(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】有線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04L 7/033 20060101AFI20230901BHJP
H04L 7/04 20060101ALI20230901BHJP
H04L 25/38 20060101ALI20230901BHJP
H04L 25/40 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
H04L7/033 700
H04L7/04 600
H04L25/38 A
H04L25/40 R
(21)【出願番号】P 2020003061
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】森重 明
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-064268(JP,A)
【文献】国際公開第2012/086017(WO,A1)
【文献】特開2013-102372(JP,A)
【文献】特開2004-166259(JP,A)
【文献】特開平07-336342(JP,A)
【文献】特開平11-308204(JP,A)
【文献】特開平07-193562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/033
H04L 7/04
H04L 25/38
H04L 25/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信側と受信側が有線で接続され、データをフレーム単位で伝送する有線通信システムであって、
送信側がフレームの先頭に1と0を1ビット毎に交互に出力するプリアンブル部を配置して送信する一方、
受信側は、受信した複数フレームに渡ってプリアンブル部の位相を算出する位相演算部と、
算出した位相情報から位相ずれ方向を判定する位相変化方向判定部と、
算出した位相及び判定した位相のずれの方向の情報を基に、複数生成したクロックの中から同期クロックに使用するクロックを選択するクロック選択部とを有することを特徴とする有線通信システム。
【請求項2】
前記クロック選択部は、
受信データの切り替わりから、次の受信データの切り替わりまでの間に位置するデータを前後に2分割して、
当該2分割したデータのうち位相が変化する方向に対して逆側となる
分割部を選択するクロック同期タイミング判定部と、
前記分割部に同期するクロックを複数のクロックの中から選択して同期クロックとする同期クロックタイミング選択部とを有することを特徴とする請求項1記載の有線通信システム。
【請求項3】
受信側で生成されるクロックの周波数は、受信データ周波数の2倍の周波数であり、前記クロック選択部が選択するクロックは2通りのクロックから選択されることを特徴とする請求項1又は2記載の有線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロックを別途伝送すること無く有線によりデータ通信する有線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
クロックを別途伝送しない例えば有線1系統での通信幹線を使ったベースバンド伝送や差動伝送では、通常はマンチェスタ符号などを用いてデータにクロックを含めている(例えば、特許文献1参照)。これによって、受信側で容易にクロック同期が可能になり、データを正しく受信する事を可能としている。
図6は、従来方式であるマンチェスタ符号を用いた通信の説明図であり、データをマンチェスタ符号化することによって同期クロックをデータに含めて送信し、受信側ではマンチェスタ符号から同期クロックを抽出することで、データの正常な受信が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、マンチェスタ符号化する場合、データの送信周波数はデータ周波数の2倍と高くなるため、ベースバンド伝送や差動伝送では伝送距離が短くなってしまうという欠点があった。
そのため、正しく伝送する為には伝送速度を下げるか、伝送距離を短くする必要があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、有線によりデータ通信する形態であっても、マンチェスタ符号を採用した場合よりも伝送距離を伸ばすことが出来る有線通信システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、送信側と受信側が有線で接続され、データをフレーム単位で伝送する有線通信システムであって、送信側がフレームの先頭に1と0を1ビット毎に交互に出力するプリアンブル部を配置して送信する一方、受信側は、複数フレームに渡ってプリアンブル部の位相を算出する位相演算部と、算出した位相情報から位相ずれ方向を判定する位相変化方向判定部と、算出した位相及び判定した位相のずれの方向の情報を基に、複数生成したクロックの中から同期クロックに使用するクロックを選択するクロック選択部とを有することを特徴とする。
