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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20230901BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230901BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20230901BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20230901BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20230901BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20230901BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
B01J35/04 301L
B01D53/94 280
B01J35/04 301M
B01J37/02 101D
B01J37/04 102
B01J37/08 ZAB
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
F01N3/28 301Q
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019087527
(22)【出願日】2019-05-07
(65)【公開番号】P2020082070
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2018218615
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】大石 隼輔
(72)【発明者】
【氏名】太田 貴也
(72)【発明者】
【氏名】高須 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】岡田 満克
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 実
(72)【発明者】
【氏名】岩田 佳奈
(72)【発明者】
【氏名】東條 巧
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健
(72)【発明者】
【氏名】垣花 大
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏昌
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-058870(JP,A)
【文献】特開2015-085241(JP,A)
【文献】特開2008-302304(JP,A)
【文献】特開2009-255032(JP,A)
【文献】特表2016-513014(JP,A)
【文献】特開2017-200675(JP,A)
【文献】特開2006-026561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 35/04
B01D 53/94
B01J 37/02
B01J 37/04
B01J 37/08
F01N 3/10
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質壁で隔てられた複数の排ガス流路を有するハニカム基材、及び前記ハニカム基材に担持されている1種又は2種以上の触媒貴金属を有する排ガス浄化装置であって、
前記ハニカム基材は、セリア-ジルコニア複合酸化物粒子を構成材料の1種として含み、
前記触媒貴金属は、白金、パラジウム、及びロジウムから成る群から選択され、かつ
前記ハニカム基材は、
前記1種又は2種以上の触媒貴金属のうちの1種である特定貴金属についての、貴金属50質量%担持深さが、前記多孔質壁の表面から前記多孔質壁の内部の中心までの距離の50%未満である貴金属濃化表面部を有しており、
前記貴金属50質量%担持深さは、前記多孔質壁の表面から前記多孔質壁の内部の中心までに担持されている前記特定貴金属の量を基準として、前記特定貴金属の50質量%が担持されている深さであ
前記ハニカム基材は、前記排ガス流路の入口側から、前記ハニカム基材の全長に対して60%以下の入口側部と、それ以外の本体部とから構成されており、前記貴金属濃化表面部が、前記本体部に少なくとも存在しており、
前記ハニカム基材の入口側部における、前記特定貴金属についての貴金属50質量%担持深さが、前記本体部の前記特定貴金属についての貴金属50質量%担持深さよりも大きい、
排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記特定貴金属が、白金又はパラジウムである、請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記特定貴金属が、白金又はパラジウムであり、
前記触媒貴金属がロジウムを含む、
請求項2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記貴金属50質量%担持深さが、前記多孔質壁の表面から前記多孔質壁の内部の中心までの距離の35%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記ハニカム基材を構成する前記入口側部の長さが、前記ハニカム基材の全長に対して10%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項6】
