧VBを出力している限りは、蓄電部11に蓄えられた電力が排出されることはなく、車載電源システ
ム7は多くの電力を蓄電部11に長時間にわたって維持することができる。
【0035】
ここで可変電圧部12として降圧コンバータが用いられる場合は、一例として
図4の本発明の実施の形態における車載電源システムの構成を示す第3回路ブロック図に示すように、可変電圧部12は、出力部9と蓄電部11の低電位電極11Bとの間に出力部9側から順に直列に接続されたスイッチング素子24とチョークコイル25とを有し、さらに、平滑コンデンサ27と整流素子28とを有していればよい。平滑コンデンサ27は、チョークコイル25と低電位電極11Bとの接続点26と、接地Gとの間に接続され、整流素子28は、スイッチング素子24とチョークコイル25との接続点29にカソードが、接地Gにアノードが接続され配置されている。また、スイッチング素子24を接続して出力部9からチョークコイル25へと電力を供給する、あるいは、スイッチング素子24を遮断して出力部9からチョークコイル25へと電力を非供給とするために、スイッチング素子24の開閉を駆動するドライバ30は、制御部13によって制御されるように可変電圧部12に設けられた形態で図示されているが、ドライバ30は制御部13に含まれていても構わない。また、スイッチング素子24はFET(電界効果型トランジスタ)をはじめとする半導体スイッチであってよい。
【0036】
次に、維持期間について説明する。維持期間では、車両用バッテリー14からの電力供給の状態や、入力部8および出力部9で検出される電圧などは充電期間と変化はない。維持期間が始まるT2の時点で、蓄電部11に対する充電に関する動作は基本的に終了している。したがって、可変電圧部12に対して制御部13が行う制御は少ない。タイミングチャートでは、維持期間に相当するT2の時点からT3の時点までは、蓄電部11の第1電位差VDは概ね平坦な状態となっているが、実際には車両用バッテリー14の電圧変動や蓄電部11の自然放電などにより、蓄電部11の第1電位差VDは次第に低下する場合がある。このため、制御部13は定期的に、あるいは、蓄電部11の第1電位差VDが閾値を下回ったことを検出した時点で、可変電圧部12の第2電位差VIを制御し、第1電位差VDに第2電位差VIを加算した値を設定電圧VD2の一定値となるように維持する。
【0037】
以上の充電期間および維持期間は、車両用バッテリー14の端子電圧VBが正常な値として車載電源システム7へ供給されているときであり、いいかえると入力部8の電圧が入力閾値Vthよりも高く車両用バッテリー14が健全なときに設けられる動作期間である。そして、充電期間における蓄電部11への充電に関する動作は、車両18が起動した後で入力部8の電圧が入力閾値Vthよりも高い期間全般にわたって、あるいは入力部8の電圧が入力閾値Vthよりも高い期間の一部において必要に応じて行われるとよい。
【0038】
以上の説明では充電期間と維持期間とは異なる制御の期間としているものの、充電期間と維持期間とは併せて充電期間としてもよい。また、車両用バッテリー14から車載電源システム7への電力供給は、充電期間あるいは維持期間に行われる形態で説明しているが、車両18が起動停止している間に車両用バッテリー14からの微弱電流により、基礎電圧VD1までの蓄電部11への充電や制御部13の起動が行われてもよい。このとき、上記の微弱電流の供給は、連動スイッチ19とは別に設けられて車両用バッテリー14と入力部8とに接続された補助スイッチ(図示せず)や、入力部8とは別に設けられた電力供給路(図示せず)によって行われてもよい。
【0039】
次に、放電期間について説明する。放電期間が始まるT3の時点では、充電期間と維持期間とにより蓄電部11の第1電位差VDは概ね設定電圧VD2に充電されている。そして、放電期間が始まるT3の時点までは、車両用バッテリー14は端子電圧VBを有していて、出力部9へは車載電源システム7からの設定電圧VD2と車両用バッテリー14からの端子電圧VBとの双方が供給されている。このとき、端子電圧VBは設定電圧VD2
よりも高い電圧値で設定されているため、T3の時点以前では車両負荷15への電力の供給は基本的に車両用バッテリー14が行う。
【0040】
