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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】複合管、及び複合管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/11 20060101AFI20230901BHJP
   F16L 59/147 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
F16L11/11
F16L59/147
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019190406
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021067276
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間▲崎▼ 卓明
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-052759(JP,A)
【文献】特開2007-211887(JP,A)
【文献】実公昭35-11259(JP,Y1)
【文献】特開平3-131282(JP,A)
【文献】特開昭56-42643(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1837904(KR,B1)
【文献】中国実用新案第201009432(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L
B32B1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体が流れる本管と、
前記本管を前記本管の径方向の外側から覆い、前記本管の軸方向に伸縮可能な外側管と、
前記外側管の前記径方向の内側で、前記本管を前記径方向の外側から覆い、前記本管の中心線に沿った面で切断した切断形状が凹凸形状とされ、前記外側管との間に前記軸方向に連続して延びる空間を前記本管の周方向で少なくとも一部に形成させ、前記周方向に複数並んで配置されている樹脂材料で形成された内側板と、
を備える複合管。
【請求項2】
前記軸方向から見て、前記内側板には、前記本管側に向かって膨出する膨出部が形成されている請求項1に記載の複合管。
【請求項3】
前記軸方向から見て、前記内側板には、折れ曲がった状態で前記外側管側へ突出する突出部が形成されている請求項1又は2に記載の複合管。
【請求項4】
前記外側管は、前記中心線に沿った面で切断した切断形状が凹凸形状とされ、前記径方向の外側へ凸となる山部と、一対の側壁と底壁とから構成され、前記径方向の外側が凹となる谷部とを有し、
前記内側板は、前記径方向の外側へ凸となる山部と、一対の側壁と底壁とから構成され、前記径方向の外側が凹となる谷部とを有し、
前記内側板の山部の前記軸方向の長さは、前記外側管において前記軸方向で隣り合う底壁の離間距離と比して長い請求項1~3の何れか1項に記載の複合管。
【請求項5】
前記外側管は、前記中心線に沿った面で切断した切断形状が凹凸形状とされ、前記径方向の外側へ凸となる山部と、一対の側壁と底壁とから構成され、前記径方向の外側が凹となる谷部とを有し、
前記内側板は、前記径方向の外側へ凸となる山部と、一対の側壁と底壁とから構成され、前記径方向の外側が凹となる谷部とを有し、
前記外側管の底壁の前記軸方向の長さは、前記内側板において前記軸方向で隣り合う山部の離間距離と比して長い請求項1~4の何れか1項に記載の複合管。
【請求項6】
前記内側板の曲げ剛性は、前記外側管の曲げ剛性と比して高い請求項1~5の何れか1項に記載の複合管。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の複合管の製造方法であって、
前記軸方向に送り出された前記本管の前記径方向の外側に、搬送しながら複数の前記内側板を配置する配置工程と、
搬送される前記内側板の前記径方向の外側に、円筒状の溶融樹脂を押し出す押出工程と、
押し出された円筒状の溶融樹脂を搬送しながら金型の成形面に吸着させて前記外側管を成形する成形工程と、
