(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】有機半導体層を含む有機電子素子
(51)【国際特許分類】
C07D 251/24 20060101AFI20230901BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20230901BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20230901BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20230901BHJP
C07D 405/04 20060101ALI20230901BHJP
C07D 409/04 20060101ALI20230901BHJP
C07D 401/10 20060101ALI20230901BHJP
C07D 405/14 20060101ALI20230901BHJP
C07F 5/02 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
C07D251/24
H05B33/22 B
H05B33/14 B
H05B33/22 D
C07D405/04 CSP
C07D409/04
C07D401/10
C07D405/14
C07F5/02 A
(21)【出願番号】P 2020520509
(86)(22)【出願日】2018-10-09
(86)【国際出願番号】 EP2018077493
(87)【国際公開番号】W WO2019072856
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-08-26
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503180100
【氏名又は名称】ノヴァレッド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ガラン,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】カルディナリ,フロンソワ
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ,ベンヤミン
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-509954(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0111780(KR,A)
【文献】Ouyang, Mi et al.,Synthesis and characterization of new 1,3,5-triazine-based compounds exhibiting aggregation-induced emission an mechanochromism,Wuli Huaxue Xuebao (Acta Phys. -Chim. Sin.),2012年,28(12),,2944-2952
【文献】Zhu, Linna et al.,Aggregation-induced Emission and Aggregation Promoted Photo-oxidation in Thiophene-substituted Tetraphenylethylene Derivative,Chemistry - An Asian Journal,2016年,11(20),,2932-2937
【文献】Tasso, Thiago Teixeira et al.,Dinitriles Bearing AIE-Active Moieties: Synthesis, E/Z Isomerization, and Fluorescence Properties,Chemistry - A European Journal,2015年,21(12),,4817-4824
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
H10K 50/16
H10K 50/10
H10K 50/15
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機電子素子のための層材料として使用するための、式Iによる化合物:
【化1】
X
1~X
20は、独立して、N、C-H、C-R
1、C-Zから選択され、
少なくとも一つのX
1~X
20がC-Zであり;または少なくとも一つのX
1~X
20がC-Zであり、かつ少なくとも一つのX
1~X
20がC-R
1であり;
R
1は、-NR
2R
3または-BR
2R
3から選択され;
R
2およびR
3は、独立して選択されるC
6-24のアリールまたはC
2-20のヘテロアリールであり;
Zは式IIIを有し:
【化2】
Ar
2は、式F2~F16から選択され:
【化3】
mは、1、2または3から選択され
る。
【請求項2】
式Iの化合物は、少なくとも5~20個の芳香族環を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式Iの化合物は、芳香族環A、B、CおよびDの全てを含み、前記芳香族環A、B、C、Dのうちの少なくとも1つの芳香族環は、前記芳香族環A、B、C、Dのうち、当該少なくとも1つの芳香族環以外の芳香族環の置換基とは異なる置換基によって置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式Iの化合物は、その鏡像上に重なり合わない、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
式Iの化合物は、芳香族環A、B、C、Dから構成されるテトラアリールエチレン基(TAE)であって、
X
1
~X
20
は、独立して、C-H、C-R
1
、C-Zから選択されるテトラアリールエチレン基(TAE)を1個含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式Iの化合物は、芳香族環A、B、C、Dから構成されるテトラアリールエチレン基(TAE)であって、
X
1
~X
20
の少なくとも一つがNであるテトラアリールエチレン基(TAE)を1個含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
有機電子素子のための層材料として使用するための、G1~G28から選択される、化合物。
【化5】
【請求項8】
有機半導体層を含む有機電子素子であって、少なくとも一つの有機半導体層が、請求項
1に記載の式Iの化合物を含む、有機電子素子。
【請求項9】
前記有機半導体層において、前記有機電子素子からの可視発光スペクトルに対する前記化合物または前記有機半導体層の寄与が可視発光スペクトルに対して10%未満であり、前記可視発光スペクトルは、380nm以上、780nm以下の波長を有する発光スペクトルである、請求項8に記載の有機電子素子。
【請求項10】
前記有機半導体層は、電子輸送層、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子阻止層、正孔阻止層または電子注入層である、請求項8に記載の有機電子素子。
【請求項11】
