(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】採血装置及び採血システム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/02 20060101AFI20230901BHJP
【FI】
A61M1/02 150
A61M1/02 160
(21)【出願番号】P 2019170433
(22)【出願日】2019-09-19
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 篤
【審査官】近藤 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-116767(JP,A)
【文献】特開2008-067779(JP,A)
【文献】特開2007-260304(JP,A)
【文献】特開2006-122336(JP,A)
【文献】特開平06-169985(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0135756(US,A1)
【文献】特表2018-528806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容室に採血バッグを収容して前記収容室を陰圧とすることで全血を採取する採血装置であって、
採血時の異常を検出する異常検出部と、
前記採血バッグの識別番号を含む採血データを取得する制御部と、
前記採血データを格納する記憶部と、を備え、
前記異常検出部は、時間当たりの採血量の増加に基づいて算出された採血流量が所定の基準値を下回る採血流量の低下による採血時の異常を検出し、
前記制御部は、前記異常検出部が、
前記採
血流量
の低下による採血時の異
常を検出した時に
規定の採血量の採血が完了したか否かに関わらず前記採血データに前記
採血流量の低下による採血時の異常を記録し、
さらに、前記
採血流量の低下による採血時の異常の記録を、前記採血データとともに電気通信回線を通じて集中監視装置に送信する通信部を備えた、採血装置。
【請求項2】
請求項
1記載の採血装置であって、前記制御部は、さらに採血開始時刻と採血完了時刻とを検出する時刻計測部を有し、前記異常検出部は前記採血開始時刻と前記採血完了時刻とに基づいて採血時間を検出し、前記採血時間が所定時間を超える場合には、
採血時間の超過による採血時の異常として検出し、前記
採血時間の超過による採血時の異常の発生を前記採血データに記録する、採血装置。
【請求項3】
請求項1
又は2記載の採血装置であって、さらに、前記採血データの表示を行う表示入力部を備え、前記記憶部は、過去の複数の前記採血データを格納し、前記制御部は、前記表示入力部からの操作入力に基づいて過去の前記採血データを前記記憶部から読み出して前記表示入力部に表示させる、採血装置。
【請求項4】
収容室に採血バッグを収容して前記収容室を陰圧とすることで全血を採取する採血装置の異常事象を収集する採血システムであって、採血時の異常を検出する異常検出部と、前記採血バッグの識別番号を含む採血データを取得する制御部と、前記採血データを格納する記憶部と、前記採血データを送出する通信部とを有し、
前記異常検出部は、時間当たりの採血量の増加に基づいて算出された採血流量が所定の基準値を下回る採血流量の低下による採血時の異常を検出し、前記制御部は、前記異常検出部が、
前記採
血流量
の低下による採血時の異
常を検出
した時に規定の採血量の採血が完了したか否かに関わらず前記採血データに前記
採血流量の低下による採血時の異常を記録し、前記通信部は、前記
採血流量の低下による採血時の異常を、前記採血データとともに電気通信回線を通じて集中監視装置に送信する採血装置と、
前記通信部を通じて送信された前記採血データを管理する集中監視装置と、を備えた、採血システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドナーから全血を採取する採血装置及び採血システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ドナーから提供された全血は、血液センターに送られて、赤血球製剤、血漿製剤、血小板製剤や全血製剤等の各種血液製剤に使用される。血液センターでは、製剤の品質及び安全性を確保する観点から、ドナーに関する情報とともに、採血装置の識別番号、採血バッグの種類・容量、採血バッグの識別番号、採血量、等の採血データを管理している。