を備える複合管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合管、及び複合管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、本管と、本管の外周側に配置されたコルゲート層と、本管とコルゲート層との間に設けられた緩衝層と備える複合管が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-9072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の複合管では、緩衝層は、発泡樹脂によって形成されている発泡樹脂層である。この複合管の本管を流れる流体の保温性を確保するため、発泡樹脂層の厚さを厚くすることがある。また、複合管を管継手等へ接続するために、複合管のコルゲート層及び発泡樹脂層を軸方向に収縮させて本管の端部部分を露出させることがある。
【0005】
しかし、発泡樹脂層の厚さを厚くすると、コルゲート層(外側管)及び発泡樹脂層が充分に収縮しなくなり、本管の端部部分を露出させることが困難になることが考えられる。
【0006】
本発明の課題は、本管を流れる流体の保温性を確保した上で、本管の端部部分を容易に露出させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様の複合管は、内部に流体が流れる本管と、前記本管を前記本管の径方向の外側から覆い、前記本管の軸方向に伸縮可能な外側管と、前記外側管の前記径方向の内側で、前記本管を前記径方向の外側から覆い、前記本管の中心線に沿った面で切断した切断形状が凹凸形状とされ、前記外側管との間に前記軸方向に連続して延びる空間を前記本管の周方向で少なくとも一部に形成させ、前記周方向に複数並んで配置されている樹脂材料で形成された内側板と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、本管を本管の径方向の外側から覆う外側管は、本管の軸方向に伸縮可能なされている。さらに、外側管の径方向の内側で、本管を本管の径方向の外側に配置された複数の内側板は、樹脂材料で形成され、中心線に沿った面で切断した切断形状が凹凸形状とされている。
【0009】
また、内側板は、外側管との間に軸方向に連続して延びる空間を本管の周方向で少なくとも一部に形成させている。つまり、本管を流れる流体の保温性を確保するための断熱空間が、内側板と外側管との間に形成されている。また、前述したように、外側管及び内側板は、中心線に沿った面で切断した切断形状が凹凸形状とされている。つまり、外側管及び内側板は、軸方向に収縮するようになっている。
【0010】
以上より、複合管では、本管を流れる流体の保温性を確保した上で、外側管及び内側板を軸方向に収縮させることで、本管の端部部分を容易に露出させることができる。
【0011】
第2態様の複合管は、第1態様の複合管において、前記軸方向から見て、前記内側板には、前記本管側に向かって膨出する膨出部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、軸方向から見て、内側板には、本管側に向かって膨出する膨出部が形成されている。この膨出部によって、外側管に対する本管の移動量を少なくすることができる。
【0013】
第3態様の複合管は、第2態様の複合管において、前記軸方向から見て、前記内側板には、折れ曲がった状態で前記外側管側へ突出する突出部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、軸方向から見て、内側板には、折れ曲がった状態で外側管側へ突出する突出部が形成されている。この突出部によって、外側管に対する内側板の移動が規制されることで、外側管に対する本管の移動量を少なくすることができる。
【0015】
第4態様の複合管は、第1~第3態様の何れか1態様に記載の複合管において、前記外側管は、前記中心線に沿った面で切断した切断形状が凹凸形状とされ、前記径方向の外側へ凸となる山部と、一対の側壁と底壁とから構成され、前記径方向の外側が凹となる谷部とを有し、前記内側板は、前記径方向の外側へ凸となる山部と、一対の側壁と底壁とから構成され、前記径方向の外側が凹となる谷部とを有し、前記内側板の山部の前記軸方向の長さは、前記外側管において前記軸方向で隣り合う底壁の離間距離と比して長いことを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、内側板の山部の軸方向の長さは、外側管において軸方向で隣り合う底壁の離間距離と比して長い。このため、内側板の山部が、外側管において軸方向で隣り合う底壁の間に嵌るのが抑制される。つまり、内側板と外側管との間に、熱の伝達を抑制する断熱空間を形成することができる。
【0017】