前記有機半導体層は、光活性層とカソード層との間に配置される、請求項8に記載の有機電子素子。
【請求項12】
前記少なくとも一つの有機半導体層が、少なくとも一つのアルカリハロゲン化物またはアルカリ有機錯体をさらに含む、請求項8に記載の有機電子素子。
【請求項13】
前記電子素子は、少なくとも一つの有機半導体層と、少なくとも一つのアノード層と、少なくとも一つのカソード層と、少なくとも一つの発光層とを含む、請求項8に記載の有機電子素子。
【請求項14】
前記電子素子は、発光素子、薄膜トランジスタ、バッテリー、表示素子または光電池である、請求項8に記載の有機電子素子。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、電子素子用の層材料としての使用のための化合物、およびその層材料を含む有機電子素子、ならびにその製造方法に関する。
【0002】
従来の技術
自己発光素子である有機発光ダイオードOLEDのような有機電子素子は、広い視野角、優れたコントラスト、迅速な応答性、高輝度、優れた動作電圧特性、および色再現性を有する。典型的なOLEDは、アノード、正孔輸送層HTL、発光層EML、電子輸送層ETL、およびカソードを含み、これらは基板上に順次積層される。なお、HTL、EML、ETLは、有機化合物からなる薄膜である。
【0003】
アノードとカソードに電圧が印加されると、アノードから注入された正孔は、HTLを介してEMLに移動し、カソードから注入された電子は、ETLを介してEMLに移動する。正孔および電子は、EML内で再結合して励起子を生成する。励起子が励起状態から基底状態に落ちると、光が放出される。正孔と電子の注入と流量は、このような構造を有するOLEDが優れた効率および/または長い寿命を有するように、バランスを取らさなければならない。
【0004】
有機発光ダイオードの性能は、有機半導体層の特性に影響される可能性があり、中でも有機半導体層の有機材料の特性に影響される可能性がある。
【0005】
特に、電子移動度を高め、同時に電気化学的安定性を高めることが可能な有機材料のための開発は、有機発光ダイオードのような有機電子素子が大型フラットパネルディスプレイに適用され得るために、必要である。
【0006】
有機半導体層、有機半導体材料、ならびにその有機電子素子の性能を改善すること、特に、その中に含まれる化合物の特性を改善することによってより高い効率を達成することが必要とされている。
【0007】
特に、代替の有機半導体材料および有機半導体層、ならびに低動作電圧で改善された効率を有する有機電子素子が必要とされている。
【0008】
高められた効率を有するとともに、同時に動作電圧を、それによって電力消費を低く抑えて、例えばモバイル電子素子のための長い電池寿命をもたらす代替化合物が必要とされている。
【0009】
[発明を実施するための形態]
発明の開示
本発明の一態様は、有機電子素子の層材料として使用するための、式Iによる化合物を提供する:
【0010】
【0011】
ここで、
X1~X20は、独立して、N、C-H、C-R1、C-Zから選択され、および/または化学結合によって互いに接続されているX1~X5、X6~X10、X11~X15、X16~X20の少なくとも二つが架橋してアネレート化された芳香族環またはアネレート化されたヘテロ芳香族環を形成し、かつ、
少なくとも一つのX1~X20がC-Zであり;または少なくとも一つのX1~X20がC-Zであり、かつ少なくとも一つのX1~X20がC-R1であり;
R1は、-NR2R3または-BR2R3から選択され;
R2およびR3は、独立して選択されたC6-24のアリールおよびC2-20のヘテロアリールであり;
Zは式IIの置換基であり:
【0012】
【0013】
Ar1は、置換または非置換トリアジン環であり、
置換トリアジン環の置換基は、独立して、C1-20の直鎖状のアルキル、C3-20の分枝状のアルキルまたはC3-20のシクロアルキル、C1-12の直鎖状のフッ化アルキル、C1-12の直鎖状のフッ化アルコキシ、C3-12の分枝状のフッ化アルキル、C3-12の分枝状のフッ化アルコキシ、C3-12のシクロフッ化アルキル、C3-12のシクロフッ化アルコキシ、OR、SR、(P=O)R2または、X1~X20がC-Zではないことを除く式1、から選択され;
Ar2は、独立して
X1~X20がC-Zではないことを除く式I、
置換または非置換のC6-60のアリールおよび置換または非置換のC2~C60のヘテロアリール;
から選択され:
置換または非置換のC6-60のアリールおよびC2~C60のヘテロアリールは、独立して、C1~C20の直鎖状のアルキル、C3~C20の分枝状のアルキル、C3~C20のシクロアルキル、C1~C20の直鎖状のアルコキシ、C3~C20の分枝状のアルコキシ;C1~C12の直鎖状のフッ化アルキル、またはC1~C12の直鎖状のフッ化アルコキシ;C3~C12の分枝状のシクロフッ化アルキル、C3~C12のシクロフッ化アルキル、C3~C12のシクロフッ化アルコキシ;ニトリル;OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2;から選択され;
Rは、C1~C20の直鎖状のアルキル、C1~C20のアルコキシ、C1~C20のチオアルキル、C3~C20の分枝状のアルキル、C3~C20のシクロアルキル、C3~C20の分枝状のアルコキシ、C3~C20のシクロアルコキシ、C3~C20の分枝状のチオアルキル、C3~C20のシクロチオアルキル、C6~C20のアリール、およびC3~C20のヘテロアリールであり;
mは、1、2または3から選択される。
【0014】
一実施形態によれば、芳香環A、B、CおよびDの少なくとも一つは、単結合を介してトリアジン環に連結されていてもよい。
【0015】
一実施形態によれば、芳香環A、B、Cおよび/またはDのいずれも、互いに直接架橋していなくてもよく、アネレート化された芳香環またはアネレート化されたヘテロ芳香環を形成しなくてもよい。
【0016】
ここで使用されるように、m=1は、Ar1が一つのAr2置換基で置換されていることを意味する。
【0017】
ここで使用されるように、m=2は、Ar1が二つのAr2置換基で置換されていることを意味する。
【0018】
ここで使用されるように、m=3は、Ar1が三つのAr2置換基で置換されていることを意味する。
【0019】
別の態様によれば、層材料は、有機電子素子に使用される有機半導体層とすることができる。例えば、有機電子素子は、OLED等であってもよい。
【0020】
別の実施形態によれば、Zは、少なくとも5個のC6アリール環を含み、または好ましくは、Zは、少なくとも5個のC6アリール環および少なくとも1個の6員N-ヘテロアリール環を含む。
【0021】
別の実施形態によれば、Zは、少なくとも6個のC6アリール環を含み、または好ましくは、Zは、少なくとも6個のC6アリール環および少なくとも1個の6員N-ヘテロアリール環を含む。
【0022】
別の実施形態によれば、Zは、少なくとも7個のC6アリール環を含み、または好ましくは、Zは、少なくとも7個のC6アリール環および少なくとも1個の6員N-ヘテロアリール環を含む。
【0023】
別の実施形態によれば、Zは、少なくとも8個のC6アリール環を含み、または好ましくは、Zは、少なくとも8個のC6アリール環および少なくとも1個の6員N-ヘテロアリール環を含む。
【0024】