【0003】
採血データの取得は、献血ルームや献血バス等の採血場所に設置された採血装置において行われる。特許文献1には、採血情報の入力スイッチを配置した設定パネルと、採血情報を記憶する記憶手段と、採血条件を設定する操作パネルと、採血情報を送信する無線通信手段と、を備えた採血装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
採血した血液を製剤化した際に、製剤に不良が生じる場合がある。製剤の不良の原因としては、採血の際に生じた不具合も含まれる。例えば、採血の際に何らかの不具合が生じて採血流量が低下してしまうと、採血針を通過する血球にストレスが掛かって溶血が発生したり、採血時間が長くなることで血小板が活性化して製剤に不良を生じる場合がある。
【0006】
このような製剤の不良の発生原因の特定のためには、採血データに加えて、採血中の異常に関する採血記録が手掛かりとなる。採血時の異常に関する採血記録は、オペレータが採血バッグに貼り付けられたラベルに記入する等の方法で行われている。しかしながら、オペレータの採血作業が忙しくなると、採血バッグのラベルへの記入が疎かになり、採血時の異常の記載漏れや誤記等が生じ、正確な原因特定が困難となる場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、オペレータの負担を増やすことなく、採血時の異常を記録できる採血装置及び採血システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点は、収容室にバッグを収容して前記収容室を陰圧とすることで全血を採取する採血装置であって、採血時の異常を検出する異常検出部と、前記採血バッグの識別番号を含む採血データを取得する制御部と、前記採血データを格納する記憶部と、を備え、前記制御部は、前記異常検出部が採血時の異常の検出時に前記採血データに異常事象を記録する、採血装置にある。
【0009】
本発明の別の一観点は、収容室にバッグを収容して前記収容室を陰圧とすることで全血を採取する採血装置の異常事象を収集する採血システムであって、採血時の異常を検出する異常検出部と、前記採血バッグの識別番号を含む採血データを取得する制御部と、前記採血データを格納する記憶部と、前記採血データを送出する通信部とを有し、前記制御部は、前記異常検出部が採血時の異常を検出すると前記採血データに異常事象を記録する、採血装置と、前記通信部を通じて送信された前記採血データを管理する集中監視装置と、を備えた、採血システムにある。
【発明の効果】
【0010】
上記観点の採血装置及び採血システムによれば、採血現場においてオペレータの負担を増やすことなく、採血中の異常を記録できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1の採血装置の内部構造を示す分解斜視図である。
【
図3】実施形態に係る採血装置及び採血システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1の採血装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図4の採血時の異常検出の動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図1の採血装置の表示入力部の表示画面の推移を示す説明図である。
【
図7】
図7Aは、採血画面から採血データ画面への推移を示す説明図であり、
図7Bは採血終了画面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る採血装置10は、陰圧を利用して供血者から血液を採血バッグ200内に採血する真空採血装置であり、献血ルームや献血用のバス等に配置されて用いられる。
【0014】
採血装置10は、採血バッグ200を収容するための収容室12が形成された箱型の筐体14と、箱型の筐体14の収容室12の上部に開閉自在に設けられた蓋体16とを備える。収容室12は、周壁部と底部とを備えた凹状に形成されており、上方に開口している。
図2に示すように、収容室12の背面側には、ヒンジ30が設けられており、ヒンジ30には蓋体16が開閉可能に取り付けられている。
【0015】
