(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】水銀の除去方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/62 20230101AFI20230901BHJP
C02F 1/58 20230101ALI20230901BHJP
【FI】
C02F1/62 D
C02F1/58 H
(21)【出願番号】P 2019164306
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】507027162
【氏名又は名称】DOWAテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【氏名又は名称】奥山 知洋
(72)【発明者】
【氏名】中塚 清次
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 彩人
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-025287(JP,A)
【文献】特開昭57-140858(JP,A)
【文献】特開2008-119620(JP,A)
【文献】特開2009-249399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00-11/20
B01D 53/34-53/85、
53/92、53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水銀
およびセレンを含有する被処理水から前記水銀を除去する水銀の除去方法であって、
前記被処理水のpH値を1.8以下に保ちながら、前記被処理水へジチオカルバミン酸構造を有する化合物の鉄塩を添加して、水銀を含有する沈殿を形成させる添加工程と、
前記沈殿を形成した被処理水から、前記沈殿を除去する除去工程とを有する、水銀の除去方法。
【請求項2】
前記ジチオカルバミン酸構造を有する化合物の鉄塩として、ジアルキルジチオカルバミン酸鉄および/または窒素を環構成原子として有しその窒素がジチオカルボキシル基に結合した3~10員環構造を有する化合物の鉄塩を用いる、請求項1に記載の水銀の除去方法。
【請求項3】
前記添加工程において、前記被処理水に含有される水銀に対して、2モル倍以上8モル倍以下のジチオカルバミン酸構造を有する化合物の鉄塩を前記被処理水へ添加する、請求項1または2に記載の水銀の除去方法。
【請求項4】
前記被処理水中の水銀の濃度が、300mg/L以上3000mg/L以下である、請求項1から3のいずれかに記載の水銀の除去方法。
【請求項5】
前記被処理水が、さらに水銀以外の金属を含有している、請求項1から4のいずれかに記載の水銀の除去方法。
【請求項6】
前記沈殿を除去した被処理水からセレンの回収を行う、請求項1から5のいずれかに記載の水銀の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被処理水に含有される水銀の除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水銀は多様な産業において広範に使用される物質である。この結果、各種産業における工程水や廃水等の排出水中に水銀が含有されている場合がしばしばある。一方、水銀は人体に対して有害であり、環境負荷も大きい物質である為、これらの水銀を含有する排出水の取り扱いは慎重さを要求され、排出水の処理の工数やコストの発生原因でもある。
【0003】
被処理水中の水銀を除去する方法として、ジエチルジチオカルバミン酸鉄(本明細書において「DDTC-Fe」と記載する場合がある。)を用いて廃水中の水銀をキレート固定して除去する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、水銀の除去方法において、水銀をキレート固定する際の被処理水のpH値を3~7とすることを提案した文献もある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-167818号公報