別の実施形態によれば、Zは、少なくとも9個のC6アリール環を含み、または好ましくは、Zは、少なくとも9個のC6アリール環および少なくとも1個の6員N-ヘテロアリール環を含む。
【0025】
別の実施形態によれば、Zは、少なくとも10個のC6アリール環を含み、または好ましくは、Zは、少なくとも10個のC6アリール環および少なくとも1個の6員N-ヘテロアリール環を含む。
【0026】
一態様によれば、層材料は、有機電子素子に使用される有機半導体層とすることができる。例えば、有機電子素子は、OLED等であってもよい。
【0027】
式Iの一実施形態によれば、A、B、CおよびDアリーレン環の少なくとも一つはC-Zによって置換されている、非置換または置換のA、B、CおよびDアリーレン環および/またはヘテロアリーレン環は、式Iの置換テトラアリールエチレン化合物(TAE)を形成するエチレン基に、単結合を介して各々結合している。
【0028】
式IIの一実施形態によれば、Ar1およびAr2は、単結合を介して結合される。
【0029】
式1で表される化合物は、電荷移動度および/または安定性を高めることにより、輝度効率、電圧特性、および/または寿命特性を向上させる強い電子輸送特性を有する。
【0030】
式Iで表される化合物は、電子移動度が高く、動作電圧が低い。
【0031】
有機半導体層は、非発光性であってもよい。
【0032】
本明細書の文脈において、「本質的に非発光」または「非発光」との用語は、素子からの可視発光スペクトルに対する化合物または層の寄与が可視発光スペクトルに対して10%未満、好ましくは5%未満であることを意味する。可視発光スペクトルは、約380nm以上、780nm以下の波長を有する発光スペクトルである。
【0033】
好ましくは、式Iの化合物を含む有機半導体層は、本質的に非発光性または非発光性である。
【0034】
「有さない(free of)」、「含まない(does not contain)」、「備えない(does not comprise)」という記載は、堆積前の化合物に存在し得る不純物を排除しない。不純物は、本発明によって達成される目的に対して技術的な効果を有さない。
【0035】
動作電圧は、同じくUと命名され、10ミリアンペア/平方センチメートル(mA/cm2)で、ボルト(V)で測定される。
【0036】
アンペア当たりのカンデラ効率は、cd/A効率とも名付けられ、10ミリアンペア/平方センチメートル(mA/cm2)におけるアンペア当たりのカンデラで測定される。
【0037】
外部量子効率は、EQEとも命名され、パーセント(%)で測定される。
【0038】
色空間は、座標CIE-xおよびCIE-y(International Commission on Illumination 1931)によって記述される。青色発光については、CIE-yが特に重要である。より小さいCIE-yは、より深い青色を示す。
【0039】
HOMOとも命名される最高占有分子軌道、および、LUMOとも命名される最低非占有分子軌道は、電子ボルト(eV)で測定される。
【0040】
用語「OLED」、「有機発光ダイオード」、「有機発光素子」、「有機光電子素子」および「有機発光ダイオード」は、同時に使用され、同じ意味を有する。
【0041】
「遷移金属」という用語は、周期律表の3~12族元素を含む、周期律表のd-ブロック中の任意の元素を意味し、含む。
【0042】
「第III族~第VI族金属」という用語は、周期律表の第III族~第VI族の任意の金属を意味し、含む。
【0043】
「寿命(life-span)」および「寿命(有効期間、lifetime)」という語は同時に用いられ、同じ意味を持つ。
【0044】
ここでいう「重量パーセント」、「wt%」、「重量でのパーセント」、「重量での%」およびそれらの変形は、それぞれの電子輸送層の組成、組成物、物質または剤の重量をその組成の総重量で除し、100を掛けたものをいう。それぞれの電子輸送層のすべての成分、物質または薬剤の総重量パーセント量は、100wt%を超えないように選択されることが理解される。
【0045】
ここでいう「体積パーセント」、「vol.-%」、「体積でのパーセント」、「体積での%」およびその変形は、元素金属、組成物、成分、物質または剤を、その元素金属、成分、物質または剤、成分または剤の体積を、それぞれの電子輸送層の総体積で除し、100を乗じたものをいう。それぞれのカソード電極層のすべての元素金属、成分、物質または薬剤の総体積パーセント量は、100vol%を超えないように選択されることが理解される。
【0046】
本明細書において、数値はすべて、明示の有無を問わず、「約」という語によって修飾されていると見なされる。本明細書において、「約」という語は、数量において起こり得る変動を意味する。
【0047】
「約」という語による修飾の有無を問わず、本願請求項は前記量に対する均等物を含む。
【0048】
本明細書および添付の請求項において、単数形「a」、「an」、「the」は、明確な断りがない限り、複数の対象を含むことに留意されたい。
【0049】
アノード電極およびカソード電極は、アノード電極/カソード電極、またはアノード電極/カソード電極、またはアノード電極層/カソード電極層と記載してよい。
【0050】
別の一態様によれば、有機光電子素子は、互いに対向するアノード層およびカソード層、ならびに該アノード層およびカソード層の間にある少なくとも一つの有機半導体層を含んでおり、該有機半導体層は式Iの化合物を含むまたは式Iの化合物からなる。
【0051】
さらに別の一態様によれば、有機電子素子(有機光電子素子であり得る)を備える表示素子が提供される。
【0052】
本明細書において、他に定義されていない場合、「アルキル基」は脂肪族炭化水素基を意味し得る。アルキル基は、二重結合または三重結合を有しない「飽和アルキル基」を意味し得る。
【0053】
アルキル基は、C1~C20アルキル基、または好ましくはC1~C12アルキル基でよい。より具体的には、アルキル基はC1~C20アルキル基、または好ましくはC1~C10アルキル基もしくはC1~C6アルキル基でよい。例えば、C1~C4アルキル基は、アルキル鎖に一つ~四つの炭素を含み、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルから選択されてもよい。
【0054】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0055】
本明細書において、他に定義されていない場合、Rは、独立して、直鎖状のC1~C20アルキル、C1~C20アルコキシ、C1~C20チオアルキル、分岐状のC3~C20アルキル、環状のC3~C20アルキル、分岐状のC3~C20アルコキシ、環状のC3~C20アルコキシ、分岐状のC3~C20チオアルキル、環状のC3~C20チオアルキル、C6~C20アリール、およびC3~C20ヘテロアリールから選択される。
【0056】
好ましくは、Rは、独立して、直鎖状のC1~C10アルキル、C1~C10アルコキシ、C1~C10チオアルキル、分岐状のC3~C10アルキル、環状のC3~C10アルキル、分岐状のC3~C10アルコキシ、環状のC3~C10アルコキシ、分岐状のC3~C10チオアルキル、環状のC3~C10チオアルキル、C6~C18アリール、およびC3~C18ヘテロアリールから選択してもよい。
【0057】
