(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】エアクッションユニット、保護装置および固定用金具
(51)【国際特許分類】
H01B 17/00 20060101AFI20230901BHJP
H01B 17/58 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
H01B17/00 Z
H01B17/58 Z
(21)【出願番号】P 2019104504
(22)【出願日】2019-06-04
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】弁理士法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加治川 俊晴
(72)【発明者】
【氏名】福井 基文
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼安 賢
(72)【発明者】
【氏名】山下 大地
(72)【発明者】
【氏名】菅原 大稀
(72)【発明者】
【氏名】奥田 将吾
(72)【発明者】
【氏名】白川 勤
(72)【発明者】
【氏名】石井 哲也
(72)【発明者】
【氏名】濁川 晃
(72)【発明者】
【氏名】村井 是博
(72)【発明者】
【氏名】工藤 一暁
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 瑠璃香
(72)【発明者】
【氏名】青柳 玲矢
(72)【発明者】
【氏名】小野 克浩
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-120708(JP,A)
【文献】特開平07-057575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 17/00
H01B 17/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
碍子の外周を囲うような形状で前記碍子の外径より大きい内径を有し、前記碍子の外周を覆って配置され
、圧縮空気が注入もしくは排出されることにより鉛直方向に伸縮可能な
前記碍子保護用の伸縮部材を有するエアクッションユニット。
【請求項2】
前記伸縮部材は、鉛直方向に積層された鉛直方向に伸縮可能な複数のエア収容部から形成されており、
隣接して積層されている前記エア収容部は、通気口で接続されており、
前記エア収容部それぞれの鉛直方向の長さは、圧縮空気が注入もしくは排出されることにより変化する、
請求項1に記載のエアクッションユニット。
【請求項3】
複数の前記エア収容部の何れかに、前記エア収容部に圧縮空気を注入するホースが接続されるカプラーを有する、
請求項2に記載のエアクッションユニット。
【請求項4】
前記伸縮部材の鉛直方向の一端が接続され、前記碍子の外周を囲って配置される上枠と、
前記伸縮部材の鉛直方向の他端が接続され、前記碍子の外周を囲って配置される下枠と、
を有する、
請求項1から3の何れか一項に記載のエアクッションユニット。
【請求項5】
鉛直方向の一端が前記上枠に接続され、鉛直方向の他端が前記下枠に接続され、前記伸縮部材の鉛直方向の伸縮に伴って伸縮する伸縮棒を有する、
請求項4に記載のエアクッションユニット。
【請求項6】
前記上枠及び前記下枠は、PVCで形成されている、
請求項4に記載のエアクッションユニット。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載のエアクッションユニットと、
前記エアクッションユニットに供給する圧縮空気の圧力を調整するエア供給圧調整ユニットと、
前記エア供給圧調整ユニットに圧縮空気を供給するエアコンプレッサと、
を有する保護装置。
【請求項8】
請求項1から6の何れか一項に記載のエアクッションユニットを固定する台座部と、
鉛直方向を長手方向とする部材であり、鉛直方向の径が長い長穴を有し、前記台座部に固定されるアングル材と、
前記長穴に固定され、前記碍子を支える架台の天板を挟み込んで固定する鉄骨クランプと、