第5態様の複合管は、第1~第4態様の何れか1態様に記載の複合管において、前記外側管は、前記中心線に沿った面で切断した切断形状が凹凸形状とされ、前記径方向の外側へ凸となる山部と、一対の側壁と底壁とから構成され、前記径方向の外側が凹となる谷部とを有し、前記内側板は、前記径方向の外側へ凸となる山部と、一対の側壁と底壁とから構成され、前記径方向の外側が凹となる谷部とを有し、前記外側管の底壁の前記軸方向の長さは、前記内側板において前記軸方向で隣り合う山部の離間距離と比して長いことを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、外側管の底壁の軸方向の長さは、内側板において軸方向で隣り合う山部の離間距離と比して長い。このため、外側管の谷部が、内側板において軸方向で隣り合う山部の間に嵌るのが抑制される。つまり、内側板と外側管との間に、熱の伝達を抑制する断熱空間を形成することができる。
【0019】
第6態様の複合管は、第1~第5態様の何れか1態様に記載の複合管において、前記内側板の曲げ剛性は、前記外側管の曲げ剛性と比して高いことを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、内側板の曲げ剛性は、外側管の曲げ剛性と比して高い。このため、内側板の変形に起因して本管が径方向に移動するのを抑制することができる。
【0021】
第7態様の複合管の製造方法によれば、請求項1~6の何れか1項に記載の複合管の製造方法であって、前記軸方向に送り出された前記本管の前記径方向の外側に、搬送しながら複数の前記内側板を配置する配置工程と、搬送される前記内側板の前記径方向の外側に、円筒状の溶融樹脂を押し出す押出工程と、押し出された円筒状の溶融樹脂を搬送しながら金型の成形面に吸着させて前記外側管を成形する成形工程と、を備えることを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、配置工程、押出工程、及び成形工程をこの順番で行うことで、1ラインで複合管を製造することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る複合管によれば、本管を流れる流体の保温性を確保した上で、本管の端部部分を容易に露出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(A)(B)第1実施形態に係る複合管を示した正面図、及び斜視図である。
図2】第1実施形態に係る複合管を示した断面図である。
図3】第1実施形態に係る複合管を示した拡大斜視図である。
図4】第1実施形態に係る複合管に備えられた外側管の曲げ剛性と内側板の曲げ剛性とを比較する方法を説明するのに用いた説明図である。
図5】第1実施形態に係る複合管の製造方法であって、全体を示した概略工程図である。
図6】第1実施形態に係る複合管の製造方法であって、配置工程を示した工程図である。
図7】第1実施形態に係る複合管の製造方法であって、押出工程と成形工程とを示した工程図である。
図8】第1実施形態に係る複合管の製造方法であって、成形工程で用いられる金型を示した斜視図である。
図9】第1実施形態に係る複合管の製造方法であって、成形工程で用いられる金型を示した斜視図である。
図10】(A)(B)第2実施形態に係る複合管を示した正面図、及び斜視図である。
図11】第2実施形態に係る複合管を示した断面図である。
図12】第2実施形態に係る複合管を示した拡大断面図である。
図13】第3実施形態に係る複合管を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る複合管、及び複合管の製造方法の一例について図1図9を用いて説明する。なお、図中に示す矢印Sは、複合管の軸方向を示し、矢印Rは、複合管の径方向を示す。
【0026】
なお、各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。また、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。さらに、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0027】
本明細書において「工程」との語には、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その目的が達成されるものであれば、当該工程も本用語に含まれる。本明細書において、組成物中の各成分の量は、各成分に該当する物質が組成物中に複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。本明細書において、「主成分」とは、特に断りがない限り、混合物中における質量基準の含有量が最も多い成分をいう。
【0028】
(複合管10の構成)
複合管10は、図1(A)(B)に示されるように、本管12と、本管12を径方向の外側から覆うように配置された外側管20と、外側管20の径方向の内側で、本管12を径方向の外側から覆うように配置された複数の内側板30とを備えている。
【0029】
