(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】作業用設備
(51)【国際特許分類】
E21B 7/00 20060101AFI20230901BHJP
E21B 19/00 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
E21B7/00 Z
E21B19/00
(21)【出願番号】P 2019206211
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-07-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ダイセル網干工場会議室において開催された合同防災会議において発表(平成30年12月14日)
(73)【特許権者】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 浩一朗
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 剛
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-068938(JP,A)
【文献】特開平01-198920(JP,A)
【文献】特開2013-130038(JP,A)
【文献】特開2009-161950(JP,A)
【文献】特開2017-040113(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01004707(EP,A1)
【文献】特開2000-178965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 7/00
E21B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔機により、岸壁の海に面した前面に対してアンカー孔を削孔するための作業用設備であって、
前記岸壁上からその一部が海に向かって突出され、前記岸壁上を海に向かう方向に対して直交する方向に移動自在に配置される移動式架台を備え、
該移動式架台の海に突出された範囲に、前記削孔機の削孔ロッドが挿通される開口部が設けられ
、
前記削孔機の、前記削孔ロッドを着脱自在に支持する本体部は、前記移動式架台の前記開口部の周りに連結され、
前記移動式架台上で、前記岸壁により支持されていない範囲に、前記移動式架台の海側への傾倒防止の目的として重量物が載置されており、
前記移動式架台は、ローラを備え、
前記岸壁上に、前記移動式架台の移動方向に沿って延び、前記ローラを案内する支持レール部材を備えていることを特徴とする作業用設備。
【請求項2】
前記支持レール部材は、前記移動式架台の移動方向前後の所定範囲にのみ設置され、かつ、前記移動式架台の移動方向後方から前方への順送りされるように所定長さに分割されていることを特徴とする請求項
1に記載の作業用設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岸壁の海に面した前面にグラウンドアンカー工を施工する際、岸壁の前面に削孔機によりアンカー孔を削孔するための作業スペースを確保する作業用設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、グラウンドアンカー工による岸壁耐震化工事を行う場合、海に面した岸壁の前面にアンカー孔を削孔するために、岸壁の前面に近接した海面上に削孔機の作業スペースが必要になる。そして、この作業スペースを確保するために、杭基礎形式仮桟橋を仮設するか、あるいは、セップ台船を設置している。
【0003】
しかしながら、上述した前者の、杭基礎形式仮桟橋を仮設して作業スペースを確保する方法では、仮桟橋を、岸壁の前面に沿う海域に施工期間中設置する必要がある。そのために、桟橋を設置及び撤去する期間を含め施工期間中には、使用者(岸壁ユーザー)が岸壁を供用することができず、使用者の船舶航行に支障をきたすなど数多くの問題が生じる。また、大水深の岸壁の場合には、桟橋を架設するコストも増大し、しかも、桟橋の脚部を海底に打設する際には、岸壁の前面に沿う位置に洗堀防止等にて配置されている被覆石などの構造物(障害物)を取り除くなどの対策を施す必要もある。
【0004】
また、上述した後者の、セップ台船を設置して作業スペースを確保する方法では、グラウンドアンカー施工箇所(削孔位置)の移動時、セップ台船の移動及び係船に時間を要し、作業効率の低下による工期遅延、及び波浪等の海象の影響による作業休止やセップ台船退避等を考慮すると、長期間、岸壁の船舶航行にきたすなど、これも数多くの問題が生じる。また、大水深の岸壁の場合には、その水深に対応した大型のセップ台船が必要となり、これもまた問題である。
【0005】