を有する前記エアクッションユニットを前記架台に固定する固定用金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアクッションユニット、保護装置および固定用金具に関する。
【背景技術】
【0002】
変電所等では、高圧電線を支持架設するために架台の上に碍子が設置されている。高圧電線は、碍子の先端に架設されている。架台の高さを含めると、碍子の先端までの高さが10mを超えることもある。
【0003】
碍子の先端に架設されている高圧電線の保守作業等を行う際、碍子の破損を防止するために、碍子を保護部材で覆う必要がある。従来は、碍子の先端を保護部材で覆うために、足場を設置したり高所作業車を使用していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、足場を設置する場合、足場を設置するための作業及び足場を撤去するための作業が必要になるので、保守作業に要する時間が長くなるという問題がある。高所作業車を使用する場合、高所作業車をレンタルする費用が掛かる。また、足場や高所作業車の上での高所作業には危険が伴うという問題もある。
【0006】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、碍子を保護するための作業負担を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、実施形態に係るエアクッションユニットは、碍子の外周を囲うような形状で碍子の外径より大きい内径を有し、碍子の外周を覆って配置され、圧縮空気が注入もしくは排出されることにより鉛直方向に伸縮可能な碍子保護用の伸縮部材を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係る碍子型変電機器と保護装置の構成図である。
【
図2】実施形態1に係るエアクッションユニットの側面図である。
【
図3】
図2に示されるエアクッションユニットのAA断面図である。
【
図4】実施形態1に係るジャバラホースの構成図である。
【
図7】実施形態1に係る固定用金具について説明するための図である。
【
図8】実施形態1に係る固定用金具について説明するための図である。
【
図9】実施形態1に係る固定用金具について説明するための図である。
【
図10】実施形態1に係る固定用金具について説明するための図である。
【
図11】実施形態1に係るエアクッションユニットの取り付け作業のフローチャートである。
【
図12】実施形態1に係るエアクッションユニットの取り付け作業について説明するための図である。
【
図13】実施形態1に係るエアクッションユニットの取り付け作業について説明するための図である。
【
図14】実施形態1に係るエアクッションユニットの取り付け作業について説明するための図である。
【
図15】実施形態1に係るエアクッションユニットの取り付け作業について説明するための図である。
【
図16】実施形態2に係るエアクッションユニットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態に係る碍子型変電機器の保護装置について、図を参照しながら説明する。説明にあたっては、相互に直交するX軸、Y軸、Z軸からなる直交座標系を適宜用いる。
【0010】
(実施形態1)
図1は碍子型変電機器100と保護装置1の構成を示す図である。碍子型変電機器100は、碍子110、架台120、端子箱130を有している。碍子110は、絶縁物である碍子で構成された塔である。碍子110の+Z方向の先端に高圧電線が架設される。例えば、碍子110のZ軸方向の長さは6mであり、外径は50cm程度である。架台120は、碍子110を設置するための鉄製の台である。例えば、架台120のZ軸方向の長さは4mである。端子箱130は、コイルや配線を収容する容器である。端子箱130は、碍子110の下に設けられている。
【0011】
碍子型変電機器100に取り付けられる保護装置1は、碍子型変電機器100の碍子110を保護するための装置である。保護装置1は、エアクッションユニット10、エア供給圧調整ユニット30、エアコンプレッサ40、分岐ホース50、エア供給ホース60を備える。エアクッションユニット10は、固定用金具20により、架台120に固定される。
