(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】ワーク移動台車
(51)【国際特許分類】
B62B 3/06 20060101AFI20230901BHJP
B62B 5/00 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
B62B3/06 Z
B62B5/00 F
(21)【出願番号】P 2020000988
(22)【出願日】2020-01-07
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】517366655
【氏名又は名称】コリンテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【氏名又は名称】三井 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100081547
【氏名又は名称】亀川 義示
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優子
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-243473(JP,A)
【文献】特開2006-008079(JP,A)
【文献】特開2005-219701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00- 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受取台方向に前後動可能な台車本体と、
該台車本体の上部に上下動かつ前後動可能に設けられた搬送台を具備し、
台車本体と搬送台のいずれか一方の部材に、走行方向に延びる直線部材を設け、他方の部材に該直線部材にガイドされて回転し搬送台を支持する上下動輪を設け、
台車本体が後退位置にあるとき上記受取台の上面より搬送台の上面を上昇させ、
台車本体が前進位置にあるとき搬送台の上面を受取台の上面より降下するよう上記上下動輪の回転中心を、上下動輪の外形の中心から変位して設け
、
上記台車本体は受取台方向に間隔を開けて対になって延びる複数の保持枠で構成され、
搬送台は該保持枠に保持され、
保持枠は車輪を有し、
該車輪が保持枠間に設けたレール上を走行するよう複数のレールを設けたベース板が形成され、
上記受取台は上記保持枠が入り込む間隔を開けて設けた複数の起立枠で構成され、
上記ベース板には台車が受取台に接近して前進端まで走行したとき台車が当接する台車前進ストッパーと、
受取台から離れて後退するとき後退端で台車が当接する台車後退ストッパーが設けられており、
台車本体には搬送台が前進するとき当接する搬送台前進ストッパーと、後退するとき搬送台が当接する搬送台後退ストッパーが設けられている
ワーク移動台車。
【請求項2】
上記
搬送台が搬送台後退ストッパーに当接するとき、該搬送台を搬送台後退ストッパー方向に移動する方向に上下動輪を回転するよう上記上下動輪の回転中心を変位させた請求項1に記載のワーク移動台車。
【請求項3】
上記直線部材は、
搬送台に固定され、上下動輪は台車本体に設けられている請求項1または2に記載のワーク移動台車。
【請求項4】
上記直
線部材は、ラックであり、上下動輪は、該ラックに噛み合う上下動ギアである請求項1
又は2に記載のワーク移動台車。
【請求項5】
上記
台車本体には、搬送台を前進方向の押圧する押圧手段が設けられている請求項1
~4のいずれかに記載のワーク移動台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量のあるワークを、テーブルリフター、作業台その他の受取台に移送するワーク移動台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