より好ましくは、Rは、独立して、直鎖状のC1~C3アルキル、C6~C18アリールおよびC3~C18ヘテロアリールから選択してもよい。
【0058】
本明細書において、「アリーレン基」は、少なくとも一つの炭化水素芳香族部分を含む基を指し得、該炭化水素芳香族部分のすべての元素はp軌道を有し、該p軌道は共役を形成する。例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、フルオレニル基等である。
【0059】
アリーレン基は、単環、多環、または縮合環多環(つまり、炭素原子の対を共有する、隣接する環)の官能基を含んでもよい。
【0060】
「ヘテロアリーレン」という用語は、少なくとも一つのヘテロ原子を有する芳香族ヘテロ環を指し得、炭化水素ヘテロ芳香族部分のすべての元素はp軌道を有し、該p軌道は共役を形成する。ヘテロ原子は、他に定義されていない場合、N、O、S、B、Si、P、Se、好ましくはN、OおよびSから選択されてよい。
【0061】
ヘテロアリーレン環は少なくとも一つ~三つのヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロアリーレン環は、好ましくは、N、S、および/またはOから独立して選択される少なくとも一つ~三つのヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0062】
より好ましくは、少なくとも一つのヘテロアリーレン環は、少なくとも1~三つのN原子、または少なくとも一つ~二つのN原子、または少なくとも一つのN原子を含んでいてもよい。
【0063】
本明細書において、「ヘテロアリーレン」という語は、ピリジン、キノリン、キナゾリン、ピリジン、トリアジン、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾ[4,5]チエノ[3,2-d]ピリミジン、カルバゾール、キサンテン、フェノキサジン、ベンゾアクリジン、ジベンゾアクリジン等を含む。
【0064】
本明細書において、単結合とは直接結合を指す。
【0065】
本明細書において、他に定義されていない場合、X1~X20はN、C-H、C-R1、C-Zから独立して選択される、および/または、X1~X5、X6~X10、X11~X15、X16~X20(化学結合によって互いに結合している)の少なくとも二つが架橋して縮合芳香環もしくは縮合ヘテロ芳香環を形成し、X1~X20の少なくとも一つはC-Zから選択される。
【0066】
より好ましくは、X1~X20は、N、C-H、C-R1、C-Zから独立して選択される、および/または、X1~X5、X6~X10、X11~X15、X16~X20(化学結合によって互いに結合している)の少なくとも二つが架橋して縮合芳香環もしくは縮合ヘテロ芳香環を形成し、X1~X20の一つがC-Zであってもよい。
【0067】
さらに好ましくは、X1~X20はN、C-H、C-Zから独立して選択され、X1~X20の少なくとも一つがC-Zであってもよい。
【0068】
また好ましくは、X1~X20はC-H、C-Zから独立して選択され、X1~X20の少なくとも一つがC-Zであってもよい。
【0069】
本明細書において、他に定義されていない場合、R1は、-NR2R3または-BR2R3から選択され;R2およびR3は独立して選択されるC6-24アリールまたはC2-20ヘテロアリールである。
【0070】
さらに好ましくは、式IのX1~X20はC-R1を有さなくてよい。
【0071】
本明細書において、他に定義されていない場合、AR1は、独立して、置換または非置換のC6~C60アリールまたはC2~C60ヘテロアリールから選択される。C6~C60アリールまたはC2~C60ヘテロアリールの置換基は独立して、直鎖状のC1~C20アルキル、分岐状のC3~C20アルキルまたは環状のC3~C20アルキル、直鎖状のC1~C12フッ素化アルキル、直鎖状のC1~C12フッ素化アルコキシ、分岐状のC3~C12フッ素化アルキル、分岐状のC3~C12フッ素化アルコキシ、環状のC3~C12フッ素化アルキル、環状のC3~C12フッ素化アルコキシ、ORおよびSRから選択される。
【0072】
好ましくは、Ar1は独立して、置換または非置換のC6~C18アリールまたはC4~C17ヘテロアリールから選択される。C6~C18アリールまたはC4~C17ヘテロアリールの置換基は独立して、直鎖状のC1~C10アルキル、分岐状のC3~C10アルキルまたは環状のC3~C10アルキル、直鎖状のC1~C12フッ素化アルキル、直鎖状のC1~C12フッ素化アルコキシ、分岐状のC3~C12フッ素化アルキル、分岐状のC3~C12フッ素化アルコキシ、環状のC3~C12フッ素化アルキル、環状のC3~C12フッ素化アルコキシ、ORおよびSRから選択される。
【0073】
より好ましくは、Ar1は独立して、置換または非置換のC6~C12アリールまたはC4~C11ヘテロアリールから選択される。C6~C12アリールまたはC4~C11ヘテロアリールの置換基は独立して、直鎖状のC1~C3アルキル、分岐状のC3~C5アルキル、ORおよびSRから選択される。
【0074】
さらに好ましくは、Ar1は、非置換のトリアジン環である。
【0075】
本明細書において、他に定義されていない場合、AR2は、独立して以下から選択される。
・式I、但し、X1~X20はC-Zではない、
・置換または未置換のC6~C60アリール、または、置換または未置換のC2~C60ヘテロアリールであって;C6~C60アリールおよびC2~C60ヘテロアリールの置換基は、独立して、直鎖状のC1~C20アルキル、分岐状のC3~C20アルキルまたは環状のC3~C20アルキル;直鎖状のC1~C20アルコキシ、分岐状のC3~C20アルコキシ;直鎖状のC1~C12フッ素化アルキルまたは直鎖状のC1~C20フッ素化アルコキシ;分岐状および環状のC3~C12フッ素化アルキル、環状のC3~C12フッ素化アルキル、環状のC3~C12フッ素化アルコキシ、ニトリル、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から選択される。
【0076】
好ましくは、AR2は、独立して以下から選択される:
・式I、但し、X1~X20はC-Zではない、
・置換または未置換のC12~C60アリール、あるいは、置換または未置換のC3~C60ヘテロアリールであって;
C12~C60アリールおよびC3~C60ヘテロアリールの置換基は、独立して、直鎖状のC1~C10アルキル、分岐状のC3~C10アルキルまたは環状のC3~C10アルキル;直鎖状のC1~C10アルコキシ、分岐状のC3~C10アルコキシ;直鎖状のC1~C6フッ素化アルキルまたは直鎖状のC1~C6フッ素化アルコキシ;分岐状および環状のC3~C6フッ素化アルキル、環状のC3~C6フッ素化アルキル、環状のC3~C6フッ素化アルコキシ、ニトリル、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から選択される。
【0077】
より好ましくは、AR2は、独立して以下から選択される。
・式I、但し、X1~X20はC-Zではない、
・置換または未置換のC18~C60アリール、あるいは、置換または未置換のC3~C17ヘテロアリールであって;
