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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】深井戸の掘削方法及び二重管保持具
(51)【国際特許分類】
   E21B 19/16 20060101AFI20230901BHJP
【FI】
E21B19/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020008812
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021116542
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】502458316
【氏名又は名称】株式会社 山全
(74)【代理人】
【識別番号】100142217
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 宜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100119367
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 理
(72)【発明者】
【氏名】牛尾 研太
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕史
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-79897(JP,U)
【文献】特開平5-163884(JP,A)
【文献】実開平4-82094(JP,U)
【文献】特開平9-144468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 19/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリーパーカッション二重管ボーリング装置を用いて深井戸を掘削する深井戸の掘削方法であって、
削孔済みの二重管ロッドに次の二重管ロッドを接続するために、互いに一端を枢着した開閉可能な一対の半割環状体と、前記一対の半割環状体の開閉端側に設けた、前記一対の半割環状体を閉じる方向に締付ける締付機構とを個々に備えた外管把持環並びに内管把持環と、前記外管把持環と前記内管把持環とを連結する可撓性を有する連結部材とからなる、前記次の二重管ロッドを保持する二重管保持具を予め準備しておく予備工程と、
前記次の二重管ロッドの外管を前記外管把持環に装着すると共に、前記外管に挿入した当該二重管ロッドの内管を、当該内管の下端が前記外管の下端から突き出た状態で前記内管把持環に装着した後、前記外管把持環を吊り上げて、前記次の二重管ロッドの内管の下端が前記削孔済みの二重管ロッドの内管の上端に載るように前記次の二重管ロッドを供給する二重管ロッド供給工程と、
前記供給した次の二重管ロッドの内管から前記内管把持環を取外して前記外管把持環を下降させた後、前記次の二重管ロッドを駆動するためのドリルヘッドと前記内管とを、並びに前記次の二重管ロッドの内管と前記削孔済みの二重管ロッドの内管とを夫々連結する内管連結工程と、
前記供給した次の二重管ロッドの外管を前記ドリルヘッドに連結し、該連結した外管から前記外管把持環を取外し、前記ドリルヘッドに連結した外管と前記削孔済みの二重管ロッドの外管とを連結する外管連結工程と、
所定の深さまで削孔した前記二重管ロッドから前記外管を残して削孔済みの前記内管を順次抜取る内管抜管工程と、
全ての前記内管の抜取りが完了した後、地中の前記外管内にスリットを有する保孔管を、所定の深さまで順次接続しながら挿入する保孔管挿入工程と、
所定の深さまで前記保孔管が挿入された後、前記外管を順次抜管し、その外管が抜管された部分に前記外管と前記保孔管との間を通して埋設材を投入することで、保孔管と孔壁の間を順次埋設する埋設工程と、
を含む深井戸の掘削方法。
【請求項2】
請求項1に記載の深井戸の掘削方法であって、
前記保孔管は、地下水溜まり由来の軟弱地盤の地すべり対策となり得る揚水能力を有する、最大外寸が100mm未満のポンプが挿入できるよう、内径が140mmφ~160mmφの範囲にあることを特徴とする深井戸の掘削方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の深井戸の掘削方法であって、
前記内管抜管工程において、前記二重管保持具の内管把持環は、削孔済の前記内管に着脱する際の操作性を良くするために、前記外管把持環から切り離して単独で使用することを特徴とする深井戸の掘削方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一に記載の深井戸の掘削方法であって、
前記保孔管挿入工程において、前記二重管保持具の内管把持環は、前記内管と同じ又は略同じ外径を有する前記保孔管を吊り上げて削孔済の外管に挿入する際に、前記保孔管を保持するために、前記外管把持環から切り離して単独で使用することを特徴とする深井戸の掘削方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一に記載の深井戸の掘削方法であって、
