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▶ アビオメド オイローパ ゲーエムベーハーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】経弁血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/205 20210101AFI20230901BHJP
   A61M 60/122 20210101ALI20230901BHJP
   A61M 60/818 20210101ALI20230901BHJP
   F04D 13/06 20060101ALI20230901BHJP
   F04D 29/00 20060101ALI20230901BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20230901BHJP
   H02K 21/24 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
A61M60/205
A61M60/122
A61M60/818
F04D13/06 Z
F04D29/00 B
H02K7/14 B
H02K21/24 M
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020039475
(22)【出願日】2020-03-09
(62)【分割の表示】P 2018549978の分割
【原出願日】2017-03-21
(65)【公開番号】P2020108798
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2020-04-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】16161941.6
(32)【優先日】2016-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジース トルステン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジムポ
(72)【発明者】
【氏名】スパニア ゲルト
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】井上 哲男
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-52811(JP,A)
【文献】特開2004-28083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/205
A61M 60/818
A61M 60/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓弁を通して配置されように構成された経弁血液ポンプ(1)であって、
- 血流入口(21)および血流出口(22)を有するポンプケーシング(2)と、
- 回転軸(10)の周りで回転可能であるように前記ポンプケーシング(2)内に配置された羽根車(3)であって、前記血流入口(21)から前記血流出口(22)へ血液を運ぶための大きさおよび形状となされた羽根(31)を有する羽根車(3)と、
- 前記羽根車(3)を回転させるための駆動ユニット(4)であって、前記回転軸(10)の周りに配置された複数の支柱(40)を含む、駆動ユニット(4)と、
を備え、
前記支柱(40)のそれぞれは、軸部分(41)および頭部分(42)を含み、前記軸部分(41)が、前記回転軸(10)に平行であり、前記頭部分(42)が、前記羽根車(3)の方に向けられ、前記支柱(40)のそれぞれの前記軸部分(41)の周りにコイル巻線(47)が配置され、前記コイル巻線(47)が、回転磁界を作り出すように連続的に制御可能であり、前記羽根車(3)が、前記羽根車(3)の回転をもたらすために前記回転磁界と相互作用するように配置された少なくとも1個の磁石(32)を含み、前記駆動ユニット(4)が、前記支柱(40)の前記頭部分(42)とは反対側の前記軸部分(41)のそれぞれの端部(44)に係合する背板(50)をさらに含み、前記背板(50)が、前記回転軸(10)の周りに配置されかつ前記軸部分(41)の前記端部(44)を受容する複数の開口(51)を備えることを特徴とする、経弁血液ポンプ(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の経弁血液ポンプであって、前記支柱(40)のうちの少なくとも1個の支柱(40)の前記頭部分(42)が、前記回転軸(10)に垂直な平面に対してある角度で傾斜した上面(43)を有することを特徴とする経弁血液ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載の経弁血液ポンプであって、前記回転軸(10)と径方向における前記傾斜した上面(43)の中心との間の距離が、前記回転軸(10)と径方向におけるそれぞれの前記支柱(40)の前記軸部分(41)の断面領域の中心との間の距離以下であり、
径方向における前記傾斜した上面(43)の中心は、前記傾斜した上面(43)の径方向の最も内側の点と径方向の最も外側の点との間の中心であり、
径方向における前記支柱(40)の前記軸部分(41)の断面領域の中心は、前記断面領域の径方向の最も内側の点と径方向の最も外側の点との間の中心であることを特徴とする経弁血液ポンプ。
【請求項4】
請求項2または3に記載の経弁血液ポンプであって、前記頭部分(42)が、前記回転軸(10)を含む平面に沿った断面において実質的に三角形であることを特徴とする経弁血液ポンプ。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の経弁血液ポンプであって、前記複数の前記支柱の前記頭部分(42)の前記傾斜した上面(43)が、円錐面を形成することを特徴とする経弁血液ポンプ。
【請求項6】
請求項5に記載の経弁血液ポンプであって、前記羽根車(3)の前記少なくとも1個の磁石(32)が、前記複数の前記支柱(40)の前記頭部分(42)によって形成される前記円錐面と大きさおよび形状が一致する円錐形の凹部(35)を画定することを特徴とする経弁血液ポンプ。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか1項に記載の経弁血液ポンプであって、前記羽根車(3)の前記少なくとも1個の磁石(32)が、前記支柱(40)のうちの前記少なくとも1個の支柱(40)の前記頭部分(42)に面しかつ前記頭部分(42)の前記傾斜した上面(43)の前記角度と一致する角度(34)で傾斜している表面(33)を有することを特徴とする経弁血液ポンプ。
