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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】既設分水栓の交換方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 41/06 20060101AFI20230901BHJP
   F16L 55/00 20060101ALI20230901BHJP
   F16K 43/00 20060101ALI20230901BHJP
   E03B 7/00 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
F16L41/06
F16L55/00 C
F16K43/00
E03B7/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019053162
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020153452
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000151025
【氏名又は名称】株式会社タブチ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】寺田 孝
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 宗実
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-194346(JP,A)
【文献】特開2006-046364(JP,A)
【文献】特開2003-314778(JP,A)
【文献】特開2003-269681(JP,A)
【文献】特開2007-024178(JP,A)
【文献】特開2003-028377(JP,A)
【文献】特開2003-254489(JP,A)
【文献】特開2004-211857(JP,A)
【文献】特開2008-169980(JP,A)
【文献】特開平04-151090(JP,A)
【文献】特開平05-171662(JP,A)
【文献】実開昭53-131222(JP,U)
【文献】特開2020-153451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 41/06
F16L 55/00
F16K 43/00
E03B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道本管に形成された分水孔に立設される既設管と、該既設管を前記水道本管に取付ける既設サドルと、前記既設管の途中に連結される既設分水管と、該既設分水管に対する前記分水孔からの水道水の流れを遮断可能とする止水こまとを備えた既設分水栓を、新設サドル分水栓に交換する交換方法であって、
前記止水こまを除去する除去工程と、
前記止水こまを除去した後に前記分水孔に対してガイドを立てる設置工程と、
前記止水こまの除去後、前記ガイドを立てる前に前記分水孔の周面を削る工程と、
前記ガイドを立てた後に前記ガイドで誘導して新設サドル分水栓を前記水道本管に設置する分水栓工程と、
を備えたことを特徴とする交換方法。
【請求項2】
水道本管に形成された分水孔に立設される既設管と、該既設管を前記水道本管に取付ける既設サドルと、前記既設管の途中に連結される既設分水管と、該既設分水管に対する前記分水孔からの水道水の流れを遮断可能とする止水こまとを備えた既設分水栓を、新設サドル分水栓に交換する交換方法であって、
前記分水孔からの水道水の流れを遮断するよう前記止水こまを前記既設分水管よりも前記分水孔に近い位置で前記既設管に当接させて止水した状態で、止水経路と該止水経路にて止水可能な止水弁とを有する止水部を、前記止水経路が前記既設管に連通するように装着する工程と、
前記止水部を前記既設管に装着した後に前記止水こまを除去する除去工程と、
前記分水孔に対してガイドを立てる設置工程と、
前記ガイドを立てた後に前記ガイドで誘導して新設サドル分水栓を前記水道本管に設置する分水栓工程と、
を備えたことを特徴とする交換方法。
【請求項3】
前記除去工程は、除去工具を用いて前記止水こまを除去する工程であり、
前記除去工程と前記設置工程との間に、前記除去工具をガイドに交換する除去ガイド交換工程を備えた請求項1又は2に記載の交換方法。
【請求項4】