ここで、外部信号受信部17が車両起動信号SIG1を受信中のT3の時点で車両用バッテリー14の端子電圧が急激に低下したとき、いいかえると車両18が起動中で連動スイッチ19が接続状態を継続しているにもかかわらずT3の時点で車両用バッテリー14の端子電圧が急激に低下して入力閾値Vthよりも低くなったこと、を制御部13が検出すると、放電期間が始まる。これは、車両18の搭乗者が車両18の起動を停止させる操作を行っていないにもかかわらずに車両用バッテリー14の端子電圧が急激に低下している状態であり、車両18が事故などに遭遇し、バッテリー失陥状態となった場合に相当する。タイミングチャートではT3の時点以降でも車両起動信号SIG1が継続する状態の曲線が描かれているが、T3の時点で連動スイッチ19は接続状態から遮断状態へと切り替わる指示を、車両18の制御装置(図示せず)から受けていない状態に相当する。
【0041】
T3の時点までは先述のように、出力部9へは車載電源システム7からの設定電圧VD2と車両用バッテリー14からの端子電圧VBとの双方が供給されていて、車両負荷15への電力の供給は基本的に車両用バッテリー14が行っていた。しかしながら、車両用バッテリー14が電力を喪失した状態、車両用バッテリー14からの電力を喪失した状態、あるいはそれに類似した状態のバッテリー失陥状態となっているため、車両負荷15への電力の供給は車載電源システム7が行う。
【0042】
ここでバッテリー失陥状態となったとき、制御部13が駆動するための電力は、蓄電部11から供給される。また、バッテリー失陥状態となる前のT3の時点以前では、制御部13が駆動するための電力は、車両用バッテリー14、蓄電部11のいずれか一方、あるいは双方から供給される。また、制御部13が駆動するための電力は、車両負荷15へ出力する電力に比較して非常に小さな値である。このため、制御部13は蓄電部11からの電力によって十分に長い期間の動作が可能である。
【0043】
タイミングチャートに示すように、T3の時点以降の放電期間では、車載電源システム7の蓄電部11は出力部9から車両負荷15への電力の供給を始めると、同時に蓄電部11の第1電位差VDは低下し始める。制御部13は第1電位差VDを検出し、さらに可変電圧部12を動作させる。可変電圧部12は、蓄電部11の第1電位差VDへ加えるバイアス電圧に相当する。可変電圧部12は、T3の時点まではゼロであった第2電位差VIを出力し始め、同時に第2電位差VIは上昇し始める。そして第2電位差VIは第1電位差VDの低下分を補完し、出力部9の出力電圧は一定値に維持される。いいかえると、制御部13は、第1電位差VDに相当する高電位電極11Aと低電位電極11Bとの電位差へ可変電圧部12の電圧である第2電位差VIを加算した値を設定電圧VD2の一定値として出力させるように、可変電圧部12を制御する。これにより、制御部13は可変電圧部12の第2電位差VIを制御することで、蓄電部11の放電状態を制御できる。
【0044】
先に説明したように、充電期間において制御部13は可変電圧部12の第2電位差VIを制御することで蓄電部11の充電状態を制御できる。そして、放電期間において制御部13は可変電圧部12の第2電位差VIを制御することで、蓄電部11の放電状態を制御できる。つまり、可変電圧部12は充電動作と放電動作との役割を単一の回路で果たすこととなり、車載電源システム7の小型化が可能となる。
【0045】
ここでも先述と同様に、設定電圧VD2は車両用バッテリー14の端子電圧VBが上限値となることから、第2電位差VIは必ず車両用バッテリー14の端子電圧VBよりも低い値となる。このため、第2電位差VIを発生させる可変電圧部12は、出力部9の電圧を用いた降圧コンバータとして動作させ、特に放電期間において第2電位差VIは蓄電部
11の電圧である第1電位差VDよりも小さな値として制御されるとよい。降圧コンバータは電力の変換効率が高い。そして、上記の動作では電圧の変化を生じさせるために可変電圧部12は設けられているため、可変電圧部12における電力の消費は非常に小さく、出力部9からの電力の出力は蓄電部11の電力が担うこととなる。このため、可変電圧部12が出力部9の電圧を用いて動作する降圧コンバータであっても、可変電圧部12が動作することによる出力部9や車両負荷15に対しての影響は非常に小さく抑えられる。これにより、可変電圧部12は蓄電部11への充電動作と蓄電部11からの放電動作との役割を単一の回路で果たすことで車載電源システム7の小型化が可能となるとともに、動作の省電力化を図ることができる。
