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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】金属検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/10 20060101AFI20230901BHJP
【FI】
G01V3/10 F
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020073710
(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公開番号】P2021169980
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】598105802
【氏名又は名称】株式会社 システムスクエア
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】森山 淳児
(72)【発明者】
【氏名】野村 実
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-232247(JP,A)
【文献】特開2003-084072(JP,A)
【文献】実開平05-028984(JP,U)
【文献】特開平08-068865(JP,A)
【文献】特開平05-087941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を出力する送信信号出力部と、
前記送信信号出力部が出力する送信信号が印加され、検査領域に交番磁界を発生させる送信コイルと、
前記送信コイルの発生する磁束を補足可能な位置に配置され、前記検査領域に前記送信コイルが発生する交番磁界に基づき誘起電圧を発生させる2つの受信コイルと、
2つの受信コイルに生じる誘起電圧の差に基づき前記検査領域における金属の有無を判定し、判定結果を出力する制御部と、
前記送信信号出力部が出力する送信信号と同期した基準信号に基づき調整信号を生成し出力する調整信号出力部と、
前記検査領域に配置され、前記調整信号出力部が出力する調整信号が印加される調整コイルと、
を備え
前記送信コイルと前記受信コイルとは前記検査領域を囲う同軸のコイルであり、
前記調整コイルは、前記送信コイルおよび前記受信コイルより小型のコイルであることを特徴とする金属検出装置。
【請求項2】
前記調整コイルのループ面積は、前記送信コイルおよび前記受信コイルのループ面積よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の金属検出装置。
【請求項3】
調整信号出力部は、前記基準信号の振幅、位相、および波形の少なくとも1つを変化させた信号を調整信号として出力することを特徴とする、請求項1または2に記載の金属検出装置。
【請求項4】
前記基準信号は、前記送信信号と同期した信号であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の金属検出装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記2つの受信コイルに生じる誘起電圧の差が所定の許容値を超えない範囲に収まるように、調整信号出力部に調整信号の振幅、位相、および波形の少なくとも1つを設定することを特徴とする請求項またはに記載の金属検出装置。
【請求項6】
被検査物を、前記検査領域を通るように搬送方向に搬送する搬送手段をさらに備え、
前記2つの受信コイルは、前記搬送手段による搬送方向について前記送信コイルを中心に対称な位置に配置される
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の金属検出装置。
【請求項7】
前記調整コイルは巻回軸を有し、当該巻回軸に巻回されていることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の金属検出装置。
【請求項8】
前記巻回軸は、前記調整コイル近傍の前記送信コイルおよび前記受信コイルと交差することを特徴とする請求項7に記載の金属検出装置。
【請求項9】
前記検査領域において前記巻回軸の物理的配置を調整する位置調整機構をさらに備えることを特徴とする請求項7または8に記載の金属検出装置。
【請求項10】
前記位置調整機構は、
前記検査領域に向けて貫通した少なくとも1つのネジ孔を有する調整ネジ受けと、
前記ネジ孔に螺入される調整ネジと、を備える
ことを特徴とする請求項に記載の金属検出装置。
【請求項11】
少なくとも1つの前記ネジ孔は、前記2つの受信コイルからの距離が等しくない位置に設けられることを特徴とする請求項10に記載の金属検出装置。
【請求項12】