前記ハニカム基材は、前記排ガス流路の入口側から30mm以下の入口側部と、それ以外の本体部とから構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項7】
前記ハニカム基材を構成する前記入口側部の長さが10mm以上である、請求項6に記載の排ガス浄化装置。
【請求項8】
前記ハニカム基材の前記入口側部に担持されている前記特定貴金属の量が、前記本体部に担持されている前記特定貴金属の量よりも多い、請求項~7のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項9】
前記ハニカム基材の前記入口側部に担持されている前記特定貴金属の量が、前記本体部に担持されている前記特定貴金属の量の1.5倍以上5.0倍以下である、請求項8に記載の排ガス浄化装置。
【請求項10】
前記ハニカム基材の気孔率が、30~70%である、請求項1~9のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項11】
前記排ガス流路の少なくとも一部が触媒層を有していない、請求項1~10のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項12】
以下の(a)~(c)を少なくとも含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置の製造方法:
(a)多孔質壁で隔てられた複数の排ガス流路を有するハニカム基材の一方の開口側から、1種又は2種以上の触媒貴金属の塩及び増粘剤を含む溶液を提供すること、ここで前記溶液は、せん断速度380s-1における粘度が10~400mPaであり、前記触媒貴金属は、白金、パラジウム、及びロジウムから成る群から選択される;
(b)前記提供された溶液を、前記ハニカム基材の前記溶液が提供された方とは反対の開口側から吸引すること及び/又は前記ハニカム基材の前記溶液が提供された方の開口側から圧送すること;及び
(c)前記ハニカム基材を乾燥及び/又は焼成すること。
【請求項13】
さらに、以下の(d)を含む、請求項12に記載の方法:
(d)前記ハニカム基材の排ガス流路の入口からその全長の30mm以下の入口側部を含むように、前記触媒貴金属の塩を含む溶液に前記ハニカム基材を浸漬した後、前記ハニカム基材を乾燥及び/又は焼成し、それにより前記入口側部に担持されている前記触媒貴金属の量を、前記入口側部以外の本体部に担持されている前記触媒貴金属の量よりも多くすること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、排ガス浄化装置は、コージェライト等で構成されたハニカム基材上に触媒層が形成される。触媒層は、貴金属触媒粒子、貴金属触媒粒子を担持する担体粒子、及び助触媒粒子を含む。助触媒粒子の1つとして、酸素貯蔵能(OSC)を有するセリア-ジルコニア複合酸化物を用いることが知られている。
【0003】
近年、助触媒粒子のセリア-ジルコニア複合酸化物粒子を、触媒層で用いるのではなく、ハニカム基材の構成材料の1種として用いることが検討されている。例えば、特許文献1は、ハニカム基材がセリア-ジルコニア複合酸化物粒子を含む、排ガス浄化装置を開示している。この排ガス浄化装置には、触媒層が存在しておらず、貴金属を含む溶液にハニカム基材を含浸させることによって、貴金属触媒粒子をハニカム基材に直接添着している。このような排ガス浄化装置は、触媒層が存在していないため熱容量が小さく、ハニカム基材の温度を上昇させやすく、高い暖機性能を得ることができる。
【0004】
このようなハニカム基材及び排ガス浄化装置は、特許文献2及び3においても開示されている。
【0005】
なお、一般的なコージェライト等で構成されたハニカム基材に触媒層を形成するためのコーティング方法として、特許文献4及び5に記載のような方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-85241号公報
【文献】特開2015-77543号公報
【文献】特開2016-34781号公報
【文献】特開2008-302304号公報
【文献】国際公開第2010/114132号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高い排ガス浄化性能を有し、かつセリア-ジルコニア複合酸化物粒子を構成材料の1種として含むハニカム基材を使用した排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以下の態様を有する本発明により、上記課題を解決できることを見出した。
《態様1》
多孔質壁で隔てられた複数の排ガス流路を有するハニカム基材、及び前記ハニカム基材に担持されている1種又は2種以上の触媒貴金属を有する排ガス浄化装置であって、
前記ハニカム基材は、セリア-ジルコニア複合酸化物粒子を構成材料の1種として含み、
前記触媒貴金属は、白金、パラジウム、及びロジウムから成る群から選択され、かつ
前記ハニカム基材は、
前記1種又は2種以上の触媒貴金属のうちの1種である特定貴金属についての、貴金属50質量%担持深さが、前記多孔質壁の表面から前記多孔質壁の内部の中心までの距離の50%未満である貴金属濃化表面部を有しており、
前記貴金属50質量%担持深さは、前記多孔質壁の表面から前記多孔質壁の内部の中心までに担持されている前記特定貴金属の量を基準として、前記特定貴金属の50質量%が担持されている深さである、
排ガス浄化装置。
《態様2》
前記特定貴金属が、白金又はパラジウムである、態様1に記載の排ガス浄化装置。
《態様3》
前記特定貴金属が、白金又はパラジウムであり、
前記触媒貴金属がロジウムを含む、
態様2に記載の排ガス浄化装置。
《態様4》
