(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒およびそれを備えるカメラ
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20230901BHJP
G02B 7/10 20210101ALI20230901BHJP
【FI】
G02B7/04 D
G02B7/04 E
G02B7/10 C
(21)【出願番号】P 2019164550
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大介
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-052429(JP,A)
【文献】特開2011-090257(JP,A)
【文献】特開2002-107600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
G02B 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端および他端を備えるレンズ鏡筒であって、
前記レンズ鏡筒の光軸方向に移動可能であって、光学部材を保持する第1の枠体と、
前記第1の枠体に対して前記他端側に
、前記光軸方向に移動可能に配置され、光学部材を保持する第2の枠体と、
前記第1の枠体に前記光軸方向に移動可能に搭載され、光学部材を保持する第3の枠体と、を有し、
前記第1の枠体が、前記第3の枠体と接触して前記一端側への移動を制限する第1のストッパ部を含み、
前記第1の枠体が、前記第2の枠体に対して最も離れているときに、前記第3の枠体と接触して前記他端側への移動を制限する第2のストッパ部を含み、
前記第2の枠体が
移動して、前記第3の枠体が移動可能な光軸上の範囲に位置するときに、前記第2のストッパ部に対して前記一端側に位置する接触面を備え、前記第3の枠体と接触して前記他端側への移動を制限する第3のストッパ部を含む、レンズ鏡筒。
【請求項2】
前記第1の枠体に搭載され、前記第3の枠体を光軸方向に駆動するリニアモータを有する、請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記第3の枠体によって保持される光学部材が、フォーカスレンズである、請求項1または2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記第2の枠体に前記光軸方向に移動可能に搭載され、光学部材を保持する第4の枠体を有し、
前記第4の枠体が、前記第3のストッパ部の接触面に対して前記他端側でストロークするように、前記第2の枠体に搭載されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記第4の枠体によって保持される光学部材が、フォーカスレンズである、請求項4に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
一端および他端を備えるレンズ鏡筒であって、
前記レンズ鏡筒の光軸方向に移動可能であって、光学部材を保持する第1の枠体と、
前記第1の枠体に対して前記他端側に相対移動可能に配置され、光学部材を保持する第2の枠体と、
前記第1の枠体に前記光軸方向に移動可能に搭載され、光学部材を保持する第3の枠体と、を有し、
前記第1の枠体が、前記第3の枠体と接触して前記一端側への移動を制限する第1のストッパ部を含み、
前記第1の枠体が、前記第2の枠体に対して最も離れているときに、前記第3の枠体と接触して前記他端側への移動を制限する第2のストッパ部を含み、
前記第2の枠体が、前記第3の枠体が移動可能な光軸上の範囲に位置するときに、前記第2のストッパ部に対して前記一端側に位置する接触面を備え、前記第3の枠体と接触して前記他端側への移動を制限する第3のストッパ部を含み、
前記第2の枠体に前記光軸方向に移動可能に搭載され、光学部材を保持する第4の枠体を有し、