なお、複合管10の中心線CL01は、本管12の中心線、及び外側管20の中心線の中心線でもある。このため、複合管10の軸方向は、本管12の軸方向、及び外側管20の軸方向の軸方向でもある。さらに、複合管10の径方向は、本管12の径方向、及び外側管20の径方向でもある。
【0030】
〔本管12〕
本管12は、内部に流体が流れる樹脂管であり、図1(A)(B)に示されるように、軸方向に延びている。本管12を形成するために用いる樹脂としては、例えば、ポリブテン、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、及びポリプロピレン等のポリオレフィン、並びに塩化ビニル等が挙げられ、樹脂は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。中でも、ポリブテンが好適に用いられ、ポリブテンを主成分として含むことが好ましく、例えば、本管12を構成する樹脂材料中において85質量%以上含むことがより好ましい。また、本管12を構成する樹脂材料には、他の添加剤を含有してもよい。
【0031】
本管12の径(外径)としては、特に限定されるものではないが、例えば、10〔mm〕以上100〔mm〕以下の範囲とすることができ、12〔mm〕以上35〔mm〕以下の範囲が好ましい。また、本管12の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば1.0〔mm〕以上5.0〔mm〕以下の範囲とすることができ、1.4〔mm〕以上3.2〔mm〕以下が好ましい。
【0032】
〔外側管20〕
外側管20は、樹脂材料で形成されており、図1(A)(B)に示されるように、軸方向に延びている。
【0033】
軸方向から見て、外側管20は、円形状とされている。さらに、中心線CL01に沿った面で切断した外側管20の切断形状は、図2に示されるように、凹凸形状とされている。換言すれば、中心線CL01に沿った面で外側管20を切断した切断形状は、波形状とされている。このように外側管20は、コルゲート管とされている。
【0034】
具体的には、外側管20は、径方向の外側(中心線CL01に対して離れる側)へ凸となる山部22と、一対の側壁26と底壁28とから構成されると共に径方向の外側が凹となる谷部24と、を有している。そして、山部22と谷部24とが、軸方向に交互に並んでいる。
【0035】
外側管20の径(最外部の外径)としては、例えば13〔mm〕以上130〔mm〕以下の範囲とすることができる。外側管20の厚さは、外側管20を軸方向に収縮させるため、最も薄い部分で0.25〔mm〕以上、最も厚い部分で0.4〔mm〕以下であることが好ましい。
【0036】
また、本実施形態では、図3に示されるように、底壁28の軸方向の長さ(図中L01)を「1」とした場合に、山部22の軸方向の長さ(図中L02)は、「1.2」とされ、側壁26の高さ(図中L03)は、「0.5」とされている。さらに、長さL01を「1」とした場合に、軸方向で隣り合う底壁28の離間距離(図中L04)は、「1.3」とされている。
【0037】
また、外側管20を形成するために用いる樹脂としては、例えば、ポリブテン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び架橋ポリエチレン等のポリオレフィン、並びに塩化ビニル等が挙げられ、樹脂は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。中でも、低密度ポリエチレンが好適に用いられ、低密度ポリエチレンを主成分として含むことが好ましく、例えば外側管20を構成する樹脂材料中において80質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましい。
【0038】
この構成において、軸方向に圧縮される圧縮力が外側管20に負荷されると、外側管20は、軸方向に収縮するようになっている。
【0039】
〔内側板30〕
内側板30は、樹脂材料で形成されており、図1(A)(B)に示されるように、軸方向延びている。そして、内側板30は、4個設けられ、4個の内側板30は、周方向に並んでいる。
軸方向から見て、内側板30は、径方向の内側(中心線CL01に対して近づく側)が凸となる湾曲状とされており、内側板30には、本管12側に向かって膨出する膨出部44が形成されている。この膨出部44は、径方向の外側から本管12に接触している。また、隣り合う一対の内側板30の端部は接触し、一対の内側板30の端面は、径方向の外側を向き、径方向の内側から外側管20に接触している。なお、本実施形態で、「膨出」とは、基端から先端に向かって、徐々に隆起幅を狭くしなら隆起している状態である。
【0040】
