(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20230901BHJP
B29C 45/02 20060101ALI20230901BHJP
B29C 45/38 20060101ALI20230901BHJP
B29C 45/42 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
H01L21/56 T
B29C45/02
B29C45/38 E
B29C45/42
(21)【出願番号】P 2020144862
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 周平
(72)【発明者】
【氏名】小河 冬彦
(72)【発明者】
【氏名】築山 誠
(72)【発明者】
【氏名】高山 敏暢
(72)【発明者】
【氏名】奥西 祥人
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-062857(JP,A)
【文献】特開2003-100785(JP,A)
【文献】特開2013-006261(JP,A)
【文献】実開昭62-157143(JP,U)
【文献】特開2019-034444(JP,A)
【文献】特開2004-014936(JP,A)
【文献】特開2015-079864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
B29C 45/02
B29C 45/38
B29C 45/42
H01L 21/67-21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティが形成された第1型と、
前記第1型に対向し、成形対象物が載置される第2型と、
前記第1型及び前記第2型を型締めする型締め機構と、
前記第2型に設けられて、
樹脂材料を収容するポットが形成され、前記第2型の型面上に張り出した張り出し部を有するポットブロックと、
前記ポット内に設けられたプランジャを有し、前記第1型及び前記第2型が型締めされた状態で前記プランジャを移動させて前記ポットから前記キャビティに前記樹脂材料を注入するトランスファ機構と、
樹脂成形後に前記ポットブロック上の不要樹脂を搬出する搬送機構とを備え、
前記搬送機構は、前記不要樹脂を吸着するための不要樹脂用吸着部を有しており、
前記搬送機構が前記不要樹脂用吸着部を前記ポットブロック上の不要樹脂に接触させた後に、前記トランスファ機構
は、前記プランジャを前記第1型に向かって移動させて前記ポットブロックから前記不要樹脂を剥離する前に、前記プランジャを前記第1型とは反対側に移動させて、前記プランジャから前記不要樹脂を剥離し、その後、前記搬送機構が前記不要樹脂用吸着部により前記不要樹脂を吸着して前記不要樹脂を搬出する、樹脂成形装置。
【請求項2】
前記不要樹脂用吸着部は、前記ポットブロックから前記不要樹脂が剥離される際に、前記ポットブロック上の不要樹脂に接触した状態のまま弾性変形して縮むものである、請求項
1に記載の樹脂成形装置。
【請求項3】
前記不要樹脂用吸着部は、ベローズ型の吸着パッドである、請求項1
又は2の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項4】
前記搬送機構は、
樹脂成形品を吸着するための成形品用吸着部を有し、
前記不要樹脂用吸着部により前記不要樹脂を吸着するとともに、前記成形品用吸着部により前記樹脂成形品を吸着して、前記不要樹脂及び前記樹脂成形品を搬出する、請求項1乃至
3の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項5】
前記搬送機構は、前記樹脂成形品を吸着した前記成形品用吸着部を移動させて
樹脂注入部から離し、前記樹脂成形品を前記張り出し部よりも外側に移動させる移動機構を有する、請求項
4に記載の樹脂成形装置。
【請求項6】
前記ポットブロックには、複数の前記ポットが形成されており、これら複数の前記ポットから出る不要樹脂を連結させる連結部を有している、請求項1乃至
5の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項7】
前記ポットブロックは、複数の前記ポットそれぞれに対応して複数のカル部が形成されており、これら複数のカル部が前記連結部により互いに連結している、請求項
6に記載の樹脂成形装置。
【請求項8】
前記型締め機構が前記第1型及び前記第2型を型開きする型開き動作中において、前記トランスファ機構が前記プランジャを前記第1型に向かって移動させて、前記第2型の型面上の樹脂成形品と前記ポットブロック上の不要樹脂とを分離する、請求項1乃至
7の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項9】
前記ポットブロックは、弾性部材を介して前記第2型に対して進退可能に設けられており、
前記型締め機構が前記第1型及び前記第2型を型開きする型開き動作中において、前記弾性部材の復元力を受けて前記ポットブロックが前記第1型に向かって移動することにより、前記第2型の型面上の樹脂成形品と前記ポットブロック上の不要樹脂とを分離する、請求項1乃至
8の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項10】
前記ポットブロックは、前記型開き動作の開始から所定期間において、前記弾性部材の弾性力によって前記第1型との間で前記不要樹脂を挟んだ状態であり、前記所定期間経過後において、前記不要樹脂を保持しつつ前記不要樹脂を前記第1型から剥離させる、請求項
9に記載の樹脂成形装置。
【請求項11】
前記トランスファ機構は、前記型締め機構による型開きが終了する前に、前記弾性部材が復元した初期状態になるまで、前記プランジャを前記第1型に向かって移動させるものであり、
前記搬送機構は、前記初期状態となった前記ポットブロック上の不要樹脂に対して前記不要樹脂用吸着部を接触させる、請求項
9又は
10に記載の樹脂成形装置。
【請求項12】
請求項1乃至
