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特許7340875共晶組織を含有する銅チタン合金及びその調製方法
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  • 特許-共晶組織を含有する銅チタン合金及びその調製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】共晶組織を含有する銅チタン合金及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/04 20230101AFI20230901BHJP
   B22D 21/00 20060101ALI20230901BHJP
   B22D 27/15 20060101ALI20230901BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230901BHJP
   C22C 1/00 20230101ALI20230901BHJP
   C22C 9/00 20060101ALI20230901BHJP
   C22C 14/00 20060101ALI20230901BHJP
   C22F 1/08 20060101ALI20230901BHJP
   C22F 1/18 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
C22C1/04 A
B22D21/00 B
B22D21/00 Z
B22D27/15
B22F1/00 L
B22F1/00 R
C22C1/00 Q
C22C1/04 E
C22C9/00
C22C14/00 Z
C22F1/08 A
C22F1/18 H
【請求項の数】 4
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021192846
(22)【出願日】2021-11-29
(65)【公開番号】P2022091701
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】2020114304987
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510000839
【氏名又は名称】東北大学
【氏名又は名称原語表記】Northeastern University
【住所又は居所原語表記】NO.11, LANE3, WENHUA ROAD, HEPING DISTRICT, SHENYANG, LIAONING, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】王聡
(72)【発明者】
【氏名】劉超
(72)【発明者】
【氏名】範永剛
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109881039(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109971988(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/00
B22F 1/00
C22F 1/00
B22D 21/00
B22D 27/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量百分率でCu粉40%~55%、Ti粉45%~60.0%を調製してなり、Cu粉及びTi粉の質量百分率の和が100%であることを特徴とする、共晶組織を含有する銅チタン合金の調製方法であって、
工程1、材料を混合する工程、
銅チタン合金の成分比率がCu粉40%~55%、Ti粉45%~60.0%、Cu粉及びTi粉の質量百分率の和が100%であり、Cu粉及びTi粉を均一に混合し、混合物を得る工程、
工程2、製錬を準備する工程であって、混合物を高温真空炉に入れて製錬し、炉内の真空度は1.0×10 -3 Paである、工程、
工程3、製錬する工程であって、8~10℃/minの速度で、室温から1000~1100℃まで昇温し、30~40min保温し、その後900~910℃で30~40min保温し、高温真空炉を室温まで冷却してから取り出し、共晶組織を含有する銅チタン合金を得る、工程、
を含むことを特徴とする、共晶組織を含有する銅チタン合金の調製方法。
【請求項2】
前記Cu粉の粒度が300メッシュであり、Ti粉の粒度が250メッシュである、ただしメッシュはASTM E11で定義される、ことを特徴とする、請求項1に記載の共晶組織を含有する銅チタン合金の調製方法
【請求項3】
室温破壊靭性が30~37MPa・m1/2であることを特徴とする、請求項1に記載の共晶組織を含有する銅チタン合金の調製方法