【請求項8】
請求項2から7のいずれか1項に記載の経弁血液ポンプであって、前記角度が、約30°から60°の間であることを特徴とする経弁血液ポンプ。
【請求項9】
請求項8に記載の経弁血液ポンプであって、前記角度が、約45°であることを特徴とする経弁血液ポンプ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の経弁血液ポンプであって、前記羽根車(3)が、少なくとも2個の前記磁石(32)を備えることを特徴とする経弁血液ポンプ。
【請求項11】
請求項10に記載の経弁血液ポンプであって、前記磁石(32)が、径方向に延在する間隙(66)によって分離されることを特徴とする経弁血液ポンプ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の経弁血液ポンプであって、前記駆動ユニット(4)が、少なくとも2個の前記支柱(40)を備えることを特徴とする経弁血液ポンプ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の経弁血液ポンプであって、前記頭部分(42)が、前記回転軸(10)に垂直な平面においてそれぞれの前記軸部分(41)よりも大きい断面寸法を有することを特徴とする経弁血液ポンプ。
【請求項14】
請求項13に記載の血液ポンプであって、それぞれの前記コイル巻線(47)が、少なくとも径方向において前記頭部分(42)を越えて延在しないことを特徴とする経弁血液ポンプ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の経弁血液ポンプであって、磁気を絶縁する材料が、隣接する支柱(40)の前記頭部分(42)間に配置されることを特徴とする経弁血液ポンプ。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の経弁血液ポンプであって、前記駆動ユニット(4)を包囲するハウジング(60)をさらに備え、前記ハウジング(60)が非磁性かつ電気的に不伝導の材料で作られることを特徴とする経弁血液ポンプ。
【請求項17】
請求項16に記載の経弁血液ポンプであって、前記ハウジング(60)が、アルミニウムで作られることを特徴とする経弁血液ポンプ。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載の経弁血液ポンプであって、前記コイル巻線が、電気的に不伝導の熱伝導性母材に埋め込まれ得ることを特徴とする経弁血液ポンプ。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項に記載の経弁血液ポンプであって、前記駆動ユニット(4)が、前記回転軸(10)に沿って延在する中央開口部(54)を有することを特徴とする経弁血液ポンプ。
【請求項20】
請求項19に記載の経弁血液ポンプであって、前記開口部が、細長いピン(15)を受容するために、配置され、前記ピン(15)の軸方向端部表面が、前記羽根車(3)のための軸受面を形成することを特徴とする経弁血液ポンプ。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか1項に記載の経弁血液ポンプであって、前記駆動ユニット(4)が、前記ポンプケーシング(2)の内側に配置されることを特徴とする経弁血液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液ポンプに関し、詳細には、患者の血管内で血流を支援するために患者の血管内に配置される、経弁血液ポンプに関する。本血液ポンプは、血液ポンプの外径の縮小を可能にする、改良された駆動ユニットを有する。
【背景技術】
【0002】
軸流血液ポンプ、遠心血液ポンプ、または軸方向および径方向の両方の力により血流がもたらされる混合型血液ポンプなどの、様々なタイプの血液ポンプが知られている。血管内血液ポンプは、カテーテルにより、患者の大動脈などの血管内に挿入される。血液ポンプは、典型的には、通路によって接続された血流入口および血流出口を有するポンプケーシングを備える。血流入口から血流出口への通路に沿った血流を生じさせるために、羽根車または回転子が、ポンプケーシング内で回転可能に支持され、羽根車は、血液を運ぶための羽根を備えている。
【0003】
血液ポンプは、典型的には駆動ユニットによって駆動され、この駆動ユニットは、電気モータであり得る。例として、米国特許出願公開第2011/0238172A1号は、電気モータに磁気的に結合され得る羽根車を有する体外血液ポンプを開示している。羽根車は、電気モータ内の磁石に隣接して配置される磁石を備える。羽根車内の磁石とモータ内の磁石との間の引力により、モータの回転が羽根車に伝達される。回転する部品の数を減らすために、回転磁界を利用することも米国特許出願公開第2011/0238172A1号から知られており、駆動ユニットは、回転軸の周りに配置された複数の静的な支柱を有し、各支柱は、ワイヤコイル巻線を担持して、磁心として作用する。回転磁界を生成するために、制御ユニットが、コイル巻線に連続的に電圧を供給する。十分に強い磁気結合を提供するために、磁力は十分な強さでなければならず、そのような磁力は、十分に強い電流が駆動ユニットに供給されること、または大きな磁石を設けることによって得ることができるが、大きな磁石を設けることは、血液ポンプの全径を大きくすることにつながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、駆動ユニットと羽根車との間に磁気結合を有する経弁血液ポンプ(transvalvular blood pump)であって、コンパクトな設計、具体的には経弁的に(transvalvularly)血液ポンプが挿入されることを可能にするのに十分に小さい外径を有する、血液ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本発明によれば、独立請求項1の特徴を有する血液ポンプによって達成される。本発明の好ましい実施形態およびさらなる発展は、独立請求項1に従属する請求項に明記される。
【0006】
