(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】室内機の吊り下げ具
(51)【国際特許分類】
F24F 1/0047 20190101AFI20230901BHJP
F24F 13/32 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
F24F1/0047
F24F13/32
(21)【出願番号】P 2019141997
(22)【出願日】2019-08-01
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 良
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-154912(JP,U)
【文献】特開平09-072658(JP,A)
【文献】実開昭53-149509(JP,U)
【文献】特開2018-146204(JP,A)
【文献】特開平10-159828(JP,A)
【文献】特開2002-021816(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0284880(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/0047
F24F 13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に室内機を吊り下げるための吊り下げ具であって、
前記天井に固定された複数の第1吊りボルトに吊り下げられると共に固定される中継板と、
前記中継板に固定され、前記室内機を吊り下げると共に固定する複数の第2吊りボルトと、
を備え
、
前記中継板には、前記第1吊りボルトまたは前記第2吊りボルトが挿通可能なスリットが形成され、前記スリットに沿って前記第1吊りボルトおよび前記第2吊りボルトの固定位置を調整可能とし、曲げに対して十分な剛性を付与する補強部材が前記スリットと交差するように固定され、
前記スリットは、幅方向に沿って形成される複数の横スリットと、奥行方向に沿って形成される複数の縦スリットを含む螺旋状である、
吊り下げ具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井に固定された複数の吊りボルトに室内機を吊り下げるための吊り下げ具に関する。
【背景技術】
【0002】
天井内に設置される天井埋込形の室内機は、広く知られている。天井埋込形の室内機は、取付金具の挿通孔に天井に固定された吊りボルトを挿通し、天井から吊りボルトによって吊り下げられる。天井埋込形の室内機の取付金具の挿通孔の位置は、メーカー又は機種によって異なる場合が多い。
【0003】
天井埋込形の室内機をリニューアルする場合には、天井に固定された既設の吊りボルトの位置を変更するために、吊りボルト用アンカーを打ち直す必要がある。しかし、吊りボルト用アンカーを打ち直す作業は、騒音が生じるため、テナントまたは店舗等のビルでは日中に作業をすることができない。このような課題を解決すべく、例えば、特許文献1には、挿通孔が複数形成される取付金具を備える室内機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、既設の吊りボルトがレールに沿って移動できる構成である。また、取付金具の挿通孔は、レールに沿った方向と垂直な方向に沿ってのみ並んで形成される。そのため、既設の吊りボルトが固定されている場合には、吊り下げ位置を所定方向のみしか変更することができない。
【0006】
本発明の目的は、天井に固定された既設の吊りボルトと室内機の吊り下げ位置が異なる場合であっても既設の吊りボルトを使って室内機を吊り下げることができる吊り下げ具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る吊り下げ具は、天井に室内機を吊り下げるための吊り下げ具であって、天井に固定された複数の第1吊りボルトに吊り下げられると共に固定される中継板と、中継板に固定され、室内機を吊り下げると共に固定する複数の第2吊りボルトと、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る吊り下げ具において、中継板には、第1吊りボルトおよび第2吊りボルトが挿通可能な複数の孔が形成され、複数の孔のうちから第1吊りボルトおよび第2吊りボルトを挿通させる孔を選択して第1吊りボルトおよび第2吊りボルトを固定することが好ましい。
【0009】