【0046】
そして、特に放電期間において、蓄電部11の電圧に可変電圧部12の電圧を重畳させたうえで、蓄電部11の電圧が漸減する相当量を可変電圧部12の電圧が漸増することで補完するよう制御部13が制御することで、蓄電部11の高電位電極11Aの電圧は蓄電部11が有する第1電位差VDよりも高い値で、かつ、可能な限りまで一定の値に維持される。これにより、蓄電部11に蓄えられた電力の大部分を放電、出力させることができるので、蓄電部11に蓄えられていた電力は効率よく利用される。
【0047】
車載電源システム7は、蓄電部11に残存する電力が少なく蓄電部11の電圧が低下している状況下でも、あるいは、蓄電部11に残存する電力が多く蓄電部11の電圧が満充電に近い状況下でも、蓄電部11から電力を放電するときに、必ずしも蓄電部11の電圧が蓄電部11と出力部9との間に設けられた昇圧コンバータによって昇圧させられる動作は用いられなくてもよい。このため、蓄電部11の電圧である第1電位差VDが昇圧されることが可能な電圧値以上である必要がなくなる。
【0048】
一般的に昇圧動作を用いて電圧を昇圧する場合、昇圧される前の電圧は、昇圧動作のための回路の固有値である昇圧前電圧下限値よりも高いことを満たす必要がある。したがって、昇圧動作を用いて電圧を昇圧する場合には、昇圧前電圧下限値よりも低い電圧に相当する蓄電素子の電力は出力電力として利用できない無駄な電力となってしまう。
【0049】
本開示の車載電源システム7では、蓄電部11の電圧である第1電位差VDが昇圧されることが可能な電圧値以上である必要がなくなる。このため、蓄電部11に残存する電力が少なく、蓄電部11の電圧が低下している状況下であっても蓄電部11から電力の放電が継続可能となり、昇圧動作を用いる電源に比較して車載電源システム7は蓄電部11に蓄えられた電力を効率よく利用することができる。いいかえると、車載電源システム7は多くの電力を、長い期間にわたって出力することができる。
【0050】
また、車載電源システム7は放電期間での説明のように、車両用バッテリー14は電力を喪失した状態、あるいはそれに類似した状態となった際に、車両負荷15への電力の供給は車載電源システム7が行う。このため、放電期間において蓄電部11が有する電力は完全に使い尽くされてもよい。したがって、蓄電部11の残存電力がほぼ無い状態で、出力部9へ所定の電圧を供給できなくなり、降圧コンバータを用いた可変電圧部12もまた動作しなくなるTXの時点で、車載電源システム7は機能を停止する。
【0051】
また放電期間においてのタイミングチャートでは、車両負荷15が時間の経過とともに連続して蓄電部11の電力を消費し、蓄電部11の第1電位差VDが漸減する場合を一例として示されている。しかしながら、車両負荷15は不連続に電力を消費し、蓄電部11の第1電位差VDが階段状に低下してもよい。その場合、可変電圧部12の第2電位差VIは階段状に上昇したうえで、制御部13は、第1電位差VDに相当する高電位電極11Aと低電位電極11Bとの電位差へ可変電圧部12の電圧である第2電位差VIを加算した値を設定電圧VD2の一定値として出力させるように、可変電圧部12を制御する。
【0052】
車両負荷15は車両18が非常事態に陥った場合に動作が必要となるアクチュエータである場合、車両負荷15は不連続な動作によって不連続に電力を消費する。しかしながら、制御部13は、第1電位差VDに相当する高電位電極11Aと低電位電極11Bとの電位差へ可変電圧部12の電圧である第2電位差VIを加算した値を設定電圧VD2の一定値として出力させるように可変電圧部12を制御することで、車両負荷15が連続して動作する場合と同様に車載電源システム7は多くの電力を、長い期間にわたって出力することができる。
【0053】
放電期間の説明では、外部信号受信部17が車両起動信号SIG1を受信している状態で入力閾値Vthよりも低くなる場合について説明した。ここで仮に、外部信号受信部17が車両起動信号SIG1を受信している状態から受信しなくなったと同時に、入力部8の電圧が入力閾値Vthよりも低くなると、制御部13は車両18が起動状態から停止状態へと切り替わったと判断すればよい。これは搭乗者によって車両18が正常な順序で起動を停止された状態であり、連動スイッチ19が接続状態から遮断状態へと切り替わったと同時に、入力部8の電圧が入力閾値Vthよりも低くなったときに制御部13が正常な起動停止と判断してもよい。
