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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】レンジフード
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20230901BHJP
   B01D 45/08 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
F24F7/06 101A
B01D45/08 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021040111
(22)【出願日】2021-03-12
(62)【分割の表示】P 2016075112の分割
【原出願日】2016-04-04
(65)【公開番号】P2021103078
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000237374
【氏名又は名称】富士工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 寛之
(72)【発明者】
【氏名】高矢 努
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0182382(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104421986(CN,A)
【文献】実開平01-178866(JP,U)
【文献】特開2008-249321(JP,A)
【文献】中国実用新案第2580173(CN,Y)
【文献】特開2003-068702(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0037782(US,A1)
【文献】特開2000-262989(JP,A)
【文献】特開昭47-034065(JP,A)
【文献】実開昭54-135760(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
B01D 45/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理により発生する油分を含む空気を吸込み、油分を捕集するレンジフードであって、モータにより回転駆動され、油分を含む空気の流れを発生させると共に、油分を捕集する遠心送風機の羽根車と、前記羽根車を中に含み、前記羽根車の回転により前記油分を含む空気を吸い込む吸込口を有するファンケーシングと、
洗浄液を噴射する噴射部を有し、前記羽根車を洗浄する洗浄機構と、
を備え、
記噴射部は、洗浄液を噴射する噴射口と、前記噴射口から噴射された洗浄液を拡散させる拡散板とを有し、前記吸込口側から前記ファンケーシングの内部に向けて洗浄液を噴射し、前記羽根車の羽根の内側に洗浄液を衝突させる、
レンジフード。

【請求項2】
前記拡散板は、前記羽根車の羽根の近傍に配置され、前記噴射口から噴射された洗浄液を前記羽根の内側に衝突させるように設けられることを特徴とする請求項1に記載のレンジフード。
【請求項3】
前記拡散板は、前記噴射口から噴射された洗浄液を受けて拡散させる拡散面を有し、
前記拡散面を含む仮想面は、前記羽根車の羽根における前記モータの回転軸側の縁の少なくとも一部を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のレンジフード。
【請求項4】
前記羽根車は、前記モータの回転軸を含む断面が正面側に広がっている台形状のグリスフィルタを内部に有し、
前記拡散面は、前記グリスフィルタに略垂直な面であること、または、前記羽根車の回転方向において、前記グリスフィルタに略垂直な面より下流側へ傾いた面であること特徴とする請求項3に記載のレンジフード。
【請求項5】
前記拡散板は、前記拡散面の基部側に、前記噴射口が洗浄液を噴射する方向と略同じ方向を含む面を有する基部面を有し、
前記基部面と前記噴射口の周縁部は、段差がないことを特徴とする請求項3または4に記載のレンジフード。
【請求項6】
前記拡散板は、前記拡散面と前記基部面の間に屈曲部を有することを特徴とする請求項5に記載のレンジフード。
【請求項7】
前記拡散板は、前記モータの回転軸と前記羽根車の羽根の中間位置よりも前記羽根側に配置され、
前記噴射口から前記拡散板の先端部における前記モータの回転軸側の第1端部までの距離は、前記噴射口から前記拡散板の先端部における前記羽根側の第2端部までの距離より長いことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のレンジフード。
【請求項8】
前記噴射口は、前記モータの回転軸と前記羽根車の羽根の中間位置よりも前記羽根側に配置され、
前記噴射口が洗浄液を噴射する方向は、前記回転軸と略平行または前記回転軸の方へ傾いていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のレンジフード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンジフードに関し、特に自動洗浄機能の付いたレンジフードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、調理器の近傍に設置されて、調理によって発生する油煙を吸引、捕集するレンジフードにおいて、吸引した油煙を送風機等に付着させて捕集し、その付着した油分を含む汚れをノズルから洗浄液を噴射して洗浄するレンジフードが知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1は、油や埃などが付着・蓄積されたフィルタの清掃の手間を軽減することを目的としたレンジフードを開示する。このレンジフードは、吸込口と吐出口とを連通した通風路に配設された送風ケーシングの前方に駆動手段を連結したフィルタと、フィルタを包囲する洗浄ケーシングと、多数の小さな噴射口を有し配列したノズルと、ノズルに水を供与する給水手段と、洗浄ケーシング内に散乱した汚水の回収手段とを備える。ノズルは、小さな孔の噴射口をフィルタ中心側からフィルタ円周端側に向かい直線上に多数配設させて構成されており、各噴射口から洗浄液を噴射することで広範囲に洗浄液を噴射できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-122063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような構成のノズルでは、複数の小孔の噴射口から洗浄液を噴射するための比較的高い水圧が必要であり、それを満たす給水ポンプが必要であった。
