(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20230901BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230901BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20230901BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230901BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/34
A61Q1/00
A61Q19/00
A61Q19/10
(21)【出願番号】P 2017053004
(22)【出願日】2017-03-17
【審査請求日】2020-03-02
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2016083429
(32)【優先日】2016-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166959
【氏名又は名称】御木本製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中野 章典
【合議体】
【審判長】木村 敏康
【審判官】野田 定文
【審判官】冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-322570(JP,A)
【文献】特開2012-250924(JP,A)
【文献】特開昭60-38310(JP,A)
【文献】特開平4-182413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)HLB値が10~20の範囲であり、アルキル鎖長が10~24の範囲である直鎖 状のPOEアルキルエーテル及び/又はPOE・POPアルキルエーテル
(B)アルキル鎖長が14~18の範囲である直鎖状の高級アルコール
(C)
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、および1,2-オクタンジオールから選ばれる1種以上の親水性2価アルコール
(D)水
(F)
アミノ酸類及びその塩並びに誘導体、加水分解ペプチド或いはその水溶性誘導体、アスコルビン酸及びその塩並びに誘導体、ビタミンB群類、パントテン酸、パンテニルエチルエーテル、パンテノール、ビオチン、水溶性ビタミンE類、ヒドロキノン配糖体及びそのエステル類、コウジ酸、エラグ酸塩、トラネキサム酸塩及びその誘導体、フェルラ酸塩及びその誘導体、プラセンタエキス、アセチルグルコサミン、グルタチオン、グリチルリチン酸及びその塩並びに誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、およびアラントインから選ばれる1種以上の水溶性有効成分を含有し、
(B)の 高級アルコールの配合量が0.1重量%~3重量%で、かつ、(A)のPOEアルキルエーテル及び/又はPOE・POPアルキルエーテルと(B)の 高級アルコールの重量比が(A):(B)が1:0.05~5:4であり、パール光沢を呈することを特徴とする
、弱酸性の
皮膚に対してバリア性を付与する液状又は乳液状の化粧料。
【請求項2】
さらに(E)油分を含有する請求項1のパール光沢を呈することを特徴とする化粧料。
【請求項3】
(E)の油分がコレステロールまたはその誘導体、フィトステロールまたはその誘導体、ラノリンまたはその誘導体、ジペンタエリトリット誘導体から選ばれる1種又は2種以上の抱水性油分である請求項2に記載の化粧料。
【請求項4】
(F)の水溶性有効成分としてグリチルリチン酸ジカリウムを含む請求項1乃至3のいずれかに記載の化粧料。
【請求項5】
製剤が化粧水、液状の美容液、または液状の浴用剤であることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれかに記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パール光沢のある外観を有し、温度変化などの影響を受けず長期間安定で外観上の優位性を持続し、さらに優れた保湿機能を有し、さらに薬剤の経皮吸収性に優れた化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品の審美性を高めるために、パール光沢を付与する技術として、薄板状のマイカ粒子を二酸化チタンで被覆したパール顔料や魚鱗粉、ジステアリン酸グリコールの晶析を利用したパール化剤などが利用されている。しかしながら、原料特性上パール顔料の配合はメイクアップ製品等に限定され、パール化剤も洗浄剤に限定的に利用されており、低粘度の化粧水等に安定なパール光沢を付与することができなかった。また、セラミド等の結晶性の高い成分を配合して化粧水にパール様光沢を付与する製剤技術も公開されているが、凝集沈殿など安定性に課題があり、パール光沢感も十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-167041号公報
【文献】特開2010-241795号公報
【文献】特開2006-248925号公報
