(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】樹脂組成物の検査方法および樹脂硬化体を製造する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/08 20060101AFI20230901BHJP
E01B 3/40 20060101ALI20230901BHJP
E01B 1/00 20060101ALI20230901BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
G01N3/08
E01B3/40
E01B1/00
C08L101/00
(21)【出願番号】P 2019217033
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 宏之
(72)【発明者】
【氏名】大川 英哲
(72)【発明者】
【氏名】松尾 朋弥
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-94452(JP,A)
【文献】中国実用新案第210982030(CN,U)
【文献】特開2010-185242(JP,A)
【文献】特開2005-54469(JP,A)
【文献】特開2018-103425(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/172567(US,A1)
【文献】国際公開第2017/6900(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00-3/62
E01B 3/40
E01B 1/00
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多成分型の樹脂組成物の検査方法であって、
多成分型の各成分を混合して樹脂組成物を調製し、調製した樹脂組成物の一部を抜き取り硬化させて検査用成形体を形成し、該成形体を用いて圧縮弾性率を測定し、所定の圧縮弾性率と比較することで、多成分型の樹脂組成物を検査する検査方法において、前記検査用成形体は、アスペクト比(該成形体の圧縮方向の長さ/該成形体の圧縮方向に対し垂直方向の長さ)が0.5以上である、
樹脂組成物の検査方法。
【請求項2】
前記圧縮弾性率を測定する方法が、コンプレッソメーターを用いて前記検査用成形体の圧縮弾性率を測定する方法、または、前記検査用成形体を圧縮する際の該成形体の圧縮方向の長さの変化を固体撮像装置で測定する工程を含む方法である、請求項1に記載の樹脂組成物の検査方法。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、圧縮強度0.1N/mm
2における圧縮弾性率が2~200N/mm
2の範囲にある樹脂組成物である、請求項1または2に記載の樹脂組成物の検査方法。
【請求項4】
前記樹脂組成物が、軌道用樹脂組成物、振動体周囲用樹脂組成物、および、ケーブル防食用樹脂組成物から選択されるいずれか1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物の検査方法。
【請求項5】
前記樹脂組成物が、スラブ式軌道の路盤側構造物の突起部周囲もしくは路盤側構造物と軌道スラブとの間の樹脂硬化体形成用組成物である、または、枕木下部の樹脂硬化体形成用組成物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物の検査方法。
【請求項6】
軌道、振動体周囲およびケーブルから選択されるいずれか1種に適用される樹脂硬化体を製造する方法であって、
多成分型の各成分を混合して樹脂組成物を調製する工程1と、
工程1で調製した樹脂組成物から樹脂硬化体を形成する工程2と、
工程1で調製した樹脂組成物の一部を抜き取り硬化させて、アスペクト比(成形体の圧縮方向の長さ/成形体の圧縮方向に対し垂直方向の長さ)が0.5以上である検査用成形体を形成し、該成形体を用いて圧縮弾性率を測定し、所定の圧縮弾性率と比較することで、調製した樹脂組成物を検査する工程3と、
を含む、軌道、振動体周囲およびケーブルから選択されるいずれか1種に適用される樹脂硬化体を製造する方法。
【請求項7】
前記圧縮弾性率を測定する方法が、コンプレッソメーターを用いて前記検査用成形体の圧縮弾性率を測定する方法、または、前記検査用成形体を圧縮する際の該成形体の圧縮方向の長さの変化を固体撮像装置で測定する工程を含む方法である、請求項6に記載の軌道、振動体周囲およびケーブルから選択されるいずれか1種に適用される樹脂硬化体を製造する方法。
【請求項8】
前記工程2が、スラブ式軌道の路盤側構造物の突起部周囲もしくは路盤側構造物と軌道スラブとの間、または、枕木下部に、工程1で調製した樹脂組成物をてん充し、硬化させて樹脂硬化体を形成する工程である、請求項6または7に記載の軌道に適用される樹脂硬化体を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物の検査方法および樹脂硬化体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂硬化体は、列車から受ける荷重や振動を緩衝するための充填層およびその補修や、エンジンなどの振動体に接して使用される緩衝材として用いられている。該樹脂硬化体を形成する樹脂組成物としては、1成分型の組成物と、2成分以上の多成分型の組成物が知られており、取り扱い性やポットライフ等の点で、1成分型の組成物が採用される場合もあるが、得られる硬化体の物性等を考慮した場合、多成分型の組成物が多く採用されている。また、硬化体を形成したい場所によっては、硬化速度や硬化条件に制限がある場合もあり、このような場合には、多成分型の組成物が多く採用されている。