【文献】特開昭61-274792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、上述した工程水や廃水等において、水銀を含有するものが多く存在することに注目した。本発明者らは、水銀を含有する被処理水から、従来技術のような条件を用いての水銀除去を試みたところ、除去が十分に出来なかったり、除去に時間がかかることを知見した。
【0006】
本発明は上述の状況の下で為されたものであり、その解決しようとする課題は、水銀を含有する被処理水から、実質的に全ての水銀を短時間で除去し得る水銀の除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決する為、本発明者らは研究を行なった。そして、被処理水のpH値を1.8以下に保ちながら、ジチオカルバミン酸構造を有する化合物の鉄塩を添加することで当該課題を解決出来るとの知見を得て、本発明を完成した。
【0008】
即ち、上述の課題を解決する為の第1の発明は、
水銀を含有する被処理水から前記水銀を除去する水銀の除去方法であって、
前記被処理水のpH値を1.8以下に保ちながら、前記被処理水へジチオカルバミン酸構造を有する化合物の鉄塩を添加して、水銀を含有する沈殿を形成させる添加工程と、
前記沈殿を形成した被処理水から、前記沈殿を除去する除去工程とを有する、水銀の除去方法である。
第2の発明は、
前記ジチオカルバミン酸構造を有する化合物の鉄塩として、ジアルキルジチオカルバミン酸鉄および/または窒素を環構成原子として有しその窒素がジチオカルボキシル基に結合した3~10員環構造を有する化合物の鉄塩を用いる、第1の発明に記載の水銀の除去方法である。
第3の発明は、
前記添加工程において、前記被処理水に含有される水銀に対して、2モル倍以上8モル倍以下のジチオカルバミン酸構造を有する化合物の鉄塩を前記被処理水へ添加する、第1または第2の発明に記載の水銀の除去方法である。
第4の発明は、
前記被処理水中の水銀の濃度が、300mg/L以上3000mg/L以下である、第1から第3の発明のいずれかに記載の水銀の除去方法である。
第5の発明は、
前記被処理水が、さらに水銀以外の金属を含有している、第1から第4の発明のいずれかに記載の水銀の除去方法である。
第6の発明は、
前記被処理水が、さらにセレンを含有している、第1から第4の発明のいずれかに記載の水銀の除去方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、水銀を含有する被処理水から、実質的に全ての水銀を短時間で除去することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る水銀の除去方法の工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る水銀の除去方法について、その実施の形態を示す図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る水銀の除去方法の実施の形態の一例の工程を示すフロー図である。
【0012】
[被処理水]
本発明に係る水銀の除去方法が処理対象とする、被処理水(1)は、各種の産業において発生する水銀が含有されている工程水や廃水等である。そして本発明は、後工程(例えば、当該被処理水(1)の環境への排出、含有されている有価金属の回収、等)を考慮し、当該被処理水(1)に含有されている水銀を実質的に全て、且つ、短時間で除去したい場合に用いるものである。
【0013】
被処理水(1)は水銀を含有するものであり、水銀以外の金属を含有していてもよい。その具体例としては、濃度300~3000mg/Lの水銀、濃度100~4000mg/Lの有価金属(濃度は、有価金属が複数種の場合、その合計値である)や、鉄を含有している被処理水が挙げられる。当該有価金属としては、例えばセレンが挙げられる。ここで、水銀は生物に対して有害であり環境負荷も高い物質であることから、被処理水(1)から実質的に全ての水銀を除去することが求められる。
【0014】
[ジチオカルバミン酸構造を有する化合物の鉄塩(キレート化剤)]
被処理水(1)に対してジチオカルバミン酸構造を有する化合物の鉄塩を添加して、水銀を含有する沈殿を形成させる。当該ジチオカルバミン酸構造を有する化合物の鉄塩は配位子として機能する化合物であり、これが水銀と錯体化し、水銀を含有する沈殿を形成するものと考えられる。このような想定機能から、以降、ジチオカルバミン酸構造を有する化合物の鉄塩をキレート化剤(2)ともいう。鉄塩について、錯体形成能力の点からは、2価の鉄の塩であることが好ましい。