前記調整コイルは、前記調整ネジを前記巻回軸とすることを特徴とする請求項10または11に記載の金属検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば食品や衣類等の被検査物中の金属の有無を検出する金属検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の金属検出装置としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1記載の金属検出装置は、被検査物をコンベアと、コンベアの搬送面上の検査領域を囲うように設けられた送信コイルと、搬送方向おいて送信コイルの前後の位置に配置された同一形状の2つの受信コイルと、を備えている。
【0003】
送信コイルは、波形発生部から供給される磁界送信信号に基づき、検査領域に磁界を発生する。2つの受信コイルは、送信コイルを間に挟んで対称な位置に配置され、磁界を検出して誘起電圧を生じる。2つの受信コイルは、両者に生じる誘起電圧の差が出力となるように接続され、平常時は2つの受信コイルに生じる誘起電圧が平衡し受信信号が実質的にゼロとなる。一方、検査領域中に金属を含む被検査物が搬送されると、2つの受信コイルに生じる誘起電圧の平衡が崩れ、受信信号に変化が生じる。このようにして受信信号が所定値を超えた場合に、被検査物に金属が含まれているとして検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許6577974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、金属検出装置では、理想的には、検査領域に金属が無い場合には、2つの受信コイルに生じる誘起電圧が完全に平衡して出力信号がゼロとなるところ、実際には2つの受信コイルの配置のアンバランス等により、出力信号には磁界送信信号と同期した微弱な変動が生じることがある。このような変動は、金属の検出限界に対する律速となるため極力抑制する必要がある。そこで、検査領域に金属性の調整ネジを挿入するための機構を設け、金属検出装置を設置する際に調整ネジの挿入位置及び挿入量を調整して平常時の出力信号が所定の許容値上限以下となるようにしていた。
【0006】
しかしながら、上記のように設置時に調整を行っても、経時的な変化等により、2つの受信コイルに生じる誘起電圧の平衡が崩れ、平常時の出力信号に変動が生じることがあった。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、平常時の出力信号がゼロとなるように事後的に調整することが可能な金属検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決すべく、本発明の金属検出装置は、送信信号を出力する送信信号出力部と、送信信号出力部が出力する送信信号が印加され、検査領域に交番磁界を発生させる送信コイルと、送信コイルの発生する磁束を補足可能な位置に配置され、検査領域に送信コイルが発生する交番磁界に基づき誘起電圧を発生させる2つの受信コイルと、2つの受信コイルに生じる誘起電圧の差に基づき検査領域における金属の有無を判定し、判定結果を出力する制御部と、送信信号出力部が出力する送信信号と同期した基準信号に基づき調整信号を生成し出力する調整信号出力部と、検査領域に配置され、調整信号出力部が出力する調整信号が印加される調整コイルと、を備える。
【0009】
本発明では、調整信号出力部は、基準信号の振幅、位相、および波形の少なくとも1つを変化させた信号を調整信号として出力するとよい。例えば、基準信号は、送信信号を分岐した信号とするとよい。そして、制御部は、2つの受信コイルに生じる誘起電圧の差が所定の許容値を超えない範囲に収まるように、調整信号出力部に調整信号の振幅、位相、および波形の少なくとも1つを設定するとよい。
【0010】
本発明では、金属検出装置は、被検査物を、検査領域を通るように搬送方向に搬送する搬送手段をさらに備え、2つの受信コイルは、搬送手段による搬送方向について送信コイルを中心に対称な位置に配置されるとよい。
【0011】
本発明では、金属検出装置は、検査領域において部材の物理的配置を調整する位置調整機構をさらに備えるとよい。位置調整機構は、検査領域に向けて貫通した少なくとも1つのネジ孔を有する調整ネジ受けと、ネジ孔に螺入される調整ネジと、を備えるとよい。この場合、少なくとも1つのネジ孔は、2つの受信コイルからの距離が等しくない位置に設けられるとよい。また、調整コイルは、調整ネジに設けられるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】金属検出装置1の構成を示すブロック図である。
図2】搬送面61a上に規定される検査領域Zを、金属検出部20が備える送信コイル21及び受信コイル22とともに示す図である。
図3】信号処理部30および調整部40により構成される回路を模式的に示す図である。
図4】調整部40の構成を示す図である。
図5図5(a)は、調整コイル43が巻かれていない状態の調整ネジ42の構造を示す斜視図である。図5(b)は、調整コイル43が巻かれた状態の調整ネジ42を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0014】