これら問題を解決するべく提案された特許文献1には、地盤の削孔機をバックホーに取り付けるための削孔機取付用ブラケットを備え、該削孔機取付用ブラケットは、削孔機を載置可能な底材と、該底材に対向して配置される天材と、これら天材及び底材を連結する連結材と、を有しており、当該削孔機取付用ブラケットにより、削孔開始面の前に削孔機等を設置するに適した地盤が存在しない場合においても容易に削孔することができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した、特許文献1に記載された削孔機取付用ブラケットでは、当該ブラケットに付与される、削孔機による削孔の際の反力により、ブラケットが大きく振動する虞がある。その結果、アンカー孔を容易に削孔することができず作業効率を悪化させ、またアンカー孔の位置精度も悪化するなどの問題が発生する虞があり、採用することは難しい。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、グラウンドアンカー工において、削孔機により岸壁の前面にアンカー孔を削孔する際の作業効率を向上させる作業用設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明は、削孔機により、岸壁の海に面した前面に対してアンカー孔を削孔するための作業用設備であって、前記岸壁上からその一部が海に向かって突出され、前記岸壁上を海に向かう方向に対して直交する方向に移動自在に配置される移動式架台を備え、該移動式架台の海に突出された範囲に、前記削孔機の削孔ロッドが挿通される開口部が設けられ、前記削孔機の、前記削孔ロッドを着脱自在に支持する本体部は、前記移動式架台の前記開口部の周りに連結され、前記移動式架台上で、前記岸壁により支持されていない範囲に、前記移動式架台の海側への傾倒防止の目的として重量物が載置されており、前記移動式架台は、ローラを備え、前記岸壁上に、前記移動式架台の移動方向に沿って延び、前記ローラを案内する支持レール部材を備えていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に記載した発明は、請求項1の発明において、前記支持レール部材は、前記移動式架台の移動方向前後の所定範囲にのみ設置され、かつ、前記移動式架台の移動方向後方から前方への順送りされるように所定長さに分割されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る作業用設備によれば、グラウンドアンカー工において、削孔機により岸壁の前面にアンカー孔を削孔する際の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る作業用設備の平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る作業用設備の側面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る作業用設備に採用されたスチールローラの正面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る作業用設備に採用されたスチールローラの側面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る作業用設備の斜視図である。
【
図8】
図8は、岸壁上に配置された本作業用設備の全体像を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を
図1~
図8に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る作業用設備1は、
図1及び
図2を参照して、グラウンドアンカー工において、岸壁2の前面3に対してアンカー孔52を削孔する際、アンカー孔52を削孔するための削孔機10等を設置するに適した作業スペースを確保することができない場合に特に有効である。そして、具体的に、本実施形態に係る作業用設備1は、
図1及び
図2に示すように、岸壁2上から海に向かってその一部が突出され、岸壁2上を海に向かう方向に対して直交する方向(
図1及び
図8に示す白抜き矢印の方向であって、以下、「岸壁2に沿う方向」という)に移動自在に配置される移動式架台5を備え、該移動式架台5の海に突出された範囲には、削孔機10の削孔ロッド12が挿通される開口部6が貫通して設けられている。また、本実施形態に係る作業用設備1は、岸壁2上に、移動式架台5の移動方向に沿って延び、移動式架台5に設けたローラ、例えば後述するスチールローラ33(ガイドローラ42)を案内する一対の支持レール部材29、29を備えて構成されている。
【0015】
なお、
図1及び
図2は、本作業用設備1の構成を解りやすくするために概略的に示したものであり、その他、安全性や操作性等を高めるために備えてある各構成部材の図示を適宜省略している。また、
図1及び
図8では、削孔機10の図示を省略している。
【0016】
図1及び
図2に示すように、移動式架台5は、縦梁部材15、縦補助梁部材17及び横梁部材16を複数格子状に組み立てて、各縦梁部材15、各縦補助梁部材17と、各横梁部材16との間の間隙に作業用板材19を配置して概略構成される。具体的に、移動式架台5は、以下のように構成されている。すなわち、移動式架台5は、海に向かう方向に延び、岸壁2に沿う方向に間隔を置いて複数配置される縦梁部材15を備えている(
図1では、移動式架台5の幅方向(短手方向)両端部に位置する縦梁部材15、15だけが図示されている)。また、各縦梁部材15の下方を、各縦梁部材15を掛け渡すように延び、海に向かう方向に沿って間隔を置いて複数配置される横梁部材16を備えている。
【0017】