前記締付機構は、
前記一対の半割環状体のうちの片方の半割環状体の開閉端近くの外周に、もう片方の半割環状体の開閉端近くの外周に向けて倒れ込むことができるように、基部を枢着したねじ棒と、
前記ねじ棒の先端近くに螺合したナットと、
前記もう片方の半割環状体の開閉端近くの外周に設けた、前記ねじ棒を受け入れる溝を有する突出片とからなることを特徴とする深井戸の掘削方法。
【請求項6】
請求項5に記載の深井戸の掘削方法であって、
前記内管把持環の前記内管への着脱時、及び前記外管把持環の前記外管への着脱時に、前記ナットをインパクトレンチで回動させる深井戸の掘削方法。
【請求項7】
ロータリーパーカッション二重管ボーリング装置における削孔済みの二重管ロッドと次の二重管ロッドとの接続位置へ前記次の二重管ロッドを吊り上げて供給する際に前記次の二重管ロッドを保持する二重管保持具であって、
前記二重管ロッドの外管の外周面に装着する外管把持環と、
前記外管把持環に可撓性を有する連結部材で連結した、前記二重管ロッドの内管の外周面に装着する内管把持環とを備え、
前記内管把持環及び外管締付環は、夫々、互いに一端を枢着した開閉可能な一対の半割環状体と、前記一対の半割環状体の開閉端側に設けた、前記一対の半割環状体を閉じる方向に締付ける締付機構とを備えることを特徴とする二重管保持具。
【請求項8】
請求項7に記載の二重管保持具であって
前記締付機構は、
前記一対の半割環状体のうちの片方の半割環状体の開閉端近くに、もう片方の半割環状体の開閉端近くの外周に向けて倒れ込むことができるように、基部を枢着したねじ棒と、
前記ねじ棒の先端近くに螺合したナットと、
前記もう片方の半割環状体の開閉端近くの外周に設けた、前記ねじ棒を受け入れる溝を有する突出片とからなることを特徴とする二重管保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーパーカッション二重管ボーリング装置を用いて深井戸を掘削する深井戸の掘削方法、及び、ロータリーパーカッション二重管ボーリング装置における削孔済みの二重管ロッドと次の二重管ロッドとの接続位置へ前記次の二重管ロッドを吊り上げて供給する際に前記次の二重管ロッドを保持する二重管保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータリーパーカッション二重管ボーリング装置は、掘削速度が速く、多様な掘削方向に対応できる等の利点を有しており、法面にアンカーを設置するための掘削等に用いられることが多い。この装置では、外管と該外管に挿入した内管とからなる二重管ロッドを用いて削孔する。深井戸を掘るには地中深くまで削孔する必要があるが、1本の二重管ロッドの長さには限りがあるので、削孔済みの二重管ロッドに、ロッド延長用の二重管ロッドを順次接続しながら掘削を行うことにより、地中深くまで掘削できるようにしている。そして削孔済みの二重管ロッドに次の二重管ロッドを接続する作業は、作業者が外管に内管を挿入して手作業で接続位置に供給して接続するのが一般的である。しかし、その接続作業は、重労働であり、多くの時間を要する。そして例えば外管に挿入してある内管が外管から抜けて落下し、それによって作業者が怪我をすることもあり、危険が伴うものであった。
【0003】
そこで、二重管ロッド接続時の作業者の労力を軽減し、作業者の危険性を排除するために、例えば特許文献1に開示されているように、内管を外管の内部の所定位置で受け止める内管受部を備えたストッパーを、次の二重管ロッドの外管の先端外周に環着し、その外管の外周を把持装置で把持し、その把持装置を吊り上げて接続位置へ移送するという方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平05-163884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、近年、二重管ロッドの大型化等により外管や内管の重量が増大する傾向にあり、しかもロータリーパーカッション二重管ボーリング装置を用いて深井戸を掘削する場合、二重管ロッドを鉛直方向に向けて削孔しなければならない。
【0006】
しかし、二重管ロッドを鉛直方向に向けて削孔をする場合、前述のストッパーを外管の先端部に環着して二重管ロッドを接続位置に供給するようにすると、削孔済みの二重管ロッドの上端に次の二重管ロッドの内管の下端を載せたとき、ストッパーが削孔済みの二重管ロッドの内管と次の二重管ロッドの内管とに挟まれ、次の二重管ロッドの内管の荷重が直接的にストッパーに加わるので、ストッパーを挟む上下の内管とストッパーとの摩擦力が大きくなる。そのため、ストッパーを外管から除去する作業が難しくなり、そのストッパーの除去作業に多くの時間と労力を費やすことになる。また二重管ロッドを吊り上げるために用いる把持装置は、所定間隔をおいて連結した対をなすアームを、その上端部でクランクにより回動自在にリンクさせ、鋏のように二重管ロッドの外管の外周面を把持するものであり、二重管ロッドの落下を防ぐために、その二重管ロッドの重量によりアームにそれを閉じる方向に力が作用するようにしたものであるので、吊り上げた二重管ロッドの姿勢を鉛直方向に維持するのは難しい。したがって、前述のストッパーを外管の先端部に環着し、前述の把持装置を用いて二重管ロッドを接続位置へ供給するようにしても、作業性や作業時間等の観点から十分とはいえなかった。
