IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ CKD株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図1
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図2
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図3
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図4
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図5
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図6
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図7
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図8
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図9
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図10
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図11
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図12
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図13
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図14
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図15
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図16
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図17
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図18
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図19
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図20
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図21
  • 特許-流体機器接続システム、及び連結部材 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】流体機器接続システム、及び連結部材
(51)【国際特許分類】
   F16L 23/036 20060101AFI20230901BHJP
【FI】
F16L23/036
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018231748
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2020094613
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 洋輝
(72)【発明者】
【氏名】竹田 秀行
(72)【発明者】
【氏名】石原 哲哉
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-002902(JP,A)
【文献】特開2010-216507(JP,A)
【文献】特開2009-103303(JP,A)
【文献】特開平04-213693(JP,A)
【文献】特開平04-095686(JP,A)
【文献】特開2011-005860(JP,A)
【文献】特開2006-228607(JP,A)
【文献】国際公開第2015/061812(WO,A2)
【文献】特開2018-091482(JP,A)
【文献】特開2011-052826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 23/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接続部を有する第1接続機器と、第2接続部を有する第2接続機器と、前記第1接続部及び前記第2接続部の間に配置された環状シール部材と、前記環状シール部材を介して前記第1接続部及び前記第2接続部を接続する連結部材であって、前記連結部材は、第1連結片と第2連結片を備え、前記第1連結片と前記第2連結片の一端に回動連結部を有すること、前記第1接続部と前記第2接続部の外形は円形状である連結部材と、を有し、薬液の制御に使われる流体機器接続システムにおいて、