そこで、本発明は、従来よりも水圧が小さい給水ポンプでも油分の付着し易い範囲に亘って洗浄液を噴射し、汚れを除去するレンジフードを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、調理により発生する油分を含む空気を吸込み、油分を捕集するレンジフードであって、モータにより回転駆動され、油分を含む空気の流れを発生させると共に、油分を捕集する遠心送風機の羽根車と、前記羽根車を中に含み、前記羽根車の回転により前記油分を含む空気を吸い込む吸込口を有するファンケーシングと、洗浄液を噴射する噴射部を有し、前記羽根車を洗浄する洗浄機構と、を備え、前記噴射部は、洗浄液を噴射する噴射口と、前記噴射口から噴射された洗浄液を拡散させる拡散板とを有し、前記吸込口側から前記ファンケーシングの内部に向けて洗浄液を噴射し、前記羽根車の羽根の内側に洗浄液を衝突させる、レンジフードが提供される。
これによれば、洗浄液を噴射する噴射口と洗浄液を拡散させる拡散板とを有することで、従来よりも水圧が小さい給水ポンプでも油分の付着し易い範囲に亘って洗浄液を噴射し、汚れを除去しかつ安価なレンジフードを提供することができる。
【0007】
さらに、拡散板は、羽根車の羽根の近傍に配置され、噴射口から噴射された洗浄液を羽根の内側に衝突させるように設けられることを特徴としてもよい。
これによれば、吸込口側からファンケーシングの内部に向けて洗浄液を噴射し、羽根車の羽根の内側に衝突させることで、汚れが付着する羽根の内側の面に洗浄液が通り、汚れを除去することができる。
【0008】
さらに、拡散板は、噴射口から噴射された洗浄液を受けて拡散させる拡散面を有し、拡散面を含む仮想面は、羽根におけるモータの回転軸側の縁の少なくとも一部を含むことを特徴としてもよい。
これによれば、仮想面が羽根車の羽根における回転軸側の縁を含むように設けられることで、拡散する洗浄液を、羽根の内側に全面に衝突させることができる。また、仮想面が羽根における回転軸側の縁の一部を含むように設けられることで、面状の洗浄液は、転軸側の縁に一点において衝突するので、洗浄液が飛び散ることを防止することができる。
【0009】
さらに、羽根車は、モータの回転軸にほぼ垂直な面を有する平板なグリスフィルタを内部に有し、拡散面は、グリスフィルタにほぼ垂直な面であること、または、羽根車の回転方向において、グリスフィルタにほぼ垂直な面より下流側へ傾いた面であることを特徴としてもよい。
これによれば、拡散面がグリスフィルタにほぼ垂直な面であること、または、羽根車の回転方向において、グリスフィルタにほぼ垂直な面より下流側へ傾いた面であることで、洗浄液が飛び散ることを防止する。
【0010】
さらに、拡散板は、拡散面の基部側に、噴射口が洗浄液を噴射する方向とほぼ同じ方向を含む面を有する基部面を有し、基部面と噴射口の周縁部は、段差がないことを特徴としてもよい。
これによれば、基部面が洗浄液を噴射する方向とほぼ同じ方向であり、また噴射口の周縁部と段差がないことで、洗浄液が拡散板に当たって飛び散ることがない。
【0011】
さらに、拡散板は、拡散面と基部面の間に屈曲部を有することを特徴としてもよい。
これによれば、屈曲部を含むことで、洗浄液の拡散方向を制御することができる。
【0012】
さらに、拡散板は、モータの回転軸と羽根車の羽根の中間位置よりも羽根側に配置され、噴射口から拡散板の先端部におけるモータの回転軸側の第1端部までの距離は、噴射口から拡散板の先端部における羽根側の第2端部までの距離より長いことを特徴としてもよい。
これによれば、拡散板を吸込みの邪魔にならない位置に設けることでスムーズな吸込みを確保できると共に、ファンの回転軸近傍にも洗浄液が拡散されるため、均一に洗浄することができる。
【0013】
さらに、噴射口は、モータの回転軸と羽根車の羽根の中間位置よりも羽根側に配置され、噴射口が洗浄液を噴射する方向は、回転軸とほぼ平行または回転軸の方へ傾いていることを特徴としてもよい。
これによれば、拡散板を吸込みの邪魔にならない位置に設けることでスムーズな吸込みを確保できると共に、ファンの回転軸近傍にも洗浄液が拡散される易くなる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、従来よりも水圧が小さい給水ポンプでも油分の付着し易い範囲に亘って洗浄液を噴射し、汚れを除去するレンジフードを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るレンジフードの第一実施例の、(A)正面図、(B)上面図、(C)底面図、(D)左側面図、(E)右側面図。
図2】本発明に係るレンジフードの第一実施例の、(A)右上から見た斜視図、(B)右下から見た斜視図。
図3】本発明に係るレンジフードの第一実施例の、右下から見た展開斜視図。
図4】本発明に係るレンジフードの第一実施例の洗浄機構を説明する説明図。
図5】本発明に係るレンジフードの第一実施例の、図1に示すA-A断面おける断面図。
図6】本発明に係るレンジフードの第一実施例の、図1に示すB-B断面おける断面図。
図7】本発明に係るレンジフードの第一実施例の、図1に示すB-B断面おける断面図(ベルマウスを取り外した状態)。
図8】本発明に係るレンジフードの第一実施例の、図1に示すB-B断面おける断面図(ベルマウスおよび洗浄機構を取り外した状態)。
図9】本発明に係るレンジフードの第一実施例の、図1に示すC-C断面おける断面図(ダンパーが開いた状態)。
図10】本発明に係るレンジフードの第一実施例の、図1に示すD-D断面おける断面図(ダンパーが閉じた状態)。
図11】本発明に係るレンジフードの第一実施例におけるベルマウスの、(A)正面図、(B)平面図、(C)底面図、(D)左側面図、(E)右側面図。
