(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】DCDCコンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20230901BHJP
【FI】
H02M3/155 X
H02M3/155 V
(21)【出願番号】P 2020566162
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2019049641
(87)【国際公開番号】W WO2020149084
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2019004887
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】竹中 一雄
(72)【発明者】
【氏名】東出 貴司
(72)【発明者】
【氏名】愛宕 克則
(72)【発明者】
【氏名】影山 洋一
(72)【発明者】
【氏名】平城 久雄
(72)【発明者】
【氏名】薛 侑吾
(72)【発明者】
【氏名】西中 大貴
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-100588(JP,A)
【文献】特開2006-340432(JP,A)
【文献】特開2017-154735(JP,A)
【文献】特開2018-078687(JP,A)
【文献】BABU, P. Ramesh et al.,Simulation and Performance Analysis of CCM Zeta Converter with PID Controller,2015 ICCPCT,2015年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項8】
前記DCDCコンバータは、前記入力端の電圧を昇圧して前記出力端へ印加する、請求項1から7のいずれか1項に記載のDCDCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に使用されるDCDCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
図6は従来のDCDCコンバータ1の回路ブロック図である。DCDCコンバータ1は、コンバータ部2と比較器3と入力端4と出力端5とを有する。直流電源6が入力端4に接続され、負荷7が出力端5に接続されている。出力端5の電圧が比較器3で基準電圧VBと比較され、比較結果に応じてコンバータ部2が制御されることによって、DCDCコンバータ1が出力端5を通じて負荷7へ供給する電圧の安定化が図られている。
【0003】
DCDCコンバータ1に類似の従来のDCDCコンバータは、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
DCDCコンバータは、入力端に接続されたスイッチ素子と、スイッチ素子に第1接続点で接続された結合コンデンサと、結合コンデンサに第2接続点で接続されて出力端に第3接続点で接続された第1インダクタと、スイッチ素子を制御する制御回路と、第1接続点とグランドとに接続された第2インダクタと、第2接続点とグランドとに接続された第1ダイオードと、第3接続点とグランドとに接続された平滑コンデンサと、駆動電圧を供給されて出力端の電圧を基準電圧と比較して制御回路へ比較結果を出力する比較器と、第2接続点と比較器とに接続されて比較器を駆動する駆動電圧を供給する第2ダイオードと、第2ダイオードとグランドとに接続された出力コンデンサとを備える。
【0006】
このDCDCコンバータは動作が安定している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は実施の形態におけるDCDCコンバータの回路ブロック図である。
【
図2】
図2は実施の形態におけるDCDCコンバータの動作状態を示す回路ブロック図である。
【
図3】
図3は実施の形態におけるDCDCコンバータの動作状態を示す回路ブロック図である。
【
図4】
図4は実施の形態におけるDCDCコンバータの動作タイミングを示す図である。
【
図5】
図5は実施の形態におけるDCDCコンバータの動作タイミングを示す図である。
【
図6】