前記ハニカム基材は、前記排ガス流路の入口側から、前記ハニカム基材の全長に対して60%以下の入口側部と、それ以外の本体部とから構成されており、前記貴金属濃化表面部が、前記本体部に少なくとも存在している、態様1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
《態様5》
前記ハニカム基材を構成する前記入口側部の長さが、前記ハニカム基材の全長に対して10%以上である、態様4に記載の排ガス浄化装置。
《態様6》
前記ハニカム基材は、前記排ガス流路の入口側から30mm以下の入口側部と、それ以外の本体部とから構成されており、前記貴金属濃化表面部が、前記本体部に少なくとも存在している、態様1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
《態様7》
前記ハニカム基材を構成する前記入口側部の長さが10mm以上である、態様6に記載の排ガス浄化装置。
《態様8》
前記ハニカム基材の前記入口側部に担持されている前記特定貴金属の量が、前記本体部に担持されている前記特定貴金属の量よりも多い、態様4~7のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
《態様9》
前記ハニカム基材の入口側部における、前記特定貴金属についての貴金属50質量%担持深さが、前記本体部の前記特定貴金属についての貴金属50質量%担持深さよりも大きい、態様4~8のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
《態様10》
前記ハニカム基材の気孔率が、30~70%である、態様1~9のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
《態様11》
前記排ガス流路の少なくとも一部が触媒層を有していない、態様1~10のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
《態様12》
以下の(a)~(c)を少なくとも含む、排ガス浄化装置の製造方法:
(a)多孔質壁で隔てられた複数の排ガス流路を有するハニカム基材の一方の開口側から、1種又は2種以上の触媒貴金属の塩及び増粘剤を含む溶液を提供すること、ここで前記溶液は、せん断速度380s-1における粘度が10~400mPaであり、前記触媒貴金属は、白金、パラジウム、及びロジウムから成る群から選択される;
(b)前記提供された溶液を、前記ハニカム基材の前記溶液が提供された方とは反対の開口側から吸引すること及び/又は前記ハニカム基材の前記溶液が提供された方の開口側から圧送すること;及び
(c)前記ハニカム基材を乾燥及び/又は焼成すること。
《態様13》
さらに、以下の(d)を含む、態様12に記載の方法:
(d)前記ハニカム基材の排ガス流路の入口からその全長の30mm以下の入口側部を含むように、前記触媒貴金属の塩を含む溶液に前記ハニカム基材を浸漬した後、前記ハニカム基材を乾燥及び/又は焼成し、それにより前記入口側部に担持されている前記触媒貴金属の量を、前記入口側部以外の本体部に担持されている前記触媒貴金属の量よりも多くすること。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(a)は、本発明の排ガス浄化装置の一態様を概略的に示した斜視図である。図1(b)は、本発明の排ガス浄化装置の一態様を概略的に示した側面断面図である。
図2図2は、本発明の排ガス浄化装置のハニカム基材の多孔質壁を拡大して概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《排ガス浄化装置》
本発明の排ガス浄化装置は、多孔質壁で隔てられた複数の排ガス流路を有するハニカム基材、及びハニカム基材に担持されている1種又は2種以上の触媒貴金属を有する。
【0011】
本発明の排ガス浄化装置における触媒貴金属は、白金族元素であってよく、具体的には例えば、白金、パラジウム、及びロジウムから成る群から選択される1種又は2種以上であってよい。本発明における触媒貴金属は、白金及び/又はパラジウムを含む貴金属であってよく、白金又はパラジウムを含む貴金属であってよく、白金及び/又はパラジウムとロジウムとを含む貴金属であってよく、特に、白金又はパラジウムと、ロジウムとを含む貴金属であってよい。
【0012】
本発明の排ガス浄化装置におけるハニカム基材は、
セリア-ジルコニア複合酸化物粒子を構成材料の1種として含んでおり、かつ
1種又は2種以上の触媒貴金属のうちの1種である特定貴金属についての、貴金属50質量%担持深さが多孔質壁の表面から前記多孔質壁の内部の中心までの距離の50%未満である、貴金属濃化表面部を有している。
【0013】
本発明者らは、セリア-ジルコニア複合酸化物粒子を構成材料の1種として含むハニカム基材に貴金属触媒粒子を担持させる検討を行っていたところ、触媒貴金属の塩を含む溶液の粘度を調整してハニカム基材に塗工することによって、これらの触媒貴金属粒子が担持される基材表面からの深さが変わることを発見した。それに対して、本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載の方法では、すなわち、例えばパラジウム塩の溶液にハニカム基材を含浸させることによってパラジウムをハニカム基材に担持させる方法では、ハニカム基材の内部にまで均一にパラジウムが担持されていることがわかった。
【0014】
そこで、本発明者らは、触媒貴金属の塩を含む溶液の粘度を調整することで、基材の排ガス流路の表面近傍に高い濃度で触媒貴金属を担持させたところ、排ガス浄化装置の浄化率を向上できることを見出した。これは、触媒貴金属が、排ガス流路の表面に高い濃度で存在していることで、排ガスと触媒貴金属との接触確率が高くなったためと考えられる。
