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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】ワイヤレスイヤホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20230901BHJP
【FI】
H04R1/10 101B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019147391
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021029006
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】深堀 聖
(72)【発明者】
【氏名】藤原 良太
(72)【発明者】
【氏名】米須 利徳
【審査官】佐久 聖子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08655000(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0359644(US,A1)
【文献】特開2019-134412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00- 1/10
1/27- 1/52
H04R 1/10
5/00- 5/04
25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部機器との間で高周波信号を無線で送受信するアンテナ素子と、装着者の入力操作を受け付け可能な静電容量式タッチセンサとを兼用するアンテナ/センサと、
前記高周波信号に関する各種の処理を実行する無線回路と、
前記入力操作に基づく各種の処理を実行する制御回路と、
前記無線回路と前記アンテナ/センサとの間、かつ前記制御回路と前記アンテナ/センサとの間に接続される容量素子と、を備え
前記アンテナ素子は、素子本体と、給電線およびスタブと、を備え、
前記素子本体の一端と、前記給電線の一端および前記スタブの一端とが接続され、
前記無線回路および前記制御回路は前記給電線の他端にある給電点に接続され、
前記容量素子は、前記無線回路と前記素子本体との間、かつ前記制御回路と前記素子本体との間に接続され、前記スタブと接地導体との間に介在し、
前記容量素子と前記スタブとにより直列共振回路が形成され
イヤレスイヤホン。
【請求項2】
前記素子本体はメアンダラインを形成する、
請求項に記載のワイヤレスイヤホン。
【請求項3】
前記制御回路と前記給電点との間に直列に接続されたインダクタンス素子、を更に備える、
請求項またはに記載のワイヤレスイヤホン。
【請求項4】
前記制御回路と前記給電点との間に前記インダクタンス素子と直列に接続された抵抗素子、を更に備える、
請求項に記載のワイヤレスイヤホン。
【請求項5】
前記無線回路と前記給電点との間に直列に接続された第2の容量素子、を更に備える、
請求項またはに記載のワイヤレスイヤホン。
【請求項6】
前記アンテナ/センサは、前記素子本体と前記給電線と前記スタブとにより逆F型アンテナを形成する、
請求項のうちいずれか一項に記載のワイヤレスイヤホン。
【請求項7】
前記無線回路と前記給電点との間に直列に接続されたインピーダンス整合回路、を更に備える、
請求項のうちいずれか一項に記載のワイヤレスイヤホン。
【請求項8】
筐体を有し、
前記アンテナ/センサは、略円板状に形成されるとともに、前記ワイヤレスイヤホンが前記装着者の外耳に装着された際に前記外耳よりも外部に露出する側の前記筐体の内面に近接して配置される、
請求項1~のうちいずれか一項に記載のワイヤレスイヤホン。
【請求項9】
前記外耳よりも外側に露出する側の前記筐体の外周に金属が離散的に蒸着された、