これにより、外側管20と内側板30との間に、外側管20と内側板30とが径方向で離間することで形成された空間46が、周方向に並んでいる。さらに、内側板30と本管12との間に、内側板30と本管12とが径方向で離間することで形成された空間48が、周方向に並んでいる。このように、外側管20内側板30との間には、軸方向に連続して延びる空間46が形成されており、内側板30と本管12との間には、軸方向に連続して延びる空間48が形成されている。そして、空間46と空間48とは、熱の伝達を抑制する断熱空間(所謂「断熱層」)として機能しており、周方向に交互に配置されている。
【0041】
さらに、中心線CL01に沿った面で切断した内側板30の切断形状は、図2に示されるように、凹凸形状とされている。換言すれば、中心線CL01に沿った面で内側板30を切断した切断形状は、波形状とされている。このように内側板30は、コルゲート板とされている。
【0042】
具体的には、内側板30は、径方向の外側へ凸となる山部32と、一対の側壁36と底壁38とから構成される共に径方向の外側が凹となる谷部34と、を有している。そして、山部32と谷部34とが、軸方向に交互に並んでいる。
【0043】
また、内側板30の厚さは、内側板30を軸方向に収縮させるため、最も薄い部分で0.1〔mm〕以上、最も厚い部分で0.4〔mm〕以下であることが好ましい。
【0044】
さらに、本実施形態では、図3に示されるように、外側管20の底壁28の軸方向の長さL01を「1」とした場合に、内側板30の山部32の軸方向の長さ(図中L12)が「1.4」とされている。また、長さL01を「1」とした場合に、内側板30の底壁38の軸方向の長さ(図中L11)は、「0.8」とされ、側壁36の高さ(図中L13)は、「0.7」とされている。さらに、長さL01を「1」とした場合に、軸方向で隣り合う山部32の離間距離(図中L14)は、「0.9」とされている。
【0045】
また、内側板30を形成するために用いる樹脂としては、例えば、ポリブテン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び架橋ポリエチレン等のポリオレフィン、並びに塩化ビニル等が挙げられ、樹脂は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。中でも、低密度ポリエチレンが好適に用いられ、低密度ポリエチレンを主成分として含むことが好ましく、例えば内側板30を構成する樹脂材料中において80質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましい。
【0046】
また、内側板30の曲げ剛性は、外側管20の曲げ剛性と比して高くされている。以下曲げ剛性を比較する方法について説明する。凹凸形状を維持した状態で平に展開した矩形状のテストピースの両端を、図4に示されるように、支持する。そして、テストピースの中心部分を単位荷重Fで押圧し、荷重点での押圧方向の変位を計測する。内側板30の曲げ剛性は、外側管20の曲げ剛性と比して高くされているため、内側板30のテストピースにおける押圧方向の変位は、外側管20のテストピースにおける押圧方向の変位と比して小さくなる。
【0047】
なお、外側管20のテストピースの計算モデル、及び内側板30のテストピースの計算モデルを作成し、有限要素法によるシミュレーション解析によって曲げ剛性を比較してもよい。また、テストピースの大きさについては、平面視で同一形状であればよく、例えば、30〔mm〕×30〔mm〕であってもよい。
【0048】
この構成において、軸方向に圧縮される圧縮力が内側板30に負荷されると、内側板30は、軸方向に収縮するようになっている。
【0049】
(複合管10の製造方法)
次に、複合管10の製造方法について説明する。
複合管10の製造方法は、図5に示されるように、軸方向に搬送される本管12の径方向の外側に、4個の内側板30を配置する配置工程S1を有している。さらに、複合管10の製造方法は、本管12の径方向の外側に配置された内側板30の径方向の外側に、押出成形によって円筒状の樹脂を押し出す押出工程S2と、押し出された円筒状の樹脂を真空成形によってコルゲート状として外側管20を成形する成形工程S3とを有している。
【0050】
このように、複合管10の製造方法では、配置工程S1、押出工程S2、及び成形工程S3が、軸方向に搬送される本管12に対してこの順番で行われる。
【0051】
〔配置工程S1〕
配置工程S1では、図6に示されるように、既に用意された4個の内側板30を、軸方向に搬送される本管12の径方向の外側に搬送しながら配置する配置治具90が用いられる。
そして、配置工程S1では、4個の内側板30で軸方向に搬送される本管12を径方向の外側から覆うように、4個の内側板30を配置治具90に挿入することで、4個の内側板30が、軸方向に搬送される本管12の径方向の外側に配置される。これにより、搬送される本管12の径方向の外側に4個の内側板30が配置された成形体60が形成される。
