(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】タイヤトレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/06 20060101AFI20230901BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20230901BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20230901BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L21/00
C08L65/00
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2018209833
(22)【出願日】2018-11-07
【審査請求日】2021-09-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 由真
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-203894(JP,A)
【文献】特開2016-176022(JP,A)
【文献】特開2012-201701(JP,A)
【文献】国際公開第2009/125747(WO,A1)
【文献】特開2014-214206(JP,A)
【文献】国際公開第2015/093316(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が-50℃以下である乳化重合スチレンブタジエンゴムを
50質量部以上含むジエン系ゴム成分100質量部に対して、軟化点が150~170℃である水添テルペンフェノール樹脂を1~30質量部含む、タイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
前記水添テルペンフェノール樹脂は、水酸基価が25~150mgKOH/gである、請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
前記水添テルペンフェノール樹脂の水酸基価が50~70mgKOH/gである、請求項1又は2に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いてなるトレッドを備えた空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤにおいては、湿潤路面での高いグリップ性能(即ち、ウェットグリップ性能)を向上することが求められている。また、タイヤの長寿命化のため、トレッドを形成するゴム組成物には耐摩耗性も同時に求められる。
【0003】
特許文献1には、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能及び耐久性をバランス良く改善するために、特定の水素添加テルペン芳香族樹脂と特定の無機フィラーを併用することが提案されている。特許文献2には、グリップ性能と耐摩耗性を両立するために、フェノール系樹脂の芳香環以外の二重結合を選択的に水添した部分水添フェノール系樹脂を、スチレンブタジエンゴムを含むジエン系ゴム成分に添加することが提案されている。特許文献3には、初期グリップ性能と走行安定性を向上させるために、軟化点が130℃以上の水添テルペンフェノール樹脂と、軟化点が130~190℃のC9樹脂を併用することが提案されている。しかしながら、特定のガラス転移温度を持つ乳化重合スチレンブタジエンゴムに水添テルペンフェノール樹脂を配合することにより、ウェットグリップ性能を向上しつつ、耐摩耗性を向上できることは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2016/104144号
【文献】特開2015-165000号公報
【文献】特開2008-169296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、ウェットグリップ性能と耐摩耗性を向上することができるタイヤトレッド用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るタイヤトレッド用ゴム組成物は、ガラス転移温度が-50℃以下である乳化重合スチレンブタジエンゴムを30質量部以上含むジエン系ゴム成分100質量部に対して、水添テルペンフェノール樹脂を1~30質量部含むものである。
【0007】
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤは、該ゴム組成物からなるトレッドを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、特定のスチレンブダジエンゴムに水添テルペンフェノール樹脂を配合することにより、ウェットグリップ性能と耐摩耗性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係るゴム組成物は、ジエン系ゴム成分に、水添テルペンフェノール樹脂を配合してなるものである。
【0010】
ジエン系ゴム成分としては、ガラス転移温度(Tg)が-50℃以下である乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)(以下、乳化重合SBRという。)が用いられる。このようなガラス転移温度が低い乳化重合SBRを用いることにより、水添テルペンフェノール樹脂との組み合わせにおいて、ウェットグリップ性能の向上効果とともに、耐摩耗性も向上することができる。
【0011】