【0012】
図2は、エアクッションユニット10の側面図である。
図2に示されるように、エアクッションユニット10は、Z軸方向に積層された3つの伸縮ユニット10aで構成されている。伸縮ユニット10aは、ジャバラホース11、上枠13、下枠14、伸縮棒17を有している。
図3は、
図2のAA断面図である。
図3に示されるように、エアクッションユニット10は、碍子110の外周を囲うような形状に形成されている。
【0013】
図4は、ジャバラホース11の構成を示す図である。ジャバラホース11は、碍子110の外周を覆って配置される鉛直方向に伸縮可能な伸縮部材である。
図4に示されるように、ジャバラホース11は、Z軸方向(鉛直方向)に積層された複数のエア収容部11aを有している。隣接して積層されているエア収容部11aは、通気口11bで接続されている。複数のエア収容部11aのいずれか一つに、圧縮空気を注入するカプラー12が設けられている。カプラー12には、後述する分岐ホース50が接続される。ジャバラホース11は、PVC(polyvinyl chloride)で形成されているので、圧縮空気が注入もしくは排出されることにより、Z軸方向に伸縮する。
【0014】
図3に示されるジャバラホース11の内径L1は、碍子110の外径より数cm(例えば、5cm程度)長い。例えば、L1は55cmである。ジャバラホース11の外径L2は、例えば90cmである。
図2に示されるように、ジャバラホース11の上端(+Z側)は上枠13に、下端(-Z側)は下枠14に、接着剤で接続される。
【0015】
図5は、下枠14の平面図である。下枠14は、碍子110の周囲を囲って碍子110に取り付けられる平板状の部材である。下枠14は、PVCで形成されている。
図5に示されるように、2個の下枠14を接続すると、リング状になる。下枠14の内径L1は、碍子の外径より数cm(例えば、5cm程度)長い。例えば、L1は55cmである。下枠14の外径L3は、例えば、1mである。下枠14の外径L3は、ジャバラホース11の外径L2より例えば10cm程度長い。下枠14の外周近くには、複数の接続用穴14bが設けられている。接続用穴14bは、Z軸方向に並べて配置された伸縮ユニット10aを接続する際に使用する穴である。また、接続用穴14bは、エアクッションユニット10を固定用金具20に接続する際に使用する穴である。
【0016】
図5に示されるように、2個の下枠14は、結合部材15で結合される。結合部材15は、例えば、ボルトとナット、フック金具、面ファスナー、紐等である。
【0017】
上枠13は、下枠14と同じ形状である。2個の上枠13は、結合部材15で結合される。
【0018】
図2に示されるように、伸縮ユニット10aがZ軸方向に3段積層されたエアクッションユニット10の場合、各伸縮ユニット10aを接続部材16で接続する。接続部材16は、ボルトとナット、フック金具、面ファスナー、紐等である。
【0019】
伸縮棒17は、ジャバラホース11のZ軸方向(鉛直方向)の伸縮に伴って伸縮する部材である。伸縮棒17は、ジャバラホース11が伸縮する際に、ジャバラホース11が碍子110に絡むことを防止するために設けられている。伸縮棒17は、PVCで形成されている。
図6は、伸縮棒17の側面図である。
図6に示されるように、伸縮棒17は、第1支柱17a、第2支柱17b、第3支柱17cを有している。第1支柱17aの+Z方向の端にはキャップ17dが設けられ、第2支柱17bの+Z方向の端にはキャップ17eが設けられ、第3支柱17cの+Z方向の端にはキャップ17fが設けられている。キャップ17dは、第2支柱17bが第1支柱17aから抜け落ちないようにするための部材である。キャップ17eは、第2支柱17bが第1支柱17aの中にはまり込んだり、第3支柱17cが第2支柱17bから抜け落ちないようにするための部材である。キャップ17fは、第3支柱17cが第2支柱17bの中にはまり込むことを防止するための部材である。
図2に示されるように、伸縮棒17は、鉛直方向の一端(+Z側)が上枠13に接続され、鉛直方向の他端(-Z側)が下枠14に接続されている。
【0020】