また、移動式架台5の、岸壁2から海に突出した範囲においては、各縦梁部材15と各横梁部材16との間に、各縦梁部材15と平面視で重なるように、縦補助梁部材17が配置されている。縦梁部材15、縦補助梁部材17及び横梁部材16は、L字状やH字状のアングル材等で構成される。これら各縦梁部材15、各縦補助梁部材17と、各横梁部材16との間の間隙を覆うように、作業用板材19が複数配置されている。そして、該移動式架台5は、全体として平面視略矩形状に形成されている。なお、本実施形態では、移動式架台5は、以上のように構成されているが、各縦梁部材15、各縦補助梁部材17及び各横梁部材16の数量を含む配置や、縦梁部材15、縦補助梁部材17及び横梁部材16を構成するアングル材の形状について限定されることはない。
【0018】
図7及び
図8も適宜参照して、上述したように、移動式架台5は、その長手方向、すなわち縦梁部材15(縦補助梁部材17)が延びる方向が岸壁2から海に向かう方向に一致するように、岸壁2の上面に配置されている。移動式架台5は、その長手方向全長に対してその1/3程度の範囲が岸壁2から海に向かって突出されている。移動式架台5の岸壁2から海に突出している範囲には、上下方向に貫通する開口部6が設けられている。当該開口部6は、平面視略矩形状に形成されている。削孔機10は、ロータリーパーカッション削孔機等で構成される。該削孔機10は、概略、本体部11と、該本体部11に着脱自在に取り付けられ、岸壁2の前面にアンカー孔52を削孔する削孔ロッド12と、を備えている。そして、移動式架台5の開口部6の周りに削孔機10の本体部11が連結され、該開口部6に、削孔機10の削孔ロッド12が岸壁2の前面3に指向するように挿通される。また、
図7から解るように、岸壁2上であって、移動式架台5の側方にはクレーン車25が配置されている。このクレーン車25により、削孔機10の削孔ロッド12の本体部11への接続及び切り離しや、アンカー体挿入等の作業補助を行っている。
【0019】
図1、
図2及び
図8に示すように、岸壁2の上面には、海に近接する位置、及び海から離れた位置に、支持レール部材29、29が、岸壁2に沿って(海に向かう方向に対して直交する方向に沿って、言い換えれば移動式架台5の移動方向に沿って)一対配置されている。支持レール部材29は、L字状やH字状のアングル材等で構成されるが、幅広な上面を有するように構成される。
図8から解るように、一対の支持レール部材29、29は、所定長さを有し、移動式架台5の移動方向前後における所定範囲にのみ設置されている。一対の支持レール部材29、29は、移動式架台5の移動方向に沿ってその前後に例えば4分割されており、移動方向後側の一対の支持レール部材29、29の前端面と、移動方向前側の一対の支持レール部材29、29の後端面とが当接されている。
【0020】
岸壁2は、その上面が海に向かって若干下方傾斜しているので、海側の支持レール部材29と陸側の支持レール部材29とでは、海側の支持レール部材29の高さが高く設定されている。また、
図2~
図4に示すように、これら海側及び陸側の支持レール部材29、29の上面の高さを略同一にするために、例えば、海側の支持レール部材29と岸壁2の上面との間に、サイコロスペーサ30を配置してもよい。さらに、
図7に示す一例として、海側の支持レール部材29と岸壁2の上面との間に加え、陸側の支持レール部材29と岸壁2の上面との間にも、高さの相違するサイコロスペーサ30をそれぞれ配置して、これら海側及び陸側の支持レール部材29、29の上面の高さを略同一にしてもよい。なお、
図2及び
図4の符号32は、嵩上げアスファルト層を示す。
図2~
図4に示すように、各支持レール部材29、29上に、移動式架台5の岸壁2に支持される範囲であって、海に最も近接して配置される横梁部材16と、海から最も離れて配置される横梁部材16とがそれぞれ支持される。これら各横梁部材16の下面には、スチールローラ33がその長手方向に沿って間隔をおいて複数連結されている。
【0021】
スチールローラ33は、
図5及び
図6に示すように、断面長円形状のセンタープレート35と、該センタープレート35の周りを転動する複数のローラ36と、隣接するローラ36、36の両端部を回動自在に連結する連結プレート37と、センタープレート35の両端部を支持する一対のサイドプレート38、38と、該一対のサイドプレート38、38の上端部を一体的に連結するトッププレート39と、を備えている。当然ながら、サイドプレート38の下端から、センタープレート35の下面を転動する各ローラ36の一部が突出するように位置する。このスチールローラ33のトッププレート39が、移動式架台5の横梁部材16の下面に連結される。
【0022】
そして、移動式架台5の横梁部材16の下面に連結された各スチールローラ33のローラ36が、岸壁2の上面に配置された支持レール部材29、29上を転動することで、移動式架台5が各支持レール部材29、29上を容易に移動することが可能になる。また、
図3及び
図4に示すように、各スチールローラ33には、ガイドローラ42が連結されている。該ガイドローラ42は、スチールローラ33から横梁部材16の一側面に向かって延びる本体部43と、該本体部43に連結され、横梁部材16の側面を転動するローラ部44とから概略構成されている。
【0023】
なお、海に近接する位置のガイドローラ42のローラ部44は、支持レール部材29の海側とは反対側の側面を転動し、海から離れた位置のガイドローラ42のローラ部44は、支持レール部材29の海側の側面を転動している。そして、このガイドローラ42により、移動式架台5を岸壁2に沿って移動させる際、移動式架台5の各横梁部材16(スチールローラ33)が、各支持レール部材29から脱線するのを抑制することができ、移動式架台5を、安全及び確実に、各支持レール部材29に沿って移動させることができる。
【0024】
また、
図2及び