前記ガイドは、前記除去工程で前記止水こまを除去することで形成された通路を通して前記分水孔まで挿入されることで該分水孔に立てられる請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水こまを備えて水道本管に取付けられている既設分水栓の交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、甲形分水栓の撤去方法が記載されている。一般的に甲形分水栓は、水道本管の分水孔に直接取付けられる下胴と、下胴の上に取付けられる上胴と、上胴の上下方向途中に連結される分岐管ソケットと、上胴内に螺合するよう取付けられて上胴内から下胴内へ下移動して、下胴の弁座に着座することで分岐管ソケットに対する水道水の流れを遮断可能に設けられる止水こまとを備える。
【0003】
特許文献1における甲形分水栓の撤去方法は、止水こま撤去用治具を用いて止水こまを下胴まで下動させて止水した状態で、上胴および分岐管ソケットを取外している。(文献1の図5参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-314778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の撤去方法は、止水こま撤去用治具を用いて止水こまを下胴まで下動させて止水した状態で、上胴および分岐管ソケットを取外す方法である。
【0006】
上記従来の甲形分水栓である既設分水栓から新設サドル分水栓に交換する場合には、既設分水栓を撤去しても下胴が残留してしまい、既設分水栓の全てを撤去できない。また、新設サドル分水栓を水道本管に取付けるのに際しても、充分な技能経験が必要であった。
【0007】
そこで本発明は、止水こまを備えて水道本管に取付けられている既設分水栓を、新設サドル分水栓に容易に交換する交換方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水道本管に形成された分水孔に立設される既設管と、該既設管を前記水道本管に取付ける既設サドルと、前記既設管の途中に連結される既設分水管と、該既設分水管に対する前記分水孔からの水道水の流れを遮断可能とする止水こまとを備えた既設分水栓を、新設サドル分水栓に交換する交換方法であって、前記止水こまを除去する除去工程と、前記分水孔に対してガイドを立てる設置工程と、前記止水こまを除去した後に前記ガイドで誘導して新設サドル分水栓を前記水道本管に設置する分水栓工程とを備えたことを特徴とする。
【0009】
上記交換方法によれば、除去工程で止水こまが除去されるため、既設分水栓を残留させずに撤去できる。また、分水孔にガイドを立てるので、新設サドル分水栓をガイドで誘導して設置できるから、既設分水栓から新設サドル分水栓に容易に交換できる。
【0010】
本発明では、前記除去工程は、除去工具を用いて前記止水こまを除去する工程であり、前記除去工程と前記設置工程との間に、前記除去工具をガイドに交換する除去ガイド交換工程を備える。
【0011】
上記交換方法によれば、止水こまを除去した後に工具交換してガイドを立てるので、その分だけ確実に作業ができる。
【0012】
本発明では、前記ガイドは、前記除去工程で前記止水こまを除去することで形成された通路を通して前記分水孔まで挿入されることで該分水孔に立てられる。
【0013】
上記交換方法によれば、除去作業で止水こまを除去することで形成された通路を利用してガイドを立てることができるので、効率よく作業をすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の既設分水栓の交換方法によれば、止水こまを備えて水道本管に取付けられている既設分水栓を、新設サドル分水栓に容易に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一の実施形態を表す既設分水栓の一部破断正面図である。
図2】同既設分水栓にアタッチメントを取付けた状態の一部破断正面図である。
図3】同アタッチメントに止水部を取付けた状態の一部破断正面図である。
図4】同止水部の正面図である。
図5】同止水部の底面図である。
図6】同止水部の平面図である。
図7】同止水部の右側面図である。
図8】同止水部の左側面図である。
図9】同止水部のA-A線矢視断面図である。
図10】同止水部に電動穿孔機を取付けた状態の一部破断正面図である。
図11】同穿孔ドリルを止水孔に挿通した状態の一部破断正面図である。
図12】同止水弁を収納姿勢から止水姿勢に切替えた状態の一部破断正面図である。
図13】同止水部に閉栓装置が取付けられ、孔止水具が止水部の止水経路に挿入された状態の一部破断正面図である。
図14】同孔止水具が止水孔に挿入された状態の一部破断正面図である。
図15】同孔止水具を回転させてパッキンの下部を拡径させた状態の一部破断正面図である。