【0015】
本発明は、ハニカム基材は、1種又は2種以上の触媒貴金属のうちの1種である特定貴金属についての、貴金属50質量%担持深さが、多孔質壁の表面から多孔質壁の内部の中心までの距離の50%未満である貴金属濃化表面部を有していることを要件とする。
【0016】
本明細書において、「貴金属50質量%担持深さ」とは、任意の位置の、多孔質壁の表面から多孔質壁の内部の中心までに担持されている特定貴金属の量を基準として、特定貴金属の50質量%が担持されている深さである。図2に示すように、多孔質壁の表面から壁の中心までの間に、貴金属50質量%担持深さが存在している。特定貴金属が、多孔質壁の深さ方向に完全に均一の濃度で担持されている場合には、貴金属50質量%担持深さは、多孔質壁の表面から壁の中心までの間の中間位置の深さになる。貴金属50質量%担持深さが、壁の表面から壁の中心までの距離の50%よりも小さいこと(換言すると、壁の厚さの25%よりも小さいこと)は、多孔質壁の表面側に、より多くの特定貴金属が担持されていることを意味する。
【0017】
貴金属濃化表面部において、特定貴金属についての貴金属50質量%担持深さは、多孔質壁の表面から多孔質壁の内部の中心までの距離の50%未満、46%以下、40%以下、35%以下、30%以下、又は25%以下であってもよい。これらの数値を、多孔質壁の厚さ基準で表すと、貴金属濃化表面部において、特定貴金属についての貴金属50質量%担持深さは、多孔質壁の厚さの25%未満、23%以下、20%以下、17.5%以下、15%以下、又は12.5%以下であってもよい。具体的には、貴金属濃化表面部において、特定貴金属についての貴金属50質量%担持深さは、平均で、25μm以内、22.5μm以内、20μm以内、17.5μm以内、15μm以内、12.5μm以内、又は10μm以内であってもよい。
【0018】
貴金属濃化表面部において、特定貴金属についての貴金属50質量%担持深さは、3箇所以上の位置における平均値とすることができる。
【0019】
貴金属濃化表面部は、ハニカム基材の排ガス流路の全体に渡って存在していてもよく、その一部に存在していてもよい。例えば、貴金属濃化表面部は、ハニカム基材の排ガス流路の全長の1/10以上、1/5以上、1/3以上、1/2以上又は2/3以上の長さにわたっていてもよく、2/3以下、1/2以下、1/3以下、1/5以下、又は1/10以下の長さにわたっていてもよい。
【0020】
ハニカム基材の排ガス流路の入口側から所定の長さまでの部分を、ハニカム基材の入口側部とし、それ以外の部分を、ハニカム基材の本体部と定義した場合、貴金属濃化表面部は、少なくとも本体部に存在していることが好ましい。ハニカム基材の入口側部の長さは、排ガス流路の全長の10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、又は60%以上であってよく、排ガス流路の全長の60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、又は10%以下であってよい。ハニカム基材の入口側部の長さは、例えば10mm以上であってよく、例えば30mm以下であってもよい。ガス流路の全長を80mmとした場合、入口側部の長さ10mmはガス流路全長の12.5%に相当入口側部の長さ30mmはガス流路全長の37.5%に相当する。
【0021】
貴金属濃化表面部における特定貴金属は、白金、パラジウム、及びロジウムから成る群から選択される1種であってよく、白金又はパラジウムであってよい。
【0022】
また、本発明者らは、排ガスの入口側に多くの触媒貴金属を担持させることによって、本発明の排ガス浄化装置がより有利になることを見出した。排ガスの入口側に多くの触媒貴金属を担持させた場合、本発明の排ガス浄化装置の暖機性能を非常に高めることができた。これは、排ガス浄化装置は、その使用中に、入口側から温度が上がっていくため、入口側に触媒貴金属が多く存在していることで、運転初期においても比較的高い温度で、排ガスと触媒貴金属とを反応させることができ、より効果的に排ガスを浄化させることができると考えられる。
【0023】
したがって、触媒貴金属は、ハニカム基材の入口側部に多く担持されていることが好ましく、入口側部に担持されている触媒貴金属の量は、本体部に担持されている触媒貴金属の量よりも多いことが好ましい。
【0024】
例えば、入口側部に担持されている触媒貴金属の量は、本体部に担持されている触媒貴金属の量の、1.1倍以上、1.3倍以上、1.5倍以上、2.0倍以上、3.0倍以上、又は5.0倍以上であってもよく、10倍以下、5.0倍以下、3.0倍以下、又は2.0倍以下であってもよい。
【0025】
さらに、排ガス浄化装置の入口側部では、本体部よりも、触媒貴金属を深い位置にまで担持させることが、特に効果的であることがわかった。これは、排ガス浄化装置の入口側部を流れる排ガスには、浄化すべき排ガス成分がより多く含まれているのに対して、本体部を流れる排ガスには、浄化すべき排ガス成分がより少なくなっていることから、入口側部において、ハニカム基材の多孔質壁の内部にまで触媒貴金属を担持させて排ガスをしっかりと浄化し、少なくとも本体部に存在する貴金属濃化表面部において、残りの排ガスを浄化することが、貴金属の分配の観点から有利であるためである。
【0026】
したがって、入口側部の貴金属50質量%担持深さは、本体部の貴金属50質量%担持深さよりも大きいことが好ましく、例えば入口側部の貴金属50質量%担持深さは、本体部の貴金属50質量%担持深さの1.05倍、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.5倍、又は2.0倍であってもよく、3.0倍以下、2.5倍以下、2.0倍以下、又は1.5倍以下であってもよい。