【0052】
〔押出工程S2〕
押出工程S2では、図7に示されるように、口金102と、樹脂を押し出す押出機104とが用いられる。
そして、押出工程S2では、押出機104から口金102を通して円筒状の溶融樹脂が、軸方向に搬送される成形体60の径方向の外側に押し出される。
【0053】
〔成形工程S3〕
成形工程S3では、図7に示されるように、円筒状の溶融樹脂に、凹凸形状を成形させて外側管20とする成形機110と、搬送される成形体60の径方向の外側に外側管20が配置された複合管10を案内するガイド装置120とが用いられる。
【0054】
成形機110には、複数の金型112が無端状に連結されて軸方向に延びる長円状に並べられた金型群114と、軸方向に離間して金型群114が巻き付けられた一対の車輪116とを備えた金型ユニット118が、一対備えられている。
【0055】
そして、一方の金型ユニット118と他方の金型ユニット118とは、搬送される成形体60を間において対向して配置されている。
【0056】
一方(図中上方)の金型ユニット118においては、図示せぬ駆動手段からの駆動力が車輪116に伝達されて、金型群114が図中D01方向に周回する。具体的には、他方(図中下方)の金型ユニット118と対向する一方の金型ユニット118の金型112が、成形体60の搬送方向の上流側から下流側へ移動するように、金型群114が図中D01方向に周回する。
【0057】
また、他方の金型ユニット118においては、図示せぬ駆動手段から駆動力が車輪116に伝達されて、金型群114が図中D02方向に周回する。具体的には、一方の金型ユニット118と対向する他方の金型ユニット118の金型112が、成形体60の搬送方向の上流側から下流側へ移動するように、金型群114が図中D02方向に周回する。より具体的には、一方の金型ユニット118の金型112と、他方の金型ユニット118の金型112とが突き合わされた一対の金型112が、成形体60の搬送方向の上流側から下流側へ移動する。
【0058】
そして、一方の金型ユニット118の金型112と他方の金型ユニット118の金型112とが突き合わされた状態で、外側管20の外周形状と対応するように、一方の金型112には、図8に示されるように、軸方向に凹凸形状となる成形面112aが形成されている。また、金型112には、図9に示されるように成形面112aからその反対側の面にかけて吸引孔112bが形成されている。この吸引孔112bは図示せぬ真空排気装置に接続され、押出工程S2で押し出された円筒状の溶融樹脂が、この吸引孔112bにより金型112の成形面112aに真空吸着されて、この成形面112aに密着するようになっている。
【0059】
そして、成形工程S3では、一方の金型ユニット118の金型群114が、図中D01方向に周回し、他方の金型ユニット118の金型群114が、図中D02方向に周回する。また、一方の金型ユニット118の金型112と他方の金型ユニット118の金型112とが突き合わされた一対の金型112が、成形体60の搬送方向の上流側から下流側へ移動する。突き合わされた一対の金型112に、押出工程S2で形成された円筒状の溶融樹脂が押し出される。
【0060】
この円筒状の溶融樹脂は、真空排気装置に接続された吸引孔112bにより金型112の成形面112aに真空吸着されて、この成形面112aに密着する。これにより、円筒状の溶融樹脂は、成形体60の搬送方向の上流側から下流側へ移動しながら、外側管20に形成される。そして、搬送される成形体60の径方向の外側に、外側管20が配置された複合管10が形成される。
【0061】
また、ガイド装置120は、複合管10を複合管10の搬送方向の上流側から下流側へ案内する。そして、複合管10は、図示せぬ切断装置によって、予め決められた長さに切断される。
【0062】
(まとめ)
以上説明したように、複合管10では、外側管20は、樹脂材料で形成され、中心線CL01に沿った面で切断した外側管20の切断形状が凹凸形状とされている。また、内側板30は、樹脂材料で形成され、中心線CL01に沿った面で切断した内側板30の切断形状が凹凸形状とされている。さらに、内側板30と外側管20との間には、熱の伝達を抑制する空間46が形成されている。換言すれば、内側板30は、周方向で少なくとも一部で外側管20と径方向で離間している。このため、外側管と本管との間に発泡樹脂層を設ける場合と比して、本管12を流れる流体の保温性を確保した上で、外側管20及び内側板30を収縮させて、本管12の端部部分を容易に露出させることができる。
【0063】