ジチオカルバミン酸構造を有する化合物の鉄塩としては、ジアルキルジチオカルバミン酸鉄、および、窒素を環構成原子として有しその窒素がジチオカルボキシル基に結合した3~10員環構造を有する化合物の鉄塩が挙げられる。前者において、アルキル基は分岐を有してもよく、アルキル基の炭素数は、キレート化剤(2)自体のコストの観点から好ましくは1~6であり、より好ましくは2~3である。このような化合物の具体例としては、DDTC-Feが挙げられる。一方後者の鉄塩について、環構造は、キレート化剤(2)自体のコストの観点から好ましくは5~7員環構造である。このような化合物の具体例としては、ピペラジン-1,4-ビス(カルボジチアート)の鉄塩が挙げられる。以上挙げたDDTC-Fe及びピペラジン-1,4-ビス(カルボジチアート)の鉄塩の構造を以下に示す(いずれも2価の鉄塩を示す)。
【0015】
【化1】
【化2】
尚、水銀と反応する際の立体障害の観点から、ジチオカルバミン酸構造を有する化合物の鉄塩としては環構造を有さない化合物が好ましい。当該観点から、最も好ましいのはDDTC-Feである。
【0016】
キレート化剤(2)の添加量は、被処理水(1)に含有される水銀量(モル数)の2倍以上8倍以下の量(モル数)であることが好ましい。水銀量(モル数)の2倍以上のキレート化剤量(モル数)を加えることで水銀の除去効果を十分に発揮させることが出来、水銀量(モル数)の8倍以下のキレート化剤量(モル数)を加えることで薬剤コストを抑えることが出来るからである。これらの観点から、キレート化剤(2)の添加量は、被処理水(1)に含有される水銀量(モル数)の3倍以上7倍以下の量(モル数)であることがより好ましい。
【0017】
[pH値の管理]
被処理水(1)へキレート化剤(2)を添加し含有されている水銀と反応させる際、被処理水(1)のpH値を1.8以下に保つことが肝要である。好ましくはpH値を0以上1.8以下に保ち、さらに好ましくは0.5以上1.6以下に保つのが良い。本発明者らの検討によると、被処理水(1)のpH値を1.8以下に保つことにより、キレート化剤(2)による水銀の除去が迅速に進むことが知見された。
【0018】
さらに、被処理水(1)のpH値を1.8以下に保つことにより、被処理水(1)に鉄が含有されていたり、キレート化剤(2)から鉄が遊離した場合であっても、鉄のpH-電位図より明らかなように水酸化鉄が生じない。このことは、水銀の迅速な除去や、後述する固液分離操作(4)における作業性の観点からも好ましい。具体的には、反応開始時(被処理水(1)へキレート化剤(2)を添加したとき)から好ましくは20~40分にて、被処理水(1)中の水銀を実質的に全て沈殿とすることが出来る。
【0019】
[沈殿の除去(固液分離操作)]
被処理水(1)に含有されている水銀の実質的にすべてが、キレート化剤(2)中の鉄イオンと迅速に置換して錯体となり、沈殿を形成するものと考えられる。その後、被処理水(1)へ固液分離操作(4)を実施することにより、被処理水(1)から沈殿を容易に除去することが出来る。当該固液分離操作(4)に用いる装置は特に限定されないが、フィルタープレス等を好ましく挙げることが出来る。
【0020】
上述したように、被処理水(1)にキレート化剤(2)を添加して水銀を含有する沈殿を形成させる際のpH値を1.8以下に管理すると、鉄のpH-電位図より水酸化鉄は生じない。一方、キレート化剤(2)の鉄は水銀に置き換わるが、その結果、キレート化剤(2)から鉄が遊離する。この後、当該鉄が金属鉄として存在した場合、当該金属鉄と水とが発熱反応し得ることとなる。その際、周囲に多量の水があれば、その発熱は周囲の水に吸収されるが、例えば、固液分離操作(4)中に当該発熱反応が活発になると、周囲には水が殆どない為、当該発熱は吸収されず、固液分離装置に負荷がかかるなどの問題が発生し得る。これに対し、本発明においては、被処理水(1)のpH値を1.8以下に管理している。この結果、鉄はイオンとして存在し、金属鉄が水と反応することはない。従って、固液分離操作(4)において発熱が起こらず安全なプロセスである。
【0021】