図16】同止水部の検出プラグを取外した状態の一部破断正面図である。
図17】同止水部から閉栓装置を取外した状態の一部破断正面図である。
図18】同既設分水栓から止水部を取外した状態の一部破断正面図である。
図19】同止水孔に孔止水具を残留させて既設分水栓を撤去した状態の本管の正面断面図である。
図20】同孔止水具を案内部材として新設サドル分水栓を本管に設置した状態の一部破断側面図である。
図21】同分水栓本体に切粉排出ドレンを取付けた状態の一部破断側面図である。
図22】同分水孔に対して孔止水具を引抜いた状態の一部破断側面図である。
図23】同分水孔に穿孔ドリルを貫通させた状態の一部破断側面図である。
図24】同既設分水栓を新設サドル分水栓に交換させた一部破断側面図である。
図25】本発明の第二の実施形態の既設分水栓おいて、タップバーを止水こまの凹部に挿入した状態の一部破断正面図である。
図26】同既設分水栓にアタッチメント、止水部を取付けた状態の一部破断正面図である。
図27】同止水部に対して止水こまを上動させた状態の一部破断正面図である。
図28】同止水部における止水弁を止水姿勢とした状態の一部破断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る既設分水栓の撤去方法および交換方法を、図面を参照して説明する。本発明の一実施形態は、図1に示す既設分水栓1(甲分サドル)を、図24に示す新たな分水栓すなわち新設サドル分水栓2に交換するための撤去方法であり、交換方法である。
【0017】
図1に示すように、既設分水栓1は、止水こま3を備え且つ既設サドル4によって水道本管5(以下、本管5と称す)に取付けられている甲分サドルを意味する。
【0018】
既設分水栓1は、本管5の上部に形成された分水孔6に、分水孔6の周辺にOリング7を介して接続される既設サドル4と、分水孔6に接続されるとともに既設サドル4によって本管5に立設された既設管8とを備える。既設管8は、その上下方向途中に一体的に形成された、既設分水管としての分岐管ソケット9とを備える。また、既設分水栓1は、既設管8の内部に貫通された既設通水経路10と分岐管ソケット9の内部に貫通された分岐管流路11に対して、分水孔6からの水道水の供給を遮断可能に設けられた前記止水こま3とを備えている。
【0019】
止水こま3は回転自在に設けられ、既設通水経路10(既設管8)の内周に形成されたねじ12により、昇降自在にねじ止めされる。止水こま3の上部には、止水こま3を昇降させるための開閉工具を挿入する凹部13が形成されている。開閉工具を凹部13に嵌合させて、開閉工具を回転させることにより、止水こま3が上下動させられる。また、既設通水経路10(分岐管ソケット9より下側)の下部には、止水こま3の下動を制限する縮径部14が形成されており、止水こま3が縮径部14に当接することで止水される。
【0020】
既設管8における本管5側の基部と既設サドル4とは、ねじ8aによって螺合され、既設管8の基部と既設サドル4とは、分水孔6の周囲に配置されたOリング7aを介して取付けられている。
【0021】
本実施形態は、このような既設分水栓1(甲分サドル)を新設サドル分水栓2に交換するために撤去する方法であり、この撤去方法は、既設分水栓1に対して、
(1)既設管8に対して止水部15(後述する)を装着する装着工程、
(2)止水こま3を除去する除去工程、
(3)除去具(穿孔ドリル33)を取外し、孔止水工具40(後述するガイド)を装着する除去止水工具交換工程、
(4)孔止水工具40で分水孔6を止水する止水工程(設置工程)、
(5)既設分水栓1を除去する撤去工程、
を備える。以下、上記工程を行うための装置および工程について述べる。
【0022】
装着工程では、止水部15が既設管8の先端に装着され、止水部15の止水経路22は、既設管8の上下方向の既設通水経路10に対して直線状(上下方向)に連通される。また、止水部15は、基端側が既設管8に接続され、先端側が除去工具(穿孔ドリル33)および孔止水工具40に接続されている。また、止水部15は、基端と先端の間で止水するよう構成されている。
【0023】
装着工程では、図2に示すように、既設通水経路10の上端に、止水部15を取付けるためのアタッチメント16を取付け、アタッチメント16に止水部15を取付ける。このアタッチメント16は、既設分水栓1の既設管8のサイズに応じた止水部15を取付けるためのものである。ここで、アタッチメント16の構成を説明する。
【0024】