【0003】
前記多成分型の組成物は、通常、硬化体を形成したい場所(以下「現場」ともいう。)において、第1成分(例:主剤)や第2成分(例:硬化剤成分)等の各成分を混合することで組成物を調製して使用される。この混合の際には、各成分の混合比率が所定の値から外れたり、各成分の混合が均一にならない場合には、所定の物性を示す硬化体が得られないため、各成分の混合比率が所定の値になるように混合する必要があり、また、各成分が均一に混ざるように混合する必要がある。
【0004】
従って、多成分型の組成物の各成分を混合する際には、混合比率や均一混合などに十分に注意して混合しているが、熟練の作業員でも、混合環境や各成分の種類等により、所定の組成物(所定の物性を示す硬化体を得ることができる組成物)を調製できない場合がある。また、近年、各成分を混合する際に、自動計量混合装置なる装置を使用する場合もあるが、この装置を用いた場合であっても、低温時などに所定の組成物を調製できない場合がある。
【0005】
前記のように、所定の組成物を調製できない場合があり、このような組成物を用いて得られる硬化体は所定の物性を示さないため、硬化体を設ける目的が達成できない。従って、多成分型の組成物を用いる場合には、該組成物の一部をサンプリングし(抜き取り)、検査用成形体を形成し、該成形体が所定の物性を示すか否かを測定することで、調製した組成物が所定の組成物となっているか否かを評価していた。
【0006】
前記サンプリング~検査用成形体の形成までの工程は現場で行われ、得られた検査用成形体を各試験場に運んで物性を測定している。
ここで測定する物性は、形成される硬化体に要求される物性であるが、例えば樹脂組成物の場合、代表的な物性として、ばね定数が採用されてきた。
【0007】
例えば、スラブ式軌道の路盤側構造物と軌道スラブとの間の樹脂硬化体を形成する樹脂組成物として多成分型の樹脂組成物が使用され、この樹脂組成物が所定の樹脂組成物であるか否かについては、以下の方法(以下「従来法」ともいう。)で評価していた。
この従来法は、規格制定されており(例えば、非特許文献1参照)、この方法により樹脂組成物の検査を行うことが求められている。
【0008】
まず、現場において、調製した樹脂組成物の一部を抜き取り、所定の型枠に流し込んだ後硬化させることで検査用成形体を形成する。
ここで用いる型枠は、
図1に示すような、得られる検査用成形体の大きさが100mm×100mm×25mm(厚み)となる型枠であり、内表面が離型処理された型枠である。
【0009】
次に、得られた検査用成形体を試験場に運び、そこで、該成形体の厚み方向に、荷重0~4.4kNで予圧を2回かけてから30秒後、荷重速度1mm/minで4.4kNまで載荷する際の、荷重0.98kNと3.92kNとにおける成形体のたわみを測定し、下記式からばね定数を算出し、算出されたばね定数が、樹脂組成物の公称ばね定数の±20%以内であるか否かを評価することで、所定の組成物を調製できているか否かを検査している。
ばね定数(MN/m)=(F2(kN)-F1(kN))/(X2(mm)-X1(mm))
[ここで、F2は荷重3.92kNであり、X2は、該荷重3.92kNの時の成形体のたわみ(mm)であり、F1は荷重0.98kNであり、X1は、該荷重0.98kNの時の成形体のたわみ(mm)である。]
【0010】
従来法でばね定数を測定する際に、検査用成形体の正確なばね定数を測定するには、例えば、以下の点が重要となる。
(A)検査用成形体の寸法の正確性
(B)検査用成形体の最も大きな面(荷重のかかる面)の表面平滑性
(C)加圧板(検査用成形体に接し、該成形体に荷重をかける部材)の表面平滑性
(D)検査用成形体の最も大きな面(荷重のかかる面)の滑りにくさ
(E)たわみを測定する際の高い精度
【0011】
従来法では、検査用成形体の寸法が正確であり、検査用成形体および加圧板のそれぞれが接する面の表面が平滑でないと、正確な計測ができず、また、検査用成形体の荷重のかかる面が滑りやすいと、測定値が低下し、正確な計測ができなかった。さらには、例えば、組成物の公称ばね定数が10MN/mである場合、該組成物の変位(X2-X1)は約0.3mmとなるが、この公称ばね定数の±20%を満たすか否かを評価するには、±0.06mmの変位を測定することが要求されるため、たわみを測定する際の精度はきわめて高い必要がある。
つまり、従来法で正確なばね定数を測定するには、検査用成形体の形成から荷重をかける際の方法、たわみを測定する際に至るまで、極めて高い精度が求められていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】「スラブ軌道各部補修の手引き」、財団法人鉄道総合研究所、平成10年5月1日、第2版、p.21-35