図12】本発明に係るレンジフードの第一実施例におけるタンクの、(A)正面図、(B)上面図、(C)底面図、(D)左側面図、(E)右上方から見た斜視図(蓋が開いている場合)、(F)右上方から見た斜視図(蓋が閉じている場合)。
図13】本発明に係るレンジフードの第一実施例の、図1に示すD-D断面おける、(A)回収部の拡大断面図、(B)(A)における点線部分の拡大断面図。
図14】本発明に係るレンジフードの第一実施例における噴射部の、(A)正面図、(B)上面図、(C)底面図、(D)左側面図、(E)右側面図、(F)高い右上方から見た斜視図、(G)低い右上方からみた斜視図、(H)右下方から見た斜視図。
図15】本発明に係るレンジフードの第一実施例における噴射部の洗浄液の噴射について説明するための、(A)正面図、(B)右側面図、(C)低い右上方からみた斜視図。
図16】本発明に係るレンジフードの第一実施例における噴射部の、回転軸の方から羽根の方向を見た場合の拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る各実施例について説明する。
<第一実施例>
図1乃至図15を参照して、本実施例に係るレンジフード1について説明する。レンジフード1は、下方で行われる調理によって発生する湯気や油煙等を捕集するための、上方に凹状の内面パネル4を内面に有する薄型のフード部2を有する。フード部2は、やや背面右寄りに位置する連通口6付近で、排気ダクトDUに接続される送風機ボックス3と連結される。また、フード部2は、下方に整流板5を備え、フード部2の周囲の風速を高めて、下方から立ち上る油煙等を捕獲しやすくする。フード部2の正面側には、使用者が排気時の風量を指示したり、洗浄を行う指示をしたりするために操作するスイッチ610が設けられている。また、排気ダクトDUの付近には空気の逆流を防止するためのシャッターSHが設けられている。
【0017】
送風機ボックス3は、内部に、フード部2で捕獲した油煙等を含む空気の流れARを連通口6を介して送風機ボックス3の内部に導入する導入部7と、導入部7から油分を含む空気を吸い込む吸込口210を有するファンケーシング200と、ファンケーシング200の内部に含まれる羽根車100(ファンとも言う)と、羽根車100を回転駆動するモータ130と、羽根車100の内部に設けられたグリスフィルタ120と、羽根車100の羽根110やグリスフィルタ120を洗浄する洗浄機構400と、ファンケーシング200と連通し油分を取り除いて浄化された空気を排気ダクトDUに排気するための、送風機ボックス3に開けられた開口部である排気口500と、羽根車100から排気口500までの空気の流路上にダンパー300と、羽根車100の回転、ダンパー300の開閉、洗浄機構400の動作などを制御する制御部600と、を有する。
【0018】
なお、送風機ボックス3は、フード部2に対して正面視でやや右寄りに設けられている。これは、本実施例の場合、排気ダクトDUと接続される排気口500が送風機ボックス3の左側面に設けられているためであり、排気口500が右側面に設けられる場合には、送風機ボックス3は、フード部2に対して正面視でやや左寄りに設けられてもよい。このように、排気口500が送風機ボックス3の側面に位置することで、送風機ボックス3の上面に設けられるより、排気ダクトDUの引き回しスペースも含めたレンジフード1の実効高さを低くすることができ、設置場所の柔軟性が向上することになる。
【0019】
羽根車100は、主に図5図6図10に示すように、下方で行われる調理によって発生した油分を含む空気を捕集するために空気の流れARを発生させるファン(送風機)である。羽根車100がモータ130により回転駆動されることで、空気の流れARが発生し、整流板5と内面パネル4の間を油分を含む空気が移動する。導入部7は、整流板5と内面パネル4の間を移動してきた油分を含む空気を、連通口6を通して上方へ引き込む。導入部7は、連通口6から連通口6の面積とほぼ等しい断面積を持ちながら垂直方向に立ち上がり、油分を含んだ状態で空気の流れARをファンケーシング200の吸込口210へ導入する。
【0020】
羽根車100は、その円筒側面部分に、羽根110の間の空隙115を保持して複数の羽根110を有する、いわゆるシロッコファンである。なお、本実施例では後述するように、羽根110の内側111の面(回転軸側の面)に洗浄液を衝突させるので、羽根110は、回転軸131からあるひとつの羽根110を見た場合に、他の羽根110や自身の外側の面114(回転軸側の面の反対側の面)によりそのひとつの羽根110の内側の面が隠れることがないように配置されていることが好ましい。すなわち、回転軸131から見た場合、あるひとつの羽根110のファンケーシング200側の縁113(外側の縁)は、その隣の羽根110の回転軸側の縁112(内側の縁)により隠されることがない。なお、本発明に用いられるファン(送風機)は、本実施例のような遠心送風機である羽根車100である
【0021】
なお、モータ130の回転軸131は、図5に示すように、ほぼ水平になるように設置され、そのため回転軸131の基部132と先端133を結んだ線は、ほぼ水平になり、羽根車100の回転軸もほぼ水平である。モータ130は、通常運転である排気運転時において高速回転で羽根車100を回転させ、洗浄時においては比較的低速回転で羽根車100を回転させる。モータ130と羽根車100は、回転力伝達板134を介して結合される。回転力伝達板134は、排気運転時の空気抵抗や洗浄時の液体抵抗に対して十分に抗することができるように羽根車100の各羽根110に強固に結合され、また、回転力伝達板の中央背面側には、回転軸131に設けられているモータピン135が嵌り込むことでモータ130の回転力を受け止めるボス溝136が設けられていることで、モータ130の回転駆動力を羽根車100に確実に伝達する。
【0022】