請求項に記載のワイヤレスイヤホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤレスイヤホンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヘッドバンド部とイヤホン部と検出部とを備えるヘッドホンが開示されている。イヤホン部は、ヘッドバンド部の端部に位置決めされ、接合構造により回転自在にヘッドバンド部に接合されている。検出部は、圧力センサを包含する。圧力センサは、検出面を有し、ヘッドホンが安置される時に検出面とヘッドホン内の構造は隙間を有し、一方、ヘッドホンが装着されるとヘッドホン内の構造に変形あるいは移動が発生し、隙間が消失して圧力センサが押圧される。ヘッドホンは、圧力センサによりヘッドホンが安置されているか否かを検出し、この信号を受け取ることで命令を判読する。また、このヘッドホンでは、圧力センサと無線の送受信を行うアンテナモジュールとが配置されてよいことも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3192879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、圧力センサとアンテナモジュールとの配置に関する詳細な検討はなされておらず、別体として配置されていることが想定されている。このため、特許文献1の構成を、ユーザが把持する携帯型音楽プレーヤ(例えばスマートフォン)との間で無線通信を行うワイヤレスイヤホンに適用しようとすると、ワイヤレスイヤホンの部品点数が増加し、組み立て工数が増加するという課題が生じる。したがって、ワイヤレスイヤホンはユーザの耳(例えば外耳)に差し込まれるという特性を考慮すると、ワイヤレスイヤホンの筐体内の限られたスペース内に無線通信モジュールとユーザの操作を受付可能なセンサとの効率的な配置が望まれる点で改善の余地がある。
【0005】
本開示は、上述した従来の状況に鑑みて案出され、筐体内の限られたスペースにおいて無線通信モジュールとタッチセンサとを共用可能とし、部品点数および組み立て工数の増加を抑制するワイヤレスイヤホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、外部機器との間で高周波信号を無線で送受信するアンテナ部と、装着者の入力操作を受け付け可能なパッド部とを兼用するセンサ部と、前記高周波信号に関する各種の処理を実行する無線回路と、前記入力操作に基づく各種の処理を実行する制御回路と、前記無線回路と前記センサ部との間、かつ前記制御回路と前記センサ部との間に接続され、前記高周波信号のみを通過可能にグランド導体と直列に結合される容量素子と、を備え、前記アンテナ素子は、素子本体と、給電線およびスタブと、を備え、前記素子本体の一端と、前記給電線の一端および前記スタブの一端とが接続され、前記無線回路および前記制御回路は前記給電線の他端にある給電点に接続され、前記容量素子は、前記無線回路と前記素子本体との間、かつ前記制御回路と前記素子本体との間に接続され、前記スタブと接地導体との間に介在し、前記容量素子と前記スタブとにより直列共振回路が形成される、ワイヤレスイヤホンを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、筐体内の限られたスペース内において無線通信モジュールとタッチセンサとを共用可能とし、部品点数および組み立て工数の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係るワイヤレスイヤホンの外観例を示す斜視図
図2】筐体の内部例を示す斜視図
図3】イヤホンユニットの外観例を示す斜視図
図4】イヤホンユニットの構成概略例を模式的に示す図
図5】イヤホンユニットの構成例を示す回路図
図6】逆F型アンテナの基本構成および特性の一例を示す図
図7】比較例1の逆L型アンテナの基本構成および性能の一例を示す図
図8】実施の形態1に係る逆F型アンテナ、および比較例1に係る逆L型アンテナのそれぞれの比較用の指向性特性例を示す図
図9】実施の形態1の変形例に係るイヤホンユニットの外観および特性の一例を示す図
図10図9のアンテナエレメントの指向性特性例を示す図
図11】比較例2に係るイヤホンユニットの外観および特性の一例を示す図
図12図11のアンテナエレメントの指向性特性例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係るワイヤレスイヤホンを具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0010】