本発明に係る吊り下げ具において、中継板には、第1吊りボルトまたは第2吊りボルトが挿通可能なスリットが形成され、スリットに沿って第1吊りボルトおよび第2吊りボルトの固定位置を調整可能とし、曲げに対して十分な剛性を付与する補強部材がスリットと交差するように固定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る室内機の吊り下げ具によれば、天井に固定された既設の吊りボルトと室内機の吊り下げ位置が異なる場合であっても既設の吊りボルトを使って室内機を吊り下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の吊り下げ具に吊り下げられた室内機を示す側面図である。
【
図4】更に他の実施形態の中継板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。以下で説明する形状、材料及び個数は、説明のための例示であって、吊り下げ具の仕様に応じて適宜変更することができる。以下では、全ての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。また、本文中の説明においては、必要に応じてそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0013】
図1および
図2を用いて、吊り下げ具40について説明する。
図1は、天井内Cで吊り下げ具40に吊り下げられた室内機50を示す側面図である。
図2は、中継板10を示す平面図である。
【0014】
天井内Cは、部屋Rの上部に形成される空間であって、例えば化粧パネル51と天井55とで形成される。天井内Cには、部屋Rの空気調和機の配管、ならびに、同じ階の他の部屋の空気調和機の配管またはダクト等が設置される。天井内Cでは、化粧パネル51が開口または一部取り外されることによって、室内機50の下方が部屋Rを覗くように、室内機50が設置される。
【0015】
室内機50は、部屋Rの空気調和機の室内機であって、天井内Cに設置されるものである。室内機50は、例えば、テナントまたは店舗が入居するビルの部屋Rの空気を冷房または暖房によって調和するものである。
【0016】
室内機50は、例えば吹出口が4方向となる4方向天井埋込カセット形の室内機とするが、これに限定されない。例えば、2方向天井埋込カセット形の室内機または1方向天井埋込カセット形の室内機であってもよい。一般的には、4方向天井埋込カセット形の室内機は、平面視において略正方形に構成され、2方向天井埋込カセット形または1方向天井埋込カセット形の室内機は平面視において長方形に構成される。
【0017】
吊り下げ具40は、天井55に固定された複数の第1吊りボルト52に室内機50を吊り下げるものである。
【0018】
第1吊りボルト52は、天井55から下方に延び出るように天井55に固定される。本実施形態では、例えば4本の第1吊りボルト52が天井55に固定される。4本の第1吊りボルト52の位置は、天井内Cに最初に室内機を設置した際の今は撤去された室内機の吊り下げ位置である。第1吊りボルト52の吊り下げ位置を、第1吊り下げ位置P1とする。
【0019】
第1吊りボルト52は、吊り下げ具40を吊り下げるために、天井内Cの高さ方向の長さの例えば略2/3程度の長さに、既設の吊りボルトを切断したものである。
【0020】
室内機50には、吊りボルトに吊り下げられるための取り付け金具(図示なし)が固定される。取り付け金具には、吊りボルトが挿通される孔が形成される。室内機50における吊りボルトが挿通する位置は、室内機50の吊り下げ位置であって、第2吊り下げ位置P2とする。
【0021】
吊り下げ具40は、天井内Cにおいて、室内機50を吊り下げるものである。吊り下げ具40は、天井55に固定された4本の第1吊りボルト52に吊り下げられると共に固定される中継板10と、中継板10に固定され、室内機50を吊り下げると共に固定する4本の第2吊りボルト20と、を備える。また、吊り下げ具40は、4本の筋交い部材30を備える。
【0022】
図2に示すように、中継板10は、第1吊り下げ位置P1および第2吊り下げ位置P2が吊り下げ具40の設置前に分かっている場合に用いられる。また、吊り下げ具40の設置現場において、実際に第1吊り下げ位置P1および第2吊り下げ位置P2の位置を計測して、第1吊り下げ位置P1に対応する位置に第1孔11を孔加工し、第2吊り下げ位置P2に対応する位置に第2孔12を孔加工してもよい。
【0023】
中継板10によれば、第1吊りボルト52による第1吊り下げ位置P1と第2吊りボルト20による第2吊り下げ位置P2とが異なる場合でも、第1吊りボルト52に対し、第2吊りボルト20を吊り下げることができる。
【0024】
中継板10は、第1吊りボルト52と第2吊りボルト20との間に介されるものである。言い換えれば、中継板10は、高さ方向において、第1吊りボルト52と第2吊りボルト20とを接続するものである。
【0025】