【0054】
このとき、先述のように出力部9へは車載電源システム7からの設定電圧VD2と車両用バッテリー14からの端子電圧VBとの双方が供給されているが、端子電圧VBは設定電圧VD2よりも高い電圧値で設定されている。このため、T3の時点以前では車両負荷15への電力の供給は基本的に車両用バッテリー14が行う。そして、制御部13は蓄電部11の第1電位差VDを基礎電圧VD1まで低下させるように、蓄電部11を制御する。
【0055】
以上で説明した放電期間は、車両起動信号SIG1と入力部8における電圧とを基準に動作するものであったが、
図5の本発明の実施の形態における車載電源システム7の第2の動作タイミングチャートに示すように、放電期間は外部信号受信部17が緊急起動信号SIG2を受信したときに始められてもよい。この場合の緊急起動信号SIG2は、車体22に搭載された制御ユニット(図示せず)などから、車両18が事故に遭遇した場合に発信される信号である。
【0056】
また、放電期間が外部信号受信部17で緊急起動信号SIG2を受信したときに始められる場合、制御部13は車両起動信号SIG1や入力部8における電圧を緊急起動信号SIG2と同時に検知していても構わないが、制御部13は放電期間に関する動作の実行に対する判断に、車両起動信号SIG1や入力部8における電圧は用いられなくてよい。
【0057】
放電期間に関する動作は、車両起動信号SIG1や入力部8における電圧を基準とする場合と同様に制御部13は、第1電位差VDに相当する高電位電極11Aと低電位電極11Bとの電位差へ可変電圧部12の電圧である第2電位差VIを加算した値を設定電圧VD2の一定値として出力させるように可変電圧部12を制御する。これにより、蓄電部11に残存する電力が少なく、蓄電部11の電圧が低下している状況下であっても蓄電部11から電力の放電が継続可能となり、車載電源システム7は蓄電部11に蓄えられた電力を効率よく利用することができる。いいかえると、車載電源システム7は多くの電力を、長い期間にわたって出力することができる。
【0058】
ここで、より厳密には、
図6の本発明の実施の形態における車載電源システムの構成を示す第4回路ブロック図に示すように、低電位電極11Bと高電位電極12Aとの間に、接地Gに接続された加算回路32が設けられるとよい。加算回路32は例えば電圧維持を可能とする抵抗やインピーダンスなどを有した回路で構成されている。いいかえると、低
電位電極11Bと高電位電極12Aとの接続点と接地Gとの間に、電圧維持回路(図示せず)が接続されている。
【0059】
そして、加算回路32は、充電時には可変電圧部12で生成された電圧を維持しつつ蓄電部11から電圧維持回路(図示せず)を介しての接地への経路を接続するように制御され、放電時には蓄電部11から電圧維持回路(図示せず)を介しての接地への経路を遮断するように制御される。これにより、蓄電部11と可変電圧部12との電圧を加算し出力部9の電圧を的確に得ることができる。また、
図6では可変電圧部12と加算回路32とは個別の要素として記載のうえ説明しているものの、加算回路32の機能や動作は可変電圧部12に包含されていても構わない。
【0060】
ここまでは、可変電圧部12に降圧コンバータを用いた場合を一例として説明した。可変電圧部12に降圧コンバータを用いた場合、制御部13は先にも述べたように、蓄電部11の電位差VDと可変電圧部12の電位差VIとの加算によって得られる設定電圧VD2が一定となるように可変電圧部12を制御している。また、可変電圧部12で生成可能な電位差VIの最大値は蓄電部11の電位差VDに相当するように制限される。
【0061】
このため、蓄電部11の電位差VDが設定電圧VD2の半分以下となったTX0の時点において可変電圧部12で生成される電位差VIもまた設定電圧VD2の半分以下となる。この結果、設定電圧VD2は予め設定されていた所定の一定値を維持することができなくなり、TX0の時点以降では値が漸減する。そして蓄電部11の残存電圧と可変電圧部12によって生成された電圧とが双方共に低下して車両負荷15の駆動が不可能となったTXの時点で、車載電源システムの実質的な機能は停止する。