図1に示すように、蓋体16は、閉状態で後述する収容皿18に載置された採血バッグ200を上方から覆う。蓋体16は、採血中の採血バッグ200を外部から視認することができるように透明に構成されている。収容室12の上端部又は蓋体16の下端部には、蓋体16と収容室12とを気密にシールするシール部材15が設けられている。また、蓋体16には、採血バッグ200に接続された採血チューブ202を外部に導出させた状態で保持するチューブホルダ21が設けられている。
【0016】
図2に示すように、収容室12内には、採血バッグ200を載置するための収容皿18と、揺動機構20と、脱着部22とが設けられている。収容皿18は、採血バッグ200内に収容された抗血液凝固剤と供血者から採血した血液(全血)とを混和させるために、揺動可能に配置されており、脱着部22を介して揺動機構20に接続されている。収容皿18の底面には、磁石18aが設けられており、磁石18aを通じて脱着部22に脱着可能に装着される。脱着部22には、荷重センサ22aが設けられている。荷重センサ22aは、収容皿18に収容された採血バッグ200の重量を検出する。揺動機構20は、揺動用モータを備えており、収容皿18の傾斜方向を円周方向に沿って移動させる揺動運動を発生させる。
【0017】
図3に示すように、採血装置10の収容室12には、さらに、収容室12の内部のエアを排気して陰圧を発生させる排気ポンプ24と、収容室12内の陰圧を検出する圧力センサ26と、採血チューブ202を閉塞又は導通させるクランプ部28が設けられている。
【0018】
図1に示すように、筐体14の正面には、操作パネル32が設けられている。操作パネル32には、電源スイッチ34、操作スイッチ36及び表示入力部38が設けられている。操作スイッチ36は、例えば、機械式のボタンスイッチとして構成される。操作スイッチ36は、静電式又は感圧式のスイッチ等であってもよい。操作スイッチ36は、例えば、開始/停止スイッチ40、クランプ解除スイッチ42を含む。開始/停止スイッチ40は、採血の開始及び停止を手動で行うためのスイッチである。また、クランプ解除スイッチ42は、クランプ部28による採血チューブ202のクランプ状態(閉塞状態)を手動で解除するためのものである。
【0019】
表示入力部38は、例えば液晶ディスプレイよりなり、タッチパネル機能を備えている。そのため、表示入力部38は、採血装置10の操作するための入力を受け付ける入力部を兼ねる。
【0020】
図3に示すように、採血装置10は、さらに、制御部43と、記憶部46と、読取器47と、通信部48と、を備えている。制御部43は、採血装置10の各部を制御することにより、採血動作を行う。また、制御部43は、採血開始時刻及び採血終了時刻を検出する時刻計測部44と、採血時の異常を検出する異常検出部45とを含む。このうち、制御部43の異常検出部45は、採血中の流量低下による採血時の異常、採血経過時間の超過による採血時の異常、採血装置10のエラーによる採血時の異常を検出する。
【0021】
記憶部46は、採血毎に制御部43が取得した採血データを格納する。採血データは、採血装置10の識別番号、採血バッグ200の種別及び容量、個別の採血バッグ200のバッグ識別番号(バッグID)206、採血開始時刻、採血終了時刻、採血所要時間、実際の採血量、及び採血時の異常に関する情報、及び終了に関する情報(終了状態情報)を含む。終了状態情報は、規定の採血量の採血が完了したか、又は規定の採血量に到達せずに採血を途中終了したかを表す情報である。
【0022】
記憶部46は、過去に行った採血の記録の参照作業を可能とするべく、過去の採血データを格納する。記憶部46は、例えば過去1週間分の採血データを格納することができる。記憶部46の容量は、例えば、140件程度の採血データを格納可能な容量とすることができる。この場合には、採血装置10の1日当たりの採血回数を20回とすると、1週間分の採血データを格納できる。
【0023】
読取器47は、例えばバーコードリーダとして構成することができ、採血バッグ200に付された種別番号(種別ID)204と、バッグ識別番号(バッグID)206とを読み取る。種別番号204は、採血バッグ200の製造業者によって採血バッグ200に付された番号であり、採血バッグ200の種類及び採血バッグ200の容量(200ml又は400ml)に関する情報に対応付けられる。バッグ識別番号206は、採血事業者によって発行された個々の採血バッグ200を特定するための識別番号である。読取器47によって読み取られた種別番号204及びバッグ識別番号206は、制御部43によって採血データに記録される。