[固形物]
固液分離操作(4)により、被処理水(1)中に生じた水銀を含有する沈殿を固形物(5)として回収する。これは、被処理水(1)に含有されていた水銀のキレート錯体であると考えられる。一般的に水銀のキレート錯体は安定性が高く、金属水銀に還元されないため、水銀蒸気が発生することはない。そのため、この固形物について適切な処分を行うに際しても、作業上の負担は限定的である。
【0022】
[液体]
固液分離操作(4)の結果得られた液体(6)は、被処理水(1)から、それに含有されていた水銀の実質的に全てが除去されたものである。従って、水銀の含有を考慮することなく後工程へ送ることが出来る。例えば、被処理水(1)が、セレン等の有価金属を含有しているなら、水銀の含有を考慮することなく適宜な方法にて有価金属回収(7)を行うことが出来る。また、水銀が除去されたことで、適宜な無害化処理を行って環境中へ排出することも出来る。
【実施例】
【0023】
以下、実施例および比較例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。
尚、本実施例および比較例においてはキレート化剤として(1)DDTC-Fe、(2)ピペラジン-1,4-ビス(カルボジチアート)の鉄塩、(3)DDTC-Cu、および、(4)DDTC-Znを用いた。まず、これらのキレート化剤の調製について説明する。
【0024】
(1)DDTC-Feの調製
純水800mLへ、N,N-ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム3水和物10gと、硫酸鉄(II)7水和物24gとを添加し、15分間撹拌して混合物とした。その後、当該混合物を、ヌッチェを用いてろ過し、得られた固形物を50℃乾燥機で24時間乾燥した。得られた乾燥物固体をすり鉢で粉砕することでDDTC-Feを調製した。
【0025】
(2)ピペラジン-1,4-ビス(カルボジチアート)の鉄塩の調製
純水800mLへ、ジカリウム=ピペラジン-1、4-ビス(カルボジチアート)(東ソー株式会社製 TS-300)32gと、硫酸鉄(II)7水和物24gとを添加し、15分間撹拌して混合物とした。その後、当該混合物を、ヌッチェを用いてろ過し、得られた固形物を50℃乾燥機で24時間乾燥した。得られた乾燥物固体をすり鉢で粉砕し、ピペラジン-1、4-ビス(カルボジチアート)の鉄塩(TS300-Fe)を調製した。
【0026】
(3)DDTC-Cuの調製
純水800mLへ、N,N-ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム3水和物10gと、硫酸銅(II)5水和物22gとを添加し、15分間撹拌して混合物とした。その後、当該混合物を、ヌッチェを用いてろ過し、得られた固形物を50℃乾燥機で24時間乾燥した。得られた乾燥物固体をすり鉢で粉砕し、DDTC-Cuを調製した。
【0027】
(4)DDTC-Znの調製
純水800mLへ、N,N-ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム3水和物10gと、硫化亜鉛5水和物25gとを添加し、15分間撹拌して混合物とした。その後、当該混合物を、ヌッチェを用いてろ過し、得られた固形物を50℃乾燥機で24時間乾燥した。得られた乾燥物固体をすり鉢で粉砕し、DDTC-Znを調製した。
【0028】
(実施例1)
実施例1に係る被処理水試料の0.1Lへ硫酸を添加し、pH値を1.5に調整した。なおpHは、pH、ORP電極(HORIBA製、pH/ORP/ION METER D-73)で測定し、液温が25℃の場合は実測値を採用し、液温が25℃でない場合は装置内蔵の校正機能により表示された値を採用した。そして、当該pH調整がなされた被処理水試料が含有している金属元素の種類、濃度を測定した。当該測定結果を表1に示した。当該被処理水試料は、水銀を含有し、有価金属であるセレンを含有し、さらに鉄を含有していた。
【0029】
【0030】
pH値を調整した被処理水試料を600rpmで撹拌し、ここへ当該被処理水試料0.1Lに含有される水銀量の4モル倍量のDDTC-Feを添加した。このとき、当該混合液のpH値は1.4であった。
【0031】