11の何れか一項に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法。
【請求項13】
キャビティが形成された第1型と、前記第1型に対向し、成形対象物が載置される第2型と、前記第1型及び前記第2型を型締めする型締め機構と、前記第2型に設けられて、
樹脂材料を収容するポットが形成され、前記第2型の型面上に張り出した張り出し部を有するポットブロックと、前記ポット内に設けられたプランジャを有し、前記第1型及び前記第2型が型締めされた状態で前記プランジャを移動させて前記ポットから前記キャビティに前記樹脂材料を注入するトランスファ機構と、樹脂成形後に前記ポットブロック上に残った不要樹脂を搬出する搬送機構とを備え、前記搬送機構は、前記不要樹脂を吸着するための不要樹脂用吸着部を有する樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
前記搬送機構が前記不要樹脂用吸着部を前記ポットブロック上の不要樹脂に接触させた後に、前記トランスファ機構
は、前記プランジャを前記第1型に向かって移動させて前記ポットブロックから前記不要樹脂を剥離する前に、前記プランジャを前記第1型とは反対側に移動させて、前記プランジャから前記不要樹脂を剥離し、その後、前記搬送機構は、前記不要樹脂用吸着部により前記不要樹脂を吸着して前記不要樹脂を搬出する、樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示すように、上型及び下型を型締めして、下型に設けられたカルブロックの張り出し部が成形対象物の一部を下型の上面との間で挟んだ状態で、カルブロックの上面と上型の下面との間に形成された空間から溶融した樹脂を上型のキャビティに注入して樹脂封止を行うものが考えられている。
【0003】
この樹脂封止装置では、上型及び下型の型開き時に、カルブロックの下側に設けられたばねが圧縮された状態から復元して、カルブロックが下型の上面(型面)に対して相対的に押し上げられ、カルブロックの不要樹脂が樹脂成形品から分離される。
【0004】
樹脂成形後にカルブロック上に不要樹脂が残ることから、当該不要樹脂をカルブロックから回収する必要がある。ここで、特許文献1の樹脂成形装置では、樹脂成形品を搬出するアンローダに不要樹脂を吸着する吸着パッドを設け、当該吸着パッドで不要樹脂を吸着することで、樹脂成形品とともに不要樹脂を搬出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、不要樹脂を吸着して回収する場合には、不要樹脂がカルブロックに密着して離れにくく、不要樹脂の回収ができない場合がある。また、不要樹脂をカルブロックから引き離す際にポット内の圧力が負圧になり、不要樹脂がカルブロックから離れにくいという問題がある。その他、不要樹脂とカルブロック上面との摩擦力によっても、不要樹脂がカルブロックから離れにくいという問題がある。
【0007】
なお、ポット内のプランジャを用いて、カルブロックから予め不要樹脂を剥離することも考えられるが、そうすると、不要樹脂がカルブロックから浮いて傾いた状態になる可能性がある。不要樹脂が傾いた状態になると、吸着パッドにより不要樹脂を吸着することが難しくなってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、ポットブロック上の不要樹脂を安定して回収することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係る樹脂成形装置は、キャビティが形成された第1型と、前記第1型に対向し、成形対象物が載置される第2型と、前記第1型及び前記第2型を型締めする型締め機構と、前記第2型に設けられて、前記樹脂材料を収容するポットが形成され、前記第2型の型面上に張り出した張り出し部を有するポットブロックと、前記ポット内に設けられたプランジャを有し、前記第1型及び前記第2型が型締めされた状態で前記プランジャを移動させて前記ポットから前記キャビティに前記樹脂材料を注入するトランスファ機構と、樹脂成形後に前記ポットブロック上の不要樹脂を搬出する搬送機構とを備え、前記搬送機構は、前記不要樹脂を吸着するための不要樹脂用吸着部を有しており、前記搬送機構が前記不要樹脂用吸着部を前記ポットブロック上の不要樹脂に接触させた後に、前記トランスファ機構が前記プランジャを前記第1型に向かって移動させて前記ポットブロックから前記不要樹脂を剥離し、その後、前記搬送機構が前記不要樹脂用吸着部により前記不要樹脂を吸着して前記不要樹脂を搬出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る樹脂成形品の製造方法は、上記の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法である。
【0011】
さらに、本発明に係る樹脂成形品の製造方法は、キャビティが形成された第1型と、前記第1型に対向し、成形対象物が載置される第2型と、前記第1型及び前記第2型を型締めする型締め機構と、前記第2型に設けられて、前記樹脂材料を収容するポットが形成され、前記第2型の型面上に張り出した張り出し部を有するポットブロックと、前記ポット内に設けられたプランジャを有し、前記第1型及び前記第2型が型締めされた状態で前記プランジャを移動させて前記ポットから前記キャビティに前記樹脂材料を注入するトランスファ機構と、樹脂成形後に前記ポットブロック上に残った不要樹脂を搬出する搬送機構とを備え、前記搬送機構は、前記不要樹脂を吸着するための不要樹脂用吸着部を有する樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、前記搬送機構が前記不要樹脂用吸着部を前記ポットブロック上の不要樹脂に接触させた後に、前記トランスファ機構が前記プランジャを前記第1型に向かって移動させて前記ポットブロックから前記不要樹脂を剥離し、その後、前記搬送機構は、前記不要樹脂用吸着部により前記不要樹脂を吸着して前記不要樹脂を搬出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このように構成した本発明によれば、ポットブロック上の不要樹脂を安定して回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る一実施形態の樹脂成形装置の構成を示す模式図である。