また、複合管10では、内側板30には、本管12側に向かって膨出する膨出部44が形成されている。内側板30に膨出部44が形成されることで、膨出部が形成されていない場合と比して、外側管20に対する本管12の径方向の移動量を少なくすることができる。
【0064】
また、複合管10では、内側板30の曲げ剛性が、外側管20の曲げ剛性と比して高くされている。このため、内側板30の曲げ剛性が、外側管20の曲げ剛性に対して低くされている場合と比して、内側板30の変形に起因して本管12が径方向に移動するのを抑制することができる。
【0065】
また、複合管10の製造方法では、配置工程S1、押出工程S2、及び成形工程S3をこの順番で設けることで、1ラインで複合管10を製造することができる。
【0066】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る複合管、及び複合管の製造方法の一例について図10図12を用いて説明する。なお、第2実施形態につては、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
(複合管210)
第2実施形態に係る複合管210は、図10(A)(B)に示されるように、本管12と、本管12を径方向の外側から覆うように配置された外側管20と、外側管20の径方向の内側で、本管12を径方向の外側から覆うように配置された複数の内側板230とを備えている。
【0067】
〔内側板230〕
内側板230は、樹脂材料で形成されており、図10(A)(B)に示されるように、軸方向延びている。そして、内側板230は、一対設けられ、一対の内側板30は、本管12を間において対向して配置されている。
【0068】
軸方向から見て、内側板230には、外側管20側に突出する突出部242と、突出部242の両側から本管12側に向かって膨出する膨出部244とが形成されている。具体的には、突出部242は、径方向の外側が凸となるように折れ曲がった状態で外側管20側へ突出しており、径方向の内側から外側管20に接触している。また、軸方向から見て、膨出部244は、径方向の内側が凸となる湾曲形状とされており、径方向の外側から本管12に接触している。また、一対の内側板230の端部は互いに接触し、一対の内側板30の端面は、径方向の外側を向いて径方向の内側から外側管20に接触している。なお、「突出部242」とは、軸方向から見て、中心線CL01から内側板230最外径を「10」とした場合に、中心線CL01から7以上10以下の範囲に配置される内側板230の部分である。
【0069】
これにより、外側管20と内側板230との間に、外側管20と内側板230とが径方向で離間することで形成された空間246が、周方向に並んでいる。さらに、内側板230と本管12との間に、内側板230と本管12とが径方向で離間することで形成された空間248が、周方向に並んでいる。そして、空間246と空間248とは、熱の伝達を抑制する断熱空間(所謂「断熱層」)として機能しており、周方向に交互に配置されている。
【0070】
さらに、中心線CL01に沿った面で切断した内側板230の切断形状は、図11に示されるように、凹凸形状とされている。換言すれば、中心線CL01に沿った面で内側板230を切断した切断形状は、波形状とされている。このように内側板230は、コルゲート板とされている。
【0071】
具体的には、内側板230は、径方向の外側へ凸となる山部232と、一対の側壁236と底壁238とから構成される共に径方向の外側が凹となる谷部234と、を有している。そして、山部232と谷部234とが、軸方向に交互に並んでいる。
【0072】
内側板230の厚さは、内側板230を軸方向に収縮させるため、最も薄い部分で0.1〔mm〕以上、最も厚い部分で0.4〔mm〕以下であることが好ましい。
【0073】
また、本実施形態では、図12に示されるように、外側管20の底壁28の軸方向の長さL01を「1」とした場合に、内側板230の山部232の軸方向の長さ(図中L22)が「1.4」とされている。つまり、長さL22は、外側管20において軸方向で隣り合う底壁28の離間距離L04と比して長くされている。換言すれば、内側板30の山部232が、外側管20の一対の側壁26で挟まれる外側管20の凹部52に嵌らないようになっている。
【0074】
また、外側管20の底壁28の軸方向の長さL01を「1」とした場合に、内側板230の底壁238の軸方向の長さ(図中L21)は、「0.8」とされ、側壁236の高さ(図中L23)は、「0.7」とされている。さらに、長さL01を「1」とした場合に、軸方向で隣り合う山部232の離間距離(図中L24)は、「0.9」とされている。つまり、外側管20の底壁28の軸方向の長さL01は、内側板230において軸方向で隣り合う山部232の離間距離L24と比して長くされている。換言すれば、外側管20の谷部24が、内側板230の一対の側壁236で挟まれる内側板230の凹部254に嵌らないようになっている。