この構成によれば、受信側では、受信したフレームから算出した位相と、判定した位相ずれ方向との2つの情報を基に、生成した複数の同期クロックから好ましいクロックを選択するため、最も同期外れが発生し難いタイミングのクロックを選択することが可能となる。よって、データの伝送周波数をデータ周波数の2倍等に上げること無く、良好なデータ受信を実施でき、従来より伝送距離を伸ばすことができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、クロック選択部は、受信データの切り替わりから、次の受信データの切り替わりまでの間に位置するデータを前後に2分割して、当該2分割したデータのうち位相が変化する方向に対して逆側となる分割部を選択するクロック同期タイミング判定部と、分割部に同期するクロックを複数のクロックの中から選択して同期クロックとする同期クロックタイミング選択部とを有することを特徴とする。
この構成によれば、前後2分割したフレームのうち、位相ずれにより同期外れが発生し難い一方に対して同期するクロックが選択されるため、フレーム内で同期位置がズレていても同期外れが発生し難く、受信データを取り損なうようなことが発生し難い。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、受信側で生成されるクロックの周波数は、受信データ周波数の2倍の周波数であり、クロック選択部が選択するクロックは2通りのクロックから選択されることを特徴とする。
この構成によれば、受信側は、同期クロックを2通りのクロックから選択する場合は、受信データ周波数の2倍の周波数を生成すれば良く、使用するASIC等は低スペックで済む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、受信側では、受信したフレームから算出した位相と、判定した位相ずれ方向との2つの情報を基に、生成した複数の同期クロックから好ましいクロックを選択するため、最も同期外れが発生し難いタイミングのクロックを選択することが可能となる。よって、データの伝送周波数をデータ周波数の2倍等に上げること無く、良好なデータ受信を実施でき、従来より伝送距離を伸ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る有線通信システムの一例を示す構成図であり、送信側及び受信側の双方をブロック図で示している。
【
図3】位相が右方向にずれる場合の同期クロックの説明図であり、(a)は受信データ、(b)は同期クロックである。
【
図4】位相が左方向にずれる場合の同期クロックの説明図であり、(a)は受信データ、(b)は同期クロックである。
【
図5】受信データの切り替わりと同期クロックの立ち上がりが一致した場合を示し、(a)は受信データ、(b)は同期クロック、(c)は反転同期クロックである。
【
図6】マンチェスタ符号化のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る有線通信システム1の一例を示す構成図であり、送信側及び受信側をそれぞれブロック図で示している。10は送信側機器、20が受信側機器であり、両者は1系統の信号線から成る伝送線L1で接続されている。
【0012】
送信側機器10は、送信するデータとして制御信号、音声信号、映像信号、そしてプリアンブルを統合して出力するデータ統合部11、生成されたデータをフレーム化するフレーマ12、フレームをパラレルからシリアルに変換するP/S部13を備えている。
そして、これらのブロックに対するクロック信号を生成する回路は、クロックを生成するクロック生成部14、生成したクロックを4分周する分周部15、分周した周波数によりデータクロックを生成するデータクロック部16等により構成されている。
このデータクロック部16が出力するクロック信号により、各ブロックはコントロールされて信号が伝送線L1を介して受信側機器20に出力される。
【0013】
受信側機器20は、受信データをデジタル変換するA/Dコンバータ21、A/D変換されたデータを0/1変換する0/1変換部22、受信データをクロック同期させるデータ受信部23、シリアルデータをパラレルデータに変換するS/P部24、フレーム化されたデータを分解するデフレーマ25、分解したデータから制御信号、音声信号、映像信号を取り出すデータ分離部26等を備えている。
【0014】
また受信側機器20は、これらのブロックに対するクロック信号を生成して同期させる回路として、クロックを生成するクロック生成部27と、このクロック信号を基に好ましいタイミングの受信クロックを生成するクロック同期部28とを備えている。
クロック生成部27は、送信側機器10のクロック生成部14に対して2分の1の周波数のクロックを生成する。即ちデータ周波数の2倍の周波数でクロックを生成する。
【0015】
クロック同期部28は、FFT変換部28a、同期クロックイネーブル生成部28b、同期クロックタイミング選択部28c、位相演算部28d、位相変化方向判定部28e、クロック同期タイミング判定部28fにより構成されている。
【0016】
同期クロックイネーブル生成部28bは、クロック生成部27が出力する信号を基に、同期判定用クロックとなる2つのタイミング(2通りのクロック)を作り、同期クロックタイミング選択部28cに出力する。
【0017】
クロック同期タイミング判定部28fは、位相演算部28dが算出した位相情報と、位相変化方向判定部28eが判定した位相の変化方向情報とから、同期タイミングの基準タイミングを判定する。例えば、同期タイミングをフレームの前半に持ってくるか、後半に持ってくるか判断する。
【0018】
同期クロックタイミング選択部28cは、クロック同期タイミング判定部28fが判定した基準タイミングを基に、同期クロックイネーブル生成部28bが作った2つのタイミングの中から、受信データを取り込むタイミングがデータの好ましい位置にある方を選択する。