【0007】
本発明は、上述のような問題点に鑑み、二重管ロッドを鉛直方向に向けて削孔をする場合でも、安全に短時間で容易に接続作業を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
本発明の第1の側面に係る深井戸の掘削方法によれば、ロータリーパーカッション二重管ボーリング装置を用いて深井戸を掘削する深井戸の掘削方法であって、削孔済みの二重管ロッドに次の二重管ロッドを接続するために、互いに一端を枢着した開閉可能な一対の半割環状体と、前記一対の半割環状体の開閉端側に設けた、前記一対の半割環状体を閉じる方向に締付ける締付機構とを個々に備えた外管把持環並びに内管把持環と、前記外管把持環と前記内管把持環とを連結する可撓性を有する連結部材とからなる、前記次の二重管ロッドを保持する二重管保持具を予め準備しておく予備工程と、前記次の二重管ロッドの外管を前記外管把持環に装着すると共に、前記外管に挿入した当該二重管ロッドの内管を、当該内管の下端が前記外管の下端から突き出た状態で前記内管把持環に装着した後、前記外管把持環を吊り上げて、前記次の二重管ロッドの内管の下端が前記削孔済みの二重管ロッドの内管の上端に載るように前記次の二重管ロッドを供給する二重管ロッド供給工程と、前記供給した次の二重管ロッドの内管から前記内管把持環を取外して前記外管把持環を下降させた後、前記次の二重管ロッドを駆動するためのドリルヘッドと前記内管とを、並びに前記次の二重管ロッドの内管と前記削孔済みの二重管ロッドの内管とを夫々連結する内管連結工程と、前記供給した次の二重管ロッドの外管を前記ドリルヘッドに連結し、該連結した外管から前記外管把持環を取外し、前記ドリルヘッドに連結した外管と前記削孔済みの二重管ロッドの外管とを連結する外管連結工程と、所定の深さまで削孔した前記二重管ロッドから前記外管を残して削孔済みの前記内管を順次抜取る内管抜管工程と、全ての前記内管の抜取りが完了した後、地中の前記外管内にスリットを有する保孔管を、所定の深さまで順次接続しながら挿入する保孔管挿入工程と、所定の深さまで前記保孔管が挿入された後、前記外管を順次抜管し、その外管が抜管された部分に前記外管と前記保孔管との間を通して埋設材を投入することで、保孔管と孔壁の間を順次埋設する埋設工程と、を含むように構成できる。
【0009】
前記構成により、二重管ロッドを鉛直方向に向けて削孔をする場合でも、安全に短時間で容易に接続作業を行うことができるようになる。
【0010】
本発明の第2の側面に係る深井戸の掘削方法によれば、前記保孔管は、地下水溜まり由来の軟弱地盤の地すべり対策となり得る揚水能力を有する、最大外寸が100mm未満のポンプが挿入できるよう、内径が140mmφ~160mmφの範囲にあるように構成できる。
【0011】
前記構成により、軟弱地盤の地すべり対策において、安全性及び操作性のより高い施工方法を提供できる。
【0012】
本発明の第3の側面に係る深井戸の掘削方法によれば、前記内管抜管工程において、前記二重管保持具の内管把持環は、削孔済の前記内管に着脱する際の操作性を良くするために、前記外管把持環から切り離して単独で使用することができる。
【0013】
前記構成により、二重管保持具を内管抜管工程でも活用できるので、新たな器具が不要となるため経済的であり、また器具が増えることによって作業現場が煩雑になるのを回避できるため効率性にも優れる。
【0014】
本発明の第4の側面に係る深井戸の掘削方法によれば、前記保孔管挿入工程において、前記二重管保持具の内管把持環は、前記内管と同じ又は略同じ外径を有する前記保孔管を吊り上げて削孔済の外管に挿入する際に、前記保孔管を保持するために、前記外管把持環から切り離して単独で使用することができる。
【0015】
前記構成により、二重管保持具を保孔管挿入工程でも活用できるので、新たな器具が不要となるため経済的であり、また器具が増えることによって作業現場が煩雑になるのを回避できるため効率性にも優れる。
【0016】
本発明の第5の側面に係る深井戸の掘削方法によれば、前記締付機構は、前記一対の半割環状体のうちの片方の半割環状体の開閉端近くの外周に、もう片方の半割環状体の開閉端近くの外周に向けて倒れ込むことができるように基部を枢着したねじ棒と、前記ねじ棒の先端近くに螺合したナットと、前記もう片方の半割環状体の開閉端近くの外周に設けた、前記ねじ棒を受け入れる溝を有する突出片とからなるように構成できる。
【0017】
前記構成により、外管把持環、内管把持環は、ねじ棒を倒して突出片の溝に入れてからナットを締めることにより、確実に外管、内管を把持することができる。そのため外管や内管の外周面に抜け落ち防止用の凹凸を形成する必要がなくなる。また外管把持環や内管把持環から、それを構成する部品を取外すことなく外管や内管を着脱することができるので、着脱作業が楽になり、着脱時間の一層の短縮を図ることができる。