図6は従来のDCDCコンバータの回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は実施の形態におけるDCDCコンバータの回路ブロック図である。DCDCコンバータ8は、入力端9と出力端10とスイッチ素子11と結合コンデンサ12とインダクタ13と制御回路14とインダクタ15とダイオード16と平滑コンデンサ17と比較器18とダイオード19と出力コンデンサ20とを含む。スイッチ素子11と結合コンデンサ12とインダクタ13とは、入力端9から出力端10へと順に直列に接続されている。インダクタ15は、スイッチ素子11と結合コンデンサ12とを接続する接続点J1と、グランドGNDとを接続する。ダイオード16は、結合コンデンサ12とインダクタ13とを接続する接続点J2と、グランドGNDとを接続する。ダイオード16のカソードは接続点J2に、アノードはグランドGNDに接続されている。平滑コンデンサ17は、インダクタ13と出力端10とを接続する接続点J3と、グランドGNDとを接続する。
【0009】
比較器18は、基準電圧VBと出力端10の出力電圧VOUTとを比較演算して、演算結果を制御回路14へ出力する。制御回路14は比較器18での演算結果に基づいてスイッチ素子11の動作を制御する。ダイオード19は、結合コンデンサ12とインダクタ13とを接続する接続点J2と比較器18とを接続する供給路21に設けられている。ダイオード19のアノード19Bは接続点J2に接続され、カソード19Aは比較器18に接続されている。供給路21は比較器18を駆動する駆動電圧VCCを供給する。また、出力コンデンサ20は、ダイオード19のカソード19AとグランドGNDに接続されている。スイッチ素子11は、入力端9に接続された一端11Aと、他端11Bとを有する。結合コンデンサ12は、スイッチ素子11の他端11Bに接続点J1で接続された一端12Aと、他端12Bとを有する。インダクタ13は、結合コンデンサ12の他端12Bに接続点J2で接続された一端13Aと、出力端10に接続点J3で接続された他端13Bとを有する。制御回路14は、スイッチ素子11を制御する。インダクタ15は、接続点J1に接続された一端15Aと、グランドGNDに接続された他端15Bとを有する。ダイオード16は、接続点J2に接続されたカソード16Aと、グランドGNDに接続されたアノード16Bとを有する。平滑コンデンサ17は、接続点J3に接続された一端17Aと、グランドGNDに接続された他端17Bとを有する。比較器18は、駆動電圧VCCで駆動されて、出力端10の電圧を基準電圧VBと比較して制御回路14へ比較結果を出力するように構成されている。ダイオード19は、接続点J2に接続されたアノード19Bと、比較器18に接続されたカソード19Aとを有して、カソード19Aから比較器18を駆動する駆動電圧VCCを供給するように構成されている。出力コンデンサ20は、ダイオード19のカソード19Aに接続された一端20Aと、グランドGNDに接続された他端20Bとを有する。センサ24は出力端10から出力される出力電流ICを検出する。
【0010】
入力端9には直流電源23が接続されるように構成されている。実施の形態において、出力端10には蓄電装置22が接続されるように構成されている。比較器18は、出力電圧VOUTが入力される非反転入力端18Aと、基準電圧VBが入力される反転入力端18Bと、制御回路14に接続された出力端18Cとを有する。制御回路14はスイッチ素子11に制御信号SCを出力する。スイッチ素子11は、制御信号SCに応じて端11Aを端11Bに接続してオンしたり、端11Aを端11Bから切断してオフしたりする。
【0011】
DCDCコンバータ8は、動作時に入力端9の電圧VINを出力端10へ出力電圧VOUTに昇圧して印加する。
【0012】
図6に示す従来のDCDCコンバータ
1では、比較器3は、コンバータ部2あるいは直流電源6から供給された駆動電圧VCCにより駆動される。比較器3が正確に動作するために、駆動電圧VCCは、基準電圧VBや検出電圧VDあるいは比較器3への入力電圧VAに比較して十分に高い電圧値を有する必要がある。
【0013】
しかしながら、DCDCコンバータ1では、コンバータ部2からの出力電圧が直流電源6の電圧と同等、あるいは同等以上となるようにコンバータ部2が動作し、直流電源6から直接に比較器3が駆動電圧VCCを受けているときには、駆動電圧VCCが基準電圧VBや入力電圧VAと近い値を有する、あるいは、駆動電圧VCCが基準電圧VBや入力電圧VAよりも低い値を有する。この結果、比較器3が動作せず、コンバータ部2の出力電圧が不安定化する場合がある。
【0014】