重量のあるワークは、油圧シリンダーを用いた油圧機構やモーターで駆動される電動機構によりホークを上下動可能に設けたホークリフト等の装置で受取台に移送することが多いが、ホークリフト等を使用できない場所であったり、手動で搬入するのが都合のよい場合がある。例えば特許文献1には、油圧機構や電動機構を使用せずに、積み重ねた箱体を所定場所まで運んで降ろすことができる手動式の手押搬送車が記載されている。この搬送車は、車枠の上方に昇降枠を設け、車枠の前後端部に楕円カムを設け、この楕円カムを回動して、昇降枠を上昇させて箱体を持ち上げ、所定の場所まで運んだら、昇降枠を降下して箱体を降ろすように構成されているが、構成が複雑である。すなわち、上記車枠に支持板を固定し、この支持板に手押レバーを枢支し、前後端部の楕円カムの中心軸に支持杆を固定し、該支持杆を上記支持板に固定して楕円カムを車枠と昇降枠の間に保持する。この手押レバーには、手押レバーを回転したときに連動するよう前リンクと後リンクの一端を連結してあり、これらのリンクの他端をそれぞれ前部、後部に配置した上記楕円カムの偏心軸に連結する。この構成により手押しレバーを操作すると、上記リンクを介して上記楕円カムが回動し、長径方向に回動すると、箱体を載せた乗せた昇降枠が上昇して搬送車を移動させることができ、短径方向に回動すると、昇降枠が降下して、箱体を降ろすことができる。このように、従来のものは、支持枠、支持杆、リンク等数多くの部品を必要とし、構成が複雑である。また、昇降枠を降下させるとき、手押レバーのような操作部材を、別に設けて操作しなければならないので、取り扱いが面倒である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公平3-23897公報(実用新案登録請求の範囲、第1図、第7図~第9図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の解決課題は、手動式でかつ極めて簡単な構成であり、取り扱いが容易なワーク移動台車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、受取台方向に前後動可能な台車本体と、該台車本体の上部に上下動かつ前後動可能に設けられた搬送台を具備し、台車本体と搬送台のいずれか一方の部材に、走行方向に延びる直線部材を設け、他方の部材に該直線部材にガイドされて回転し搬送台を支持する上下動輪を設け、台車本体が後退位置にあるとき上記受取台の上面より搬送台の上面を上昇させ、台車本体が前進位置にあるとき搬送台の上面を受取台の上面より降下するよう上記上下動輪の回転中心を、上下動輪の外形の中心から変位して設けたことを特徴とするワーク移動台車が提供され、上記課題が解決される。なお、本発明において、直線部材と上下動輪は、例えば直線部材を、ラック、チェーン、ピンラック、レール等で構成し、上下動輪を、ラックに噛み合うギア、チェーンに噛み合うチェーンスプロケット、ピンラックに噛み合うピン車、レールに摩擦接触して転動する摩擦車その他搬送台を移動させたとき上下動輪を回転させることができる適宜の機構の組み合わせに構成することができる。
【0006】
本発明において、好ましくは、上記直線部材は搬送台に固定されたラックであり、上下動輪は台車本体に設けられた上下動ギアである上記ワーク移動台車が提供される。また、上記台車本体は受取台方向に間隔を開けて延びる複数の保持枠で構成され、搬送台は該保持枠に保持され、保持枠は車輪を有し、該車輪により保持枠間に設けたレール上を走行するよう複数のレールを設けたベース板が形成されている。上記受取台は上記保持枠が入り込む間隔を開けて設けた複数の起立枠で構成され、上記ベース板には台車本体が受取台に接近して前進端まで走行したとき台車本体が当接する台車前進ストッパーと、受取台から離れて後退するとき後退端で台車本体が当接する台車後退ストッパーが設けられており、台車本体には搬送台が前進するとき当接する搬送台前進ストッパーと、後退するとき搬送台が当接する搬送台後退ストッパーが設けられている上記ワーク移動台車が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、上記搬送台が搬送台後退ストッパーに当接するとき、該搬送台を搬送台後退ストッパー方向に移動する方向に上下動輪を回転するよう上記上下動輪の回転の中心を変位させた上記ワーク移動台車が提案される。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上記のように構成され、例えば複数枚の板状体を積層したワークを台車により移動してテーブルリフト等で構成された受取台上に搬入し、該受取台を板状体1枚の厚さ分上昇させて1枚づつ板状体を取り出して処理部門に送り込みできるようにした処理装置に好適に使用することができる。