乳化重合SBRのガラス転移温度の下限は、特に限定されず、例えば-70℃以上でもよい。ここで、ガラス転移点は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定される値(昇温速度20℃/分)である。
【0012】
乳化重合SBRとしては、特に限定されないが、例えば、スチレン含有量(St)が10~50質量%であり、かつ、ブタジエン部中のビニル含有量(Vi)が10~30モル%であるものを用いてもよい。スチレン含有量は、より好ましくは20~30質量%であり、ブタジエン部中のビニル含有量は、より好ましくは10~20モル%である。このようなスチレン含有量およびビニル含有量の低いスチレンブタジエンゴムを用いることにより、耐摩耗性の向上効果を高めることができる。ここで、ブタジエン部中のビニル含有量は、SBRを構成するブタジエン成分中に占めるビニル結合の量(ビニル結合量とも称される)であり、ブタジエン成分に対するモル分率で表される。スチレン含有量とビニル含有量は、FT-IR(フーリエ変換赤外分光)法により測定することができる。より詳細には、BR,NR,IRについてはモレロ法により、SBRについてはハンプトン-モレロ法により求められる。
【0013】
乳化重合SBRは、ジエン系ゴム成分100質量部中、30質量部以上配合される。乳化重合SBRの配合量は、より好ましくは50質量部以上である。ジエン系ゴム成分は、乳化重合SBR単独(即ち、乳化重合SBRの配合量が100質量部)でもよいが、乳化重合SBRとともに他のジエン系ゴムを配合してもよい。乳化重合SBRの配合量の上限は、特に限定されず、例えば、90質量部以下でもよく、70質量部以下でもよい。
【0014】
乳化重合SBRと併用する他のジエン系ゴムとしては、特に限定されず、例えば、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、上記乳化重合SBR以外のスチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム等が挙げられ、これらをいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ガラス転移温度が-50℃以下のジエン系ゴムを用いることが好ましく、例えば、天然ゴムおよび/またはブタジエンゴムを用いることが好ましい。天然ゴムおよび/またはブタジエンゴムの配合量は、ジエン系ゴム成分100質量部中、70質量部以下であり、好ましくは50質量部以下である。
【0015】
本実施形態では、上記乳化重合SBRとともに、水添テルペンフェノール樹脂を配合する。水添テルペンフェノール樹脂を配合することにより、ウェットグリップ性能を向上することができる。また、水添されたテルペンフェノール樹脂は、上記乳化重合SBRとの相溶性が良好となるために耐摩耗性が向上するものと考えられる。
【0016】
水添テルペンフェノール樹脂は、テルペンフェノール樹脂を水素化(即ち、水素添加)したものである。水添テルペンフェノール樹脂としては、芳香環の二重結合とともに芳香環以外の二重結合を水素添加して得られるものが好ましい。水素添加率は、特に限定されないが、例えば70%以上であることが好ましく、より好ましくは80~100%である。ここで、水素添加率は、プロトンNMRによる二重結合由来ピークの各積分値から算出される。すなわち、5~6ppm付近のテルペン二重結合由来ピークの積分値と6.5~7.5ppmのフェノール由来ピークの積分値について、水素添加前の積分値の合計をAとし、水素添加後の積分値の合計をBとして、
水素添加率(%)={(A-B)/A}×100
により算出される。
【0017】
水添テルペンフェノール樹脂としては、水酸基価が25~150mgKOH/gであるものを用いることが好ましい。水酸基価は、より好ましくは、50mgKOH/g以上であり、また、70mgKOH/g以下である。水添テルペンフェノール樹脂の水酸基価が25mgKOH/g以上であることにより、耐摩耗性能の向上効果を高めることができる。また、150mgKOH/g以下であることにより、ウェットグリップ性能の向上効果を高めることができる。
【0018】
ここで、水添テルペンフェノール樹脂の水酸基価は、JIS K0070 中和滴定法に準じて測定される。
【0019】
水添テルペンフェノール樹脂としては、軟化点が100~170℃であるものを用いることが好ましい。水添テルペンフェノール樹脂の軟化点が100℃以上であることにより、ウェットグリップ性能の向上効果を高めることができる。また、170℃以下であることにより、混練時にゴムに混ざりやすく加硫ゴムの性能発現効果が高い。ここで、軟化点は、JIS K6220-1:2015に準じて測定される。
【0020】
水添テルペンフェノール樹脂の配合量は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは3~25質量部である。
【0021】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記成分の他に、補強性充填剤、シランカップリング剤、オイル、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、加工助剤、加硫剤、加硫促進剤など、タイヤ用ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
【0022】
補強性充填剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラック等が挙げられ、シリカ単独でも、カーボンブラック単独でも、シリカとカーボンブラックを併用してもよい。
【0023】