図8を参照して、移動式架台5上であって、岸壁2により支持される範囲には重量物が適宜箇所に載置されている。該重量物は、例えば、クローラクレーン(15トン相当)47、油圧ユニット(2トン相当)48や、発電機(3トン相当)49等である。本実施形態では、クローラクレーン47、油圧ユニット48及び発電機49(全20トン相当)が、移動式架台5の岸壁2に支持される範囲に載せられている。なお、移動式架台5の海側への傾倒防止の観点から、移動式架台5の、海に突出した範囲と、岸壁2に支持される範囲との荷重バランスは、海側:岸壁側=1:1.5以上にする必要がある。
【0025】
そして、
図8を参照して、グラウンドアンカー工を施工するにあたって、岸壁2の前面3にアンカー孔52を削孔する際には、上述したように移動式架台5を岸壁2に対して所定位置に配置して、その所定位置にて拘束する。このとき、移動式架台5は、その移動方向後端の一対の支持レール29、29上に支持されている。続いて、削孔機10により、岸壁2の前面3の所定位置にアンカー孔52を削孔する。続いて、移動式架台5を岸壁2上の各支持レール部材29、29に沿って所定距離(例えば、ピッチ:2m程度)移動(
図8の白抜き矢印の方向に前進)させて、その所定位置で拘束する。なお、クレーン車25も移動式架台5と同様に岸壁2に沿って移動させる。
【0026】
移動式架台5の移動の際には、当該移動式架台5を、複数のチルホール等のウインチ(図示略)を用いて手動によりワイヤー牽引することで、岸壁2(各支持レール部材29、29)に沿って移動させている。そして、移動式架台5(各横梁部材16、16)の下面には、複数のスチールローラ33、33が連結されているので、移動式架台5を岸壁2に沿って移動させる際、移動式架台5を持ち上げることもなく、容易に手動にて移動させることが可能になる。
【0027】
続いて、再び、削孔機10により、岸壁2の前面3で、直前に削孔したアンカー孔52と略同じ高さにアンカー孔52を削孔する。この作業を繰り返して、アンカー孔52を岸壁2の前面3の略同じ高さに、岸壁2に沿って所定ピッチにて削孔する。続いて、移動式架台5全体が、その移動方向後端の一対の支持レール部材29、29上から前側の一対の支持レール部材29、29上に乗り移ったら、適宜タイミングにて、移動方向後端の一対の支持レール部材29、29を移動方向前端の一対の支持レール部材29、29の前方に配置しつつ、上述した削孔作業を繰り返す。このように、一対の支持レール部材29、29は、移動式架台5の移動方向前後に分割して設けられた例えば4組を、その移動方向後方から前方に順送りに配置することで、アンカー孔52の削孔作業を継続するように構成されている。そして、本実施形態に係る作業用設備1を採用することで、アンカー孔52を岸壁2の前面3に所定ピッチにて連続して削孔することができる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態に係る作業用設備1は、岸壁2上からその一部が海に向かって突出され、岸壁2上を海に向かう方向に対して直交する方向に移動自在に配置される移動式架台5を備え、該移動式架台5の海に向かって突出された範囲に削孔機10の削孔ロッド12が挿通される開口部6を設けている。
これにより、本実施形態に係る作業用設備1を採用すると、グラウンドアンカー工において、岸壁2の前面3に削孔機10によりアンカー孔52を削孔する際、削孔機10等を設置するに適した作業スペースが確保できない場合においても容易にアンカー孔52を削孔することができる。その結果、本実施形態に係る作業用設備1を採用すると、従来採用されていた、杭基礎形式仮桟橋を仮設するか、あるいは、セップ台船を設置する方法よりも、その作業効率を大幅に改善することができる。
【0029】
また、本実施形態に係る作業用設備1では、複数の縦梁部材15、縦補助梁部材17及び横梁部材16で構成した移動式架台5を採用しており、しかも、移動式架台5の岸壁2側の範囲には、傾倒防止の目的として全重量が20トン相当の重量物が配置されているので、移動式架台5全体としての剛性を向上させることができる。これにより、従来(特許文献1:特開2013-130038号公報に記載の技術)と比較して、削孔機10による削孔の際の移動式架台5の振動を抑えることができ、ひいては、削孔機10によりアンカー孔52を位置精度よく、容易に削孔することができ、結果として、作業効率を向上させることができる。
【0030】
さらに、本実施形態に係る作業用設備1では、移動式架台5に複数のスチールローラ33を備えているので、移動式架台5を岸壁2の各支持レール部材29、29に沿って容易に移動させることができる。その結果、アンカー孔52を岸壁2の前面3の略同じ高さに、岸壁2に沿って連続して削孔することができ、作業効率をさらに向上させることができる。
【0031】
さらにまた、本実施形態に係る作業用設備1では、岸壁2上に、移動式架台5の移動方向に沿って延び、その移動方向に沿って支持レール部材29を備え、該支持レール部材29は、移動式架台5の移動方向前後の所定範囲にのみ設置され、かつ、移動式架台5の移動方向後方から前方への順送りされるように所定長さに分割されている。これにより、本実施形態に係る作業用設備1において、その構成部材の数量を最小限に抑えることができ、経済的に有利である。
【符号の説明】
【0032】
1 作業用設備,2 岸壁,3 前面,5 移動式架台,6 開口部,10 削孔機,12 削孔ロッド,29 支持レール部材,33 スチールローラ(ローラ),52 アンカー孔