本発明によれば、好ましくは血管内血液ポンプでありまた軸流血液ポンプ、遠心血液ポンプ、および混合型血液ポンプのうちの1個であり得る血液ポンプが、羽根車を回転させるための駆動ユニットを備える。駆動ユニットは、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、または好ましくは6個の支柱などの、回転軸の周りに配置される複数の支柱を含む。8個、10個、または12個などの、より多数の支柱も可能とされ得る。支柱の数は、釣り合いの取れた羽根車の制御のために、偶数であることが好ましいが、3個または5個などの奇数であってもよい。支柱のそれぞれは、軸部分および頭部分を含み、頭部分は、羽根車の方を向く。回転磁界を生成するために、支柱のそれぞれの軸部分の周りにコイル巻線が配置され、コイル巻線は、回転磁界を生成するように連続的に制御可能とされる。羽根車は、少なくとも1個の磁石を含み、この磁石は、羽根車を駆動ユニットに磁気的に結合するように、すなわち、回転磁界と相互作用して羽根車の回転を生じさせるように、配置される。
【0007】
回転電磁界を生成する駆動ユニットが、一般的な電気モータと比較して可動部品の数を減らすことにより、血液ポンプの機構の単純化を可能にする。このことはまた、電気モータのための接触軸受を必要としないので、摩耗を減少させる。駆動ユニットと羽根車との間の磁気結合は、羽根車の回転を生じさせるだけでなく、羽根車の正確な位置合わせを可能にする。具体的には、磁気結合は、軸方向だけでなく径方向の軸受を提供し得る。
【0008】
駆動ユニットと羽根車の磁石との間の磁気結合の密度を上げるには、いくつかの支柱を同時に活性化することが有利であり得、ここで、「活性化する」とは、それぞれの磁極を生成するためにそれぞれのコイル巻線に電力を供給することを意味する。例えば、支柱の数および羽根車の磁石の数に応じて、6個の支柱のうちの4個などの、支柱の半数以上が同時に活性化され得る。活性化される支柱および不活性化される支柱の配置は、回転対称であることが好ましく、また、支柱は、対で制御されることが好ましい。
【0009】
駆動ユニットは、複数の支柱の頭部分とは反対側の軸部分の端部に係合する背板をさらに含む。1つの実施形態では、背板は、軸部分の前記端部を受容するために、好ましくは一定の角距離で、回転軸の周りに配置された複数の開口を含み得る。しかし、支柱は、恒久的にでも解放可能にでも、他の手段により背板に取り付けられるか接続されるかまたは固定されてもよいことが、理解されるであろう。背板は、具体的には、磁束の生成を促進および強化するため、ならびに結合性能を向上させるために、磁束回路を閉じる働きをする。背板により磁束が強化されるので、血液ポンプの全径を小さくすることができ、このことは、血管内血液ポンプにとって特に有利である。背板とともに支柱を含む構成は、血液ポンプの高周波数をさらに可能にし、すなわち、血液ポンプは、高速度で動作することができる。さらに、背板は、支柱に係合するので、支柱組立体に構造安定性を提供する。
【0010】
背板は、磁性鋼、または磁束回路を閉じるのに適した他の材料、好ましくはコバルト鋼で作られ得る。背板の直径は、5mmまたは6mmから7mmのように、約3mmから9mmとされ得る。背板の厚さは、1.5mmのように、約0.5mmから約2.5mmとされ得る。血液ポンプの外径は、約4mmから約10mm、好ましくは約6mmとされ得る。複数の支柱の構成の外径、具体的には支柱の頭部分において測定される複数の支柱の構成の最大外径は、4mmから6mm、好ましくは5mmのように、約3mmから8mmとされ得る。
【0011】
支柱の寸法、具体的には長さおよび断面積は、異なってもよく、また、様々な要因に依存し得る。血液ポンプの用途に依存する血液ポンプの寸法、例えば外径とは違い、支柱の寸法は、駆動ユニットの所望の性能を得るように調整される電磁的性質によって決定される。要因のうちの1つは、支柱の最小断面積によって得られる磁束密度である。断面積が小さくなるほど、所望の磁束を得るために必要な電流が大きくなる。しかし、より大きい電流は、電気抵抗に起因して、コイルのワイヤにより多くの熱を生じさせる。つまり、全体的な大きさを小さくするには「細い」支柱が好ましいが、これは、大電流を必要とすることになり、したがって、望ましくない熱がもたらされる。ワイヤに生じる熱はまた、コイル巻線に使用されるワイヤの長さおよび直径に依存する。巻線損失(銅線が使用される場合には「銅損」または「銅電力損失(copper power loss)」と呼ばれ、銅線が使用されることが通例である)を最小限に抑えるためには、短いワイヤ長および大きいワイヤ径が好ましい。言い換えれば、ワイヤ径が小さい場合には、より太いワイヤと比較して、同じ電流でもより多くの熱が生じ、好ましいワイヤ径は、例えば0.05mmから0.2mmであり、0.1mmなどである。支柱の寸法および駆動ユニットの性能に影響を及ぼすさらなる要因は、コイルの巻き数、および巻き外径、すなわち巻きを含む支柱の外径である。多数の巻きが各支柱の周りで2つ以上の層に配置されてもよく、例として、2つまたは3つの層が設けられてもよい。しかし、層の数が多くなるほど、より大きい巻き径を有する外側の層内のワイヤの長さが増大することに起因して、より多くの熱が生じることになる。ワイヤの長さが増大することは、短いワイヤと比較すると、長いワイヤのより大きい抵抗に起因して、より多くの熱を生じさせる可能性がある。したがって、小さい巻き径を持つ単層の巻きが、好ましいはずである。
【0012】
支柱の長さに依存する、典型的な巻き数は、約50から約150、例えば56または132とされ得る。
【0013】
1つの実施形態では、羽根車はまた、ヨークまたは背板を含むことができ、このヨークまたは背板は、例えば羽根車の磁石と羽根との間で、好ましくは駆動ユニットと反対の側を向いた羽根車の側において、羽根車の少なくとも1個の磁石に取り付けられる。支柱の軸の端部に取り付けられる背板と同様に、羽根車のヨークまたは背板は、磁束の生成を強化するため、および、結合性能を高めるために、磁束回路を閉じる働きをする。羽根車のヨークまたは背板は、磁性鋼、好ましくはコバルト鋼で作られ得る。
【0014】
支柱もまた、磁性鋼で作られ得る。支柱および背板を含む駆動ユニットは、コバルト鋼で作られることが好ましい。コバルト鋼の使用は、ポンプの大きさ、特に直径を小さくすることに寄与する。あらゆる磁性鋼の中でも、コバルト鋼は、最高の透磁率、および最高の飽和磁束密度により、同量の材料が使用された場合に、最も多くの磁束を生成する。