それに対して、実施の形態におけるDCDCコンバータ8では、出力端10の出力電圧VOUTにかかわらず、供給路21の特に出力コンデンサ20の高電位端に相当するダイオード19のカソード19Aには、常時において出力端10の出力電圧VOUTよりも高い値の電圧が存在することになる。したがって、比較器18には、入力端9の電圧VINや、出力端10の出力電圧VOUTに近い値として設定されている基準電圧VBよりも高い電圧が供給路21から駆動電圧VCCとして供給される。この結果、比較器18はDCDCコンバータ8の一部から安定した電圧を得ることができ、DCDCコンバータ8の動作が安定する。
【0015】
以下で、DCDCコンバータ8の構成および動作について詳しく説明する。
図2と
図3はDCDCコンバータ8の動作状態の回路ブロック図である。
【0016】
図2はスイッチ素子11がオンのときのDCDCコンバータ8の回路の概要が示し、
図3はスイッチ素子11がオフのときのDCDCコンバータ8の回路の概要を示す。出力端10に蓄電装置22が接続され、実施の形態では、蓄電装置22は電気二重層コンデンサであり、DCDCコンバータ8が直流電源23から出力された入力端9の電圧VINを昇圧して出力電圧VOUTを発生して、出力電圧VOUTを出力端10から蓄電装置22に印加して、蓄電装置22を充電する充電回路として動作する。
【0017】
図4はDCDCコンバータ8の動作タイミングチャートである。まず、時点T0で、DCDCコンバータ8が搭載された電源装置が起動する。あるいは、DCDCコンバータ8を起動させるための信号がDCDCコンバータ8の制御回路14へ発信される。DCDCコンバータ8が起動すると、出力端10から蓄電装置22を充電するための出力電流ICが出力されるように、制御回路14はPWM信号(パルス幅変調信号)をスイッチ素子11に供給してスイッチ素子11がオンオフするようにスイッチ素子11を制御する。
【0018】
図2に示すようにスイッチ素子11がオンであるとき、破線の方向に電流が流れることとなり、インダクタ15には矢印で決めす極性を有する電圧VINが発生し、接続点J2に接続された正極の端12Aを有する結合コンデンサ12には矢印で示す極性を有する電圧VC1が生じる。これにより、接続点J2には電圧VIN、VC1の和の電圧(VIN+VC1)が生じる。また、電圧(VIN+VC1)は、蓄電装置22への充電電圧に相当する出力電圧VOUTとインダクタ13に生じた矢印で示す極性を有する電圧VL1との和である電圧(VOUT+VL1)に等しい。ここで、接続点J2での電圧(VIN+VC1)すなわち電圧(VOUT+VL1)は、ダイオード19および供給路21を通じ、出力コンデンサ20によって平滑される。平滑された電圧は駆動電圧VCCとして比較器18へ供給される。このとき、定電流IKの出力電流ICが蓄電装置22へ供給されるように、制御回路14はセンサ24で検出された出力電流ICに応じてスイッチ素子11を制御し、蓄電装置22の充電電圧に相当する出力電圧VOUTは時間の経過とともに蓄電装置22の充電電圧に従属して上昇する。
【0019】
DCDCコンバータ8は、出力電流ICを検出するセンサ24の代わりに、結合コンデンサ12あるいはインダクタ13に流れる電流を検出するセンサを有していてもよい。電流を検出するこれらのセンサは、例えば、電流が流れる経路に直列に接続された検出用抵抗により構成されている。この場合、検出用抵抗の両端の電位差を制御回路14が検出し、この電位差に基づいて制御回路14が電位差を演算することによって出力電流ICを検出する。あるいは、これらのセンサは、検出用抵抗に代えて非接触検出が可能な電流センサであってもよく、この電流センサによって制御回路14が出力電流ICを検出してもよい。
【0020】
上記の検出用抵抗が電流の経路に直列に挿入されても、駆動電圧VCCが出力電圧VOUTよりも高い値となる関係は維持されるので、DCDCコンバータ8の動作は安定する。また、直流抵抗が挿入されるだけの簡単な構成で、出力電流ICの検出が可能となる。
【0021】
比較的長い停止の期間を経てDCDCコンバータ8が起動する時点T0において、出力コンデンサ20の端20A、20B間の電圧はほぼ0Vなので、比較器18を駆動する駆動電圧VCCの値は入力端9の電圧VINに概ね一致する。入力端9に接続された直流電源23の電圧VINの値が比較器18を駆動可能な値に設定されることで、時点T0で比較器18は動作が可能となる。また、時点T0からは出力電圧VOUTおよび駆動電圧VCCは同じ傾きで漸増する。これは結合コンデンサ12および平滑コンデンサ17と蓄電装置22に蓄積される電荷が時間と共に漸増することと、駆動電圧VCCは出力電圧VOUTと入力端9の電圧VINとの和に相当することを示している。実施の形態では、時点T0から時点T2まで、出力電流ICが定電流IKを維持するように、検出された出力電流ICに基づいて制御回路14がスイッチ素子11をPWM制御で繰り返してオンオフしてスイッチ素子11を制御する。これにより、出力電圧VOUTおよび駆動電圧VCCは同じ傾きで直線的に漸増する。時点T0から時点T2の間の時点T1では、制御回路14はスイッチ素子11を