例えば、第1支柱17aのZ軸方向の長さは70cmである。第2支柱17bのZ軸方向の長さは、第1支柱17aのZ軸方向の長さよりもやや短い。第3支柱17cのZ軸方向の長さは、第2支柱17bのZ軸方向の長さよりもやや短い。第2支柱17bおよび第3支柱17cが第1支柱17aに収容された状態の伸縮棒17のZ軸方向の長さは約75cmである。第2支柱17bが第1支柱17aから引き出され、第3支柱17cが第2支柱17bから引き出された状態の伸縮棒17のZ軸方向の長さは約2mである。
【0021】
例えば、第1支柱17aの外径L4は5cmである。第2支柱17bの外径L5は、第1支柱17aの内径よりもやや短い。第3支柱17cの外径L6は、第2支柱17bの内径よりもやや短い。したがって、伸縮棒17は、抵抗なく伸縮する。
【0022】
図1に戻り、エアコンプレッサ40は、エア供給圧調整ユニット30に圧縮空気を供給する装置である。エア供給圧調整ユニット30は、ジャバラホース11に供給する圧縮空気の圧力を、ジャバラホース11ごとに調整する装置である。エア供給ホース60は、エアコンプレッサ40からエア供給圧調整ユニット30に圧縮空気を供給するホースである。分岐ホース50は、エア供給圧調整ユニット30から各伸縮ユニット10aのジャバラホース11それぞれに圧縮空気を供給するホースである。
【0023】
次に、エアクッションユニット10を架台120に固定する固定用金具20について説明する。
図7は、固定用金具20によりエアクッションユニット10が架台120に固定された状態を示す模式的な図である。固定用金具20は、台座部21、アングル材23、鉄骨クランプ25を有する。
【0024】
台座部21は、エアクッションユニット10を固定する部材である。
図8は、
図7のBB断面図である。図に示されるように、台座部21は、Y軸方向を長手方向とする平板状の部材である。台座部21は、鉄で形成されている。
図7に示されるように、台座部21には、下枠14の接続用穴14bに対応する位置に固定穴21bが形成されている。
【0025】
アングル材23は、鉄骨クランプ25を固定する部材である。
図9は、アングル材23の斜視図である。アングル材23は、Z軸方向を長手方向とするXY断面がL字状の部材である。アングル材23は、台座部21に溶接等で固定されている。アングル材23には、Z軸方向の内径がY軸方向の内径よりも長い複数の長穴23bが形成されている。長穴23bを設けたことにより、鉄骨クランプ25をアングル材23に固定する鉛直方向の位置を調整することができる。
【0026】
図7に戻り、鉄骨クランプ25は、碍子110を支える架台120の天板120aを挟み込んで固定する部材である。鉄骨クランプ25は、アングル材23の長穴23bにボルトで固定される。
図10は、鉄骨クランプ25の模式的な側面図である。鉄骨クランプ25は、天板固定部25aとアングル材固定部25bを有する。天板固定部25aとアングル材固定部25bとは溶接されている。天板固定部25aは鉄で形成されている。天板固定部25aは、XZ断面がコの字状の部材である。天板固定部25aの+Z側の面には、穴25abが形成されている。穴25abの内面にはねじ溝が形成されている。アングル材固定部25bは鉄で形成されている。アングル材固定部25bは、XZ断面がコの字状の部材である。アングル材固定部25bには、穴25bbが形成されている。穴25bbの内面にはねじ溝が形成されている。
【0027】
次に、碍子型変電機器100にエアクッションユニット10を取り付ける作業について
図11を参照しながら説明する。ここでは、ジャバラホース11、上枠13、下枠14、伸縮棒17で構成されるユニットを鉛直方向に3段に積層したエアクッションユニット10を構成する場合について説明する。
【0028】
最初に、エアクッションユニット10を取り付ける碍子型変電機器100の近くにエア供給圧調整ユニット30とエアコンプレッサ40を配置する(ステップS11)。
【0029】
次に、固定用金具20を架台120の天板120aに固定する(ステップS12)。具体的には、
図10に示す鉄骨クランプ25の天板固定部25aに天板120aを挟み、ボルト25cで天板120aを締め付けて固定する。次に、端子箱130の大きさに合わせて、鉄骨クランプ25をアングル材23の長穴23bにボルト25dで固定する。