シリカとしては、特に限定されず、例えば、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカを用いてもよい。シリカの配合量は、特に限定されず、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、10~120質量部でもよく、40~100質量部でもよく、60~100質量部でもよい。本実施形態では、シリカを主たる補強性充填剤として用いることが好ましく、例えば補強性充填剤の50質量%超がシリカであることが好ましく、より好ましくは補強性充填剤の70質量%以上がシリカである。
【0024】
カーボンブラックとしては、特に限定されず、例えば、SAF級(N100番台)、ISAF級(N200番台)、HAF級(N300番台)、FEF級(N500番台)(ともにASTMグレード)など公知の種々の品種を用いることができる。これら各グレードのカーボンブラックは、いずれか1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。カーボンブラックの配合量は、特に限定されず、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、1~100質量部でもよく、1~50質量部でもよく、2~15質量部でもよい。
【0025】
補強性充填剤としてシリカを用いる場合、シランカップリング剤を配合することが好ましい。シランカップリング剤としては、スルフィドシランやメルカプトシランなどが挙げられる。シランカップリング剤の配合量は、特に限定されず、例えば、シリカ配合量に対して2~20質量%でもよい。
【0026】
加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられる。加硫剤の配合量は、特に限定されず、例えば、ジエン系ゴム成分100質量部に対して0.1~10質量部でもよく、0.5~5質量部でもよい。また、加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、及びグアニジン系などの各種加硫促進剤が挙げられ、いずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。加硫促進剤の配合量は、特に限定されず、例えば、ジエン系ゴム成分100質量部に対して0.1~7質量部でもよく、0.5~5質量部でもよい。
【0027】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、例えば、第一混合段階(ノンプロ練り工程)で、ジエン系ゴム成分に対し、水添テルペンフェノール樹脂とともに、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階(プロ練り工程)で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合して未加硫のゴム組成物を調製することができる。
【0028】
本実施形態に係るゴム組成物は、例えば乗用車用、トラックやバスの重荷重用など各種用途のタイヤのトレッド部に用いることができる。
【0029】
一実施形態に係る空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いてゴム用押し出し機などによりタイヤのトレッドゴムを作製し、他のタイヤ部材と組み合わせて未加硫タイヤ(グリーンタイヤ)を作製した後、例えば140~180℃で加硫成型することにより製造することができる。空気入りタイヤのトレッドゴムには、キャップゴムとベースゴムとの2層構造からなるものと、両者が一体の単層構造のものがあるが、接地面を構成するゴムに好ましく用いられる。すなわち、単層構造のものであれば、当該トレッドゴムが上記ゴム組成物からなり、2層構造のものであれば、キャップゴムが上記ゴム組成物からなることが好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
実施例および比較例で使用した各種薬品は以下の通りである。
・E-SBR1:JSR(株)製「SBR1723」(乳化重合SBR、ガラス転移温度:-53℃、スチレン含有量:24質量%、ブタジエン部中のビニル含有量:15モル%、油展ゴム:ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
・E-SBR2:JSR(株)製「SBR1502」(乳化重合SBR、ガラス転移温度:-66℃、スチレン含有量:24質量%、ブタジエン部中のビニル含有量:18モル%)
・E-SBR3:日本ゼオン(株)製「NIPOL9548」(乳化重合SBR、ガラス転移温度:-40℃、スチレン含有量:35質量%、ブタジエン部中のビニル含有量:18モル%、油展ゴム:ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
・S-SBR:JSR(株)製「HPR350」(溶液重合SBR、ガラス転移温度:-35℃、スチレン含有量:20質量%、ブタジエン部中のビニル含有量:55モル%)
・BR:宇部興産(株)製「BR150B」
・NR:RSS#3
【0032】
・シリカ:エボニック・デグサ社製「Ultrasil7000GR」
・シランカップリング剤:エボニック・デグサ社製「Si69」
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1号」
・老化防止剤:大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS20」
・加工助剤:ランクセス社製「アクチプラストPP」
・オイル:JX日鉱日石エネルギー(株)製「プロセスNC140」
・硫黄 :鶴見化学工業(株)製「 粉末硫黄」
・加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」
・加硫促進剤2:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」