【0015】
支柱が互いに磁気的に絶縁されると、駆動ユニットの効率および性能にとって有利である。したがって、本発明によれば、支柱を互いに分離しかつそれぞれの磁界をそれぞれの支柱の範囲内に保持するように、隣接した支柱の頭部分間に、磁気を絶縁する材料が配置される。磁気を絶縁する材料は、その磁界がコイル巻線によって生じる電磁界をそれぞれの支柱の範囲内に保持する磁性材料とされ得るなお、本発明に関連する技術では、支柱間の短絡を回避するために、少なくとも、空隙または他の絶縁材料、すなわち電気的に不伝導の材料が、支柱の頭部分間に設けられ得る。
【0016】
1つの実施形態では、支柱のうちの少なくとも1個の支柱の頭部分、好ましくはそれぞれの支柱の頭部分は、回転軸に垂直な平面に対してある角度で傾斜した上面を有する。回転軸と前記傾斜面の径方向における中心との間の距離は、回転軸とそれぞれの支柱の軸部分の断面領域の径方向における中心との間の距離以下であり得る。表面または領域の径方向における中心とは、その表面または領域の径方向の最も内側の点と径方向の最も外側の点との間の中心である。言い換えれば、羽根車に面する表面である、頭部分の傾斜した上面は、斜めに延在すること、または回転軸に対してある角度で傾斜することができ、また、傾斜面の半分以上は、軸部分の中心に対して径方向内方に配置され得る。これは、駆動ユニットの外径、したがって血液ポンプの外径が、駆動ユニットを羽根車に磁気的に結合するのに必要とされる最小値に維持されることを可能にする。この直径が減少した設計は、ポンプが動作している間患者の血管内に配置されまたカテーテルによって配置され得る血管内血液ポンプにとって特に有利である。さらに、傾斜した結合面は、羽根車の径方向の心出しを実現する。前述の角度は、回転軸に垂直な平面に対して、好ましくは45°であるが、約0°から約90°の間、好ましくは約30°から約60°の間、より好ましくは約40°から約50°の間とされ得る。支柱の傾斜面は、径方向外方を向くこと、すなわち、それらが凸形状を形成することが好ましい。あるいは、傾斜面は、径方向内方を向いて凹形状を形成してもよい。
【0017】
駆動ユニットが回転軸に対して対称であるように、支柱の全てが同一であることが好ましい。しかし、支柱は、本発明による駆動ユニットを形成することに適合するのであれば、厳密に同一でなくてもよいことが、理解されるであろう。しかし、軸部分が同じ長さを有すること、および、頭部分の傾斜面が同じ傾斜角度を有することが、好ましい。駆動ユニットを形成するために、異なる支柱が、交互に並んだ形などによって、不規則にまたは規則的に配置されてもよい。
【0018】
前記少なくとも1個の支柱の頭部分の傾斜面、好ましくは頭部分のそれぞれの傾斜面は、それぞれの支柱のコイル巻線の径方向の最も外側の表面と径方向に位置合わせされるか、またはその表面に対して径方向内方もしくは外方に配置され得る。傾斜面は、磁気軸受の表面積を最大化する一方で駆動ユニットの外径を最小限に抑えるために、それぞれの軸部分を越えて回転軸に向かって径方向内方に延在することが好ましい。例として、軸方向投影図では、すなわち、軸方向における上面図に見られるように、頭部分の傾斜面は、コイル巻線の範囲内に配置され得るか、または、軸方向において軸またはコイル巻線と少なくとも位置合わせされ得る。別の実施形態では、頭部分は、径方向および/または円周方向においてコイル巻線の外周を越えて延在し得る。頭部分は、回転軸に垂直な平面においてそれぞれの軸部分よりも大きい断面寸法を有することができ、それぞれのコイル巻線は、好ましくは、少なくとも径方向においては頭部分を越えて延在しない。言い換えれば、頭部分は、コイル巻線のための軸方向の止め具としてだけではなく径方向の限界としても作用し得る肩を形成することができる。
【0019】
頭部分のうちの少なくとも1個、好ましくは全ての頭部分が、回転軸を含む平面に沿った断面において実質的に三角形または台形であり得る。組み立てられた状態では、頭部分の斜めのまたは傾斜した表面は、円錐面、または実質的に円錐形の表面、例えば小平面を有するが円錐面をおおよそ形成する表面を、一緒に形成し得る。一般に、形成される表面の形状は、凸状であり得る。説明的に言うと、頭部分は、円錐形の上面を有する円形の構成を形成するために、パイ片(pie slice)のようにまとめられ得る。羽根車の少なくとも1個の磁石は、支柱の頭部分によって形成される円錐面と大きさおよび形状が実質的に一致する円錐形または実質的に円錐形の凹部を有し得るかまたは形成し得る。一般に、磁石は、磁気結合を向上させるために、支柱によって形成される凸面に面する凹面を形成し得る。別の実施形態では、凹面と凸面の配置は反対とされる場合があり、すなわち、支柱の頭部分が円錐形の凹部を形成する一方で、磁石が凸状の円錐面を形成する場合がある。
【0020】
駆動ユニットおよび羽根車のそれぞれの凸面および凹面は、表面間の距離が一定であるように、それぞれ間隙を形成し得る。しかし、間隙の間隔は、一定ではないが円周方向に見たときに間隙の断面積が径方向において一定であるように選択されることが好ましい。後者の場合、表面間の距離は、回転軸に向かって増大する。組み合わせも想定され得る。羽根車と駆動ユニットとの間の間隙の形状および寸法は、流体力学軸受の性能に寄与し得る。
【0021】
羽根車の磁石は、上述のように間隔が変化する間隙を含む支柱の頭部分の形状と一致する円錐形または実質的に円錐形の凹部を有する単体として形成され得る。しかし、回転軸の周りで羽根車に配置されて円錐形の凹部を形成する、2個以上の磁石、例えば4個、好ましくは6個の磁石、さらには8個、10個、または12個の磁石などの、複数の磁石が設けられ得ることが理解されるであろう。好ましくは偶数、より好ましくは支柱の数と一致する数の複数の磁石を設けることは、磁石が死角を伴わずに磁界の北/南の配向を交互にして配置され得るので有利である。磁石が単体として設けられる場合、配向の異なる磁界間の移行部において死角が生成され得る。
【0022】
羽根車が複数の磁石を含む場合、磁石は、磁性材料の量を増大させるために、個々の磁石間に実質的に間隙を伴わずに配置され得る。しかし、間隙、特に径方向に延在する間隙により磁石が分離されている場合には、磁気結合の効率は低下しないことが分かっている。これは、磁界の特性、および駆動ユニットと羽根車との間の間隙の特性によるものである。羽根車内の磁石が互いに接近している場合、1個の磁石(北)から隣接する磁石(南)へアーチ状に延びる最も内側の磁力線は、駆動ユニットと羽根車との間の間隙を越えて延在せず、したがって、駆動ユニットに到達しない。すなわち、最も内側の磁力線は、羽根車の駆動に寄与しない。したがって、羽根車内の磁石間に間隙が設けられていれば、効率の損失はない。駆動効率の損失を伴わずに設けられ得る羽根車内の磁石間の間隙の大きさは、当業者であれば計算することができるように、羽根車と駆動ユニットとの間の間隙の大きさに依存する。羽根車の磁石間の間隙は、例えば洗い出しチャネル(wash out channel)として使用され得る。