【0030】
次に、1段目の伸縮ユニット10aを碍子110を囲んで組み合わせる(ステップS13)。そして、2個の上枠13を結合部材15で結合する。同様にして、2個の下枠14を結合部材15で結合する。
【0031】
次に、下枠14を固定用金具20の台座部21にボルトで固定する(ステップS14)。具体的には、下枠14の接続用穴14bと台座部21の固定穴21bにボルトを挿入して、ナットで固定する。
【0032】
次に、2段目の伸縮ユニット10aを1段目の伸縮ユニット10aの上に段積みし、碍子110を囲んで組み合わせる(ステップS15)。そして、2段目の伸縮ユニット10aの下枠14の接続用穴14bと1段目の伸縮ユニット10aの上枠13の接続用穴14bにボルトを挿入して、ナットで固定する(ステップS16)。
【0033】
次に、3段目の伸縮ユニット10aを2段目の伸縮ユニット10aの上に段積みし、碍子110を囲んで組み合わせる。そして、3段目の伸縮ユニット10aの下枠14を2段目の伸縮ユニット10aの上枠13にボルトで固定する(ステップS17)。
【0034】
次に、各伸縮ユニット10aのカプラー12とエア供給圧調整ユニット30とを分岐ホース50で接続する(ステップS18)。分岐ホース50は、適宜束ねておく。次に、エア供給圧調整ユニット30とエアコンプレッサ40とをエア供給ホース60で接続する(ステップS19)。
【0035】
次に、エアコンプレッサ40からエア供給圧調整ユニット30を介して、エアクッションユニット10に圧縮空気を注入する(ステップS20)。カプラー12から注入された圧縮空気は、通気口11bを介してエア収容部11aそれぞれに注入される。エア収容部11aそれぞれのZ軸方向(鉛直方向)の長さは、注入する圧縮空気を増やすほど長くなる。したがって、圧縮空気を注入することにより、ジャバラホース11は、Z軸方向(鉛直方向)へ伸長する。伸縮棒17は、ジャバラホース11の伸長に伴って+Z方向に伸長する。
【0036】
図12及び
図13は、ジャバラホース11、上枠13、下枠14、伸縮棒17で構成される1つの伸縮ユニット10aを拡大した図である。圧縮空気を注入される前の伸縮ユニット10aでは、
図12に示されるように、第2支柱17bおよび第3支柱17cが第1支柱17aに収容された状態である。つまり、伸縮ユニット10aのZ軸方向の長さは、約75cmである。伸縮ユニット10aは、圧縮空気を注入されると
図13に示されるように、伸縮棒17が伸び切った状態になるまで長くなる。つまり、伸縮ユニット10aのZ軸方向の長さは、約2mまで長くなる。
【0037】
次に、エア供給圧調整ユニット30で、各伸縮ユニット10aに供給する圧縮空気の圧力を調整し、エアクッションユニット10のZ軸方向(鉛直方向)の長さを調整する(ステップS21)。
【0038】
圧縮空気を注入する前は、
図14に示されるように、碍子110に取り付けたエアクッションユニット10のZ軸方向の長さは、約2.25m(75cm×3段)である。圧縮空気を注入すると、エアクッションユニット10は、
図15に示されるように、+Z方向に伸長する。圧縮空気の圧力を調整することにより、3段目の伸縮ユニット10aの+Z側の端を碍子110の先端(+Z側の端)まで配置することができる。
【0039】
以上説明したように、実施形態1に係るエアクッションユニット10は、碍子110の外周を覆って配置される鉛直方向に伸縮可能なジャバラホース11を有する。圧縮空気を注入する前のエアクッションユニット10の鉛直方向の長さは短い。したがって、碍子110にエアクッションユニット10を取り付ける作業を低い位置で行うことができる。取付後のエアクッションユニット10に圧縮空気を注入することにより碍子110全体をエアクッションユニット10で覆うことができる。
【0040】
具体的には、碍子110の先端の高さが10mであれば、従来は、10mの高さでの高所作業が必要になる。高さ10mの碍子の先端に保護部材を取り付けるためには、高さ9m程度の足場を組む必要がある。これに対し、実施形態1に係る保護装置1を用いた場合、エアクッションユニット10の取付作業は、伸長する前のエアクッションユニット10の高さ2.25mに架台の高さ4mを足した6.25mの高さで作業をすることができる。これに必要な足場の高さは5m程度である。したがって、足場を組む作業時間および足場の費用を低減できる。また、作業する高さを10mから6.25mまで低くできるので、高所作業による危険度を大きく低減することができる。このように、碍子を保護するための作業負担を軽減することができる。
