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特許7340783オゾン発生用電極素材の製造方法および電極素材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】オゾン発生用電極素材の製造方法および電極素材
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/083 20210101AFI20230901BHJP
   C25B 11/052 20210101ALI20230901BHJP
   C25B 11/061 20210101ALI20230901BHJP
   C25B 11/063 20210101ALI20230901BHJP
   C25B 1/13 20060101ALI20230901BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20230901BHJP
   C23C 24/08 20060101ALI20230901BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
C25B11/083
C25B11/052
C25B11/061
C25B11/063
C25B1/13
C25B9/23
C23C24/08 C
C23C26/00 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022117327
(22)【出願日】2022-07-22
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000147811
【氏名又は名称】トーメイダイヤ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
(72)【発明者】
【氏名】諏訪部 仁
(72)【発明者】
【氏名】藤野 聡
(72)【発明者】
【氏名】藤川 洋基
(72)【発明者】
【氏名】山中 博
(72)【発明者】
【氏名】石塚 ひろみ
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-532472(JP,A)
【文献】特表2014-502312(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107312958(CN,A)
【文献】特開2020-040138(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0086702(US,A1)
【文献】特開平05-301066(JP,A)
【文献】特開2005-325417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00-15/08
C02F 1/46-1/469
C23C 24/00-30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素含有ダイヤモンド(BDD)粒子が金属基体上に固着され、かつ全体的に導電性が確立される電極素材の製造方法において、金属基体表面にレーザー光を走査照射して基体材の表面を局部的かつ瞬間的に加熱して表層を溶融すると共に、該部分の流動状態時にBDD粒子を供給配置し、該部分の冷却後ダイヤモンド粒子が凝固金属によって保持された複合体として回収する一連の操作を、周囲から隔離されたアルゴン雰囲気中で実施することを特徴とする、BDD粒子固着電極素材の製造方法。
【請求項2】
前記金属基体材が主成分として周期律表四、五、六族遷移金属並びに鉄族金属種から選ばれる1種を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基体材が主成分として融点2000℃以下の金属種を含有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記基体材が主成分としてTi、Zr、Si並びに鉄族金属から選ばれる1種を含有する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基体材が主成分としてFe、Ni、Co、Crから選ばれる1種を含有する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ダイヤモンド粒子がD50平均粒度10~300μmの整粒された粒子である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記レーザー光照射をファイバーレーザーによって行う請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記レーザー光照射を出力50~350Wのファイバーレーザーによって行う請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオゾン発生用電極素材、特にオゾン水発生や様々な規模における汚染水の浄化を目的とし、水処理設備用に適する導電性のダイヤモンド粒子を用いた、固有の製法に由来する固有の構造を有する電極素材、並びに製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業分野の汚水処理において、オゾンを水電解によって発生させ、その化学的特性を利用する処理工程が広く行われている。このような環境で使用される電極は過酷環境に耐える耐性、及びかかる環境下で継続して十分な機能を発揮しなければならない、という厳しい条件が求められる。化学的耐性の高い電極材を構成する一策として、シリコンまたはニオブ、タンタルなどの金属を基体材とし、その表面に導電性付与のためにホウ素(B)を含有させたダイヤモンド膜を気相合成法(CVD)によって形成する方式が広く用いられている。