図1は、実施の形態1に係るワイヤレスイヤホン5の外観例を示す斜視図である。ワイヤレスイヤホン5は、ワイヤレスイヤホン5の装着者の一例としてのユーザの耳穴(例えば外耳部分)に装着され、ユーザが所持するスマートフォンあるいは携帯型音楽プレーヤ等の外部機器から無線(例えばBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信)で送信される音データ(例えば音楽データ)を受信する。ワイヤレスイヤホン5は、受信された音楽データに基づく音声を音響的に出力する。また、ワイヤレスイヤホン5は、未使用時にはクレードル(図示略)に載置される。ワイヤレスイヤホン5に内蔵される電池(二次電池13)が満充電でない場合等に、ワイヤレスイヤホン5がクレードルの所定の載置箇所に載置されると、クレードルから送電される電力に基づいてワイヤレスイヤホン5に内蔵される電池(二次電池13)は充電される。
【0011】
ワイヤレスイヤホン5は、イヤホン本体部10およびスリーブ30から構成される。イヤホン本体部10は、筒状部10yが下方に形成された壺状の筐体10zを有する。筐体10zは、例えばシリコン樹脂あるいは発泡ウレタン等の硬質の樹脂で成形される。筐体10zは、筒状部10yを含む内側部分と、筒状部10yから離れた外側部分とに区切られる。
【0012】
筐体10zの内側部分は、硬質の樹脂で成形されたままである。筐体10zの外側部分には、外装18が施される。外装18は、硬質の樹脂の表面に、例えば不連続蒸着金属が形成されたものである。不連続蒸着金属として使用される金属の一例として、インジウムが挙げられる。外装18として不連続蒸着金属が形成された筐体10zの外側部分は、金属のような導体でなく、誘電体である。つまり、外装18は、美的外観(デザイン)的に優れた金属のメタリック光沢を有しながらも、絶縁体として電磁気的に扱われ、後述するアンテナとしての性能を阻害することがない。
【0013】
スリーブ30は、筒状部10yを覆うように成形され、ワイヤレスイヤホン5が使用される際、ユーザの耳穴に装着される部材である。スリーブ30の材質には、ユーザの耳穴に装着されやすい弾性材料(例えばシリコンゴム)が用いられる。また、スリーブ30は、イヤホン本体部10に対し、交換自在である。
【0014】
図2は、筐体10zの内部例を示す斜視図である。筐体10zは、その内部にイヤホンユニット20を収容する。イヤホンユニット20は、アンテナ/センサ部16と、上基板12と、二次電池13と、下基板14と、スピーカ15とが段状に重ねて積層されたように構成される。
【0015】
センサ部の一例としてのアンテナ/センサ部16は、ワイヤレスイヤホン5の無線通信機能を担うアンテナ部の一例としてのアンテナエレメント11(言い換えるとアンテナ素子)と、ユーザの入力操作(例えばタッチ操作)を検知するタッチセンサ機能を担うパッド部の一例としてのセンサ素子11z(図4参照)とを兼用する。アンテナエレメント11は、上述した無線通信機能において送受信される無線信号(つまり電波)を放射するアンテナ導体を含む。センサ素子11zは、例えば静電容量式のタッチセンサの電極である。
【0016】
上基板12は、所定の回路パターンが形成された誘電体である。上基板12には、無線通信回路31(図4参照)と、タッチセンサ制御回路33(図4参照)と、プロセッサ(図示略)等の電子部品とがそれぞれ実装される。また、上基板12のアンテナ/センサ部16と対向する片面(図中、上側の面)には、グランド導体の一例としての接地導体12z(図3参照)が形成される。プロセッサ(図示略)は、ワイヤレスイヤホン5の制御部として、入力されるデータあるいは情報を用いた各種の処理の実行を統括的に制御する。
【0017】
無線回路の一例としての無線通信回路31は、ユーザが外部機器で再生される音楽等を聴く場合、外部機器から送信される音データの無線信号(電波)を受信する。無線通信回路31は、受信された無線信号(つまり外部機器で圧縮された音データ)に対し、伸長(復元)処理、デジタルアナログ変換処理、無線周波数帯域(RF帯域)からベースバンド帯域(BB帯域)にダウンコンバートする復調処理、およびベースバンド信号処理を行い、信号処理後の音データをスピーカ15に出力する。また、無線通信回路31は、ユーザがタッチ操作で外部機器を操作する(例えば音量の大小のコントロールを指示する)場合、タッチセンサ制御回路33によって認識された制御データを変調処理し、変調処理後の制御データを外部機器に電波で送信する。
