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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】スラブ構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/02 20060101AFI20230901BHJP
   E04B 5/14 20060101ALI20230901BHJP
   E04F 15/08 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
E04B5/02 C
E04B5/14
E04F15/08 G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019236424
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021105276
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 篤
(72)【発明者】
【氏名】山田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】石山 達士
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-280338(JP,A)
【文献】特開平11-093313(JP,A)
【文献】特開2005-061081(JP,A)
【文献】実開平04-119513(JP,U)
【文献】特開平09-144128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/00 - 5/48
E04F 15/08
E04B 1/58
E04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面視矩形状に配置された大梁と、
前記大梁で囲まれた領域に少なくとも平面視十字状に設けられた小梁と、
記大梁及び前記小梁の側面に設けられ、前記大梁及び前記小梁で区画された開口部の内側へ突出する部と
前記受部に着脱可能に4辺が支持され、前記開口部を閉じて、前記大梁及び前記小梁の上面と同一面となる床板と、
を備えたスラブ構造。
【請求項2】
前記床板の端部には、前記受部を反力受けとして、前記床板の高さを調整する調整機構が設けられ、
前記調整機構は、
前記床板の端部を上下方向に貫通する筒状の雌ネジ部材と、
前記雌ネジ部材に上方から挿入されて捩じ込まれたボルトと、
を有し、
前記ボルトの捩込量を調整することで前記床板の高さを調整する、
請求項1に記載のスラブ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、工場の床構造に関する技術が開示されている。この先行技術では、地中梁や基礎梁等の支持体で四縁を囲繞された区画に、プレキャストコンクリート単位床板を着脱自在に設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-41861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、着脱可能な床板を設けると、スラブ全体の剛性が低下する。
【0005】
本発明は、上記事実に鑑み、着脱可能な床板を設けてもスラブ全体の剛性の低下を抑制することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様は、大梁で平面視矩形状に囲まれた内側に少なくとも平面視十字状に設けられた小梁と、前記大梁及び前記小梁で囲まれた開口部に着脱可能に設けられ、前記大梁及び前記小梁の側面に設けられた受部に支持された床板と、を備えたスラブ構造。
【0007】
第一態様では、大梁及び小梁の側面に設けた受部に支持されている着脱可能な床板を取り外すことで、開口部を容易に設けることができる。また、着脱可能な床板を取り付けて開口部を容易に塞ぐことができる。なお、大梁で囲まれた内側に小梁を少なくとも平面視十字状に設けることで、着脱可能な床板を設けても、スラブ全体の剛性の低下が抑制される。
【0008】
第二態様は、前記床板で構成された第一領域と、前記第一領域の外側に設けられ、剛床で構成された第二領域と、を備えた第一態様のスラブ構造。
【0009】
第二態様では、床板で構成された第一領域の外側を剛床で構成された第二領域を設けることで、スラブ全体の剛性が向上する。
【0010】
第三態様は、前記床板の端部には、前記受部を反力受けとして、前記床板の高さを調整する調整機構が設けられている第一態様又は第二態様のスラブ構造。
【0011】
第三態様では、床板の端部に設けられた調整機構によって、受部を反力受けとして、床板の高さを容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、着脱可能な床板を設けてもスラブ全体の剛性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】建物のX方向に沿った縦断面を模式的に示す縦断面図である。
図2】スラブの第一領域の平面図である。
図3】スラブの第一領域の要部のX方向に沿った拡大縦断面図である。
図4】スラブにおける第一領域と第二領域とを示す平面図である。
図5】(A)は第一比較例のスラブの斜視図であり、(B)は第一比較例のスラブの平面図であり、(C)は第一比較例のスラブにおける振動数(Hz)とスティフネス(N/m)との関係を示すグラフである。
図6】(A)は第二比較例のスラブの斜視図であり、(B)は第二比較例のスラブの平面図であり、(C)は第二比較例のスラブにおける振動数(Hz)とスティフネス(N/m)との関係を示すグラフである。
図7】(A)は実施形態のスラブの第一領域の斜視図であり、(B)は実施形態のスラブの第一領域の平面図であり、(C)は実施形態のスラブの第一領域における振動数(Hz)とスティフネス(N/m)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