前記第1接続部及び前記第2接続部及び前記環状シール部材の材質がフッ素樹脂であること、
前記連結部材の材質を、フッ素系樹脂材質とPPS材質のいずれも選択可能に使用できること、
前記連結部材は射出成型品であって、形状が前記フッ素系樹脂材質と前記PPS材質で異なること、
前記第1連結片と前記第2連結片について、前記PPS材質を使用する場合は、前記フッ素系樹脂材質を使用する場合と比較して、外壁または円筒の少なくとも一方の、少なくとも一部の肉厚が薄く形成されていること、
を特徴とする流体機器接続システム。
【請求項2】
請求項1に記載の流体機器接続システムにおいて、
前記第1連結片と前記第2連結片について、前記PPS材質を使用する場合に、前記フッ素系樹脂材質を使用する場合と比較して、外壁または円筒の少なくとも一方の、少なくとも一部の肉厚が薄く形成されているのは、前記第1接続部及び前記第2接続部が熱膨張したときに弾性変形可能とするためであること、
を特徴とする流体機器接続システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の流体機器接続システムにおいて、
前記第1連結片の円形状外周の軸方向中心位置に突状部が形成されていること、
前記突状部は、前記第1連結片の円周方向にのみ延在すること、
を特徴とする流体機器接続システム。
【請求項4】
請求項1に記載の流体機器接続システムにおいて、
前記PPS材質は前記フッ素系樹脂材質に対して前記肉厚の減少率が、前記外壁よりも前記円筒の方が大きいこと、
を特徴とする流体機器接続システム。
【請求項5】
請求項1又は請求項に記載の流体機器接続システムにおいて、
前記第1連結片の円形状外周の軸方向中心位置に突状部が形成されていること、
を特徴とする流体機器接続システム。
【請求項6】
請求項1又は請求項に記載の流体機器接続システムにおいて、
前記第1連結片は、開口部を有する概U字形状であり、前記第1接続部と前記第2接続部の全周の180度を超えて前記第2連結片と係合すること、
を特徴とする流体機器接続システム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項に記載の流体機器接続システムのいずれか1つにおいて、
第1連結片に形成された第1係合爪と、前記第2連結片に形成された第2係合爪が係合されることにより、前記第1連結片と前記第2連結片とが係合されること、
前記第1係合爪の係合する部分が円弧形状であること、前記第2係合爪の係合する部分がテーパ形状であること、
を特徴とする流体機器接続システム。
【請求項8】
請求項1乃至請求項に記載の流体機器接続システムのいずれか1つにおいて、
前記第1接続部及び前記第2接続部の材質はPFAであり、前記フッ素系樹脂材質はPVDFであること、
を特徴とする流体機器接続システム。
【請求項9】
請求項1乃至請求項に記載の流体機器接続システムのいずれか1つにおいて、
熱変形よるシール力低下を防ぐことができること、
を特徴とする流体機器接続システム。
【請求項10】
請求項1乃至請求項に記載の流体機器接続システムのいずれか1つにおいて使用される連結部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1接続部を有する第1流体機器と、第2接続部を有する第2流体機器と、第1接続部及び第2接続部を接続する環状シール部材と、第1接続部及び第2接続部の接続状態を維持する連結部材と、を有する流体機器接続構造に用いられる連結部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程や液晶製造工程などに使用する薬液の制御には、流量制御弁や開閉弁などのバルブ類や、フィルタ、圧力センサや流量センサなどのセンサ類、継手ブロックや流路ブロックなどの配管ブロック類など、流体機器が使用される。近年、装置のコンパクト化のため、これら流体機器の接続部同士を、連結部材を用いて直接連結し、ユニット化することが行われている。
【0003】
従来、第1接続部を有する第1流体機器と、第2接続部を有する第2流体機器と、第1接続部及び第2接続部を接続する環状シール部材と、第1接続部及び第2接続部の接続状態を維持する連結部材と、を有する流体機器接続構造に用いられる連結部材が使用されている。
ここで、接続部と環状シール部材と第1及び第2連結片は、樹脂を材質とする。そのため、例えば、接続部に異常な高温の薬液と異常な低温の純水が交互に長期間加わると、接続部がクリープ変形し、シール力が低下することがある。シール力が低下すると、液漏れが生じる。このような緊急時に、増し締めが行われる。