【0062】
そこで、一例として
図7の本発明の実施の形態における車載電源システムの構成を示す第5回路ブロック図に示すように、可変電圧部12蓄電部11が有する電圧を上昇させる動作および下降させる動作の何れもが可能な回路やコンバータによって構成されてもよい。この場合、可変電圧部12は、スイッチング素子24とスイッチング素子24を駆動するドライバ30と平滑コンデンサ27と整流素子28とトランス31とを有する。蓄電部11の低電位電極11Bには整流素子28のカソードと平滑コンデンサ27の一端が接続されている。また、整流素子28のアノードとトランス31の第1巻線31Aの一端と、第1巻線31Aの他端と平滑コンデンサ27の他端と、がそれぞれ接続されている。第1巻線31Aの他端と平滑コンデンサ27の他端とは接地Gに接続されていても、接地Gとは異なる基準電圧(例えば0V)に接続されていても、あるいは接地Gや基準電圧に接続されずにフローティング状態であってもよい。また、出力部9と接地Gとの間にトランス31の第2巻線31Bとスイッチング素子24とが直列に接続されている。
【0063】
ここでスイッチング素子24はドライバ30から発せられる信号(PWM信号など)によってスイッチング制御され、制御部13が第2巻線31Bの両端に任意の電圧を発生させる。そして、第2巻線31Bの両端に発生した電圧に対応して第1巻線31Aの両端に電圧が発生する。第1巻線31Aの両端に発生した電圧は整流素子28で整流され、さらに整流された電圧は平滑コンデンサ27で平滑されることで高電位電極12Aと低電位電極12Bとの間に直流電圧が生成される。
【0064】
これにより放電期間においては、可変電圧部12で生成される電位差VIは、蓄電部11の電位差VDよりも大きな値となるように制御部13によって制御されることが可能となる。この結果、蓄電部11の電位差VDが設定電圧VD2の半分以下となった場合であっても、可変電圧部12の電位差VIは設定電圧VD2の半分以上の電圧を得ることができる。いいかえると、可変電圧部12の電位差VIは、蓄電部11の電位差VDよりも大きな電位差を得ることができる。したがって、可変電圧部12の電位差VIを蓄電部11
の電位差VDに加算させることによって設定電圧VD2は一定値を維持することができる。
【0065】
よって、蓄電部11に残存する電力が少なく、蓄電部11の電圧が低下している状況下であっても蓄電部11から電力の放電が継続可能となり、車載電源システム7は蓄電部11に蓄えられた電力を効率よく利用することができる。いいかえると、車載電源システム7は多くの電力を、長い期間にわたって出力することができる。
【0066】
また、充電期間においては、先にも述べたように、制御部13が蓄電部11へ流す充電電流に応じて可変電圧部12の第2電位差VIを変化させて蓄電部11が充電されても、あるいは、可変電圧部12の第2電位差VIはゼロのままで固定されて車両用バッテリー14の端子電圧VBそのものによって蓄電部11が充電されてもよい。可変電圧部12の第2電位差VIを制御部13が蓄電部11に流れる電流を調整することによって、可変電圧部12は蓄電部11における充電に要する時間や過電流に対する対応が可能となる。
【0067】
また、別の一例として
図8の本発明の実施の形態における車載電源システムの構成を示す第6回路ブロック図に示すように、上記の
図7についての説明と同様に可変電圧部12は、蓄電部11が有する電圧を上昇させる動作および下降させる動作の何れもが可能な回路やコンバータによって構成されてもよい。ここでも、可変電圧部12は、スイッチング素子24とスイッチング素子24を駆動するドライバ30と平滑コンデンサ27と整流素子28とトランス31とを有する。蓄電部11の低電位電極11Bには整流素子28のカソードと平滑コンデンサ27の一端が接続されている。また、整流素子28のアノードとトランス31の第1巻線31Aの一端と、第1巻線31Aの他端と平滑コンデンサ27の他端と、がそれぞれ接続されている。第1巻線31Aの他端と平滑コンデンサ27の他端とは接地Gに接続されていても、接地Gとは異なる基準電圧(例えば0V)に接続されていても、あるいは接地Gや基準電圧に接続されずにフローティング状態であってもよい。また、出力部9と蓄電部11の低電位電極11Bとの間に、トランス31の第2巻線31Bとスイッチング素子24とが直列に接続されている。
