(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】狭帯域システムにおける双方向データ転送のための方法
(51)【国際特許分類】
H04J 1/06 20060101AFI20230901BHJP
H04W 72/0453 20230101ALI20230901BHJP
【FI】
H04J1/06 100
H04W72/0453
(21)【出願番号】P 2020517541
(86)(22)【出願日】2018-08-28
(86)【国際出願番号】 EP2018000418
(87)【国際公開番号】W WO2019063119
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】102017009035.1
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102018000044.4
(32)【優先日】2018-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519068124
【氏名又は名称】ディール、メータリング、システムズ、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DIEHL METERING SYSTEMS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】フリスト、ペトコフ
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル、ムジク
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、カオプペルト
(72)【発明者】
【氏名】クラウス、ゴットシャルク
【審査官】谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0360530(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0192789(US,A1)
【文献】特表2009-544240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 1/06
H04W 72/0453
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局(101)と端末機器(102)との間で行われる、双方向データ伝送のための方法であって、
前記端末機器(102)と前記基地局(101)とが各々独自の周波数基準部を有し、
前記データが前記基地局(101)と前記端末機器(102)との間で異なる周波数で伝送され、
前記端末機器(102)から前記基地局(101)にデータを送信するための基本送信周波数(201)が定義され、
前記基本送信周波数(201)を、前記基地局(101)に知らせておき、
前記端末機器(102)が、前記端末機器(102)から前記基地局(101)にデータを送信するための前記端末機器側の端末機器送信周波数(202)を定義し、前記基本送信周波数(201)と前記端末機器送信周波数(202)との間に
第1の周波数オフセットΔf
offsetが存在する、
双方向データ伝送のための方法において、
前記周波数基準部の温度の影響、経年劣化、および/または製造公差による前記基地局と前記端末機器との間の
第2の周波数オフセットが存在し、
前記端末機器(102)が、前記基地局(101)から発信されたデータを受信する受信ウィンドウを開き、前記受信ウィンドウを開くために前記
第1の周波数オフセットΔf
offsetが考慮に入れられ、
前記基地局(101)が、前記端末機器送信周波数(202)を決定し、
前記基地局(101)が、前記
第2の周波数オフセットを考慮に入れることで、前記決定された端末機器送信周波数(202)に基づいて前記端末機器(102)にデータを送信する、
ことを特徴とする双方向データ伝送のための方法。
【請求項2】
前記端末機器(102)が、前記基地局(101)から発信されたデータを受信する受信ウィンドウを開き、前記ウィンドウが前記端末機器送信周波数(202)に対して周波数オフセットΔf
up/downを有し、
前記端末機器(102)が、前記受信ウィンドウを開くためのΔf
up/downを考慮に入れ、
前記基地局(101)が、前記端末機器(102)によって送信された前記データの前記端末機器送信周波数(202)を決定し、
前記基地局(101)が、前記端末機器(102)の前記決定された端末機器送信周波数(202)に基づき、Δf
up/downを組み込んで前記端末機器(102)にデータを送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記端末機器(102)が、前記端末機器(102)から前記基地局(101)にデータを送信するために前記端末機器側のさらなる端末機器送信周波数(202a)を定義し、前記基本送信周波数(201)と前記さらなる端末機器送信周波数(202a)との間にさらなる周波数オフセットΔf‘
offsetが存在し、
前記端末機器(102)が、前記さらなる端末機器送信周波数(202a)の前記受信ウィンドウを開くためのΔf‘
offsetを考慮に入れ、
前記基地局(101)が、前記さらなる端末機器送信周波数(202a)で前記端末機器(102)によって送信された前記データの前記端末機器送信周波数(202)を決定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記端末機器(102)と前記基地局(101)とが各々少なくとも1つの無線チップを有し、
前記周波数基準部が前記無線チップに接続されており、
前記無線チップの周波数に影響を与える効果が測定され、それによって周波数オフセットΔf
chipが決定され、
前記端末機器(102)が、前記基地局(101)から発信されたデータを受信する受信ウィンドウを開き、前記受信ウィンドウを開くために前記周波数オフセットΔf
chipが考慮に入れられる、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記基本送信周波数(201)が固定されており、事前に定義されている、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記周波数オフセットΔf
