(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】家具製品のスライド扉のための脱線防止装置
(51)【国際特許分類】
E05D 13/00 20060101AFI20230901BHJP
E05D 15/06 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
E05D13/00 A
E05D15/06 119
(21)【出願番号】P 2020503317
(86)(22)【出願日】2018-07-13
(86)【国際出願番号】 IB2018055178
(87)【国際公開番号】W WO2019021100
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】102017000084318
(32)【優先日】2017-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】516265621
【氏名又は名称】ボルトルッツィ システミ エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ジロット,アドリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ダル カステル,ロドルフォ
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03745706(US,A)
【文献】特開2010-190032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 13/00-15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道(22)上で転がることができ、かつ一つの家具の扉(20)を並進可能に支持するキャリッジ上に枢軸が付けられた車輪(30)の、脱線を防止するための方法であって、
(i)前記キャリッジと独立して前記軌道(22)上を並進可能なスライダ(50)を、分離することなく前記軌道(22)上に取り付けるステップと、
(ii)前記車輪(30)が転がる状態で脱線することなく、前記車輪(30)を前記軌道(22)上に維持するため、前記スライダ(50)を、前記車輪(30)、前記キャリッジ、または前記扉(20)のうちの少なくとも1つに拘束するステップとを含み、
ステップ(ii)は、前記スライダ(50)と、前記車輪(30)、前記キャリッジ、または前記扉(20)のうちの前記少なくとも1つとの間で、垂直方向の相対移動ができるよう実行され、
ステップ(ii)において、前記スライダ(50)は、前記垂直方向の相対移動を可能にするよう、機械的遊隙を有する相互連結部分(42、74)によって前記キャリッジに拘束される、方法。
【請求項2】
ステップ(ii)において、前記スライダ(50)は前記キャリッジに拘束され、前記拘束は相互連結スナップ部分(42、74)によって実現される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(i)は、前記スライダ(50)の一部分と前記軌道(22)の断面との間の形状連結を介して実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記スライダ(50)の一部分、及び前記軌道(22)の断面は、直進対偶または嵌合構造を有する直進対偶を形成することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(i)は、ステップ(ii)の前に実施し、すなわち、
まず、前記スライダ(50)が、前記軌道(22)から外れないよう、かつ前記キャリッジから独立して、並進可能に前記軌道(22)上に取り付けられ、次に、
前
記スライダ(50)は拘束され、つまり前記スライダ(50)は、前記車輪(30)が脱線することなく前記軌道(22)上を転がる位置に、前記車輪(30)を維持するために、前記車輪(30)、前記キャリッジ、または前記扉(20)のうちの少なくとも1つに接続、または装着される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
軌道(22)上を転がることができ、かつ一つの家具(MC)の扉(20)を並進可能に支持するキャリッジ上に枢軸が付けられた車輪(30)のための、脱線防止システムであって、
分離することなく前記軌道(22)上に取り付け可能で、前記キャリッジと独立して前記軌道(22)上を並進可能な、スライダ(50)と、
前記車輪(30)が転がる状態で脱線することなく、前記車輪(30)を前記軌道(22)上に維持するため、前記スライダ(50)と、前記車輪(30)、前記キャリッジ、または前記扉(20)のうちの少なくとも1つとを拘束するための、拘束要素(40)とを特徴とし、
前記スライダ(50)と、前記車輪(30)、前記キャリッジ、または前記扉(20)のうちの前記少なくとも1つとの間の拘束は、前記スライダ(50)と、前記車輪(30)、前記キャリッジ、または前記扉(20)のうちの少なくとも1つとの間で、垂直方向の相対移動ができるよう、機械的遊隙を備え、
前記スライダ(50)は前記キャリッジに拘束され、前記スライダ(50)及び前記キャリッジは、互いに締付け可能なスナップ嵌合部分(42、74)を備えることを特徴とする、脱線防止システム。
【請求項7】
前記スナップ嵌合部分は、スナップ嵌合によってスロット(42)と係合可能な可撓性フィン(74)を備え、前記機械的遊隙を定めるために、前記スロット(42)は前記フィン(74)よりも大きい、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記スライダ(50)は、前記軌道(22)の断面とともに直進対偶または嵌合構造を有する直進対偶を形成する連結部分(62)によって、前記軌道(22)に連結される、請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