〔金属検出装置の構成〕
図1に示すように、本実施形態における金属検出装置1は、制御部10と、金属検出部20と、信号処理部30と、調整部40と、表示部50と、搬送手段としてのコンベア60と、を備える。金属検出装置1は、コンベア60により搬送され検査領域Zを通過する被検査物W中の金属の有無を検出する。
【0015】
被検査物Wは、例えば量産される食品を包装材で包装したものであり、箱入り製品のような定形のものでも、流動物等を封入した可撓性の袋入り製品のような不定形のものでよく、冷凍品でもよい。また被検査物Wは、食品に限定されない。
【0016】
コンベア60は、制御部10による制御の下、被検査物Wを搬送する。コンベア60は、図示した搬送方向に被検査物Wを搬送する搬送手段としての無端環状のコンベアベルト61と、搬送ローラ62及び63と、を備えている。コンベアベルト61は、被検査物Wを載置し搬送方向に搬送する搬送面61aを有する。
【0017】
図2は、搬送面61a上に規定される検査領域Zを、金属検出部20が備える送信コイル21及び受信コイル22とともに示す図である。図2に示すように、コンベアベルト61の搬送面61a上の所定の領域が検査領域Zとなる。したがって、被検査物Wは、検査領域Zを通るようにコンベア60により搬送される。
【0018】
金属検出部20は、1つの送信コイル21と2つの受信コイル22A,22B(以下、2つの受信コイルを総称して受信コイル22と呼ぶことがある)を備える。また、信号処理部30は、送信信号出力部31、受信信号処理部32、および調整信号出力部33を備える。
【0019】
送信コイル21は、検査領域Zにおける搬送方向の所定位置を囲うように配置される。送信コイル21の巻き数は、例えば1~5ターン程度とするとよい。送信コイル21は、送信信号出力部31に接続される。送信信号出力部31は、制御部10による制御の下、送信コイル21に交流の送信信号を出力する。送信信号出力部31が出力する送信信号の周波数、振幅等は制御部10により設定可能とするとよい。送信コイル21は、送信信号出力部31が出力する送信信号が印加され、検査領域Zに交番磁界を発生する。
【0020】
2つの受信コイル22は、送信コイル21の発生する磁束を補足可能な位置に配置される。具体的には、2つの受信コイル22は、同形状に形成され、搬送方向において送信コイル21を挟んで対称な位置(すなわち送信コイル21から等距離の位置)に、検査領域Zを囲うようにそれぞれ配置される。2つの受信コイル22は、両者に生じる誘起電圧の差が出力となるように接続される。例えば、2つの受信コイル22は、互いに逆巻きとなるように配置され、図3に示すように直列に接続されるとよい。そして、直列接続された2つの受信コイル22の両端の電位差(つまり、2つの受信コイルにおける誘起電圧の差)が金属検出部20の出力である受信信号として受信信号処理部32に与えられるようにするとよい。なお、受信コイル22は、その後段に信号を増幅等する後段アンプを備える場合がある。本明細書では、当該後段アンプも含め受信コイル22と称する。
【0021】
このようにすることで、検査領域Zに金属が存在しない平常時には、理想的には送信コイル21により発生された交番磁界によって、2つの受信コイル22は極性が反対で等しい大きさの誘起電圧を生じる(すなわち平衡する)。また、検査領域Zに金属が存在する場合には、1つの受信コイル22と他の受信コイル22とで誘起電圧に差が生じる。
【0022】
受信信号処理部32は、信号増幅器32AとAD変換器32Bにより構成される。信号増幅器32Aは、金属検出部20からの受信信号を、AD変換器32Bの入力電圧範囲に応じた所定の増幅率で増幅する。AD変換器32Bは、信号増幅器32Aが増幅した信号を所定のサンプリング間隔でサンプリングし、複数のサンプリング点に離散化したサンプリングデータを制御部10に出力する。
【0023】
制御部10は、受信信号処理部32から出力されたサンプリングデータに基づいて、受信信号と判定閾値との比較等の処理を行い、金属の有無を判定する。また、制御部10は、表示部50に、判定結果、受信信号の時間変化をプロットした信号波形等を表示させるとよい。表示部50は、例えば液晶表示装置である。表示部50は、制御部10による制御の下、判定結果、受信信号の時間変化をプロットした信号波形、操作インタフェース等を表示する。
【0024】
以上のように構成される金属検出装置1において、検査領域Zに金属が存在しない平常時には、理想的には2つの受信コイル22の誘起電圧が完全に打ち消し合い、受信信号はゼロ[V]となる。
【0025】
しかし、現実の金属検出装置1では、送信コイル21により発生される交番磁界によって2つの受信コイル22に生じる誘起電圧は、製造誤差や設置環境等の影響を受けて完全に平衡しない(アンバランスとなる)場合がある。このような2つの受信コイル22のアンバランスがあると、受信信号に不要な変動成分が生じる。変動成分を含んだ受信信号を増幅してAD変換する場合、増幅した信号をAD変換器32Bの入力電圧範囲内に収めるために増幅率を抑制する必要が生じる。このように増幅率を抑制する結果、検出感度や検出精度が十分に高められなくなる。