前記第4の枠体が、前記第3のストッパ部の接触面に対して前記他端側でストロークするように、前記第2の枠体に搭載されている、レンズ鏡筒。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のレンズ鏡筒を備えるカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レンズ鏡筒およびそれを備えるカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カメラに取り付けられて使用されるレンズ鏡筒が開示されている。レンズ筺体内には、それぞれの光軸が同一直線上に位置するように配置された複数のレンズなどの光学部材が配置されている。いくつかの光学部材は光軸方向に移動可能な枠体に保持されている。その移動可能な枠体は、モータなどによって光軸方向に移動される。その枠体によって保持されている光学部材が光軸上において隣接する他の光学部材に衝突しないように、枠体のストローク範囲を制限するストッパがレンズ鏡筒内に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、所望の光学特性を備えるレンズ鏡筒を設計するにあたり、レンズ鏡筒を小型化すればするほど、その設計の自由度は低下する。
【0005】
そこで、本開示は、レンズ鏡筒が小型化されても、レンズ鏡筒の設計の自由度を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
一端および他端を備えるレンズ鏡筒であって、
前記レンズ鏡筒の光軸方向に移動可能であって、光学部材を保持する第1の枠体と、
前記第1の枠体に対して前記他端側に相対移動可能に配置され、光学部材を保持する第2の枠体と、
前記第1の枠体に前記光軸方向に移動可能に搭載され、光学部材を保持する第3の枠体と、を有し、
前記第1の枠体が、前記第3の枠体と接触して前記一端側への移動を制限する第1のストッパ部を含み、
前記第1の枠体が、前記第2の枠体に対して最も離れているときに、前記第3の枠体と接触して前記他端側への移動を制限する第2のストッパ部を含み、
前記第2の枠体が、前記第3の枠体が移動可能な光軸上の範囲に位置するときに、前記第2のストッパ部に対して前記一端側に位置する接触面を備え、前記第3の枠体と接触して前記他端側への移動を制限する第3のストッパ部を含む、
レンズ鏡筒が提供される。
【0007】
本開示の別の態様によれば、
上記のレンズ鏡筒を有するカメラが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、レンズ鏡筒が小型化されても、レンズ鏡筒の設計の自由度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施の形態に係るレンズ鏡筒を備えるカメラの概略的な斜視図
【
図3A】最も離れた状態の第1および第2の枠体を示す斜視図
【
図3B】最も接近した状態の第1および第2の枠体を示す斜視図
【
図5A】第1の枠体において第3の枠体が最もレンズ鏡筒の一端側に位置する状態を示す斜視図
【
図5B】第1の枠体において第3の枠体が最もレンズ鏡筒の他端側に位置する状態を示す斜視図
【
図6A】第2の枠体において第4の枠体が最もレンズ鏡筒の一端側に位置する状態を示す斜視図
【
図6B】第2の枠体において第4の枠体が最もレンズ鏡筒の他端側に位置する状態を示す斜視図
【
図7A】望遠撮影時であって撮影距離が無限遠である状態のレンズ鏡筒の一部分の概略的な断面図
【
図7B】望遠撮影時であって撮影距離が最至近距離である状態のレンズ鏡筒の一部分の断面図
【
図7C】広角撮影時であって撮影距離が無限遠である状態のレンズ鏡筒の一部分の概略的な断面図
【
図7D】広角撮影時であって撮影距離が最至近距離である状態のレンズ鏡筒の一部分の概略的な断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0011】
なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0012】
以下に、本開示の一実施の形態に係るレンズ鏡筒について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本開示の一実施の形態に係るレンズ鏡筒を備えるカメラの概略的な斜視図である。
図2は、レンズ鏡筒の一部分の分解斜視図である。なお、図面には、理解を容易にするために、X-Y-Z座標系が示されている。X軸方向はレンズ鏡筒の光軸の延在方向である。また、図面において、白抜矢印は、被写体が存在する方向を示している。
【0014】
図1に示すレンズ鏡筒10は、カメラ100に交換可能にあるいは着脱不可能に取り付けられて使用されるレンズ鏡筒であって、特に、望遠写真および広角写真の撮影が可能になるように構成されている。また、レンズ鏡筒10は、一端10aと他端10bとを備える。本実施の形態の場合、一端10aは被写体側の端であって、他端10bは像面側の端である、また、レンズ鏡筒10内には、レンズ鏡筒10の光軸C上にそれぞれの光軸が一致するように配置されたレンズなどの複数の光学部材が配置されている。