グリスフィルタ120は、主に図5図8に示すように、モータ130の回転軸131の先端133に回転軸131と垂直をなすように取り付けられる平板な円盤であり、その外縁が羽根110の内側(回転軸側)の縁112に近接するように取り付けられる。これにより、羽根110とグリスフィルタ120の間から油分を含む空気の漏れが少なくなり、油分を捕獲する割合が増加する。また、グリスフィルタ120は、回転力伝達板134よりも正面側であって、羽根110の奥行き方向におけるほぼ中央部に取りけられる。グリスフィルタ120が回転力伝達板134の空気の流れの上流側にあることで、回転力伝達板134に油分が付着することを防止し、また、羽根110の奥行き方向におけるほぼ中央部に取り付けられることで、その中央部より奥側に油分が付着することを防止する。
【0023】
グリスフィルタ120は、平板な円盤に空気を通す孔が開いており、羽根車100と共に回転することで空気が孔を通過する際、油分が孔以外の肉部に衝突し、付着することで空気に含まれる油分を取り除く。なお、本実施例では、グリスフィルタ120は平板な円盤であるが、これに限定されず、皿状に湾曲していてもよいし、モータ130の回転軸131を含む断面が正面側に広がっている台形状のグリスフィルタであってもよい。
【0024】
ファンケーシング200は、主に図5図9に示すように、吸込口210の周囲に空気の流れARを円滑に引き込めるように構成されているベルマウス211と、内部に羽根車100と、空気の流路上で羽根車100と排気口500の間にダンパー300と、を含む。羽根車100が発生させる空気の流れARは、吸込口210に取り付けられたベルマウス211からファンケーシング200内に吸い込まれ、空気の流れARに含まれる油分は、羽根車100の円筒側面部分に設けられた羽根110または羽根車100の円筒内部に設けられたグリスフィルタ120に衝突し、付着する。これにより、油分を含んだ空気から油分が取り除かれ、油分を取り除かれた空気は、ファンケーシング200の内部であって羽根車100の外側を通って、ダンパー300が開状態の場合、ファンケーシング200の側方(左横方向)に位置する排気口500に送出され、排気口500に接続された排気ダクトDUを通って外気に排気される。
【0025】
排気口500は、図9に示すように、ファンケーシング200の最下点200Zの位置より上下方向で高い位置に設けられる。すなわち、排気口500の最下点500Zの位置は、ファンケーシング200の最下点200Zの位置より高い。実験値によれば、排気口500の最下点500Zとファンケーシング200の最下点200Zと結ぶ線は、水平線と10度以上、さらに好ましくは15度以上の角度を有することが好ましい。このようにすることで、排気口500の最下点500Zからファンケーシング200の最下点200Zの間に付着した油や洗浄液を、ファンケーシング200の最下点200Zへとスムーズに案内することができ、停滞してしまうことを防止することができる。
【0026】
羽根車100の回転方向100DRは正面視で右回転であり、ファンケーシング200の最下点200Z付近にある空気は、本図に示される空気の流れARの如く、左斜め上の方向にある排気口500に向けて移動して排気される。このように、排気口500は、ファンケーシング200と連通し排気ダクトDUに浄化された空気を排気するための送風機ボックス3の側面に開けられた開口部である。これにより、送風機ボックス3の上面に設けられるより、排気ダクトDUの引き回しスペースも含めたレンジフード1の実効高さを低くすることができ、設置場所の柔軟性が向上することになる。
【0027】
ダンパー300は、主に図9に示すように、ファンケーシング200の内部にあり、羽根車100からファンケーシング200の側方(左横方向)に位置する排気口500に至るまでの空気の流路上であって、排気口500の近傍に設けられる。ダンパー300は、回転軸311を有し、回転軸311を中心に回転することにより空気の流路を開閉する。ダンパーはスライド式などで空気の流路を開閉してもよいが、ダンパー300が回転軸311を有することで、ファンケーシング200に空ける穴が最小限の大きさとなり洗浄水がファンケーシング200の外部に漏れにくくなる。また、ファンケーシング200に開ける穴が小さいことでファンケーシング200の気密性が良くなり、ファン駆動時に効率的に排気することが可能となる。
【0028】
図9に示すダンパー300は、主に排気運転時の状態にあるものであり、ファンケーシング200内部から油分を除去した空気を排気口500に排気する状態なので、排気口500への流路を開いた状態(開状態)である。ダンパー300の回転軸311は、一端310に偏った側に位置し、一端310は、ダンパー300が開状態のときもう一方の他端320(回転軸311のある一端310に対向するダンパー300の他端320)より高い位置にある。すなわち、回転軸311は、開状態のとき、ダンパー300で最も高い位置にある。このように、ダンパーが開状態のとき回転軸が他端より高い位置にあることで、ダンパーに付着した油分が回転軸に流れてくる量を軽減でき、回転軸311に油分が固着して回転不能になるなどの不具合の発生を防止することができる。なお、本実施例では、ダンパー300の回転軸311は、一端310に位置するが、流路方向におけるダンパー300の中央より一端310に偏った側に位置してもよい。
【0029】
開状態のダンパー300は、ファンケーシング200の内部において凹部を形成するダンパー収容部330に収められ、空気の流れARの抵抗にならないように構成される。また、開状態のダンパー300がダンパー収容部330に収められているとき、ダンパー300は、他端320のみでファンケーシング200の内部に当接する。ダンパー300が面でファンケーシング200に当接すると油分で固着してしまうことがあるが、他端320のみで当接することにより、ダンパー300を開状態から閉状態にする際にダンパー300が固着して閉じられなくなる障害を起こすことを防止する。
【0030】
ベルマウス211は、主に図11に示すように、清掃し易いようにファンケーシング200と着脱自在に構成される。本図(C)の底面図は、ベルマウス211をファンケーシング200に取り付けた際に正面側となり、本図(B)の平面図は羽根車100と対向する背面側となる。ベルマウス211の背面側には、後述する洗浄機構400を構成する給水パイプ450の一部と給水パイプ450の先端に接続された噴射部460または給水部460が設けられており、ベルマウス211をファンケーシング200に取り付けると、本体側の給水パイプ450と接続されるように構成されている。ベルマウス211をファンケーシング200に取り付けた際には、噴射部460/給水部460の大部分が正面視でベルマウスカバー部212により隠れるように設けられているので、噴射部460/給水部460が油分を含む空気に曝されることが少なく、油分が付着しにくい。