本発明の台車は、受取台方向に前後動可能な台車本体を有し、該台車本体の上部に上下動かつ前後動可能に搬送台を具備するから、搬送台上にワークを載せて受取台の方向に搬送することができる。そして、台車本体と搬送台のいずれか一方の部材に、走行方向に延びる直線部材を設け、他方の部材に該直線部材にガイドされて回転し搬送台を支持する上下動輪を設け、台車本体が後退位置にあるとき上記受取台の上面より搬送台の上面を上昇させ、台車本体が前進位置にあるとき搬送台の上面を受取台の上面より降下するよう上記上下動輪の回転中心を、上下動輪の外形の中心から変位して設けたので、後退位置で搬送台にワークを載せた台車本体を、支障なく受取台方向に前進させることができる。この際、台車本体が台車前進ストッパーに当たるまでは搬送台の上面は受取台の上面よりも高い位置にあるので、搬送台が受取台にぶつかることなく台車を移動させることができる。そして、台車本体が台車前進ストッパーに当たると、前進動が阻止されるが、搬送台は慣性力や押圧力で搬送台前進ストッパーに当たるまで前進可能であり、前進動に伴って上下動輪が回転するので、回転中心の変位量に応じて直線部材と上下動輪の接点であるピッチ点と回転中心までの距離が短くなり、搬送台の上面は受取台の上面より降下する。それにより、降下の途中で搬送台上のワークは、受取台で受け止められて支持される。
【0009】
上記ワークを受取台に移送したら、上記台車を受取台から離れる方向に後退させるが、最初の状態では、搬送台の上面は受取台の上面よりも低い位置に存するので、支障なく搬送台を後退させることができる。そして、台車が後退位置まで後退して停止すると、慣性力や押圧力で移動する搬送台により上下動輪は回転して回転中心からピッチ点までの距離が長くなって搬送台の上面は受取台の上面より上昇し、次のワークを載置することができる。以上のように、台車の移動に伴う慣性力や押圧力で上下動輪を回転させて搬送台の上下動を自動的に行うことができるから、従来のもの比べて、部品点数が少なく、構成も簡単であり、搬送台を上下動させるための特別な操作部材も省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施例を示し、正面から見た説明図。
【
図5】台車を示し、(A)は平面から見た説明図、(B)は側面から見た説明図。
【
図6】取手を取り付けていない状態の台車本体を示し、(A)は平面から見た説明図、(B)は正面から見た説明図。
【
図7】搬送台を示し、(A)は平面から見た説明図、(B)は側面から見た説明図、(C)は正面から見た説明図。
【
図8】ベース板を示し、(A)は平面から見た説明図、(B)は側面から見た説明図。
【
図9】ラックと上下動ギアを位置合わせして台車本体と搬送台を組み付けるときの一例を示し、(A)は組付け作業台に載せた状態の説明図、(B)は一部の拡大図。
【
図10】台車本体が前進端に接近したときの説明図。
【
図11】搬送台が搬送台前進ストッパーに当接したときの説明図。
【
図12】搬送台が搬送台後退ストッパーに当接したときの状態を示し、(A)は一部の説明図、(B)は上下動ギアが回転する方向を示す説明図。
【
図13】押圧補助具を用いた実施例を示し、(A)は押圧前の説明図、(B)は押圧したときの説明図。
【
図14】チェーンとチェーンスプロケットの組み合わせを示す説明図。
【
図15】ピンラックとピン車の組み合わせを示し、(A)は正面から見た説明図、(B)は一部を断面して示す側面から見た説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施例を示し、ワーク移動台車1は、例えば板状体を積層したワーク2を受取台3に移送するよう該受取台3に隣接して設けられている。実施例において、受取台3は、リフトテーブルのように、上面に載せた板状体を1枚づつ上昇させて処理装置に送り込むように構成され装置に組み込まれている(図示略)。
【0012】