【0023】
一般的に言えば、また、頭部分が円錐面を形成するかどうかにかかわらず、羽根車の磁石は、支柱の頭部分に面する表面を有することができ、かつ、頭部分の傾斜面の角度と実質的に一致する角度で傾斜し得る。例として、構成は、前述の構成の反対であってもよく、つまり、支柱の頭部分が円錐形の凹部などの凹面を形成し、羽根車の磁石が円錐面などの凸面を形成してもよい。
【0024】
それぞれの表面の傾斜にかかわらず、羽根車の1個または複数個の磁石は、支柱の頭部分と径方向に位置合わせされ得る。しかし、いくつかの実施形態では、1個または複数個の羽根車の磁石は、支柱の頭部分に対して径方向に、例えば径方向内方にまたは径方向外方に、オフセットされ得る。磁石が支柱の頭部分と径方向に位置合わせされた場合には磁力が実質的に軸方向に向けられるだけであるのに反して、この径方向のオフセットでは、羽根車と駆動ユニットとの間の磁力が径方向の成分を有するので、羽根車の安定化および径方向の心出しが向上され得る。
【0025】
1つの実施形態では、羽根車は、駆動ユニット、具体的には支柱の頭部分の周りに、少なくとも部分的に延在し得る。言い換えれば、羽根車は、円周方向において駆動ユニットと重なり合う延長部を有し得る。これは、磁気結合が、支柱の頭部分の傾斜面の領域内だけではなく、その径方向外側の側面でも発生することを意味する。羽根車は、支柱の頭部分の領域の周りに延在することができるように、増大した直径、具体的には駆動ユニットよりも大きい直径を有し得る。したがって、羽根車は、上記のような円錐形の部分を有する凹部と、円筒形の部分とを有し得る。磁力線が径方向に延在する箇所で羽根車および駆動ユニットが径方向でも結合されるので、この羽根車の設計により、磁気結合が向上され得る。この領域では、最大直径に起因して、高トルクが生成されて羽根車を駆動し得る。
【0026】
1つの実施形態では、血管内血液ポンプは、駆動ユニットを包囲するハウジングをさらに備えることができ、ハウジングは、好ましくは、大きさおよび形状が、複数の支柱の外側輪郭と一致する。具体的には、ハウジングは、支柱の頭部分の傾斜面によって形成される表面の形状と一致する、円錐形の軸方向端部表面を有し得る。反対側の端部は、開口していてもよく、また、ハウジングを閉じるための背板に係合し得る。ハウジングは、支柱組立体のための保護具として、特に血液接触に対する保護具として機能し、これは、コイル巻線にとって特に有用である。ハウジングは、ポンプケーシングの内側に配置されることが好ましい。そのようなハウジングの存在にかかわらず、駆動ユニットは、ポンプケーシングの内側に配置されることが好ましい。ハウジングは、非磁性かつ不伝導の(すなわち、電気的に絶縁される)材料で作られ、かつ、良好な熱伝達を提供することが、好ましい。ハウジングの材料は、例えばアルミニウムとされ得る。
【0027】
コイル巻線は、電気的に不伝導の(すなわち、電気的に絶縁される)熱伝導性母材に埋め込まれ得る。母材は、コイル巻線を保護し、かつ、コイル巻線によって生成される熱を伝達する。熱伝導性母材の材料は、熱伝導特性を高めるために、添加剤を含むプラスチック材料とすることができる。例として、母材は、アルミニウム添加剤を有するエポキシ樹脂を含むことができる。母材は、コイル巻線の周りおよびコイル巻線間で材料に形を与え、続いて材料を硬化させることによって、形成され得る。
【0028】
駆動ユニットは、回転軸に沿って延在する中央開口部を有することが好ましい。中央開口部は、支柱の頭部分によって形成されてもよく、また、細長いピンを受容するように構成されてもよく、ピンの軸方向端部表面は、羽根車のための軸受面を形成する大きさおよび寸法とされる。この構成によれば、支柱間の空間がピンのために使用されるので、血液ポンプのコンパクトな設計が可能になる。ピンの他方の端部は、ポンプケーシングによって支持され得る。中央開口部はまた、案内ワイヤなどの挿入のために設けられてもよく、または、流体経路を形成してもよい。
【0029】
羽根車と駆動ユニットとの間の間隙を通る洗い出し流れを強化するために、2次的な羽根のセットが、羽根車に設けられ得る。具体的には、2次的な羽根は、駆動ユニットに面する1個または複数個の磁石の側に、すなわち、羽根車と駆動ユニットとの間の間隙内に、設けられ得る。洗い出し流れは、さらに、または別法として、駆動ユニットに面する磁石の表面に凹設されたチャネルによって増大され得る。チャネルは、例えば径方向にまたは螺旋状に延在し得る。
【0030】
1つの実施形態では、1個以上の流体力学軸受が、羽根車を支持するために設けられ得る。例として、前述の2次的な羽根およびチャネルは、流体力学軸受を形成するか、または、少なくとも、羽根車と駆動ユニットとの間の間隙の大きさおよび形状に関して上述されたような流体力学軸受性能を支援することができる。反対に、羽根車に面する駆動ユニットの表面、すなわち、具体的には駆動ユニットを取り囲むハウジングの端部表面が、流体力学軸受を形成するように適合されてもよい。流体力学軸受は、軸方向もしくは径方向のもの、または軸方向および径方向両方のものであってもよい。具体的には、羽根車と駆動ユニットとの間の共通領域の円錐形状により、径方向および軸方向の両方における流体力学軸受が形成され得る。径方向の流体力学軸受もまた、羽根車の外側表面とポンプケーシングの内側表面との間に形成され得る。具体的には、羽根車とポンプケーシングとの間に間隙が形成されてもよく、この場合、流体力学軸受に十分な量の血液が、間隙を流れ、追加的な血流出口を通ってポンプケーシングから出て行く。主たる血流は、血流出口を通ってポンプケーシングから出て行き、間隙を流れることはない。非接触式の軸受である流体力学軸受は、摩擦力を減少させることにより、駆動ユニットの機能を支援し得る。
【0031】
上記の概要、および好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読めばより良く理解されるであろう。本開示を説明するために、図面を参照する。しかし、本開示の範囲は、図面に開示された特定の実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明による血液ポンプの断面図である。