【0027】
排ガス浄化装置の入口側部において、本体部よりも深い位置にまで担持させる触媒貴金属は、白金、パラジウム、及びロジウムから成る群から選択される1種であってよく、白金又はパラジウムであってよい。排ガス浄化装置の入口側部で本体部よりも深い位置にまで担持させる触媒貴金属は、基材の貴金属濃化表面部における特定貴金属と同種のものであってもよいし、異なる種類のものであっていてもよい。
【0028】
しかしながら、入口側部でハニカム基材の多孔質壁の内部にまで触媒貴金属を担持させて排ガスをしっかりと浄化し、次いで貴金属濃化表面部で残りの排ガスを浄化するとの観点からは、排ガス浄化装置の入口側部で本体部よりも深い位置にまで担持させる触媒貴金属は、貴金属濃化表面部における特定貴金属と同種のものであってよい。
【0029】
したがって、
ハニカム基材の入口側部に担持されている特定貴金属の量は、本体部に担持されている特定貴金属の量よりも多くてよく、 ハニカム基材の入口側部における、前記特定貴金属についての貴金属50質量%担持深さが、前記本体部の前記特定貴金属についての貴金属50質量%担持深さよりも大きくてよい。
【0030】
図1(a)は、本発明の排ガス浄化装置の一態様を概略的に示した斜視図であり、図1(b)は、本発明の排ガス浄化装置の一態様を概略的に示した側面断面図である。排ガス浄化装置10は、ハニカム基材の多孔質壁1で隔てられた複数の排ガス流路2を有するハニカム基材を有する。ハニカム基材の排ガス流路2の入口側からその全長の例えば1/4以下を、ハニカム基材の入口側部aとし、それ以外の部分を、ハニカム基材の本体部bとすることができ、入口側部aに担持されている触媒貴金属、例えば白金及び/又はパラジウム、特に白金又はパラジウムの量は、本体部bに担持されている触媒貴金属、例えば白金及び/又はパラジウム、特に白金又はパラジウムの量よりも多いことが好ましい。図1(b)の破線の丸印を拡大した部分が、図2に示されている。
【0031】
〈ハニカム基材〉
本発明の排ガス浄化装置で用いられるハニカム基材は、セリア-ジルコニア複合酸化物粒子を構成材料の1種として含む。すなわち、そのハニカム基材は、現在用いられているようなコージェライト製のハニカム基材とは異なり、例えば、特許文献1~3に開示されているようなハニカム基材である。
【0032】
例えば、ハニカム基材は、セリア-ジルコニア複合酸化物粒子を20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、又は70質量%以上で含んでいてもよく、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、又は40質量%以下で含んでいてもよい。 例えば、ハニカム基材は、セリア-ジルコニア複合酸化物粒子を30質量%以上95質量%以下又は50質量%以上90質量%以下で含んでいてもよい。セリア-ジルコニア複合酸化物粒子は、排ガス浄化装置の分野において、酸素貯蔵材として用いられる粒子であり、セリアとジルコニアとの固溶体の粒子であってもよい。この固溶体には、さらにランタン(La)、イットリウム(Y)等の希土類元素が固溶していてもよい。
【0033】
また、ハニカム基材は、従来技術において貴金属触媒粒子の担体として用いられていたような担体粒子、例えばアルミナ粒子を含んでいてもよく、さらにアルミナ、ジルコニア、イットリア、チタニア、シリカ等の無機バインダーを含んでいてもよい。さらに、ハニカム基材は、特許文献1に記載のようなθ層のアルミナ粒子、及び/又は特許文献2に記載のようなタングステン複合酸化物粒子を含んでいてもよい。
【0034】
ハニカム基材は、多孔質壁で隔てられた複数の排ガス流路を有する。排ガス流路は、各流路が直線状かつ平行に並んで、格子状に配置されている複数のセルを有し、これら複数のセルは、入り口側及び出口側の双方に開口している、いわゆるストレートフロー型のハニカム基材であってもよい。また、多孔質の隔壁によって区画された複数のセルを有し、これら複数のセルは、入口側が開口して出口側が封止された入口側セルと、出口側が開口して入口側が封止された出口側セルとから構成される、いわゆるウォールフロー型のハニカム基材であってもよい。
【0035】
排ガス流路の数は、セル数と呼ばれており、平方インチ当たりの排ガス流路の数で表される。ハニカム基材のセル数は、30セル/inch以上、50セル/inch以上、100セル/inch以上、200セル/inch以上、300セル/inch以上、400セル/inch以上、600セル/inch以上、又は800セル/inch以上であってもよく、1200セル/inch以下、1000セル/inch以下、800セル/inch以下、500セル/inch以下、又は300セル/inch以下であってもよい。例えば、ハニカム基材のセル数は、100セル/inch以上1200セル/inch以下、又は200セル/inch以上1000セル/inch以下であってもよい。
【0036】
ハニカム基材の排ガス流路の長さ又はハニカム基材の長さは、50mm以上、60mm以上、80mm以上、100mm以上、120mm以上、又は150mm以上であってもよく、300mm以下、250mm以下、200mm以下、150mm以下、又は120mm以下であってもよい。例えば、ハニカム基材の排ガス流路の長さ又はハニカム基材の長さは、50mm以上300mm以下、又は60mm以上200mm以下であってもよい。
【0037】
ハニカム基材の断面積は、60cm以上、80cm以上、100cm以上、120cm以上、又は150cm以上であってもよく、300cm以下、250cm以下、200cm以下、150cm以下、又は120cm以下であってもよい。例えば、ハニカム基材の断面積は、60cm以上300cm以下、又は100cm以上250cm以下であってもよい。