オンにして
図2に示す回路を構成するか、またはスイッチ素子11を
オフにして
図3に示す回路を構成している。
【0022】
実施の形態では、基準電圧VBは蓄電装置22の満充電電圧VFに一致させる。時点T2で蓄電装置22が満充電状態となり出力電圧VOUTが基準電圧VBすなわち満充電電圧VFに達すると、出力電圧VOUTの値と駆動電圧VCCの値との差が所定の電位差を維持するように出力電圧VOUTの値と駆動電圧VCCが共に一定となる。これはいいかえると、DCDCコンバータ8は、時点T0から時点T2までの期間において定電流出力動作であった状態から、時点T2以降、DCDCコンバータ8が停止する時点T3までは定電圧出力動作の状態へと切り替わる。このとき、駆動電圧VCCは、出力電圧VOUTに電圧VL1を加算した値を有する定電圧VCCMとなる。ここで、結合コンデンサ12と平滑コンデンサ17との容量は実質的に同一としてもよく、あるいは異なっていてもよい。また、インダクタ13とインダクタ15とのインダクタンス値とは実質的に同一としてもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0023】
図2においてダイオード16は、回路素子として存在するものの回路の挙動としては存在しない状態と同様であるため、破線で図示している。
【0024】
図3に示すようにスイッチ素子11がオフであるとき、破線の方向に電流が流れることとなり、インダクタ15に蓄えられていたエネルギーの放出に伴いインダクタ15の端15A、15B間に矢印で示す極性を有する電圧VC1が発生する。インダクタ15の端15A、15B間の電圧VC1は、ダイオード16が導通することでインダクタ15と結合コンデンサ12とによる閉回路が形成されて、充電された結合コンデンサ12が有する電圧VC1を相殺するように発生する。したがって、接続点J2の電圧は、結合コンデンサ12の端12A、12B間の電圧VC1がインダクタ15の端15A、15B間の電圧VC1によって相殺されることで0となる。同様に、インダクタ13に蓄えられていたエネルギーの放出に伴い、インダクタ13の端13A、13B間には矢印で示す極性を有する出力電圧VOUTが発生する。インダクタ13の端13A、13B間の出力電圧VOUTは、ダイオード16が導通することでインダクタ13と平滑コンデンサ17とによる閉回路が形成されることで、充電された平滑コンデンサ17の端17A、17B間の出力電圧VOUTを相殺するように発生する、したがって、接続点J2の電圧は、先の場合と同様に平滑コンデンサ17の端17A、17B間の電圧VOUTがインダクタ13の端13A、13B間の電圧VOUTによって相殺されて0となる。
【0025】
このとき、接続点J2の電圧は0であり、ダイオード19のアノード19Bに印加される電圧も0である。しかしながら、スイッチ素子11のオンオフの切り替えは、時点T1の前後で短い時間間隔で交互に繰り返されているので、接続点J2の電圧が0であるときも、スイッチ素子11がオンの状態で供給されていた電圧が出力コンデンサ20によって平滑されて駆動電圧VCCは比較器18へ供給され続ける。また、このとき定電流IKの出力電流ICが蓄電装置22へ供給されるように制御回路14はスイッチ素子11を制御し、蓄電装置22の充電電圧に連動し、かつ充電電圧に相当する出力電圧VOUTは時間の経過とともに上昇する。
【0026】
以上のように、比較器18により基準電圧VBと比較される出力電圧VOUTは、比較器18の駆動電圧VCCに比べて、常時において概ね直流電源23によって供給される電圧VINだけ低い値となる。いいかえると、駆動電圧VCCは常に、基準電圧VBや充電電圧に相当する出力電圧VOUTよりも高い値を有する。この結果、比較器18はDCDCコンバータ8の供給路21から安定した電圧を得ることができ、DCDCコンバータ8の動作が安定する。
【0027】