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前述の要求される極めて高い精度を満足することは容易ではなかった。特に、検査用成形体を所定の形状にするには、型枠の清掃、型枠内面の離型処理、型枠の正確な組み立て、型枠への樹脂組成物の正確な注入、検査用成形体の正確な脱離などを行う必要があるが、現場においてこれらの工程を行うことは極めて困難であった。
また、前記従来法では、通常、同一の組成物から3つの検査用成形体を形成し、該3つの成形体それぞれのばね定数を測定してその平均値を測定することで、所定の組成物を調製できているか否かを評価しているが、これら3回の測定値が大きく異なる場合が多いことも問題であった。
【0014】
本発明は、以上のことに鑑みてなされたものであり、多成分型の樹脂組成物が所定の組成物であるか否かを容易に、また、正確に検査することができる、前記従来法に代わる検査方法を提供し、さらに、所定の物性を有する樹脂硬化体を容易に製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究した。その結果、特定の方法によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。本発明の態様例は、以下のとおりである。
【0016】
[1] 多成分型の樹脂組成物の検査方法であって、
多成分型の各成分を混合して樹脂組成物を調製し、調製した樹脂組成物の一部を抜き取り硬化させて検査用成形体を形成し、該成形体を用いて圧縮弾性率を測定し、所定の圧縮弾性率と比較することで、多成分型の樹脂組成物を検査する検査方法において、前記検査用成形体は、アスペクト比(該成形体の圧縮方向の長さ/該成形体の圧縮方向に対し垂直方向の長さ)が0.5以上である、
樹脂組成物の検査方法。
【0017】
[2] 前記圧縮弾性率を測定する方法が、コンプレッソメーターを用いて前記検査用成形体の圧縮弾性率を測定する方法、または、前記検査用成形体を圧縮する際の該成形体の圧縮方向の長さの変化を固体撮像装置で測定する工程を含む方法である、[1]に記載の樹脂組成物の検査方法。
【0018】
[3] 前記樹脂組成物が、圧縮強度0.1N/mm2における圧縮弾性率が2~200N/mm2の範囲にある樹脂組成物である、[1]または[2]に記載の樹脂組成物の検査方法。
【0019】
[4] 前記樹脂組成物が、軌道用樹脂組成物、振動体周囲用樹脂組成物、および、ケーブル防食用樹脂組成物から選択されるいずれか1種である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物の検査方法。
[5] 前記樹脂組成物が、スラブ式軌道の路盤側構造物の突起部周囲もしくは路盤側構造物と軌道スラブとの間の樹脂硬化体形成用組成物である、または、枕木下部の樹脂硬化体形成用組成物である、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物の検査方法。
【0020】
[6] 軌道、振動体周囲およびケーブルから選択されるいずれか1種に適用される樹脂硬化体を製造する方法であって、
多成分型の各成分を混合して樹脂組成物を調製する工程1と、
工程1で調製した樹脂組成物から樹脂硬化体を形成する工程2と、
工程1で調製した樹脂組成物の一部を抜き取り硬化させて、アスペクト比(成形体の圧縮方向の長さ/成形体の圧縮方向に対し垂直方向の長さ)が0.5以上である検査用成形体を形成し、該成形体を用いて圧縮弾性率を測定し、所定の圧縮弾性率と比較することで、調製した樹脂組成物を検査する工程3と、
を含む、軌道、振動体周囲およびケーブルから選択されるいずれか1種に適用される樹脂硬化体を製造する方法。
【0021】
[7] 前記圧縮弾性率を測定する方法が、コンプレッソメーターを用いて前記検査用成形体の圧縮弾性率を測定する方法、または、前記検査用成形体を圧縮する際の該成形体の圧縮方向の長さの変化を固体撮像装置で測定する工程を含む方法である、[6]に記載の軌道、振動体周囲およびケーブルから選択されるいずれか1種に適用される樹脂硬化体を製造する方法。
【0022】
[8] 前記工程2が、スラブ式軌道の路盤側構造物の突起部周囲もしくは路盤側構造物と軌道スラブとの間、または、枕木下部に、工程1で調製した樹脂組成物をてん充し、硬化させて樹脂硬化体を形成する工程である、[6]または[7]に記載の軌道に適用される樹脂硬化体を製造する方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、多成分型の樹脂組成物が所定の組成物であるか否かを容易に、また、正確に検査することができる、前記従来法に代わる検査方法を提供することができ、さらに、所定の物性、特に所定の圧縮弾性率を有する樹脂硬化体を容易に製造することができる。
また、本発明によれば、前述のように3回の測定をした場合であっても、これら3回の測定値はほぼ変わらず測定の安定度が高いため、1回の測定で精度が高い結果を得ることができ、サンプル採取量の低減、検査に要する時間の低減などにも貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、従来法で用いる型枠の一例を示す写真である。
【
図2】
図2は、スラブ式軌道の構造の一例を一部断面にして示した斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明で用いる型枠の一例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