【0004】
連結部材には、第1及び第2連結片を互いに近づけて接続部同士を引き寄せ、シール力を増加させるための増し締め部材が取り付けられるようになっていた。
増し締め部材を第1連結片の挿通孔に挿通して第2連結片ボルト孔に締め付けることにより、第1及び第2連結片を引き寄せて、接続部同士を近づける。よって、連結部材は、増し締め部材を用いて締め付けることで、シール力を向上させることができる。
【0005】
しかし、従来の連結部材では、連結部材を閉じた状態を維持するために半径方向外側に形成された第1延設部と第2延設部を設けるため、連結部材自体が大きくなる問題があった。
または、安全機構としての増し締め用の第2係合部を半径方向外側に設けたため、連結部材自体が大きくなる。これにより、連結部材を取り付けるための広い作業スペースが必要である。
特に、設置面に流体機器を並列に多数設置するような場合、中央の流体機器の作業スペースは設置面とは反対側に限られ、従来の連結部材では、両側の流体機器に連結部材が取り付けられていると、連結部材の第1連結片と第2連結片を近づけて閉じることができない。たとえ連結部材を取り付けたとしても、挿入方向とは逆の方向から手を入れて通常使用状態にするため、係止爪を係合させることができず、また、増し締め状態にするため、奥まで手が入らないような狭いスペースでは作業できないため、作業性が悪くなるという問題があった。
この問題を解決するために本出願人は、特許文献1に示す連結部材を開発し、実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-91482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の連結部材には、次のような問題があった。
すなわち、特許文献1の連結部材は、半導体製造装置の洗浄装置用に開発を行い、材質をフッ素系樹脂であるPVDFとした。新たに、有機溶剤やアルカリ性流体でも使用したいとの強い要望があった。
PVDF樹脂は、有機溶剤に対しては腐食する問題があり、アルカリ性流体に対しては変色するという問題があった。一方、別の樹脂であるPPSは、有機溶剤やアルカリ性流体に対する耐腐食性の点では優れている。
【0008】
しかし、PVDFの弾性率が、2300~2700MPであるのに対して、PPSの弾性率は、3600~4000MPであり、PPSは、PVDFと比較して、1.5倍ほど変形しにくい性質を有している。そのため、特許文献1の連結部材の材質をPPSに変更しただけでは、内部を流れる液体の熱により、環状シール部材(PFAまたはPTFE製で、熱膨張率が大きい)が熱変形したときに、PPSの熱膨張率がPFA等の1/2程度と小さいので、PPSの熱変形量とPFA等の熱変形量に大きな差が生じるため、クランプ状態が変化する恐れがあった。また、PPS製の連結部材は弾性変形しにくいため、環状シール部材と連結部材との間に隙間が発生する恐れがあった。環状シール部材と連結部材との間に隙間が発生すると、シール力が低下し液体が漏れる恐れがあった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、有機溶剤、アルカリ性流体を使用する半導体製造装置、薬液供給装置においても使用できる連結部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の連結部材は、上記課題を解決するために、次のような構成を有している。
(1)第1接続部を有する第1流体機器と、第2接続部を有する第2流体機器と、第1接続部及び第2接続部の間に配置された環状シール部材と、環状シール部材を介して第1接続部及び第2接続部を接続する連結部材と、を有する流体機器接続構造に用いられる連結部材であって、連結部材は、第1連結片と第2連結片を備え、第1連結片と第2連結片の一端に回動連結部を有すること、第1接続部と第2接続部の外形は円形状であること、第1連結片は、開口部を有する概U字形状であり、第1接続部と第2接続部の全周の180度を超えて第2連結片と係合する連結部材において、第1連結片と第2連結片の材質を弾性率の高い材料で形成する際に、元の材質の時より薄く形成されていることを特徴とする。
ここで、環状シール部材等液体に直接接触する部材は、PFA、PTFE等の高耐食性フッ素樹脂を使用している。
【0011】
(2)(1)に記載の連結部材において、第1連結片と第2連結片のうち、外壁の厚み、または円筒の一部の厚みの少なくとも一方が、薄く形成されていること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載の連結部材において、第1連結片の円形状外周の軸方向中心位置に突状部が形成されていること、を特徴とする。