【0031】
洗浄機構400は、主に図4に示すように、羽根車100の羽根110やグリスフィルタ120を洗浄するための機構である。なお、洗浄機構400は、グリスフィルタ120が羽根車100の内部に設けられていない場合は、羽根車100の羽根110で油分を捕獲することになるので羽根車100の羽根110を洗浄する。洗浄機構400は、フード部2の底面の背面側寄りに位置するタンク収納部412の中に収納され洗浄液を溜めるタンク410と、洗浄液をファンケーシング200の内部に給水する給水部460と、タンク410から給水部460まで洗浄液を供給する給水パイプ450と、給水部460とタンク410との間に配置され、タンク410から洗浄液を吸上げるポンプ420と、タンク410と給水部460の間の給水パイプ450内に洗浄液に混入した異物を除去する異物除去フィルタ440と、給水部460が給水し、羽根車100等を洗浄した後の洗浄液をタンク410へ回収する回収部430と、を備える。
【0032】
タンク410は、主に図11図12に示すように、中に洗浄液を蓄えることができる立方体の箱である。タンク収納部412に収納できるように適宜突起が形成されており、これら突起がタンク収納部412の凹部などに係合することで、タンク410は、タンク収納部412に収納される。なお、タンク収納部412は、フード部2の底面の背面側やや左寄りに備えられ、タンク収納部412の蓋413が設けられている。
【0033】
タンク410は、押圧することで開き、押圧力を除くことで閉まるタンク蓋411と、タンク蓋411の下方に浄化フィルタ部416と、収納された際に給水パイプ450の先端と一致する位置に接続孔415と、を有する。接続孔415の孔径は小さく、また取り出した状態でのタンク蓋411は閉じているので、使用者がタンク410を運ぶ際にも、中に含まれている洗浄液がこぼれることが防止できる。なお、タンク410の上面は、タンク410の本体から着脱自在に構成されており、取り外して内部を洗浄することができる。また、浄化フィルタ部416は、洗浄液を循環させてタンク410に戻すために、回収された洗浄液に含まれる油分などを除去し浄化する。
【0034】
給水パイプ450は、タンク410から洗浄液を吸い上げる液体吸上げ口414から、羽根車100の空気の流れの上流側となる正面側に位置する給水部460まで、洗浄液を引きまわす液体配管である。給水パイプ450の、給水部460と接続される正面側に位置する部分は、ベルマウス211の裏側(羽根車100側)に配設されたパイプとして構成される。
【0035】
ポンプ420は、洗浄液をタンク410から高い位置にある給水部460まで移動させる出力を備え、また、給水部460が噴射部460として機能する場合、洗浄液が勢いよく噴射できるための水圧を生じさせる出力を有する。ただし、その場合であっても、噴射部460は、給水パイプ450の内径と同程度の内径を有する孔を有し、その孔から噴射するので、小さな孔から噴射するのに比して大きな出力を必要としない。また、ポンプ420は、タンク410から給水部460への方向に洗浄液を移動させる順回転だけでなく、給水部460からタンク410への方向に洗浄液を移動させる逆回転を行えることが好ましい。
【0036】
給水部460は、洗浄液で羽根車100の羽根110等を洗浄するために洗浄液をファンケーシング200の内部に給水するが、羽根110やグリスフィルタ120に洗浄液を衝突させて洗浄する場合、洗浄液を勢いよく羽根110やグリスフィルタ120に向けて噴射する噴射部460として機能する。本実施例では、給水部460は噴射部460として機能するので、以下では噴射部460として記載する。
【0037】
噴射部460は、ファンケーシング200の内部であって羽根車100の羽根110やグリスフィルタ120に向けた広範囲に亘って、洗浄液を噴射するように構成される。かかる構成については後述する。噴射部460は、吸込口210側からファンケーシング200の内部に向けて、すなわち油分が付着し易いグリスフィルタ120や羽根110の内側に向けて、直接洗浄液を噴射する。噴射部460は、吸込口210の周縁部の近傍すなわち羽根車100の内側において羽根110の近傍であることが好ましく、接触しない限り近ければ近いほどよい。これにより、噴射部460から噴射した洗浄液が、強く羽根110に衝突する。また、噴射部460が羽根車100の中心部分にあると排気運転中に噴射部460が障害となり油分を含む空気を吸引する性能を低下させる場合があるが、噴射部460を吸込口210の周縁部の近傍に設けることでかかる問題が生じない。
【0038】
また、噴射部460は、モータ130の回転軸131の先端133より下側に設けられる。たとえば、噴射部460が回転軸131より上に設けられると、噴射部460は回転中回転軸131より高い位置にある羽根110に向けて洗浄液を噴射することとなり、洗浄液が衝突後跳ね返ることで吸込口210を超えて飛び散ることになる。したがって、かかる構成により、噴射された洗浄液が吸込口210から飛び散ったり、噴射部460から洗浄液が滴下したりことを防止できる。
【0039】
また、図7に示すように羽根車100の回転方向100DRが右回転である場合、噴射部460は、正面視で、モータ130の回転軸131の先端133より下側であって羽根車100の最下点100Zより右側に設けられることが好ましい。すなわち、噴射部460は、モータ130の回転軸131の先端133より下側であって羽根車100の最下点100Zより回転方向100DRの上流側の四半部分100ZUに設けられることが好ましい。噴射部460がかかる四半部分100ZUに設けられることで、羽根車100にむけて噴射され衝突した洗浄液は直後に回転方向である下方へ動くので、吸込口210から飛び散ることを防止することができる。また、かかる四半部分の位置に噴射部460を設けた場合は、モータ130の回転軸131の先端133より下側であって羽根車100の最下点100Zより回転方向の下流側に噴射部を設けた場合と比べて、油分等を含む空気が噴射部に衝突する量が少ないので、汚れが付着することを低減することができる。