【
図2】同実施形態の成形モジュールの構成を示す模式図である。
【
図3】同実施形態の成形モジュールの基板載置状態及び樹脂材料装填状態を示す模式図である。
【
図4】同実施形態の成形モジュールの型締め状態を示す模式図である。
【
図5】同実施形態の成形モジュールの樹脂注入状態を示す模式図である。
【
図6】同実施形態の成形モジュールの基準位置Xを示す模式図である。
【
図7】同実施形態の成形モジュールの引き剥がし状態を示す模式図である。
【
図8】同実施形態の成形モジュールの型開き動作開始時の状態を示す模式図である。
【
図9】同実施形態の成形モジュールの型開き動作中のゲートブレイク動作を示す模式図である。
【
図10】同実施形態の成形モジュールの型開き動作中のゲートブレイク後の状態を示す模式図である。
【
図11】同実施形態の成形モジュールの型開き状態を示す模式図である。
【
図12】同実施形態のアンローダの各吸着部が樹脂成形品及び不要樹脂に接触した状態を示す模式図である。
【
図13】同実施形態において不要樹脂が上昇して不要樹脂用吸着部が縮んだ状態を示す模式図である。
【
図14】同実施形態のアンローダが樹脂成形品及び不要樹脂を吸着して搬出する状態を示す模式図である。
【
図15】同実施形態の(a)ポットブロックを模式的に示す平面図、及び、(b)不要樹脂を示す模式図である。
【
図16】同実施形態の掻き出し動作における(a)掻き出し位置、及び、(b)ロード位置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0015】
本発明の樹脂成形装置は、前述のとおり、キャビティが形成された第1型と、前記第1型に対向し、成形対象物が載置される第2型と、前記第1型及び前記第2型を型締めする型締め機構と、前記第2型に設けられて、前記樹脂材料を収容するポットが形成され、前記第2型の型面上に張り出した張り出し部を有するポットブロックと、前記ポット内に設けられたプランジャを有し、前記第1型及び前記第2型が型締めされた状態で前記プランジャを移動させて前記ポットから前記キャビティに前記樹脂材料を注入するトランスファ機構と、樹脂成形後に前記ポットブロック上の不要樹脂を搬出する搬送機構とを備え、前記搬送機構は、前記不要樹脂を吸着するための不要樹脂用吸着部を有しており、前記搬送機構が前記不要樹脂用吸着部を前記ポットブロック上の不要樹脂に接触させた後に、前記トランスファ機構が前記プランジャを前記第1型に向かって移動させて前記ポットブロックから前記不要樹脂を剥離し、その後、前記搬送機構が前記不要樹脂用吸着部により前記不要樹脂を吸着して前記不要樹脂を搬出することを特徴とする。
この樹脂成形装置であれば、不要樹脂用吸着部をポットブロック上の不要樹脂に接触させた後に、プランジャを第1型に向かって移動させてポットブロックから不要樹脂を剥離し、その後、不要樹脂用吸着部により不要樹脂を吸着するので、ポットブロック上の不要樹脂を安定して回収することができる。
具体的には、不要樹脂用吸着部により不要樹脂を吸着する前に、プランジャによって不要樹脂をポットブロックから剥離しているので、不要樹脂用吸着部により吸着した不要樹脂をポットブロックから確実に回収することができる。また、プランジャによって不要樹脂をポットブロックから剥離する際に、不要樹脂用吸着部が不要樹脂に接触しているので、不要樹脂がポットブロック上で傾く等により生じる吸着不良を防ぐことができる。以上により、ポットブロック上の不要樹脂を安定して回収することができる。
【0016】
前記プランジャを前記第1型に向かって移動させて不要樹脂をポットブロックから剥離した場合であっても、前記プランジャと不要樹脂とが密着して接合している場合には、その後の不要樹脂の回収に不具合が生じる場合がある。
この問題を解決するためには、前記トランスファ機構は、前記プランジャを前記第1型に向かって移動させて前記ポットブロックから前記不要樹脂を剥離する前に、前記プランジャを前記第1型とは反対側に移動させて、前記プランジャから前記不要樹脂を剥離することが望ましい。
この構成であれば、前記プランジャと前記不要樹脂とが予め剥離されているので、不要樹脂が回収しやすくなる。
【0017】
前記不要樹脂用吸着部は、前記ポットブロックから前記不要樹脂が剥離される際に、前記ポットブロック上の不要樹脂に接触した状態のまま弾性変形して縮むものであることが望ましい。
この構成であれば、ポットブロックからの不要樹脂の剥離を邪魔することなく、不要樹脂用吸着部が不要樹脂に接触した状態を維持することができる。このため、剥離後の不要樹脂を確実に吸着することができる。
【0018】
不要樹脂用吸着部が弾性変形して縮みやすくするための具体的な構成としては、前記不要樹脂用吸着部は、ベローズ型の吸着パッドであることが望ましい。
【0019】
前記搬送機構は、前記樹脂成形品を吸着するための成形品用吸着部を有し、前記不要樹脂用吸着部により前記不要樹脂を吸着するとともに、前記成形品用吸着部により前記樹脂成形品を吸着して、前記不要樹脂及び前記樹脂成形品を搬出することが望ましい。
この構成であれば、共通の搬送機構により樹脂成形品及び不要樹脂を一挙に搬出することができるので、それらの搬出時間を短縮できるとともに、樹脂成形装置の構成を簡単にすることができる。
【0020】
樹脂成形品を搬出する際にポットブロックの張り出し部と樹脂成形品とが干渉しないようにするためには、前記搬送機構は、前記樹脂成形品を吸着した前記成形品用吸着部を移動させて前記樹脂注入部から離し、前記樹脂成形品を前記張り出し部よりも外側に移動させる移動機構を有することが望ましい。
【0021】
前記ポットブロックに、複数の前記ポットが形成されている場合には、複数のポットそれぞれに対して不要樹脂が発生することになる。このとき、複数の不要樹脂それぞれに対して不要樹脂用吸着部を設けた場合には、搬送機構の構成が複雑になってしまう。