図2に示すように、アタッチメント16は、既設管8を介して止水部15を取付けるよう構成され、アタッチメント16は、スリーブ状に形成されたアタッチメント本体17と、アタッチメント本体17の内部中心に、本管5の分水孔6に対して径を大きく形成された挿通孔18を備えている。挿通孔18は、アタッチメント本体17を上下に貫通している。アタッチメント本体17の底部は、既設管8の上部に着脱自在に螺合される。
【0025】
また、アタッチメント本体17と既設管8の上部とが螺合すると、挿通孔18と止水こま3の凹部13とが連通される。また、アタッチメント本体17の上部外周には、止水部15を取付けるための雄ねじ17aが形成されている。
【0026】
次に、図3ないし図9を参照して、止水部15を説明する。止水部15は、止水本体部19を備え、止水本体部19は、上本体20と下本体21から略円筒状に形成されている。止水本体部19の内部には、止水経路22が止水本体部19の上下方向に亘って形成されている。止水経路22は、既設管8の既設通水経路10よりも大径に形成されている。特に、下本体21の止水経路22は、上本体20の止水経路22に比べて大径である。その理由として、後述する止水弁23が、本管5に対して軸心方向で移動自在に構成されているからである。
【0027】
止水部15には、下本体21から側方に突出した回転装置24が設けられている。回転装置24は、下本体21から側方に配置される外郭体25と、外郭体25の側部からさらに突出した工具用摘み26と、工具用摘み26から外郭体25の内部端部に配置された回転体27と、回転体27に連結された断面円形の杆体28と、杆体28を外嵌する断面矩形の摺動子29とを備える。
【0028】
杆体28の外周には杆体28の略全長に亘り雄ねじ28aが形成され、摺動子29の内面には、杆体28の雄ねじ28aに螺合する雌ねじが形成されている。摺動子29は、外郭体25の内部で本管5の軸心に対して移動する。
【0029】
前記止水弁23の端部は、摺動子29の上面に連結されていて、本管5の幅方向および長さ方向に延長され、上本体20の止水経路22を覆うことができるような大きさの板状に形成されている。また、止水弁23は、外郭体25の上部に収納可能な大きさに形成され、止水弁23の収納に際し、上本体20の止水経路22は全く開放されている。
【0030】
止水部15は、このような構成を有しており、工具用摘み26を回転させると、摺動子29が止水経路22の径方向に沿って移動し、止水部15は、止水弁23により上本体20の止水経路22を止水した止水姿勢B1(図12参照)と、上本体20の止水経路22を下本体21の止水経路22に対して開放して、外郭体25の上部に収納された収納姿勢B2に切替えられる。
【0031】
なお、上本体20の途中には、止水経路22に外観において水道水の供給があるかないかを検出する窓30が形成されており、この窓30には、検出プラグ31が着脱自在に設けられている。また、止水本体部19の上部外周面には、後述する電動穿孔機32が外嵌される雄ねじ19aが形成されている。このように装着工程では、止水経路22が既設通水経路10に上下に連通し、止水経路22と既設通水経路10の間に止水弁23が位置される。
【0032】
除去工程は、既設管8の通水経路10に設けられている止水こま3を除去する工程である。止水こま3を除去するのに除去工具が用いられ、除去工具は、通水経路10を上(先端)側から下(基部)側へ向けて挿通することで、止水こま3を除去する。除去工程は、上下に連通している止水経路22および通水経路10に除去工具を挿通して、止水こま3を除去する工程である。除去工具は、既設管8の上に立設(装着)される。換言すれば、除去工具は止水部15の上に立設(装着)される。
【0033】
図10で示すように、除去工具である穿孔ドリル33を、既設通水経路10内に通して止水こま3を破壊する。電動穿孔機32は、止水本体部19の上部外周面の雄ねじ19aに外嵌され、下穿孔機34と上穿孔機35とを備え、その内部には、穿孔ドリル33を挿通可能な挿通経路36が形成されている。挿通経路36の径は、止水本体部19の止水経路22よりも大径に形成されている。
【0034】
穿孔ドリル33は、上下方向に長いドリル本体37と、ドリル本体37の先端に取付けられ、本管5の分水孔6と略同径に形成されたドリル部38とを備える。
【0035】
装着工程、除去工程についてさらに述べる。まず、装着工程として、既設管8にアタッチメント16を取付け(図2参照)、アタッチメント16に止水部15を取付ける(図3参照)。このとき、止水部15は、上本体20の止水経路22を開放して、外郭体25が止水経路22から外れた収納姿勢B2としておく。
【0036】