C18~C60アリールおよびC3~C17ヘテロアリールの置換基は、独立して、直鎖状のC1~C10アルキル、分岐状のC3~C10アルキルまたは環状のC3~C10アルキル;直鎖状のC1~C10アルコキシ、分岐状のC3~C10アルコキシ;直鎖状のC1~C6フッ素化アルキルまたは直鎖状のC1~C6フッ素化アルコキシ;分岐状および環状のC3~C6フッ素化アルキル、環状のC3~C6フッ素化アルキル、環状のC3~C6フッ素化アルコキシ、ニトリル、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から選択される。
【0078】
さらに好ましくは、AR2は、独立して以下から選択される。
・式I、X1~X20は独立してNおよびC-Hから選択され、好ましくはC-Hである、
・置換または未置換のC24~C60アリールおよび置換または未置換のC3~C11ヘテロアリールであって;
置換または未置換のC24~C60アリールおよびC3~C11ヘテロアリールの置換基は、独立して、直鎖状のC1~C10アルキル、分岐状のC3~C10アルキルまたは環状のC3~C10アルキル;直鎖状のC1~C10アルコキシ、分岐状のC3~C10アルコキシ;直鎖状のC1~C6フッ素化アルキルまたは直鎖状のC1~C6フッ素化アルコキシ;分岐状および環状のC3~C6フッ素化アルキル、環状のC3~C6フッ素化アルキル、環状のC3~C6フッ素化アルコキシ、ニトリル、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から選択される。
【0079】
また好ましくは、AR2は、独立して以下から選択される。
・式I、X1~X20は独立してNおよびC-Hから選択され、好ましくはC-Hである、
・置換または未置換のC24~C60アリールおよび置換または未置換のC3~C11ヘテロアリールであって、
C24~C60アリールおよびC3~C11ヘテロアリールの置換基は、独立して、ニトリルおよび(P=O)R2から選択される。
【0080】
本明細書において、他に定義されていない場合、mは1、2または3である。より好ましくはmが1または2であってよい。
【0081】
一実施形態によれば、芳香族環A、B、CおよびDの少なくとも一つは、一つのN原子を含んでいてもよい。
【0082】
一実施形態によれば、芳香族環A、B、CおよびDの少なくとも一つは、二つのN原子を含んでいてもよい。
【0083】
一実施形態によれば、芳香族環A、B、CおよびDの少なくとも一つは、三つのN原子を含んでいてもよい。
【0084】
一実施形態によれば、Ar2は、一つのN原子を有する少なくとも一つのヘテロアリール六員環を含んでいてもよい。
【0085】
一実施形態によれば、Ar2は、二つのN原子を有する少なくとも一つのヘテロアリール六員環を含んでいてもよい。
【0086】
一実施形態によれば、Ar2は、三つのN原子を有する少なくとも一つのヘテロアリール六員環を含んでいてもよい。
【0087】
一実施形態によれば、Ar2は、トリアジンである少なくとも一つのヘテロアリール六員環を含んでいてもよい。
【0088】
一実施形態によれば、式Iの化合物は:
少なくとも5~20個の芳香族環、好ましくは少なくとも6~18個の芳香族環、さらに好ましくは少なくとも7~16個の芳香族環、より一層好ましくは少なくとも8~15個の芳香族環、およびより好ましくは少なくとも8~14個の芳香族環を含み;および/または、式Iの化合物は、少なくとも1~5個、好ましくは2~4個または2~3個のヘテロ芳香族環を含み;および/または
芳香族環A、B、CおよびDの少なくとも1個を含み、その少なくとも1個は、異なって置換されており、さらに好ましくは式Iの芳香族環A、B、CおよびDの少なくとも2個が異なって置換されており;および/または
その鏡像上に重なり合わず;および/または
少なくとも1個のヘテロ原子N、O、Sおよび/または置換基(P=O)R2、-CN、好ましくは少なくとも1個のヘテロ原子N、2個または3個のヘテロ原子N、さらに好ましくは少なくとも1個のヘテロNおよび(P=O)R2または-CNから選択される少なくとも1個の置換基を含み;および/または
少なくとも二つのトリアジン環を含み、および/または
一つの非ヘテロテトラアリールエチレン基(TAE)のみおよび/または一つのヘテロテトラアリールエチレン基(TAE)のみを含む。
【0089】
一つの好ましい実施形態によれば、式Iによる化合物は、少なくとも5~20個の芳香族環および少なくとも1個のトリアジン環;好ましくは少なくとも6~18個の芳香族環および少なくとも1個のトリアジン環;さらに好ましくは少なくとも7~16個の芳香族環および少なくとも1個のトリアジン環;より一層好ましくは少なくとも8~15個の芳香族環および少なくとも1個のトリアジン環;より好ましくは少なくとも8~14個の芳香族環および少なくとも1個のトリアジン環を含み得る。
【0090】
一つの好ましい実施形態によれば、式Iの化合物は、少なくとも1~5個、好ましくは2~4個または2~3個のヘテロ芳香族環を含み、ここで、少なくとも1個のヘテロ芳香族環はトリアジン環である。
【0091】
一つの好ましい実施形態によれば、式Iによる化合物は:
少なくとも5~20個の芳香族環、好ましくは少なくとも6~18個の芳香族環、さらに好ましくは少なくとも7~16個の芳香族環、より一層好ましくは少なくとも8~15個の芳香族環、さらに一層好ましくは少なくとも8~14個の芳香族環;ならびに
少なくとも1~5個、好ましくは2~4個または2~3個のヘテロ芳香族環であって、少なくとも1個のヘテロ芳香族環がトリアジン環;
を含んでもよい。
【0092】
一実施形態によれば、式Iによる化合物は、少なくとも6~12個の非ヘテロ芳香族環および1~3個のヘテロ芳香族環を含むことができ、ここで、少なくとも1個のヘテロ芳香族環はトリアジン環である。
【0093】
一つの好ましい実施形態によれば、式Iによる化合物は、少なくとも6~12個の非ヘテロ芳香族環および1~3個の非ヘテロ芳香族環を含むことができ、ここで、少なくとも1個のヘテロ芳香族環はトリアジン環である。
【0094】
一つの好ましい実施形態によれば、式Iによる化合物は、少なくとも7~11個の非ヘテロ芳香族環および1~2個のヘテロ芳香族環を含むことができ、ここで、少なくとも1個のヘテロ芳香族環はトリアジン環である。
【0095】
一つの好ましい実施形態によれば、式Iによる化合物は、少なくとも6~12個の非置換または置換の非ヘテロ芳香族環および少なくとも1~3個の非置換または置換のヘテロ芳香族環を含み得、ここで、少なくとも1個のヘテロ芳香族環はトリアジン環であり、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、C2~C16のヘテロアリール、フッ素化されたC1~C6のアルキルまたはフッ素化されたC1~C6のアルコキシ、好ましくはニトリルまたはジアルキルホスフィンオキシドから選択される少なくとも1~3個の置換基である。
【0096】
一つの好ましい実施形態によれば、式Iによる化合物は、少なくとも7~11個の非置換または置換の非ヘテロ芳香族環と、トリアジン環である少なくとも1個のヘテロ芳香族環と、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、C2~C16のヘテロアリール、フッ素化されたC1~C6のアルキルまたはフッ素化されたC1~C6のアルコキシから選択される少なくとも1個の置換基とを含むことができ、少なくとも1個の非ヘテロ芳香族環が置換されている。