(4)(1)乃至(3)に記載の連結部材のいずれか1つにおいて、第1連結片に形成された第1係合爪と、第2連結片に形成された第2係合爪が係合されることにより、第1連結片と第2連結片とが係合されること、第1係合爪の係合する部分が円弧形状であること、第2係合爪の係合する部分がテーパ形状であること、を特徴とする。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つの前記連結部材で構成されることを特徴とする流体接続構造である。
(6)第1接続部を有する第1接続機器と、第2接続部を有する第2接続機器と、第1接続部及び第2接続部の間に配置された環状シール部材と、環状シール部材を介して第1接続部及び第2接続部を接続する連結部材と、を有する流体機器接続システムにおいて、第1接続部及び第2接続部及び環状シール部材の材質がフッ素樹脂であること、連結部材の材質を、フッ素系樹脂材質とPPS材質のいずれも選択可能に使用できること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の連結部材は次のような作用・効果を有している。
(1)第1接続部を有する第1流体機器と、第2接続部を有する第2流体機器と、第1接続部及び第2接続部の間に配置された環状シール部材と、環状シール部材を介して第1接続部及び第2接続部を接続する連結部材と、を有する流体機器接続構造に用いられる連結部材であって、連結部材は、第1連結片と第2連結片を備え、第1連結片と第2連結片の一端に回動連結部を有すること、第1接続部と第2接続部の外形は円形状であること、第1連結片は、開口部を有する概U字形状であり、第1接続部と第2接続部の全周の180度を超えて第2連結片と係合する連結部材において、第1連結片と第2連結片の材質を弾性率の高い材料で形成する際に、元の材質の時より薄く形成されていること、を特徴とするので、連結部材は、弾性率の高い材料で形成する際に、元の材質の時より全体が薄く成形されているため、環状シール部材が内部を流れる液体の熱により熱変形した場合でも、連結部材が弾性変形し、環状シール部材との間に隙間が発生することがなく、シール力が低下して液体が漏れる恐れがない。
より具体的には、第1連結片と第2連結片がPPSであること、第1連結片と第2連結片の厚みが、材質がPVDFで形成された第1連結片と第2連結片より薄く形成されていること、を特徴とするので、PPS製の連結部材は、PVDF製の連結部材と比較して、弾性変形がしにくいが、全体が薄く成形されているため、環状シール部材が内部を流れる液体の熱により熱変形して膨張した場合でも、PPS製の連結部材が弾性変形し、環状シール部材との間に隙間が発生することがなく、シール力が低下して液体が漏れる恐れがない。
【0013】
(2)(1)に記載の連結部材において、第1連結片と第2連結片のうち、外壁の厚み、または円筒の一部の厚みの少なくとも一方が、薄く形成されていること、を特徴とするので、外壁の厚みが変形のし易さを大きく支配するため、第1及び第2連結片をより変形しやすくすることができる。
(3)(1)または(2)に記載の連結部材において、第1連結片の円形状外周の軸方向中心位置に突状部が形成されていること、を特徴とする。
第1連結片の厚みを薄くしているため、溶融したPPSが流れる金型流路の断面積が小さくなっており、溶融したPPSの射出成型時の流動性が低下している。そのため、連結片を薄く成形しようとすると、溶融したPPSが合流する位置にウエルドが発生する問題があった。特に、金型の内壁に沿って流れた溶融したPPSが円形状外周の軸方向中心位置で合流するため、第1連結片の円形状外周の軸方向中心位置付近にウエルドが発生していた。ウエルドが発生すると、クランプ強度が低下する恐れがあった。
(3)の連結部材においては、第1連結片の円形上外周の軸方向中心位置に突状部が形成されているので、突状部の分だけ断面が大きくなり、溶融したPPSが流れ易くなっており、溶融したPPSが両サイドから流れ込むことがないため、ウエルドができることがなく、クランプ強度が低下しない。
【0014】
(4)(1)乃至(3)に記載の連結部材のいずれか1つに記載の連結部材において、第1連結片に形成された第1係合爪と、第2連結片に形成された第2係合爪が係合されることにより、第1連結片と第2連結片とが係合されること、第1係合爪の係合する部分が円弧形状であること、第2係合爪の係合する部分がテーパ形状であること、を特徴とする。
PPS製の連結部材は、PVDF製の連結部材と比較して、1.5倍変形しにくい。そのため、第1係合爪と第2係合爪を係合させようとするときに、第1係合爪に応力集中が発生し、係合爪が破損する問題があった。