up/downが事前に定義された固定値である、ことを特徴とする請求項
2に記載の方法。
【請求項7】
前記周波数オフセットΔf
up/downが前記基地局(101)と前記端末機器(102)とに知られている、ことを特徴とする請求項
2に記載の方法。
【請求項8】
前記端末機器(102)が、干渉の影響を受ける周波数および/または干渉の影響を受ける周波数範囲が回避されるように、前記端末機器送信周波数(202)を定義する、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記端末機器(102)が、前記端末機器(102)自体の送信電力および/または外部電力を測定し、これに基づいて前記端末機器送信周波数(202)を定義する、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記端末機器(102)から前記基地局(101)への前記データ伝送が上りリンク帯域(209)の周波数で行われ、
前記基地局(101)から前記端末機器(102)への前記データ伝送が下りリンク帯域(210)の周波数で行われ、
前記基地局(101)が、前記決定された端末機器送信周波数(202)に基づき、前記下りリンク帯域(210)の幅を考慮に入れて前記端末機器(102)にデータを送信し、
前記端末機器(102)が、前記受信ウィンドウを開くための前記下りリンク帯域(210)の前記幅を考慮に入れる、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記上りリンク帯域(209)が前記下りリンク帯域(210)よりも広い、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記基地局(101)が、
周波数オフセットΔf
wrap
を組み込んで前記端末機器(102)にデータを送信し、かつ/または、前記端末機器(102)が、前記受信ウィンドウを開くための前記周波数オフセットΔf
wrapを考慮に入れ、
前記基地局(101)の、結果として得られる送信周波数(203)が、前記下りリンク帯域(210)内に位置するように、前記周波数オフセットΔf
wrapが選択される、ことを特徴とする請求項10から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記基地局(101)と前記端末機器(102)とが、前記上りリンク帯域(209)の位置および前記下りリンク帯域(210)の位置を知っている、ことを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記双方向データ伝送のチャネルが、1kHz~25kHzの範囲のチャネル帯域幅を有する、ことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記双方向データ伝送のチャネルが、0.5kbaud~20kbaudの範囲のシンボルレートを有する、ことを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記端末機器(102)の
周波数公差Δf
T
が、前記チャネルの帯域幅(206)よりも大きい、ことを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記端末機器(102)の
周波数公差Δf
T
が、1ppm~100ppmの範囲内に位置する、ことを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記基地局(101)が、前記端末機器(102)の最大周波数公差Δf
T,maxを組み込んで前記それぞれの端末機器(102)に前記データを送信する、ことを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記端末機器(102)が、前記受信ウィンドウを開くための前記最大周波数公差Δf
T,maxを考慮に入れる、ことを特徴とする請求項
18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の狭帯域システムにおける双方向データ転送のための方法に関する。本発明は、請求項2、請求項4および請求項10のプリアンブルに記載の方法にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、センサ、スマート・ホーム・コントローラの消費量メータや構成部品などの計測ユニットからのデータ伝送が、日常使用においてますます重要になってきている。これらの計測ユニットは、通信システムにおける個々の端末機器を表す。この種のシステムでは、少量のデータが多数の端末機器から基地局に送信される。計測ユニットの重要な応用分野の1つが、スマートメータとしても知られているインテリジェント消費量メータの使用である。これらは通常、エネルギー、電気、ガス、または水などの供給ネットワークに組み込まれた消費量メータであり、それぞれの接続ユーザに実際の消費量を指示し、通信ネットワークを使用して消費量データを提供者に送信する。供給者は、消費量データを収集する集信装置の形で基地局を運用することにより消費量データを伝送するための通信システムを提供する。インテリジェント消費量メータには、手動メータ読み取りが不要になり、実際の消費量に従って提供者が短期間の課金を実施できるという利点がある。より短期間の読み取り間隔はさらに、最終顧客の料金と電力の取引価格の推移との間のより正確な連係を可能にする。また供給ネットワークを、実質的により効果的に利用することもできる。
【0003】
DECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)やRFID(Radio Frequency Identification)などの、端末機器と基地局との間の単方向および双方向のデータ伝送のための様々なシステムが知られている。この種のシステムでは、端末機器が同期される基準周波数または基準時間は、通常、基地局によって指定される。しかしながら、水晶振動子の許容誤差が原因で、端末機器で周波数および/または時間の誤りが発生する可能性がある。これらの水晶振動子の許容誤差は、例えば、温度の影響、経年劣化、および/または製作公差によって引き起こされ、周波数オフセットをもたらす。許容誤差の可能性があるため、上りリンクでの端末機器の伝送用のチャネルは、個々の端末機器が互いに干渉しないように、それに対応した幅に選択されなければならない。下りリンクでの端末機器の受信ウィンドウには、同等の幅に選択された受信チャネルが必要である。