このため、前記ポットブロックは、これら複数の前記ポットから出る不要樹脂を連結させる連結部を有していることが望ましい。
この構成であれば、複数の不要樹脂が連結されて1つの塊にすることができるので、不要樹脂吸着部の数を減らすことができ、搬送機構の構成を簡単にできる。
【0022】
不要樹脂を連結させるための具体的な実施の態様としては、前記ポットブロックは、複数の前記ポットそれぞれに対応して複数のカル部が形成されており、これら複数のカル部が前記連結部により互いに連結していることが考えられる。
【0023】
不要樹脂を安定して回収する前段階として、樹脂成形品と不要樹脂とが確実に分離されている必要がある。このため、前記型締め機構が前記第1型及び前記第2型を型開きする型開き動作中において、前記トランスファ機構が前記プランジャを前記第1型に向かって移動させて、前記第2型の型面上の樹脂成形品と前記ポットブロック上の不要樹脂とを分離することが望ましい。
このようにプランジャを用いて樹脂成形品と不要樹脂とを分離しているので、それらの分離を確実に行うことができる。
【0024】
前記ポットブロックが、弾性部材を介して前記第2型に対して進退可能に設けられている場合には、前記型締め機構が前記第1型及び前記第2型を型開きする型開き動作中において、前記弾性部材の復元力を受けて前記ポットブロックが前記第1型に向かって移動することにより、前記第2型の型面上の樹脂成形品と前記ポットブロック上の不要樹脂とを分離することが望ましい。
この構成であれば、型締め時に圧縮されている弾性部材の弾性力を利用して樹脂成形品と不要樹脂と分離することができる。
【0025】
前記ポットブロックは、前記型開き動作の開始から所定期間において、前記弾性部材の弾性力によって前記第1型との間で前記不要樹脂を挟んだ状態であり、前記所定期間経過後において、前記不要樹脂を保持しつつ前記不要樹脂を前記第1型から剥離させることが望ましい。
この構成であれば、ポットブロックが第1型との間で不要樹脂を挟んだ状態において、樹脂成形品と不要樹脂とを分離させることになり、それらの分離時に不要樹脂がポットブロックから不意に外れてしまうことを防ぐことができる。また、それらの分離時に不要樹脂がポットブロックから外れないことから、不要樹脂がポットブロック上で傾く等により生じる吸着不良を防ぐことができる。
【0026】
型開き後に不要樹脂を回収する際に、ポットブロックが弾性部材が復元した初期状態となっていない場合には、不要樹脂用吸着部を接触させる前後でポットブロックが不意に移動する可能性がある。そうすると、不要樹脂の吸着ができずに回収不良となる恐れがある。
この問題を解決するためには、前記トランスファ機構は、前記型締め機構による型開きが終了する前に、前記弾性部材が復元した初期状態になるまで、前記プランジャを前記第1型に向かって移動させるものであり、前記搬送機構は、前記初期状態となった前記ポットブロック上の不要樹脂に対して前記不要樹脂用吸着部を接触させることが望ましい。
【0027】
また、上述した樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法も本発明の一態様である。
【0028】
さらに、本発明に係る樹脂成形品の製造方法は、キャビティが形成された第1型と、前記第1型に対向し、成形対象物が載置される第2型と、前記第1型及び前記第2型を型締めする型締め機構と、前記第2型に設けられて、前記樹脂材料を収容するポットが形成され、前記第2型の型面上に張り出した張り出し部を有するポットブロックと、前記ポット内に設けられたプランジャを有し、前記第1型及び前記第2型が型締めされた状態で前記プランジャを移動させて前記ポットから前記キャビティに前記樹脂材料を注入するトランスファ機構と、樹脂成形後に前記ポットブロック上に残った不要樹脂を搬出する搬送機構とを備え、前記搬送機構は、前記不要樹脂を吸着するための不要樹脂用吸着部を有する樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、前記搬送機構が前記不要樹脂用吸着部を前記ポットブロック上の不要樹脂に接触させた後に、前記トランスファ機構が前記プランジャを前記第1型に向かって移動させて前記ポットブロックから前記不要樹脂を剥離し、その後、前記搬送機構は、前記不要樹脂用吸着部により前記不要樹脂を吸着して前記不要樹脂を搬出することを特徴とする。
【0029】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明に係る樹脂成形装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0030】
<樹脂成形装置の全体構成>
本実施形態の樹脂成形装置100は、電子部品Wxが接続された成形対象物W1を樹脂材料Jを用いたトランスファ成形によって樹脂成形するものである。
【0031】
ここで、成形対象物W1としては、例えば金属製基板、樹脂製基板、ガラス製基板、セラミックス製基板、回路基板、半導体製基板、配線基板、リードフレーム等であり、配線の有無は問わない。また、樹脂成形のための樹脂材料Jは例えば熱硬化性樹脂を含む複合材料であり、樹脂材料Jの形態は顆粒状、粉末状、液状、シート状又はタブレット状等である。さらに、成形対象物W1の上面に接続される電子部品Wxとしては、例えばベアチップ又は樹脂封止されたチップである。
【0032】
具体的に樹脂成形装置100は、
図1に示すように、成形前の成形対象物W1及び樹脂材料Jを供給する供給モジュール100Aと、樹脂成形する成形モジュール100Bと、成形後の成形対象物W2(以下、樹脂成形品W2)を収容する収納モジュール100Cとを、それぞれ構成要素として備えている。なお、供給モジュール100Aと、成形モジュール100Bと、収納モジュール100Cとは、それぞれ他の構成要素に対して、互いに着脱されることができ、かつ、交換されることができる。また、成形モジュール100Bを2つ又は3つにするなど、各構成要素を増加させることもできる。
【0033】