【0019】
上記の如く構成された有線通信システムの、同期制御は以下のように行われる。
図2は送信側機器10から伝送されるデータのフレーム構成を示している。
図2に示すように、フレームの先頭にプリアンブル部が配置され、このプリアンブル部によりクロック同期の為のパターンが伝送される。このプリアンブルは、クロック同期をし易くする為に1と0を1ビット毎に交互に出力するよう構成されている。
またフレーム長は、クロック偏差から割り出して、1フレーム経過してもデータクロックの1/4以上のずれが発生しない長さに設定されている。
そして受信側機器20では、フレーム毎にフレームの先頭のプリアンブル部でクロック同期を取ることで、送受信側のクロック偏差によるクロック同期外れが発生する前に再同期が実施される。
【0020】
具体的に、プリアンブル部の情報に基づくクロック同期を説明する。このように設定されて送信側機器10から伝送線L1を介して送信されたデータは、まずA/Dコンバータ21によりデジタル変換される。
デジタル変換されたデータは、2方向に出力され、一方は0/1変換部22を介してデータ受信部23に出力され、他方はクロック同期部28に出力される。
【0021】
クロック同期部28では、A/Dコンバータ21からA/D変換されたデータを受けて、同期信号(プリアンブル)部分をFFT変換部28aでFFT変換する。この変換で複素数を算出し、その複素数から位相演算部28dが位相を演算する。
同期信号波形の位相は次の式で算出され、同期信号(プリアンブル)部分は、0/1の繰り返しデータであるので、位相が測定できる。
【0022】
位相 = arctan(Q/I)×180/π
但し、I:FFT出力の実数、Q:FFT出力の虚数
【0023】
位相変化方向判定部28eでは、位相演算部28dの位相演算により複数フレームの位相情報を入手して位相変化の方向を判定する。
尚、位相変化を判定する理由は、送信側の動作クロックと受信側の動作クロックは同じスペックであったとしても誤差がある為、徐々にずれが発生する。そのため、受信時にはこれを考慮してクロック同期を行う必要がある。
【0024】
クロック同期タイミング判定部28fは、こうして求めた位相情報と判定した位相変化方向の情報とから、フレームに同期させる好ましいタイミング(クロック同期タイミング)を判定する。
そして、同期クロックタイミング選択部28cは、この判定結果を受けて同期タイミングに合致する或いは近いクロックを同期クロックイネーブル生成部28bが作った2つのタイミングの中から選択し、データ受信部23においてデータ受信の同期クロックとして使用する。
【0025】
図3~5は、同期クロック選択の流れを示す説明図であり、
図3は位相が右方向にずれる場合の同期クロックの説明図、
図4は位相が左方向にずれる場合の同期クロックの説明図であり、何れも(a)は受信データ、(b)は同期クロックである。
図3,4において、Eが同期クロックの範囲(タイミング)を示し、位相変化の方向が分かれば同期クロックは受信信号の中心である必要は無く、位相変化の方向とは逆方向にあれば良いことを示している。
【0026】
クロック同期タイミング判定部28fは、
図3に示すように図示する右側に位相がずれていると判定した場合は、フレームの左側2分の1の部分でクロック同期を取るよう同期クロックタイミング選択部28cに指示を出す。
一方、
図4に示すように図示する左側に位相がずれていると判定した場合は、フレームの右側2分の1の部分でクロック同期を取るよう同期クロックタイミング選択部28cに指示を出す。
【0027】
尚、
図5は受信データの切り替わりと同期クロックの立ち上がりが一致した場合を示し、(a)は受信データ、(b)は同期クロック、(c)は反転同期クロックである。受信データの切り替わりと同期クロックの立ち上がりが一致している場合は、
図5に示すように極性を反転した同期クロック(c)を使用すれば良い。
【0028】
このように、受信側では、受信したフレームから算出した位相と、判定した位相ずれ方向との2つの情報を基に、生成した複数の同期クロックから好ましいクロックを選択するため、最も同期外れが発生し難いタイミングのクロックを選択することが可能となる。よって、データの伝送周波数をデータ周波数の2倍等に上げること無く、良好なデータ受信を実施でき、従来より伝送距離を伸ばすことができる。
また、前後2分割したフレームのうち、位相ずれにより同期外れが発生し難い一方に対して同期するクロックが選択されるため、フレーム内で同期位置がズレていても同期外れが発生し難く、受信データを取り損なうようなことが発生し難い。
更に、受信側は、同期クロックを2通りのクロックから選択する場合は、受信データ周波数の2倍の周波数を生成すれば良く、使用するASIC等は低スペックで済む。
【0029】
尚、上記実施形態では、受信側で生成するクロック周波数をデータ周波数の2倍の周波数としているが、4倍等更に高い周波数としても良い。高い周波数とすれば選択対象のクロック数も増やすことができ、更に最適なタイミングのクロックを選択できる。
【符号の説明】
【0030】
1・・有線通信システム、10・・送信側機器、14・・クロック生成部、20・・受信側機器、23・・データ受信部、27・・クロック生成部、28・・クロック同期部、28b・・同期クロックイネーブル生成部、28c・・同期クロックタイミング選択部(クロック選択部)、28d・・位相演算部、28e・・位相変化方向判定部、28f・・クロック同期タイミング判定部(クロック選択部)。