【0015】
図2に示すように、レンズ鏡筒10内には、レンズなどの光学部材をそれぞれ保持する複数の枠体14、16、18、20が、レンズ鏡筒10の光軸Cの延在方向(光軸方向)に移動可能に収納されている。例えば、枠体14は、光学部材として、レンズ22を保持する。また例えば、枠体16は、光学部材として、レンズ24と絞りユニット26とを保持する。なお、
図2に示す構成要素は、本開示の実施の形態に関連する構成要素であって、レンズ鏡筒10はこれ以外の構成要素も備えている。
【0016】
複数の枠体14、16、18、および20それぞれは、レンズ鏡筒10の光軸Cの延在方向(X軸方向)に移動可能に、レンズ鏡筒10内に収納されている。具体的には、複数の枠体14、16、18、および20は、円筒状の固定カム28内に収納される。その固定カム28には、光軸Cの延在方向に延在する実質的に直線状の複数のカム溝28aが形成されている。また、その固定カム28は、円筒状の可動カム30内に収納されている。その可動カム30にも、光軸Cの延在方向に延在しつつ光軸Cの周回方向に延在する実質的に曲線状の複数のカム溝30aが形成されている。その可動カム30は、レンズ鏡筒10の外殻の一部を構成するズームリング32に連結されている。
【0017】
これらの固定カム28のカム溝28aと可動カム30のカム溝30aとに係合するカムフォロア34が、複数の枠体14、16、18、および20それぞれに設けられている。ズームリング32を回転させることにより、可動カム30がレンズ鏡筒10の光軸Cを中心にして回転する。それにより、カムフォロア34が固定カム28のカム溝28aと可動カム30のカム溝30aにしたがって移動する。その結果、複数の枠体14、16、18、および20が、光軸Cの延在方向に移動しつつ、枠体間の距離が変更される。
【0018】
図3Aは、最も離れた状態の第1および第2の枠体を示す斜視図である。また、
図3Bは、最も接近した状態の第1および第2の枠体を示す斜視図である。さらに、
図4は、第1および第2の枠体の分解斜視図である。
【0019】
図3Aおよび
図3Bに示すように、枠体18(以下、「第1の枠体」と称する)と、枠体20(以下、「第2の枠体」と称する)は、上述したような可動カム30の回転により、光軸Cの延在方向(X軸方向)に互いに接近するまたは互いに離れる。具体的には、広角写真を撮影するときに第1の枠体18と第2の枠体20とが互いに接近し、望遠写真を撮影するときにこれらは互いに離れる。
【0020】
なお、本実施の形態の場合、第1の枠体18と第2の枠体20は、レンズ鏡筒10の光軸Cに対して直交する方向(Y軸方向およびZ軸方向)に部分的にオーバーラップしている。したがって、第1の枠体18と第2の枠体20とが最も離れている状態は、第1の枠体18におけるレンズ鏡筒10の一端10a側の端と第2の枠体20における他端10b側の端との間の距離が最大であるときである。それに対して、第1の枠体18と第2の枠体20とが最も接近している状態は、その距離が最短であるときである。
【0021】
図4に示すように、第1の枠体18は、光学部材として、レンズ40、レンズ42(
図7A参照)を保持するとともに、第3の枠体44を搭載している。本実施の形態の場合、第3の枠体44は、光学部材としてフォーカスレンズ46を保持している。
【0022】
図5Aは、第1の枠体において第3の枠体が最もレンズ鏡筒の一端側に位置する状態を示す斜視図である。また、
図5Bは、第1の枠体において第3の枠体が最もレンズ鏡筒の他端側に位置する状態を示す斜視図である。
【0023】
図5Aおよび
図5Bに示すように、第3の枠体44は、レンズ鏡筒10の光軸Cの延在方向(X軸方向)に移動可能に第1の枠体18に搭載されている。本実施の形態の場合、第1の枠体18には、第3の枠体44を光軸Cの延在方向に直線駆動するリニアモータ48が搭載されている。リニアモータ48の可動子であるコイル48Aが第3の枠体44に設けられ、固定子である磁石48Bが第1の枠体18に設けられている。リニアモータ48に駆動されることにより、第1の枠体18に対して第3の枠体44が所望の位置に位置決めされる(固定される)、すなわちフォーカスレンズ46が所望の位置に位置決めされる。なお、そのリニアモータ48を操作するための操作デバイスとして、