【0018】
制御回路の一例としてのタッチセンサ制御回路33は、静電容量方式のタッチセンサを制御する。タッチセンサ制御回路33は、アンテナ/センサ部16と接地導体12zとの間における静電容量を検出し、この静電容量値の変化によって人体の一部(例えばユーザの指)がアンテナ/センサ部16に接触もしくは近接したことを検出する。また、タッチセンサ制御回路33は、静電容量値の変化のパターンによって、例えばユーザの指によるタッチ操作の指示を認識し、認識結果に対応する制御データを無線通信回路31に出力する。
【0019】
下基板14には、スピーカ15とのインターフェース回路、クレードル(図示略)との接続端子等が実装される。
【0020】
二次電池13は、ワイヤレスイヤホン5の電源である。二次電池13は、下基板14に実装された接続端子を介して接続されるクレードル(図示略)の充電端子と接触する。クレードルは、充電器を内蔵し、ACアダプタを介して商用電源から電力の供給を受け、二次電池13を充電する。実施の形態1では、充電は、接続端子を介した接触給電で行われるが、接続端子を用いないワイヤレス給電で行われてもよい。二次電池として、例えばリチウムイオン電池が用いられる。リチウムイオン電池を用いた場合、ワイヤレスイヤホン5は、1回の充電で例えば5~6時間ほど使用可能である。なお、二次電池13は、ニッケル水素電池等であってもよい。また、二次電池13の代わりに一次電池が用いられてもよい。
【0021】
スピーカ15は、外部機器から無線で送信された音データ(例えば音楽データ)を音響的に出力する。筐体10zの内部では、スピーカ15の前面(言い換えると、音響的に出力される音の放音面)は、スリーブ30で覆われた筒状部10y側に向けられる。これにより、スピーカ15から音響的に出力された音データ(例えば
音楽データ)は、ユーザの耳穴(例えば外耳部分)から更に内部の内耳、鼓膜に伝達されていき、ユーザが音楽データを聴取できる。
【0022】
図3は、イヤホンユニット20の外観例を示す斜視図である。アンテナ/センサ部16は、例えば円板状に形成される。また、アンテナ/センサ部16は、ワイヤレスイヤホン5がユーザの耳穴(例えば外耳部分)に装着された際にユーザの外耳部分よりも外部に露出する側の筐体10zの内面に近接して配置される。
【0023】
アンテナエレメント11は、アンテナ/センサ部16の面においてジクザク形状に形成されたメアンダラインを有する。アンテナエレメント11をメアンダラインに形成することで、アンテナエレメント11は、アンテナ素子として適正なアンテナのエレメント長(例えばワイヤレスイヤホン5の想定動作周波数帯の周波数に対応した電波の1波長の(1/4)倍の長さ)を確保できる。また、アンテナエレメント11は、アンテナ導体がメアンダラインのような線状に成形されても、タッチ電極性能を有効に担保するためのタッチ面積(ユーザの指がタッチされ易くなる程度の表面積)を確保できる。
【0024】
なお、アンテナ/センサ部16は、例えば真円状の面として形成されてもよいし、例えば楕円状の面として形成されてもよい。また、アンテナ/センサ部16は、矩形状の面として形成されてもよい。矩形状の面として形成される場合、アンテナエレメント11は、幅方向の長さが均一に揃ったジクザク状のメアンダラインとして形成される。
【0025】
また、アンテナ/センサ部16がタッチセンサとして機能する場合、ユーザの指等によるアンテナ/センサ部16へのタッチ操作として、例えば次のような操作が挙げられる。ワイヤレスイヤホン5は、短い時間のタッチ操作が行われた場合、外部機器に対し音楽の再生、停止、曲送り、曲戻し等のうちいずれかを指示してもよい。ワイヤレスイヤホン5は、長い時間のタッチ操作(いわゆる長押しタッチ)が行われた場合、スマートフォン等の外部機器とBluetooth(登録商標)等の無線通信を行うためのペアリング動作等を行ってもよい。
【0026】
なお、本明細書においてx軸,y軸,z軸は図3に示す方向に従う。つまり、図3中、x座標は、アンテナ導体が形成される面に平行なx軸方向の座標である。y座標は、アンテナ導体が形成される面に平行かつx軸方向と直交するy軸方向の座標である。z座標は、アンテナ導体が形成される面であるxy面に垂直なz軸方向の座標である。
【0027】