【0018】
本発明の第6の側面に係る深井戸の掘削方法によれば、前記内管把持環の前記内管への着脱時、及び前記外管把持環の前記外管への着脱時に、前記ナットをインパクトレンチで回動させるように構成できる。
【0019】
前記構成により、作業者の労力を軽減することができ、確実に一層短時間で前記内管把持環の前記内管への着脱、及び前記外管把持環の前記外管への着脱を行うことが可能になる。
【0020】
本発明の第7の側面に係る二重管保持具によれば、ロータリーパーカッション二重管ボーリング装置における削孔済みの二重管ロッドと次の二重管ロッドとの接続位置へ前記次の二重管ロッドを吊り上げて供給する際に前記次の二重管ロッドを保持する二重管保持具であって、前記二重管ロッドの外管の外周面に装着する外管把持環と、前記外管把持環に可撓性を有する連結部材で連結した、前記二重管ロッドの内管の外周面に装着する内管把持環とを備え、前記内管把持環及び外管締付環は、夫々、互いに一端を枢着した開閉可能な一対の半割環状体と、前記一対の半割環状体の開閉端側に設けた、前記一対の半割環状体を閉じる方向に締付ける締付機構とを備えることができる。
【0021】
前記構成により、二重管ロッドを鉛直方向に向けて削孔をする場合でも、安全に短時間で容易に接続作業を行うことができる二重管保持具を得ることができる。
【0022】
本発明の第8の側面に係る二重管保持具によれば、前記締付機構は、前記一対の半割環状体のうちの片方の半割環状体の開閉端近くに、もう片方の半割環状体の開閉端近くの外周に向けて倒れ込むことができるように、基部を枢着したねじ棒と、前記ねじ棒の先端近くに螺合したナットと、前記もう片方の半割環状体の開閉端近くの外周に設けた、前記ねじ棒を受け入れる溝を有する突出片とからなるように構成できる。
【0023】
前記構成により、外管把持環、内管把持環は、ねじ棒を倒して突出片の溝に入れてからナット締めることにより、確実に外管、内管を把持することができる。そのため外管や内管の外周面に抜け落ち防止用の凹凸を形成する必要がなくなる。また外管把持環や内管把持環から、それを構成する部品を取外すことなく外管や内管を着脱することができるので、着脱作業が楽になり、着脱時間の一層の短縮を図ることができる。そのため外管や内管の外周面に抜け落ち防止用の凹凸を形成する必要がなくなる。また外管把持環や内管把持環から、それらを構成する一部の部品を取外すことなく外管や内管を着脱することができるので、便利である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る深井戸の掘削方法を実施するため用いる装置の側面図である。
図2】二重管保持具の正面図である。
図3】内管把持環の平面図である。
図4】内管把持環の左側面図である。
図5】一対の半割環状体を開いた状態を示す内管把持環の平面図である。
図6】外管把持環の平面図である。
図7】本発明に係る深井戸の掘削方法の一例を示すフローチャートである。
図8】深井戸の掘削方法における掘削工程の一例を示すフローチャートである。
図9】二重管ロッドの接続方法の一例を示すフローチャートである。
図10】外管切離し工程で削孔済みの外管を把持した状態を示す説明図である。
図11】削孔済みの外管からドリルヘッドを切り離した状態を示す説明図である。
図12】内管切離し工程で削孔済みの内管を把持した状態を示す説明図である。
図13】延長用の二重管ロッドを接続位置に搬入した状態を示す説明図である。
図14】内管から内管把持環を取外した状態を示す説明図である。
図15】内管接続工程で外管を下降させた状態を示す説明図である。
図16】内管接続工程で内管の接続が完了した状態を示す説明図である。
図17】外管の上端をドリルヘッドに接続した状態を示す説明図である。
図18】外管から外管把持環を取外した状態を示す説明図である。
図19】外管を掘削済みの外管に接続した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための深井戸の掘削方法、及び、二重管保持具を例示するものであって、本発明はそれらを以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(深井戸の掘削方法を実施するために用いる装置)
【0026】
図1に示すように、本発明の深井戸の掘削方法を実施する際に用いるロータリーパーカッション二重管ボーリング装置1は、二重管ロッド2を駆動するドリルヘッド3と、ドリルヘッド3を、掘削方向に向けたガイドセル4に沿って進退させる給進装置5とを備えている。ガイドセル4は、その姿勢を、クローラ6aを有する装置本体6に設けた掘削姿勢変更機構7により多様に変えることが可能であり、図1では鉛直方向に掘削可能な姿勢をとっている。ドリルヘッド3は、先端に削孔用ビットを有する二重管ロッド2を回転駆動しながら掘削方向に振動させることができる。ドリルヘッド3に二重管ロッド2を接続し、ドリルヘッド3で二重管ロッド2を駆動しながら、ドリルヘッド3を給進装置5により前進させることにより、二重管ロッド2は地面を掘り進むことができる。削孔済みの二重管ロッド2に新たな二重管ロッド2を順次接続して延長しながら掘削を行うことで、地中深くまで掘削できる。二重管ロッド2の接続を行うとき、二重管ロッド2は、二重管保持具8に装着され、その二重管保持具8を吊り上げ装置9で吊り上げて、待避中のドリルヘッド3の下方の接続位置へ搬入され、最終的に作業者の手作業で、図1に二点鎖線で示すように配置される。