供給モジュール100Aには、成形対象物W1を供給する成形対象物供給部11と、樹脂材料Jを供給する樹脂材料供給部12と、成形対象物供給部11から成形対象物W1を受け取り成形モジュール100Bに搬送し、樹脂材料供給部12から樹脂材料Jを受け取り成形モジュール100Bに搬送する搬送装置13(以下、ローダ13)とが設けられている。
【0034】
ローダ13は、供給モジュール100Aと成形モジュール100Bとの間を行き来するものであり、供給モジュール100Aと成形モジュール100Bとに亘って設けられたレール(不図示)に沿って移動する。
【0035】
成形モジュール100Bは、
図2に示すように、樹脂材料Jが注入されるキャビティ2aが形成された成形型の一方である第1型2(以下、上型2)と、上型2に対向して配置され、キャビティ2aに樹脂材料Jを注入する樹脂注入部4が設けられた成形型の他方である第2型3(以下、下型3)と、上型2及び下型3を型締めする型締め機構5とを有する。上型2は、上型ホルダ101に保持されており、当該上型ホルダ101は、上プラテン102に固定されている。また、上型2は、上型ベースプレート103を介して上型ホルダ101に取り付けられている。下型3は、下型ホルダ104に保持されており、当該下型ホルダ104は、型締め機構5により昇降する可動プラテン105に固定されている。また、下型3は、下型ベースプレート106を介して下型ホルダ104に取り付けられている。
【0036】
樹脂注入部4は、樹脂材料Jを収容するポット41aが形成されたポットブロック41と、ポット41a内に設けられたプランジャ421を有するトランスファ機構42とを備えている。なお、ポット41aは、例えば円筒状をなす筒状部材410により形成されている。この筒状部材410は、ポットブロック41に形成された貫通孔に嵌め入れられている。
【0037】
ポットブロック41は、下型3に対して昇降可能となるように弾性部材43により弾性支持されている。つまり、ポットブロック41は、弾性部材43を介して下型3に対して昇降可能に設けられている。なお、弾性部材43は、ポットブロック41の下側に設けられている。
【0038】
また、ポットブロック41の上端部には、下型3の上面である型面上に張り出した張り出し部411が形成されている。さらに、ポットブロック41の上面には、ポット41aから注入された樹脂材料Jをキャビティ2aに導入する樹脂流路となるカル部41b及びゲート部41cが形成されている。また、張り出し部411は、上型2及び下型3を型締めした状態で、その上面が上型2に接触するとともに、その下面が成形対象物W1を下型3の型面との間で挟むことになる。
【0039】
トランスファ機構42は、上型2及び下型3が型締めされた状態でプランジャ421を移動させてポット41aからキャビティ2aに樹脂材料Jを注入するものである。具体的にトランスファ機構42は、ポット41aにおいて加熱されて溶融した樹脂材料Jを圧送するためのプランジャ421と、当該プランジャ421を駆動するプランジャ駆動部422とを有している。
【0040】
上型2には、成形対象物W1の電子部品Wxを収容するとともに溶融した樹脂材料Jが注入されるキャビティ2aが形成されている。また、上型2には、ポットブロック41に対向する部分に凹部2bが形成されるとともに、ポットブロック41のカル部41b及びゲート部41cとキャビティ2aとを接続するランナ部2cが形成されている。なお、図示しないが上型2には、ポットブロック41とは反対側にエアベントが形成されている。また、ランナ部2cを省略し、カル部41bとキャビティ2aとをゲート部41cを介して直接的に接続することもできる。
【0041】
また、上型2には、樹脂成形後の成形対象物W2を上型2から離型させるための複数のエジェクタピン61が設けられている。これらエジェクタピン61は、上型2の所要箇所に貫通して上型2に対して昇降可能に設けられており、上型2の上側に設けられたエジェクタプレート62に固定されている。エジェクタプレート62は、弾性部材63を介して上プラテン102等に設けられており、リターンピン64を有している。型締め時にリターンピン64が下型3における成形対象物W1の載置領域外に接触することにより、エジェクタプレート62を上型2に対して上昇させる。これにより、型締め時においてエジェクタピン61は上型2の型面に引っ込んだ状態となる。一方、型開き時においては下型3が下降するに伴って、エジェクタプレート62は上型2に対して下降し、エジェクタピン61が弾性部材63の弾性力によって樹脂成形品W2を上型2から離型する。
【0042】
そして、型締め機構5により上型2及び下型3を型締めすると、カル部41b、ゲート部41c、凹部2b及びランナ部2cからなる樹脂流路が、ポット41aとキャビティ2aとを連通する(
図4参照)。また、上型2及び下型3を型締めすると、ポットブロック41の張り出し部411の下面と下型3の型面との間に成形対象物W1のポット側端部が挟まれることになる。この状態でプランジャ421により溶融した樹脂材料Jをキャビティ2aに注入すると、成形対象物W1の電子部品Wxが樹脂封止される。
【0043】
収納モジュール100Cには、
図1に示すように、樹脂成形品W2を収納する収納部14と、成形モジュール100Bから樹脂成形品W2を受け取り、収納部14に搬送する搬送装置15(以下、アンローダ15)とが設けられている。
【0044】
アンローダ15は、成形モジュール100Bと収納モジュール100Cとの間を行き来するものであり、成形モジュール100Bと収納モジュール100Cとに亘って設けられたレール(不図示)に沿って移動する。なお、アンローダ15の具体的な構成は後述する。
【0045】
<樹脂成形装置100動作>
この樹脂成形装置100の動作について、
図3~
図14を参照して簡単に説明する。なお、
図3~
図14は、ポットブロック41の一方側(左側)のみを示し、他方側(右側)を省略しているが、各図において他方側の状態は一方側の状態と同じである。また、以下の動作は、例えば供給モジュール100Aに設けられた制御部COMが各部を制御することにより行われる。
【0046】
図3に示すように、上型2及び下型3が型開きされた状態で、ローダ13により成形前の成形対象物W1が搬送されて下型3に渡されて載置される。この際、上型2及び下型3は、樹脂材料Jを溶融し、硬化させることができる温度に昇温されている。その後、ローダ13により樹脂材料Jが搬送されてポットブロック41のポット41a内に収容される。