【0004】
感度、したがって、例えば、端末機器の伝送品質を改善するために、データ伝送に狭帯域システムを使用することが可能である。しかしながら、水晶振動子の許容誤差が原因で、端末機器の受信フィルタを非常に狭いものとして単純に選択することはできない。周波数オフセットが原因で、例えば、端末機器が実際に送信したチャネルを基地局が明確に識別できない事例が発生する可能性がある。よって、例えば、マルチチャネルシステムでは、端末機器の開かれた受信ウィンドウの周波数が未知であるために、基地局による周波数が正確なリターン伝送が困難である。
【0005】
最も近い先行技術
狭帯域システムにおける双方向データ伝送のためのシステムは、独国特許出願公開第102011082100(A1)号明細書に記載されている。このシステムは、端末機器が、異なる周波数偏差にもかかわらず、互いに干渉し合うことなく非常に狭い周波数間隔で送信することを可能にする。よって、端末機器の周波数は帯域限界に近接して位置することができ、これにより利用可能な上りリンク帯域幅が増加し、データ伝送速度が増加し得る。
【0006】
欧州特許第2369763(B1)号明細書には、第1および第2のタイプの送受信部からなり、第1のタイプの送受信部が、この第2のタイプの送受信部から受信された周波数を基準周波数と比較し、オフセット信号を形成するために周波数比較部を含み、基準周波数がオフセット信号に従って設定される、通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第102011082100(A1)号明細書
【文献】欧州特許第2369763(B1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、伝送品質の改善が帯域幅のより効率的な利用と同時に可能になる狭帯域システムにおける双方向データ伝送のための新規な方法を提供することに存する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、請求項1の全教示と、請求項2、請求項4および請求項10に記載の方法とによって達成される。本発明の適切な設計は従属請求項に記載されている。
【0010】
本発明によれば、基地局と端末機器との間、好ましくは基地局と複数の端末機器との間で、好ましくは狭帯域システムで行われる、双方向データ伝送のための方法であって、端末機器と基地局とが各々独自の周波数基準部(frequency reference unit)を有し、データが基地局と端末機器との間で異なる周波数で伝送される、双方向データ伝送のための方法において、
端末機器によって基地局にデータを送信するための基本送信周波数が定義される方法ステップと、
端末機器が、端末機器から基地局にデータを送信するための端末機器側の端末機器送信周波数を定義し、基本送信周波数と端末機器送信周波数との間に周波数オフセットΔfoffsetが存在する、方法ステップと、
端末機器が、基地局から発信されたデータを受信する受信ウィンドウを開き、受信ウィンドウを開くための周波数オフセットΔfoffsetが考慮に入れられる、方法ステップと、
基地局が、端末機器送信周波数を決定する方法ステップと、
基地局が、決定された端末機器送信周波数に基づいて端末機器にデータを送信する方法ステップと、
を有する方法が提供される。
【0011】
よって、特に狭帯域システムでのデータ伝送全体は、端末機器送信周波数が導出される基本送信周波数に基づくものである。端末機器は、その端末機器送信周波数を自由に定義することができる。よって端末機器送信周波数は、指定されたチャネルまたはチャネル間隔とは無関係である。端末機器送信周波数は、好ましくは、基本送信周波数と同じとすることができ、よって0Hzの周波数オフセットΔfoffsetを有することができる。基地局は、端末機器によって送信されたデータに基づいて、端末機器送信周波数を決定する。リターン伝送の周波数は、端末機器送信周波数から同様に導出される。
【0012】
本発明は、基地局と端末機器との間、好ましくは基地局と複数の端末機器との間で、好ましくは狭帯域システムで行われる、双方向データ伝送のための方法であって、端末機器と基地局とが各々独自の周波数基準部を有し、データが基地局と端末機器との間で異なる周波数で伝送される、特に請求項1に記載の双方向データ伝送のための方法において、
端末機器が、基地局から発信されたデータを受信する受信ウィンドウを開き、前記ウィンドウが端末機器送信周波数に対して周波数オフセットΔfup/downを有する、方法ステップと、
端末機器が、受信ウィンドウを開くためのΔfup/downを考慮に入れる方法ステップと、
基地局が、端末機器によって送信されたデータの端末機器送信周波数を決定する方法ステップと、
基地局が、端末機器の決定された端末機器送信周波数に基づき、Δfup/downを組み込んで端末機器にデータを送信する方法ステップと、
を有する方法を従属的に特許請求する。
【0013】
端末機器は、端末機器送信周波数で送信する。端末機器送信周波数に対して受信ウィンドウが開かれると、端末機器はそれに対応してΔfup/downを考慮する。基地局は、端末機器送信周波数でデータを受信し、端末機器送信周波数を決定する。基地局から端末機器へのデータの返信において、基地局は、端末機器の決定された端末機器送信周波数およびΔfup/downを組み込む。このために、端末機器送信周波数に対する周波数オフセットΔfup/downが付加される。端末機器はその受信ウィンドウを、第1の端末機器送信周波数に対して周波数オフセットΔfup/downを有する周波数で開く。基本送信周波数に基づき、例えば、端末機器送信周波数に対する周波数差Δfoffsetを端末機器がさらに定義することができる。
【0014】
本発明のさらなる展開は、
端末機器が、端末機器から基地局にデータを送信するために端末機器側のさらなる端末機器送信周波数を定義し、基本送信周波数とさらなる端末機器送信周波数との間にさらなる周波数オフセットΔf‘offsetが存在する、方法ステップと、
端末機器が、さらなる端末機器送信周波数の受信ウィンドウを開くためのΔf‘offsetを考慮に入れる方法ステップと、
基地局が、さらなる端末機器送信周波数で端末機器によって送信されたデータの端末機器送信周波数を決定する方法ステップと、