【0024】
通信部48は、以下に説明する採血システム50の集中監視装置54に接続されており、採血データを集中監視装置54に送信する。採血システム50は、上記の採血装置10に加えて採血装置10を監視する集中監視装置54を備えている。集中監視装置54は、電気通信回線52を介して通信部48に接続されており、通信部48から送信された採血データを受信して格納する。
【0025】
また、採血システム50には、電気通信回線52を介して採血事業者側の情報処理装置56が接続可能となっている。集中監視装置54に送信されて格納された採血データは、電気通信回線52を介して情報処理装置56に提供される。
【0026】
採血事業者側の情報処理装置56は、ドナーを特定可能なドナー識別番号と、ドナーの採血場所、採血日時、ドナーの血液型に関する情報と、採血を行ったオペレータの識別番号が、バッグ識別番号206と対応付けられて管理されている。採血事業者が、採血した血液を製剤化する際には、製剤識別番号が発行される。製剤識別番号は、バッグ識別番号206と対応付けられて情報処理装置56内に格納されている。したがって、採血事業者は、バッグ識別番号206を通じて不良が生じた製剤に関連する採血データを特定できる。
【0027】
以下、採血装置10及び採血システム50の動作及び機能について
図4~
図7を参照して説明する。
【0028】
採血装置10の正面の電源スイッチ34(
図1参照)を押して採血装置10の電源を投入すると、
図4のステップS10に移行し、採血装置10は、表示入力部38に、
図6に示す設定画面60を表示させる。
図6の中央に示すように設定画面60は、採血バッグ選択ボタン62と、吸引圧選択ボタン64と、履歴表示ボタン66と、採血開始ボタン68とを含む。
【0029】
採血バッグ選択ボタン62には、初期設定値としての採血バッグ200の種類及び容量(例えば、200ml)が表示される。採血バッグ選択ボタン62をタッチすると、制御部43は、表示入力部38の表示を、
図6の左上に示す採血選択画面72に切り換える。採血選択画面72には、採血バッグ200の種類(メーカー名)及び容量が表示されたバッグ選択ボタン72a~72f及び復帰ボタン72gが含まれる。
【0030】
採血選択画面72において、オペレータが所望の容量及び種類の採血バッグ200を選択すると、制御部43は、表示入力部38の表示を設定画面60に復帰させる。そして、制御部43は、設定画面60の採血バッグ選択ボタン62に選択中の採血バッグ200の種類及び採血量を表示させる。なお、採血選択画面72において、バッグ選択ボタン72a~72fを選択せずに復帰ボタン72gをタッチすると、制御部43は、採血バッグ200の種類及び採血量を変更せずに、表示入力部38の表示を設定画面60に戻す。この場合には、設定画面60の採血バッグ選択ボタン62には、選択前の採血バッグ200の種類及び採血量が表示される。
【0031】
オペレータが吸引圧選択ボタン64をタッチすると、制御部43は、表示入力部38に
図6の右上の吸引圧設定画面74を表示させる。吸引圧設定画面74には、採血を行う際の陰圧を設定するOFF設定ボタン74a、弱設定ボタン74b、中設定ボタン74c及び強設定ボタン74dの各ボタンが表示されている。OFF設定ボタン74aを選択すると、制御部43が採血の際に、吸引を行わずに、供血者と採血バッグ200との高低差による自然落下のみで採血を行う設定となる。弱設定ボタン74bを選択すると、制御部43が採血の際に、予め設定された例えば-10mmHg~-100mmHgの範囲の陰圧となるように、排気ポンプ24を間欠動作させる制御を行う。中設定ボタン74cを選択すると、制御部43が採血の際に、例えば、-100mmHg~-150mmHgの範囲の陰圧となるように、排気ポンプ24を間欠動作させる制御を行う。強設定ボタン74dを選択すると、制御部43が採血の際に、例えば-150mmHg~-220mmHgの範囲の陰圧となるように、排気ポンプ24を間欠動作させる制御を行う。
【0032】
吸引圧設定画面74において、オペレータによっていずれかの陰圧設定が行われると、
図6の中央の設定画面60に復帰する。オペレータが履歴表示ボタン66をタッチすると、制御部43は、過去の採血における採血データを記憶部46から読み出し、