【0038】
ハニカム基材の容量は、500cc以上、600cc以上、800cc以上、1000cc以上、又は1500cc以上であってもよく、3000cc以下、2500cc以下、2000cc以下、1500cc以下、又は1200cc以下であってもよい。例えば、ハニカム基材の容量は、500cc以上3000cc以下、又は600cc以上1500cc以下であってもよい。
【0039】
ハニカム基材の多孔質壁の厚さは、特に限定されないが、50μm以上、70μm以上、80μm以上、100μm以上、120μm以上、又は150μm以上であってもよく、300μm以下、200μm以下、150μm以下、又は120μm以下であってもよい。例えば、ハニカム基材の多孔質壁の厚さは、50μm以上300μm以下、又は70μm以上150μm以下であってもよい。
【0040】
ハニカム基材の気孔率は、特に限定されないが、例えば30%以上、40%以上、50%以上、又は60%以上であってもよく、80%以下、70%以下、又は60%以下であってもよい。気孔率は、多孔質体の材質による理論的な中実体の重量に対する、多孔質体の重量の割合から求めることができる。例えば、ハニカム基材の気孔率は、30%以上70%以下、又は40%以上60%以下であってもよい。
【0041】
ハニカム基材の比表面積は、特に限定されないが、例えば10m/g以上、20m/g以上、又は30m/g以上であってもよく、200m/g以下、100m/g以下、又は50m/g以下であってもよい。比表面積は、窒素吸着法を用いる、Macsorb(商標) HM model-1230(株式会社マウンテック)によってBET流動法から求めることができる。例えば、ハニカム基材の比表面積は、10m/g以上200m/g以下、又は20m/g以上100m/g以下であってもよい。
【0042】
〈触媒貴金属粒子〉
本発明の排ガス浄化装置における触媒貴金属は、例えば、白金、パラジウム、及びロジウムから成る群から選択される1種以上であってよい。
【0043】
本発明の排ガス浄化装置は、触媒貴金属粒子として、例えば、ハニカム基材に担持された白金及び/又はパラジウムを少なくとも有していてよい。白金及び/又はパラジウムは、ハニカム基材に、ハニカム基材全体の容量を基準として、0.10g/L以上、0.30g/L以上、0.50g/L以上、0.80g/L以上、1.00g/L以上、1.50g/L以上、2.00g/L以上、又は3.00g/L以上で担持されていてもよく、6.00g/L以下、4.00g/L以下、3.00g/L以下、2.00g/L以下、1.50g/L以下、1.20g/L以下、又は1.00g/L以下で担持されていてもよい。例えば、白金及び/又はパラジウムは、ハニカム基材全体の容量を基準として、0.30g/L以上6.00g/L以下、又は0.50g/L以上3.00g/L以下で担持されていてもよい。
【0044】
白金及び/又はパラジウムは、ハニカム基材の入口側部に、入口側部の容量を基準として、0.80g/L以上、1.00g/L以上、1.50g/L以上、2.00g/L以上、又は3.00g/L以上で担持されていてもよく、8.00g/L以下、6.00g/L以下、5.00g/L以下、4.00g/L以下、又は3.00g/L以下で担持されていてもよい。例えば、白金及び/又はパラジウムは、ハニカム基材の入口側部に、入口側部の容量を基準として、1.00g/L以上8.00g/L以下、又は2.00g/L以上5.00g/L以下で担持されていてもよい。また、白金及び/又はパラジウムは、ハニカム基材の本体部に、本体部の容量を基準として、0.50g/L以上、0.30g/L以上、0.50g/L以上、0.80g/L以上、1.00g/L以上、1.50g/L以上、2.00g/L以上、又は3.00g/L以上で担持されていてもよく、6.00g/L以下、4.00g/L以下、3.00g/L以下、2.00g/L以下、1.50g/L以下、1.20g/L以下、又は1.00g/L以下で担持されていてもよい。例えば、白金及び/又はパラジウムは、ハニカム基材の本体部に、本体部の容量を基準として、0.30g/L以上6.00g/L以下、又は0.50g/L以上3.00g/L以下で担持されていてもよい。
【0045】
本発明の排ガス浄化装置は、触媒貴金属粒子として、さらにロジウムを有することができる。ロジウムは、ハニカム基材全体の容量を基準として、0.10g/L以上、0.30g/L以上、0.50g/L以上、0.80g/L以上、又は1.00g/L以上で担持されていてもよく、1.50g/L以下、1.20g/L以下、1.00g/L以下、0.80g/L以下、又は0.50g/L以下で担持されていてもよい。例えば、ロジウムは、ハニカム基材全体の容量を基準として、0.10g/L以上1.50g/L以下、又は0.30g/L以上1.00g/L以下で担持されていてもよい。
【0046】
〈触媒層〉
本発明の排ガス浄化装置の少なくとも一部には、従来技術においてコージェライト系のハニカム基材等に形成されていたような触媒層を有していないことが好ましい。したがって、本発明の排ガス浄化装置には、ハニカム基材の排ガス流路の少なくとも一部に、そのハニカム基材と実質的に異なる組成を有する触媒層が存在していない。
【0047】
《排ガス浄化装置の製造方法》
本発明の排ガス浄化装置の製造方法は、多孔質壁で隔てられた複数の排ガス流路を有するハニカム基材の一方の開口側から、触媒貴金属の塩及び増粘剤を含む溶液を提供すること;提供された溶液を、ハニカム基材の前記溶液が提供された方とは反対の開口側から吸引すること及び/又はハニカム基材の前記溶液が提供された方の開口側から圧送すること;及びハニカム基材を乾燥及び/又は焼成することを含み、ここで溶液は、せん断速度380s-1における粘度が10~400mPaである。本発明の排ガス浄化装置の製造方法は、例えば、ハニカム基材の入口側から、触媒貴金属の塩及び増粘剤を含む溶液を提供すること;提供された溶液を、ハニカム基材の出口側から吸引すること及び/又はハニカム基材の入口側から圧送すること;及びハニカム基材を乾燥及び/又は焼成することを含んでいてよい。