である、追加の方法ステップの提供を可能にする。
【0015】
基地局と端末機器との間の双方向伝送を、さらなる端末機器送信周波数で同様に行うことができる。また、さらなる端末機器送信周波数に対する周波数差Δf‘offsetを、基本送信周波数に基づいて端末機器が定義することもできる。端末機器は、受信ウィンドウが開かれるときに、Δf‘offsetを考慮に入れ、必要に応じてΔfup/downおよび/またはΔfoffsetをさらに考慮に入れることもできる。基地局も同様に、端末機器の決定された端末機器送信周波数を考慮に入れ、必要に応じて、データが端末機器に返信されるときにΔfup/downをさらに考慮に入れる。
【0016】
有利には、基地局のリターン伝送チャネルは端末機器送信周波数に基づいて決定されるため、よってチャネル割り振りの問題をなくすことができる。よって本発明は、端末機器が指定されたチャネル割り振りに従う必要なく狭帯域システムで送信することを可能にする。したがって端末機器送信周波数をそれらのチャネル外の周波数とすることもできる。
【0017】
本発明は、基地局と端末機器との間、好ましくは基地局と複数の端末機器との間で、好ましくは狭帯域システムで行われる、双方向データ伝送のための方法であって、端末機器と基地局とが各々独自の周波数基準部を有し、端末機器と基地局とが各々少なくとも1つの無線チップを有し、周波数基準部が無線チップに接続されており、データが基地局と端末機器との間で異なる周波数で伝送される、特に請求項1から3のいずれか一項に記載の双方向データ伝送のための方法において、
無線チップの周波数に影響を与える効果が測定され、それによって周波数オフセットΔfchipが決定される、方法ステップと、
端末機器が、基地局から発信されたデータを受信する受信ウィンドウを開き、受信ウィンドウを開くための周波数オフセットΔfchipが考慮に入れられる、方法ステップと、
を有する方法を従属的に特許請求する。
【0018】
基地局と端末機器とは各々独自の周波数基準部を有する。これらの周波数基準部は、例えば、水晶発振器の形でプリント回路基板上に実装され得る。基地局と端末機器とは独自の無線チップをさらに含む。これらの無線チップは、通常、周波数基準部とは異なる集積回路(IC)とすることができる。周波数基準部は、通信を保証するために無線チップに接続されている。
【0019】
周波数に影響を与える効果は、例えば、無線チップのアーキテクチャから発し得る。周波数オフセットΔfchipを決定するために、例えば、使用されるチップのアーキテクチャを測定することができる。次いでこの値を、基地局または端末機器にしかるべく適切に格納することができる。端末機器から基地局への上りリンクデータ転送に続いて、端末機器は、有利には、受信ウィンドウを開くときに周波数オフセットΔfchipを考慮に入れることができる。基地局が端末機器へのデータ伝送時に周波数オフセットΔfchipを考慮に入れることも同様に可能である。周波数に影響を与える効果は、通常、それぞれの無線チップのすべてのバッチに対して同一であるため、使用される無線チップを有利には1回だけ測定することができる。
【0020】
基本送信周波数は適切に固定されていてもよく、事前に定義されていてもよい。基本送信周波数は、端末機器と基地局との間のデータ伝送時に端末機器によって定義されるが、基本送信周波数は、例えば、端末機器の製造時または設置時に、端末機器においてすでに定義されていてもよい。
【0021】
さらに、第1の端末機器送信周波数が、周波数公差ΔfTだけ基本送信周波数からずれる可能性がある。周波数公差ΔfTは、例えば温度の影響により発生する可能性がある。
【0022】
周波数公差ΔfTはさらに、基地局と端末機器との周波数基準部間のオフセットによって引き起こされる可能性もある。周波数基準部は、例えば水晶振動子であり得る。これらの水晶振動子が原因で、例えば、周波数誤りおよび/または時間誤りが発生する可能性がある。端末機器は、通常、基地局よりもこれらの誤りにより深刻な影響を受ける。基地局は、通常、固定されたエネルギー供給と、場合によっては追加の同期設備を有し得る。この周波数公差ΔfTは、例えば、水晶振動子の温度の影響、経年劣化、および/または製作公差によって引き起こされ、基地局と端末機器との間の周波数オフセットをもたらす。
【0023】
基本送信周波数を基地局に適切に知らせておくことができる。よって基地局は、決定された端末機器送信周波数に基づき、例えば、端末機器の基本送信周波数に対する周波数公差ΔfTを決定することができる。よって、例えば、端末機器へのデータの送信時または端末機器からのデータの受信時に簡単な方法で周波数公差ΔfTを考慮に入れることが可能である。
【0024】
周波数オフセットΔfup/downが事前に定義された固定値であれば、特に適切である。よって、基地局とすべての端末機器とが同じ周波数オフセットΔfup/downを使用し、したがって、同じ周波数を送信または受信にしかるべく使用するようにすることができる。有利には、周波数オフセットΔfup/downを、例えば、動作中の基地局と端末機器との間の周波数オフセットΔfup/downの不一致の起こり得る発生を防ぐために、固定する、すなわち、変更不可または容易に変更不可とすることができる。
【0025】
したがって、周波数オフセットΔfup/downが基地局と端末機器とに知られていることが特に適切である。
【0026】
端末機器は、有利には、干渉の影響を受ける周波数および/または干渉の影響を受ける周波数範囲が回避されるように、端末機器送信周波数を定義することができる。これを行うために、端末機器は、例えば、干渉源などを特定するために隠れノード検出を実行することができる。端末機器は、これに基づいて端末機器送信周波数を定義することができる。端末機器は、例えば、端末機器送信周波数を定義するために、周波数オフセットΔfoffsetを能動的に設定することができる。よって端末機器は、その環境からの干渉の影響に対して独立して応答でき、伝送品質を改善することができる。
【0027】
端末機器がそれ自体の送信電力を測定し、これに基づいて端末機器送信周波数を定義することも同様に有利である。送信電力の変動の原因は、例えば、干渉、シャドウイング、マルチパス伝播、またはドップラー効果によるフェージング効果であり得る。例えば、受信信号強度インジケータ(RSSI)をインジケータとして使用することができる。よって、例えば、下りリンクの最後のパケットのRSSI値を測定することができる。現在の周波数で正常に通信するための信号強度が得られない場合、より良い周波数に切り替えることが可能である。よって、端末機器送信周波数を対応して調整することにより、伝送品質を改善することができる。