≪樹脂組成物の検査方法≫
本発明に係る樹脂組成物の検査方法(以下「本検査方法」ともいう。)は、多成分型の樹脂組成物の検査方法であって、
多成分型の各成分を混合して樹脂組成物を調製し、調製した樹脂組成物の一部を抜き取り硬化させて検査用成形体を形成し、該成形体を用いて圧縮弾性率を測定し、所定の圧縮弾性率と比較することで、多成分型の樹脂組成物を検査する検査方法において、前記検査用成形体として、アスペクト比(該成形体の圧縮方向の長さ/該成形体の圧縮方向に対し垂直方向の長さ)が0.5以上である成形体を用いることを特徴とする。
【0026】
1成分型の樹脂組成物については通常検査をする必要がないため、本検査方法は、調製した2成分以上の多成分型の樹脂組成物が所定の組成物(所定の物性を示す組成物)となっているか否かを検査する。
前記樹脂組成物としては、2成分以上からなる多成分型の樹脂組成物であれば特に制限されず、第1成分(例:主剤成分)と第2成分(例:硬化剤成分)とからなる2成分型の組成物であってもよく、さらに、硬化促進剤成分、顔料成分などの第3~n成分を含む3成分以上の型の組成物であってもよい。混合する成分が多くなればなるほど所定の組成物を調製することが困難になる傾向にあるため、調製容易性を考慮して、通常、2成分型または3成分型の組成物が使用される。
【0027】
多成分型の樹脂組成物は、通常、該組成物を構成する各成分を、それぞれ別個の容器にて保存・貯蔵、運搬等し、該組成物の使用直前に各成分を混合して用いる。
このような多成分型の成分を混合して所定の組成物を調製するためには、各成分の保存・貯蔵を適切に行うこと、各成分の混合を所定の比率で行うこと、各成分を均一に混合すること、混合時に空気等の気体を取り込まないように混合すること等が重要であり、本検査方法は、これらが適切に行われているか否かの検査方法であるともいえる。
【0028】
本検査方法は、調製した組成物が所定の組成物(所定の物性を示す組成物)となっているか否かを検査する際の物性として、圧縮弾性率を採用する。このため、本検査方法は、最終的に形成したい樹脂硬化体(樹脂層)が所定の圧縮弾性率を有することが求められる用途に好適に使用され、例えば、振動、衝撃、騒音、応力等の緩和、吸収、伝達防止などのために使用される樹脂硬化体を形成する樹脂組成物の検査に好適に使用される。
このような樹脂組成物としては、例えば、軌道用樹脂硬化体、エンジンなどの振動体周囲に使用される、好ましくは振動体に接して使用される樹脂硬化体、橋梁等の構造物に使用されるケーブル防食用樹脂硬化体などを形成するための樹脂組成物が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果がより発揮される等の点から、軌道用樹脂組成物が好ましく、軌道てん充用樹脂組成物がより好ましく、スラブ式軌道の路盤側構造物の突起部周囲の樹脂硬化体形成用組成物、路盤側構造物と軌道スラブとの間の樹脂硬化体形成用組成物、枕木下部の樹脂硬化体形成用組成物であることがさらに好ましく、スラブ式軌道の路盤側構造物の突起部周囲の樹脂硬化体形成用組成物、枕木下部の樹脂硬化体形成用組成物であることが特に好ましい。
【0029】
なお、スラブ式軌道は、コンクリート等で構築した高架構造物や地下構造物、橋梁などを路盤(これらの構造物を「路盤側構造物」ともいう。)とし、この路盤側構造物上に、充填層を介してコンクリート製等の軌道スラブを固定し、この軌道スラブに軌道レールを締結してなる軌道のことをいう。スラブ式軌道の構造を
図2に具体的に示す。
図2では、路盤側構造物20の上面に、充填層22を介して軌道スラブ24が設けられ、さらに軌道スラブ24の上面には、一対の軌道レール30,30が配設され、軌道スラブ24は両端部に切欠き部26,26を備え、路盤側構造物20上に所定間隔おきに設けられた突起部28と、軌道スラブ24の切欠き部26とが位置合わせされている。
【0030】
前記スラブ式軌道の路盤側構造物の突起部周囲の樹脂硬化体とは、
図2における軌道スラブ24と突起部28との間に形成される樹脂硬化体のことをいい、前記路盤側構造物と軌道スラブとの間の樹脂硬化体とは、前記充填層22(の少なくとも一部)のことをいう。
前記充填層22は、スラブ式軌道を作製した初期の段階では、セメントとアスファルト乳剤と細骨材とを混合することで得られるセメントアスファルトモルタル(CAモルタル)からなることが多いが、このCAモルタルからなる層は劣化するため、この劣化した層の補修のため、通常、劣化した層を削り取った後、樹脂製補修材料により樹脂硬化体が形成される。つまり、前記路盤側構造物と軌道スラブとの間の樹脂硬化体形成用組成物の好適例としては、この樹脂製補修材料が挙げられる。
【0031】
本検査方法は、樹脂組成物の硬化体の圧縮強度0.1N/mm2における圧縮弾性率が、下限は、好ましくは2N/mm2以上、より好ましくは5N/mm2以上、特に好ましくは14N/mm2以上であり、上限は、好ましくは200N/mm2以下、より好ましくは120N/mm2以下、さらに好ましくは50N/mm2以下、より好ましくは40N/mm2以下、特に好ましくは34N/mm2以下の範囲となるような樹脂組成物の検査方法であることが好ましい。このような樹脂組成物に対し本検査方法を使用することで、調製した組成物が所定の組成物であるか否かを容易に、また、正確に検査することができる。