被処理水試料へDDTC-Feの添加後、600rpmでの撹拌を継続して、60分間後迄、所定時間毎に混合液上部の液体のみの部分を測定試料として採取した。当該採取された測定試料中の水銀濃度およびセレン濃度を、ICP-AESを用いて定量分析した。そして、水銀濃度については、DDTC-Feの添加時の水銀濃度を100%とし、その添加から所定時間毎の水銀除去率を計算した。当該測定結果および計算結果を後記表2に記載する。
尚、DDTC-Feの添加直後から60分間後までにおける、反応の全期間にわたって被処理水試料のpH値は1.4~1.5であった。
【0032】
(実施例2)
【0033】
DDTC-Feに代えてピペラジン-1、4-ビス(カルボジチアート)の鉄塩を用い、被処理水試料の0.1Lに含有される水銀量の4モル倍量のピペラジン-1、4-ビス(カルボジチアート)の鉄塩を添加した以外は、実施例1と同様の操作を実施し、同様の定量分析および計算を実施した。当該測定結果および計算結果を後記表2に記載する。
尚、反応の全期間にわたって被処理水試料のpH値は1.4~1.5であった。
【0034】
(比較例1)
DDTC-Feに代えてDDTC-Cuを用い、被処理水試料の0.1Lに含有される水銀量の4モル倍量のDDTC-Cuを添加した以外は、実施例1と同様の操作を実施し、同様の定量分析および計算を実施した。当該測定結果および計算結果を後記表2に記載する。
尚、反応の全期間にわたって被処理水試料のpH値は1.4~1.5であった。
【0035】
(比較例2)
DDTC-Feに代えてDDTC-Znを用い、被処理水試料の0.1Lに含有される水銀量の4モル倍量のDDTC-Znを添加した以外は、実施例1と同様の操作を実施し、同様の定量分析および計算を実施した。当該測定結果および計算結果を下記表2に記載する。
尚、反応の全期間にわたって被処理水試料のpH値は1.4~1.5であった。
【0036】
【0037】
(実施例3)
水銀を含有する被処理水試料について、実施例1と同様にしてpH調整を行って、pH値1.5の被処理水試料を準備した。
キレート化剤として実施例1と同様のDDTC-Feを準備した。
【0038】
そして実施例1と同様に、被処理水試料の0.1Lに含有される水銀量の4モル倍量のDDTC-Feを、被処理水試料へ添加し室温にて600rpmで攪拌して混合液とした。
【0039】
実施例3に係る被処理水試料へDDTC-Feの添加後、90分間後迄、所定時間毎に混合液上部の液体のみの部分を測定試料として採取した。当該採取された測定試料中の水銀濃度を、ICP-AESを用いて定量分析した。そして、DDTC-Feの添加時の水銀濃度を100%とし、その添加から所定時間毎の水銀除去率を計算した。当該測定結果および計算結果を後記表3に記載する。
尚、反応の全期間にわたって被処理水試料のpH値は1.4~1.5であった。
【0040】
(比較例3)
水銀を含有する被処理水試料について、水酸化ナトリウムを添加して、pH値6.0の比較例3に係る被処理水試料を準備した。
被処理水試料として、pH値6.0の比較例3に係る被処理水試料を用いた以外は、実施例3と同様の操作を実施し、同様の定量分析および計算を実施した。当該測定結果および計算結果を後記表3に記載する。
尚、反応の全期間にわたって被処理水試料のpH値は5.9~6.0であった。
【0041】
(比較例4)
水銀を含有する被処理水試料について、水酸化ナトリウムを添加して、pH値9.0の比較例4に係る被処理水試料を準備した。
被処理水試料として、pH値9.0の比較例4に係る被処理水試料を用いた以外は、実施例3と同様の操作を実施し、同様の定量分析および計算を実施した。当該測定結果および計算結果を下記表3に記載する。
尚、反応の全期間にわたって被処理水試料のpH値は8.8~9.0であった。
【0042】
【0043】
(まとめ)
実施例1~3より、水銀を含有する被処理水のpH値を1.8以下に保ちながら、前記被処理水へジチオカルバミン酸構造を有する化合物の鉄塩を添加して、水銀を含有する沈殿を形成させる添加工程と、前記沈殿を形成した被処理水から、前記沈殿を除去する除去工程とを実施することで、水銀を含有する被処理水から短時間で水銀を除去出来ることが判明した。
【符号の説明】
【0044】
(1)被処理水
(2)キレート化剤
(3)pH値の管理
(4)固液分離操作
(5)固形物
(6)液体
(7)有価金属回収