【0041】
実施形態1に係るエアクッションユニット10は、ジャバラホース11の鉛直方向の伸縮に伴って伸縮する伸縮棒17を有する。ジャバラホース11は、伸縮性の高い素材で形成されているので自立することはできず、不特定の位置で折れ曲がり、碍子110に接触しながら伸縮する。したがって、碍子110の表面の凹凸が大きい場合、ジャバラホース11が碍子110の表面の凹凸に引っかかる場合がある。ジャバラホース11が碍子110の表面の凹凸に引っかかると、ジャバラホース11がそれ以上伸長することができない。また、ジャバラホース11を破損することもある。伸縮棒17を設けることにより、ジャバラホース11が不特定位置で折れ曲がることを抑制でき、碍子110にジャバラホース11が引っかかることを防止することができる。
【0042】
結合部材15は、例えば、ボルトとナット、フック金具、面ファスナー、紐等であるので、エアクッションユニット10の取付および取り外し作業を容易にすることができる。
【0043】
また、2個以上の伸縮ユニット10aを鉛直方向に積層する場合、複数の伸縮ユニット10aを接続部材16で接続できる。接続部材16は、ボルトとナット、フック金具、面ファスナー、紐等であるので、エアクッションユニット10の長さを容易に調整することができる。
【0044】
また、複数の伸縮ユニット10aを鉛直方向に積層することにより、複数の上枠13および下枠14が設けられることになる。エアクッションユニット10が伸長する際、上枠13および下枠14が碍子110に寄りかかる。上枠13および下枠14はジャバラホース11よりも硬質であるので、ジャバラホース11の表面の凹凸に引っかかりにくい。したがって、複数のユニットを鉛直方向に積層することにより、碍子110に引っかかることなくエアクッションユニット10を伸長させることができる。
【0045】
上枠13及び下枠14は、軽量なPVCで形成されているので、低い空気圧でエアクッションユニット10を伸長することができる。これにより、エアクッションユニット10の製造コストを低減できる。また、エア供給圧調整ユニット30及びエアコンプレッサ40のコストを低減できる。
【0046】
上記の説明では、碍子110のみをエアクッションユニット10で覆う場合について説明したが、架台120もエアクッションユニットで覆ってもよい。この場合、高所作業を無くすことができる。
【0047】
上記の説明では、ジャバラホース11、上枠13、下枠14、伸縮棒17で構成される伸縮ユニット10aをZ軸方向に3段に積層した構成のエアクッションユニット10について説明した。しかし、エアクッションユニット10を構成する伸縮ユニット10aの数を限定する必要はない。伸縮ユニット10aの数は、1個でも2個でも4個でもよい。
【0048】
また、上記の説明では、
図3に示されるように、伸縮棒17をジャバラホース11の外周側に設ける場合について説明したが、これに限定する必要はない。例えば、伸縮棒17をジャバラホース11の内周側に設けてもよい。また、伸縮棒17をジャバラホース11の外周側と内周側の両方に設けてもよい。また、伸縮棒17の本数を増やしてもよい。また、伸縮棒17の段数を3段に限定する必要もない。伸縮棒17の段数は、2段でも4段でも5段でもよい。伸縮棒17の段数を増やすことにより、圧縮空気を注入する前のエアクッションユニット10のZ軸方向の長さを短くできるので、碍子110へのエアクッションユニット10の取付作業の高さを低くすることができる。
【0049】
エアクッションユニット10は、軽量であることが望ましい。したがって、結合部材15及び接続部材16は、軽量な部材で構成されることが望ましい。結合部材15及び接続部材16は、例えば、ジャバラホース11を構成するPVCの一部に設けた穴と、紐で構成してもよい。また、紐を通す穴を有する結合部材15及び接続部材16をPVCや布等で形成し、ジャバラホース11に接続してもよい。