【0047】
この状態で、型締め機構5により下型3を上昇させると、
図4に示すように、ポットブロック41が上型2に当たり下型3に対して下降して、張り出し部411の下面が成形対象物W1のポット側端部に接触する。また、張り出し部411が接触しない成形対象物W1の外周部に、上型2の下面が接触する。これにより上型2及び下型3が型締めされる。この型締め後にトランスファ機構42がプランジャ駆動部422によってプランジャ421を上昇させると、
図5に示すように、ポット41a内の溶融した樹脂材料Jが樹脂通路を通ってキャビティ2a内に注入される。そして、所定の成形時間が経過し、キャビティ2a内で樹脂材料Jが硬化した後に、型締め機構5が上型2及び下型3を型開きする。
【0048】
ここで、本実施形態の樹脂成形装置100は、型締め機構5が上型2及び下型3を型開きする型開き動作中に、樹脂成形品W2と不要樹脂Kとを分離する動作(ゲートブレイク動作)を行う。なお、不要樹脂Kは、ポットブロック41上に残留して硬化した樹脂である。
【0049】
例えば上記の成形時間が経過する直前(型開き動作の開始前)に、トランスファ機構42は、
図6に示すように、プランジャ421が不要樹脂Kを押す力を所定値の力(例えばプランジャ421と不要樹脂Kとが剥離することなく接触状態を維持できる程度の比較的小さな値の力)に低下させる。なお、プランジャ421が押す力は、プランジャ駆動部422の駆動軸(トランスファ軸)等に設けられた図示しないロードセル等の力センサ(重量センサ、荷重センサ等を含む)により測定される。
【0050】
そして、制御部COMは、上記所定値の力となったときのプランジャ421の位置を基準位置Xとして記憶する(
図6参照)。この基準位置Xは、後述するゲートブレイク動作及び不要樹脂Kの離型・回収の基準となる位置である。なお、基準位置Xは、プランジャ421の位置に限られず、当該プランジャ421に接続されたプランジャ駆動部422の駆動軸(トランスファ軸)等のその他の部材の位置としても良い。
【0051】
そして、型開き動作の開始前に、トランスファ機構42は、
図7に示すように、プランジャ421を上型2とは反対側に下降させて、所定の引き剥がし位置Yまで下降させる。プランジャ421を引き剥がし位置Yまで下降させることによって、プランジャ421の上面と不要樹脂Kの下面とが剥離する。この引き剥がし動作後に、トランスファ機構42は、プランジャ421を上述した基準位置Xまで上昇させる。このとき、プランジャ421の上面は、不要樹脂Kの下面に接触する(
図6の状態)。
【0052】
次に、
図8に示すように、型締め機構5が下型3の下降を開始することにより、型開き動作を開始する。型締め機構5が型開き動作を開始してクランプ力が所定値(上述したトランスファ機構42での所定値とは異なる)まで低下したタイミングで、
図9に示すように、トランスファ機構42は、プランジャ421を上型2に向かって上昇させる。これにより、ポットブロック41上の不要樹脂Kがプランジャ421によって上型2に向かって押される。なお、クランプ力は、型締め機構5のクランプ軸等に設けられた図示しないロードセル等の力センサ(重量センサ、荷重センサ等を含む)により測定される。
【0053】
また、トランスファ機構42がプランジャ421を上型2に向かって上昇させる際には、ポットブロック41は、
図9に示すように、圧縮した弾性部材43の復元力である弾性力を受けて下型3から上型2に向かって上昇する。つまり、型開き動作中において、弾性部材43の弾性力を受けてポットブロック41が下型3から上型2に向かって上昇するのと同時に、トランスファ機構42はプランジャ421を下型3から上型2に向かって上昇させることになる。
【0054】
なお、型開き動作中において、弾性部材43の弾性力を受けてポットブロック41が下型3から上型2に向かって上昇を開始するタイミングと、トランスファ機構42によってプランジャ421を下型3から上型2に向かって上昇を開始するタイミングとは一致していても良いし、異なっていても良い。
【0055】
上記のトランスファ機構42によるプランジャ421の上昇及び弾性部材43の弾性力によるポットブロック41の上昇によって、
図10に示すように、下型3の型面上の樹脂成形品W2とポットブロック41上の不要樹脂Kとが分離される(ゲートブレイク)。
【0056】
このとき、下型3上の樹脂成形品W2は、上型2に設けられたエジェクタピン61によって下型3の型面に向かって押圧されており、樹脂成形品W2の下面は、下型3の型面に密着した状態である(
図9参照)。このエジェクタピン61は、樹脂成形品W2と不要樹脂Kとを分離する際に樹脂成形品W2を下型3の型面に押圧する押圧部材として機能する。このように押圧部材により樹脂成形品W2を下型3の型面に押圧しているので、樹脂成形品W2と不要樹脂Kとの間にせん断応力が加わりやすく、ゲートブレイクしやすくなる。
【0057】
ここで、押圧部材であるエジェクタピン61は、少なくとも樹脂成形品W2と不要樹脂Kとが分離されるまでの間、樹脂成形品W2を下型3の型面に向かって押圧する。言い換えれば、型開き動作中において、エジェクタピン61が樹脂成形品W2を押圧している間に、上述したポットブロック41の上昇及びプランジャ421の上昇によって、樹脂成形品W2と不要樹脂Kとの分離が完了する。
【0058】
上記のゲートブレイク中において、不要樹脂Kは、弾性部材43の弾性力によって上側に押されるポットブロック41の上面と上型2の下面との間に挟まれた状態である(
図9及び
図10参照)。つまり、ポットブロック41は、型開き動作の開始から所定期間において、弾性部材43の弾性力によって上型2との間で不要樹脂Kを挟んだ状態となる。なお、所定期間とは、少なくともゲートブレイクが完了するまでを含む期間であり、弾性部材43が復元した初期状態(上型2に押されて圧縮される前の状態)となるように下型3が下降するまでの期間である。
【0059】
そして、所定期間経過後、つまり、型締め機構5がさらに下型3を下降させることによって、