(二重管保持具8)
【0027】
図2は、二重管ロッド2を吊り上げて接続位置へ供給するために二重管ロッド2を二重管保持具8に装着した状態を示している。二重管ロッド2は、外管10と該外管10に挿入した内管11とからなり、外管10、内管11は、各々の一方の先端外周部に雄ねじ10a、11aが形成してあり、反対側の先端内周部に雌ねじ10b、11bが形成してある。外管10同士、内管11同士は、互いに雄ねじ10a、11aと雌ねじと10b、11bを螺合させることで接続することができる。二重管保持具8は、外管把持環12並びに内管把持環13と、外管把持環12と内管把持環13とを連結する可撓性を有する連結部材14とからなる。この実施形態では連結部材14として鋼線を撚り合わせたワイヤロープを用いているが、代わりに他の材質のロープ、帯や紐等を用いる場合もあり得る。
(内管把持環13)
【0028】
図3及び図4に示すように、内管把持環13は、内管11の外周面を把持するための一対の半割環状体15、16を備えている。この一対の半割環状体15、16は、各々の一端に枢着部17を有しており、軸体18を中心に回動して開閉することができるヒンジ構造になっている。また、一対の半割環状体15、16の自由端側つまり開閉端側には、一対の半割環状体15、16を閉じる方向に締付ける締付機構19が設けてある。
(締付機構19)
【0029】
締付機構19は、片方の半割環状体15の開閉端近くの外周に基部20aを枢着したねじ棒20と、ねじ棒20の先端近くに螺合したナット21と、もう片方の半割環状体16の開閉端近くの外周に設けた突出片22とからなる。片方の半割環状体15の開閉端近くの外周にはブラケット23が固設してあり、ねじ棒20の基部20aは、ブラケット23に取付けた軸体24で回動可能に貫通して保持されている。そして軸体24の長手中心軸線は、半割環状体15の円周の接線方向と平行になっているので、ねじ棒20は、軸体24を中心に揺動して、もう片方の半割環状体16の開閉端近くの外周に向けて倒れ込むことができる。そして突出片22は、倒れ込んだねじ棒20の、ナット21より基部20a寄りの部分を受け入れる溝22aを有している。
【0030】
図3に示す内管把持環13は、内管11を把持した状態にあり、締付機構19は、一対の半割環状体15、16を締め付けた状態にある。内管把持環13から内管11を取外すには、ナット21を緩めて突出片22の片面22bから所定の高さまで浮き上がらせた後、ねじ棒20を、軸体24を中心として突出片22から離反する方向、図3では時計方向に回転させることで起こし、その後、図5に示すように一対の半割環状体15、16を開く。また内管把持環13に内管11を装着するには、一対の半割環状体15、16を開いておき、その一対の半割環状体15、16のうちの何れか片方を内管11の外周面に被せて一対の半割環状体15、16を閉じる。そしてねじ棒20を突出片22側へ倒してナット21を突出片22の片面22bに掛けてからナット21を回して締める。
(外管把持環12)
【0031】
図6に示すように、外管把持環12も、外管10の外周面を把持するための一対の半割環状体25、26を備えており、この一対の半割環状体25、26も、各々の一端に枢着部27を有しており、軸体28を中心に回動して開閉することができるヒンジ構造になっている。また、一対の半割環状体25、26の開閉端側には、一対の半割環状体25、26を閉じる方向に締付ける締付機構29が設けてある。締付機構29は、内管把持環13の締付機構19と同様の構造であり、片方の半割環状体25の開閉端近くの外周に基部30aを枢着したねじ棒30と、ねじ棒30の先端近くに螺合したナット31と、もう片方の半割環状体26の開閉端近くの外周に設けた突出片32とからなり、突出片32は、溝32a、片面32bを有している。
【0032】
内管把持環13、外管把持環12に、内管11、外管10を着脱する作業の時間短縮、省力化を図るために、ナット21、ナット31を夫々同じ大きさのものとし、それらを、インパクトレンチで回転させるのが望ましい。インパクトレンチは、電気や圧縮空気を動力源として、その出力軸に装着したソケットに回転方向の打撃を与えながら、そのソケットとを回転させることができるものである。動力源としてバッテリーを装備したものが特に良い。
【0033】
図2に示すように連結部材であるワイヤロープ14の両端部には、連結用金具33が取付けてあり、外管把持環12には吊り片34、内管把持環13には、吊り片35が固設してある。この実施形態では、吊り片35は片方の半割環状体25に設けている。また吊り上げ装置9は公知のクレーン車である。連結用金具33はSCシャックルであり、各々連結用の穴を有する吊り片34、吊り片35に対して容易に着脱可能である。また外管把持環12の片方の半割環状体25の幅は、もう片方の半割環状体26の幅より大きくなっており、片方の半割環状体25には、吊り上げ用のスリングベルト等の吊下げ部材9aを掛けるための吊り片36と、吊り上げた二重管ロッド2の位置決め等の操作性を高めるための把手37が設けてある。