(4)の連結部材においては、第1係合爪の係合する部分が円弧形状であり、かつ第2係合爪の係合する部分がテーパ形状であるので、第1係合爪の係合する第2係合爪の部分がテーパ形状であるため、第1係合爪にかかる力が、第1連結片を弾性変形させる方向に作用するため、第1係合爪の破損を防止することができる。
また、第1係合爪と第2係合爪とは、常に点で接触し、応力集中するポイントが変化するため、応力集中による第1係合爪の破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1係止位置にある連結部材の第1方向から視た斜視図である。
図2】第1係止位置にある連結部材の第2方向から視た斜視図である。
図3】第1係止位置にある連結部材の第3方向から視た斜視図である。
図4】第1係止位置にある連結部材の第4方向から視た斜視図である。
図5】連結部材の正面図である。
図6】連結部材の右側面図である。
図7】連結部材の左側面図である。
図8】連結部材の平面図である。
図9】連結部材の底面図である。
図10】連結部材の背面図である。
図11】特許文献1で開示したPVDF製の連結部材の中央断面図である。
図12図11のBB断面図である。
図13】本発明のPPS製の連結部材の中央断面図である。
図14図13のCC断面図である。
図15】PVDF製の連結部材と、本発明のPPS製の連結部材の肉厚比を示す図である。
図16】従来のPVDF製の第1連結片、及び第2連結片に所定の力を加えた時の弾性変形量(単位;mm)を示す図である。
図17】本発明のPPS製の第1連結片、及び第2連結片に所定の力を加えた時の弾性変形量(単位;mm)を示す図である。
図18】PVDF製の従来の第1連結片について、図19と同じタイミングでの樹脂の流入状態を示す図である。
図19】突状部を設けずに、全体を薄肉部(円筒肉厚比=81%)で構成した場合の射出成型時の金型キャビティへのPPS樹脂の流入状態を示す図である。
図20】本発明の突状部を設けた場合について、図19と同じタイミングでの樹脂の流入状態を示す図である。
図21】本発明のPPS製の連結部材の係止の拡大図(図5のD部拡大図)である。
図22】係止部の作用・効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の流体機器接続構造について、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。図1から図4は、第1係止位置にある連結部材5の様々な角度(第1方向~第4方向)から見た斜視図を示す。図5は、連結部材5の正面図であり、図6は、右側面図であり、図7は、左側面図であり、図8は、平面図であり、図9は、底面図であり、図10は背面図である。
ここで、流体機器接続構造の内部的な構成は、特許文献1に記載されたものと同じなので説明を割愛する。
連結部材5は、図1に示すように、円筒形状をしており、第1連結片6と第2連結片7を有する。第1連結片6と第2連結片7は、強度と耐腐食性があるPPSを材質とする。PPSは、PVDFと比較して、有機溶剤やアルカリ性流体に対してより強い耐腐食性を有している。
【0017】
次に、連結部材5のより詳細な外観的構成について図1から図10を用いて説明する。なお、一対のものに対し、A,Bの符号を付しているが、説明が煩雑になるため、適宜A,Bの符号を省略している。
連結部材5は、第1連結片6と第2連結片7を有している。第1連結片6は、図5に示すように、第1連結片6の軸方向に直交する断面において、開口部6aを有する概U字形状を成す。また、第1連結片6の外周は、薄肉部61と薄肉部62の間で、外周の中央に位置する突状部1を備えている。突状部1の円筒肉厚は、薄肉部61、62の円筒肉厚より、突起している分大きくしている。
第1連結片6は、連結部材5の全周の180度を超えた位置、換言すれば、第1接続部と第2接続部の円形断面の全周の180度を超えた位置で第2連結片7と係合する。
【0018】
第2連結片7は、第1連結片6の開口部6aを覆う形状を成す。第2連結片7は、第1連結片6に形成された突状部1を有していない。
第1連結片6と第2連結片7の軸方向の面には、軸方向に凹んだ凹部6b,7aが放射状に複数形成されている。図2に示すように、第1連結片6の周方向の一端には、端部65が形成され、端部65の軸方向両端には第1ヒンジ部63が形成されている。第2連結片7の周方向の一端には、第2ヒンジ部73が形成され、第1ヒンジ部63と回動可能に係合されている。
【0019】
第2連結片7の第2係止受け部75A,75Bの間には、図1に示すように、一本の延設部78が径方向外向きに延設されている。延設部78の先端であって中央には、第1連結片6方向に突起部76が立設している。延設部78の突起部76の反対側には、第1治具引掛け部77が軸方向に突出して形成されている。