中継板10は、室内機50の上方であって、化粧パネル51から略1/3の位置の天井内Cに設置される。中継板10は、プレート状に形成され、例えば厚さ3ミリの鋼板が好適に用いられる。中継板10は、平面視において、例えば角部が切り欠かれた正方形に形成される。
【0026】
中継板10に形成される第1孔11の径は、第1吊りボルト52の径よりも若干大きく、第1吊りボルト52を中継板10に固定するためのナットの径よりも十分に小さい。第1孔11には、第1吊りボルト52が挿通され、中継板10の上側および下側にて一対のナットで固定される。これにより、中継板10が4本の第1吊りボルト52に吊り下げられる。
【0027】
中継板10に形成される第2孔12の径は、第2吊りボルト20の径よりも若干大きく、第2吊りボルト20の頭部の径または第2吊りボルト20を中継板10に固定するためのナットの径よりも十分に小さい。第2孔12には、第2吊りボルト20が挿通され、中継板10の上側および下側にて第2吊りボルト20の頭部とナットで固定される。これにより、中継板10に4本の第2吊りボルト20が固定される。
【0028】
筋交い部材30は、吊り下げ具40を天井55から斜めに吊り下げ支持するものである。筋交い部材30によれば、重量物である吊り下げ具40の支持を補強することができる。筋交い部材30は、例えば鋼性のロッドが好適に用いられる。筋交い部材30は、第1吊りボルト52によって中継板10を十分に支持できるのであれば、特に設ける必要はない。本実施形態では、例えば4本の筋交い部材30が好適に用いられる。それぞれの筋交い部材30は、天井55から中継板10の角部(四隅)を高さ方向に対して傾斜して吊り下げ支持する。
【0029】
吊り下げ具40を用いた室内機50の設置手順について説明する。まず、室内機50を施工する作業者は、既設の4本の第1吊りボルト52を略2/3の長さになるように切断する。次に、作業者は、中継板10の第1孔11に第1吊りボルト52を挿通させて一対のナットで固定する。次に、作業者は、中継板10の第2孔12に第2吊りボルト20を挿通する。次に、作業者は、室内機50を4本の第2吊りボルト20に吊り下げる。さらに、作業者は、必要であれば、筋交い部材30によって中継板10を吊り下げる。
【0030】
吊り下げ具40の効果について説明する。吊り下げ具40によれば、既設の第1吊りボルト52の吊り下げ位置(第1吊り下げ位置P1)と室内機50の吊り下げ位置(第2吊り下げ位置P2)とが異なる場合であっても、既設の第1吊りボルト52を使って室内機50を吊り下げることができる。これにより、室内機50のリニューアル工事の際であっても吊りボルト用アンカーを打ち直す必要がない。そのため、室内機50のリニューアル工事をテナントまたは店舗等のビルであっても騒音を発生することなく日中に作業することができる。
【0031】
図3を用いて、他の実施形態の中継板10について説明する。なお、中継板10以外の部材は、上述した吊り下げ具40と同様であるため、説明を省略する。
【0032】
中継板10は、第1吊り下げ位置P1および第2吊り下げ位置P2が吊り下げ具40の設置前に分かっていない場合、または、第1吊り下げ位置P1および第2吊り下げ位置P2の多種類の組み合わせパターンに適用する場合に用いられる。
【0033】
中継板10には、第1吊りボルト52および第2吊りボルト20が挿通可能な複数の孔15が形成される。吊り下げ具40を設置する際には、複数の孔15のうちから第1吊り下げ位置P1と平面視において略同一位置にある孔15を第1孔11として選択する。また、複数の孔15のうちから第2吊り下げ位置P2と平面視において略同一位置にある孔15を第2孔12として選択する。
【0034】
中継板10によれば、第1吊りボルト52による第1吊り下げ位置P1と第2吊りボルト20とによる第2吊り下げ位置P2とが異なる場合であって、吊り下げ具40を設置する前に第1吊り下げ位置P1または第2吊り下げ位置P2が分かっていない場合であっても、第1吊り下げ位置P1および第2吊り下げ位置P2に対応する位置に孔15があれば、第1吊りボルト52に対し、第2吊りボルト20を吊り下げることができる。
【0035】
言い換えれば、第1吊り下げ位置P1および第2吊り下げ位置P2に対応する位置に孔15があれば、孔15を第1孔11または第2孔12として選択し、第1吊り下げ位置P1および第2吊り下げ位置P2の多種類の組み合わせパターンに適用することができ、吊り下げ具40の汎用性を向上することができる。
【0036】
複数の孔15の位置は、所定の間隔を設定して決定してもよい。または、自社製品または他社製品を含めた、あるいは、他の機種を含めた多くの室内機の吊り下げ位置を調査して決定してもよい。
【0037】
第1孔11には、第1吊りボルト52が挿通され、中継板10の上側および下側にて一対のナットで固定される。これにより、中継板10が4本の第1吊りボルト52に吊り下げられる。第2孔12には、第2吊りボルト20が挿通され、中継板10の上側および下側にて第2吊りボルト20の頭部とナットで固定される。これにより、中継板10に4本の第2吊りボルト20が固定される。