【0050】
上記の説明では、伸縮部材としてジャバラホース11を例にして説明した。しかし、伸縮部材をジャバラホースに限定する必要はない。例えば、伸縮部材は、エアマットや浮袋を積層したものであってもよいし、ゴム製やPVC製のホースであってもよい。
【0051】
(実施形態2)
実施形態1では、エアクッションユニット10を構成する伸縮ユニット10aが上枠13と下枠14を有する場合について説明した。しかし、伸縮ユニット10aの構成をこれに限定する必要はない。例えば、伸縮ユニット10aが上枠13と下枠14を有していなくてもよい。
【0052】
図16は、実施形態2に係るエアクッションユニット10を構成する伸縮ユニット10aの側面図である。伸縮ユニット10aは、ジャバラホース11、カプラー12、結合部材15、接続部材16を有している。
【0053】
ジャバラホース11のX軸方向の長さは、碍子110の外周より少し長め(例えば、5cm程度長め)に設定されている。圧縮空気が注入さる前のジャバラホース11のZ軸方向の長さは、例えば、20cmである。圧縮空気が注入された状態のジャバラホース11のZ軸方向の長さは、例えば、2mである。圧縮空気が注入された状態のジャバラホース11のY軸方向の長さは、例えば、10cmである。ジャバラホース11の左右に設けられている結合部材15同士を結合していない場合、ジャバラホース11は、矩形のエアマットのような形状である。
図16に示されるように、ジャバラホース11は、Z軸方向(鉛直方向)に積層された複数のエア収容部11aを有している。隣接するエア収容部11aは、通気口11bで接続されている。複数のエア収容部11aのいずれか一つに、圧縮空気を注入するカプラー12が設けられている。
【0054】
ジャバラホース11の+X側の端と-X側の端の複数個所に、結合部材15が設けられている。結合部材15は、紐を通す穴を有する部材である。結合部材15はPVCで形成され、ジャバラホース11に接着剤で固定されている。
【0055】
ジャバラホース11の+Z側および-Z側には、複数の接続部材16が設けられている。接続部材16は、紐を通す穴を有する部材である。接続部材16はPVCで形成され、ジャバラホース11に接着剤で固定されている。
【0056】
碍子型変電機器100に保護装置1を取り付ける際、
図11のステップS13において、伸縮ユニット10aで碍子110を囲む。そして、
図16の+X側の結合部材15と-X側の結合部材15とを紐で結合する。
図11のステップS15において、1段目の伸縮ユニット10aの
図16の+Z側の接続部材16と、2段目の伸縮ユニット10aの-Z側の接続部材16とを紐で接続する。ステップS16において、該当する結合部材15同士を紐で結合し、該当する接続部材16同士を紐で接続する。その他は、実施形態1の説明と同じである。
【0057】
実施形態2に係るエアクッションユニット10を構成する伸縮ユニット10aは、上枠13、下枠14、伸縮棒17を有していないので、実施形態1に係るエアクッションユニット10よりも軽量である。したがって、低い空気圧でエアクッションユニット10を伸長することができる。これにより、エアクッションユニット10の製造コストを低減できる。また、エア供給圧調整ユニット30及びエアコンプレッサ40のコストを低減できる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1…保護装置
10…エアクッションユニット
10a…伸縮ユニット
11…ジャバラホース
11a…エア収容部
11b…通気口
12…カプラー
13…上枠
14…下枠
14b…接続用穴
15…結合部材
16…接続部材
17…伸縮棒
17a…第1支柱
17b…第2支柱
17c…第3支柱
17d,17e,17f…キャップ
20…固定用金具
21…台座部
21b…固定穴
23…アングル材
23b…長穴
25…鉄骨クランプ
25a…天板固定部
25ab…穴
25b…アングル材固定部
25bb…穴
25c、25d…ボルト
30…エア供給圧調整ユニット
40…エアコンプレッサ
50…分岐ホース
60…エア供給ホース
100…碍子型変電機器
110…碍子
120…架台
120a…天板
130…端子箱