【0034】
内管把持環13は、外管把持環12から分離して使用可能であり、図3に示すように、掘削完了後に内管11を回収するとき内管11を略鉛直方向に向けて安定的に吊り上げるために、半割環状体15と半割環状体16とに別々に固着した二つの吊り片35を有している。
(ロータリーパーカッション二重管ボーリング装置1)
【0035】
ロータリーパーカッション二重管ボーリング装置1は、二重管ロッドの接続作業に要する労力を更に軽減するために、図1に示すように、ガイドセル4の下端付近に配設した、外管10を把持可能な外管クランプ38と、外管クランプ38の上側に配設した、削孔済みの内管11を把持可能な内管クランプ39とを備えている。更に、削孔済みの内管11を回収する際に、内管11同士のねじ結合を解くための分離用クランプ40を備えている。この分離用クランプ40は、内管6を把持して所定角度だけ回転させることができるようになっている。またドリルヘッド3には、その駆動力を二重管ロッド2の外管10に伝達する外管駆動ロッド41aと、内管11に伝達する内管駆動ロッド41bとからなる駆動ロッド41が設けてあり、外管駆動ロッド41a及び内管駆動ロッド41bは一体となって駆動される。そして外管駆動ロッド41aの先端部外周には、外管10の端部内周の雌ねじ10bに螺合する雄ねじが形成されており、内管駆動ロッド41bの先端部内周には、内管11の端部外周の雄ねじ11aに螺合する雌ねじが形成されている。そして外管10、内管11は、駆動ロッド41を締り方向に正転、逆転させることで、外管駆動ロッド41a、内管駆動ロッド41bに接続、切離し可能になっている。
(深井戸の掘削方法)
【0036】
次に、本発明に係る深井戸の掘削方法の一例を説明すると、この深井戸の掘削方法は、図7に示すようにロータリーパーカッション二重管ボーリング装置1を用いて、削孔済みの二重管ロッドに延長用の二重管ロッド2を順次接続しながら、所定の深さまで削孔する掘削工程S1と、所定の深さまで削孔した二重管ロッド2から外管10を残して削孔済みの内管11を順次抜取る内管抜管工程S2と、全ての内管11の抜取りが完了した後、地中の外管10内にスリットを有する保孔管を、所定の深さまで順次接続しながら挿入する保孔管挿入工程S3と、所定の深さまで保孔管が挿入された後、外管10を順次抜管し、その外管10が抜管された部分に外管10と保孔管との間を通して埋設材を投入することで、保孔管と孔壁の間を順次埋設する埋設工程S4とからなる。
【0037】
上述の掘削工程S1は、図8に示すように、二重管ロッド2の二重管保持具8を予め準備する予備工程S11を含んでおり、予備工程S11を実施した後、削孔工程S12を実施する。削孔工程S12では、先端に掘削用のビットを設けた先頭の二重管ロッド2により削孔を行い、その二重管ロッド2の後端が地表面近くに達すると、ドリルヘッド3による二重管ロッド2の駆動を停止する。削孔工程S12が完了したとき、先頭の二重管ロッド2が所定の深さに達していなければ、接続準備工程S13、接続工程S14に移り、先頭の二重管ロッド2が所定の深さに達していれば、掘削工程S1を終了する。
【0038】
接続準備工程S13では、図2に示すように二重管保持具8を用いて、次の二重管ロッド2、つまり削孔済みの二重管ロッド2を延長するために当該削孔済みの二重管ロッド2に接続する二重管ロッド2について、その外管10を外管把持環12に装着すると共に、外管10に挿入した内管11を、その内管11の下端が外管10の下端から突き出た状態で内管把持環13に装着する。そして外管把持環12の吊り片36にスリングベルト等を連結して吊り上げ装置9で外管把持環12を吊り上げて待機させる。外管把持環12を吊り上げると、外管把持環12と内管把持環13とは連結部材14で連結されているので、内管把持環13も、更に内管11及び外管10も、外管把持環12と一緒に吊り上げられる。
【0039】
図9は、図8に示す二重管ロッドの接続工程S14で実施される二重管ロッド2の接続方法の一例を示すフローチャートである。この二重管ロッドの接続方法は、ドリルヘッド3を削孔済みの外管10から切離す外管切離し工程S141と、ドリルヘッド3を削孔済みの内管11から切離し、ドリルヘッド3を図1に示すように待機位置に退避させる内管切離し工程S142と、図8に示す接続準備工程S13で準備した二重管ロッド2を、削孔済みの二重管ロッド2との接続位置に搬入するロッド搬入工程S143と、二重管保持具8の内管把持環13を、接続位置に搬入されている内管11から取外す内管把持環取外し工程S144と、ドリルヘッド3を、接続位置に搬入された内管11に接続すると共に、ドリルヘッド3に接続された内管11を削孔済みの内管11に接続する内管接続工程S145と、外管把持環12に装着されている外管10を上昇させてドリルヘッド3に接続する外管上端接続工程S146と、外管把持環12を接続位置に搬入された外管10から取外す外管把持環取外し工程S147と、ドリルヘッド3を、接続位置に搬入された外管10に接続した後、ドリルヘッド3に接続された外管10と削孔済みの外管10とを接続する外管下端接続工程S148とからなる。