図4は、イヤホンユニット20の構成概略例を模式的に示す図である。イヤホンユニット20は、ワイヤレスイヤホン5の無線通信モジュールとタッチセンサとを共用する。イヤホンユニット20は、アンテナ/センサ部16と、無線通信回路31と、タッチセンサ制御回路33とを少なくとも含む。アンテナ/センサ部16は、いわゆる逆F型アンテナとして機能するとともに、タッチセンサとしても機能する。無線通信回路31は、アンテナ/センサ部16を用い、近距離無線通信(ここでは、Bluetooth(登録商標))方式で外部機器との間で無線通信を行う。タッチセンサ制御回路33は、アンテナ/センサ部16を用い、静電容量式のタッチセンサとしてユーザの指等によるタッチ操作を検出し、タッチ操作に対応する各種の処理を行う。
【0028】
アンテナ部の一例としてのアンテナエレメント11は、アンテナエレメント本体11cと、給電線11aと、接地導体12zへの短絡線としての役割を有する伝送線路であるショートスタブ11bとを有し、いわゆる逆F型アンテナを構成する。ショートスタブ11bとコンデンサC1(後述参照)とは、アンテナエレメント11と接地導体12zとの間の距離が短い、いわゆる低背でアンテナ性能を確保するためのインピーダンス整合を取るために、アンテナエレメント11と接地導体12zとの間での直列共振回路を形成する。ショートスタブ11bと接地導体12zとの間には、所定の静電容量値を有するコンデンサC1が介在する。アンテナエレメント11と接地導体12zとの間で、ショートスタブ11bとコンデンサC1とにより直列共振回路が形成されることで、高周波信号の送受信の際にインピーダンスを広い帯域(例えば2.4GHz帯)で下げることができ、アンテナとしての性能を確保できる。
【0029】
容量素子の一例としてのコンデンサC1は、アンテナ/センサ部16がBluetooth(登録商標)等で取り扱われる高周波帯の電波を送受信するアンテナとして機能する場合、高周波の導体となり、アンテナ/センサ部16を高周波的に接地導体12zに短絡(ショート)させる。つまり、ショートスタブ11bの一方の端部は、接地導体12zと導通する。
【0030】
一方、コンデンサC1は、アンテナ/センサ部16がユーザのタッチ操作を検知するタッチセンサとして機能する場合、ユーザの指等によるタッチ操作によって変化するアンテナ/センサ部16の電位を電荷として蓄積し、アンテナ/センサ部16を低周波(直流)的に接地導体12zに短絡(ショート)させない。したがって、タッチセンサ制御回路33は、アンテナ/センサ部16を用い、ユーザの指等によるタッチ操作を静電容量の変化として検出可能である。
【0031】
給電線11aの一方の端部に接続される信号線は、無線通信回路31に接続される。また、給電線11aの一方の端部に接続される信号線は、タッチセンサ制御回路33に接続される。
【0032】
図5は、イヤホンユニット20の構成例を示す回路図である。給電線11aの一方の端部にある給電点Q1と無線通信回路31との間には、整合回路40およびコンデンサC2が直列に接続される。
【0033】
インピーダンス整合回路の一例としての整合回路40は、無線通信回路31の出力インピーダンスを、アンテナ/センサ部16の入力インピーダンスに整合させる回路である。出力インピーダンスは、アンテナ性能を確保するために適正な規定値(例えば50Ω)に設定される。
【0034】
コンデンサC2は、アンテナ/センサ部16をタッチセンサとして使用する場合、アンテナ/センサ部16によって検出される直流成分の信号(DC信号)が無線通信回路31側に流れ込まないように遮断する。
【0035】
また、給電線11aの端部にある給電点Q1とタッチセンサ制御回路33との間には、抵抗R1およびインダクタL1が直列に接続される。
【0036】
インダクタンス素子の一例としてのインダクタL1は、高周波信号に対し高インピーダンスとなり、無線通信回路31によって生成される高周波信号がタッチセンサ制御回路33側に流れ込まないように遮断する。抵抗R1は、コンデンサC1と共に時定数回路を形成する。
【0037】
図6は、逆F型アンテナの基本構成および特性の一例を示す図である。アンテナ/センサ部16をいわゆる逆F型アンテナとして用いた場合、アンテナエレメント11の各要素は、次の数式(1)を満足するように設定される。
【0038】
アンテナエレメント長L1: λ/8 < L1 < λ/3