前記連結部分は、相補的な方法で前記軌道(22)の側部を跨ぐよう構成された、2つの分岐したフィン(62)を備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
拘束要素(40)は剛性接続要素からなる、請求項
6~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
拘束要素(40)は可撓性要素からなる、請求項
6~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
拘束要素(40)はコードもしくはチェーンからなる、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
スライダと、車輪、キャリッジ、または扉のうちの該少なくとも1つとの間に復元力を加えるために取り付けられた、弾性要素を備える請求項
6~12のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具のスライド扉のための脱線防止方法及び脱線防止装置に関する。
【0002】
一般的に家具のスライド扉は、扉をほとんど摩擦なく動かせるよう、直線軌道上を転がる車輪を有するキャリッジによって支持される。共通の課題は、いかにして軌道からの車輪の脱線を防止することである。なぜなら、扉上の偶発的な衝突、または扉が速いスピードで制限位置に到達することが、時として車輪を下方の軌道から係合解除させるのに十分であり、その後いくらか不便を伴う整備を要することになるからである。
【背景技術】
【0003】
国際特許第2012/156338号において、上述のタイプのキャリッジは、手動で操作されるクランプを備えて記載されている。レバーを介して、クランプを軌道に摺動可能に係合するよう動かすこと、及び車輪の脱離を防止することが可能である。この解決策の主な欠点は、クランプの複雑さ及び費用、その作動中の不便さ、ならびにキャリッジをクランプに適応させる必要があるという制約であり、そのため設計の自由度をやむなく犠牲にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当技術分野のこの状況を改善することが、本発明の主な目的であり、それは添付の特許請求の範囲において定義され、その中で従属請求項は有利な変形を定義する。
【0006】
別の目的は、使用がより簡単で、かつ高価でなく、及び/または現存のキャリッジに適用可能である、脱線防止方法及び脱線防止装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、軌道上で転がることができ、かつ一つの家具の扉を並進可能に支持するキャリッジ上に枢軸が付けられた車輪の、脱線を防止するための方法であり、
(i)キャリッジと独立して軌道上を並進可能なスライダを、分離することなく軌道上に取り付けるステップと、
(ii)車輪が転がる状態で脱線することなく、車輪を軌道上に維持するため、車輪、キャリッジ、または扉のうちの少なくとも1つにスライダを拘束するステップと、を含む。
【0008】
したがって、車輪を軌道に据え付けるための簡単かつ効果的な方法が実現される。
【0009】
ステップ(ii)は、例えば剛性リンク、コード、またはチェーンを介してなど、多くの方法で実現させることができる。
【0010】
好ましくはステップ(ii)は、スライダと、車輪、キャリッジ、または扉のうちの該少なくとも1つとの間で、垂直方向の相対移動ができるよう実行される。これによって、車輪が軌道上に取り付けられた後でさえ、扉を取り付けた後に扉の位置を細かく調節することが可能になる。
【0011】
好ましくはステップ(ii)において、スライダはキャリッジに拘束され、より好ましくは、この拘束は、
相互のスナップ連結部分によって、及び/または、
該垂直方向の相対移動を可能にするような機械的遊隙を有する、相互の連結部分によって、実現される。
【0012】
好ましくはステップ(i)は、スライダの一部分と軌道の断面との間の形状連結を介して実施する。スライダのこの部分、及び軌道の断面は、例えば直進対偶または嵌合構造を有する直進対偶を形成する。
【0013】
好ましくはステップ(i)は、ステップ(ii)の前に実施する。すなわち、
まず、スライダが、軌道から外れないよう、かつキャリッジから独立して、並進可能に軌道上に取り付けられ、次に、
スライダは拘束される。つまりスライダは、車輪が脱線することなく軌道上を転がる位置に、車輪を維持するために、車輪、キャリッジ、または扉のうちの少なくとも1つに接続、または装着される。
【0014】
スライダと、車輪、キャリッジ、または扉のうちの少なくとも1つとが初めは外されており、かつ例えば家具製品に個別に取り付けられていて、その後互いに結束されて、車輪が脱線することなく軌道上を転がる位置に維持される限りにおいて、ステップ(ii)に対するステップ(i)の順番を逆にすることができる。
【0015】
本発明の第2の態様は、軌道上を転がることができ、かつ一つの家具の扉を並進可能に支持するキャリッジ上に枢軸が付けられた車輪のための、脱線防止システムであり、
分離することなく軌道上に取り付け可能で(または取り付けられ)、キャリッジと独立して軌道上を並進可能な、スライダと、
車輪が転がる状態で脱線することなく、車輪を軌道上に維持するよう、スライダと、車輪、キャリッジ、または扉のうちの少なくとも1つとを互いに拘束するための、拘束要素と、を特徴とする。
【0016】
確認できるように、国際特許第2012/156338号に対して、本システム及び方法は、いかにしてスライダを、軌道上で扉を並進させる構成要素に接続するかにおいて、より自由な選択程度を提供する。
【0017】
別の利点は、使用されるキャリッジの構造に関わりなく、上述のタイプの任意の扉に脱線防止システムを提供する可能性である。
【0018】