図1に示すように、レンズ鏡筒10は、フォーカスリング50を備える。
【0024】
図4に示すように、第2の枠体20は、第1の枠体18に対してレンズ鏡筒10の他端10b側に配置されている。また、第2の枠体20は、光学部材としてレンズ52、54(
図7A参照)を保持している。さらに、本実施の形態の場合、第2の枠体20は、第4の枠体56を搭載している。本実施の形態の場合、第4の枠体56は、光学部材としてフォーカスレンズ58を保持している。
【0025】
図6Aは、第2の枠体において第4の枠体が最もレンズ鏡筒の一端側に位置する状態を示す斜視図である。また、
図6Bは、第2の枠体において第4の枠体が最もレンズ鏡筒の他端側に位置する状態を示す斜視図である。
【0026】
図6Aおよび
図6Bに示すように、第4の枠体56は、レンズ鏡筒10の光軸Cの延在方向(X軸方向)に移動可能に枠体20に搭載されている。本実施の形態の場合、第2の枠体20には、第4の枠体56を光軸Cの延在方向に駆動するステッピングモータ60が搭載されている。ステッピングモータ60に駆動されることにより、第2の枠体20に対して第4の枠体56が所望の位置に位置決めされる(固定される)、すなわちフォーカスレンズ58が所望の位置に位置決めされる。このステッピングモータ60も、リニアモータ48と同様に、
図1に示すフォーカスリング50によって操作される。すなわち、本実施の形態の場合、レンズ鏡筒10は、2つのフォーカスレンズ46、58によって焦点を合わせるように構成されている。
【0027】
ここからは、これらのフォーカスレンズ46、58をそれぞれ保持する第3の枠体44と第4の枠体56のストローク範囲について説明する。
【0028】
図7Aは、望遠撮影時であって撮影距離が無限遠である状態のレンズ鏡筒の一部分の概略的な断面図である。また、
図7Bは、望遠撮影時であって撮影距離が最至近距離(MOD:minimum object distance)である状態のレンズ鏡筒の一部分の断面図である。さらに、
図7Cは、広角撮影時であって撮影距離が無限遠である状態のレンズ鏡筒の一部分の概略的な断面図である。そして、
図7Dは、広角撮影時であって撮影距離が最至近距離である状態のレンズ鏡筒の一部分の概略的な断面図である。
【0029】
図7Aおよび
図7Bに示すように、フォーカスレンズ46を保持する第3の枠体44とフォーカスレンズ58を保持する第4の枠体56それぞれは、互いに接触することがないように、ストローク範囲が決定されている。
【0030】
本実施の形態の場合、フォーカスレンズ58を保持する第4の枠体56は、ステッピングモータ60に連結されて駆動される。したがって、ステッピングモータ60への電力供給が停止すると、第4の枠体56はその時の位置に固定される。これに対して、フォーカスレンズ46を保持する第3の枠体44は、リニアモータ48によって駆動される。第3の枠体44には、リニアモータ48の可動子48Aが取り付けられている。そのため、リニアモータ48への電力供給が停止すると、第3の枠体44は、自由に移動可能な状態になる。その結果、レンズ鏡筒10を傾けると、その中で第3の枠体44が自由に移動する。
【0031】
このように第3の枠体44が自由に移動しても、第3の枠体44が保持するフォーカスレンズ46が、レンズ鏡筒10の光軸Cの延在方向(X軸方向)に隣接する第4の枠体56のフォーカスレンズ58や第1の枠体18のレンズ42に衝突しないように、第3の枠体44のストローク範囲が決定されている。
【0032】
図7Aの断面図は、望遠撮影時であって撮影距離が無限遠である状態のときの第3の枠体44と第4の枠体56との位置を示している。すなわち、
図7Aは、
図3Aに示すように第1の枠体18と第2の枠体20とが最も離れた状態のときの断面図である。また、
図7Aは、第3の枠体44を駆動するリニアモータ48と第4の枠体56を駆動するステッピングモータ60とが通電状態であって、それによって位置が固定されている第3の枠体44と第4の枠体56とを示している。
【0033】
図7Aに示す状態で、リニアモータ48への電力供給が停止すると、第3の枠体44は、レンズ鏡筒10の光軸Cの延在方向(X軸方向)に自由に移動可能な状態になる。
【0034】