スタブエレメント長L2: L2 < λ/8
結合容量x: 0.5pF < x < 100pF …… (1)
【0039】
ここで、アンテナエレメント長L1は、給電点Q1からアンテナエレメント11の先端までの距離である(図6参照)。スタブエレメント長L2は、ショートスタブ11bの長さである(図6参照)。結合容量xは、コンデンサC1のキャパシタンス(静電容量)である。
【0040】
逆F型アンテナの特性において、入力反射係数S11は、入力端子に入力した信号に対して入力端子で反射される信号の割合を示す。入力反射係数S11が小さい値である程、電波の放射効率が高くなる。図6の特性図では、入力反射係数S11が無線通信周波数(例えば、Bluetooth(登録商標)の想定動作周波数帯に相当する2.4GHz帯域)において-25dB以下に急激に下がっている。また、2.4GHz帯域において、アンテナとして使用可能な、入力反射係数S11が-15dB以下である範囲、つまり帯域幅が100MHzと広く、広帯域化が図れる。
【0041】
(比較例1)
図7は、比較例1の逆L型アンテナの基本構成および性能の一例を示す図である。逆L型アンテナでは、アンテナ導体141は、接地導体112zとの間の距離が短くなるように、接地導体112zに対し逆L字状に形成される。アンテナエレメント長L3は、接地導体112zの面に区画された給電点Q11からアンテナエレメントの先端までの長さである(図7参照)。
【0042】
逆L型アンテナの特性において、図7の特性図では、入力反射係数S11は、無線通信周波数(例えば、2.4GH帯域)において、逆F型アンテナと比べ、-17dBとあまり下がっていない。また、2.4GHz帯域において、アンテナとして使用可能な、入力反射係数S11が-15dB以下である範囲、つまり帯域幅が40MHzと狭い。
【0043】
図8は、実施の形態1に係る逆F型アンテナ、および比較例1に係る逆L型アンテナのそれぞれの比較用の指向性特性例を示す図である。この指向性特性では、アンテナ導体の面に対し垂直な面(yz面)内の方向におけるアンテナ利得が示されている。
【0044】
比較例1に係る逆L型アンテナを有するイヤホンユニット80の場合、zy面における角度0°~360°の範囲において、アンテナ利得は、約-16dBとほぼ一定である。
【0045】
しかし、実施の形態1に係る逆F型アンテナを有するイヤホンユニット20の場合、zy面における角度0°~360°の範囲において、アンテナ利得は、-10dB~-14dBの範囲にあり、比較例1に係る逆L型アンテナと比べて大きい。また、メアンダラインに形成された、アンテナ導体の始端および終端方向である、角度0°および90°の方向では、アンテナ利得は、-9dB以上と特に大きい。つまり、逆F型アンテナでは、逆L型アンテナと比べ、角度0°および90°の方向において、アンテナ利得が7dB改善される。アンテナ利得が改善されることで、逆F型アンテナのアンテナエレメント11では、電波の放射効率がアップする。したがって、ワイヤレスイヤホン5と外部機器との間で無線通信が良好な状態となり、ユーザは、外部機器で再生される音楽を聴き易く、また外部機器を操作し易くなる。なお、アンテナ導体の面に対し平行な面(xy面)内の方向におけるアンテナ利得においても、アンテナ利得の指向特性は、図8と同様である。
【0046】
このように、実施の形態1に係るワイヤレスイヤホン5では、アンテナエレメント11(アンテナ素子)がセンサ素子(タッチセンサの電極)に兼用できる。したがって、ワイヤレスイヤホン5の筐体10z内に電子部品である無線通信モジュールとタッチセンサを共用可能に配置できる。
【0047】
また、ワイヤレスイヤホン5では、筐体10zの外側部分に外装として不連続蒸着金属が形成される。ワイヤレスイヤホン5の耳穴から露出する部分は、美的外観(デザイン)的に優れた金属の光沢を有しながらも、絶縁体である。したがって、ユーザの指がタッチセンサに接近した場合に起こる静電容量の変化量の低下が抑えられる。また、不連続蒸着金属では、金属が硬質の樹脂の表面に点在しているので、外装は電磁気的に金属の塊として扱われない。したがって、アンテナエレメント11から送受信される電波を、外装が阻害することは起きず、アンテナとしての性能が阻害されない。
【0048】
(実施の形態1の変形例)