上記ワーク移動台車1は、上記受取台3方向に前後動可能な台車本体4と、台車本体4の上部に上下動かつ前後動可能に設けられた搬送台5を具備する。台車本体4と搬送台5のいずれか一方、図に示す実施例では搬送台5の下面には、走行方向に延びる直線部材が設けられ、他方の部材、図に示す実施例では台車本体4には上記直線部材にガイドされて回転し搬送台5を支持する上下動輪が設けられている。なお、図に示す実施例とは逆に、台車本体4側に直線部材を設け、搬送台5側に上下動輪を設けることもできる(図示略)。上述したように、直線部材と上下動輪は、種々の構成を採用することができ、以下詳述するように、
図1~
図13に示す実施例では、直線部材をラック6で構成し、上下動輪を上下動ギア7で構成している。
【0013】
図2、
図3及び
図5~
図7を参照し、台車本体4は、受取台3方向に間隔を開けて並行して対になって延びる保持枠8を複数列有する。この保持枠8は、それぞれ板状に形成された上記搬送台5を嵌入できる挿入間隙を開けて対向状態に設けられ、図に示す実施例では6列設けられており、一端側に設けた保持枠連結板9で連結され、
図1に示すように、該連結板9上には台車取手10が起立状態に固定される。上記保持枠8の前端内面には、上記搬送台5が前進したとき当接する搬送台前進ストッパー11が設けられ、後端内面には搬送台5が後退したとき当接する搬送台後退ストッパー12が設けられている。また、上記保持枠8には、上記上下動ギア7の回転軸13を軸支するギア取付孔14と、台車1を走行させるための車輪15の車輪軸16を取り付けるための車輪取付孔17が設けられている。
【0014】
上記搬送台5は、上記のように、保持枠8の挿入間隙に嵌合状態で挿入される幅の板状体に形成され、一端側に設けた搬送台連結板18にボルト締めして連結され、搬送台連結板18の上面には、搬送台取手19が設けられている。上記搬送台5の上面5Aは、ワーク2を載置できるよう平坦面に形成してあるが、搬送台5の下面には上記ラック6が形成されている。該ラック6は、搬送台5の下面の長手方向全体に連続して設けてもよいが、図に示す実施例では、ワークの荷重を考慮して上下動ギア7を1つの保持枠8につき3個設けたので、それぞれの上下動ギア7に対応して3か所に分散して設けられている。また、各ラック6の歯には、好ましくは各歯に噛み合う上下動ギア7の歯に対応して「1」から順にラック歯番号をマーキングしておき、上下動ギアにも、
図4に示すようにギア歯番号をマーキングしておくと、ラックと上下動ギアの位置合わせが容易になる。なお、番号に代えて適宜の目印であってもよい。
【0015】
図8に示すように、上記台車1の車輪15が走行するよう複数のレール20を設けたベース板21が形成されている。上記レール20は、上記保持枠8間に沿って受取台3まで延びている。受取台3は、上記保持枠8が入り込む間隔を開けて設けた複数の起立枠22で構成され、起立枠22の上面がテーブルリフター構造になっている。
図1に示すように、ベース板21の一端側には、台車1が受取台3に向かって前進端まで前方に走行したとき当接するよう台車前進ストッパー23が設けられており、また他端側には、受取台3から離れる方向に後退したとき後進端で当接するよう台車後進ストッパー24が設けられている。
【0016】
上記上下動ギア7は、台車が後退位置にあるとき上記受取台3の上面3Aより搬送台5の上面5Aを上昇させ、台車が前進位置にあるとき搬送台5の上面5Aを受取台3の上面3Aより降下するよう回転中心Aを、上下動ギア7の外形の中心Bから変位して設けてある。図に示す実施例では、ワーク2を受け取るときに、搬送台5の上面5Aの高さが、受取台3の上面3Aよりも5mm上昇し、台車が受取台3方向に移動して降下するとき、受取台3の上面3Aよりも6mm降下するように変位量を定めてあるが、この変位量は所望により適宜に設定することができる。
【0017】
図4には、回転中心を変位させた上下動ギア7の一例を示してある。
図4においては、上下動ギア7の外形の中心をBとし、上下動ギアの回転中心をAとしたとき、A―B線上の外方に位置する歯を「3」とし、それより右歯を順次「2」、「1」としてある。これにより、回転中心からラックと上下動ギアの接点であるピッチ点までの距離が「3」の歯より右歯「2」、「1」が順次大きくなるようにしてある。また、「3」の左歯を、順次「4」、「5」・・・とし、順次回転中心からピッチ点までの距離が短くなるようにしてある。