【請求項4】
室温組織が、CuTi及びCuTiの2種の金属間化合物からなる共晶組織であることを特徴とする、請求項1に記載の共晶組織を含有する銅チタン合金の調製方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冶金の技術分野に属し、具体的に共晶組織を含有する銅チタン合金及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅は銀に次ぐ導電率を有する金属であるだけでなく、価格がより低いが、純銅の力学的性質は比較的劣る。チタン及びその合金は比強度が高い、耐熱性及び耐食性が好ましいなどの優れた性能により、現代の航空宇宙工業において不可欠な構造材料とされている。一般的に、通常、合金化、熱処理、大変形などの方法を採用して合金の力学的性質を高める。銅チタン合金の生産過程において有毒物質は生成されず、グリーン環境保護であり、セラミック間及びセラミック-金属間をろう接するろう接材として用いることができる。構造材料として、比較的高い強度、硬度及び弾性、並びに良好な耐熱性、耐疲労性、耐食性などを有し、生体材料としては、生体適合性が良好で、抗菌作用を示すこともできる。耐荷重部位の構造材は、疲労強度が重要な指標であり、材料の抗疲労性能を高めるのは、部品の耐用年数を高めるのに特に重要である。一般的に、材料の引張強度が高いほど、その疲労強度も高い。チタン含量が6.1at%より低い銅チタン合金は時効強化型合金に属し、熱処理の方式でCuTi相を制御することにより、さらに合金の総合的性質を制御することができ、該成分範囲内の合金は比較的良好な力学的性質を有する。しかし、このとき合金の主要相の組成はチタン原子が銅マトリックス中に固溶し、電子散乱が増加し、合金の導電率が明らかに低下する。
【0003】
従来の銅チタン合金の研究では、大部分が銅の固溶体及びチタンの固溶体の研究に集中しており、銅チタンを形成する金属間化合物についての研究は相対的に少ない。金属間化合物の金属原子が相互に結合するとき、金属結合、イオン結合及び共有結合を形成することができ、長距離秩序の特性を示す。正にその独特な結合特性により、金属間化合物は融点が高く、密度が低く、優れた抗酸化、抗腐食などの性質を有する。銅チタン合金のすべての金属間化合物のうち、CuTi及びCuTiはろう接材料のせん断強度を高めることができ、CuTiは強い機械的性質を有し、CuTiは比較的高い硬度を有することが、関連研究で明らかにされている。周知のように、微細構造が合金性能を決定し、合金の各種微細構造のうち、共晶組織は平衡状態に近い組織であり、共晶点に達する温度に耐えることができ、良好な超合金の代替品である。通常、共晶組織は非常に小さな組織構造を有し、共晶組織内部の各相は互いに入り組んでネットワーク構造を構成する。この種の材料は優れた力学的性質を示し、さらにその他の優れた特性を多く有し、(1)良好な流動性を有し、鋳造の欠点を減少させる。(2)微細構造を制御することができる。(3)良好な抗高温クリープ性能を有するなどである。
【0004】
以上の記載から考えて、室温組織がCuTi及びCuTiである銅チタン合金を基にして、2つの相の含量、寸法、微細形態などを制御することにより得られる合金を調製するか、又はより優れた総合的性質を有する銅チタン合金を得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記既存技術に存在する不足を克服し、共晶組織を含有する銅チタン合金及びその調製方法を提供することである。該合金は、2種の金属間化合物により形成される共晶組織を含む合金である。本発明は銅粉及びチタン粉から共晶組織を含む銅チタン合金を調製し、最も高い加熱温度は1100℃である。銅粉の融点は約1086℃、チタン粉の融点は約1670℃であるため、本発明の係る合金は、固(チタン粉)液(銅)拡散の方式により、CuTi相及びCuTi相を含有する共晶組織を形成する。銅粉が液体状態にすべて溶解するとき、チタン粉は液体状態の銅に包まれ、同時にCuTi及びCuTiが交互に成長する格子状の共晶組織を形成し、反応方程式はL→CuTi+CuTiである。本発明では、2種の純金属粉末を原料として採用し、高温下で2種の粉末が十分に拡散することを保証することができる。このほか、原料すべてが必要な2種の金属であり、余計な不純物、気泡などが生成することはなく、保温時間は30minであり、固液拡散を完了して核生成するのに十分な時間を有することができる。上記をまとめると、この種の方法で調製した共晶合金組織の成分は均等で、原料利用率は高く、気泡などの欠点が少なく、総合的性質が優れている。特に優れた室温破壊靭性を有し、室温破壊靭性は30~37MPa・m1/2である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するため、本発明は以下の技術案を採用する。