第2連結片7の第2ヒンジ部73側には、図2に示すように、外周面に回動作用部74が径方向外側に突出して形成されている。回動作用部74は、第1連結片6と第2連結片7を開いたとき、第1連結片6の端部65に係合し、第2連結片7を一定以上回転しないようにしている。
また、第1連結片6の第1ヒンジ部63付近であって、端部65の内周側には、第1抵抗突起6dが形成されている。第2連結片7の第2ヒンジ部73付近には、第1抵抗突起6dと当接する第2抵抗突起7bが形成されている。第1抵抗突起6dと第2抵抗突起7bが当接することにより、擦れて摩擦力が発生し、自重で回動することを防ぎ、仮固定される。
【0020】
次に、本発明の主要部について説明する。第1連結片6と第2連結片7は、強度と耐腐食性があるPPSを材質とする。従来の特許文献1で使用していたフッ素樹脂であるPVDFの弾性率が、約2500MPであるのに対して、本発明で使用しているPPSの弾性率は、約3800MPであり、PPSは、PVDFと比較して、1.5倍ほど変形しにくい性質を有している。
第1連結片6、及び第2連結片7は、取り付け取り外しに際して互いに弾性変形させる必要があるが、本発明の第1連結片6、及び第2連結片7は、PPS製のため、変形しにくいので、PVDFと同じ力で同じ量変形できるように、薄肉部61、62の厚みを薄くして、作業性を良くしている。
【0021】
図11に、特許文献1で開示したPVDF製の連結部材5´の中央断面図を示し、図12に、図11のBB断面図を示す。また、図13に、本発明のPPS製の連結部材5の中央断面図を示し、図14に、図13のCC断面図を示す。また、図15に、PVDF製の連結部材5´と、本発明のPPS製の連結部材5の肉厚比を示す。
図15において、N4、及びN16という符号は、連結部材の大きさを示す型番である。また、Aは、第1連結片6を示し、Bは、第2連結片7を示している。
図1から図10までは、N16の型番の図を示している。N16とは、内径直径が約16mmの流路を有する流体機器を連結するための連結部材5の型番を意味している。
【0022】
図11図12に示すように、特許文献1のPVDF製の連結部材5´(特許文献1に記載されたものには、番号にダッシュを付している。)の第1連結片6´の円筒肉厚は、aであり、第2連結片7´の円筒肉厚は、bであり、外壁の厚みは、cである。また、図13図14に示すように、本発明のPPS製の連結部材5の第1連結片6の円筒肉厚(薄肉部61、62の円筒肉厚)は、eであり、突状部1の円筒肉厚は、fであり、第2連結片7の円筒肉厚は、gであり、外壁の厚みはhである。突状部1の円筒肉厚fが薄肉部61、62の円筒肉厚eより厚みが大きくなっている量は、(f-e)である。
図15に示すように、型番N16においては、PVDF製の第1連結片6´、第2連結片7´とPSS製の第1連結片6、第2連結片7の肉厚の比率は、第1連結片6の円筒肉厚比 e/a=81%、第2連結片7の円筒肉厚比g/b=37%である。第1連結片6と第2連結片7の外壁の厚み比h/c=83%である。突状部1の肉厚比f/aは100%でe/a=81%と比べ、肉厚になっている。
【0023】
図16に従来のPVDF製の第1連結片6´、及び第2連結片7´に所定の力を加えた時の弾性変形量(単位;mm)を示す。また、図17に本発明のPPS製の第1連結片6、及び第2連結片7に所定の力を加えた時の弾性変形量(単位;mm)を示す。Aは、第1連結片6、6´の変形量を示し、Bは、第2連結片7、7´の弾性変形量を示す。
型番N16で比較すると、従来のPVDF製の第1連結片6´に所定の力Fを加えた時の弾性変形量は、0.196mmであり、第2連結片7´に所定の力Fを加えた時の弾性変形量は、0.163mmであり、両者の平均弾性変形量は、0.180mmであった。
本発明のPPS製の第1連結片6に所定の力Fを加えた時の弾性変形量は、0.184mmであり、第2連結片7に所定の力Fを加えた時の弾性変形量は、0.178mmであり、両者の平均弾性変形量は、0.181mmであった。
この結果により、本発明のPPS製の連結部材5は、従来のPVDF製の連結部材5´と、所定の力Fを加えた時に、同等の弾性変形をしていることがわかる。
【0024】
本発明の第1連結片6及び第2連結片7は、有機溶剤やアルカリ性流体にも使用できるようにするため、PPS製である。そのため、従来の第1連結片6´及び第2連結片7´のPVDF製と比較して、1.5倍程度変形しにくくなっている。本発明の連結部材5は、狭い箇所で使用されることも多いため、変形しにくいことは工場のメンテナンス等において非効率的であり、問題である。
第1連結片6の薄肉部61、62の円筒肉厚eは、従来の第1連結片6´の薄肉部61´、62´の円筒肉厚aと比較して約80%以下の厚みとしており、PPS製の第1連結片6は、PVDF製の第1連結片6´と同程度の力で変形させることができる。