除去工程として、止水部15に電動穿孔機32を取付ける(図10参照)。また、電動穿孔機32の挿通経路36に穿孔ドリル33を挿通し、穿孔ドリル33のドリル部38を、止水こま3の凹部13に宛がう。そして、穿孔ドリル33を回転し、また下動させることで、止水こま3が粉砕されて破壊される。粉砕された止水こま3は、分岐管ソケット9の分岐管流路11に対して水道水を供給可能としておくことで、既設管8の既設通水経路10から流れ出る。また、図11に示すように、穿孔ドリル33のドリル部38は、分水孔6に内嵌して回転する。これにより、穿孔ドリル33は、分水孔6の周面を削る。
【0037】
このようにした後、電動穿孔機32の挿通経路36から、穿孔ドリル33を、止水弁23よりも上に引き上げる(上に動かす)。そして、図12に示すように、止水部15においては、工具用摘み26を工具で把持して、外郭体25の上部に収納された収納姿勢B2から、止水経路22を止水した止水姿勢B1に切替えて(止水弁23を閉じ)止水する。そして、電動穿孔機32は、止水部15から取外される。
【0038】
このような除去工程によって、止水こま3が穿孔ドリル33によって破壊された後に、装着工程で示したように、既設管8に止水部15を取付けることによれば、止水弁23によって分水孔6から離れた位置で、水道水の流れを遮断(止水)できる。
【0039】
装着工程では、既設管8に対して止水部15を装着し、除去工程では、既設管8に挿通可能な穿孔ドリル33により止水こま3を除去する。本実施形態では、装着工程として止水部15を既設管8に装着し、除去工程として、除去工具(穿孔ドリル33)を止水部15(既設管8)に取付けた後に該除去工具で止水こま3を破壊(除去)し、分水孔6の周面を切削した後、除去工具を元の位置に引き上げることで、止水こま3が除去される。
【0040】
次に、工具交換工程を行う。この工具交換工程は、前記除去工程と後述の止水工程(設置工程)との間で、止水部15で止水した状態で除去工具を他の工具に交換する工程である。除去工具を、後述の孔止水工具40に交換する場合を除去止水工具交換工程と称し、後述のガイドに交換する場合を除去ガイド交換工程と称する。本実施形態では、孔止水工具40がガイドとして機能するため、除去止水工具交換工程と除去ガイド交換工程とは、同じ工程となる。
【0041】
孔止水工具40は、断面円形の杆状に形成された孔止水工具本体41と、孔止水工具本体41の下部先端に形成された先細りの尖端42と、尖端42側の孔止水工具本体41に形成され拡幅を許容されたパッキン43と、孔止水工具本体41の上部基端に形成された操作部44とを備える。孔止水工具本体41は、分水孔6よりもわずかに小径に形成されている。パッキン43の径は、縮径状態において、分水孔6よりもわずかに小径に形成されている。
【0042】
本管5の分水孔6を止水する孔止水工具40を取付けて止水するための装置を説明する。これには閉栓装置45が用いられる。閉栓装置45は、止水部15に取付けられる案内部46と、案内部46とは別体であり、孔止水工具40の案内部46に対して上方に離間し、操作部44を回転自在に且つ着脱自在に把持する閉栓器47と、閉栓器47に内嵌されて本管5の表面に接触可能なゲージ48とを有する。
【0043】
案内部46は、止水本体部19の上部外周面の雄ねじ19aによって取付けられている。案内部46の中心には、孔止水工具本体41を挿通する挿通部49が形成されている。案内部46を止水本体部19に取付けた際に、案内部46の挿通部49は、止水本体部19の止水経路22と連通している。
【0044】
図14に示すように、ゲージ48は、本管5の軸心方向に沿う水平部50と、水平部50の端部から本管5の外周面に向かって垂下する鉛直部51とから、杆状のL字型に形成されている。閉栓器47は操作部44を覆うように構成され、閉栓器47の上端には、ゲージ48の水平部50を内嵌する把持部52が形成されている。
【0045】
止水部15から取外された穿孔ドリル33を孔止水工具40に交換するのは、図13に示すように、止水部15に案内部46を取付け、案内部46の挿通部49に対して、孔止水工具40の尖端42から孔止水工具本体41を、上方から挿入し、また、ゲージ48の水平部50を把持部52に内嵌させた閉栓器47で、孔止水工具40の操作部44を覆う。
【0046】
工具交換工程は、除去工程の後に止水部15で止水した状態で止水工具を後工程で用いる工具に交換する工程である。工具交換工程は、既設管8に対して本管5と反対側の経路、具体的には止水部15の止水経路22にて止水し、除去工具よりも本管5側の経路、具体的には止水経路22で止水する。すなわち止水経路22は、径方向で横切る止水弁23で止水される。そして、除去工具を既設管8(止水部15)から取外し、既設管8に孔止水工具40(ガイド)を装着し、孔止水工具40(ガイド)を止水部15の上に装着する。また、孔止水工具40(ガイド)は、既設管8の通水経路10に挿通可能なように装着される。具体的には、孔止水工具40(ガイド)は、止水経路22と通水経路10に接続可能に装着される。