ここでDCDCコンバータ8は、出力端10の出力電圧VOUTが直流電源23の電圧VINより高くなるように昇圧動作を行い、定電流IKである出力電流ICを蓄電装置22へ供給する。そして、昇圧後の電圧であり、蓄電装置22の充電状態を示す出力端10の電圧である出力電圧VOUTが、蓄電装置22の充電状態を検出するために比較器18へ入力されている。そして、比較される電圧VOUTよりも高い値が必要となる駆動電圧VCCは、出力電圧VOUTに連動する電圧を出力するDCDCコンバータ8の内部の接続点J2から供給される。したがって、比較器18の駆動電圧VCCを維持するための独立した電源や複雑な分圧回路などを設ける必要はない。この結果、DCDCコンバータ8の小型化が可能ともなる。
【0028】
また、供給路21を通じて比較器18へ供給する電力は、出力端10から蓄電装置22へ供給する電力に比較して非常に小さな値である。このため、接続点J2からの電力供給はDCDCコンバータ8の蓄電装置22に対する充電動作を実質的には妨げない。
【0029】
先に述べたように、時点T2で蓄電装置22の充電電圧に相当するDCDCコンバータ8の出力電圧VOUTが満充電電圧VFに達する。そして、出力電圧VOUTが満充電電圧VFに達したことを制御回路14が比較器18により検出すると、DCDCコンバータ8は充電の動作を停止する。いいかえると、定電流IKの出力電流ICは供給されなくなる。そして、蓄電装置22に印加される出力電圧VOUTが一定に維持されるように制御回路14はスイッチ素子11を制御する。これによりDCDCコンバータ8からの出力電圧VOUTは定電圧の満充電電圧VFとなる。基準電圧VBは必ずしも満充電電圧VFである必要はなく、蓄電装置22が必要とする電圧値である。
【0030】
実施の形態では、基準電圧VBは満充電電圧VFと同じ値に設定する。蓄電部22の電圧VOUTが満充電電圧VF(基準電圧VB)よりも低い場合、比較器18は制御回路14へ信号を発信しない。このとき制御回路14は、出力部10に充電電流Icを供給するようにスイッチ素子11を制御する。そして、蓄電部22の電圧VOUTが満充電電圧VF(基準電圧VB)以上となると、比較器18は制御回路14へ信号を発信し、制御回路14は出力部10に充電電流Icを供給しないようにスイッチ素子11を制御する。
【0031】
DCDCコンバータ8では、接続点J1、J2に接続された結合コンデンサ12により、入力端9から出力端10へ電力が供給されていないときには入力端9は出力端10から電気的に絶縁される。したがって、DCDCコンバータ8によって直流電源23の電力は消費されない。
【0032】
たとえば、比較器18に短絡故障が発生して駆動電圧VCCが強制的に0になった場合でも結合コンデンサ12は直流電源23からの電力を遮断する。このため、直流電源23と直列にヒューズなどの保護装置が設けられている場合であっても、保護装置に影響を及ぼす短絡電流は生じず、DCDCコンバータ8の補修のみで対応は可能となる。このように、直流電源23には短絡電流が発生しないので、安全性を高められる。
【0033】
時点T3でDCDCコンバータ8が停止する。DCDCコンバータ8が停止しても、駆動電圧VCCが出力電圧VOUTよりも高い電圧であるとの関係は維持されつつ、駆動電圧VCCと出力電圧VOUTとの双方は漸減する。いいかえると蓄電装置22に電気二重層コンデンサが用いられることによって、出力コンデンサ20と蓄電装置22とにおける自然放電は概ね同じ度合いで進行する。
【0034】
時点T4で再度DCDCコンバータ8が起動する。時点T3からDCDCコンバータ8が停止している間に出力コンデンサ20と蓄電装置22とにおける自然放電は概ね同じ度合いで進行することにより、時点T4で再度DCDCコンバータ8が起動するときにおいても、駆動電圧VCCと出力電圧VOUTとの上記の関係は維持される。したがってDCDCコンバータ8の特に比較器18は安定して動作することができる。そして、時点T5で出力電圧VOUTが基準電圧VBすなわち満充電電圧VFに達すると、時点T2での動作と同様に出力電流ICの供給は停止され、DCDCコンバータ8は定電圧出力の動作に切り替わる。定電圧出力の動作においては、DCDCコンバータ8は先に述べたように蓄電装置22の電圧を維持する。このため、DCDCコンバータ8から蓄電装置22への電力供給は間欠的なので、電力の供給量は小さい。
【0035】
また、駆動電圧VCCはDCDCコンバータ8が動作しているときに限定して供給され、DCDCコンバータ8が動作していないときには供給されない。いいかえると、DCDCコンバータ8を搭載している車両が起動していないときにDCDCコンバータ8が動作する期間は、仮に存在しても車両が起動する直前や車両が起動状態から停止状態に切り替わった直後などの非常に短い期間となる。したがって、比較器18が車両の停止期間中に消費する電力、いいかえると比較器18が動作するための暗電流は発生しない。この結果、直流電源23の劣化を抑制することも可能となる。