図9は、実施の形態1の変形例に係るイヤホンユニット120の外観および特性の一例を示す図である。イヤホンユニット120のアンテナ/センサ部116は、実施の形態1に係るイヤホンユニット20と同様、アンテナエレメントをセンサ素子に兼用するものであり、逆F型アンテナを形成する。アンテナ/センサ部116は、外形が円形状になるようにメアンダラインに形成された、アンテナエレメント111を有する。アンテナエレメント111は、給電点Q1に繋がる給電線111a、およびショートスタブ111bを含む。ショートスタブ111bは、コンデンサC11を介して接地導体12zに接続される。
【0049】
実施の形態1の変形例に係るイヤホンユニット120におけるアンテナエレメントの特性図では、入力反射係数S11が示される。無線通信周波数(2.4GHz帯域)において、入力反射係数S11は、-30dB以下の下限ピークを有する。また、入力反射係数S11が-15dB以下となる帯域幅は、100MHzと広い。
【0050】
図10は、図9のアンテナエレメントの指向性特性例を示す図である。イヤホンユニット120では、イヤホンユニット20と同様、zy面における角度0°~360°の範囲において、アンテナ利得は、-10dB~-14dBの範囲にある。また、メアンダラインに形成された、アンテナ導体の始端および終端方向である、角度0°および90°の方向では、アンテナ利得は、-9dB以上と特に大きい。
【0051】
(比較例2)
図11は、比較例2に係るイヤホンユニット150の外観および特性の一例を示す図である。このイヤホンユニット150は、アンテナ/タッチセンサ分離型のワイヤレスイヤホンを構成する。イヤホンユニット150は、アンテナエレメント151およびタッチセンサ152を有する。アンテナエレメント151は、タッチセンサ152と分離されたものであり、逆F型アンテナを形成する。
【0052】
タッチセンサ152は、円板に形成される。タッチセンサ152は、下基板14に接続される信号線152aを含む。アンテナエレメント151は、タッチセンサ152を囲むように、リング状に形成される。アンテナエレメント151は、給電点Q1に繋がる給電線151a、およびショートスタブ151bを含む。ショートスタブ151bは、接地導体12zに直接に接続される。
【0053】
無線通信周波数(2.4GHz帯域)において、入力反射係数S11は、約-26dBで下限ピークを有する。また、入力反射係数S11が-15dB以下となる帯域幅は、70MHzであり、変形例のイヤホンユニット120と比べて狭い。
【0054】
図12は、図11のアンテナエレメントの指向性特性例を示す図である。イヤホンユニット150では、zy面における角度0°~360°の範囲において、アンテナ利得は、逆Lアンテナ(図8参照)よりもアンテナ利得が高いものの、約-16dBに留まる。
【0055】
このように、実施の形態1の変形例に係るイヤホンユニット120では、比較例2に係るイヤホンユニット150と比べ、入力反射係数S11が-15dB以下となる帯域幅が70MHzから100MHzと広がり、30%増加する。したがって、無線通信周波数(2.4MGHz帯域)における広帯域化が可能である。また、放射効率を100%とした場合、変形例のイヤホンユニット120では、比較例2のイヤホンユニット150と比べ、放射効率が50%増加する。
【0056】
以上により、実施の形態1に係るワイヤレスイヤホン5は、スマートフォンあるいは携帯型音楽プレーヤ等の外部機器との間で高周波信号を無線で送受信するアンテナエレメント11と、ユーザのタッチ操作を受け付け可能なセンサ素子11zとを兼用するアンテナ/センサ部16を有する。ワイヤレスイヤホン5は、高周波信号に関する各種の処理を実行する無線通信回路31を有する。ワイヤレスイヤホン5は、ユーザの指によるタッチ操作に基づく各種の処理を実行するタッチセンサ制御回路33を有する。ワイヤレスイヤホン5は、無線通信回路31とアンテナ/センサ部16との間、かつタッチセンサ制御回路33とアンテナ/センサ部16との間に接続され、高周波信号のみを通過可能に接地導体12zと直列に結合されるコンデンサC1とを有する。
【0057】