【0032】
前記多成分型の樹脂組成物としては、2成分型以上であり、いずれかの成分に樹脂を含む組成物であれば特に制限されないが、樹脂としては、例えば、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂などのラジカル重合型樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂が挙げられる。
これらの中でも、本発明の効果がより発揮される等の点から、ポリオールを含む第1成分と、イソシアネート化合物を含む第2成分とを含むポリウレタン系樹脂組成物が好ましい。
【0033】
前記樹脂組成物は、必要に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で、樹脂以外に、従来公知の添加剤を含んでもよい。該添加剤としては、例えば、硬化剤、硬化促進剤、顔料(例:シリカ、炭酸カルシウム)、骨材(例:硅砂)、消泡剤、分散剤、触媒、水分吸着剤、表面調整剤、レオロジーコントロール剤、レベリング剤、可塑剤、溶剤が挙げられる。
該添加剤はそれぞれ、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0034】
前記多成分型の樹脂組成物としては、具体的には、特開昭59-56473号公報、特開昭59-56474号公報等に記載のポリウレタン系樹脂組成物、特開平11-256504号公報に記載の、ラジカル硬化性であるポリエステルアクリレートを基材とし、高分子弾性材の小片と無機骨材とを混合すると共に、硬化剤を添加してなる樹脂組成物、特開2002-129503号公報に記載の(メタ)アクリル系樹脂等の二液室温硬化型ラジカル重合性樹脂組成物等が挙げられる。
【0035】
このような多成分型の樹脂組成物の市販品としては、例えば、「CUS」シリーズ(中国塗料(株)製)、「アレンロックSQ-20」、「アレンロックSQ-F」((株)アレン製)、「SP-104」(神東塗料(株)製)、「ポリモルタルKCA-20」(興和化成(株)製)が挙げられる。
【0036】
本検査方法によれば、検査用成形体に従来法のような極めて高い寸法精度が要求されないため、硬化収縮の大きいラジカル重合型樹脂を用いた場合であっても、調製した樹脂組成物を高い精度で検査することができる。
【0037】
なお、前記樹脂組成物として、てん充用樹脂組成物を用いる場合、施工箇所への充填性が求められることがある。この場合のてん充用樹脂組成物としては、JIS Z8803:2011に準拠してウベローデ粘度計を用いて25℃で測定される粘度が、好ましくは500~3,000mPa・s、より好ましくは1,000~2,000mPa・sの範囲にある組成物が望ましい。
【0038】
・樹脂組成物の調製
樹脂組成物を調製する際には、該組成物を構成する各成分を所定の混合比率となるよう混合する。この際には、自動計量混合装置を用いてもよい。
前記混合の際には、調製する組成物の混合方法が決まっている場合や制限されている場合には、これらに応じて混合することになる。決まりや制限がない場合には、公知の混合機、攪拌機等を用いて混合すればよく、前記各種成分は、所定の量となるように、一度にまたは分割して混合すればよく、任意の順序で加えればよい。
【0039】
なお、混合の際に空気等の気体が取り込まれると、得られる検査用成形体内に気泡が残り、圧縮弾性率に影響を及ぼす傾向にあるため、必要により、脱泡工程を行ったり、混合を低回転で撹拌を行うことにより、組成物中への気体の取り込み量を減らすことが好ましい。
【0040】
・検査用成形体の形成
前記検査用成形体は、調製した樹脂組成物の一部を抜き取り(サンプリングし)、硬化させることで形成される。
本検査方法では、ここで形成する検査用成形体として、アスペクト比が0.5以上である成形体を用いることを特徴とする。該アスペクト比は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.5以下である。
【0041】
前記アスペクト比とは、該成形体を用いて圧縮弾性率を測定する際の、成形体の圧縮方向に対し垂直方向の長さに対する成形体の圧縮方向の長さの比(成形体の圧縮方向の長さ/成形体の圧縮方向に対し垂直方向の長さ)のことをいう。
なお、従来法で用いられている成形体は、100mm×100mm×25mm(厚み)の形状の成形体であり、25mmの厚み方向が成形体の圧縮方向の長さに相当し、大きさ100mm×100mmの面の面方向が成形体の圧縮方向に対し垂直方向の長さに相当するため、アスペクト比は0.17である。
【0042】
本検査方法では、アスペクト比が前記範囲にある成形体を用いて圧縮弾性率を測定するため、調製した樹脂組成物が所定の組成物であるか否かを容易に、また、正確に検査することができ、また、高い精度で圧縮弾性率を測定することができる。
従来法では、アスペクト比が0.17の成形体を用いるため、圧縮方向のたわみ(変位)のわずかな差が結果に大きく影響を及ぼす。このため、該成形体の寸法(特に厚み方向の寸法)は正確であり、たわみを測定する際の精度はきわめて高い必要があり、さらに、かけた荷重(圧力)が正確に成形体に伝わる必要があるため、成形体の荷重のかかる面(最も大きな面)の表面平滑性、滑りにくさや、加圧板(検査用成形体に接し、該成形体に荷重のかける部材)の表面平滑性が重要であった。