【0048】
触媒貴金属の塩を含む溶液に増粘剤を加えることによって、溶液の粘度を調整して、貴金属50質量%担持深さを小さくすることができ、すなわち多孔質壁の表面側に触媒貴金属を濃化させることができる。その溶液のせん断速度380s-1における粘度は、粘度計TV-33型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて、25℃で、回転数を1~100rpmで変更をし、1°34’×R24の円錐平板型のコーンを使用して測定した場合に、10mPa以上、50mPa以上、又は100mPa以上であってもよく、400mPa以下、300mPa以下、又は200mPa以下であってもよい。また、その溶液のせん断速度4s-1における粘度は、粘度計TVE-30H(東機産業株式会社製)を用いて常温で測定して、100mPa以上、500mPa以上、1000mPa以上、3000mPa以上、又は5000mPa以上であってもよく、30000mPa以下、10000mPa以下、7000mPa以下、5000mPa以下、又は3000mPa以下であってもよい。
【0049】
触媒貴金属のうち、白金及び/又はパラジウムの塩としては、白金及び/又はパラジウムの強酸塩を挙げることができ、特に白金及び/又はパラジウムの硝酸塩又は硫酸塩を挙げることができる。また、その溶液にロジウムの塩を含有させる場合、同様の塩を用いることができる。また、溶液は、従来技術において触媒貴金属の担体として用いられてきたアルミナ、シリカ、セリア-ジルコニア複合酸化物等の無機酸化物の担体粒子を含有しなくてもよい。
【0050】
増粘剤としては、ヒドロキシルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子を挙げることができる。
【0051】
触媒貴金属の塩及び増粘剤を含む溶液をハニカム基材に塗工する方法については、特許文献4を参照することができる。
【0052】
ハニカム基材を乾燥する際には、乾燥温度は、例えば50℃以上、100℃以上、150℃以上であってもよく、200℃以下、又は150℃以下であってもよい。例えば、乾燥温度は、100℃以上200℃以下であってもよい。乾燥時間は、1時間以上、2時間以上、又は5時間以上であってもよく、10時間以下又は5時間以下であってもよい。例えば、乾燥時間は、1時間以上10時間以下であってもよい。また、ハニカム基材を焼成する際には、焼成温度は、例えば400℃以上、500℃以上、550℃以上、又は600℃以上であってもよく、1000℃以下、800℃以下、又は700℃以下であってもよい。例えば、焼成温度は、400℃以上1000℃以下、又は500℃以上800℃以下であってもよい。焼成時間は、30分以上、1時間以上、2時間以上、又は4時間以上であってもよく、12時間以下、10時間以下、又は8時間以下であってもよい。例えば、焼成時間は、30分以上12時間以下、又は1時間以上8時間以下であってもよい。
【0053】
本発明の排ガス浄化装置の製造方法によって得られる排ガス浄化装置は、上述した本発明の排ガス浄化装置であってもよい。また、本発明の排ガス浄化装置の製造方法の各構成については、本発明の排ガス浄化装置に関して上述した各構成を参照することができる。
【0054】
本発明の排ガス浄化装置の製造方法は、ハニカム基材の排ガス流路の入口から所定の長さの入口側部を含むように、触媒貴金属の塩を含む溶液にハニカム基材を浸漬した後、溶液から取り出し、ハニカム基材を乾燥及び/又は焼成すること、をさらに含んでもよい。この場合において、入口側部の一部又は全てをその溶液に浸漬してもよく、また入口側部以外の本体部の一部までを含めて、その溶液に浸漬させてもよい。
【0055】
この工程を含むことによって、ハニカム基材の入口側部に、本体部よりも多くの触媒貴金属を担持させることができる。また、ハニカム基材を溶液に浸漬させて触媒貴金属を担持させるため、入口側部の貴金属50質量%担持深さのみを大きくすることができる。これによって、得られる排ガス浄化装置に、高い暖機性能を与えることができ、また貴金属の分配を効率化させることができる。この工程によって用いられる溶液については、上述の塗工に用いられる溶液と同一であってもよいが、増粘剤を含まなくてよい。
【0056】
この工程は、ハニカム基材を乾燥及び/又は焼成する工程の後に行ってもよく、乾燥及び/又は焼成をする工程の前に行ってもよい。この工程を、ハニカム基材を乾燥及び/又は焼成する工程の後に行う場合には、この工程の後に、さらに上述のようなハニカム基材を乾燥及び/又は焼成する工程を行うことができる。
【0057】
本発明を以下の実施例でさらに具体的に説明をするが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【実施例
【0058】
《製造例》
〈実施例1〉