図2図1の血液ポンプの拡大した詳細図である。
図3】駆動ユニットの支柱の斜視図である。
図4】(a)、(b)、(c)、(d)は支柱の別の実施形態の様々な図である。
図5】6個の支柱を含む構成の図である。
図6】背板を加えた、図5の構成の図である。
図7】コイル巻線を加えた、図6の構成の図である。
図8】ハウジングを加えた、図7の構成の図である。
図9】(a)、(b)、(c)は背板の様々な図である。
図10】(a)、(b)、(c)は羽根車の磁石の様々な図である。
図11】駆動ユニットの別の実施形態の図である。
図12】血液ポンプの別の実施形態の図である。
図13a】別の実施形態による駆動ユニットおよび羽根車磁石の様々な図である。
図13b】別の実施形態による駆動ユニットおよび羽根車磁石の様々な図である。
図14a】羽根車の磁石間の磁力線を概略的に示す図である。
図14b】羽根車の磁石間の磁力線を概略的に示す図である。
図15】別の実施形態による駆動ユニットおよび羽根車磁石の断面図である。
図16】駆動ユニットの動作モードを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1を参照すると、血液ポンプ1の断面図が示されている。図2は、血液ポンプ1の内部の拡大図を示す。血液ポンプ1は、血流入口21および血流出口22を有するポンプケーシング2を備える。血液ポンプ1は、カテーテルポンプとも呼ばれる血管内ポンプとして設計されており、カテーテル25により患者の血管内に配備される。血流入口21は、使用に際して大動脈弁などの心臓弁を通して配置され得る柔軟なカニューレ23の端部に位置する。血流出口22は、ポンプケーシング2の側面に配置され、かつ、大動脈などの心臓血管内に配置され得る。血液ポンプ1は、以下でより詳細に説明されるように、駆動ユニット4によりポンプ1を駆動するために、血液ポンプ1に電力を供給するための送電線26がカテーテル25を通って延在した状態で、カテーテル25に接続される。
【0034】
血液は、血流入口21と血流出口22とを接続する通路24に沿って運ばれる(血流は、矢印によって示される)。羽根車3が、通路24に沿って血液を運ぶために用意され、かつ、第1の軸受11および第2の軸受12により、ポンプケーシング2内で回転軸10の周りで回転可能であるように取り付けられる。回転軸10は、羽根車3の長手軸であることが好ましい。両軸受11、12は、この実施形態では、接触式の軸受である。しかし、軸受11、12のうちの少なくとも一方は、磁気軸受または流体力学軸受などの、非接触式の軸受であってもよい。第1の軸受11は、回転運動だけでなくある程度の枢動を可能にする球状の軸受面を有するピボット軸受である。ピン15が設けられて、軸受面のうちの1つを形成する。第2の軸受12は、羽根車3の回転を安定させるために、支持部材13内に配置され、支持部材13は、血流のための少なくとも1個の開口部14を有する。羽根31が羽根車3上に設けられて、羽根車3が回転すると血液を運ぶ。羽根車3の回転は、羽根車3の端部において磁石32に磁気的に結合された駆動ユニット4によってもたらされる。示された血液ポンプ1は、流れの主方向が軸方向である、混合型の血液ポンプである。血液ポンプ1はまた、羽根車3の構成、特に羽根31の構成に応じて、純粋に軸方向の血液ポンプであってもよいことが、理解されるであろう。
【0035】
図2は、血液ポンプ1の内部、特に羽根車3および駆動ユニット4をより詳細に示す。駆動ユニット4は、6個の支柱40などの、複数の支柱40を含み、そのうちの2個だけを図2の断面図に見ることができる。支柱40は、軸部分41および頭部分42を有する。頭部分42は、駆動ユニット4を羽根車3に磁気的に結合するために、羽根車3に隣接して配置される。この目的のために、羽根車3は磁石32を有し、磁石32は、図10a~cを参照してより詳細に説明されるように、この実施形態では複数片の磁石として形成されている。磁石32は、駆動ユニット4に面する羽根車3の端部に配置される。支柱40は、血液ポンプ1を駆動するための回転磁界を作り出すために、制御ユニット(図示せず)により連続的に制御される。磁石32は、回転軸10の周りでの羽根車3の回転をもたらすために、回転磁界と相互作用するように配置される。図7を参照して以下でより詳細に説明されるように、コイル巻線が、支柱40の軸部分41の周りに配置される。
【0036】
磁束経路を閉鎖するために、背板50が、軸部分41の頭部分42とは反対側の端部に配置される。支柱40は、磁心として作用し、かつ、鋼鉄または適切な合金、特にコバルト鋼などの適切な材料で作られる。同様に、背板50は、コバルト鋼などの適切な磁性材料で作られる。背板50は磁束を強化し、それにより、血管内血液ポンプにとって重要である血液ポンプ1の全径の縮小が可能になる。同様の目的のために、ヨーク37、すなわち追加の背板が、駆動ユニット4と反対の側を向いた磁石32の側において、羽根車3に設けられる。この実施形態におけるヨーク37は、羽根車3に沿って血流を導くために、円錐形状を有する。ヨーク37もまた、コバルト鋼で作られ得る。中央の軸受に向かって延在する1個以上の洗い出しチャネルが、ヨーク37または磁石32に形成され得る。
【0037】
駆動ユニット4の詳細は、図3から図9に示されており、一方で、図10は、羽根車3の磁石32を示す。図3を参照すると、支柱40のうちの1個が、斜視図で示されている。この実施形態では、組立体のうちの支柱40の全て(すなわち、6個の支柱40)が、同一である。支柱40は、軸部分41および頭部分42を含む。頭部分42は、この実施形態では長手軸に対して60°の(すなわち、長手軸に垂直な平面に対して30°の)角度が付けられた傾斜面43を有する。軸部分41は、背板50に係合するために減少した直径を有する、頭部分42とは反対側の端部分44を含む。頭部分42は、長手軸に垂直な平面において軸部分41よりも大きな断面寸法を有する。頭部分42は、駆動ユニット4を形成するために組み立てられたときに隣り合う支柱の側面に隣接する側面47を有する。支柱40間での磁束の短絡を回避するために、支柱40のそれぞれの中に磁界を保持する絶縁材料を支柱40の頭部分42間に設けることが、有利である。言い換えれば、頭部分42は、磁気を絶縁する材料によって分離され得る。例として、磁石、例えば磁性材料の板が、頭部分42間に配置されて、頭部分42およびそれぞれの磁界を互いに分離し得る。支柱の頭部分42の径方向内表面48は、中央開口部54を形成する。表面43と48との間の移行面は丸みを帯びている必要はないことが、理解されるであろう。なお、本発明に関連する技術では、支柱40間での磁束の短絡を回避するために、わずかな空隙または他のタイプの絶縁体が、頭部分42間に設けられる。