一方で、アスペクト比が前記範囲にある成形体を用いることで、圧縮方向のひずみ(変位)のわずかな差が結果に大きく影響を及ぼさないため、成形体の荷重のかかる面の表面平滑性、滑りにくさや、加圧板(検査用成形体に接し、該成形体に荷重のかける部材)の表面平滑性は結果に大きな影響を及ぼさず、高い精度で容易に圧縮弾性率を測定することができる。
さらに、測定装置には通常遊びがあり、圧縮弾性率の測定装置にも遊びがあるが、アスペクト比が前記範囲にある成形体を用いることで、この装置の遊びによる測定精度のバラツキも低減することができる。
【0043】
前記検査用成形体の形状は、アスペクト比が前記範囲にあれば特に制限されないが、好適例としては、円柱状や角柱状の成形体が挙げられ、円柱状の成形体がより好ましい。
円柱状の成形体の場合、前記成形体の圧縮方向の長さは、円柱状の成形体の長さであり、前記成形体の圧縮方向に対し垂直方向の長さは、底面(上面)の円の直径である。角柱状の成形体の場合、前記成形体の圧縮方向の長さは、角柱状の成形体の長さであり、前記成形体の圧縮方向に対し垂直方向の長さは、底面(上面)の多角形の外接円の直径である。
【0044】
前記検査用成形体を形成する方法としては、好ましくは、サンプリングした樹脂組成物を、得られる硬化体が前記アスペクト比を有するような形状の型枠に流し込んで硬化させる方法が挙げられる。円柱状の成形体を形成する際に用いることができる型枠の例としては、
図3に示すような型枠が挙げられる。
なお、前記型枠を用いる際には、型枠の内面に、従来公知の離型処理をしておくことが好ましい。
【0045】
サンプリングした樹脂組成物から検査用成形体を形成する際には、現場での樹脂組成物の配置および硬化と同様の条件で行うことが好ましい。
例えば、樹脂組成物として、軌道てん充用樹脂組成物を用い、現場において、常温で放置することで硬化させる場合には、軌道にてん充する方法と同様の方法で、所定形状の型枠等に流し込み(てん充し)、型枠等に流し込んだ組成物を常温で放置して硬化させることが好ましい。
なお、サンプリングした樹脂組成物を硬化させる際には、硬化時間を短くする等の点から、加熱してもよい。
【0046】
・圧縮弾性率の測定
前記圧縮弾性率を測定する方法としては、前記アスペクト比の検査用成形体を用いれば特に制限されず、従来公知の方法を採用することができる。
この圧縮弾性率を測定する際の検査用成形体の変位(ひずみ)を測定する際には、圧縮試験機内部に備わっている内部変位計を用いて測定してもよいが、このような内部変位計で測定した場合、装置の遊びを計測してしまい、実際の成形体の変位より大きくなり、真の値との誤差が生じる場合がある。従って、検査用成形体の変位(ひずみ)を測定する際には、圧縮試験機内部に備わっている内部変位計ではなく、外部変位計(非接触型変位計を含む)を用いることが好ましい。
【0047】
前記外部変位計を用いて検査用成形体の変位を測定し、圧縮弾性率を測定する方法としては、例えば、レーザー変位計を用いて検査用成形体の変位を測定する方法も挙げられるが、この方法では、成形体の変位の真の値を正確に測定できない場合があるため、コンプレッソメーターを用いてひずみを測定する方法、または、前記検査用成形体を圧縮する際の該成形体の圧縮方向の長さの変化を固体撮像装置で測定する工程を含む方法等が好ましい。
これらの方法で検査用成形体の変位を測定すると、該成形体の変位の真の値を正確に測定できるため好ましい。
【0048】
コンプレッソメーターを用いて検査用成形体の圧縮弾性率を測定する方法としては、例えば、検査用成形体をコンプレッソメーターの取付枠の中に挿入し、ねじを締め付けて検査用成形体にコンプレッソメーターをセットした後、検査用成形体に荷重をかけ、その時に生じたひずみ量を高感度変位計で測定する方法が挙げられる。この際には、必要により、コンプレッソメーターを、増幅器を介して試験機の制御用コントローラー等に接続し、ひずみおよび応力から圧縮弾性率を測定してもよい。
前記コンプレッソメーターとしては、例えば、CM型コンプレッソメーター((株)東京測器研究所製)を用いることができる。
【0049】
なお、検査用成形体の形状変化(例:くぼみが生じること)を抑制し、圧縮弾性率を正確にまたは繰り返し測定できる等の点から、検査用成形体にコンプレッソメーターをセットする際には、ねじの先端に、ねじから該成形体にかかる圧力を低減できるような部材(クッション材)を配置してセットすることや、ねじの先端の形状が点ではなく面である部材を用いて検査用成形体にコンプレッソメーターをセットすることが好ましい。
【0050】
検査用成形体を圧縮する際の該成形体の圧縮方向の長さの変化を固体撮像装置で測定する工程を含む方法としては、例えば、検査用成形体の所定の箇所に、該成形体の圧縮方向と略垂直な方向に標線を2本形成した後、検査用成形体に荷重をかけ、その時に生じたひずみによる標線間の長さの減少をCCDカメラなどの固体撮像装置で測定する方法が挙げられる。
【0051】
圧縮弾性率を測定する際には、数個、好ましくは3個の検査用成形体を用いた平均値を採用することが好ましいが、本発明によれば、このように3個の検査用成形体を用いて測定をした場合であっても、これらの測定値はほぼ変わらず測定の安定度が高いため、サンプル採取量の低減、検査に要する時間の低減などの点から、1個の検査用成形体を用いて圧縮弾性率を測定してもよい。
【0052】