図6の左下の採血データ画面76を表示入力部38の画面を表示させる。採血データ画面76は、データ選択ボタン76a、76b、復帰ボタン76c及び採血データ表示部76dを含む。採血データ表示部76dには、データ番号とともに、採血量、採血開始時刻、採血終了時刻、採血時間及び採血時の異常情報を含む採血データが表示される。通信部48を使用して採血事業者に採血データの全部又は一部を送信できない場合には、オペレータが採血バッグ200に添付される記入欄に採血データの情報を記入することで、採血データの内容を採血事業者に伝達することになる。このような場合には、採血装置10の履歴機能を使用することで、オペレータが記入欄に書き込んだ内容と、採血データとを突き合わせて確認することで、記入漏れの確認や誤記の修正を行うことができる。
【0033】
採血データ画面76において、データ選択ボタン76a、76bを選択すると、採血データ画面76は、前後の採血データの表示に切り換わる。また、採血データ画面76において、復帰ボタン76cを選択すると、設定画面60に復帰する。
【0034】
オペレータは、採血に使用する採血バッグ200にバッグ識別番号206が印刷されたシールを採血バッグ200に貼り付け、読取器47で採血バッグ200の種別番号204とバッグ識別番号206とを読み込ませる。これにより、制御部43は、採血データに、採血バッグ200の種別と、採血バッグ200の容量と、バッグ識別番号206とを採血データに記録する。また、制御部43は、採血装置10の識別番号を採血データに書き込む。
【0035】
オペレータが
図1に示すように、所定の採血バッグ200を収容皿18の上に載置し、採血チューブ202をクランプ部28にセットして蓋体16を閉じ、採血針を供血者に穿刺することで、採血の準備が完了する。その後、オペレータが
図6の設定画面60の採血開始ボタン68をタッチすると、
図4のステップS12に移行して採血装置10が採血を開始する。
【0036】
ステップS12において、制御部43は、揺動機構20及び排気ポンプ24を作動させる。制御部43は、圧力センサ26の検出値が所定の陰圧に到達した後、クランプ部28を開放して供血者からの血液の採取を開始する。その後、ステップS14に移行し、制御部43の時刻計測部44が、採血開始時刻を検出し、制御部43が採血データに記録する。
【0037】
次に、ステップS16に移行して、制御部43は、表示入力部38に、
図6の右下の採血画面78を表示させる。
図6に示すように、採血画面78は、採血バッグ表示部62Aと、吸引圧選択ボタン64と、履歴表示ボタン66と、採血状態表示部78dと、採血残量表示部78eと、終了予測表示部78fとを含む。採血バッグ表示部62Aは、選択することができない表示機能のみとなっており、選択中の採血バッグ200の種類と採血量(容量)が表示される。吸引圧選択ボタン64は、選択可能なボタンとなっており、これを選択すると右上の吸引圧設定画面74に移行する。オペレータは供血者の状態を確認し、必要に応じて、吸引圧設定画面74を操作することで、採血の途中で吸引圧を変更して採血速度を調節できる。
【0038】
採血状態表示部78dは、採血流量が正常か否かを表示する。流量が低下した場合には、採血状態表示部78dに警告表示がなされ、オペレータに注意を促す。この警告表示は、例えば流量の低下度合いに応じて採血画面78の背景の色を変える態様で行ってもよい。例えば、正常時の緑色から、流量の低下具合に応じて、黄色から赤色に変色させる態様で表示することにより、オペレータに注意を促すようにしてもよい。採血残量表示部78eには、採血完了までの残量が表示され、終了予測表示部78fには、採血終了までの時間が分単位で表示される。
【0039】
なお、
図7Aに示すように、採血画面78にも履歴表示ボタン66が含まれており、オペレータが履歴表示ボタン66を押すと、採血の途中であっても過去の採血データを表示する採血データ画面76に切り換わる。これにより、オペレータは、採血の途中の空き時間を利用して、採血バッグ200の記入欄の記載内容の確認作業を行うことができる。
図7Aの採血データ画面76で復帰ボタン76cを押すと、採血画面78に復帰する。
【0040】
次に、
図4のステップS18に移行して、制御部43の異常検出部45が採血時の異常の発生を監視する。異常検出部45は、採血装置10の採血動作と
並行して、