本発明の一実施形態のスラブ構造について説明する。なお、水平方向の直交する2方向をX方向及びY方向とし、それぞれ矢印X及び矢印Yで示す。また、X方向及びY方向と直交する鉛直方向をZ方向とし、矢印Zで示す。
【0015】
[構造]
先ず本実施形態のスラブ構造が適用されたスラブの構造について説明する。
【0016】
図1に示す本実施形態の建物10は工場であり、第一層12は物流・空調エリアとされ、第二層14は生産エリアとされている。本実施形形態のスラブ構造100が適用されたスラブ102は、第二層14の床(一層の天井)を構成している。
【0017】
図4に示すように、本実施形態のスラブ102は、鉄筋コンクリート造とされ、平面視で矩形状の第一領域110と、第一領域110の外側に設けられた第二領域120とを有している。本実施形態の第二領域120は、平面視で略U字状となっている。
【0018】
スラブ102における第一領域110は、後述する複数の着脱可能な床板200(図1及び図2を参照)で構成されている。また、スラブ102における略U字状の第二領域120は、剛床となっている。なお、剛床は、構造計算上、水平荷重に対して、必要な剛性と耐力を持つ床である。
【0019】
図1及び図2に示すように、スラブ102における第一領域110は、大梁150及び小梁180に支持されている。大梁150は柱50に架設され、小梁180は大梁150に架設されている(図7(A)及び図7(B)も参照)。また、図2に示すように、小梁180は、大梁150で平面視矩形状に囲まれた内側に平面視十字状に設けられている(図7(A)及び図7(B)も参照)。なお、平面視十字状の小梁180に加え、更にY方向に沿った小梁及びX方向に沿った小梁180を設けてもよい。要は、少なくとも平面視十字状に小梁180が設けられていればよい。
【0020】
図1及び図2に示すように、大梁150及び小梁180で囲まれた複数の開口部130には、それぞれ床板200が着脱可能に設けられている(図7(A)及び図7(B)も参照)。なお、本実施形態の柱50、大梁150及び小梁180はコンクリート製とされ、床板200はプレキャストコンクリート製とされている。なお、「大梁」は柱に架設された梁であり、「小梁」は大梁に架設された梁である。また、床板200はプレキャストコンクリート製に特定されない。例えば、鋼製の床板でもよい。要は、床板としての剛性が確保されていれば、どのような構造であってもよい。
【0021】
図3に示すように、床板200には主筋202及び配力筋204が配筋されている。また、大梁150及び小梁180には、梁主筋140及びせん断補強筋142が配筋されている。なお、図3は、大梁150の断面図であるが、小梁180も同様の構造であるので、丸括弧内に小梁180の場合の符号を付している。
【0022】
図2及び図3に示すように、大梁150の側面152及び小梁180の側面182に受部250が形成されている。受部250は側面152、182から外側に向けて突出し、この受部250に床板200の端部210が載せられ支持されている。本実施形態では、受部250は、大梁150の側面152及び小梁180の側面182の梁方向の略全域に亘って形成されている。
【0023】
図3に示すように、本実施形態では、大梁150及び小梁180には、受部250に埋設された梁方向に延びる受部側主筋252と、この受部側主筋252を囲むように梁方向に間隔をあけて埋設された受部側せん断補強筋254と、が配筋されている。
【0024】
床板200の端部210には、受部250を反力受けとして、床板200の高さを調整する調整機構300が設けられている。調整機構300は、雌ネジ部材302とボルト310とを有している。雌ネジ部材302は、円筒状とされ、床板200の端部210に埋設されていると共に貫通している。また、雌ネジ部材302は、筒状部304と、この筒状部304の下側に設けられた雌ネジ部306と、を有している。
【0025】
ボルト310は、雌ネジ部材302に挿入され、雌ネジ部306に捩じ込まれている。また、ボルト310の下端部312は、床板200の端部210の下面212から下方へ突出し、受部250に接触している。なお、本実施形態では、受部250の上端部には、プレート材260が埋設され、このプレート材260の上面に、ボルト310の下端部312が接触している。また、ボルト310の上端部の頭部314は、床板200の上面214から上方に突出している。
【0026】
そして、ボルト310の雌ネジ部306への捩込量を調整することで、床板200の下面212から突出する下端部312の突出量が調整され、下端部312の突出量を調整することで床板200の上面214の高さ調整がなされる。
【0027】
なお、高さ調整後に床板200の端部210の下面212と受部250との間にモルタル等の充填材を充填し、硬化後、ボルト310を取り除く、或いは床板200の上面214から突出している部分を切断する。そして、ボルト310の除去後又は切断後、雌ネジ部材302内に充填材を充填する。また、床板200の端部210と、大梁150の側面152及び小梁180の側面182と、の隙間にも充填材を充填する。
【0028】
なお、床板200は、端部210が大梁150の側面152及び小梁180の側面182に形成された受部250に載置されている。また、床板200は、端部210と、大梁150の側面152及び小梁180の側面182との隙間に充填材が充填されているだけであり、大梁150及び小梁180とは強固に接合されていない。よって、床板200に取り外すことができる。
【0029】
[作用及び効果]
次に、本実施形形態の作用及び効果について説明する。
【0030】
大梁150の側面152及び小梁180の側面182に設けた受部250に支持されている着脱可能な床板200を取り外すことで、スラブ102に開口部130を容易に設けることができる。また、着脱可能な床板200を取り付けて開口部130を容易に塞ぐことができる。
【0031】