第3の枠体44がレンズ鏡筒10の一端10a側(図中左側)に自由に移動したとき、その第3の枠体44と接触してそれ以上の一端10a側への移動を制限する第1のストッパ部18aが、第1の枠体18に設けられている。この第1の枠体18の第1のストッパ部18aに第3の枠体44の一端10a側の端部44aが接触することにより、第3の枠体44によって保持されたフォーカスレンズ46が第1の枠体18によって保持されているレンズ42に接触しない。なお、第1の枠体18の第1のストッパ部18aまたは第3の枠体44の端部44aの一方に、接触音を低減するために衝突の衝撃を吸収するゴムやスポンジなどの衝撃吸収部材70が設けられている。
【0035】
一方、第3の枠体44がレンズ鏡筒10の他端10b側(図中右側)に自由に移動したとき、その第3の枠体44と接触してそれ以上の他端10b側への移動を制限する第2のストッパ部18bが、第1の枠体18に設けられている。この第1の枠体18の第2のストッパ部18bに第3の枠体44の他端10b側の端部44bが接触することにより、第3の枠体44によって保持されたフォーカスレンズ46が第4の枠体56によって保持されているフォーカスレンズ58に接触しない。そのために、第4の枠体56は、第3の枠体44が第2のストッパ部18bに接触した状態のときにその第3の枠体44のフォーカスレンズ46がフォーカスレンズ58に接触しない位置に、ステッピングモータ60によって固定されている。また、第1の枠体18の第2のストッパ部18bまたは第3の枠体44の端部44bの一方に衝撃吸収部材72が設けられている。
【0036】
図7Bの断面図は、望遠撮影時であって撮影距離が最至近距離である状態のときの第3の枠体44と第4の枠体56との位置を示している。すなわち、
図7Bは、
図3Aに示すように第1の枠体18と第2の枠体20とが最も離れた状態のときの断面図である。また、
図7Bは、第3の枠体44を駆動するリニアモータ48と第4の枠体56を駆動するステッピングモータ60とが通電状態であって、それによって位置が固定されている第3の枠体44と第4の枠体56とを示している。
【0037】
図7Bに示す状態で、リニアモータ48への電力供給が停止すると、第3の枠体44は、レンズ鏡筒10の光軸Cの延在方向(X軸方向)に自由に移動可能な状態になる。
【0038】
第3の枠体44がレンズ鏡筒10の一端10a側(図中左側)に自由に移動したとき、その第3の枠体44の端部44aが第1の枠体18に設けられた第1のストッパ部18aに接触する。それにより、第3の枠体44によって保持されたフォーカスレンズ46が第1の枠体18によって保持されているレンズ42に接触しない。
【0039】
一方、第3の枠体44がレンズ鏡筒10の他端10b側(図中右側)に自由に移動したとき、その第3の枠体44の端部44bが第1の枠体18に設けられた第2のストッパ部18bに接触する。それにより、第3の枠体44によって保持されたフォーカスレンズ46が第4の枠体56によって保持されているフォーカスレンズ58に接触しない。また、第4の枠体56は、第3の枠体44が第2のストッパ部18bに接触した状態のときにその第3の枠体44のフォーカスレンズ46がフォーカスレンズ58に接触しない位置に、ステッピングモータ60によって固定されている。
【0040】
図7Cの断面図は、広角撮影時であって撮影距離が無限遠である状態のときの第3の枠体44と第4の枠体56との位置を示している。すなわち、
図7Cは、
図3Bに示すように第1の枠体18と第2の枠体20とが最も接近した状態のときの断面図である。また、
図7Cは、第3の枠体44を駆動するリニアモータ48と第4の枠体56を駆動するステッピングモータ60とが通電状態であって、それによって位置が固定されている第3の枠体44と第4の枠体56とを示している。
【0041】
図7Cに示す状態で、リニアモータ48への電力供給が停止すると、第3の枠体44は、レンズ鏡筒10の光軸Cの延在方向(X軸方向)に自由に移動可能な状態になる。
【0042】
第3の枠体44がレンズ鏡筒10の一端10a側(図中左側)に自由に移動したとき、その第3の枠体44の端部44aが第1の枠体18に設けられた第1のストッパ部18aに接触する。それにより、第3の枠体44によって保持されたフォーカスレンズ46が第1の枠体18によって保持されているレンズ42に接触しない。
【0043】
一方、第3の枠体44がレンズ鏡筒10の他端10b側(図中右側)に自由に移動したとき、その第3の枠体44の端部44bは、第1の枠体18に設けられた第2のストッパ部18bに接触することができない。第3の枠体44が第2のストッパ部18bに接触する前に、第3の枠体44によって保持されたフォーカスレンズ46が第4の枠体56に保持されたフォーカスレンズ58に接触する。これは、第1の枠体18と第2の枠体20とが互いに最も接近することにより、第4の枠体56が第2のストッパ部18bに対してレンズ筺体10の一端10a側に位置するからである。