・調製した樹脂組成物が所定の組成物になっているか否かの評価
調製した樹脂組成物が所定の組成物になっているか否かを評価する方法としては、前記検査用成形体を用いて測定した圧縮弾性率を、公称値(所定の組成物から得られた硬化体の圧縮弾性率として決まった値)と比較し、検査用成形体を用いて測定した圧縮弾性率が、公称値の±20%以内となっているか否かを評価する方法が挙げられる。
検査用成形体を用いて測定した圧縮弾性率が、公称値の±20%以内になっている場合、調製した樹脂組成物が所定の組成物になっているといえる。
【0053】
≪樹脂硬化体を製造する方法≫
本発明に係る樹脂硬化体を製造する方法(以下「本製造方法」ともいう。)は、軌道、振動体周囲およびケーブルから選択されるいずれか1種、好ましくは軌道に適用される樹脂硬化体を製造する方法であり、
多成分型の各成分を混合して樹脂組成物を調製する工程1と、
工程1で調製した樹脂組成物から樹脂硬化体を形成する工程2と、
工程1で調製した樹脂組成物の一部を抜き取り硬化させて、アスペクト比(成形体の圧縮方向の長さ/成形体の圧縮方向に対し垂直方向の長さ)が0.5以上である検査用成形体を形成し、該成形体を用いて圧縮弾性率を測定し、所定の圧縮弾性率と比較することで、調製した樹脂組成物を検査する工程3と、
を含む。
【0054】
前記工程1は、本検査方法における樹脂組成物の調製と同様の工程であり、前記工程3は、本検査方法における検査用成形体の形成~調製した樹脂組成物が所定の組成物になっているか否かの評価までの工程と同様の工程である。
【0055】
・工程2
前記工程2は、工程1で調製した樹脂組成物を用いて、樹脂硬化体を形成したい場所に樹脂硬化体を形成する工程であり、具体的には、工程1で調製した樹脂組成物を、樹脂硬化体を形成したい場所に配置し、次いで、該組成物を硬化させる工程である。
【0056】
樹脂硬化体を形成したい場所に樹脂組成物を配置する方法としては、特に制限されないが、例えば、必要により樹脂組成物が所定の場所から流れ出ないよう、型枠または不織布等の袋体を設置した後、樹脂組成物を流し込む(てん充)する方法が挙げられる。
例えば、軌道に適用される樹脂硬化体を製造する際には、具体的には、必要により樹脂組成物が所定の場所から流れ出ないよう型枠や不織布等の袋体等を設置した後、
図2における軌道スラブ24と突起部28との間に樹脂組成物をてん充する方法、路盤側構造物20と軌道スラブ24との間に樹脂組成物をてん充する方法、枕木下部に樹脂組成物をてん充する方法等が挙げられる。軌道スラブ24と突起部28との間に樹脂組成物をてん充する際や、枕木下部に樹脂組成物をてん充する際には、必要により、軌道スラブ24や枕木を所定位置に持ち上げておいてから、樹脂組成物をてん充してもよい。
【0057】
また、前記工程2は、軌道におけるCAモルタルからなる充填層などの層の劣化部分(劣化層)を削り取った後、削り取った箇所に工程1で調製した樹脂組成物を充填し、樹脂硬化体を形成する工程、つまり、劣化層の補修工程であってもよい。この場合、本製造方法は、劣化層の補修方法であるともいえる。
劣化層部分に樹脂組成物を充填する方法としては特に制限されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、予め劣化層を削り取った後、削り取った箇所を取り囲むように型枠等を配設し、型枠等の内側に樹脂組成物を流し込んで充填する額縁補修方法が挙げられる。
また、前記型枠を用いる方法の他に、補修箇所に予め不織布等の袋体を設置し、該袋体内に樹脂組成物を充填し硬化させる方法、補修箇所に発泡成形体等の埋め込み型枠を設置し、その内側補修部に樹脂組成物を充填し硬化させる方法、補修箇所の側面開口部に外側から粘着シートを貼着し、その内側補修部に樹脂組成物を充填し硬化させる方法等も用いることができる。
【0058】
本製造方法は、通常、工程1で調製した樹脂組成物の一部を抜き取り、検査用成形体を形成するために型枠等に流し込む工程を行った後、前記工程2を行い、次いで、検査用成形体を形成するために型枠等に流し込んだ樹脂組成物が硬化した後、得られた検査用成形体を圧縮弾性率を測定する試験場に移動させ、そこで圧縮弾性率を測定した後、工程1で調製した樹脂組成物が所定の組成物になっているか否かの検査結果を現場に報告するという流れで行われる。
そして、検査の結果、所定の組成物になっているという評価になった場合には、工程2で形成した樹脂硬化体はそのまま使用し、所定の組成物になっていないという評価になった場合には、工程2で形成した樹脂硬化体を除去し、再度前記工程1~3を含む本製造方法を行うことになる。
【実施例】
【0059】
次に、本発明について実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0060】
[実施例1]
CUS-UB10(中国塗料(株)製、2成分型ポリウレタン樹脂系組成物)の主剤と硬化剤とを、該製品の規定値となっている混合比率(主剤:硬化剤=100:9)で容器に入れ、十分に攪拌混合することで樹脂組成物を調製した。調製した樹脂組成物を、予め内面を、信越化学工業(株)製のKF-96-SPで離型処理したφ50mm×長さ100mmの
図3に示すような型枠に流し込み、室温で3日程度放置した後、該型枠から取り出すことで、検査用成形体(アスペクト比=2.0)を作製した。
【0061】