【0018】
上記上下動ギア7は、図に示す実施例ではワークの荷重支持するため、全部で18個設けられているので、搬送台5を水平状態で上下動させるためには、18個全部の上下動ギア7の歯とラック6の歯の噛み合い位置が一致している必要がある。位置合わせするには種々の組み付け方法をとることができるが、
図9には、その一例が示されている。詳述すると、先ず、組付け作業台25の上に、上記
図7に示すように組み立てた搬送台5を、ラック6が上向きになるように載置する。次に、対になって台車本体4を構成している保持枠8のうちの一方を保持枠連結板9から外しておき、搬送台前進ストッパー11に、搬送台5のラック6の前端が当接する状態で組付け作業台25上に台車本体4を載置し、保持枠8を搬送台5のラック6に隣接させる。そして、台車が前進しているときの搬送台6の高さに応じて、例えば上下動ギア7の歯「10」がラック6の歯「10」に噛み合うように位置合わせして上下動ギア7をラック6に差し込む。その後、外しておいた他方の保持枠8を、前端を上記搬送台前進ストッパー11にそろえた状態で、上記組付け作業台25に載置し、対向させた保持枠8間で上下動ギア7を挟み込み、ギア取付孔14に回転軸13を差し込んで上下動ギア7を保持枠8間に組み込み、外しておいた上記保持枠8の端部を保持枠連結板9に固定する。このようにして、18個すべての上下動ギア7を保持枠8間に組み込んだら、搬送台5と台車本体4を組み合わせた状態で、搬送台5が台車本体4の上方に位置するように反転して組付け作業台から取り出せば、すべての上下動ギア7とラック6の噛み合わせ位置を正しく調整して組み立てることができる。車輪15は、位置合わせしなくてもよいので、適時に保持枠間に差し込み、車輪軸16を車輪取付孔17に差し込んで組み付ければよい。
【0019】
上記のようにして組み立てられた台車1は、
図1に示すようにベース板21のレール20上を車輪15が転動するようにセットされる。このとき台車後退ストッパー24に台車1の後端が当った状態では、搬送台5の後端も搬送台後退ストッパー12に当接している。そして、搬送台5のラック6の歯には、搬送台5の上面5Aが受取台3の上面3Aより高い位置になるように変位させた上下動ギア7の歯が噛み合っている。そして、搬送台5に、例えば、複数枚の板状体を積層したワーク2を載置し、台車取手10を押して受取台3方向に台車を前進させる。
【0020】
上記台車1を前進させると、台車本体4の保持枠8は、受取台3の起立枠22間に入り込み、台車1が台車前進ストッパー23に当接するまでは、
図10に示すように、搬送台5はまだ上昇位置にある。台車1の前進中、搬送台5は台車本体4上に載って台車本体4と一緒に前進しているが、まだ搬送車5自体は前進していない。したがって、搬送台5の上面5Aは上下動ギア7により受取台3の上面3Aよりも高い位置に保持されているので、受取台3に当たるおそれはなく、台車1は支障なく走行する。
【0021】
台車1が台車前進ストッパー23に当接して停止すると、ワーク2の荷重が作用している搬送台5には前進方向に慣性力が働き、
図11に示すように、台車本体4上で搬送台前進ストッパー11に当たるまで搬送台5は前進する。この慣性力が小さいときには、搬送車取手19を前進方向に押圧すれば、上述と同様に搬送台前進ストッパー11に当たる位置まで搬送台5を前進させることができる。この前進動のとき、搬送台5のラック6に噛み合っている上下動ギア7は回転され、回転中心からピッチ点までの距離が短い歯がラック6に噛み合うことになる。そのため、ラック6、すなわち搬送台5は、上面5Aが受取台3の上面3Aよりも低い位置に降下する。降下の途中で搬送台5上のワーク2は、搬送台5から受取台3に移送される。
【0022】
ワークの移送が済んだら、台車取手10をもって台車1を台車後退ストッパー24に当たる位置に後退させる。このときの慣性力や搬送台取手19に掛けた押圧力等で搬送台5は搬送台後退ストッパー12に当たるまで後退する。そして、搬送台5のラック6に噛み合う上下動ギア7は、回転し、回転中心からピッチ点までの距離が大きい歯がラック6の歯に対応することになるので、搬送台5の上面5Aは、受取台3の上面3Aよりも高く保持される。
【0023】