【文献】特開2002-128639号公報
【文献】特開平11-79933号公報
【文献】特開昭63-287718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、長期にわたり安定なパール光沢を維持するとともに、皮膚に対して優れた保湿性およびバリア性を付与することができ、さらに薬剤の経皮吸収を促進することができるパール光沢を有する化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意検討した結果、以下の方法で上記課題が解決できることを見出した。
(A)HLB値が10~20の範囲であり、アルキル鎖長が10~24の範囲である直鎖状のPOEアルキルエーテル及び/又はPOE・POPアルキルエーテル
(B)アルキル鎖長が14~18の範囲である直鎖状の高級アルコール
(C)親水性2価アルコール
(D)水
を含有し、パール光沢を呈することを特徴とする化粧料。
以下に具体的に説明する。
まず、(A)のPOEアルキルエーテル及び/又はPOE・POPアルキルエーテルは、直鎖状でHLB値が10~20であり、アルキル鎖長が10~24の範囲であることが好ましい。例示すればPOEデシルエーテル、POEラウリルエーテル、POEミリスチルエーテル、POEアルキル(12-14)エーテル、POEセチルエーテル、POEオレイルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEトリデシルエーテル、POE・POPブチルエーテル、POE・POPデシルエーテル、POE・POPラウリルエーテル、POE・POPミリスチルエーテル、POE・POPアルキル(12-14)エーテル、POE・POPセチルエーテル、POE・POPステアリルエーテル、POE・POPベヘニルエーテル、 POE・POPデシルテトラデシルエーテル等を1種又は2種以上の混合で利用できる。
【0006】
本発明において、HLB値は、有機概念図におけるIOB×10で示される。前記有機概念図におけるIOBとは、前記有機概念図における有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比、即ち「無機性値(IV)/有機性値(OV)」をいう。
前記有機概念図とは、藤田穆により提案されたものであり、その詳細は、“Pharmaceutical Bulletin”, 1954, vol.2, 2, pp.163-173;「化学の領域」, 1957, vol.11, 10, pp.719-725;「フレグランスジャーナル」, 1981, vol.50, pp.79-82などで説明されている。即ち、全ての有機化合物の根源をメタン(CH4)とし、他の化合物は全てメタンの誘導体とみなして、その炭素数、置換基、変態部、環などにそれぞれ一定の数値を設定し、そのスコアを加算して有機性値及び無機性値を求める。この値を、有機性値をX軸、無機性値をY軸にとった図上にプロットしていくものである。この有機概念図は、「有機概念図-基礎と応用-」(甲田善生著、三共出版、1984)などにも示されている。
(A)のPOEアルキルエーテルやPOE・POPアルキルエーテル以外の界面活性剤も勿論配合できるが、(A)のPOEアルキルエーテルやPOE・POPアルキルエーテルの配合量の30重量%以下が好ましい。
(A)のPOEアルキルエーテルやPOE・POPアルキルエーテルの配合量は0.1重量%~10重量%が好ましく、0.3重量%~5重量%がより好ましい。
【0007】
(B)の高級アルコールは、直鎖状でアルキル鎖長が14~18であることが好ましい。例示すればミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ヤシ油アルコール等を1種又は2種以上の混合で利用できる。
その配合量は0.1重量%~10重量%が好ましく、0.3重量%~3重量%がより好ましい。
また、アルキル鎖長が18を越える直鎖状アルコールや分岐状高級アルコールも配合可能であるが、種々の条件によって変化するが、アルキル鎖長が14~18の範囲である直鎖状の高級アルコールの配合量の30重量%以下、好ましくは20重量%以下にする。
【0008】
本発明のパール光沢を有する化粧料は(A)と(B)を特定の含有比率で配合することにより、パール光沢及び保存安定性を向上させることができる。すなわち(A):(B)が1:0.01~1:3の範囲が好ましく、1:0.05~2:3の範囲がより好ましい。(重量比)
【0009】
(C)の親水性2価アルコールは、化粧品原料として使用可能であれば特に制限はない。例示すればエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等を1種又は2種以上の混合で利用できる。その配合量は0.1重量%~50重量%が好ましく、1重量%~30重量%がより好ましい。
【0010】
(D)の水は化粧品に使用できる水であればよく、精製水、天然水、温泉水等を1種以上用いる。
【0011】
(A)~(D)以外の成分も配合可能である。