【0025】
また、第2連結片7の円筒肉厚gは、従来の第2連結片7´の円筒肉厚bと比較して、50%以下の厚みとしているので、PPS製の第2連結片7は、PVDF製の第2連結片7´と同程度の力で変形させることができる。第2連結片7は、第1連結片6と比較して、長さが短く剛性が高いため、第1連結片6の薄肉部61、62よりさらに薄くしないと変形しにくい。そのため、第2連結片7の厚みを第1連結片6の薄肉部61、62よりさらに薄くしているのである。
【0026】
次に、突状部1を設けた理由を説明する。第1連結片6の全体の円筒肉厚比を81%として試作したところ、第1連結片6の射出口から遠い部分にウエルドが形成される問題が発生した。図19に、突状部1を設けずに、全体を薄肉部(円筒肉厚比=81%)で構成した場合の射出成型時の金型キャビティへのPPS樹脂の流入状態を示す。図19は、キャビティ全体にPPS樹脂が充填される直前(約0.01秒前)の状態を示している。グラデーションの濃い部分は、先に射出された樹脂を表し、薄い部分は、後から射出された樹脂を表している。白紙の部分は、樹脂が到達していない空白部Sを示している。
図18に、PVDF製の従来の第1連結片6´について、図19と同じタイミングでの樹脂の流入状態を示す。また、図20に、本発明の突状部1を設けた場合について、図19と同じタイミングでの樹脂の流入状態を示す。
【0027】
図18に示す空白部Sの高さSH1と、図20に示す空白部Sの高さSH3とは、ほぼ同じ長さであるが、図19に示す空白部Sの高さSH2は、SH1、SH3と比較して1.5倍ほど長いことがわかる。
空白部Sに対して、この後樹脂が流れ込むのであるが、空白部Sの高さSHがSH2(PPS樹脂製の第1連結片6の突状部がないもの)のように長いと、空白部Sの左右から樹脂が流れ込み、左右から流れ込んだ樹脂同士が衝突する部分でウエルドが発生する恐れが大きい。
【0028】
それと比較して、空白部Sの高さがSH1(従来のPVDF製の第1連結片6´で円筒肉厚が大きいもの)やSH3(本発明のPPS製の第1連結片6の突状部1を有するもの)のように短いと、空白部Sの左右から樹脂が流れ込むことなく、空白部Sがそのまま押しつぶされるように樹脂で埋められるため、ウエルドが発生する恐れがない。
すなわち、有機溶剤やアルカリ性流体を流すためにPPS製の連結部材5を製造するのに、円筒肉厚を薄くして、PVDF製の連結部材5´を製造するときに、円筒肉厚を薄くしたことにより、ウエルドが発生する問題が新たに発生したが、突状部1を設けることにより、ウエルドを発生させることなく、円筒肉厚を薄くして、PVDF製の連結部材5´と同程度の弾性変形を確保することができたのである。
【0029】
次に、第1係止受け部64と第2係止受け部75について説明する。図21に、本発明のPPS製の連結部材5の係止の拡大図(図5のD部拡大図)を示す。
従来のPVDF製の連結部材5´では、第1連結片6´の一部である第1係止受け部64´に力が加わったときに、第1係止受け部64が全体として弾性変形するため、第1係止受け部64が破損するという問題が発生しなかった。
しかし、PPS製の連結部材5では、第1係止受け部64に力が加わったときに、第1連結片6の弾性変形量が少ないため、第1係止受け部64が破損する問題が発生した。
それを防止するため、図21に示すように、第1係止受け部64の第2係止受け部75と当接する当接部64aの形状を円弧形状とした。また、第2係止受け部75の第1係止受け部64と当接する当接部75aの形状をテーパ形状とした。
【0030】
次に、係止部の作用・効果を説明する。
図22(A)に示すように、外部の力F1が係止部に加わった場合、第2係止受け部75の当接部75aのテーパ面が、第1係止受け部64の当接部64aの円弧の一点と当接しているため、第1係止受け部64を斜め下方に押す力F2が発生するため、第1連結片6は、弾性変形しやすい方向に力を受ける。
図22(B)においても、同様に、外れようとする力は、第2係止受け部75の当接部75aのテーパ面が、第1係止受け部64の当接部64aの円弧の一点と当接しているため、第1係止受け部64を斜め下方に押す力F2が発生するため、第1連結片6は、弾性変形しやすい方向に力F3を受ける。
さらに、図22(C)においても、外れる直前の力F2は、第1連結片6を弾性変形させる方向に力F3が作用する。
したがって、第1係止受け部64に作用する力は、常に第1連結片6を弾性変形させる方向に作用する。そのため、第1連結片6が弾性変形するため、第1係止受け部64にかかる力が減少されるため、第1係止受け部64が破損されることを防止できる。
【0031】
以上詳細に説明したように、本発明の連結部材5によれば、