【0028】
基地局は、有利には、端末機器の周波数公差ΔfTを組み込んでそれぞれの端末機器にデータを送信することができる。基地局は、例えば、端末機器の物理的最大可能周波数公差ΔfTを推定するかもしくは知っていてもよく、またはこれを基本送信周波数などに基づいて決定していてもよい。したがって、端末機器へのデータ伝送時に、端末機器の周波数公差ΔfTを考慮に入れることもできる。基地局は、例えば、端末機器の決定された周波数公差ΔfTを端末機器にさらに送信することができる。端末機器はそれによって、例えば、基地局に対するその水晶オフセットを考慮に入れることができる。
【0029】
端末機器が受信ウィンドウを開くための周波数公差ΔfTを考慮に入れることがさらに可能である。このために、端末機器は、例えば、その物理的最大可能周波数公差ΔfTを知っているか、または推定してもよい。さらに、基地局が端末機器の周波数公差ΔfTを決定しており、それを端末機器に送信している可能性もある。したがって、端末機器の受信ウィンドウを正確な周波数でより正確に開くことができる。
【0030】
本発明は、特に本発明の前記設計による、基地局と端末機器との間、好ましくは基地局と複数の端末機器との間で、好ましくは狭帯域システムで行われる、双方向データ伝送のためのさらなる方法であって、端末機器と基地局とが各々独自の周波数基準部を有し、データが基地局と端末機器との間で異なる周波数で伝送され、端末機器から基地局へのデータ伝送が上りリンク帯域の周波数で行われ、基地局から端末機器へのデータ伝送が下りリンク帯域の周波数で行われる、双方向データ伝送のためのさらなる方法において、
基地局が、決定された端末機器送信周波数に基づき、下りリンク帯域の幅を考慮に入れて端末機器にデータを送信する方法ステップと、
端末機器が、受信ウィンドウを開くための下りリンク帯域の幅を考慮に入れる方法ステップと、
を有する方法を従属的に特許請求する。
【0031】
端末機器から基地局への信号伝送は上りリンクと呼ばれ、基地局から端末機器への信号伝送は下りリンクと呼ばれる。上りリンクまたは下りリンクの可能な送信周波数は、上りリンク帯域または下りリンク帯域にしかるべく位置する。基本送信周波数と端末機器送信周波数とは、上りリンク帯域に適切にある。基地局は、下りリンク帯域で端末機器に返信し、下りリンク帯域を周波数オフセットΔfup/downだけ上りリンク帯域に対して適切にシフトさせることができる。
【0032】
上りリンク帯域が下りリンク帯域よりも広いことも可能である。この場合、端末機器送信周波数は上りリンク帯域内に位置するが、基地局が返信する周波数オフセットΔfup/downだけシフトされた対応する周波数は下りリンク帯域外に位置する事例が発生し得る。その場合に上りリンク帯域を十分に利用できるようにするために、基地局の送信周波数は、下りリンク帯域外に位置する限り、下りリンク帯域に再び位置するように調整される。基地局の送信周波数を、例えば、周波数オフセットΔfwrapだけ補完することができる。周波数オフセットΔfwrapは、基地局の結果として得られる送信周波数が下りリンク帯域内に位置するように選択される。よって、狭帯域システムで利用可能な帯域(上りリンク帯域または下りリンク帯域)を効率的に利用すると同時に伝送品質を改善する可能性が生まれる。加えて、端末機器は、Δfup/downおよび/またはΔfoffsetおよび/またはΔf’offsetを考慮して、基地局の送信周波数が下りリンク帯域外に位置する可能性があるかどうかを確認することができる。端末機器はその受信ウィンドウを、下りリンク帯域内の周波数でしかるべく開く。このために、端末機器は、周波数オフセットΔfwrapを適切に考慮に入れることができる。したがって、周波数オフセットΔfwrapが事前に定義されていることおよび/または基地局と端末機器とが周波数オフセットΔfwrapを知っていることが特に適切であり得る。
【0033】
好ましくは、最大可能周波数公差ΔfT,maxを、端末機器と基地局とに格納することができる。端末機器の水晶振動子誤差と基地局の水晶振動子誤差とを組み込むことによって最大周波数公差ΔfT,maxを適切に決定することができる。また端末機器および基地局は、基地局の送信周波数が周波数範囲外にあるかどうかを確認するときに周波数公差ΔfT,maxを組み込むこともできる。最大周波数公差ΔfT,maxを考慮に入れた基地局の送信周波数が下りリンク帯域外に位置する限り、例えば、周波数オフセットΔfwrapを、受信ウィンドウを開いている間または伝送時にさらに考慮に入れることができる。
【0034】
基地局と端末機器とは、上りリンク帯域の位置および下りリンク帯域の位置を適切に知っていることが可能である。端末機器と基地局とが上りリンク帯域と下りリンク帯域の位置を知っていれば、端末機器と基地局とが、受信ウィンドウを開いている間またはデータの伝送時に同様に下りリンク帯域の幅を考慮に入れることが確実になる。
【0035】
占有周波数帯域幅は、ETSI EN 300 220-1 V3.1.1規格で、伝送の総平均電力の99%が位置する周波数範囲として定義されている。好ましくは狭帯域システムで行われる双方向データ伝送のチャネルは、1kHz~25kHz、好ましくは2kHz~6kHz、好ましくは3kHz~5kHzの範囲のチャネル帯域幅を有することができる。よって、利用可能な帯域幅の効率的な利用を確保できるので、チャネル容量、したがって基地局ごとの可能な端末機器の数が増加する。
【0036】
好ましくは狭帯域システムで行われる双方向データ伝送のチャネルは、0.5kbaud~20kbaud、好ましくは0.5kbaud~6kbaudの範囲のシンボルレートを適切に有することができる。
【0037】
端末機器の周波数公差ΔfTがチャネルの帯域幅よりも大きい可能性がある。周波数公差ΔfTは温度に依存する。狭帯域システムでは、チャネルは、送信機と受信機との水晶振動子の許容誤差をかなり下回り得る狭い帯域幅を有する。信号の感度に悪影響を及ぼし、ノイズを増加させる広いフィルタへの依存を回避するために、端末機器送信周波数は、上りリンクの双方向システムにおいて決定され、基地局送信周波数を設定する際に下りリンクで考慮に入れられる。よって、端末機器送信周波数と基地局送信周波数とを基本送信周波数から導出することにより、伝送品質を改善することができる。