【0047】
工具交換工程として、孔止水工具40に交換する場合は、除去工程と止水工程との間の除去止水工具交換工程であり、ガイドに交換する場合は、除去工程と設置工程との間の除去ガイド交換工程である。そして、本実施形態では、後述のように孔止水工具40がすなわちガイドとなるため、除去止水工具交換工程と除去ガイド交換工程とは同じ工程となる。
【0048】
次に、止水工程に移る。止水工程は、分水孔6に栓をすることで止水する工程である。すなわち、本管5から分水孔6を介して水道水が外部へ流れるのを止める。これには、パッキン43を分水孔6の内周面に圧着させて止水する、あるいはパッキン43を本管5の内周面における分水孔6まわりの周縁部に密着させて分水孔6を止水する、もしくは両方で分水孔6を止水するものである。また、除去工程で止水こま3を除去して形成された通路に孔止水工具40を挿通して、分水孔6を止水する。
【0049】
具体的には、図14に示すように、閉栓器47を押し下げるようにして、案内部46の内周(挿通部49)で案内すると、孔止水工具40が下動し、孔止水工具40の尖端42から孔止水工具本体41が、止水部15の止水経路22、アタッチメント16の挿通孔18、そして、既設管8の既設通水経路10に挿通され、尖端42が本管5の分水孔6から本管5の内部に入り、パッキン43の上部が分水孔6の周面に嵌合する。尖端42が本管5の内部に入り、パッキン43の上部が分水孔6の周面に嵌合したことは、予めゲージ48の鉛直部51の下端が本管5の外周面に至ることで検出される。その後、図15で示すように閉栓装置45(閉栓器47)を回転させて、パッキン43の下部を拡径して、分水孔6をパッキン43で止水する。
【0050】
ここで、本実施形態では止水工程が設置工程でもある。この設置工程は、分水孔6の中心軸線に沿うようにガイドを立設する工程である。ガイドは、分水孔6から本管5の径方向外向きに延出するように立設される。また、ガイドの先端が分水孔6に係止することで立設される。なお、ガイドは分水孔6に係止することによる止水であってもよいし、栓とは別の構成で分水孔6に立設することで、止水しなくてもよい。また、設置工程では、前記除去工程で止水こま3を除去して形成された通路を利用して、ガイドを立設する。また、設置工程では、ガイドは、止水経路22と通水経路10を挿通する。この場合は、孔止水工具40がガイドであり、孔止水工具本体41がガイド本体であり、パッキン43(止水体)が孔係止部となる。
【0051】
そして、図16で示すように、止水部15の検出プラグ31を外し、窓30から外観することで、パッキン43によって分水孔6からの止水ができているかを確認する。
【0052】
次に、撤去工程に移る。撤去工程は、閉栓装置45を除去し、止水部15を除去し、既設分水栓1(既設管8、分岐管ソケット9、既設サドル4、Oリング7)を除去する工程である。すなわち、分水孔6からの止水ができているかを確認したら、孔止水工具40は分水孔6に残留させたまま閉栓装置45を取外す。続いて、図17から図18に示すように、止水部15を既設管8から取外し、孔止水工具40を分水孔6に立設した状態で、既設サドル4、既設管8だけにし、続いて図19に示すように、既設サドル4を本管5から取外す。
【0053】
このように、本管5の分水孔6に対し、孔止水工具40を立設したまま止水することで、既設分水栓1が、止水こま3を備え且つ既設サドル4によって本管5に取付けられていても、分水孔6から水道水が漏れることなく撤去できる。
【0054】
既設分水栓1の撤去方法によれば、止水部15で止水した状態で、穿孔ドリル33および孔止水工具40を工具交換できるので、分水孔6から漏水させずに作業できる。また、孔止水工具40は、穿孔ドリル33で止水こま3を除去することで形成された通路を通して、分水孔5まで挿入することができるから、効率的に作業ができる。
【0055】
次に、既設分水栓1の交換方法を説明する。交換方法は、撤去方法にて既設分水栓1を撤去した後に(図19参照)、新設サドル分水栓2を設置する方法(図24参照)である。この交換方法は、分水栓工程、通水工程を含む工程である。
【0056】
除去工程については、前記(2)と同じ工程として撤去方法で行われ、設置工程についても、図18のように、撤去方法において、孔止水工具40(ガイド40)を分水孔6に立設した状態とされることで行われている。ここで、孔止水工具40であるガイド40によって新設サドル分水栓2を誘導して、本管5に設置する分水栓工程を説明する。
【0057】