【0038】
図4を用いて、更に他の実施形態の中継板10について説明する。なお、中継板10以外の部材は、上述した吊り下げ具40と同様であるため、説明を省略する。以下では、略正方形に形成される中継板10の一方の外縁に沿った方向を幅方向とし、平面視において幅方向に垂直な方向を奥行方向とする。
【0039】
中継板10は、第1吊り下げ位置P1および第2吊り下げ位置P2が吊り下げ具40の設置前に分かっていない場合、または、第1吊り下げ位置P1および第2吊り下げ位置P2の多種類の組み合わせパターンに適用する場合に用いられる。中継板10には、第1吊りボルト52および第2吊りボルト20が挿通可能なスリット10Sが形成される。第1吊りボルト52および第2吊りボルト20の固定位置は、スリット10Sに沿って調整可能とされる。また、中継板10は、詳しくは後述する補強部材19を備える。
【0040】
中継板10によれば、第1吊りボルト52による第1吊り下げ位置P1と第2吊りボルト20とによる第2吊り下げ位置P2とが異なる場合であって、吊り下げ具40を設置する前に第1吊り下げ位置P1または第2吊り下げ位置P2が分かっていない場合でも、第1吊り下げ位置P1および第2吊り下げ位置P2に対応する位置にスリット10Sが形成されていれば、既設の第1吊りボルト52を使って室内機50を吊り下げることができる。
【0041】
また、中継板10によれば、幅方向または奥行方向において、第1吊りボルト52および第2吊りボルト20の固定位置がスリット10Sに沿って調整可能とされる。これにより、多くの第1吊り下げ位置P1または第2吊り下げ位置P2の多種類の組み合わせパターンに対応することができ、吊り下げ具40の汎用性を向上することができる。
【0042】
スリット10Sは、平面視において略らせん状に形成される。略らせん状に形成されたスリット10Sは、幅方向に沿って形成される複数の横スリット10SWと、奥行方向に沿って形成される複数の縦スリット10SDと、を含む。
【0043】
隣接する横スリット10SWと横スリット10SWとの間隔、または、隣接する縦スリット10SDと縦スリット10SDとの間隔は、所定の間隔を設定して決定してもよい。または、自社製品または他社製品を含めた、あるいは、他の機種を含めた多くの室内機の吊り下げ位置を調査して決定してもよい。
【0044】
スリット10Sの幅は、第1吊りボルト52および第2吊りボルト20の直径よりも若干大きいものとする。また、スリット10Sの幅は、第1吊りボルト52および第2吊りボルト20を中継板10に固定するためのナットおよび第2吊りボルト20のヘッド部の外径よりも小さいものとする。
【0045】
スリット10Sには、第1吊りボルト52が挿通され、中継板10の上側および下側にて一対のナットで固定される。これにより、中継板10が4本の第1吊りボルト52に吊り下げられる。また、スリット10Sには、第2吊りボルト20が挿通され、中継板10の上側および下側にて第2吊りボルト20の頭部とナットで固定される。これにより、中継板10に4本の第2吊りボルト20が固定される。
【0046】
中継板10には、補強部材19が設けられる。補強部材19は、中継板10の曲げに対して十分な剛性を付与するように、スリット10Sを交差するように固定される。これにより、中継板10の強度を向上し、中継板10の破損または変形を防止することができる。
【0047】
補強部材19は、例えば鋼性の角材が好適に用いられる。本実施形態の補強部材19は、平面視において、中継板10の幅方向および奥行方向に沿って略中央部に1本、対角線上にそれぞれ2本の補強部材19が設けられる。補強部材19は、中継板10に対し、例えば溶接、ネジまたは取り付け金具によって固定される。
【0048】
本実施形態では、スリット10Sには、第1吊りボルト52および第2吊りボルト20が挿通可能としたが、これに限定されない。例えば、第1吊りボルト52と第2吊りボルト20との径が異なる場合には、第1吊りボルト52が挿通可能なスリットと第2吊りボルト20が挿通可能なスリットとをそれぞれ別に形成してもよい。
【0049】
また、本実施形態では、第1吊り下げ位置P1または第2吊り下げ位置P2とスリット10Sの位置とが若干異なる場合には、第1吊りボルト52または第2吊りボルト20を若干傾斜させて固定してもよい。
【0050】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
10 中継板、11 第1孔、12 第2孔、15 孔、19 補強部材、20 第2吊りボルト、30 筋交い部材、40 吊り下げ具、50 室内機、51 化粧パネル、52 第1吊りボルト、55 天井、C 天井内、R 部屋