【0038】
端末機器の周波数公差ΔfTは、1ppm~100ppm、好ましくは3ppm~50ppm、好ましくは5ppm~30ppmの範囲内に位置し得る。
【0039】
基地局は、受信周波数を少なくとも3回適切に調整することができ、かつ/または受信ウィンドウを3倍の周波数帯域幅で開くことができる。よって、送信されたデータが基地局で受信されるようにすることができる。受信ウィンドウが3倍の周波数帯域幅で開かれる限り、送信周波数を、例えば高速フーリエ変換(FFT)によって決定することができる。
【0040】
有利には基地局と端末機器との間の同期シーケンスを延長する、好ましくは3倍にすることができる。それによって端末機器と基地局との同期を簡素化することができ、その結果、基地局によるデータ受信を確実にすることができる。
【0041】
チャネルの帯域幅と端末機器の周波数公差ΔfTとの比率は、有利には3未満であり得る。ISM帯域において、例えば25kHzのチャネル帯域幅および例えば30ppmの水晶振動子の周波数公差ΔfTで、868MHzの搬送波周波数の場合、25kHz対26.04kHzの比率が生じる。これにより、例えば、0.96のおおよその比率が得られる。
【0042】
本発明の適切な設計について図面を参照して以下で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】基地局の装置および端末機器の装置を示す非常に簡略化された概略図である。
【
図2a】周波数オフセットΔf
up/downおよび周波数オフセットΔf
offsetを有する基地局と端末機器との間の上りリンクおよび下りリンクを示す非常に簡略化された概略図である。
【
図2b】周波数オフセットΔf
up/downおよび周波数オフセットΔf
offsetを有する基地局と端末機器との間の上りリンクおよび下りリンクを示す非常に簡略化された概略図である。
【
図3】3つのチャネルについての基地局と端末機器との間の上りリンクおよび下りリンクを示す非常に簡略化された概略図である。
【
図4】周波数オフセットΔf
chipを有する基地局と端末機器との間の上りリンクおよび下りリンクを示す非常に簡略化された概略図である。
【
図5a】帯域限界および周波数範囲を有する上りリンクおよび下りリンクを示す非常に簡略化された概略図である。
【
図5b】帯域限界および周波数範囲を有する上りリンクおよび下りリンクを示す非常に簡略化された概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1の参照番号101は、基本送信周波数201に対して周波数オフセットΔf
offsetを有する端末機器送信周波数202で、上りリンク207において、端末機器102によって送信された信号を受信するための装置103を備えた基地局を表す。基地局101は、端末機器送信周波数202を決定するための装置104をさらに有する。下りリンク208で端末機器102に信号を送信するための装置105も同様に基地局101の一部を形成する。端末機器102への信号は、下りリンク208において基地局送信周波数203で送信される。ここで、基地局送信周波数は、周波数オフセットΔf
up/downによって補完されている決定された端末機器送信周波数202である。基地局101の3台の装置103、104、105は、内部で接続されている。
【0045】
各事例に示されている3台の端末機器102は、端末機器送信周波数202で信号を送信するための装置107と、基地局送信周波数203で基地局101によって送信された信号を受信するための装置106とを含む。送信のための端末機器102の装置107から受信のための基地局101の装置103を指し示す3本の矢印によって示されている上りリンク207の信号は、対応する端末機器送信周波数202で送信される。送信のための基地局101の装置105から受信のための端末機器102の装置106への下りリンク208の信号は、基地局送信周波数203で送信される。端末機器送信周波数202と、対応する基地局送信周波数203とは、個々の端末機器102ごとに異なり得る。特に、複数の端末機器102の場合、個々の端末機器102の端末機器送信周波数202が、送信中に互いに干渉しないように互いに異なっていれば、特に有利である。対応する基地局送信周波数203も同様に互いに異なる。異なる端末機器送信周波数202は、好ましくは、上りリンク帯域209に位置し、対応する基地局送信周波数203は下りリンク帯域210に位置する。
【0046】
図2a~
図2bに、異なる周波数オフセットΔf
up/down、Δf
offsetおよびΔf
Tを有する基地局101と端末機器102との間の上りリンク207および下りリンク208を示す。
【0047】
図2aに、上りリンク207における基本送信周波数201および端末機器送信周波数202を示す。端末機器送信周波数202は、周波数オフセットΔf
offsetを有する。周波数オフセットΔf
offsetは、端末機器102が端末機器送信周波数202を変更することによって定義することができる。端末機器送信周波数202を変更する1つの理由は、例えば、端末機器102が、例えば隠れノード検出によって特定した異なる干渉源であり得る。端末機器送信周波数202の変更は、例えば、代替としてまたはこれに加えて、端末機器102の実際の送信電力の測定に基づいてさらに行われてもよい。基地局送信周波数203は下りリンク208に示されている。端末機器送信周波数202に基づき、基地局送信周波数203は周波数オフセットΔf
up/downだけシフトされている。
【0048】
本発明の代替の設計または展開において、端末機器102は、システム公差または格納された最大可能周波数公差Δf
T,maxを考慮に入れる。
図2bには、第1の周波数オフセット211が、基本送信周波数201の前後の周波数公差Δf
Tの範囲として示されている。周波数公差Δf
Tは、上りリンク207および下りリンク208の基地局送信周波数203でも考慮に入れられる。最大周波数公差Δf
Tを、端末機器102と基地局101とに適切に知らせておくことができる。周波数公差Δf
Tはさらに、ここでは、狭帯域システムのチャネルの帯域幅206よりも大きい。
【0049】