共晶組織を含有する銅チタン合金は、質量百分率でCu粉40.0%~55%、Ti粉45%~60%を調製してなり、Cu粉及びTi粉の質量百分率の和は100%である。
【0007】
前記Cu粉の粒度は300メッシュであり、Ti粉の粒度は250メッシュである。
【0008】
前記共晶組織を含有する銅チタン合金の室温破壊靭性は、30~37MPa・m1/2である。
【0009】
前記銅チタン合金の室温組織は、CuTi及びCuTiの2種の金属間化合物からなる共晶組織である。
【0010】
前記共晶組織を含有する銅チタン合金の調整方法は、以下の工程を含む。
工程1、材料を混合する。
銅チタン合金の成分比率に基づいて、Cu粉及びTi粉を3次元混合機で1時間混合し、混合物Aを得る。
工程2、製錬を準備する。
混合物Aを直径40mm、高さ50mmのジルコニアるつぼに入れ、ジルコニアるつぼを高温真空炉に入れて製錬する。炉内の真空度は1.0×10-3Paである。
工程3、製錬する。
8~10℃/minの速度で、室温から1000~1100℃まで昇温し、30~40min保温し、その後900~910℃で30~40min保温する。高温真空炉を室温まで冷却してから取り出し、共晶組織を含有する銅チタン合金を得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明の銅チタン合金を既存の銅チタン合金と比較すると、以下の有益な効果を有する。
(1)本発明で調製した銅チタン合金は比較的高い室温破壊靭性を有し、総合的性質が優れている。
(2)本発明は、固液拡散により形成した銅チタン2元共晶合金である。調製過程の操作は簡単で、加熱温度は低く、コストを節約する。
(3)本発明の銅チタン合金は室温で共晶組織を有し、共晶組織はCuTi及びCuTiの2種の金属間化合物からなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施例1で調製した銅チタン合金の室温SEM図である。
図2図2は、本発明の実施例2で調製した銅チタン合金の室温SEM図である。
図3図3は、本発明の実施例3で調製した銅チタン合金の室温SEM図である。
図4図4は、本発明の比較例1-1で調製した銅チタン合金の室温SEM図である。
図5図5は、本発明の比較例3-2で調製した銅チタン合金の室温SEM図である。
図6図6は、本発明の比較例3-3で調製した銅チタン合金の室温SEM図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、具体的な実施例を組み合わせて、本発明についてさらに説明を行う。しかし、本発明はこれらの実例に制限されない。
【実施例1】
【0014】
銅チタン合金について、銅チタン合金は質量百分率でCu粉52.5%、Ti粉47.5%を調製してなり、Cu粉及びTi粉の質量百分率の和は100%である。
【0015】
前記Cu粉は300メッシュであり、Ti粉は250メッシュである。
【0016】
前記銅チタン合金の室温組織は、2種の銅チタン金属間化合物からなる亜共晶合金であり、室温破壊靭性は32MPa・m1/2である。
【0017】
上記銅チタン合金の調製方法は、以下の工程を含む。
工程1、材料を混合する。
銅チタン合金の成分比率に基づいて、Cu粉及びTi粉を3次元混合機で均一に混合する。混合時間は1時間で、混合物Aを得る。
工程2、製錬を準備する。
40gの混合物Aを直径40mm、高さ50mmのジルコニアるつぼに入れ、ジルコニアるつぼを高温真空炉に入れて製錬する。炉内の真空度は1.0×10-3Paである。
工程3、製錬する。
室温から開始し、10℃/minの速度で1100℃まで昇温して、30min保温し、その後910℃で30min保温する。高温真空炉を室温まで冷却してから取り出し、共晶組織を含有する銅チタン合金を得る。室温SEM図は図1に示す通りであり、CuTi及びCuTiが相互に混ざり合って形成された共晶組織を確認できる。
【0018】
比較例1-1
実施例1との違いは、調製プロセスにおいて「1100℃で30min保温する」を「1150℃で60min保温する」に調整したことである。調製した銅チタン合金の室温SEM図は図4に示す通りであり、多角形のCuTi結晶粒がCuTi相中に分散し、相互に混ざり合った共晶組織が出現していないことが確認できる。検査の結果、調製した銅チタン合金の室温破壊靭性は20MPa・m1/2である。
【0019】
比較例1-2
実施例1との違いは、合金成分を「Cu粉57%、Ti粉43%」に調整したことである。室温組織は、CuTi、CuTi及びCuTiからなる銅チタン合金である。検査の結果、調製した銅チタン合金の室温破壊靭性は27MPa・m1/2である。
【実施例2】
【0020】