【0044】
図7Cに示す状態において、レンズ鏡筒10の他端10b(図中右側)に移動する第3の枠体44のフォーカスレンズ46が第4の枠体56のフォーカスレンズ58に接触しないように、第3のストッパ部20aが、第1の枠体18ではなく、第2の枠体20に設けられている。
【0045】
第3のストッパ部20aは、第2の枠体20が第3の枠体44が移動可能なレンズ鏡筒10の光軸C上の範囲に位置するときに、例えば、
図7C(
図3B)に示すように第1の枠体18と第2の枠体20とが最も接近した状態のときに、その先端の接触面20bが第1の枠体18の第2のストッパ部18bに対してレンズ鏡筒10の一端10a側に位置するように第2の枠体20に設けられている。また、第3のストッパ部20aの接触面20bは、最も一端10a側に位置する第4の枠体56によって保持されたフォーカスレンズ58に対しても一端10a側に位置する(
図7Bおよび
図7D参照)。すなわち、第4の枠体56は、第3のストッパ部20aの接触面20bに対してレンズ鏡筒10の他端10b側でストロークするように、第2の枠体20に搭載されている。
【0046】
したがって、第3の枠体44がレンズ鏡筒10の他端10b側(図中右側)に自由に移動したとき、その第3の枠体44の端部44cが、第2の枠体20に設けられた第3のストッパ部20aの接触面20bに接触する。それにより、第3の枠体44によって保持されたフォーカスレンズ46が第4の枠体56によって保持されているフォーカスレンズ58に接触しない。なお、第2の枠体20の第3のストッパ部20aの接触面20bまたは第3の枠体44の端部44cの一方に衝撃吸収部材74が設けられている。
【0047】
仮に第2の枠体20の第3のストッパ部20aが存在しない場合、第1の枠体18は、第2の枠体20に対して接近することが制限される。そのため、第1の枠体18は第2の枠体20から離れた位置で必要なストロークを確保する必要があり、それにより、第1の枠体18と第2の枠体20のためにレンズ鏡筒10内に大きなスペースが確保される。その結果、レンズ鏡筒の小型化が要求されている場合、他の枠体の配置が困難になるまたは他の枠体のストロークが制限される。すなわち、レンズ鏡筒内におけるレンズ、絞りユニットなどの光学部材のレイアウト設計が困難になり、レンズ鏡筒の設計の自由度が低下する。
【0048】
一方、本実施の形態の場合、
図7Cおよび
図7Dに示すように、第2の枠体20に設けられた第3のストッパ部20aにより、第1の枠体18は、その大部分がレンズ鏡筒10の光軸Cに直交する方向(Y軸方向およびZ軸方向)に第2の枠体20に対してオーバーラップまで、第2の枠体20に接近することができる。その結果、第1の枠体18と第2の枠体20のために確保されるスペースが、第3のストッパ部20aが存在しない場合に比べて小さくなる。それにより、レンズ鏡筒の小型化が要求されていても、他の枠体の配置が容易になるとともにそのストロークを制限なく設定することが可能になる。すなわち、レンズ鏡筒内におけるレンズ、絞りユニットなどの光学部材のレイアウト設計が容易になり、レンズ鏡筒の設計の自由度が向上する。
【0049】
図7Dの断面図は、広角撮影時であって撮影距離が無限遠である状態のときの第3の枠体44と第4の枠体56との位置を示している。すなわち、
図7Dは、
図3Bに示すように第1の枠体18と第2の枠体20とが最も接近した状態のときの断面図である。また、
図7Dは、第3の枠体44を駆動するリニアモータ48と第4の枠体56を駆動するステッピングモータ60とが通電状態であって、それによって位置が固定されている第3の枠体44と第4の枠体56とを示している。
【0050】
図7Dに示す状態で、リニアモータ48への電力供給が停止すると、第3の枠体44は、レンズ鏡筒10の光軸Cの延在方向(X軸方向)に自由に移動可能な状態になる。
【0051】
第3の枠体44がレンズ鏡筒10の一端10a側(図中左側)に自由に移動したとき、その第3の枠体44の端部44aが第1の枠体18に設けられた第1のストッパ部18aに接触する。それにより、第3の枠体44によって保持されたフォーカスレンズ46が第1の枠体18によって保持されているレンズ42に接触しない。
【0052】