図3に、3つのチャネル1、2、3および1‘、2‘、3‘についての例として、基地局101と端末機器102との間の上りリンク207および下りリンク208を示す。端末機器102は、デフォルトでは、基本送信周波数201で、1つのチャネル1のみの上りリンク207で送信する。端末機器102が異なるチャネル、例えばチャネル2で送信しようとする場合、端末機器102は、対応する周波数オフセットΔf
offsetで補完された基本送信周波数201を仮定する。チャネル1では、周波数オフセットΔf
offsetはこの例では0Hzに対応する。この場合、したがって端末機器送信周波数202は基本送信周波数201と等しい。チャネル2では、周波数オフセットΔf
offsetは0Hzと等しくなく、したがって端末機器送信周波数202は基本送信周波数201と等しくない。別のチャネル、ここでは、例えばチャネル3では、周波数オフセットはΔf’
offsetである。周波数オフセットΔf
offsetは、周波数オフセットΔf’
offsetと等しくない場合がある。基地局101は、端末機器102から信号を受信し、端末機器送信周波数202を決定する。よって、端末機器が送信した、または送信しようとしたチャネルは、基地局101には無関係である。下りリンク208では、基地局101は、決定された端末機器送信周波数202に対して周波数オフセットΔf
up/downを有する基地局送信周波数203で端末機器102に信号を送り返す。周波数オフセットΔf
up/downは、例えば、上りリンク帯域209から下りリンク帯域210への周波数オフセットを記述し得る。周波数オフセットΔf
up/downは、例えば、事前に定義されており、基地局101と端末機器102とに知られている。端末機器102は、端末機器102がその基本送信周波数201を周波数オフセットΔf
offsetまたはΔf’
offsetおよびΔf
up/downで補完することによって受信する周波数で受信ウィンドウを開く。
【0050】
1つの具体例では、端末機器102は、868.17MHzの周波数でチャネル1の上りリンク208で送信する。温度などの外部の影響による周波数オフセットが発生しない、すなわち、周波数公差ΔfTが考慮に入れられないと仮定して、端末機器102は868.17MHzの実周波数で送信する。この例では、基本送信周波数201は868.17MHzであり、このため、ここでの周波数オフセットΔfoffsetは0Hzである。基地局101は信号を受信し、端末機器送信周波数202を868.17MHzとして決定する。端末機器送信周波数に基づき、基地局101は、この例では1.4MHzである周波数オフセットΔfup/downを付加する。よって基地局101は、例えば、リターンチャネル1‘に対応する下りリンク208において869.57MHzの基地局送信周波数203で端末機器102に返信する。この端末機器102は、端末機器送信周波数202に周波数オフセットΔfup/downを同様に付加し、それに対応して869.57MHzで受信ウィンドウを開いている。よって端末機器102は、下りリンク208で基地局101の信号を受信することができる。
【0051】
さらなる例では、この端末機器102は、チャネル2で、例えば868.21MHzの周波数で送信しようとしている。外部の影響による周波数オフセットが発生しないという同じ仮定の下で、端末機器102は868.21MHzの実周波数で送信する。この例の基本送信周波数201は868.17MHzであるため、したがって周波数オフセットΔfoffsetは40kHzである。端末機器102は、868.17MHzの基本送信周波数201と40kHzの周波数オフセットΔfoffsetの和から導出される868.21MHzの端末機器送信周波数202に1.4MHzの周波数オフセットΔfup/downを付加し、ここではリターンチャネル2‘として表されている869.61MHzで受信ウィンドウを開く。基地局101は、端末機器102から信号を受信し、端末機器送信周波数202を868.21MHzとして決定する。基地局101はそれに対応して、869.61MHzの基地局送信周波数203で送信する。よって端末機器102は、下りリンク208のリターンチャネル2‘で基地局101の信号を受信することができる。
【0052】
この例では、チャネルは互いに40kHzの間隔を有する。チャネルの帯域幅206は、1kHz~20kHz、好ましくは2kHz~6kHz、好ましくは3kHz~5kHzの範囲内に適切に位置し得る。
【0053】
図4に、上りリンク207の基本送信周波数201および端末機器送信周波数202を示す。端末機器送信周波数202は、基本送信周波数201に対して周波数オフセットΔf
offsetを有する。無線チップの周波数に影響を与える効果により、周波数オフセットΔf
chipがさらに発生する。基地局または端末機器で周波数オフセットΔf
chipを考慮に入れることができるので、Δf
chipは一方的に考慮に入れられる。本例では、Δf
chipが端末機器で考慮に入れられる。ここで、Δf
chip,TXは送信時の端末機器の無線チップによる周波数誤差を表し、Δf
chip,RXは受信時の端末機器の無線チップによる周波数誤差を表す。したがって端末機器は、Δf
chip,TXの補正なしで端末機器送信周波数202bで送信する。基地局送信周波数203は下りリンク208に示されている。Δf
chip,TXの補正なしの端末機器送信周波数202bに基づき、基地局送信周波数203は、周波数オフセットΔf
up/downだけシフトされる。例えば、868MHzの基地局送信周波数203が、端末機器で設定されることが意図される。しかしながら、決定された周波数オフセットΔf
chipは、例えば0.000300MHzであるので、端末機器は、Δf
chipの補正なしで868.000300MHzの基地局送信周波数203bでその受信ウィンドウを開くことになる。端末が、その受信ウィンドウを開くときに、受信ウィンドウを開くための周波数オフセットΔf
chipを考慮に入れる場合、端末機器はその受信ウィンドウを、Δf
chipの補正ありの868.000000MHzの基地局送信周波数203aで開くことになる。周波数オフセットΔf
chipを単独で、または周波数オフセットΔf
offsetおよび/または周波数オフセットΔf
up/downと組み合わせて考慮に入れることが可能である。
【0054】
図5a~
図5bに、帯域限界205および周波数範囲204の指示を有する上りリンク207および下りリンク208を示す。上りリンク帯域209は、例えば、ここでは下りリンク帯域210よりも広い。例えば温度などの外部の影響により発生する周波数公差Δf