その1つに(E)の油分がある。油分は、化粧品原料として使用可能であれば特に制限はない。例示すればアボガド油、アーモンド油、オリーブ油、ゴマ油、サフラワー油、シア脂、大豆油、ツバキ油、綿実油、パーム油、パーム核油、モクロウ、ヤシ油、牛脂、豚脂、スクワラン、ミツロウ、カルナバロウ、鯨ロウ、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、キャンデリラロウ、モンタンロウ、セラックロウ、ライスワックス、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、これらの水素添加物等の各種油脂類、ロウ類。
コレステロール、ラノリン脂肪酸コレステリル、分岐脂肪酸(C12-31)コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、リシノール酸コレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル、オレイン酸ジヒドロコレステル、ノナン酸コレステリル、酪酸コレステリル、酪酸ジヒドロコレステリル等のコレステロールまたはその誘導体、フィトステロール、ラノリン脂肪酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル、12-ヒドロキシステアリン酸フィトステリル、リシノール酸フィトステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル等のフィトステロールまたはその誘導体、ラノリン、吸着精製ラノリン、液状ラノリン、ラノリンアルコール,水素添加ラノリンアルコール、ラノリン脂肪酸等のラノリンまたはその誘導体、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル等のジペンタエリトリット誘導体、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、ミリストイルメチル-β-アラニン(フィトステリル/デシルテトラデシル)等の抱水性油分。
パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、オレフィンオリゴマー、流動パラフィン、流動イソパラフィン、プリスタン、水添ポリブテン、水添ポリデセン、重質流動イソパラフィン等の鉱物油。
ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のエステル類。
ビタミンA油、ビタミンAパルミテート、ビタミンAアセテート、リボフラビン、ビタミンCジパルミテート、エルゴカルシフェロール、ビタミンE、ビタミンEアセテート、ビタミンEニコチネート等の油溶性ビタミン類。
ユーカリ油、ノバラ油、ローマカミツレ油、ウイキョウ油、ハッカ油、ベルガモット油、ペパーミント油、スペアミント油、バジル油、タイム油、油溶性甘草エキス等の植物の油溶性成分。
【0012】
このなかで、コレステロールまたはその誘導体、フィトステロールまたはその誘導体、ラノリンまたはその誘導体、ジペンタエリトリット誘導体等の抱水性油分は優れた保湿効果を示し、本発明の化粧料の利用価値を高める。なお抱水性油分のなかでもラノリン脂肪酸コレステリル、分岐脂肪酸(C12-31)コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、リシノール酸コレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル、オレイン酸ジヒドロコレステル、ノナン酸コレステリル、酪酸コレステリル、酪酸ジヒドロコレステリル等のコレステロール誘導体、ラノリン脂肪酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル、12-ヒドロキシステアリン酸フィトステリル、リシノール酸フィトステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル等のフィトステロール誘導体がより本発明の課題を解決することがわかった。
なお、コレステロール、フィトステロールを配合する場合は、他の油分も併用した方が本発明の化粧料の利用価値を高める。
本発明のパール光沢を有する化粧料の油分は抱水性油分を配合すると、特に優れた保湿効果を示し好ましい。その配合量は0.01重量%~5重量%が好ましく、0.1重量%~1重量%がより好ましい。
【0013】
これ以外に(F)の水溶性有効成分の配合も有効であり、本願発明は水溶性有効成分の経皮吸収を高めることがわかった。
水溶性有効成分を例示すると、ベタイン(トリメチルグリシン)、プロリン、ヒドロキシプロリン、アルギニン、リジン、セリン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、β-アラニン、スレオニン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、トリプトファン、ヒスチジン、タウリン、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸、カルニチン、カルノシン、クレアチン等のアミノ酸類及びその塩並びに誘導体;ケラチン、コラーゲン、エラスチン、コンキオリン、シルク、大豆蛋白、小麦蛋白、カゼイン等の加水分解ペプチド或いはその水溶性誘導体;アスコルビン酸及びそのナトリウム等の塩等のビタミンC類;アスコルビン酸エチルエーテル等のアスコルビン酸アルキルエーテル、アスコルビン