銅チタン合金について、銅チタン合金は質量百分率でCu粉50.0%、Ti粉50.0%を調製してなり、Cu粉及びTi粉の質量百分率の和は100%である。
【0021】
前記Cu粉は300メッシュであり、Ti粉は250メッシュである。
【0022】
前記銅チタン合金の室温組織は、2種の銅チタン金属間化合物からなる共晶合金であり、室温破壊靭性は37MPa・m1/2である。
【0023】
上記銅チタン合金の調製方法は、以下の工程を含む。
工程1、材料を混合する。
銅チタン合金の成分比率に基づいて、Cu粉及びTi粉を3次元混合機で均一に混合する。混合時間は1時間で、混合物Aを得る。
工程2、製錬を準備する。
40gの混合物Aを直径40mm、高さ50mmのジルコニアるつぼに入れ、ジルコニアるつぼを高温真空炉に入れて製錬する。炉内の真空度は1.0×10-3Paである。
工程3、製錬する。
室温から開始し、10℃/minの速度で1100℃まで昇温して、30min保温し、その後910℃で30min保温する。高温真空炉を室温まで冷却してから取り出し、共晶組織を含有する銅チタン合金を得る。室温SEM図は図2に示す通りであり、極めて小さなCuTi及びCuTiの2相が相互に混ざり合って形成する典型的な室温共晶組織の形態が確認できる。
【0024】
比較例2-1
実施例2との違いは、調製プロセスにおいて「1100℃で30min保温する」を「1150℃で60min保温する」に調整したことである。調製した銅チタン合金の室温SEM図は図5に示す通りであり、CuTi結晶粒が大きく、相互に混ざり合った典型的な共晶組織の微細形態がないことが確認できる。検査の結果、調製した銅チタン合金の室温破壊靭性は24MPa・m1/2である。
【実施例3】
【0025】
銅チタン合金について、銅チタン合金は質量百分率でCu粉45.0%、Ti粉55.0%を調製してなり、Cu粉及びTi粉の質量百分率の和は100%である。
【0026】
前記Cu粉は300メッシュであり、Ti粉は250メッシュである。
【0027】
前記銅チタン合金の室温組織は、2種の銅チタン金属間化合物からなる過共晶合金であり、室温破壊靭性は30MPa・m1/2である。
【0028】
上記銅チタン合金の調製方法は、以下の工程を含む。
工程1、材料を混合する。
銅チタン合金の成分比率に基づいて、Cu粉及びTi粉を3次元混合機で均一に混合する。混合時間は1時間で、混合物Aを得る。
工程2、製錬を準備する。
40gの混合物Aを直径40mm、高さ50mmのジルコニアるつぼに入れ、ジルコニアるつぼを高温真空炉に入れて製錬する。炉内の真空度は1.0×10-3Paである。
工程3、製錬する。
室温から開始し、10℃/minの速度で1100℃まで昇温して、30min保温し、その後910℃で30min保温する。高温真空炉を室温まで冷却してから取り出し、共晶組織を含有する銅チタン合金を得る。室温SEM図は図3に示す通りであり、室温組織はCuTi及びCuTiが相互に包み、混ざり合って形成する共晶組織であることが確認できる。
【0029】
比較例3-1
実施例3との違いは、調製プロセスにおいて「1100℃で30min保温する」を「1150℃で60min保温する」に調整したことである。得られた銅チタン合金CuTi結晶粒の寸法は不均一であり、典型的な共晶組織は生成されず、共晶組織はほとんど出現しない。検査の結果、調製した銅チタン合金の室温破壊靭性は22MPa・m1/2である。
【0030】
比較例3-2
実施例3との違いは、調製プロセスにおいて「1100℃で30min保温する」を「1100℃で20min保温する」に調整したことである。調製した銅チタン合金の室温SEM図は図5に示す通りであり、溶解していないTiを有し、得られた合金の室温組織はCuTi、CuTi及びαTiを含有する3相合金であることが確認できる。検査の結果、調製した銅チタン合金の室温破壊靭性は23MPa・m1/2である。
【0031】
比較例3-3
実施例3との違いは、調製プロセスにおいて「1100℃で30min保温し、910℃で30min保温する」を「1100℃で60min保温する」に調整したことである。調製した銅チタン合金の室温SEM図は図6に示す通りであり、共晶組織を得ることができないことが確認できる。検査の結果、調製した銅チタン合金の室温破壊靭性は25MPa・m1/2である。
【0032】
比較例3-4
実施例3との違いは、合金成分を「Cu粉39%、Ti粉61%」に調整したことである。第2相を含有するチタン合金を得ることがあり、実施例の方法で得られるのは鋳造状態の室温組織であり、αTi及び第2相のCuTiである。検査の結果、調製した製品はチタン合金であり、室温破壊靭性は26MPa・m1/2である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6