Tが、チャネルごとに想定される。よって、より狭い下りリンク帯域210は周波数範囲204aを生じ、その限界は、周波数公差の半分Δf
T,max/2に相当する下りリンク帯域210の帯域限界205からの距離を有する。上りリンク帯域209内の周波数範囲204bは、周波数オフセットΔf
up/downだけ下りリンク帯域210の周波数範囲204aからシフトされている。
【0055】
図5aに、上りリンク207の2つのチャネル(チャネル1、2)と、下りリンク208のそれらに対応するリターンチャネル(チャネル1‘、2‘)を示す。どちらもチャネルも、対応する周波数公差Δf
Tを伴って示されている。上りリンク207のチャネルの周波数が周波数範囲204b内に位置する場合、周波数オフセットΔf
up/downだけシフトされたリターンチャネル(チャネル1‘、2‘)の対応する周波数を周波数範囲204a内で使用することができる。基地局101と端末機器102とは、上りリンク207および下りリンク208における帯域限界205の位置を知っている。加えて、可能な周波数公差Δf
Tは、知られていてもよく、または最大可能周波数公差Δf
T,maxとして推定されていてもよい。よって、下りリンク208または上りリンク207における周波数範囲204aまたは204bの位置も、基地局101と端末機器102とに知られている。周波数範囲204aまたは204bは、下りリンク帯域210または上りリンク帯域209の帯域限界205内にある。
【0056】
1つの具体例では、下りリンク帯域210は、基地局101と端末機器102とが知っている869.4MHzおよび869.65MHzの帯域限界の250kHzの幅を有する。上りリンク帯域209は、例えば868.0MHzおよび868.6MHzにその帯域限界を有し、600kHzの幅であり、下りリンク帯域210よりも広い。可能な周波数公差ΔfTは、さらに知られているか、または±30kHzの最大値として推定されている。したがって、下りリンク帯域210における周波数範囲204aの限界は、869.43MHzおよび869.62MHzにある。周波数オフセットΔfup/downは1.4MHzである。端末機器102は、例えば、868.19MHzの端末機器送信周波数202のチャネル1で送信する。これは、周波数オフセットΔfup/downだけシフトされた、したがって周波数範囲204a内にある869.59MHzの基地局送信周波数203に対応する。端末機器102はこれを認識し、追加の周波数オフセット、例えば周波数オフセットΔfwrapで基地局送信周波数203を補完する必要がないとみなす。端末機器102は、結果として、869.59MHzの基地局送信周波数203でその受信ウィンドウを開く。基地局101は、同様に、基地局送信周波数203が周波数範囲204a内に位置するように追加の周波数オフセットによって補完される必要がないと認識する。基地局101は、869.59MHz(チャネル1‘)の基地局送信周波数203で端末機器102に返信する。
【0057】
図5bのチャネル3は、上りリンク帯域209の周波数範囲204b外に位置する。よって、周波数公差Δf
Tを組み込んだ基地局送信周波数203を有する対応するリターンチャネル(チャネル3‘)は、下りリンク帯域210外に位置する可能性がある。これを回避するために、基地局送信周波数203は、結果として得られる基地局送信周波数203(チャネル3‘‘)が周波数範囲204a内に位置するように、したがって、下りリンク帯域210内の周波数公差Δf
T考慮に入れて周波数オフセットΔf
wrapで補完される。周波数オフセットΔf
wrapは、周波数範囲204の幅に適切に対応することができる。周波数オフセットΔf
wrapが必要とされる場合、基地局101は、決定された端末機器送信周波数202に基づいて周波数オフセットΔf
up/downおよび追加の周波数オフセットΔf
wrapで補完された基地局送信周波数203で送信する。端末機器102も同様に、追加の周波数オフセットΔf
wrapを有する基地局送信周波数203でその受信ウィンドウを開く。
【0058】
端末機器102は、例えば、868.24MHzの端末機器送信周波数202のチャネル3で送信する。したがって、周波数オフセットΔfup/downだけシフトされた869.64MHzの対応する基地局送信周波数203(リターンチャネル3‘)は、依然として869.65MHzの下りリンク帯域210の上限帯域205より下に位置することになる。しかしながら、実際の端末機器送信周波数202および対応する基地局送信周波数203は、周波数公差ΔfTのために最大で30kHz高くなる可能性がある。したがって、最大で869.67MHzの値を有する実際の基地局送信周波数203が下りリンク帯域210外に位置する可能性もある。869.62MHz以上のすべての基地局送信周波数203は、それに対応して追加の周波数オフセットΔfwrapで補完される。周波数オフセットΔfwrapは、ここでは、例えば、周波数範囲204の幅に対応する。周波数範囲204は、例えば、250kHzの下りリンク帯域210の幅から60kHzの周波数公差ΔfTを引いたものに対応する190kHzの幅を有する。したがって、結果として得られる基地局送信周波数203は869.45MHz(リターンチャネル3‘‘)である。基地局101は、結果として、869.45MHzの基地局送信周波数203で信号を送信し、端末機器102は、869.45MHzの基地局送信周波数203で同様にその受信ウィンドウを開く。
【符号の説明】
【0059】
1 チャネル1
1‘ チャネル1へのリターンチャネル
2 チャネル2
2‘ チャネル2へのリターンチャネル
3 チャネル3
3‘,3‘‘ チャネル3へのリターンチャネル
101 基地局
102 端末機器
103 受信のための基地局の装置
104 決定のための基地局の装置
105 送信のための基地局の装置
106 受信のための端末機器の装置
107 送信のための端末機器の装置
201 基本送信周波数
202 端末機器送信周波数
202a さらなる端末機器送信周波数
202b Δfchip,TXの補正なしの端末機器送信周波数
203 基地局送信周波数
203a 基地局送信周波数、Δfchipの補正ありの端末機器受信ウィンドウ
203b 基地局送信周波数、Δfchipの補正なしの端末機器受信ウィンドウ
204 周波数範囲
205 帯域限界
206 帯域幅
207 上りリンク
208 下りリンク
209 上りリンク帯域
210 下りリンク帯域