酸-2-グルコシド等のアスコルビン酸グルコシド及びその脂肪酸エステル、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム塩及びアスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩、パルミトイルアスコルビン酸リン酸エステルナトリウム塩、リン酸トコフェリルアスコルビル等のアスコルビン酸リン酸エステル塩等のアスコルビン酸誘導体;チアミン塩酸塩、チアミン硫酸塩、リボフラビン、酢酸リボフラビン、塩酸ピリドキシン、フラビンアデニンジヌクレオチド、シアノコバラミン、葉酸類、ニコチン酸、ニコチン酸アミド等のニコチン酸類、コリン類等のビタミンB群類;パントテン酸、パンテニルエチルエーテル、パンテノール、ビオチン等のその他ビタミン類;トコフェロールリン酸エステル等の水溶性ビタミンE類;アルブチン、α-アルブチン等のヒドロキノン配糖体及びそのエステル類;コウジ酸、エラグ酸塩、トラネキサム酸塩及びその誘導体、フェルラ酸塩及びその誘導体、プラセンタエキス、アセチルグルコサミン、グルタチオン、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、グアイアズレン、アラントイン、インドメタシン、カフェイン、α-リポ酸、ルチン及び配糖体等の誘導体;ヘスペリジン及び配糖体等の誘導体;グァバ、西河柳エキス等の各種植物エキス等が挙げられる。
これら水溶性有効成分を目的に応じて1種以上選択する。
これ以外にも水溶性成分を配合することはなんら問題はない。
【0014】
上記(A)~(F)以外の成分も必要に応じて配合することができる。しかしながら、パール光沢の維持等本願発明の主旨を保つ範囲で配合することは当然である。
以下に例示すれば、
水相成分としては、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリトリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、グリセルグルコシド等の多価アルコール類。
塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムの無機塩類。
グリコール酸、乳酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、多糖、キレート剤、防腐剤、色素等が例示され、必要に応じて配合できる。
【0015】
本発明の製造方法は、プロペラミキサー、パドルミキサー、ディスパーミキサー等の乳化機を用いて常法に従い調製可能である。すなわち、油相、水相をそれぞれ必要に応じて加温し、撹拌しつつ油相と水相を合わせていく。
【0016】
本発明のパール光沢を有する化粧料は、半透明ないし白濁であってパール光沢を帯びた外観を呈するものであり、形状は液状~乳液状が好ましく、例示すれば化粧水、乳液、美容液、浴用剤などであるが、パール光沢を有するものであれば剤型を問わない。
【実施例】
【0017】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0018】
表1、表2に実施例及び比較例の組成と結果を示す。(なお、配合量は重量部である)
製法は、油相、水相をそれぞれ、80℃まで加温し、ディスパーミキサーで撹拌しつつ水相に油相を徐々に加えたのち、冷却した。
評価は、以下の項目で行った。
(1)製造直後のパール光沢感、(2)製造直後の光学異方性、(3)1ヶ月間保存安定性試験品(試験温度:5℃、25℃、40℃)におけるパール光沢感の変化、沈殿、分離を目視観察によって評価した。
各温度の評点の平均点を以下の基準で判定した。
【0019】
(試験1)パール光沢感(製造直後)
50mLの透明ガラス容器にサンプルを充填し、目視によりパール光沢感の観察を行った。
(評価基準)
4:非常に強いパール光沢感がある
3:パール光沢感がある
2:パール光沢感があまりない
1:パール光沢感が全くない
(判定)(評点の平均点)
◎:3.5点以上
○:3点以上3.5点未満
△:2点以上3点未満
×:2点未満
【0020】
(試験2)光学異方性
50mLの透明ガラス容器に充填したサンプルを、直交させた偏光板の間に置いて観察した時の状態により光学異方性の有無を目視評価した。
【0021】
(試験3)保存安定性
50mLの透明ガラス容器に充填したサンプルを、5℃、25℃、40℃の恒温槽に1ヶ月間保管した後、それぞれのサンプルの経時変化を目視評価した。
(評価基準)
3:直後のパール光沢感と比較してほとんど同じであり、沈殿、分離等が見られない
2:直後のパール光沢感と比較してやや少ない、又はわずかな沈殿、分離等が見られるが商品価値を損ねない範囲である
1:直後のパール光沢感と比較して明らかに少ない、又は明らかな沈殿、分離等が見られ商品価値を損なっている
5℃、25℃、40℃の評点の平均点で判定した。
(判定)(評点の平均点)
◎:2.5点以上
○:2点以上2.5点未満
×:2点未満
【0022】
【0023】
【0024】