図11に示すように、ポットブロック41は、不要樹脂Kを保持しつつ不要樹脂Kを上型2から剥離させる。ここで、ポットブロック41にカル部41b及びゲート部41cが形成されており、ポットブロック41と不要樹脂Kとの接触面積が、上型2と不要樹脂Kとの接触面積よりも大きいことから、不要樹脂Kはポットブロック41から剥離することなく上型2から剥離する。これにより、不要樹脂Kに接触して当該不要樹脂Kを上型2から剥離するためのエジェクタピンを不要にすることができる。
【0060】
また、トランスファ機構42がプランジャ421を上型2に向かって上昇させるのに伴い、ポットブロック41の張り出し部411が、下型3の型面との間で樹脂成形品W2を挟んだ状態から、樹脂成形品W2とは非接触の状態となる。
【0061】
なお、上記のゲートブレイクとは別に、トランスファ機構42は、ポットブロック41の下側の弾性部材43が復元した型締め前の初期状態になるまで、プランジャ421を上型2に向かって上昇させる(
図11参照)。これにより、次の樹脂成形において、張り出し部411の下側に成形対象物W1を載置する際に張り出し部411が邪魔にならない。
【0062】
以上のような型開き動作を行い、樹脂成形品W2と不要樹脂Kとを分離した後に、
図12~
図14に示すように、アンローダ15によって樹脂成形品W2と不要樹脂Kとを搬出する。
【0063】
アンローダ15は、
図12に示すように、成形品用吸着部15aと不要樹脂用吸着部15bとを有している。成形品用吸着部15a及び不要樹脂用吸着部15bはともに樹脂製の吸着パッドにより構成されており、特に不要樹脂用吸着部15bは、例えばベローズ型(蛇腹型ともいう。)のものであり、成形品用吸着部15aよりも伸縮性に優れたものである。また、成形品用吸着部15a及び不要樹脂用吸着部15bは、ベース部材151に設けられており、図示しない吸引ポンプなどの吸引源に接続されている。成形品用吸着部15aは、吸引源によって空気が吸引されることにより、その吸着開口部15a1に樹脂成形品W2を吸着する。不要樹脂用吸着部15bは、吸引源によって空気が吸引されることにより、その吸着開口部15b1に不要樹脂Kを吸着する。
【0064】
さらに、少なくとも成形品用吸着部15aは、移動機構153によって、ベース部材151に対して左右方向及び上下方向に移動可能に構成されている。なお、移動機構153は、成形品用吸着部15aを左右方向に移動させるための例えばレール及びスライダを有する左右方向移動部と、成形品用吸着部15aを上下方向に移動させるための例えばレール及びスライダを有する上下方向移動部とを備えている。その上、アンローダ15には、成形品用吸着部15aにより吸着された樹脂成形品W2を保持して落下を防止するための保持爪152が設けられている。
【0065】
上述した型開き動作終了後に、アンローダ15を上型2と下型3との間に進入させる。そして、
図12に示すように、成形品用吸着部15aの吸着開口部15a1を樹脂成形品W2の上面に接触させるとともに、不要樹脂用吸着部15bの吸着開口部15b1を不要樹脂Kの上面に接触させる。
【0066】
この状態で、トランスファ機構42は、
図13に示すように、プランジャ421を上昇させて不要樹脂Kをポットブロック41から持ち上げる。ここで、不要樹脂Kがポット41a内に残った残り部K1を有する場合には、当該残り部K1が不要樹脂Kの回収の妨げにならない程度に上昇させる。これにより、不要樹脂Kはポットブロック41から離型されるとともに、不要樹脂用吸着部15bに密着する。このとき不要樹脂用吸着部15bは、吸着開口部15b1が不要樹脂Kに接触した状態のまま弾性変形して縮む。
【0067】
ここで、ポットブロック41は、
図15(a)に示すように、複数のポット41aが形成され、複数のポット41aそれぞれに対応して複数のカル部41b及びゲート部41cが形成されている場合には、複数のカル部41bが連結部41dにより互いに連結していることが考えられる。この構成の場合には、
図15(b)に示すように、不要樹脂Kが複数のカル部41bに跨がって連結した1つの塊となり、不要樹脂Kの数を減らすことができる。これに合わせて、不要樹脂用吸着部15bの数も減らすことができる。
【0068】
不要樹脂用吸着部15bが縮んだ状態とした後に、不要樹脂用吸着部15bの吸着を開始して、不要樹脂用吸着部15bの吸着開口部15b1に不要樹脂Kを吸着させる。また、成形品用吸着部15aの吸着を開始して、成形品用吸着部15aの吸着開口部15a1に樹脂成形品W2を吸着させる。
【0069】
そして、
図14に示すように、移動機構153により樹脂成形品W2を吸着した成形品用吸着部15aをポットブロック41から離れる方向に移動させて、樹脂成形品W2を張り出し部411の外に移動させる。その後、アンローダ15を上昇させた後に、上型2及び下型3から退出する。これにより、アンローダ15によって樹脂成形品W2及び不要樹脂Kの搬出が行われる。ここで、上述したようにゲートブレイクの際に、つまり、ポットブロック41から不要樹脂Kを剥離する前に、不要樹脂Kとプランジャ421とが剥離されているので、不要樹脂Kが回収しやすい。
【0070】
ここで、アンローダ15には、上型2及び下型3をクリーニングするための清掃機構(不図示)を有するものがある。なお、清掃機構としては、回転ブラシ及び塵埃を吸引して排出する吸引部を有するものが考えられる。
【0071】
この場合には、樹脂成形品W2及び不要樹脂Kを吸着したアンローダ15は、上型2及び下型3の間に留まり、クリーニング動作を行う。
【0072】
ここで、まずトランスファ機構42は、ポット41a内に付着した樹脂を掻き出す動作を行う。つまり、トランスファ機構42は、
図16に示すように、プランジャ421を所定の掻き出し位置まで上昇させる。ここで、所定の掻き出し位置は、例えば、プランジャ421の上面がポット41aの開口位置よりも上側となる位置である。そして、トランスファ機構42は、所定の掻き出し位置から樹脂材料Jを収容するためのロード位置まで下降させる。その後、トランスファ機構42は、再び、プランジャ421を所定の掻き出し位置まで上昇させる。これにより、ポット内に付着した樹脂をポット41a外に掻き出す。