【0040】
ファンケーシング200の吸込口210の内径は、主に図6図7に示すように、羽根車100の内径より小さい。これにより、吸込口210を通過した空気に含まれる油分は、羽根車100の羽根110の内側に衝突する。そして、噴射部460は、モータ130の回転軸131方向から見て、羽根車100の内側であって吸込口210の外側に設けられる。これによれば、噴射部460の正面側にファンケーシング200が存在することとなるので、吸込口210を超えて洗浄液が飛び散ることを防止できると共に、汚れが付着しやすい羽根車100の内側に向けて洗浄液を直接噴射することができるので効果的に洗浄することできる。なお、ベルマウス211が取り付けられて使用される場合は、吸込口210の内径は、ベルマウス211の開口の内径とみなしてもよい。また、内径とは、開口の中心(本実施例では回転軸131の軸中心線と開口との交点)から周縁までの距離を言うが、本実施例におけるベルマウス211の内径は、開口の中心からベルマウスカバー部212の最も中心寄りの部分までの距離としてもよい。つまり、少なくとも噴射部460が設けられる位置において、ファンケーシング200の吸込口210の内径(ベルマウス211が取り付けられて使用される場合には、ベルマウス211の開口の内径)が羽根車100の内径より小さくなっていれば良いものである。
【0041】
また、噴射部460は、図7に示される羽根車100の回転方向100DRにおいて、噴射部460から下流側100ZDの方に向けて洗浄液を噴射することとしてもよい。これによれば、噴射部460から下流側100ZDへ洗浄液を噴射することで、洗浄液が羽根車100の羽根110に衝突した洗浄液は円滑に回転方向である下流側に流れるため、衝突した洗浄液が飛び散ることをより防止することができる。
【0042】
回収部430は、主に図4図12図13に示すように、噴射部460が羽根110やグリスフィルタ120に噴射して洗浄した後の洗浄液を受けるファンケーシング200の底部214と、ファンケーシング200の底部214であってファンケーシング200の最下点200Zよりややタンク410寄りに設けられたファンケーシング洗浄液排出口213と、ファンケーシング洗浄液排出口213と一致する位置にあり、ファンケーシング洗浄液排出口213がファンケーシング200から排出する洗浄液をタンク410に戻すための排水パイプ431と、を有する。
【0043】
ファンケーシング洗浄液排出口213は、図13に示すように、ファンケーシング200の最下点200Zよりややタンク410寄りすなわち最下点200Zから回転方向100DRにおいて下流側へずれた位置に設けられる。これにより、羽根車100の回転により洗浄液がファンケーシング200の底部214を排気口500の方へ昇ろうとしても、洗浄液をファンケーシング洗浄液排出口213に多く導くことができる。
【0044】
排水パイプ431は、ファンケーシング洗浄液排出口213と一致する位置から、洗浄液をタンク410に戻すように下斜め方向に延伸して、タンク410のタンク蓋411に一致する位置に配設される。なお、排水パイプ431を下斜め方向に延伸することで、タンク410をファンケーシング200の最下点200Zから横方向にずらすことが可能となり、これにより、レンジフード1の全体の高さを比較的低くすることができる。
【0045】
タンク蓋411は、タンク収納部412に収納されると、タンク収納部412の上面から突出する突出部417に押圧されて、排水パイプ431から流れてきた汚れた洗浄液をタンク410内に受け入れるように開く。汚れた洗浄液は、浄化フィルタ部416によりろ過されて、浄化された洗浄液がタンク410に戻る。
【0046】
浄化された洗浄液は、再度、液体吸上げ口414から接続孔415を通してポンプ420により吸い上げられ、給水パイプ450に供給される。なお、このように循環される洗浄液は、洗浄の過程で浄化フィルタ部416では取り除くことのできない異物が混入することがあり、かかる異物を含むことがある。かかる場合、ポンプ420の障害を起こす原因ともなりうるので、タンク410と噴射部460の間の洗浄液の給水パイプ450内に、洗浄液に混入した異物を除去する異物除去フィルタ440を1つ以上設けることが好ましい。
【0047】
また、ポンプ420を逆回転させて洗浄液を噴射部460からタンク410に移動させる場合、異物除去フィルタ440がタンク410とポンプ420の間に設けられることで、順方向の洗浄液が流れていた時に異物除去フィルタ440に付着した異物を剥がすことができるので、異物除去フィルタ440に異物が付着したままとなり目詰まりを起こすことを防止できる。
【0048】
特に、異物除去フィルタ440は、タンク410とポンプ420の間に設けることが好ましい。これにより、異物がポンプ420内部に入り込むことを防止することができる。また、ポンプ420を逆回転させる場合、異物除去フィルタ440をタンク410とポンプ420の間、すなわち洗浄液の順方向においてポンプよりも上流側に設けることで、ポンプ420への異物侵入を防ぐことができる。
【0049】
なお、接続孔415には弾性材が備えられて、タンク収納部412側の給水パイプ450の端面は、タンク収納部412に収納されるとその弾性材に押し付けられることで、洗浄液が漏れることがないように構成されている。また、逆に、給水パイプ450の端面が弾性材を備え、接続孔415がその弾性材に押し付けられるようにしてもよい。
【0050】
制御部600は、モータ130の回転を制御することにより羽根車100の回転を制御し、ダンパーモータ(図示せず)の回転を制御することによりダンパー300の開閉を制御し、ポンプ420の動作を制御することにより洗浄機構400の動作を制御し、スイッチ610の入力に基づきモータ130、ダンパーモータ、ポンプ420などを制御する。制御部600は、マイコンに内蔵された制御プログラムから構成され、本実施例では送風機ボックス3に設けられるが、特に限定されるものではなく、フード部2に設けられてもよい。
【0051】