基材として、容量860cc、基材長さ80mm、直径117mm、セル数400セル/inch、壁厚120μmで、かつセリア換算重量21重量%及びジルコニア換算重量25重量%でセリア-ジルコニア複合酸化物を含む、セリア-ジルコニア系(CZ系)のモノリス型ハニカム基材を用いた。セル形状は四角であった。特許文献4に記載方法で、このハニカム基材にコーティング溶液を流し込み、ブロワーを用いて不要な溶液を吹き払った。ここで、そのコーティング溶液は、純水中に、ハニカム基材単位容量あたりの質量として、パラジウム(Pd)換算量0.12wt%の硝酸パラジウム、ロジウム(Rh)換算量0.06wt%の硝酸ロジウム、及び増粘剤(ヒドロキシエチルセルロース、株式会社ダイセル)を含有しており、粘度計TV33型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて、25℃で、回転数を1~100rpmで変更し、1°34’×R24の円錐平板型のコーンを使用して測定したせん断速度380s-1における粘度が300mPaであった。その後、120℃の乾燥機中で2時間乾燥させ、次いで500℃の電気炉中で2時間の焼成を行った。その際の、基材上のパラジウム及びロジウムの担持量は、それぞれ0.51g/L及び0.24g/Lであった。
【0059】
その後、ハニカム基材の排ガス流路の入口側から20mmまでの位置に、ハニカム基材1個当たりのパラジウム量として、1.1g/個のパラジウムをさらに担持させるために、ハニカム基材の前側を、硝酸パラジウム水溶液に漬けて吸水担持させた。その後、ハニカム基材を溶液から取り出して、ブロワーを用いて不要な溶液を吹き払った後、120℃の乾燥機中で2時間乾燥させ、次いで500℃の電気炉中で2時間の焼成を行った。これにより、実施例1の排ガス浄化装置を得た。
【0060】
〈実施例2〉
ハニカム基材の排ガス流路の入口側から32mmまでの位置に、ハニカム基材1個当たりのパラジウム量として、1.1g/個のパラジウムをさらに担持させたこと以外は、実施例1と同様に、実施例2の排ガス浄化装置を得た。
【0061】
〈実施例3〉
コーティング溶液の増粘剤を増量して、せん断速度380s-1における粘度を200mPaとしたこと以外は、実施例1と同様に、実施例3の排ガス浄化装置を得た。
【0062】
〈比較例1〉
基材として、容量875cc、直径118mm、600セル4角、壁厚3milのコージェライト系(Co系)のモノリス型ハニカム基材を用いた。硝酸パラジウム、酸化ランタン複合化アルミナ、セリア-ジルコニア複合酸化物、硝酸バリウム、アルミナゾル系バインダーを含む下層用スラリーを調製し、特許文献4に記載の方法で、ハニカム基材に下層用スラリーを流し込み、ブロワーを用いて不要なスラリーを吹き払った。その後、120℃の乾燥機中で2時間乾燥させ、次いで500℃の電気炉中で2時間の焼成を行って、ハニカム基材に下層を形成した。この下層は、ハニカム基材単位容量あたりの質量として、0.7g/Lのパラジウム、50g/Lのアルミナ、50g/Lのセリア-ジルコニア複合酸化物、及び5g/Lの硫酸バリウムを有していた。
【0063】
次に、硝酸ロジウム、酸化ランタン複合化アルミナ、セリア-ジルコニア複合酸化物、硝酸バリウム、アルミナゾル系バインダーを含む上層用スラリーを調製し、下層を形成した時と同様にして、下層の上に上層を形成した。この上層は、ハニカム基材単位容量あたりの質量として、0.2g/Lのロジウム、55g/Lのアルミナ、及び50g/Lのセリア-ジルコニア複合酸化物を有していた。これにより、比較例1の排ガス浄化装置を得た。
【0064】
〈比較例2〉
実施例1で用いた、セリア-ジルコニア複合酸化物を構成材料として含むハニカム基材に、特許文献1に記載の方法でかつ実施例1で用いたのと同じ重量で、パラジウム及びロジウムを担持させた。具体的には、硝酸ロジウムと塩化ロジウムとを必要量分散させた水溶液中に基材を浸漬させて一定時間放置することにより、ハニカム基材にパラジウム及びロジウムを担持させた。
【0065】
《試験方法》
〈パラジウム(Pd)50%担持深さ〉
基材の壁の表面から壁の中心部までの深さ方向に存在しているパラジウムの全量のうち、50質量%のパラジウムが存在する表面からの貴金属50質量%担持深さを調べた。例えば、表1では、120μmの厚さの壁の実施例1において貴金属50質量%担持深さが20μmとなっているが、これは壁の表面から20μmの範囲に50%のパラジウムが担持されており、表面から20μm超60μmまでの範囲に残りの50%のパラジウムが担持されていることを意味している。表1では、多孔質壁の表面から多孔質壁の中心までの距離(60μm)に対する貴金属50質量%担持深さ、及び多孔質壁の厚さ(120μm)に対する貴金属50質量%担持深さも併せて示した。
【0066】
この担持深さの分析は、排ガス浄化触媒を樹脂埋めして切断し、その多孔質壁について、FE-EPMA(JXA-8530F、日本電子株式会社)を用いて測定した。具体的には、視野倍率400倍、最小のビーム径、20kVの加速電圧、100nAの照射電流、50秒の収集時間として、ピクセル数を256×256として、パラジウムの分布を測定することで、上記のような貴金属50質量%担持深さを決定した。
【0067】
〈暖機特性及びHC浄化率〉
各例の排ガス浄化装置を、V型8気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、触媒床温950℃で50時間にわたって、ストイキ及びリーンの各雰囲気の排ガスを一定時間ずつ繰り返して流した。
【0068】
その後、排ガス浄化装置を、直列4気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し直し、空燃比(A/F)14.4、排ガス質量流速Ga=19g/sの排ガスを供給して、炭化水素(HC)の50%浄化率の到達時間(=暖機特性(~500℃))を評価した。
【0069】
また、空燃比(A/F)14.2、排ガス質量流速Ga=24g/sの排ガスを供給して、触媒床温500℃での炭化水素(HC)浄化率を測定した。
【0070】
《結果》
その結果を、以下の表に示す:
【表1】
【符号の説明】
【0071】
1 多孔質壁
2 排ガス流路
a 入口側部
b 本体部
10 排ガス浄化装置
図1
図2