【0026】
したがって、2つの受信コイル22のアンバランスは極力なくす必要がある。このようなアンバランスを解消し、検査領域Zに金属が存在しない平常時に受信信号処理部32に与えられる受信信号が所定の許容値未満となるように調整をするために、調整部40が設けられる。
【0027】
調整部40は、調整ネジ受け41と、調整ネジ42と、調整コイル43とを備える。調整ネジ受け41と調整ネジ42は、位置調整機構の一例である。調整ネジ受け41は、検査領域Zの近傍に、送信コイル21、2つの受信コイル22A,22Bに渡って設けられた平板上の部材であり、検査領域Zに向けて貫通した複数のネジ孔41Aを有する。本例では、図4に示すように、ネジ孔41Aは、受信コイル22Aの送信コイル21とは反対側、受信コイル22Aと送信コイル21の間、送信コイル21と受信コイル22Bの間、および受信コイル22Bの送信コイル21とは反対側に、それぞれ2つずつ、合計8個設けられる。このように、ネジ孔41Aは、2つの受信コイル22からの距離が等しくない位置に設けられるとよい。なお、図4においては省略されているが、調整ネジ受け41と送信コイル21および受信コイル22との間には、検査領域Zを外部の磁場から遮蔽するための金属板が設けられており、金属板の各ネジ孔41Aに対応する位置に、調整ネジ42が貫入可能な孔が設けられる。
【0028】
調整ネジ42を用いたバランス調整は、金属検出装置1を設置する際に行われる。送信コイル21に送信信号を加えて交番磁界を発生させた状態で、金属検出部20の出力電圧をモニタしながら調整ネジ42を螺入するネジ孔41Aの位置及び調整ネジ42の締め込み量を、金属検出部20が出力する受信信号が所定の許容値を超えない範囲に収まるように調整する。
【0029】
調整ネジ42の締め込み等、検査領域Zにおける種々の部材の物理的配置の微調整によるバランス調整を行っても、時間の経過や周辺環境の変化等により設置後にバランスが崩れる場合がある。そこで本実施形態の金属検出装置1は、調整コイル43と調整信号出力部33とにより、調整ネジ42の締め込み量を変えずにバランス調整を行うことを可能とする。
【0030】
調整信号出力部33は、送信信号出力部31が出力する送信信号を分岐した基準信号について、その振幅、位相、および波形の少なくとも1つを変化させた調整信号を調整コイル43に供給する。ここで、「波形を変化させる」、とは例えば正弦波の基準信号に基づき矩形波や三角波の調整信号を出力するような場合を指す。調整信号出力部33は、これらの調整を実現すべく、可変増幅回路、可変遅延回路、任意波形発生器等を備えてもよい。調整コイル43は、調整信号出力部33から供給される調整信号が印加され、交番磁界を発生する。この調整コイル43による交番磁界は、送信コイル21による交番磁界とともに2つの受信コイル22に誘起電圧を生じさせる。
【0031】
調整コイル43は、2つの受信コイル22のそれぞれに異なる影響を及ぼす位置(すなわち、2つの受信コイル22から等距離でない位置)に配置される。
【0032】
例えば、調整コイル43は調整ネジ42に巻かれた状態で設けられるとよい。このようにすれば、金属検出装置1の設置時にバランス調整をおこなった調整ネジ42の位置で調整用の交番磁界を発生させて、バランスを調整することが可能となる。このような構成を実現するのに好適な、調整ネジ42及び調整コイル43の構成例を図5に示す。図5(a)は、調整コイル43が巻かれていない状態の調整ネジ42の構造を示す斜視図である。図5(b)は、調整コイル43が巻かれた状態の調整ネジ42を示す斜視図である。調整ネジ42は、ネジ頭部42A、ネジ部42B、ボビン部42C、および通線部42Dを備える。図5に示したような調整ネジ42に調整コイル43が巻かれた構成を採用する場合には、ネジの材質は非磁性金属やプラスチック等を用いてもよいが、鉄などの軟磁性材料を用いるのが好ましい。調整ネジ42を軟磁性とすることで、調整コイル43が生じる磁束を増強できる。
【0033】
ネジ頭部42Aは、ドライバー、レンチ等の所定の工具により調整ネジ42を回すための部位であり、工具に応じた溝、穴、外形等を有する。ネジ部42Bはネジ頭部42Aから延出するように設けられる。ネジ部42Bの外周には調整ネジ受け41のネジ孔41Aに設けられた雌ネジに螺合する雄ネジが設けられる。ボビン部42Cは、調整コイル43が巻かれる部位であり、ネジ部42Bの先端部(つまりネジ頭部42Aとは反対側の端部)から延出するように設けられる。ボビン部42Cは、巻かれた調整コイル43の外径が、ネジ孔41Aの内径やネジ部42Bの谷径よりも小さくなるように、ネジ部42Bよりも細く形成される。
【0034】
通線部42Dは、ネジ頭部42A側からネジ部42Bを経てボビン部42Cまで、調整コイル43への配線43Aを通すための空間を提供する。通線部42Dは、例えば、ネジ頭部42A側からネジ部42Bを通りボビン部42Cに至る溝として形成されるとよい。あるいは、調整ネジ42の一部または全部を中空の構造として、ネジ頭部42A側からボビン部42Cに至る中空部分を通線部42Dとしてもよい。このような通線部42Dを備えることで、ネジの機能を損なうことなくボビン部42Cに巻かれた調整コイル43に調整信号を与えることができる。