表1の結果から明らかなように、実施例1~12は製造直後のパール光沢感に優れ、保存安定性試験におけるパール光沢感及び安定性も優れたものであった。一方、表2に示されるように、パール顔料を配合した比較例1では製造直後のパール光沢は良好であったが、保存中にパール顔料が凝集沈殿した。また、アルキル鎖長が14~18の高級アルコールを含まない比較例2~4ではパール光沢感はほとんどないか、保存中にパール光沢が消失し、保管温度の影響を受けやすく安定なパール光沢を維持できなかった。HLB値が10以下のPOEアルキルエーテルやPOE・POPアルキルエーテルを用いた比較例5~7ではパール光沢は見られず、光学異方性も見られなかった。
HLB値は10~20であるが、アルキル鎖長が10~24の範囲である直鎖状のPOEアルキルエーテルやPOE・POPアルキルエーテルと構造が異なる界面活性剤を用いた比較例8~10では製造直後は僅かなパール光沢が見られたものもあるが、保存中にパール光沢が消失又は分離した。
親水性2価アルコールを配合しない比較例11では製造直後のパール光沢も少なく、保存中にパール光沢が消失した。比較例12は偏光板観察で光学異方性を示しラメラ構造を有しているが、パール光沢を示さなかった。
【0025】
これらの結果より、HLB値が10~20の範囲でありアルキル鎖長が10~24の範囲である直鎖状のPOEアルキルエーテル及び/又はPOE・POPアルキルエーテル、アルキル鎖長が14~18の範囲である直鎖状の高級アルコール、親水性2価アルコール及び水の配合が、審美感が高く安定なパール光沢を形成する必須成分であることが示唆される。
【0026】
(試験4)保湿性試験
実施例1、比較例1及び比較例13の組成物を肌に塗布した場合の肌水分量を皮表角層水分量測定装置により測定した。(n=11、21±2℃、RH45±10%、SKICON-200EX(IBS社製)
水分量は塗布前の測定値を1とした数値で表した。結果を
図1に示す。
なお、比較例13は、実施例1の油分(オレイン酸ジヒドロコレステリル、ノナン酸コレステリルの等量混合物の代わりに水に置換えを行って製剤を調製した。比較例13は油分を含まないが、α-ゲル構造を形成しパール光沢を呈している。)
【0027】
図1より明らかなように、実施例1では比較例1及び比較例13に比べて各層水分量が高く、長時間にわたって保湿力が持続する傾向が見られた。すなわち、本発明のパール光沢を有する化粧料は審美性に優れるとともに、肌への水分付与効果にも優れ、化粧料として有用性が高いことが示された。
【0028】
(試験5)水分保持機能試験
実施例1、比較例1及び比較例13の組成物を塗布したメンブランフィルターで水を入れた容器の口を覆い、低湿度環境下で容器内の水の重量を測定開始時と48時間後を測定し、重量変化を見た。水分蒸散抑制率は組成物無塗布品の水分喪失量から試験品塗布品の水分喪失量を差し引いたものを、無塗布品の水分喪失量で割った100分率で表した。結果を
図2に示す。
【0029】
図2より明らかなように、比較例1では水分蒸散抑制は見られないが、実施例1では比較例13と比較しても顕著な水分蒸散抑制効果が確認された。すなわち、本発明のパール光沢を有する化粧料は審美性に優れるとともに、肌への水分付与効果及び肌の水分保持機能にも優れ、化粧品として有用性が高いことが示された。
【0030】
(試験6)経皮吸収性
2.0cm角のYucatan micro-pig皮膚切片に試験品を50mg塗布し、緩衝生理食塩水で湿らせた濾紙を敷いたシャーレーに保管し、32℃のインキュベーター内に4時間保管し、経皮吸収を行った。経皮吸収終了後、皮膚切片の表面に塗布した試験品をキムワイプで拭き取り除去し、さらにセロハンテープで皮膚表面を3回剥離操作した。その後、60℃で70秒加熱し、表皮をピンセットで採取した。採取した表皮を3mLの移動相に入れて、一晩振盪抽出を行った。抽出液中のグリチルリチン酸ジカリウムを高速液体クロマトグラフィーで測定した。高速液体クロマトグラフィーの測定は、以下の条件で測定した。
カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル、移動相:リン酸二水素カリウム/アセトニトリル、検出方法:紫外線吸収、検出波長:254nm。
試験品は実施例1及び比較例1の組成物を用いて実験した。結果を
図3に示す。
【0031】
図3より明らかなように、実施例1では比較例1に比べて高い経皮吸収性を示した。すなわち、本発明のパール光沢を有する化粧料は審美性に優れるとともに、保湿機能に優れ、さらに有効成分の肌への経皮吸収性に優れ、化粧品として有用性が高いことが示された。
【0032】
層状構造体(α-ゲル)の確認は、公知の方法で行うことができる。例示すれば、実施例2についてX線散乱測定を行ったところ、小角領域においてラメラ構造に由来する繰り返しの散乱パターンが得られるとともに、広角領域において六方晶系に特有の鋭い単一ピークの散乱像を示し、α-ゲル構造をとっていることが示唆された。また、凍結割断レプリカを用いた透過型電子顕微鏡観察によって層状構造が観察された(
図4)。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】(試験4)保湿性試験の結果で横軸に塗布後の時間(分)、縦軸に塗布前の皮膚水分値を1として変化率を示した。
【
図3】(試験6)経皮吸収性の実施例1と比較例1の結果であり、縦軸はGK2(グリチルリチン酸ジカリウム)の表皮1g当たりの吸収量(mg)を示す。
【
図4】実施例2の凍結割断レプリカを用いた透過型電子顕微鏡写真。