【0003】
電解用の電極を構成するための別の方法として、金属電極基板上に導電性のダイヤモンド粒子を分布・固定する方法も確立されている。例えば特許文献1には導電性ダイヤモンド粒子を導電性ろう材を用いて導電性基板上に接合し、ダイヤモンド粒子間の隙間を絶縁材料で埋める構成が記載されている。
【0004】
或いは特許文献2では超高圧技術を用いて、Tiなどの遷移金属板上に、遷移金属炭化物を介してBDD粒子を固着接合する技術が示されており、また特許文献3ではTiまたはSUS製網上にBDD粉末を担持した水電解用の電極材料が開示されている。
【0005】
一方、ダイヤモンド粒子を砥粒として用いる工具の製作において、切削等用途の工具製作分野では、台金の表面に高エネルギー線 (例えばレーザー光) を照射して、台金の溶融箇所に研削材としてのダイヤモンド砥粒を供給、固着することは公知である(例えば特許文献4)。
また非特許文献1にはこのような用途のレーザー光照射に特にファイバーレーザー光を用い、金属材料上に研削砥粒としてのダイヤモンド粒子を固着する手法が開示されている。工具の台金にレーザー光を照射、局所加熱によって部分溶融した金属の微小箇所に、ダイヤモンド粒子をアルゴンガスに載せて供給、埋め込んで固着するものである。
【0006】
この技術では各微小箇所での処理が極めて短時間で完結するので、レーザー光照射を台金上で走査することにより、大きな工具面積を有するダイヤモンド工具製作におけるダイヤモンド粒子固着への適用可能性が期待できる。この手法で用いるレーザー照射による加熱は3000℃を超える高熱を発するにも拘わらず、照射所要時間はごく短時間で処理できることから、ダイヤモンド砥粒のグラファイト化・劣化を伴わない効果的な手法と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-325417号公報
【文献】特開2022-069974 公報
【文献】特許第7010529号公報(再表WO2020/171238号公報)
【文献】特開2020-040138号(特許第7012276号)公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】砥粒加工学会誌 vol.66 No.5 pp.263-268 (2022)
【発明の概要】
【0009】
基板上にホウ素(B)含有ダイヤモンド粒子を固着した電極構成では、素材の製造に際して一般に、電極面に配置されるダイヤモンド粒子の充填密度を可能な限り高くし、同時にダイヤモンド粒子の脱落防止のために粒子と基体表面との間には化学結合に基づく強固な結合が要求されてきた。
【0010】
この理由は、電極としての性能を最大限発揮すると共に、電極面に露出している基体金属に由来する金属酸化物膜による電極性能低下の防止、ならびにダイヤモンド粒子の配置が実質的に単層であるため、基体金属の表面とダイヤモンドの結晶面との間に強力な接合力が要求されることに由来する。
【0011】
しかし本発明者らは、基体金属酸化物は電解時の還元領域に曝すことで実質的に除去可能であること、基体からダイヤモンド粒子へは通電経路の確保が要件で、強固な化学結合は必須要件ではないことを知見した。
【0012】
電極としての性能を十分に発揮させる見地から、電極の全面にホウ素含有ダイヤモンドが配置されていることが望まれる。例えばチタン基板等の基体上にCVD法で形成したホウ素含有ダイヤモンド膜は、密集したダイヤモンド結晶による多結晶質集合体で構成されていることから、基板表面がオゾンを含む強力な酸化雰囲気に曝される確率は低く、長時間の運転に耐えると理解される。
【0013】
一方ホウ素含有ダイヤモンド粒子を基体上に配置する電極構成では、ダイヤモンド粒子間々隙をダイヤモンド粒子で埋め尽くすことは実質的に不可能であり、陽極において基体表面が酸化雰囲気に曝されることは避けられない。
【0014】
ところがダイヤモンド粒子表面が金属酸化物で覆われた電極を陰極として用いた電解工程では、金属酸化物による障害(電気抵抗の増大現象)が除かれることが判明し、さらにこのような同じ構成の電極をプロトン伝導性膜(例えばナフィオン(登録商標)膜)を介して対向配置し、一定時間、例えば1~5分間ごとに極性を反転させた場合には、長時間の電解操作に耐えることを知見した。
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は過酷な環境で使用可能な化学的・物理的耐久性を有し、安定した性能を長期間発揮可能な電極素材の製法、特に様々な形状・寸法の電極素材の製作に適用可能な方法、及び製造された電極素材を提供することである。