・石油系樹脂:東ソー(株)製「ペトロタック90」
【0033】
・水添テルペンフェノール樹脂1:ヤスハラケミカル(株)製「YSポリスターUH115」(水素添加率:92%、水酸基価:25mgKOH/g、軟化点:115℃)
【0034】
・水添テルペンフェノール樹脂2:テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル(株)製「YSポリスターT160」)100g、イソプロピルアルコール400g、および粉末状の5%パラジウム担持アルミナ触媒2.0gを、反応容器に投入し密閉して、雰囲気を窒素ガスで置換した後に、水素ガスを0.98MPaの圧力で導入した。加熱撹拌し、160℃になったところで水素の圧力を7.8MPaとし、圧力7.8MPaを維持しながら5時間反応させ、水添テルペンフェノール樹脂2(水素添加率:80%、水酸基価:60mgKOH/g、軟化点:166℃)を得た。
【0035】
・水添テルペンフェノール樹脂3:テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル(株)製「YSポリスターS145」)を用い、水添テルペンフェノール樹脂2と同様の合成法で水添テルペンフェノール樹脂3(水素添加率:90%、水酸基価:130mgKOH/g、軟化点:150℃)を得た。ただし、反応時間は10時間に変更した。
【0036】
実施例および比較例における評価方法は以下の通りである。
・ウェットグリップ性能:東洋精機(株)製の粘弾性試験機を使用し、周波数10Hz、静歪10%、動歪1%、温度0℃で損失係数tanδを測定し、表1では比較例1の値、表2では比較例3の値、表3では比較例5の値、表4では比較例6の値、表5では比較例8の値をそれぞれ100とした指数で表示した。指数が大きいほど、ウェットグリップ性能に優れる。
【0037】
・耐摩耗性:JIS K6264に準拠し、岩本製作所(株)製のランボーン摩耗試験機を用いて、荷重40N、スリップ率30%の条件で摩耗減量を測定し、測定値の逆数について、表1では比較例1の値、表2では比較例3の値、表3では比較例5の値、表4では比較例6の値、表5では比較例8の値をそれぞれ100とした指数で表示した。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れる。
【0038】
[第1実施例]
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ジエン系ゴム成分に対し硫黄及び加硫促進剤を除く配合剤を添加し混練し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。得られた各ゴム組成物を160℃×30分間加硫して試験片を作製し、ウェットグリップ性能と耐摩耗性を評価した。
【0039】
【0040】
結果は表1に示す通りである。コントロールである比較例1に対し、石油系樹脂を配合した比較例2では、ウェットグリップ性能は向上したものの、耐摩耗性の向上効果は得られなかった。これに対し、水添テルペンフェノール樹脂を配合した実施例1~5であると、比較例1に対し、ウェットグリップ性能と耐摩耗性の双方に顕著な向上効果がみられた。
【0041】
[第2実施例]
下記表2に示す配合(質量部)に従って、第1実施例と同様して、ゴム組成物を調製し、得られた各ゴム組成物を160℃×30分間加硫して試験片を作製し、ウェットグリップ性能と耐摩耗性を評価した。
【0042】
【0043】
結果は表2に示す通りであり、第1実施例と同様、石油系樹脂を配合した比較例4では、コントロールである比較例3に対して、ウェットグリップ性能は向上したものの、耐摩耗性の向上効果は得られなかった。これに対し、水添テルペンフェノール樹脂を配合した実施例6,7であると、比較例3に対し、ウェットグリップ性能と耐摩耗性の双方に顕著な向上効果がみられた。
【0044】
[第3実施例]
下記表3に示す配合(質量部)に従って、第1実施例と同様して、ゴム組成物を調製し、得られた各ゴム組成物を160℃×30分間加硫して試験片を作製し、ウェットグリップ性能と耐摩耗性を評価した。
【0045】
【0046】
結果は表3に示す通りである。ガラス転移温度が-66℃の乳化重合SBRを用いた場合でも、第1及び第2実施例と同様、水添テルペンフェノール樹脂を配合した実施例8,9であると、コントロールである比較例5に対して、ウェットグリップ性能と耐摩耗性の双方に顕著な向上効果がみられた。
【0047】
[第1比較例]
下記表4に示す配合(質量部)に従って、第1実施例と同様して、ゴム組成物を調製し、得られた各ゴム組成物を160℃×30分間加硫して試験片を作製し、ウェットグリップ性能と耐摩耗性を評価した。
【0048】
【0049】
[第2比較例]
下記表5に示す配合(質量部)に従って、第1実施例と同様して、ゴム組成物を調製し、得られた各ゴム組成物を160℃×30分間加硫して試験片を作製し、ウェットグリップ性能と耐摩耗性を評価した。
【0050】
【0051】
表1~3に示すように、ガラス転移温度が-50℃以下である乳化重合SBRに水添テルペンフェノール樹脂を配合した場合、ウェットグリップ性能とともに耐摩耗性についても顕著な改良効果がみられた。これに対し、表4に示すように、ガラス転移点が-40℃の乳化重合SBRでは、水添テルペンフェノール樹脂を添加することによりウェットグリップ性能の改良効果はみられたが、耐摩耗性の改良効果はみられなかった。また、表5に示すように、溶液重合SBRでも、水添テルペンフェノール樹脂を添加することによりウェットグリップ性能の改良効果はみられたが、耐摩耗性の改良効果はみられなかった。
【0052】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。