ここで、前述したように、本実施形態の建物10は工場であり、第一層12は物流・空調エリアとされ、第二層14は生産エリアとされ、本実施形形態のスラブ102は、第二層14の床(第一層12の天井)を構成している。よって、第二層14の生産エリアの生産ライン替えの等の際、床板200を取り外すことで、スラブ102に垂直搬送機用の開口部130を容易に短期間で設けられることができると共に、生産ライン替え等が終了後に容易に短時間で開口部130閉塞することができる。
【0032】
また、大梁150で囲まれた内側に小梁180を平面視十字状に設けることで、着脱可能な床板200をスラブ102に設けても、スラブ102全体の剛性の低下が抑制される。なお、大梁150で囲まれた内側に小梁180を平面視十字状に設けることによるスラブ102全体の剛性の向上についての詳細は後述する。
【0033】
また、本実施形態のスラブ102は、床板200で構成された第一領域110の外側を平面視略U字状の剛床で構成された第二領域120を設けることで、スラブ102全体の剛性が更に向上する。
【0034】
また、床板200の端部210に設けられた調整機構300によって、受部250を反力受けとして、床板200の高さを容易に調整することができる。つまり、受部250は、床板200の支持部材としての機能と、高さ調整時の反力受け機能と、の二つの機能を有している。
【0035】
(平面視十字状の小梁による剛性の向上について)
次に、大梁150で囲まれた内側に小梁180を平面視十字状に設けることによるスラブ102全体の剛性が向上することについて説明する。
【0036】
ここで、図5(A)及び図5(B)には、Y方向に沿ってのみ小梁580が架設された第一比較例のスラブ502のモデル図が図示されている。なお、符号530は第一比較例の開口部で、符号500は第一比較例の床板である。また、判りやすくするため、一部の床板500はドットで濃くしている。
【0037】
図6(A)及び図6(B)には、X方向に沿ってのみ小梁680が架設された第二比較例のスラブ602のモデル図が図示されている。なお、符号630は第二比較例の開口部で、符号600は第一比較例の床板である。また、同様に判りやすくするため、一部の床板600はドットで濃くしている。
【0038】
図7(A)及び図7(B)には、X方向及びY方向に沿って十字状に小梁180が架設された本実施形態のスラブ102の第一領域110のモデル図が図示されている。また、同様に判りやすくするため、一部の床板200はドットで濃くしている。
【0039】
図5(C)、図6(C)及び図7(C)には、第一比較例のスラブ502、第二比較例のスラブ602及び本実施形態のスラブ102の第一領域110における振動数(Hz)とスティフネス(N/m)との関係が示されている。なお、図7(C)は、第二領域120(図4参照)が設けられていない第一領域110のみの場合の振動数(Hz)とスティフネス(N/m)との関係が示されている。
【0040】
図5(C)、図6(C)及び図7(C)におけるK1は小梁580、小梁680及び小梁180のそれぞれ中央部であり、K2は床板500、床板600及び床板200のそれぞれ中央部である。なお、K1及びK2に対応する位置を、それぞれ図5(A)、図5(B)、図6(A)、図6(B)、図7(A)及び図7(B)に示している。
【0041】
第一比較例のスラブ502及び第二比較例のスラブ602は、図5(C)及び図6(C)のグラフから小梁580及び小梁680の中央部K1と、床板500及び床板600の中央部K2とは、いずれもスティフネス(N/m)が100N/μmよりも低くなっている。
【0042】
これに対して、本実施形態のスラブ102では、図7(C)のグラフから小梁18の中央部K1は、スティフネス(N/m)が100N/μmよりも高くなっている。また、床板200中央部K2は、スティフネス(N/m)が100N/μmよりも若干低いだけである。
【0043】
したがって、Y方向に沿ってのみ小梁580が架設された第一比較例のスラブ502及びX方向に沿ってのみ小梁680が架設された第二比較例のスラブ602の剛性よりも、X方向及びY方向に沿って十字状に小梁180が架設された本実施形態のスラブ102の剛性が高いことがわかる。
【0044】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0045】
例えば、上記実施形態のスラブ102は、床板200で構成された第一領域110の外側に設けられた第二領域120が、平面視で略U字状であったがこれに限定されない。例えば、第二領域120は、平面視でL字形状であってもよいし、第一領域110の全周に設けられていてもよい。
【0046】
或いは、スラブ102は、床板200で構成された第一領域110のみで構成されていてもよい。
【0047】
また、例えば、上記施形態では、受部250は、大梁150の側面152及び小梁180の側面182における梁方向の略全域に亘って形成されているが、これに限定されない。大梁150の側面152及び小梁180の側面182における梁方向の一部にのみ受部250が形成されていてもよい。
【0048】
また、例えば、床板200の高さ調整を行う調整機構300は、上記機構に限定されない。どのような機構であってもよい。また、床板200の高さ調整を行う調整機構を有していなくてもよい。
【0049】
また、例えば、上記実施形態では、スラブ102、大梁150及び小梁180は、鉄筋コンクリート造であったが、これに限定されない。例えば、これらは鉄骨鉄筋コンクリート造であってもよい。
【0050】
また、例えば上記実施形態のスラブ構造100が適用された建物10は工場であったが、これに限定されない。工場以外の建物のスラブにも本発明を適用することができる。
【0051】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0052】
10 建物
50 柱
100 スラブ構造
102 スラブ
110 第一領域
120 第二領域
130 開口部
150 大梁
152 側面
180 小梁
182 側面
200 床板
210 端部
250 受部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7