【0073】
その後、アンローダ15に設けた清掃機構により、上型2、下型3、ポットブロック41及びプランジャ421をクリーニングする。クリーニング動作終了後に、アンローダ15は、上型2及び下型3から退出して、樹脂成形品W2及び不要樹脂Kの搬出が行われる。
【0074】
<本実施形態の効果>
本実施形態の樹脂成形装置100によれば、不要樹脂用吸着部15bにより不要樹脂Kを吸着する前に、プランジャ421によって不要樹脂Kをポットブロック41から剥離しているので、不要樹脂用吸着部15bにより吸着した不要樹脂Kをポットブロック41から確実に回収することができる。また、プランジャ421によって不要樹脂Kをポットブロック41から剥離する際に、不要樹脂用吸着部15bが不要樹脂Kに接触しているので、不要樹脂Kがポットブロック41上で傾く等により生じる吸着不良を防ぐことができる。以上により、ポットブロック41上の不要樹脂Kを安定して回収することができる。
【0075】
ここで、本実施形態では、ポットブロック41から不要樹脂Kを剥離する前に、プランジャ421を上型2とは反対側に下降させて、プランジャ421の上面から不要樹脂Kの下面を剥離しているので、分離された不要樹脂Kを回収しやすくできる。
【0076】
また、本実施形態では、ポットブロック41から不要樹脂Kを剥離する際に、不要樹脂用吸着部15bが不要樹脂Kに接触した状態のまま弾性変形して縮むので、ポットブロック41からの不要樹脂Kの剥離を邪魔することなく、不要樹脂用吸着部15bが不要樹脂Kに接触した状態を維持することができる。このため、剥離後の不要樹脂Kを確実に吸着することができる。
【0077】
さらに、本実施形態では、アンローダ15が成形品用吸着部15a及び不要樹脂用吸着部15bを有するので、共通の搬送機構により樹脂成形品W2及び不要樹脂Kを一挙に搬出することができ、それらの搬出時間を短縮できるとともに、樹脂成形装置100の構成を簡単にすることができる。
【0078】
また、本実施形態では、型開き動作中において、弾性部材43の弾性力を受けてポットブロック41が上昇するのと同時にトランスファ機構42がプランジャ421を上昇させて樹脂成形品W2と不要樹脂Kとを分離するので、型締め時に圧縮されている弾性部材43の弾性力を利用して樹脂成形品W2と不要樹脂Kとを確実に分離することができる。また、樹脂成形品W2と不要樹脂Kとの分離にプランジャ421を用いているので、弾性部材43の弾性力を大きくする必要がなく、弾性部材43の大型化を防ぎ、更には成形型2、3の大型化や不要樹脂Kの大型化を招くこともない。
【0079】
その上、本実施形態では、型開き動作の開始からゲートブレイクが完了するまでの間、ポットブロック41と上型2との間で不要樹脂Kを挟んでいるので、不要樹脂Kが樹脂成形品W2から分離した反動等により、不要樹脂Kがポットブロック41から不意に外れてしまうことを防ぐことができる。また、それらの分離時に不要樹脂Kがポットブロック41から外れないことから、不要樹脂Kがポットブロック上で傾く等により生じる吸着不良を防ぐことができる。
【0080】
加えて、本実施形態では、不要樹脂用吸着部15bが不要樹脂Kを回収する前に、トランスファ機構42は、弾性部材43が復元した初期状態になるまでプランジャ421を上型2に向かって上昇させるので、不要樹脂用吸着部15bを接触させる前後でポットブロック41が不意に上昇することが無く、不要樹脂Kの回収を安定して行うことができる。
【0081】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0082】
例えば、前記実施形態では、樹脂成形品W2と不要樹脂Kとを分離する前に、プランジャ421を下降させてプランジャ421の上面と不要樹脂Kの下面とを剥離しているが、樹脂成形品W2と不要樹脂Kとを分離した後であって、ポットブロック41と不要樹脂Kとを剥離する前に、プランジャ421を下降させてプランジャ421の上面と不要樹脂Kの下面を剥離しても良い。
【0083】
また、前記実施形態では、樹脂成形品W2と不要樹脂Kとを分離する際にプランジャ421を上昇させているが、プランジャ421を上昇させることなく弾性部材43のみによって樹脂成形品W2と不要樹脂Kとを分離する構成としてもよい。
【0084】
さらに、前記実施形態では、共通のアンローダ15によって樹脂成形品W2及び不要樹脂Kの両方を搬出する構成であったが、樹脂成形品W2を搬出する搬送機構と、不要樹脂Kを搬出する搬送機構とをそれぞれ有する構成としてもよい。
【0085】
また、前記実施形態では、樹脂成形品W2と不要樹脂Kとが分離されるまでの間、上型2に設けられたエジェクタピン61により、樹脂成形品W2を下型3の型面に向かって押圧する構成としているが、エジェクタピン61とは別に、樹脂成形品W2を下型3の型面に押圧する押圧部材を設けても良い。
【0086】
さらに、前記実施形態では、ポットブロック41にカル部41b及びゲート部41cを形成しているが、上型2の凹部2bにカル部及びゲート部を形成しても良い。この場合、上型2及び下型3の型開き時に不要樹脂Kがポットブロック41から離型して上型2の凹部2bに留まる可能性があるため、上型2に不要樹脂Kを離型させるためのエジェクタピンを設けても良い。
【0087】
本発明の樹脂成形装置は、通常のトランスファ成形に限られず、トランスファ機構を備えた構成であれば良い。
【0088】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0089】
100・・・樹脂成形装置
W1 ・・・成形対象物
J ・・・樹脂材料
W2 ・・・樹脂成形品
K ・・・不要樹脂
2 ・・・第1型(上型)
2a ・・・キャビティ
3 ・・・第2型(下型)
4 ・・・樹脂注入部
41 ・・・ポットブロック
41a・・・ポット
41b・・・カル部
41d・・・連結部
411・・・張り出し部
42 ・・・トランスファ機構
421・・・プランジャ
43 ・・・弾性部材
5 ・・・型締め機構
15 ・・・搬送機構
15a・・・成形品用吸着部
15b・・・不要樹脂用吸着部