本発明者等は上記各知見を様々な事例について研究を進め、その結果として本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の要旨とするところは、ホウ素含有ダイヤモンド(BDD)粒子が金属基体上に固着され、かつ全体的に導電性が確立される電極素材の製造方法において、金属基体の表面にレーザー光を走査照射して表面の基体材を局部的かつ瞬間的に加熱して表層を溶融すると共に、該部分の流動状態時にBDD粒子を供給配置し、該部分の冷却後ダイヤモンド粒子が凝固金属によって保持された複合体として回収するが、特にこれらの一連の操作を、アルゴン雰囲気中で実施することを特徴とする、BDD粒子固着電極素材の製造方法にある。
【0017】
本発明の要旨はまた、上記方法で作製されたダイヤモンド電極素材、特に金属基体の表面の一部分が加工後の部分溶融履歴を示し、かつ該溶融履歴部分にホウ素含有ダイヤモンド(BDD)粒子が一体化固着され、ダイヤモンド粒子の側面(基板の厚さに垂直な方向の面)が基体材金属の一部で保持されている、請求項1に記載の方法で製造された電極素材に存する。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては導電電極素材の製作に際して、レーザー照射に基づく瞬間加熱により、実質的にダイヤモンドのグラファイト化を来すことなく、広範な材料上に導電性ダイヤモンド粒子を固着できるので、性能の安定した多様な電極素材を短時間で製作することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の電極素材において、金属基体材は融点2000℃以下の金属を主成分とする広範な金属材から選択利用できる。このような金属としては特に周期律表四、五、六族遷移金属並びに鉄族金属、好ましくはTi、Zr、Si、Fe、Ni、Co、Crから選ばれる1種、を含有することができる。
【0020】
本発明では金属基体の加熱溶融手段として特に、局部加熱が可能なファイバーレーザーを用いることができるので、溶融部分の熱は速やかに周囲へ拡散されることから、ダイヤモンド粒子固着のための反応時間は最長でも数秒と極度に短いのが特徴である。 このためダイヤモンドのグラファイト化が始まる誘導時間内に工程が完結する。
【0021】
一方、上記金属種であっても融点が2000℃を超える金属 (例えばニオブ)は、ファイバーレーザーを用いた微小部分の加熱法において溶融に比較的長時間を要することになり、ダイヤモンド粒子が高温に曝される時間も延びてグラファイト化が避けられなくなることから、本発明には適さない。
【0022】
本発明者等の経験によれば、ダイヤモンドのグラファイト化は、酸素の存在によって著しく促進されるので、ダイヤモンド粒子の高温加熱は無酸素雰囲気中で実施する必要がある。酸素遮断法としては、保護ガスの吹き付けではなく、障壁で囲まれた作業域を確立して不活性ガス、特に外気よりも比重の大きなアルゴンガスを満たし、不活性ガス雰囲気の作業空間でレーザー加熱によるダイヤモンド固着を行うのが好ましい。
【0023】
作業空間を外気から遮断し不活性(中性)ガス雰囲気とする方法として、一般に雰囲気ガスを加工箇所に向けて噴射する方式が用いられている。しかし噴射方式では周囲空気の巻き込みリスクを完全に避けることは不可能である。レーザー加工のための無酸素作業空間(領域)の確立には電極基体材表面から一定高さの堰堤による包囲および比重の大きな不活性ガスの充填が有効である。堰堤の高さは電極素材基体の大きさにもよるが、基体から10mm以上の高さが必要で全周囲360°を包囲する。充填するガスとしてはアルゴンであれば空気に対する比重が1.4であり、好適である。
【0024】
また本発明の電極素材で使用するBDD粒子の粒度はD50平均粒度が10~300μmの広い範囲の、市販の整粒された粒子が利用可能である。10μm以下の微粒子ではアルゴンガスで運ばれる粒子の溶融箇所周辺への飛散量の増加によるロスが目立ち、300μmを超える粗大粒子になると、ダイヤモンド粒子とプロトン電導性膜と水との三成分が会合する電極作用点の数の減少による電解性能の低下が顕著になるので好ましくない。より好ましい粒度は20~100μmの範囲内である。
【0025】
前記本発明において走査照射は50~350Wの熱入力によって行う。使用するレーザー加熱装置としては所望微小部分へのピンポイント照射機能を備えていれば、ファイバーレーザーに限らず、その他各種の装置が利用可能である。
【0026】
既述のように、導電性ダイヤモンド粒子を固着した電極素材においては、使用中に粒子表面に基体金属の酸化物が付着することがあるが、このような状態においても両極に同じ構成の導電性電極を用い、電極対の極性を自動的に切り替えることにより、酸化物被膜による影響を低減乃至排除することが可能である。
【0027】
本発明方法によるホウ素含有ダイヤモンド粒子の固定は、レーザー加熱によって溶融した基板金属のプール中へ落下した粒子が、冷却固化し、収縮した金属成分によって周囲から締め付けられた状態で保持されている。固定状態は粒子表面積の1/2以上が金属成分に接していれば電極用途としては十分であり、通電経路の確保も達成される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に従って作製された電極素材表面の状態を示す写真(実施例1)。
図2】本発明に従って作製された電極素材について行ったラマン分析の結果(実施例1)。
【実施例1】
【0029】
直径80mm、厚さ1mmのチタン板上にファイバーレーザー溶着によって#270/325のボロンドープダイヤモンド(BDD)砥粒(FACT社製:平均粒径約50μm)の固着を行った。加工には(株)村谷機械製作所製ALP-DI-4Axis-450レーザー加工機を用いた。この装置は3本のレーザー光を1点に集光する構造になっており、走査におけるレーザー光の送りは試料台の移動速度で制御した。