記述したように、スライダは、キャリッジ、車輪、または扉に関わりなく、軌道上を並進するよう構築される。つまり、キャリッジまたは車輪は、スライダと独立して軌道上を並進できるよう構成される。つまり、スライダ、キャリッジ、及び車輪は別個の部品として、すなわち取り外された、または取り外し可能な一部として構成されるが、その後それらは、上記の拘束段階(ii)及び/または拘束要素によって一体化されるよう拘束される。
【0019】
好ましくは、キャリッジ及び/または車輪及び/または扉は、該拘束段階(ii)及び/または拘束要素のみを介して、スライダで一体化されて保持されるスライダ。
【0020】
好ましくは、拘束要素、もしくはスライダと、車輪、キャリッジ、もしくは扉のうちの該少なくとも1つとの間の接続または拘束は、スライダと、上記の車輪、キャリッジ、もしくは扉のうちの少なくとも1つとの間で垂直方向の相対移動ができるよう、機械的遊隙を備える。この効果によって、車輪が軌道上に取り付けられた後であっても、扉の組み立てが終了した後で扉の位置を細かく調節できるようになる。
【0021】
拘束要素は、例えば剛性接続要素、またはコードもしくはチェーンなど可撓性要素など、多くの実施形態を有し得る。
【0022】
このシステムは、スライダと、車輪、キャリッジ、または扉のうちの該少なくとも1つとの間に復元力を加えるために取り付けられた、弾性要素を備え得る。この効果は、軌道と係合する位置まで車輪を戻すこと、及び車輪と軌道とが瞬時に外れるのを防ぐ、または最小限に抑えることである。
【0023】
特に、スライダはキャリッジに拘束される。この変形において、スライダ及びキャリッジは、好ましくはスナップ嵌合の相互に固定可能な部分を備える。特に、固定可能な部分は可撓性フィンを備える。この可撓性フィンはスライダに含まれ、キャリッジのスロットにスナップ嵌合で係合可能である。好ましくは、該機械的遊隙を定めるために、スロットはフィン(例えば垂直方向の長軸を有する卵形)よりも大きい寸法を有する。フィン及びスロットの位置は、交換することもできる。
【0024】
好ましくはスライダは、軌道の断面とともに形状嵌合の閉鎖対偶または直進対偶を形成する、連結部分によって軌道に連結される。特に、この連結部分は、軌道の側部を相補的に受け入れるよう構成された、2つの別個のウイング部を備える。
【0025】
本発明の利点は、添付の図面を参照して、以下の脱線防止システムの好ましい例の説明から、より明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面において、同じ番号は、同じまたは概念的に類似の部品を示し、要素は使用中として記載される。
【0028】
家具製品MCは、天井10及び分割側壁12を備え、その正面において、関連の区画を閉じるために、扉の1つが他の扉の上を摺動して取り付けられる。この例では3つの扉を示すが、全てに同じ装置が装備されるので、簡略化のために1つの扉のみを参照する。
【0029】
直線軌道として利用される、波形22を有する金属製セクションバー18は、天井10に固定される。扉は2つの車輪30を有する。それらはセクションバー18に沿って整合かつ離隔され、セクションバー18上で摺動可能である。
【0030】
各車輪30は、水平軸Vの周りで回転可能で、U型ブラケット36の垂直プレート34上で調節可能なプレート32に枢軸が付けられる。U型ブラケット36は、扉20にねじ留めされた第2の垂直プレート38を備える。
【0031】
端部に位置する拘束要素40は、プレート32の隣のプレート34にねじ留めされ(
図3も参照)、垂直の貫通スロット42が装備される。この例において、スロット42は卵形または楕円形の断面であり、卵形または楕円形の長軸は垂直で、スロットの軸(深さ)は、波形22の長手方向に対して平行である。
【0032】
車輪30によって占められた波形22上に、スライダ50は取り付けられる(
図4も参照)。スライダ50は、ベース部60及びヘッド部70を備える。
【0033】
ベース部60は水平セグメント64を備え、その端部から2つの離された垂直分岐部62が延びる。分岐部62は、波形22上に跨ってぴったりと設置され、分岐部62の間に、波形22の断面に相補的な形状の空洞を定める。このようにスライダ50は、波形22に沿ってかつ波形22の上で、脱線することなく摺動できる。
【0034】
ヘッド部70は垂直ネック部72を有し、そこから2つの水平の可撓性フィン74が延びる。可撓性フィン74はスロット42の中に挿入可能である。
【0035】
扉20を組み立てる間、このフィンをスロット42の中に挿入することによって、拘束要素40はスライダ50に接続され、拘束要素40及びスライダ50が共にセクションバー18上で摺動できるようになる。
【0036】
その結果、車輪30によってセクションバー18に摺動自在に固定された扉20も、スライダ50に拘束される。今や車輪30は、下方の波形22に対して拘束されて脱線しない。なぜならスライダ50は、車輪30がセクションバー18から離れ過ぎるのを防止するからである。
【0037】
拘束要素は、例えば剛性接続要素、またはコードもしくはチェーンなど可撓性要素など、多くの実施形態を有し得る。
【0038】
扉20を取り付けるときに細かい調整を可能にするために、ブラケット36上のプレート32の調節を容易にするよう、スロット42の寸法を、フィン74がスロットの中に小さい垂直の遊隙を伴って摺動できるように決めることが好ましい。例えば、スロット42は短い垂直誘導部を形成し得る。そこでフィン74は短い距離を並進できる。
【0039】
遊隙は、扉20の小さい公差、及び隣接する扉間の組み立て公差を調整するのに有用である。
【0040】
このシステムは、スライダと、車輪、キャリッジ、または扉のうちの該少なくとも1つとの間に復元力を加えるために取り付けられた、弾性要素を備え得る。この効果は、軌道と係合する位置まで車輪を戻すこと、及び車輪と軌道とが瞬時に外れるのを防ぐ、または最小限に抑えることである。