制御部600は、レンジフード1の使用者によるスイッチ610の操作に基づいて、モータ130の回転を制御してもよいし、リモコン信号や調理器からの連動信号の受信によって動作してもよく、また、空気に含まれる油分を検出して自動で所定の回転制御を行ってもよい。また、制御部600は、洗浄機構400の動作を制御する所定の洗浄工程を有していてもよい。また、制御部600は、羽根車100の回転制御や洗浄機構400の動作に応じてダンパー300を開閉制御する。
【0052】
図14乃至図16を参照して、本発明に係るレンジフード1の噴射部460について説明する。本実施例において、噴射部460は、羽根車100の回転方向100DRが正面視で右回転である場合、図7に示すような正面視右下の四半部分100ZUに、かつ、吸込口210の周縁部の近傍(羽根車100の内側において羽根110の近傍)に設けられている。噴射部460は、この位置から、吸込口210側から羽根車100の羽根110やグリスフィルタ120に向けた広範囲に亘って、洗浄液を噴射するように構成されている。
【0053】
噴射部460は、実際に洗浄液を噴射する噴射口461と、噴射口461から噴射された洗浄液を拡散させる拡散板463とを有する。噴射口461は、従来技術の様な多数の小さな噴射孔を有し配列したノズルとは異なり、従来技術の小さな噴射孔に比べれば、一つの大きな孔であり、洗浄液を供給してくる給水パイプ450とほぼ同じ内径する孔である。これにより、噴射することに大きな水圧を掛ける必要がなくなるため、従来よりも水圧が小さいポンプ420でも洗浄液を噴射することができる。
【0054】
なお、噴射口461は、もちろん1つに限定されるものではないが、あまり細分化することは好ましくない。細分化する場合であっても、噴射口461全体の流量断面は、給水パイプ450の流量断面より小さくないことが好ましい。また、噴射口461の噴射方向は、給水パイプ450から洗浄液が流れてくる方向を変更しないことが好ましく、本実施例のように、噴射口461は、給水パイプ450の端面に相当する位置に設けられることが好ましい。これにより、水圧がより小さいポンプ420でも洗浄液を噴射することができる。
【0055】
一方、このような噴射口461だけでは、羽根110の近傍から、羽根車100の円筒側面にある羽根110や円筒中心にもあるグリスフィルタ120に向けた広範囲に亘って、洗浄液を噴射することは難しい。拡散板463は、噴射口461から噴射された洗浄液を拡散させることで、広範囲に亘って洗浄液を噴射することを可能にする。このように、噴射部460は、洗浄液を噴射する噴射口461と洗浄液を拡散させる拡散板463とを有することで、従来よりも水圧が小さいポンプ420でも油分の付着し易い範囲に亘って洗浄液を噴射し、汚れを除去しかつ安価なレンジフード1を提供することができる。
【0056】
また、拡散板463は、羽根車100の羽根110の近傍に配置されており、噴射口461から噴射された洗浄液を羽根110の内側111の面に衝突させるように設けられる。なお、羽根110の近傍とは、モータ130の回転軸131と羽根110の中間位置よりも羽根110側を言うが、拡散板463の羽根側縁463EHが羽根110に接触しない限り近ければ近いほどよい。これによれば、吸込口210側から洗浄液を噴射し、羽根車100の羽根110の内側111に衝突させることで、汚れが付着する羽根110の内側111の内側に湾曲した面が洗浄液を受け止めつつ、羽根110の内側111の面における洗浄液が直接衝突する手前側(正面側)の部分だけでなく、グリスフィルタ120より奥の方(背面側の方)の羽根110の内側111の面まで洗浄液が通ることで、羽根110の内側111の面全体に亘り汚れを除去することができる。
【0057】
また、拡散板463は、噴射口461の中心位置から偏心して形成されている。すなわち、噴射口461から拡散板463の羽根側縁463EHまでの距離は、噴射口461から拡散板463の回転軸側縁463ECまでの距離より短い。また同様に、噴射口461から拡散板433の先端部467におけるモータ130の回転軸131側の第1端部468までの距離L1は、噴射口461から拡散板433の先端部467における羽根110側の第2端部469までの距離L2より長い。こうすることにより、給水パイプ450の配管を可能な限り羽根110の近くに留めることができ、拡散板463を吸込みの邪魔にならない位置に設けることでスムーズな吸込みを確保できると共に、回転軸131に近寄るように拡散板463が設けられるため羽根車100の回転軸近傍にも洗浄液が拡散され、広範囲に均一に洗浄することができる。
【0058】
より具体的には、拡散板463は、噴射口461から噴射された洗浄液を受けて拡散させる拡散面464を有する。図15に示すように、噴射口461から噴射された洗浄液は、噴射された直後は噴射口461付近における給水パイプ450の軸方向(給水パイプ450の端面に垂直な方向であるWW1方向)に進む。しかし、噴射口461から軸方向に噴射された洗浄液は、拡散面464の衝突領域CAにより受け止められ、拡散面464に沿うように換言すれば拡散面464に平行な方向(WW方向)に洗浄液の進路を変えられる。そして、拡散面464に平行な方向(WW方向)に進路を変更した洗浄液は、さらに衝突領域CAから拡がるように拡散面464の範囲を超えて拡散する(WW方向)。このように拡散面464の範囲を超えて拡散した洗浄液は、拡散面464を含み周りに拡張した仮想面VAに沿って進むことになる。
【0059】
また、拡散板463は、拡散面464の基部側(給水パイプ450側)に、噴射口461が洗浄液を噴射する方向WW1とほぼ同じ方向を含む面を有する基部面465を有し、基部面465と噴射口461の周縁部462は、段差がないことが好ましい。段差がないとは、周縁部462を含む噴射口461を形成する円柱の母線が、基部面465の面に含まれることを言う。たとえば、図15(B)において洗浄液を噴射する方向WW1の一番右の矢印のように、噴射する方向WW1と基部面465の面が一致している。このように、基部面465が洗浄液を噴射する方向WW1とほぼ同じ方向であり、また噴射口461の周縁部462と段差がないことで、洗浄液が基部面465から拡散面464を滑るように流れるので、拡散板463に当たって飛び散ることがない。また、拡散板463は、拡散面464と基部面465の間に屈曲部466を有してもよい。洗浄液を噴射する方向WW1と、実際に洗浄液が拡散する方向WWとを変えられるようにする屈曲部466を有することで、洗浄液の拡散方向を制御することができる。