【0075】
また、内側板230を形成するために用いる樹脂としては、例えば、ポリブテン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び架橋ポリエチレン等のポリオレフィン、並びに塩化ビニル等が挙げられ、樹脂は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。中でも、低密度ポリエチレンが好適に用いられ、低密度ポリエチレンを主成分として含むことが好ましく、例えば内側板230を構成する樹脂材料中において80質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましい。また、内側板230の曲げ剛性は、外側管20の曲げ剛性と比して高くされている。
【0076】
(まとめ)
以上説明したように、複合管210では、内側板230の山部232が、外側管20の一対の側壁26で挟まれる外側管20の凹部52に嵌らないようになっている。このため、熱の伝達を抑制する断熱空間を、外側管20と内側板230との間に形成することができる。
【0077】
また、複合管210では、外側管20の谷部24が、内側板230の一対の側壁236で挟まれる内側板230の凹部254に嵌らないようになっている。このため、熱の伝達を抑制する断熱空間を、外側管20と内側板230との間に形成することができる。
【0078】
第2実施形態の複合管210の他の作用は、第1実施形態の複合管10の作用と同様である。
【0079】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係る複合管、及び複合管の製造方法の一例について図13を用いて説明する。なお、第3実施形態につては、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
図13に示されるように、第3実施形態の複合管310は、本管12と比して大径化された本管312と、外側管20と、一対の内側板330とを備えている。そして、軸方向から見て、内側板330は、L字形状とされており、中心線CL01に沿った面で切断した切断形状が凹凸形状とされている。このため、平板形状の場合と比して、本管312がL字状になっている部分に容易に収まることで、製造時に本管312を外側管20に対して容易にセンタリングすることができる。第3実施形態の複合管310の他の作用は、膨出部が湾曲することで生じる作用以外の第1実施形態の複合管10の作用と同様である。
【0080】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記第1実施形態では、全ての膨出部44が、本管12と接触して、本管12の径方向の移動を規制したが、少なくとも一部の膨出部が、本管12と接触して、本管12の径方向の移動を規制してもよい。しかし、この場合には、全ての膨出部44が、本管12と接触することで生じる作用は生じない。
【0081】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、隣り合う内側板は、端部で接触していたが、端部で離間していてもよい。
【0082】
また、上記第1実施形態では、内側板30は、径方向の内側が凸となる湾曲状であったが、内側板と外側管との間に断熱空間が形成されればよく、内側板は、外側管と同心円状の円弧状でならなければよく、例えば、内側板が、軸方向から見て、曲率が外側管の曲率と比してと小さい円弧状であってよく、角部を有する屈曲形状であってもよい。
【0083】
また、上記第1実施形態では、特に説明しなかったが、複合管の製造方法において、搬送される本管12の径方向の外側に、複数の内側板30を配置したが、配置した直後に、円筒状の溶融樹脂を内側板30の径方向の外側に押し出してもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、突出部、及び膨出部については、内側板に形成されていても、形成されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0085】
10…複合管、12…本管、20…外側管、22…山部、24…谷部、26…側壁、28…底壁、30…内側板、32…山部、34…谷部、36…側壁、38…底壁、44…膨出部、46…空間、210…複合管、230…内側板、232…山部、234…谷部、236…側壁、238…底壁、242…突出部、244…膨出部、246…空間、310…複合管、312…本管、330…内側板、S1…配置工程、S2…押出工程、S3…成形工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13