【0030】
ダイヤモンド粒子はチタン板上に、試料台上方のホッパーからアルゴンガスと共にレーザー光の集光部へ供給され、この操作例においては毎分約20mgの一定速度で連続して供給した。照射はレーザー光出力50W、レーザーヘッド送り速度2.5mm/s、 照射ピッチ0.25mmの条件で40列走査し、10mm×13mmの領域にダイヤモンド粒子を固着した。
【0031】
照射領域は内径100mm、高さ15mmの堰堤で包囲して、予めアルゴンガスを満たしておくと共に別の回路を用いてアルゴンガスを送入、空気の侵入を防止した。こうして形成されたアルゴンプール中で作業を行い、チタン板上に約0.2mmの幅で固定されたダイヤモンド粒子層を得た。固着操作に要した時間は約4分間であった。
【0032】
得られたBDD固着チタン板からワイヤーカットにより8mm×8mmの電極素材のサンプルを切り出した。このサンプルについてラマン分析を行い、ダイヤモンドに帰属する1333cm-1の鋭いピークを得た(図2)。一方グラファイト帰属の1580cm-1付近のピークは弱く、レーザー加熱によるダイヤモンドのグラファイト化は無視できるレベルであることが認められた。
【0033】
この電極素材を陽極側とし、陰極側にはCVD法でニオブ板上にボロンドープダイヤモンドを析出させた電極素材(CVD電極)を用い、ナフィオン(登録商標)膜(厚さ0.18mm)を介して電極面を対向固定した電極セットを製作した。得られた電極セットを600mLの脱イオン水を入れた1Lビーカー内に取り付け、電源装置を1ppmのオゾン発生を目指した0.2Aの定電流に設定し、脱イオン水を補給しながら連続運転を行って電圧の変化を観察した。運転開始時に8.16Vであった付加電圧は、140時間経過後10.6V、258時間後には17.3Vに上昇した。
【0034】
通電開始直後の発生オゾン濃度は1.10ppmであり、通電終了直前では0.98ppmであって、運転中を通じて1ppmを維持した。なお発生するオゾン濃度は20分間の通電で水中に溶け込んだオゾン量をパックテストで求める方法で測定し、約24時間毎に実施した。
【0035】
取り出したBDD電極面にはダイヤモンド粒子間に白色粉末が付着しており、X線回折によってTiO組成の酸化チタンが同定された。この白色粉末は砥粒の脱落を伴わないで歯ブラシで除去することが可能であり、除去後の付加電圧は9.33Vに低下し、発生オゾン濃度は1.15ppmに向上した。
【実施例2】
【0036】
酸化チタンの生成を抑制する試みとして実施例1の電極セットにおいて逆電圧を付加し、同様の操作を繰り返した。
BDD電極を陽極として通電開始し、0.2Aの電流を流すのに20.3Vの電圧付加が必要になった時点で極性の反転を行い、BDD電極を陰極側に、CVDダイヤモンド被覆電極を陽極として0.2Aの電流を通したところ、通電開始後1分で付加電圧は11.0Vに低下し、5分後には10.2Vで定常状態になった。
【0037】
さらにBDD電極を陽極に、CVD電極を陰極に戻して付加電圧が15Vに上昇するまで通電を続け、再び極性を反転したところ約10Vで定常状態になり再現性が確認され、長時間の連続運転の可能性が確保された。
【実施例3】
【0038】
電極基板材料として、直径70mm, 厚さ1mmの SUS304、SUS430の2種類の鋼板を使用し、上記実施例の操作を反復した。レーザー光出力を250Wとした他は実施例1と同じ条件とした。
出力を上げたのにも拘わらず、レーザー加熱によるダイヤモンドのグラファイト化は無視できるレベルであった。
【0039】
得られたBDD溶着SUS基板から10mm×10mmの部分をワイヤーカットで切り出し、電極素材とした。SUS基板電極を陽極側、CVD電極を陰極側とした電極セットを構成して通電し、電解操作を行った。10V、0.2Aの通電により、SUS304基板の場合0.93ppm、SUS430基板の場合1.12ppmの発生オゾン濃度が得られ、両鋼種共にオゾン発生電極として機能することが確かめられた。同時に10分間の通電で酸化膜の出現による5Vの電圧上昇が認められた。
【実施例4】
【0040】
上記で用いた2種類のSUS基板電極を、ナフィオン膜を介して対向配置して電極セットを構成した。この電極セットを15Vの定電圧電源に接続し、1分毎に極性を反転させて連続運転を行った。一昼夜の連続運転の間電流値が0.2A~0.3Aの範囲内に収まったことで、長時間運転の見通しが得られた。
【要約】
【課題】
過酷な環境で使用可能な化学的・物理的耐久性を有し、安定した性能を長期間発揮可能な電極素材の製法、特に様々な形状・寸法の電極素材の製作に適用可能な方法、及び製造された電極素材を提供すること。
【解決手段】
BDD粒子固着電極素材の製造方法であって、ホウ素含有ダイヤモンド(BDD)粒子が金属基体上に固着され、かつ全体的に導電性が確立される電極素材の製造方法において、金属基体の表面にレーザー光を走査照射して表面の基体材を局部的かつ瞬間的に加熱して表層を溶融すると共に、該部分の流動状態時にBDD粒子を供給配置し、該部分の冷却後ダイヤモンド粒子が凝固金属によって保持された複合体として回収する。特にこれらの一連の操作をアルゴン雰囲気中で実施するのが有効である。
【選択図】図1
図1
図2