作製した検査用成形体を、コンプレッソメーター(CM型コンプレッソメーター、(株)東京測器研究所製、標線間距離:50mm)の取付枠の中に挿入し、ねじを締め付けて検査用成形体にコンプレッソメーターをセットした。コンプレッソメーターをセットした検査用成形体を、圧縮試験機(サーボパルサーEHF-EG10-2-L、(株)島津製作所製)に、検査用成形体の長さ方向が圧縮方向となるように配置し、変位速度:1mm/minの条件で検査用成形体に荷重をかけ、その時に生じたひずみ量を測定し、0.1N/mm2における圧縮弾性率を算出した。この際には、コンプレッソメーターを、増幅器(DC Strain Amp DAS-406B、ミネベアミツミ(株)製)を介して圧縮試験機の制御用コントローラーに接続し、ひずみおよび応力から圧縮弾性率を算出した。
【0062】
同様にして、検査用成形体をもう2個作製し、それぞれの成形体(成形体1~3)について、圧縮弾性率を算出し、その平均値および標準偏差を算出した。結果を表1に示す。
【0063】
CUS-UB10の0.1N/mm2における圧縮弾性率は15.0N/mm2であり、調製した樹脂組成物から得られた成形体の0.1N/mm2における圧縮弾性率の平均値は15.2N/mm2であったため、調製した樹脂組成物は、所定の組成物となっていると評価できる。
【0064】
[比較例1]
前述の規格制定されている従来法に基づいて、調製した樹脂組成物の検査を行った。具体的には、以下のようにして行った。
【0065】
まず、
図1に示す型枠の各部品(
図1の白い部品)をパーツクリーナーを用いて清掃し、組み立てた後に内面となる部分を、信越化学工業(株)製のKF-96-SPで離型処理した。離型処理した各部品を、
図1に示す形状(100mm×100mm×25mm(厚み))になるように、ボルトを用い、固定金具で締め上げ固定した。この際に、ボルトが緩んでいないよう、隙間ができないよう、固定金具を締め込み過ぎないようにして、型枠を形成した。
【0066】
次に、CUS-UB10(中国塗料(株)製、2成分型ポリウレタン樹脂系組成物)の主剤と硬化剤とを、該製品の規定値となっている混合比率(主剤:硬化剤=100:9)で容器に入れ、十分に攪拌混合することで樹脂組成物を調製した。調製した樹脂組成物を、形成した型枠に流し込んだ。この際に、樹脂組成物の流し込み量が型枠の大きさとぴったりになるよう、樹脂組成物を流し込んだ。
樹脂組成物を型枠に流し込んでから、室温で3日間程度放置し、樹脂組成物の表面を指触により硬化を確認した後、型枠を外すことで、検査用成形体(アスペクト比=0.17)を3個作製した。型枠を外す際には、得られる成形体に、割れや欠けが生じないように注意深く型枠を外した。作製した検査用成形体の大きさをノギスを用いて測定し、100mmであるはずの長さ部分が100±1mmであり、かつ、厚みが25±0.5mmであった場合、該検査用成形体を用いてばね定数測定の試験を行った。
【0067】
作製した検査用成形体それぞれを、圧縮試験機(サーボパルサーEHF-EG10-2-L、(株)島津製作所製)に、検査用成形体の長さ方向が圧縮方向となるように配置し、荷重4.4kNで予圧を2回かけてから30秒後、変位速度:1mm/minの条件で検査用成形体に荷重4.4kNまで載荷する際の、荷重0.98kNと3.92kNとにおける成形体のたわみを、レーザー変位計(HL-G103-AC、パナソニック(株)製、標線間距離:100mm)を用いて測定し、下記式からばね定数を算出した。3個の検査用成形体のばね定数それぞれと、その平均値および標準偏差を算出した。結果を表1に示す。
ばね定数(MN/m)=(F2(kN)-F1(kN))/(X2(mm)-X1(mm))
[F2は荷重3.92kNであり、X2は、該荷重3.92kNの時の成形体のたわみ(mm)であり、F1は荷重0.98kNであり、X1は、該荷重0.98kNの時の成形体のたわみ(mm)である。]
【0068】
CUS-UB10の公称ばね定数は9.8MN/mであり、調製した樹脂組成物から得られた成形体のばね定数の平均値は11.1MN/mであったため、調製した樹脂組成物は、所定の組成物となっていると評価できる。
【0069】
比較例1において、検査用成形体を作製する際に、型枠の離形処理や清掃が不十分なことにより、最も大きな面の表面がわずかに破壊され平滑ではなかった成形体を用いた場合、ばね定数の平均値は6.6MN/mであった。また、比較例1において、検査用成形体を作製する際に、離形剤の拭き取りが不十分なことにより、最も大きな面が滑りやすかった成形体を用いた場合、ばね定数の平均値は5.0MN/mであった。
つまり、前述の規格制定されている従来法では、少なくとも、検査用成形体の表面平滑性、表面滑りにくさを満たさない限り、正確なばね定数の測定はできなかった。
一方、実施例1において、成形体の厚み方向の長さが95mmであっても、成形体の上面が平滑ではなくても、成形体の上面が滑りやすくても、平均圧縮弾性率はそれぞれ、14.9N/mm2、15.1N/mm2、15.0N/mm2であり、検査用成形体に要求される形状や性質は、変位計で測定する範囲(標線間距離)の変位に影響がないことにより、圧縮弾性率の値に大きな影響を及ぼさなかった。
【0070】
【符号の説明】
【0071】
10:スラブ式軌道
20:路盤側構造物
22:充填層
24:軌道スラブ
26:切欠き部
28:突起部
30:軌道レール