【0040】
外管切離し工程でS141では、図10に示すように削孔済みの外管10Aを外管クランプ38により把持した後、駆動ロッド41を逆転させながらドリルヘッド3を後退させることで、削孔済みの外管10Aから外管駆動ロッド41aが切離される。それによって削孔済みの外管10Aからドリルヘッド3を切り離すことができる。
【0041】
内管切離し工程S142では、削孔済みの外管10Aから外管駆動ロッド41aを切離した後もドリルヘッド3を後退させ、図11に示すように削孔済みの内管11Aの上端部が内管クランプ39に対応する位置まで上昇すると、ドリルヘッド3の後退を停止させる。そして図12に示すように内管クランプ39で、削孔済みの内管11Aを把持した後、駆動ロッド41を逆転させながらドリルヘッド3を後退させることで、削孔済みの内管11Aから内管駆動ロッド41bを切り離す。それによってドリルヘッド3は削孔済の内管11Aから切離される。その後、ドリルヘッド3を、図12に二点鎖線で示すように待機位置まで後退させて停止する。
【0042】
図8に示す接続準備工程S13で準備されたロッド延長用の二重管ロッド2は、ドリルヘッド3が待機位置に退避するまでに、図1に示すように二重管保持具8の外管把持環12を吊り上げ装置9で吊上げて、図12に示すように接続位置の近くまで搬送して待機させておくとよい。
【0043】
ロッド供給工程S143では、接続準備工程S13で準備された二重管保持具8の外管把持環12を吊り上げ装置9で吊り上げて、図13に示すように待機位置に退避中のドリルヘッド3の下方にある接続位置へ搬入する。そして搬入した二重管ロッド2の内管11Bの下端が、削孔済みの二重管ロッドの内管11Aの上端に載るように、搬入した二重管ロッド2の位置決め作業を行う。その位置決め作業が済むと、二重管ロッド2の接続位置への供給工程が完了する。外管把持環12は、二重管ロッド2の供給完了後も、接続位置に吊り上げ装置9によって安定性良く吊るされている。そして内管11はその上端部分が外管10に挿入されているので、削孔済みの内管11Aの上端に載置された内管11Bが倒れる心配がない。また外管把持環12と内管把持環13とを連結する連結部材14は可撓性を有しているので、削孔済みの内管11Aの上端に載置された次の内管11Bは、外管把持環12に装着されている外管10Bに対してスライドすることができる。それゆえ、接続位置へ搬入した二重管ロッド2を、削孔済みの内管11Aの上端に降ろす際に、吊り上げ装置9による外管把持環12の下降量にばらつきがあっても支障がない。
【0044】
内管把持環取外し工程S144では、内管把持環13のナット21を緩めてねじ棒20をもう片方の半割環状体16から離れる方向に傾けて突出片22から外し、一対の半割環状体15、16を開いて内管11Bから内管把持環13を取外す。この状態を図14に示す。
【0045】
内管接続工程S145では、先ず、吊り上げ装置9により外管把持環12を図15に示すように下降させる。このとき外管把持環12と一緒に外管10Bも下降する。外管10Bが下降すると内管11Bの上端が外管10Bの上端から突出した状態になる。次いで、ドリルヘッド3を下降させて内管駆動ロッド41bの先端を、内管11Bの上端に当接させる。その後、駆動ロッド41を回転させながらドリルヘッド3を下降させ、内管駆動ロッド41bと内管11Bの上端部とを接続し、更に内管11Bの下端部と削孔済みの内管11Aとを接続する。この接続が完了した状態を図16に示す。
【0046】
外管上端接続工程S146では、先ず内管クランプ39による削孔済みの内管11Aの把持を解く。次いで、吊り上げ装置9により外管把持環12を吊り上げて、それに装着されている外管10Bを上昇させて、外管駆動ロッド41aの下端と外管10Bの上端とを同心状に当接させ、更に吊り上げ装置9により外管10Bを上昇させながら、駆動ロッド41をドリルヘッド3により締り方向に回転させることで、図17に示すように外管駆動ロッド41aに外管10Bの上端部を接続する。
【0047】
外管把持環取外し工程S147では、外管把持環12の締付機構29を、内管把持環取外し工程S144における内管把持環13の取外し時と同様に操作して、外管把持環12を取外す。そして取外された外管把持環12は、吊り上げ装置9により、図18に示すように吊下げた状態で接続位置から退避させる。この実施形態では、内管把持環取外し工程S144、外管把持環取外し工程S147では、締付機構19のナット21、締付機構29のナット31の回動はインパクトレンチを用いて行う。
【0048】
外管下端接続工程S148では、ドリルヘッド3を下降させて外管10Bの下端を、削孔済みの外管10Aの上端に同心状に当接させ、ドリルヘッドにより駆動ロッド41aを締り方向に回転させながらドリルヘッド3を更に下降させる。それによって、図19に示すように外管10Bの下端部は、削孔済みの外管10Aの上端部に接続される。その後、外管クランプ38による削孔済みの外管10Aの把持を解く。それによって削孔の再開が可能な状態になる。