【0060】
噴射口461がWW1方向に噴射した洗浄液は、拡散面464の衝突領域CAに衝突した後、拡散板463の羽根側縁463EHと回転軸側縁463ECの方向の両側に拡がり、少なくとも回転軸131側では第1端部468までは拡がるように、ポンプ420の水圧を調整する。洗浄液は、先端部467を含めて羽根側縁463EHから回転軸側縁463ECまでの間に拡がり、拡散面464を超えて拡散する場合は拡散面464を含む仮想面VAの面方向に拡散していく。仮想面VAに沿うように拡散する洗浄液は、羽根側縁463EHの近傍にある羽根110の内側111の面から、噴射口461から第1端部468へ延長した方向にあるグリスフィルタ120の中心部までに亘り、広範囲に拡散される。
【0061】
拡散面464を含む仮想面VAは、羽根110におけるモータ130の回転軸131側の縁112を含むように設けられてもよい。これにより、拡散する洗浄液を、羽根110の内側111の面に全面に衝突させることができる。また、拡散面464を含む仮想面VAは、図16に示すように、羽根110におけるモータ130の回転軸131側の縁112の一部を含むように設けられてもよい。このように、仮想面VAが回転軸131側の縁112を全部含むのではなく、多少縁112に対して傾斜し縁112の一部を含むようにすると、仮想面VAに沿った面状の洗浄液は、縁112が羽根車100の回転方向100DRの方へ移動する過程において、最も近い位置にある縁112に一点において衝突するので、洗浄液が飛び散ることを防止することができる。また、拡散面464を含む仮想面VAは、拡散面464を含む回転軸131から離れる側の仮想面VAが一つの羽根110とのみ交わるように設けることが好ましい。これによれば、洗浄液が、それぞれの羽根110の内側111の全面に洗浄液を衝突させることができ、汚れを除去することができる。
【0062】
拡散面464を含む仮想面VAは、羽根110におけるファンケーシング200側の縁113近傍を含むように設けられてもよい。これにより、羽根110が動くことによって洗浄液が羽根におけるファンケーシング200側の縁113近傍からモータの回転軸131側の縁112に渡って噴射されるため、羽根110の内側111の全面に衝突させることができる。ファンケーシング200側の縁113近傍とは、羽根110におけるファンケーシング200側の縁113とモータの回転軸131側の縁の中間位置よりもファンケーシング200側を言うが、ファンケーシング200側の縁113に近ければ近いほどよい。また、拡散面464を含む仮想面VAが、羽根110におけるファンケーシング200側の縁113近傍であってファンケーシング200側の縁113を含まないように設けられている場合はファンケーシング200側の縁113に洗浄液が噴射されないが、遠心力で洗浄液はファンケーシング200側の縁113に流れる。これにより、羽根110の内側111の全面に衝突させることができる。
【0063】
また、羽根車100がモータ130の回転軸131にほぼ垂直な面を有する平板なグリスフィルタ120を内部に有する場合、拡散面464は、グリスフィルタ120にほぼ垂直な面である、または、羽根車100の回転方向100DRにおいて、グリスフィルタ120にほぼ垂直な面より下流側へ傾いた面であるとしてもよい。これにより、洗浄液がグリスフィルタ120の表面が回転する方向と逆らった方向に衝突することがないので、洗浄液が飛び散ることを防止する。
【0064】
また、本実施例では、噴射口461が洗浄液を噴射する方向WW1は、回転軸131とほぼ平行であるが、回転軸131の方へ傾いていてもよい。そうすると、噴射部460が羽根110の近傍に配置されて、拡散板463を吸込みの邪魔にならない位置に設けることでスムーズな吸込みを確保できると共に、全体的に羽根車100の回転軸131の方へ洗浄液が拡散されるようになるので羽根車100の回転軸131近傍にも洗浄液が拡散される易くなる。
【0065】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、数量、適用例、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【符号の説明】
【0066】
1 レンジフード
2 フード部
3 送風機ボックス
4 内面パネル
5 整流板
6 連通口
7 導入部
100 羽根車(ファン)
110 羽根
111 羽根の内側
112 羽根の回転軸側の縁
113 羽根のファンケーシング側の縁
114 羽根の外側
115 羽根の間の空隙
120 グリスフィルタ
130 モータ
131 回転軸
132 回転軸の基部
133 回転軸の先端
134 回転力伝達板
135 モータピン
136 ボス溝
200 ファンケーシング
210 吸込口
211 ベルマウス
212 ベルマウスカバー部
213 ファンケーシング洗浄液排出口
214 ファンケーシング底部
300 ダンパー
310 一端
311 回転軸
320 他端
330 ダンパー収容部
400 洗浄機構
410 タンク
411 タンク蓋
412 タンク収納部
413 タンク収納部蓋
414 液体吸上げ口
415 接続孔
416 浄化フィルタ部
417 突出部
420 ポンプ
430 回収部
431 排水パイプ
440 異物除去フィルタ
450 給水パイプ(タンクと噴射部の間の洗浄液の流路)
460 噴射部(給水部)
461 噴射口
462 噴射口の周縁部
463 拡散板
464 拡散面
465 基部面
466 屈曲部
467 先端部
468 第1端部
469 第2端部
500 排気口
600 制御部
610 スイッチ
100Z 羽根車の最下点
100ZU 羽根車の最下点の上流側の四半部分
100DR 羽根車の回転方向
200Z ファンケーシングの最下点
463EH 拡散板の羽根側縁
463EC 拡散板の回転軸側縁
500Z 排気口の最下点
DU 排気ダクト
SH シャッター
AR 空気の流れ
WW 洗浄液の進路
CA 衝突領域
VA 仮想面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16