図5に示すステップS26~ステップS44に示す動作で採血時の異常の監視を行う。まず、ステップS26において、異常検出部45は、荷重センサ22aの検出値に基づいて採血バッグ200の採血量を計測する。採血量は荷重センサ22aの検出する重量を血液の比重で除することで求まる。
【0041】
その後、ステップS28に移行して、異常検出部45は所定時間(例えば、5秒)待機する。所定時間が経過したら(YES)、ステップS30に移行して、異常検出部45は、2回目の採血バッグ200の採血量の計測を行う。その後、ステップS32に移行して、異常検出部45は、時間当たりの採血量の増加に基づいて、採血流量(採血速度)を算出する。
【0042】
その後、ステップS34において、異常検出部45は、ステップS32で検出した採血流量が、所定の基準値を下回っているか否かを判断する。例えば、採血流量が、20分以内に規定量の採血が完了しない程度に低下している場合には採取した血液に何らかの異常が生じるおそれがあるため、異常検出部45は、採血流量の低下による採血時の異常を検出する。ステップS34において、異常検出部45が、採血流量の低下を検出した場合(YES)には、制御部43がステップS36に移行して採血流量の低下による採血時の異常情報を採血データに記録する。また、ステップS36において、制御部43は、表示入力部38の採血画面78に警告表示を行い、オペレータに吸引圧力の設定変更等の対応を促す。その後、ステップS28に戻る。一方、ステップS34において採血流量の低下が検出されない場合(NO)には、ステップS38に移行する。
【0043】
ステップS38において、異常検出部45は、採血の開始からの経過時間が所定時間を超えるか否かを判断する。採血の開始からの経過時間が所定時間(例えば、20分)を超える場合(YES)には、ステップS40に移行し、異常検出部45は、採血時間の超過による採血時の異常情報を採血データに記録する。一方、ステップS38において、採血開始からの経過時間が所定時間を超えない場合(NO)には、ステップS42に移行する。
【0044】
ステップS42において、異常検出部45は、採血装置10のエラー発生を検出する。ここでは、異常検出部45は、採血装置10の揺動機構20の異常、排気ポンプ24の異常、電源電圧の異常、及びオペレータによる停止スイッチ40の押圧のいずれかが検出された場合には、エラーが発生したものと判断(YES)してステップS44に移行する。ステップS44において、制御部43は、エラー発生により採血が途中終了したことを採血データに記録する。一方、ステップS42においてエラーが検出されない場合(NO)には、ステップS28に戻る。
【0045】
採血装置10は、一定期間ごとに、
図4のステップS20において採血の終了判定を行う。ステップS20では、
図5のステップS38又はステップS42で異常(エラー)が検出された場合、及び、採血バッグ200の採血量が規定値に到達した場合のいずれかの条件が満たされた場合に、制御部43が採血を終了する旨の判断(YES)を行う。
【0046】
一方、ステップS20において、ステップS42のエラーが検出されず、且つ、採血バッグ200の採血量が規定値に到達していない場合には、制御部43は採血を終了しないと判断(NO)して、ステップS16に戻って採血を継続する。採血画面78は、採血の進行に伴って採血残量表示部78e(
図6参照)の残量表示等の表示内容を更新する。
【0047】
ステップS20において、採血を終了する旨の判断(YES)がなされた場合には、ステップS22に移行する。そして、ステップS22において、制御部43の時刻計測部44が採血終了時刻を検出し、採血データに採血終了時刻を記録する。また、ステップS22において、異常検出部45が、採血開始時刻及び採血終了時刻に基づいて採血所要時間を求め、所定の基準時間を超える場合には、採血時の異常が発生したものとして採血データに異常事象の記録を行う。
【0048】
その後、ステップS24に移行して、制御部43は、揺動機構20及び排気ポンプ24を停止させ、収容室12を大気開放する。また、制御部43は、採血データに採血完了を記録する。
【0049】
次に、ステップS25において、制御部43は、表示入力部38の画面に、
図7Bに示す採血終了画面90を表示させる。
【0050】