【0036】
実施の形態において、DCDCコンバータ8が起動するとき、比較器18が正常に動作するために、駆動電圧VCCが比較器18を正常に動作させる十分な所定値となるまでの期間で、制御回路14はスイッチ素子11をソフトスタートさせてもよい。
図5は、DCDCコンバータ8のソフトスタートの動作タイミングチャートである。具体的には、DCDCコンバータ8が停止している際に蓄電装置22に残存した電圧すなわち出力端10の出力電圧VOUTが高い状態でDCDCコンバータ8が再起動すると、駆動電圧VCCが、蓄電装置22に残存した電圧に相当する出力端10における高い出力電圧VOUTに対して十分に高くなく、したがって、比較器18が正常に動作できずに出力電流ICを適切に制御できなくなる可能性がある。
【0037】
図5に示す動作では、DCDCコンバータ8が時点T0で起動するとき、制御回路14はスイッチ素子11を駆動させる前に出力端10の出力電圧VOUTを検出し、駆動電圧VCCを検出する。出力電圧VOUTが所定電圧値VNよりも高くかつ駆動電圧VCCが所定電圧値VCDより低い場合には、制御回路14は、出力電流ICを定電流IKより小さい電流値ILに抑えてDCDCコンバータ8をソフトスタートさせ、これによりDCDCコンバータ8や蓄電装置22が保護される。時点T0で電流値ILの出力電流ICを蓄電装置22に印加して出力電圧VOUTが上昇していって、時点T11で駆動電圧VCCが所定電圧値VCDに達すると、時点T11から制御回路14は、出力電流ICが定電流IKになるようにスイッチ素子11を制御する。いいかえると、ソフトスタートが用いられる期間は、DCDCコンバータ8の起動から出力コンデンサ20が充電されるまでの短い期間でよい。出力端10における所定電圧値VNは、たとえば蓄電装置22に電気二重層コンデンサが用いられるとき、DCDCコンバータ8の停止時で特に放置状態で電気二重層コンデンサが特性劣化抑制のために低い値に維持される放置電圧値に応じて、放置電圧値と同じ値あるいは放置電圧値よりも加算電圧値だけ高い値に決定してよい。加算電圧値は、数ボルトの定電圧値であっても、電気二重層コンデンサが放置状態のときに維持される電圧値に数十パーセントの定率を加算した値であってもよい。
【0038】
時点T3での停止後、時点T4で再度DCDCコンバータ8が起動する際には、出力電圧VOUTは所定電圧値VCDより高いものの駆動電圧VCCは所定電圧値VNより高いので、制御回路14は出力電流ICが電流値ILではなく定電流IKになるようにスイッチ素子11を制御し、ソフトスタートしない。
【0039】
すなわち、DCDCコンバータ8が起動する際に、駆動電圧VCCが所定電圧値VN以上である場合には、出力電圧VOUTにかかわらず制御回路14は出力電流ICが定電流IKとなるようにスイッチ素子11を制御する。DCDCコンバータ8が起動する際に、出力電圧VOUTが所定電圧値VNより高くかつ駆動電圧VCCが所定電圧値VCDより低い場合に、制御回路14は出力電流ICが定電流IKより小さい電流値ILとなるようにスイッチ素子11を制御する。その後、駆動電圧VCCが所定電圧値VCDに達すると、制御回路14は出力電流ICが定電流IKとなるようにスイッチ素子11を制御する。
【0040】
なお、ソフトスタートは、制御回路14がスイッチ素子11を駆動し始めるときには出力電圧VOUTにかかわらず常時において適用しても構わない。
【0041】
以上の説明では、DCDCコンバータ8の動作は基本的に定電流出力による蓄電装置22への充電、および、満充電電圧や目標充電電圧に達した後の、昇圧した電圧による蓄電装置22の充電電圧を維持するための定電圧出力の動作について述べた。しかしながら、DCDCコンバータ8は必要に応じて出力電圧VOUTが入力端9の電圧VINより低い降圧コンバータとして動作させても構わない。
【符号の説明】
【0042】
8 DCDCコンバータ
9 入力端
10 出力端
11 スイッチ素子
12 結合コンデンサ
13 インダクタ(第1インダクタ)
14 制御回路
15 インダクタ(第2インダクタ)
16 ダイオード(第1ダイオード)
17 平滑コンデンサ
18 比較器
19 ダイオード(第2ダイオード)
20 出力コンデンサ
21 供給路
22 蓄電装置
23 直流電源
J1 接続点(第1接続点)
J2 接続点(第2接続点)
J3 接続点(第3接続点)