【0097】
一つの好ましい実施形態によれば、式Iによる化合物は、少なくとも7~11個の非置換または置換の非ヘテロ芳香族環と、少なくとも1個のヘテロ芳香族環と、ニトリルおよび/またはジアルキルホスフィンオキシドから選択される少なくとも1個の置換基とを含むことができ;少なくとも1個の非ヘテロ芳香族環が置換されている。
【0098】
一つの好ましい実施形態によれば、式Iによる化合物は、少なくとも一つの芳香族環A、B、CおよびDを含むことができ、その少なくとも一つの芳香環は異なって置換されており、さらに好ましくは式Iの芳香族環A、B、CおよびDの少なくとも二つが異なって置換されている。
【0099】
一つの好ましい実施形態によれば、式Iによる化合物は、その鏡像上に重ね合わせることができない。
【0100】
好ましい一実施形態によれば、式Iの化合物は、N、Oおよび/またはSから選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含んでいてもよく、好ましくは、少なくとも一つのN、二つまたは三つのN原子を含んでいてもよい。
【0101】
好ましい一実施形態によれば、式Iの化合物は、ニトリル、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から選択される少なくとも一つの置換基を含んでいてもよい。
【0102】
好ましい一実施形態によれば、式Iの化合物は、N、Oおよび/またはSから選択される少なくとも一つのヘテロ原子、ならびに、ニトリル、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から選択される少なくとも一つの置換基を含んでいてもよい。
【0103】
好ましい一実施形態によれば、式Iの化合物は、少なくとも一つのNを含み、さらに、N、Oおよび/またはSから選択される少なくとも一つのヘテロ原子、ならびに、ニトリルおよび/または(P=O)R2から選択される少なくとも一つの置換基を含んでいてもよい。
【0104】
好ましい一実施形態によれば、式Iの化合物は、少なくとも二つのトリアジン環を含んでいてもよい。
【0105】
好ましい一実施形態によれば、式Iの化合物は、非ヘテロのテトラアリールエチレン(TAE:tetraarylethylene)基を一つのみおよび/またはヘテロのテトラアリールエチレン(TAE)基を一つのみ含んでいてもよい。
【0106】
好ましい一実施形態によれば、式Iの化合物は、非ヘテロのテトラアリールエチレン(TAE)基を少なくとも二つ含んでいてもよい。
【0107】
非ヘテロのテトラアリールエチレン(TAE)基は、エチレンにおけるアリール置換基がヘテロ原子、炭素または水素とは異なる原子、を含まないことを意味する。
【0108】
ヘテロのテトラアリールエチレン(TAE)基は、エチレンにおける少なくとも一つのアリール置換基が少なくとも一つのヘテロ原子、炭素または水素とは異なる原子、を含むことを意味する。
【0109】
「C6-アリーレン環」という用語は、単一のC6-アリーレン環、および、縮合環系を形成するC6-アリーレン環を意味する。例えば、ナフタレン基は、二つのC6-アリーレン環として数えられる。
【0110】
式Iの他の実施形態によれば、Ar2の少なくとも一つのヘテロアリーレン基は、トリアジン、キナゾリン、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾ[4,5]チエノ[3,2-d]ピリミジン、ピリミジンおよびピリジンが選択され、好ましくはトリアジンおよびピリミジンから選択される。
【0111】
他の実施形態によれば、式1の化合物の双極子モーメントは、約0デバイ以上、約3デバイ以下であってよく、好ましくは約0デバイ以上、約2デバイ以下であってよい。
【0112】
好ましくは、式Iの化合物の双極子モーメントは、0デバイ以上、1デバイ以下、より好ましくは0デバイ以上、0.8デバイ以下、さらに好ましくは0デバイ以上、0.4デバイ以下を選択され得る。
【0113】
驚くべきことに、式Iの化合物の双極子モーメントがこの範囲から選択されるときに、特に高伝導性および低動作電圧の、式Iの化合物を含む有機半導体層が得られ得ることが見出された。
【0114】
N原子を含む分子の双極子モーメント
【0115】
【0116】
は、以下の式によって与えられる。
【0117】
【0118】
式中、
【0119】
【0120】
および
【0121】
【0122】
は、分子における部分電荷および原子の位置である。
【0123】
双極子モーメントは、半経験的な分子軌道法によって求められる。
【0124】
気相における部分電荷および原子の位置は、プログラムパッケージTURBOMOLE V6.5で実行されるhybrid functional B3LYP with the 6-31G* basis set を用いることによって得られる。複数の配座が可能な場合、もっとも低い全エネルギーを有する配座を選択して双極子モーメントを求める。
【0125】
他の実施形態によれば、式Iの化合物の還元電位は、テトラヒドロフランにおけるFc/Fc+に対して測定した場合、-1.9Vよりも負であって-2.6Vよりも正であってよく、好ましくは、-2Vよりも負であって-2.5Vよりも正であってよい。
【0126】
還元電位は、定電位装置Metrohm PGSTAT30およびソフトウェアMetrohm Autolab GPESを用いて、室温でのサイクリックボルタンメトリーによって測定することができる。酸化還元電位は、式Iの化合物の、アルゴンにより脱気してある、無水の0.1MのTHF溶液中で、アルゴン雰囲気下にて、支持電解質として0.1Mのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートを使用した。白金製作用電極間にて、塩化銀で被覆されている銀ワイヤーからなるAg/AgCl疑似基準電極(Metrohm銀製棒電極)を用い、測定溶液に直接浸漬し、スキャン速度を100mV/sとして測定される。1回目の測定は、作用電極間に最も広い範囲の電位を設定して行われ、その後、当該範囲は、適宜に調整される。最後の3回の測定は、標準としてフェロセン(濃度:0.1M)を添加して行われる。化合物のカソードのピークおよびアノードのピークに対応する電位の平均は、Fc+/Fc標準酸化還元対について測定されるカソード電位およびアノード電位の平均を差し引いて得られる。
【0127】
特に、還元電位がこの範囲から選択されるとき、発光層への良好な電子注入および/もしくは電子輸送、および/または安定性が達成され得る。
【0128】
他の実施形態によれば、式Iの化合物のガラス転移温度Tgは、約105℃以上、約380℃以下、好ましくは約110℃以上、約350℃以下、さらに好ましくは約150℃以上、約320℃以下であってもよい。
【0129】
他の実施形態によれば、式Iの化合物のガラス転移温度Tgは、約105℃以上、約170℃以下であってもよい。
【0130】
ガラス転移温度は窒素下で測定され、DIN EN ISO 11357(2010年3月公開)に記載されているように、当該測定は、示差走査熱量計Mettler Toledo DSC 822eを用いて10K/分の加熱速度で行われる。
【0131】