はじめに、新設サドル分水栓2について説明するが、例えば図20に示すように、新設サドル分水栓2は一般的な構成であるため、概略を説明する。新設サドル分水栓2は、本管5の上部周面を覆って本管5の軸心方向に所定距離を有したサドル53と、サドル53にボルト・ナットBNを介して本管5の下部に取付けられるバンド54と、分水栓本体55とを備える。
【0058】
サドル53の中心には、分水栓本体55を取付けるための開口53aが形成されている。サドル53は、本管5の分水孔6の周辺に新たなガスケット7Aを介して接続される。また、新設サドル分水栓2は、サドル53に対して取付けられる分水栓本体55を備える。分水栓本体55の下部外周には、サドル53における開口53aに螺合する雄ねじ55aが形成されている。
【0059】
分水栓本体55は、内部に上下方向の流路を備えるとともに、該流路にボール型弁体56を備える。ボール型弁体56は、その中心に弁孔57が貫通されている。分水栓本体55の側部に、ボール型弁体56を回転操作するための操作ハンドル58を備えている。なお、前記流路のうち、ボール型弁体56の上側を上流路59、下側を下流路60と称する。
【0060】
新設サドル分水栓2は、分水栓本体55の側部に、給水配管61を備え、その内部には、前記流路に連通する配管路62を備えている。また、分水栓本体55の上部外周には雄ねじ55bが形成され、給水配管61の側部外周には雄ねじ61aが形成されている。
【0061】
分水栓工程は、本管5の分水孔6にガイド40を案内部材として、図20に示すように、新設サドル分水栓2を設置する工程である。すなわち、一例として、ガスケット7A付きのサドル53と、サドル53の開口53a(雌ねじ)に分水栓本体55の雄ねじ55aを螺合させた分水栓本体55を組品として、分水栓本体55における下流路60、上流路59、下流路60および上流路59を開放した(開姿勢とした)ボール型弁体56を、ガイド40に沿って案内させ、サドル53を本管5の外周まで到達させる。その後に、ボルト・ナットBNを介して本管5の下部にバンド54を取付け、サドル53を本管5の外周に固定する。このように、ガイド40を案内部材として新設サドル分水栓2を本管5に設置すれば、特別な技能なくして、新設サドル分水栓2を設置できる。
【0062】
次に通水工程を説明する。通水工程は、分水孔6を止水するガイド40を除去して各戸へ水道水が供給され得る工程である。新設サドル分水栓2を設置するためには、ガイド40によって止水された水道水を、通水可能なように除去する必要がある。そのため、まず図21に示すように、給水配管61の側部外周の雄ねじ61aに、公知の切粉排出ドレン63を接続する。この切粉排出ドレン63は内部に弁体63aを備え、弁体63aを開閉する摘み63bを備えている。また、分水栓本体55の上部外周に形成された雄ねじ55bに、閉栓装置45を取付ける。閉栓装置45は、ゲージ48を有さないだけで、図13図16に示した通りである。
【0063】
そして、切粉排出ドレン63の摘み63bを操作して弁体63aを閉姿勢(配管路62を止水する姿勢)とする。また、閉栓装置45は、閉栓器47を回転させることで、拡径されたパッキン43の下部を復元する(上下に伸ばす)。そして、図22に示すように、分水孔6、下流路60、弁孔57、および上流路59に対しガイド40を引き上げる。その際、切粉排出ドレン63の弁体63aを閉姿勢としていることで、水道水の噴出が避けられる。また、分水栓本体55のボール型弁体56を閉姿勢として、分水栓本体55から閉栓装置45およびガイド40を取外す。
【0064】
次に、図23で示すように、再び電動穿孔機32を分水栓本体55の上部外周に形成した雄ねじ55bに取付け、電動穿孔機32内に穿孔ドリル33を取付けるとともに、操作ハンドル58を回転操作し、ボール型弁体56を、上流路59、弁孔57、および下流路60を連通させる開姿勢とし、穿孔ドリル33のドリル部38を、分水孔6に穿孔させ、ドリル部38を本管5内に挿入させる。ドリル部38の径は、分水孔6の径よりもわずかに大きく形成されている。ドリル部38が分水孔6を通ると、ドリル部38の径は分水孔6の径よりもわずかに大きく形成されていることにより、分水孔6の径は、その分だけ大きくなって、分水孔6はその径を中心とした新たな分水孔6となる。そして、新たな分水孔6では、ドリル部38の拡径により、後述のスリーブ取付けに適した径となる。
【0065】
そして、穿孔ドリル33を分水栓本体55から引き上げ、ボール型弁体56を閉姿勢として、電動穿孔機32を分水栓本体55から外す。また、図24に示すように、分水孔6に貫入して保持されるスリーブ64(分水孔6を保護するためのものである)を取付けるために、スリーブ挿入器(図示せず)を準備し、ボール型弁体56を開姿勢として、スリーブ挿入器によってスリーブ64を分水孔6に取付ける。