(1)第1接続部を有する第1流体機器と、第2接続部を有する第2流体機器と、第1接続部及び第2接続部の間に配置された環状シール部材と、環状シール部材を介して第1接続部及び第2接続部を接続する連結部材と、を有する流体機器接続構造に用いられる連結部材であって、連結部材5は、第1連結片6と第2連結片7を備え、第1連結片6と第2連結片7の一端に回動連結部を有すること、第1接続部と第2接続部の外形は円形状であること、第1連結片6は、開口部6aを有する概U字形状であり、第1接続部と第2接続部の全周の180度を超えて第2連結片7と係合する連結部材5において、第1連結片6と第2連結片7の材質がPPSであること、第1連結片6と第2連結片7の径方向の厚みが、材質がPVDFで形成された第1連結片6´と第2連結片7´より薄く形成されていること、を特徴とするので、PPS製の連結部材5は、PVDF製の連結部材5´と比較して、弾性変形しにくいが、全体が薄く成形されているため、環状シール部材が内部を流れる液体等の熱により熱変形して膨張した場合でも、PPS製の連結部材5が弾性変形し、環状シール部材との間に隙間が発生することがなく、シール力が低下して液体が漏れる恐れがない。
【0032】
(2)(1)に記載の連結部材において、第1連結片6と第2連結片7のうち、外壁の厚み(c、h)、または円筒の一部の厚み(a)の少なくとも一方が、薄く形成されていること、を特徴とするので、外壁の厚みが変形のし易さを大きく支配するため、第1連結片6、及び第2連結片7をより変形しやすくすることができる。
(3)(1)または(2)に記載の連結部材5において、第1連結片6の円形状外周の軸方向中心位置に突状部1が形成されていること、を特徴とする。
第1連結片6の厚みを薄くしているため、溶融したPPSが流れる金型流路の断面積が小さくなっており、溶融したPPSの射出成型時の流動性が低下している。そのため、第1連結片6を薄く成形しようとすると、溶融したPPSが合流する位置にウエルドが発生する問題があった。特に、金型の内壁に沿って流れた溶融したPPSが円形状外周の軸方向中心位置で合流するため、第1連結片6の円形状外周の軸方向中心位置付近にウエルドが発生していた。ウエルドが発生すると、クランプ強度が低下する恐れがあった。
(3)の連結部材5においては、第1連結片6の円形上外周の軸方向中心位置に突状部1が形成されているので、突状部1の分だけ断面が大きくなり、溶融したPPSが流れ易くなっており、溶融したPPSが両サイドから流れ込まないため、ウエルドができることがなく、クランプ強度が低下する恐れがない。
【0033】
(4)(1)乃至(3)に記載の連結部材のいずれか1つに記載の連結部材5において、第1連結片6に形成された第1係合爪(第1係止受け部64)と、第2連結片7に形成された第2係合爪(第2係止受け部75)が係合されることにより、第1連結片6と第2連結片7とが係合されること、第1係合爪の係合する当接部64aが円弧形状であること、第2係合爪の係合する当接部75aがテーパ形状であること、を特徴とする。
PPS製の連結部材5は、PVDF製の連結部材5´と比較して、1.5倍変形しにくい。そのため、第1係合爪と第2係合爪を係合させようとするときに、第1係合爪に応力集中が発生し、係合爪が破損する問題があった。
(4)の連結部材5においては、第1係合爪の係合する当接部64aが円弧形状であり、かつ第2係合爪の係合する当接部75aがテーパ形状であるので、第1係合爪の係合する第2係合爪の当接部75aがテーパ形状であるため、第1係合爪にかかる力が、第1連結片6を弾性変形させる方向に作用するため、第1係合爪の破損を防止することができる。
また、第1係合爪と第2係合爪とは、常に点で接触し、応力集中するポイントが変化するため、応力集中による第1係合爪の破損を防止できる。
【0034】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、本実施の形態に限定されることなく、様々な応用が可能である。
例えば、本実施例では、第2連結片7には、突状部1を設けなかったが、第2連結片7に突状部を設けてもよい。
また、本実施例では、第1係合爪の係合する部分を円弧形状とし、第2係合爪の係合する部分をテーパ形状としているが、第1係合爪の係合する部分をテーパ形状とし、第2係合爪の係合する部分を円弧形状としていても良い。また、第1係合爪の係合する部分を円弧形状とし、第2係合爪の係合する部分を円弧形状としていても良い。
【符号の説明】
【0035】
1 突状部
5 連結部材
6 第1連結片
61、62 薄肉部
64 第1係止受け部
64a 当接部
7 第2連結片
75 第2係止受け部
75a 当接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22