他の実施形態によれば、式Iの化合物の、レート開始温度TRO(rate onset temperature)は、約150℃以上、約400℃以下、好ましくは約180℃以上、約380℃以下であってもよい。
【0132】
TGA(熱重量分析)における重量損失カーブは、Mettler Toledo TGA-DSC 1 systemによって、純窒素を流しながら、加熱速度10K/分で室温から600℃に試料を加熱して測定される。9~11mgの試料が、蓋が無い100μLのMettler Toledo アルミニウムパンに収容される。0.5重量%の重量損失が発生したときに温度が測定される。
【0133】
室温(周囲温度とも称する)は23℃である。
【0134】
気相への遷移に対するレート開始温度は、100mgの化合物をVTE源へ入れることで測定される。VTE源として、Kurt J. Lesker Company (www.lesker.com)またはCreaPhys GmbH (http://www.creaphys.com)によって提供されている、有機材料の点源を使用する。VTE(真空熱蒸着)源の温度は、VTE源中の化合物と直接接触するサーモカップルによって測定される。
【0135】
VTE源は、真空チャンバ内で10-7mbar~10-8mbarの圧力下において、15K/分の一定の割合で加熱され、サーモカップルを用いてVTE源の内部温度が測定される。化合物の蒸着は、QCM検出器を用いて検出する。当該検出器は、検出器の石英結晶上における化合物の積層を検出する。石英結晶上への積層速度は、1秒間当たりのオングストロームで測定される。レート開始温度を測定するために、VTE源の温度に対する積層速度を対数スケール上にプロットする。レート開始温度は、QCM検出器上に顕著な蒸着が起こるときの温度である(0.02Å/秒の速度で定義される)。VTE源は、3回加熱冷却し、2回目および3回目のみの結果が、レート開始温度を測定するのに使用される。
【0136】
レート開始温度は、測定によって、化合物の揮発性を間接的な尺度である。レート開始温度が高いほど、化合物の揮発性が低い。
【0137】
驚くべきことに、式1の化合物および本発明の有機電子素子は、従来技術で知られている有機エレクトロルミネセント素子および化合物に比べて、とりわけcd/A効率(電流効率とも称する)に関して優れており、それにより、本発明の課題を解決することがわかった。同時に、動作電圧は、同様の、またはさらに向上したレベルに保たれる。これは、例えば、携帯表示素子の電力消費を抑え、電池寿命を延ばすのに重要である。高いcd/A効率は高効率を達成するために重要であり、これにより、携帯素子(例えば携帯表示素子)の電池寿命が増す。
【0138】
有機エレクトロルミネセント素子を青色蛍光素子として使用したときに、特に良好な性能が実現され得ることを発明者らは驚くべきことに発見した。
【0139】
本明細書に記載の、好ましい特定の構成が特に有益であることが分かった。
【0140】
同様に、本発明の最も広い定義の範囲に含まれるいくつかの化合物は、驚くべきことに、上述したcd/A効率の特性に関して特に良好な性能を示すことが分かった。本明細書において説明するこれらの化合物は特に好適である。
【0141】
さらに、高効率および/または長寿命の有機光電子素子を実現可能である。
【0142】
以下、一実施形態に係る有機光電子素子用の化合物について説明する。
【0143】
一実施形態に係る有機光電子素子用の化合物は、本発明の式1で表される。
【0144】
本発明の式1の化合物は、電子の注入もしくは輸送を促し、または、化合物のガラス転移温度を上昇させ得る。従って、分子間相互作用の抑制によって蛍光効率が上昇し、化合物の分子量に対する蒸着温度が低くなり得る。
【0145】
従って、式1で表される有機光電子素子用の化合物がフィルムまたは層を形成するとき、当該化合物は、式1の化合物の特異的な立体形状によって、正孔または電子の注入および輸送、ならびに、素子におけるフィルムまたは層の耐久性を最適化することができる。従って、電荷輸送基の良好な分子間配置が達成され得る。
【0146】
よって、式1の化合物が有機光電子素子に使用されるとき、当該化合物は、発光層への電子の迅速な注入によって蛍光効率を上昇することができる。一方、当該化合物が正孔注入または輸送特性が優れている材料と混合されて発光層を形成すると、当該化合物は、効率的な電荷注入および励起子の発生により、優れた蛍光効率を得ることができる。
【0147】
さらに、式1で表される有機光電子素子用の化合物の優れた電子注入および輸送特性が得られ得る。さらに、優れた正孔特性を有する化合物との混合物として電子注入補助層または発光層の形成に使用されるときでさえ、式1の化合物は、優れた電子注入および輸送特性を維持し得る。
【0148】
一実施形態によれば、有機電子素子の層材料として使用するための、式Iによる化合物が提供される:
【0149】
【0150】
X1~X20は、独立して、N、C-H、C-R1、C-Zから選択され、および/または化学結合によって互いに接続されているX1~X5、X6~X10、X11~X15、X16~X20の少なくとも二つが架橋してアネレート化された芳香族環またはアネレート化されたヘテロ芳香族環を形成し、かつ、
少なくとも一つのX1~X20がC-Zであり
Zは、式IIの置換基であり:
【0151】
【0152】
Ar1は、置換または非置換トリアジン環であり、
置換トリアジン環の置換基は、独立して、C1-20の直鎖状のアルキル、C3-20の分枝状のアルキルまたはC3-20のシクロアルキル、C1-12の直鎖状のフッ化アルキル、C1-12の直鎖状のフッ化アルコキシ、C3-12の分枝状のフッ化アルキル、C3-12の分枝状のフッ化アルコキシ、C3-12のシクロフッ化アルキル、C3-12のシクロフッ化アルコキシ、OR、SR、(P=O)R2または、X1~X20がC-Zではないことを除く式1、から選択され;
Ar2は、独立して
X1~X20がC-Zではないことを除く式I、
置換または非置換のC6-60のアリールおよび置換または非置換のC2~C60のヘテロアリール;
から選択され:
C6-60のアリールおよびC2~C60のヘテロアリールの置換基は、独立して、C1~C20の直鎖状のアルキル、C3~C20の分枝状のアルキル、C3~C20のシクロアルキル、C1~C20の直鎖状のアルコキシ、C3~C20の分枝状のアルコキシ;C1~C12の直鎖状のフッ化アルキル、またはC1~C12の直鎖状のフッ化アルコキシ;C3~C12の分枝状のシクロフッ化アルキル、C3~C12のシクロフッ化アルキル、C3~C12のシクロフッ化アルコキシ;ニトリル;OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2;から選択され;
Rは、C1~C20の直鎖状のアルキル、C1~C20のアルコキシ、C1~C20のチオアルキル、C3~C20の分枝状のアルキル、C3~C20のシクロアルキル、C3~C20の分枝状のアルコキシ、C3~C20のシクロアルコキシ、C3~C20の分枝状のチオアルキル、C3~C20のシクロチオアルキル、C6~C20のアリール、およびC3~C20のヘテロアリールであり;
mは、1、2または3から選択される。
【0153】
一実施形態によれば、有機電子素子の層材料として使用するための、式Iによる化合物が提供される:
【0154】
【0155】