【0038】
支柱40の別の実施形態の様々な図が図4に示されているが、この実施形態は、軸部分41および頭部分42の形状がわずかに変化していること以外は、先の実施形態と一致する。図4aは、図4dに示された線A-Aに沿った断面図を示し、図4dは、支柱40の上面図(すなわち、頭部分42に向かった図)を示す。図4bは、支柱40の斜視図を示し、図4cは、底面図(すなわち、軸部分41の端部分44に向かった図)を示す。支柱40は、約9から10mmの全長を有することができ、頭部分42は、約2mmの長さを有し得る。この実施形態では、頭部分42は、回転軸または長手軸に対して45°の角度で傾斜している表面43を有する。したがって、図4aに示された表面43と出張り49との間の角度45は、135°である。出張り49は、支柱40がハウジング内で組み立てられるときに、止め具として機能し得る。さらに、コイル巻線のための止め具として機能し得る肩46が、頭部分42によって形成される。図3に関連して説明されたように、頭部分42は、側面47および径方向内表面48を備える。
【0039】
図5は、図3に関連して説明された、6個の支柱40を含む組立体を示す。全ての支柱40は、各頭部分42が円の60°の弧、つまり60°の「パイ片」を形成するように、全く同じに形成されている。組立体は、2個、3個、4個、もしくは5個、または6個よりも多くの支柱などの、より少ないまたはより多くの支柱を含むことができ、角度は、支柱の数、例えばそれぞれが90°の弧を形成する4個の支柱、またはそれぞれが45°の弧を形成する8個の支柱といった数に応じることが、理解されるであろう。すでに上述したように、支柱40の数は、偶数であることが好ましく、この場合、直径方向に向かい合う支柱40が、例えば磁界の制御に関して対を形成することができ、すなわち、各支柱の対が、それぞれの対の支柱を同時に活性化するためのユニットとして制御され得る。頭部分42は、傾斜面43によって形成された円錐面を有する円錐を形成する。これは、図6でより明確に見ることができる。図6では、軸部分41の直径が減少した端部分44は、背板50に取り付けられている。
【0040】
図7では、同一の構成が、支柱40の周りにコイル巻線47を含んで示されている。コイル巻線47は、頭部分42を径方向に越えて延在することはなく、それにより、コンパクトな外径を提供する。頭部分42によって画定される最大断面積は、利用可能なスペースの使用を最適化するように、また、絶縁体として作用しかつ磁束に影響を及ぼす空隙を最小化するように、コイル巻線47のために使用されることが好ましいことが、理解されるであろう。さらに、支柱40の軸部分41の直径は、コイル巻線47の巻き数を最適化するように選択される。図8は、支柱の構成を覆って取り付けられるハウジング60を示す。ハウジング60は、支柱の構成の形状に適合し、かつ、実質的に円筒形の部分62と、円錐形の端部分61とを備える。円錐形端部分61は、支柱の頭部分42の傾斜面43によって形成された円錐面と同じ角度で先細りにされており、つまり、角度は、好ましくは、長手軸に垂直な平面に対して約30°から60°であり、好ましくは30°または45°である。ハウジング60は、円錐形端部分61とは反対側の開口端部63において、背板50によって閉じられる。円錐形端部分61は、支柱40によって形成される中央開口部54および背板50にある中央開口部53と位置合わせされる中央開口部64を有する。
【0041】
背板50は、図9において様々な図で(図9aでは上面図で、図9bでは線A-Aに沿った断面図で、また、図9cでは線B-Bに沿った断面図で)より詳細に示されている。背板50は、支柱40の軸部分41の直径が減少した端部分44を受容するための開口51を有する。背板50内の開口51の数は、駆動ユニット4の支柱40の数と一致することが好ましい。示された実施形態では、6個の開口51が、開口51のそれぞれが回転軸10から同じ距離に位置した状態で、回転軸10の周りに60°の一定間隔で配置されている。開口51は、図9cの断面図では背板50を完全に貫通するものとして示されている。しかし、開口51は、その代わりに、背板50を完全に貫通するのではなく特定の深さまで背板50内に延在してもよい。上記のように、中央開口部53が、軸受ピン15を受容するために形成される。背板50は、磁束経路を閉じるために、好ましくはコバルト鋼である磁性材料で作られる。背板50の直径は、約5から7mmとされ得る。さらに、図9bにおいて破線によって概略的に示されるように、背板50の背面に位置するプリント回路基板(PCB)などの制御ユニット55にコイル巻線47を接続するためのワイヤ56を受容するために、背板50の周辺にノッチ52が設けられる。
【0042】
図10を参照すると、羽根車3の磁石32(図2参照)が、上面図(図10a)、断面図(図10b)、および斜視図(図10c)で示されている。この実施形態では、回転軸10の周りに均等に配置された6個の磁石32が、それぞれの磁界の配向が交互に並んだ状態で設けられている。4個、8個、10個、または12個の磁石などの、より少ないまたはより多くの磁石が設けられてもよい。磁石32は、表面33を有する凹部35を形成する。凹部35は、駆動ユニット4を包囲するハウジング60、特に円錐形端部分61(図8)を考慮して、図6に最もよく示されるような支柱40の頭部分42の表面43によって形成される円錐面とサイズおよび形状が一致する。このことは、羽根車3と駆動ユニット4との間の距離が一定でない可能性があるが上述のように回転軸10に向かって増大し得ることを含むことが、理解されるであろう。この実施形態における凹部35は、回転軸10または長手軸に対して45°の角度34を持つ円錐形状を有する。駆動ユニット4の形状、特に支柱40の頭部分42によって形成される端部表面に応じて、60°などの他の角度も考えられる。さらに、磁石32は、図2に示されるように、軸受ピン15を受容するための中央開口部36を形成する。中央開口部36は、駆動ユニット4の中央開口部54と位置合わせされる。図10bに示されるように、磁石32の磁束は、ヨーク37によって閉じられる。ヨーク37は、図2に示されるような円錐形、または図10bに示されるようなディスク形状など、羽根車3の形状に応じて任意の適切な形状を有し得る。場合により、磁石32およびヨーク37を腐食から保護するために、磁石32を、また該当する場合にはヨーク37を包み込む、封入具(encapsulation)38が設けられる。