これにより、ワイヤレスイヤホン5は、スマートフォンあるいは携帯型音楽プレーヤ等の外部機器との間で無線で高周波信号を送受信するアンテナ部と、ユーザのタッチ操作を直流(DC)信号で検知するパッド部とを、アンテナ/センサ部16において共用できる。つまり、ワイヤレスイヤホン5は、アンテナエレメント11をタッチセンサの電極に兼用できる。したがって、ワイヤレスイヤホン5は、筐体10z内の限られた狭い空間領域内に無線通信モジュールおよびタッチセンサを含む電子部品を共用可能に配置できる。また、ワイヤレスイヤホン5において、部品点数および組み立て工数の増加が抑制可能となる。
【0058】
また、ワイヤレスイヤホン5は、アンテナエレメント11を構成するアンテナ導体に並列して設けられた所定長さを有するスタブ(例えばショートスタブ11b)を更に備える。コンデンサC1は、ショートスタブ11bの一端側と接地導体12zとを高周波的には結合するが、一方で、DC的(直流成分的)には遮断する。これにより、ワイヤレスイヤホン5は、ショートスタブ11bを設けてアンテナの特性を改善できる上、ショートスタブ11bがDC的に接地導体12zに結合されることを防止できる。したがって、アンテナ/センサ部16は、ユーザの指のタッチに基づく静電容量の変化を検出でき、タッチ操作を適正に検知できる。
【0059】
また、アンテナエレメント11を構成するアンテナ導体は、メアンダラインを形成する。これにより、ワイヤレスイヤホン5は、アンテナエレメント11の長さを適度に調整でき、かつ線状のアンテナ導体でユーザの指がタッチされる程度の表面積を有するタッチ面を確保できる。したがって、ユーザの指による操作性が向上する。
【0060】
また、ワイヤレスイヤホン5は、タッチセンサ制御回路33とアンテナ/センサ部16との間に直列に接続されたインダクタL1を更に備える。これにより、ワイヤレスイヤホン5は、高周波信号がタッチセンサ制御回路33に入力し、静電容量の変化を生じさせ、タッチセンサの制御が不安定になることを防止できる。
【0061】
また、アンテナエレメント11は、アンテナエレメント本体11c、給電線11a、およびショートスタブ11bにより逆F型アンテナを形成する。これにより、アンテナ導体と接地導体12zとの間の距離が近くなって強く結合されるので、接地導体12zの形状や大きさによってアンテナの特性が変化されにくくなる。また、アンテナの入出力インピーダンスの制御が容易である。
【0062】
また、アンテナエレメント11は、無線通信回路31と直列に接続された整合回路40を更に備える。これにより、ワイヤレスイヤホン5は、無線通信回路31の入出力インピーダンスをアンテナエレメント11のインピーダンスに揃えることができる。したがって、ワイヤレスイヤホン5において、アンテナの特性を改善できる。
【0063】
また、ワイヤレスイヤホン5は、筐体10zを有する。アンテナ/センサ部16は、略円板状に形成されるとともに、ワイヤレスイヤホン5が耳穴(例えばユーザの外耳部分)に装着された際に外耳部分よりも外部に露出する側の筐体10zの内面に近接して配置される。これにより、ユーザは、耳穴に装着されたワイヤレスイヤホンのアンテナ/センサ部を指で容易に操作できる。したがって、ユーザの操作性が向上する。
【0064】
また、ユーザの外耳部分よりも外側に露出する側の筐体10zの外周に不連続蒸着金属が形成される。これにより、ワイヤレスイヤホン5の筐体10zは美的外観(デザイン)的に優れた金属のメタリック光沢を有しながらも、筐体10zの外周の全面ではなく離散的に金属が蒸着されるだけであるために電磁気的に絶縁体とみなすことができ、アンテナとしての性能を阻害することがない。
【0065】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本開示は、ワイヤレスイヤホンの筐体内の限られたスペースにおいて無線通信モジュールとタッチセンサとを共用可能とし、有用である。
【符号の説明】
【0067】
5 ワイヤレスイヤホン
10 イヤホン本体部
10z 筐体
11 アンテナエレメント
11a 給電線
11b ショートスタブ
11c アンテナエレメント本体
12 上基板
12z 接地導体
13 二次電池
14 下基板
15 スピーカ
16 アンテナ/センサ部
18 外装
30 スリーブ
31 無線通信回路
33 タッチセンサ制御回路
40 整合回路
C1、C2 コンデンサ
L1 インダクタ
Q1 給電点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12