採血終了画面90は、採血バッグ表示部62Aと、吸引設定表示部64Aと、終了表示部92と、採血データ表示部94と、確認ボタン96と、を含む。採血バッグ表示部62Aには、選択した採血バッグ200の種類及び採血量が表示され、吸引設定表示部64Aには吸引設定状態が表示される。終了表示部92には、エラーが検出されずに終了した場合には、採血が設定された採血量に到達して完了したことを示す正常終了の表示がなされる。採血時の異常の検出により採血が途中で終了した場合には採血中断の表示が行われる。また、採血データ表示部94には、実際の採血量、採血開始・終了時刻、採血時間、流量低下回数が表示される。採血終了画面90において、確認ボタン96を選択すると、採血装置10は、
図4のステップS10に移行して次の採血を受け付ける設定画面60(
図6参照)を表示する。
【0051】
採血システム50は、採血装置10から集中監視装置54に、所定のタイミングで通信部48及び電気通信回線52を介して採血データが送信される。このようにして集中監視装置54に集められた採血データは、電気通信回線52を介して採血事業者の情報処理装置56に送られ、ドナー識別番号や製剤識別番号と対応づけられ、血液製剤の品質管理に用いられる。
【0052】
本実施形態の採血装置10及び採血システム50は、以下の効果を奏する。
【0053】
本実施形態の採血装置10は、収容室12に採血バッグ200を収容して収容室12を陰圧とすることで全血を採取する採血装置10に関する。採血装置10は、採血時の異常を検出する異常検出部45と、採血バッグ200の識別番号を含む採血データを取得する制御部43と、採血データを格納する記憶部46と、を備え、制御部43は、異常検出部45が採血時の異常の検出時に、採血データに異常事象を記録する。
【0054】
上記の構成によれば、オペレータによる採血バッグ200への異常事象の記入と平行して、採血装置10が採血時の異常事象を採血データに書き込むため、オペレータの記入漏れや誤記による採血データの精度低下を防ぐことができる。
【0055】
上記の採血装置10において、異常検出部45は、採血の際の血液の流量を監視し、採血流量が所定値よりも低下した場合には、制御部43は採血データに、流量低下による採血時の異常の発生を記録するようにしてもよい。この構成によれば、採血流量の低下による異常を採血データに記録することができ、採血データの精度をより一層高めることができる。
【0056】
上記の採血装置10において、制御部43は、さらに採血開始時刻と採血完了時刻とを検出する時刻計測部44を有し、異常検出部45は、採血開始時刻と採血完了時刻とに基づいて採血時間を検出し、採血時間が所定時間を超える場合には、採血時の異常として検出し、採血時の異常の発生を採血データに記録する。これにより、採血データの精度をより一層高めることができる。
【0057】
上記の採血装置10において、さらに、前記採血データの表示を行う表示入力部38を備え、記憶部46は、過去の複数の採血データを格納し、制御部43は、表示入力部38からの操作入力に基づいて過去の採血データを記憶部46から読み出して表示入力部38に表示させてもよい。この構成によれば、採血バッグ200の記入欄の採血時の異常の記載事項と採血データとを照合することができ、記載漏れや誤記を防ぐことができる。
【0058】
上記の採血装置10において、さらに採血時の異常に関する記録を含む採血データを、電気通信回線52を通じて集中監視装置54に送信する通信部48を備えてもよい。これにより、オペレータの採血バッグ200への採血時の異常事象の記入が不要となり、オペレータの作業負担を軽減できる。
【0059】
本実施形態の採血システム50は、収容室12に採血バッグ200を収容して収容室12を陰圧とすることで全血を採取する採血装置10であって、採血時の異常を検出する異常検出部45と、採血バッグ200の識別番号を含む採血データを取得する制御部43と、採血データを格納する記憶部46と、採血データを送出する通信部48とを有し、制御部43は、異常検出部45が採血時の異常を検出すると採血データに異常事象を記録する、採血装置10と、通信部48を通じて送信された採血データを管理する集中監視装置54と、を備える。
【0060】
この構成によれば、オペレータの採血バッグ200への採血時の異常事象の記入が不要となり、オペレータの作業負担を軽減できる。
【0061】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
10…採血装置 12…収容室
22a…荷重センサ 38…表示入力部
43…制御部 44…時刻計測部
45…異常検出部 46…記憶部
48…通信部 54…集中監視装置