【0043】
図11には、前述の実施形態に実質的に類似した駆動ユニットの別の実施形態が示されている。この構成は、軸部分41’上にそれぞれのコイル巻線47を有する6個の支柱40’を含む。先の実施形態におけるように、より少ないまたはより多くの支柱40’が存在してもよい。支柱40’は、先の実施形態におけるように、背板(図示せず)に取り付けられることが好ましい。支柱40’はそれぞれ、上記の頭部分42とは異なる形状を有する頭部分42’を有する。角度は上記と同様であり得るが、傾斜面43’は、径方向外方にではなく径方向内方に面する。つまり、頭部分42’は、実質的に円錐形の凹部を形成する。羽根車の磁石はそれに応じて成形されること、すなわち、磁石は先の実施形態における円錐形の凹部ではなく、対応する円錐形状を有することが、理解されるであろう。先の実施形態におけるように、駆動ユニットは、中央開口部54’を有する。先の実施形態における支柱40の頭部分42は、互いに直接隣接するかまたは小間隙によってのみ分離されて示されているが、図11の実施形態における支柱40’は、支柱40’間のバイパスまたは短絡を防ぐ間隙57’によって分離される。しかし、支柱間の短絡は全ての実施形態において回避されるべきであることが、理解されるであろう。
【0044】
図12を参照すると、図1および図2の実施形態に類似した血液ポンプ1の別の実施形態が示されている。上記の実施形態とは異なり、図12の血液ポンプ1は、追加的な径方向の流体力学軸受を有する。ポンプケーシング2またはスリーブの円周部分28が、羽根車3と円周部分28との間に間隙27を形成するように設けられる。血流出口22に加えて、さらなる血流出口29が、血液が間隙27を通ってポンプケーシング2から出ることを可能にする。間隙27の大きさは、径方向の流体力学軸受を形成するように選択される。
【0045】
図13aおよび13bは、羽根車の磁石32、および、駆動ユニット4に対して配置された磁石32を概略的に示す。この実施形態では、それぞれの間隙66によって分離された4個の磁石32が設けられている。磁石32の表面33間のチャネルとして形成され得る間隙66は、中央開口部36から磁石32の外周に向かって径方向に延在する。図15aおよび15bを参照して以下でより詳細に説明されるように、磁石32のサイズの減少は、磁気結合の効率の損失をもたらさない。図13bは、駆動ユニット4(すなわち、固定子)と羽根車の磁石32(すなわち、回転子)との間に間隙65が設けられている、磁石32と駆動ユニット4との相対的な配置を示す。チャネルまたは間隙66は、血液に対する遠心ポンプ効果をもたらすので、間隙65の洗浄を向上させる。
【0046】
図14aおよび14bを参照すると、回転子、具体的には磁石32と固定子、すなわち駆動ユニット4との間の磁気結合の原理が、概略的に示されている。図14aでは、磁石32は、間隙によって分離されていないか、または実質的に分離されていない。北Nから南Sへのいくつかの例示的な磁力線が示されている。駆動ユニット4と磁石32との間の間隙65により、最も内側の磁力線は、駆動ユニット4と相互作用しない。つまり、磁界のうちのこの部分は、羽根車の駆動に寄与しない。したがって、磁石32間に間隙66が設けられていれば、磁気結合の効率は失われない。図14bでは、図14aにおけるのと同じ量の磁力線が、駆動ユニット4に到達する。当業者であれば知っているように、磁力線の向きは計算することができ、間隙66のサイズは、間隙65のサイズに直接依存する。
【0047】
図15を参照すると、血液ポンプのための駆動機構の別の実施形態が示されている。コイル巻線47を有する支柱40を含んだ駆動ユニット4は、上記のものと実質的に同一である。同様の参照番号は、同様の部品を示す。先の実施形態におけるように、駆動ユニット4は、背板50を含む。しかし、羽根車の設計は異なる。図15では、羽根車の磁石32およびヨーク37だけが示されている。羽根車は、拡大された直径、具体的には駆動ユニット4よりも大きい直径と、軸方向の延長部39とを有し、それにより、延長部39は、駆動ユニット4の周りで、具体的には支柱40の頭部分42の領域において、円周方向に延在する。この構成は、以下で説明されるように、向上された磁気結合を可能にする。
【0048】
いくつかの例示的で概略的な磁力線によって示されているように、延長部39は、磁石32と駆動ユニット4との間の磁気結合を、傾斜面43の領域内で生じさせるだけではなく、支柱40の頭部分42の外側側面の領域内でも生じさせる。この領域では、磁力線は、血液ポンプの回転子と固定子との間で実質的に径方向に延在し、また、羽根車を駆動するために高いトルクが生み出され得る。やはり図15に示されるように、他の全ての実施形態におけるように、磁力線は、頭部分42および軸部分41を含む支柱40を通り、磁石32を通り、そして両方の端板またはヨーク50および37を通って延在する、閉じたループを形成する。
【0049】
図16を参照すると、駆動ユニットの動作モードが、6個の支柱40a、40b、40c、40d、40e、および40fを有する例において、概略的に示されている。回転磁界を作り出すために、支柱は、連続的に制御される。支柱は、釣り合いの取れた羽根車の回転を確立するために対で制御され、直径方向に向かい合った支柱40aと40d、40bと40e、および40cと40fが、それぞれ対を形成する。磁気の密度は、6個の支柱のうちの4個を同時に活性化することによって増大され得る。図16は、3つのステップを含むシーケンスを示し、各ステップでは、活性化された支柱が際立たせられている。第1のステップでは、支柱40a、40c、40d、および40fが活性化され、すなわち、それぞれのコイル巻線に電流が供給されて、磁界を作り出す。第2のステップでは、支柱40a、40b、40d、および40eが活性化されるが、第3のステップでは、支柱40b、40c、40e、および40fが活性化される。このシーケンスは、回転磁界を作り出すために繰り返される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13a
図13b
図14a
図14b
図15
図16