一方、第3の枠体44がレンズ鏡筒10の他端10b側(図中右側)に自由に移動したとき、その第3の枠体44の端部44cが第2の枠体20に設けられた第3のストッパ部20aに接触する。それにより、第3の枠体44によって保持されたフォーカスレンズ46が第4の枠体56によって保持されているフォーカスレンズ58に接触しない。また、第4の枠体56は、第3の枠体44が第3のストッパ部20aに接触した状態のときにその第3の枠体44のフォーカスレンズ46がフォーカスレンズ58に接触しない位置に、ステッピングモータ60によって固定されている。
【0053】
以上のような本実施の形態によれば、レンズ鏡筒が小型化されても、レンズ鏡筒の設計の自由度を確保することができる。
【0054】
以上、上述の実施の形態を挙げて本開示に係るレンズ鏡筒を説明してきた。しかしながら、本開示は、上述の実施の形態に限定されない。
【0055】
例えば、上述の実施の形態の場合、第2の枠体20は、レンズ鏡筒10の光軸Cの延在方向(X軸方向)に移動可能に設けられている。その代わりとして、第2の枠体20は、レンズ鏡筒10に固定されてもよい。すなわち、第1の枠体18が移動可能にレンズ鏡筒10に設けられることにより、その第1の枠体18に対して第2の枠体20が相対的に移動することができる。
【0056】
また、上述の実施の形態の場合、第3の枠体44は、リニアモータ48によって駆動されている。そのために、リニアモータ48への電力供給が停止したときに、第3の枠体44が自由に移動可能になる。その自由に移動する第3の枠体44によって保持されたフォーカスレンズ46が、隣接する他のレンズ42、58に衝突しないように、第1~第3のストッパ部18a、18b、および20aが設けられている。しかしながら、第3の枠体44を駆動する装置はリニアモータ48に限定されない。例えば、ステッピングモータによって第3の枠体44を駆動してもよい。通常、ステッピングモータに連結されている場合、第3の枠体44は自由に移動することはできない。しかしながら、ステッピングモータが故障するまたはステッピングモータと第3の枠体44との間の連結部が破損するなどして、第3の枠体44は、自由に移動可能な状態になりえる。その場合に、第1~第3のストッパ部18a、18b、および20aがその役割を果たす。
【0057】
これに関連して、第4の枠体56を駆動する装置が、ステッピングモータ60ではなく、リニアモータであってもよい。
【0058】
さらに、上述の実施の形態の場合、第4の枠体56が、レンズ鏡筒10の光軸Cの延在方向(X軸方向)に移動可能に第2の枠体20に搭載されている。しかしながら、本開示の実施の形態はこれに限らない。例えば、第4の枠体は、第2の枠体に固定されていてもよい。また、第4の枠体が保持する光学部材を第2の枠体が保持することにより、第4の枠体を省略することも可能である。
【0059】
さらにまた、上述の実施の形態の場合、第2の枠体20は、第1の枠体18に対して、レンズ鏡筒10の他端10b側、すなわち像面側に配置されている。これに代わって、第2の枠体20は、第1の枠体18に対して、レンズ鏡筒10の一端10a側、すなわち被写体側に配置されてもよい。
【0060】
加えて、上述の実施の形態の場合、第1~第4の枠体18、20、44、および56は、光学部材としてレンズを保持している。しかしながら、本開示の実施の形態は、これに限らない。第1~第4の枠体のいずれかは、レンズに代わる光学部材として、絞りユニットやNDフィルタなどを保持してもよい。
【0061】
以上のように、本開示における技術の例示として、複数の実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0062】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0063】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本開示は、複数の光学部材を備え、いくつかの光学部材が光軸の延在方向に移動可能なレンズ鏡筒に適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 レンズ鏡筒
18 第1の枠体
18a 第1のストッパ部
18b 第2のストッパ部
20 第2の枠体
20a 第3のストッパ部
40 光学部材(レンズ)
42 光学部材(レンズ)
44 第3の枠体
46 光学部材(フォーカスレンズ)
52 光学部材(レンズ)
54 光学部材(レンズ)