【0049】
また、図7に示す内管抜管工程S2では、二重管保持具8の内管把持環13は、削孔済の内管11に着脱する際の操作性を良くするために、外管把持環12から切り離して単独で使用する。即ち、内管把持環13は、図2に示す連結部材14の下端の連結用金具33を吊り片36から外して外管把持環12から切り離し、吊り下げ部材9aの下端の連結用金具9b、9bを、図3に示す吊り片33、33に取付けて吊り上げ装置9により吊り上げ可能にする。また図7に示す保孔管挿入工程S3でも、内管11と同じ又は略同じ外径を有する保孔管を吊り上げて削孔済の外管10に挿入する際に保孔管を保持するために、内管11に装着する場合と同様に保孔管に装着して使用する。
【0050】
このように、二重管保持具8は、二重管ロッドの接続工程S14だけではなく、内管抜管工程S2及び保孔管挿入工程S3でも活用できる。そのため、新たな器具が不要となるため経済的であり、また器具が増えることによって作業現場が煩雑になるのを回避できるため効率性にも優れる。
(地すべり対策のための実施例)
【0051】
以上に説明したように、ロータリーパーカッション二重管ボーリング装置1を用いて、二重管ロッドを鉛直方向に向けて削孔をする場合でも、安全に短時間で容易に接続作業を行うことができるようになった。また、従来は、地下水溜まり由来の軟弱地盤の地すべり対策となり得る揚水能力を有し、かつ、最大外寸が100mm未満である水中ポンプがなかったが、近年になり、コンパクトでありながら十分な揚水能力を有する水中ポンプが製造されるようになった。
【0052】
このため、地下水溜まり由来の軟弱地盤での地すべり対策に、本発明の一実施形態に係る深井戸の掘削方法が採用できるようになった。本発明の一実施形態に係る深井戸の掘削方法を地すべり対策に採用する場合、ロータリーパーカッション二重管ボーリング装置1による削孔径を200mmφとし、削孔完了後に挿入する保孔管には、内径が155.2mmφの配管用炭素鋼鋼管SGP150(JIS G 3452)を用いる。また、当該保孔管に挿入する水中ポンプは、ポンプ外径97mmφのサンロング(株式会社川本製作所製 登録商標)を使用する。
【0053】
ロータリーパーカッション二重管ボーリング装置1を地すべり対策に用いる場合、保孔管の内径として許容される範囲は、140mmφ~160mmφであり、当該保孔管に挿入する水中ポンプの最大外寸として許容される範囲は、80mm~100mmである。保孔管も水中ポンプも製品規格があり、いずれも許容範囲内であれば好適に施工できる。水中ポンプについては、最大外寸が80mm未満の場合、地下水溜まり由来の軟弱地盤の地すべり対策となり得る揚水能力を有さず、また、100mmを越えると、保孔管内にスムーズに挿入できない虞があるからである。
【0054】
この実施例によれば、大規模の装置が搬入できない軟弱地盤においても、比較的小規模のロータリーパーカッション二重管ボーリング装置1であれば搬入できるため、安全に短時間で容易に地すべり対策の施工が行えるようになる。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、その実施形態は多様に変化し得る。本発明の深井戸の掘削方法は、図7に示したものに限らず、図8に示す掘削工程を含むものであれば、他の目的で削孔するものであってもよい。また本発明の二重管保持具は、例えば法面にロックアンカーを設置するために削孔する場合のように、掘削方向が鉛直方向でない場合にも適用し得る。
【符号の説明】
【0056】
1…ロータリーパーカッション二重管ボーリング装置
2…二重管ロッド
3…ドリルヘッド
4…ガイドセル
5…給進装置
6…装置本体;6a…クローラ
7…掘削姿勢変更機構
8…二重管保持具
9…吊り上げ装置
10…外管;10a…雄ねじ;10b…雌ねじ
11…内管;11a…雄ねじ;11b…雌ねじ
12…外管把持環
13…内管把持環
14…連結部材
15…半割環状体
16…半割環状体
17…枢着部
18…軸体
19…締付機構
20…ねじ棒;20a…基部
21…ナット
22…突出片;22a…溝;22b…片面
23…ブラケット
24…軸体
25…半割環状体
26…半割環状体
27…枢着部
28…軸体
29…締付機構
30…ねじ棒;30a…基部
31…ナット
32…突出片;32a…溝;32b…片面
33…連結用金具片
34…吊り片
35…吊り片
36…吊り片
37…把手
38…外管クランプ
39…内管クランプ
40…分離用クランプ
41…駆動ロッド;41a…外管駆動ロッド;41b…内管駆動ロッド
S1…掘削工程;S11…予備工程;S12…削孔工程;S13…接続準備工程;S14…接続工程;S141…外管切離し工程;S142…内管切離し工程;S143…ロッド搬入工程;S144…内管把持環取外し工程;S145…内管接続工程;S146…外管上端把持環取外し工程;S147…外管把持管取外し工程;S148…外管下端接続工程
S2…内管抜管工程
S3…保孔管挿入工程
S4…埋設工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19