【0068】
ここでスイッチング素子24はドライバ30から発せられる信号(PWM信号など)によってスイッチング制御され、制御部13が第2巻線31Bの両端に任意の電圧を発生させる。そして、第2巻線31Bの両端に発生した電圧に対応して第1巻線31Aの両端に電圧が発生する。第1巻線31Aの両端に発生した電圧は整流素子28で整流され、さらに整流された電圧は平滑コンデンサ27で平滑されることで高電位電極12Aと低電位電極12Bとの間に直流電圧が生成される。
【0069】
これにより放電期間においては、蓄電部11に残留する電圧が直接に用いられたうえで、可変電圧部12で生成される電位差VIは、蓄電部11の電位差VDよりも大きな値となるように制御部13によって制御されることが可能となる。この結果、蓄電部11の電位差VDが設定電圧VD2の半分以下となった場合であっても、可変電圧部12の電位差VIは設定電圧VD2の半分以上の電圧を得ることができる。したがって、可変電圧部12の電位差VIを蓄電部11の電位差VDに加算させることによって設定電圧VD2は一定値を維持することができる。
【0070】
ここでは蓄電部11に残留する低い電圧を用いた昇圧動作が必要となるものの、蓄電部11の電圧に対する昇圧動作を行う可変電圧部12は車両負荷15へ電力を供給するのではなく、可変電圧部12の高電位電極12Aと低電位電極12Bとの間に直流電圧を供給する。この際の電力の供給は非常に小さな値である。このため、可変電圧部12における昇圧の動作は、蓄電部11に残留する電圧が低い場合であっても可能である。
【0071】
図7および
図8には図示していないが
図6と同様に、低電位電極11Bと高電位電極12Aとの間には加算回路32が設けられるとよい。先に説明した際と同様に加算回路32は、充電時には可変電圧部12で生成された電圧を維持しつつ蓄電部11から電圧維持部(図示せず)を介しての接地への経路を接続するように制御され、放電時には蓄電部11から電圧維持回路(図示せず)を介しての接地への経路を遮断するように制御される。これにより、蓄電部11と可変電圧部12との電圧を加算し出力部9の電圧を的確に得ることができる。
【0072】
ここで、外部信号受信部17は特定の機能を有した構成である必要はなく、固定具や溶接などを用いて電気的に接続が可能な端子や、あるいは、溶接などで接続が可能な導体であってよい。また、放電期間において蓄電部11から入力部8側への電力の逆流を防止するために、入力部8にアノードが接続され、接続点16にカソードが接続される整流素子23が配置されることが望ましい。
【0073】
以上で説明した、車載電源システム7を構成する要素は、必ずしも単一の筐体内に収納、配置されている必要はない。いいかえると、車載電源システム7の構成要素(又は機能)は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。例えば、蓄電部11は、制御部13等が設けられた筐体と同じ筐体に設けられていてもよいし、別の筐体に設けられていてもよい。当然ながら、車載電源システム7を構成するすべての要素が単一の筐体内に収納、配置されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の車載電源システムは、蓄電部に蓄えられた電力を効率よく利用することができるという効果を有し、各種車両において有用である。
【符号の説明】
【0075】
7 車載電源システム
8 入力部
9 出力部
10 導電路線部
11 蓄電部
11A 高電位電極
11B 低電位電極
12 可変電圧部
12A 高電位電極
12B 低電位電極
12P 給電路
13 制御部
14 車両用バッテリー
15 車両負荷
16、26、29 接続点
17 外部信号受信部
18 車両
19 連動スイッチ
20 通常路線部
21、23、28 整流素子
22 車体
24 スイッチング素子
25 チョークコイル
27 平滑コンデンサ
30 ドライバ
31 トランス
31A 第1巻線
31B 第2巻線
32 加算回路
G 接地(グランド)