【0035】
調整信号出力部33による振幅、位相、波形の設定は、制御部10の制御により調整される。制御部10は、送信信号出力部31に送信信号を出力させつつ、AD変換器32Bからのサンプリングデータを取得する。この状態で、制御部10は、調整信号出力部33による増幅率および位相のシフト量を変化させながらサンプリングデータを取得し、受信信号の値(サンプリングデータから換算した受信信号の電圧)が所定の許容値を超えない範囲に収まる設定を特定する。適切な設定を特定するために設定を変化させる手法は任意である。例えば、設定可能な全範囲を網羅するように順番に設定を変化させてもよいし、二分探索法等により順次設定値を決定し、全範囲を網羅するよりも短時間で効率的に適切な設定を特定できるようにしてもよい。
【0036】
金属検出装置1は、上記のような調整コイル43によるバランス調整を、起動の都度、実行するとよい。また、制御部10は、調整コイル43による調整によっても受信信号を所定の許容範囲内に収められない場合に、調整ネジ42を用いたバランス調整を促すアラートを表示部50等に出力するように構成するとよい。
【0037】
以上のように、本実施形態における金属検出装置1は、検査領域Zに金属が存在しない平常状態における2つの受信コイル22の誘起電圧のバランスを、容易に調整することができる。
【0038】
なお、上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態では2つの受信コイル22を直列に接続し、その両端の電圧を受信信号としたが、2つの受信コイル22での誘起電圧の差を出力できれば回路の形式はこれに限定されない。例えば、2つの受信コイル22のそれぞれにおける誘起電圧を、差動増幅器に入力し、差動増幅器の出力を受信信号としてもよい。
【0039】
また、上記の実施形態では送信コイル21と2つの受信コイル22は、それぞれが検査領域Zを囲うように(つまりコンベア60で搬送される被検査物Wがループの中を通るように)設けられたが、送信コイル21と2つの受信コイル22は検査領域Zを挟んで対向するように設けられてもよい。例えば、送信コイル21を検査領域Zの上面に沿って配置し、2つの受信コイル22を検査領域Zの下面に沿うように(例えばコンベアベルト61の直下に)、かつ、2つの受信コイル22が搬送方向に並ぶように配置してもよい。あるいは、送信コイル21を検査領域Zの一側面に配置し、2つの受信コイル22を検査領域Zの他の側面に沿うように、かつ、2つの受信コイル22が搬送方向に並ぶように配置してもよい。
【0040】
また、上記の実施形態では、被検査物Wを、コンベア60により検査領域Zを通るように搬送したが、金属検出装置1は、コンベア60のような搬送手段を備えなくてもよい。例えば、金属検出装置1は、上部に被検査物Wの投入口、下部に排出口を備え、投入口と排出口の間に検査領域Zを設けるように構成されてもよい。そして、投入口から投入された被検査物Wが落下して検査領域Zを通る間に金属検出を実施する(つまり、被検査物Wの移動方向を鉛直方向とする)ように構成してもよい。
【0041】
あるいは、被検査物Wを移動させず、検査領域Zに載置された被検査物Wについて、金属検出を実施するように構成してもよい。この場合、検査を行う前に作業者等が検査領域Zに適宜被検査物Wを載置し、検査終了後に被検査物Wを検査領域Zから取り出すようにするとよい。
【0042】
また、上記の実施形態では、調整ネジ42の締め込みによる位置調整により、平常状態における2つの受信コイル22の誘起電圧のバランスを調整したが、これに限らず、任意の方法で検査領域Zにおける種々の部材(受信コイル22、送信コイル21、調整ネジ42その他の磁性体部材等)の物理的配置の微調整することでバランス調整を行うようにしてもよい。例えば、梃子の原理により金属のバーを動かすことのできる機構を設け、当該バーの位置により微調整を行うようにしてもよい。
【0043】
また、上記の実施形態では、調整信号出力部33は、送信信号出力部31が出力する送信信号を分岐した信号を基準信号として、その振幅、位相、および波形の少なくとも1つを変化させた調整信号を生成して出力したが、基準信号は送信信号と同期してさえいれば、送信信号を分岐した信号でなくてもよい。例えば、送信信号と同期させた信号発生源から基準信号を出力させ、この基準信号に基づき振幅、位相、および波形の少なくとも1つを変化させた調整信号を生成して出力するようにしてもよい。
【0044】
また、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【符号の説明】
【0045】
1 金属検出装置
10 制御部
20 金属検出部
30 信号処理部
40 調整部
50 表示部
60 コンベア
W 被検査物
Z 検査領域
図1
図2
図3
図4
図5