【0066】
スリーブ64を分水孔6に取付けた後、スリーブ挿入器を、分水孔6、下流路60、弁孔57、および上流路59から引き上げ、ボール型弁体56を閉姿勢とし、スリーブ挿入器を外し、分水栓本体55の上部外周に形成した雄ねじ55bにキャップ65を螺合する。そして、切粉排出ドレン63を取外し、本管5から各戸へ給する新たな継手66を準備して、給水配管61の側部外周の雄ねじ61aに取付け、ボール型弁体56を開姿勢とする。これにより、各戸へ水道水が供給され得る開設状態(通水工程)となる。
【0067】
本実施形態によれば、既設管8の上に止水部15を取付け、止水部15の上に工具を取付けるようにしている。このように止水部15の上に工具を取付けるようにすれば、工具を容易に交換でき、作業を簡易化できる。また、孔止水工具をもって分水孔に栓をすることで、止水しつつガイドを立設することができて作業効率を向上させることができる。
【0068】
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではない。例えば、第二の実施形態として、止水こま3は、穿孔ドリル33によって除去(破壊)される場合のみではなく、取除かれる場合も含む。この第二の実施形態を、図25図28に示す。
【0069】
第二の実施形態では、止水こま3を取除くために杆状のタップバー67を用いる。すなわち、図25に示すように、タップバー67を取付けるためのタップガイド68を既設管8の上部に着脱自在に螺合する。タップガイド68の内部に形成された挿通部からタップバー67を下降させて、タップバー67の先端を止水こま3の凹部13に挿入し、止水こま3を縮径部14まで降ろして(図25の仮想線参照)、タップガイド68を既設管8から外す。止水こま3を縮径部14まで降ろしたときに、分水孔6が間接的に止水される。
【0070】
そして、タップバー67を縮径部14まで降ろした状態で、図26で示すように、第一の実施形態と同様のアタッチメント16を、既設管8の上部に着脱自在に螺合し、アタッチメント16に、第一の実施形態と同様の止水部15を取付ける。このとき、回転体27を回転操作して、止水弁23を収納姿勢B2とする。また、止水部キャップ69を、タップバー67に外嵌するようにして、止水本体部19の上部外周面の雄ねじ19aに螺合する。そして、図27に示すように、止水こま3を止水部キャップ69まで引き上げ、回転体27を回転操作して、止水弁23を止水姿勢B1とし、図28に示すように、止水部キャップ69およびタップバー67を止水部15から外す。
【0071】
この作業により、本管5に既設分水栓1を取付けたまま、止水こま3の取外し、および止水ができる。その後は、第一の実施形態で示した図13から図24までの方法で、既設分水栓1を撤去し、新設サドル分水栓2に交換できる。
【0072】
上記実施形態では、止水部15に平板状の止水弁23を形成した。しかしながら、止水部15はボール型弁体としてもよい。この場合、弁孔に孔止水工具40が挿通される。
【0073】
上記実施形態では、分水孔6に孔止水工具40を立設して、これを新設サドル分水栓2のガイドとして設けた。しかしながら、孔止水工具40以外に分水孔6の孔周面、あるいは本管5の表面における分水孔6の周囲で止水するものであってもよい。
【0074】
また、上記実施形態は、孔止水工具40を分水孔6に配置した。しかしながら、孔止水工具であれば、ガイドとして立設するもの、あるいは立設しないものも含んでいる。また、ガイドであれば、分水孔6を止水するもの、あるいは止水しないものも含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1:既設分水栓、2:新設サドル分水栓、4:既設サドル、5:本管、6:分水孔、8:既設管、9:分岐管ソケット、10:既設通水経路、11:分岐管流路、13:凹部、14:縮径部、15:止水部、16:アタッチメント、18:挿通孔、19:止水本体部、22:止水経路、23:止水弁、25:外郭体、27:回転体、28:杆体、29:摺動子、32:電動穿孔機、33:穿孔ドリル、36:挿通経路、37:ドリル本体、38:ドリル部、40:孔止水具、43:パッキン、44:操作部、45:閉栓装置、46:案内部、47:閉栓器、49:挿通凹部、52:把持部、53:サドル、55:分水栓本体、56:ボール型弁体、57:弁孔、58:操作ハンドル、59:上流路、60:下流路、61:給水配管、62:配管路、B1:止水姿勢、B2:収納姿勢
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図28