上記のように後退位置で搬送台5は、上面5Aが上昇しているが、上昇位置を確保させるには、上記搬送台5が搬送台後退ストッパー12に当接するとき、該搬送台5を搬送台後退ストッパー12方向に移動する方向に上下動ギア7が回転するよう上記上下動ギア7の回転中心を変位させればよい。例えば、上下動ギア7の歯「3」がラック6の歯「3」に噛み合っているときには、上方からの荷重は、上下動ギア7の回転中心Aと上下動ギア7の外形の中心Bを結ぶ線上にあるので、上下動ギアには回転力が作用しない。しかし、上下動ギア7の歯「2」や「1」にラック6の歯「2」や歯「1」が噛み合っていると、中心A、Bの位置がずれてくる。その結果、
図12(B)に示すように、上記中心Aが支点Aとなり、上記中心Bが、荷重が作用する作用点Bとなることになる。このようになると、てこの原理で上下動ギア7には、
図12において反時計方向に回転力が作用し、上下動ギア7はラック6を後退する方向に回転する方向に力がかかるので、搬送台5は上昇位置をキープすることができる。なお、台車本体4に適宜のフックその他の掛け止め具を設けて搬送台5を後退位置に掛け止めておくこともできる(図示略)。
【0024】
上記のように掛け止め具を設けた場合は、台車1を受取台3方向に前進させるとき外せばよいが、上下動ギア7に台車1を後退する方向に強い回転力が作用しているときには、積極的に台車1を前進方向に押圧する適宜の押圧手段を設ければよい。
図13はそのような一実施例を示し、同図(A)に示すように、横押し型トッグルクランプ26を台車本体4に固定し、ハンドル27を回転したとき、押圧ロッド28が同図(B)に示すように、突出し、搬送台5の後端面に当って該搬送台を前進方向に押圧するようにしている。なお、台車取手をレバー状に設け、台車取手を押すときに連動して搬送台を前進方向に押すような機構を設けてもよい(図示略)。
【0025】
上記実施例では、直線部材としてラック6を用い、上下動輪として上下動ギア7を用いているが、
図14には、チェーン機構を用いた実施例が示されている。
図14において、搬送台5の下面には、チェーン29が展張状態に固定され、台車本体4には、該チェーン29に噛み合うチェーンスプロケット30が設けられ、チェーンスプロケット30は回転軸13により台車本体4に回転可能に支持されている。このチェーンスプロケット30の回転中心Aは、上記実施例の上下動ギア7と同じように、搬送台5を上下動させるようチェーンスプロケット30の外径の中心Bより変位して設けられている。したがって、台車1を受取台3方向に移動させたとき、搬送台5は上昇位置にあって、支障なく前進し、受取台3に達したとき、降下してワークを受取台に移送することができる。
【0026】
図15に示す実施例では、搬送台5の下面にピンラック31を設け、台車本体4に、該ピンラック31に噛み合うピン車32を設けてある。該ピン車32は、回転軸13により台車本体4に回転自在に支持されている。搬送台5が走行するとき、ピン車32のピン33がピンラック31に噛み合っているので、ピン車32が回転する。このピン車32の回転中心Aは、上記実施例の上下動ギアと同じように、搬送台を上下動させるようピン車32の外径の中心Bより変位して設けられている。したがって、台車1を受取台3方向に移動させたとき、搬送台5は上昇位置にあって、支障なく前進し、受取台に達したとき、降下してワークを受取台に移送することができる。なお、図示を省略したが、上下動輪として摩擦車を利用する場合は、搬送台が移動するとき、摩擦車を確実に回転させて搬送台を上下動できるよう摩擦車が転動するレール面との間で充分な摩擦作用を生じるようにすればよい。
【0027】
上記実施例では台車本体に1対の保持枠を6列設けてあるが、台車本体は、台車を前進させたとき、受取台にぶつからずに上下に重ね合わせ可能な適宜の形状、構造に形成することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 ワーク移動台車
2 ワーク
3 受取台
4 台車本体
5 搬送台
6 ラック
7 上下動ギア
8 保持枠
11 搬送台前進ストッパー
12 搬送台後退ストッパー
15 車輪
20 レール
21 ベース板
22 起立枠
23 台車前進ストッパー
24 台車後退ストッパー
29 チェーン
30 チェーンスプロケット
31 ピンラック
32 ピン車