X1~X20は、独立して、N、C-H、C-R1、C-Zから選択され、および/または化学結合によって互いに接続されているX1~X5、X6~X10、X11~X15、X16~X20の少なくとも二つが架橋してアネレート化された芳香族環またはアネレート化されたヘテロ芳香族環を形成し、かつ、
少なくとも一つのX1~X20がC-Zであり;
Zは式IIの置換基であり:
【0156】
【0157】
Ar1は、置換または非置換トリアジン環であり、
置換トリアジン環の置換基は、独立して、C1-20の直鎖状のアルキル、C3-20の分枝状のアルキルまたはC3-20のシクロアルキル、C1-12の直鎖状のフッ化アルキル、C1-12の直鎖状のフッ化アルコキシ、C3-12の分枝状のフッ化アルキル、C3-12の分枝状のフッ化アルコキシ、C3-12のシクロフッ化アルキル、C3-12のシクロフッ化アルコキシ、OR、SR、(P=O)R2または、X1~X20がC-Zではないことを除く式1、から選択され;
Ar2は、独立して
X1~X20がC-Zではないことを除く式I、
置換または非置換のC6-60のアリールおよび置換または非置換のC2~C60のヘテロアリール;
から選択され:
C6-60のアリールおよびC2~C60のヘテロアリールの置換基は、独立して、C1~C20の直鎖状のアルキル、C3~C20の分枝状のアルキル、C3~C20のシクロアルキル、C1~C20の直鎖状のアルコキシ、C3~C20の分枝状のアルコキシ;C1~C12の直鎖状のフッ化アルキル、またはC1~C12の直鎖状のフッ化アルコキシ;C3~C12の分枝状のシクロフッ化アルキル、C3~C12のシクロフッ化アルキル、C3~C12のシクロフッ化アルコキシ;ニトリル;OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2;から選択され;
Rは、C1~C20の直鎖状のアルキル、C1~C20のアルコキシ、C1~C20のチオアルキル、C3~C20の分枝状のアルキル、C3~C20のシクロアルキル、C3~C20の分枝状のアルコキシ、C3~C20のシクロアルコキシ、C3~C20の分枝状のチオアルキル、C3~C20のシクロチオアルキル、C6~C20のアリール、およびC3~C20のヘテロアリールであり;
mは、1、2または3から選択され;
芳香族環A、B、CおよびDの少なくとも1個は、単結合を介してトリアジン環に連結し;かつ式Iの化合物は、その鏡像上に重なり合わない。
【0158】
一実施形態によれば、有機電子素子の層材料として使用するための、式Iによる化合物が提供される:
【0159】
【0160】
X1~X20は、独立して、N、C-H、C-R1、C-Zから選択され、および/または化学結合によって互いに接続されているX1~X5、X6~X10、X11~X15、X16~X20の少なくとも二つが架橋してアネレート化された芳香族環またはアネレート化されたヘテロ芳香族環を形成し、かつ、
少なくとも一つのX1~X20がC-Zであり;または任意の少なくとも一つのX1~X20がC-Zであり、かつ少なくとも一つのX1~X20がC-R1であり;
R1は、-NR2R3または-BR2R3から選択され;
R2およびR3は、独立して選択されたC6-24のアリールおよびC2-20のヘテロアリールであり;
Zは、式IIの置換基であり:
【0161】
【0162】
Ar1は、置換または非置換トリアジン環であり、
置換トリアジン環の置換基は、独立して、C1-20の直鎖状のアルキル、C3-20の分枝状のアルキルまたはC3-20のシクロアルキル、C1-12の直鎖状のフッ化アルキル、C1-12の直鎖状のフッ化アルコキシ、C3-12の分枝状のフッ化アルキル、C3-12の分枝状のフッ化アルコキシ、C3-12のシクロフッ化アルキル、C3-12のシクロフッ化アルコキシ、OR、SR、(P=O)R2または、X1~X20がC-Zではないことを除く式1、から選択され、;
Ar2は、独立して
X1~X20がC-Zではないことを除く式I、
置換または非置換のC6-60のアリールおよび置換または非置換のC2~C60のヘテロアリール;
から選択され:
C6-60のアリールおよびC2~C60のヘテロアリールの置換基は、独立して、C1~C20の直鎖状のアルキル、C3~C20の分枝状のアルキル、C3~C20のシクロアルキル、C1~C20の直鎖状のアルコキシ、C3~C20の分枝状のアルコキシ;C1~C12の直鎖状のフッ化アルキル、またはC1~C12の直鎖状のフッ化アルコキシ;C3~C12の分枝状のシクロフッ化アルキル、C3~C12のシクロフッ化アルキル、C3~C12のシクロフッ化アルコキシ;ニトリル;OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2;から選択され;
Rは、C1~C20の直鎖状のアルキル、C1~C20のアルコキシ、C1~C20のチオアルキル、C3~C20の分枝状のアルキル、C3~C20のシクロアルキル、C3~C20の分枝状のアルコキシ、C3~C20のシクロアルコキシ、C3~C20の分枝状のチオアルキル、C3~C20のシクロチオアルキル、C6~C20のアリール、およびC3~C20のヘテロアリールであり;
mは、1または2から選択され;
芳香族環A、B、CおよびD少なくとも一つは、単結合を介してトリアジン環と連結されている。
【0163】
一実施形態によれば、有機電子素子の層材料として使用するための、式Iによる化合物が提供される:
【0164】
【0165】
X1~X20は、独立して、N、C-H、C-R1、C-Zから選択され、および/または化学結合によって互いに接続されているX1~X5、X6~X10、X11~X15、X16~X20の少なくとも二つが架橋してアネレート化された芳香族環またはアネレート化されたヘテロ芳香族環を形成し、かつ、
少なくとも一つのX1~X20がC-Zであり;または少なくとも一つのX1~X20がC-Zであり、かつ任意の少なくとも一つのX1~X20がC-R1であり;
R1は、-NR2R3または-BR2R3から選択され;
R2およびR3は、独立して選択されたC6-24のアリールおよびC2-20のヘテロアリールであり;
Zは式IIの置換基であり:
【0166】
【0167】
Ar1は、置換または非置換トリアジン環であり、置換基は、独立して、C1-20の直鎖状のアルキル、C3-20の分枝状のアルキルまたはC3-20のシクロアルキル、C1-12の直鎖状のフッ化アルキル、C1-12の直鎖状のフッ化アルコキシ、C3-12の分枝状のフッ化アルキル、C3-12の分枝状のフッ化アルコキシ、C3-12のシクロフッ化アルキル、C3-12のシクロフッ化アルコキシ、OR、SR、(P=O)R2から選択され;
Ar2は、独立して
X1~X20がC-Zではないことを除く式I、
置換または非置換のC6-60のアリールおよび置換または非置換のC2~C60のヘテロアリール;
から選択され:
置換または非置換のC6-60のアリールおよびC2~C60のヘテロアリールは、独立して、C1~C20の直鎖状のアルキル、C3~C20の分枝状のアルキル、C3~C20のシクロアルキル、C1~C20の直鎖状のアルコキシ、C3~C20の分枝状のアルコキシ;C1~C12の直鎖状のフッ化アルキル、またはC1~C12の直鎖状のフッ化アルコキシ;C3~C12の分枝状のシクロフッ化アルキル、C3~C12のシクロフッ化アルキル、C3~C12のシクロフッ化アルコキシ;ニトリル;OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2;から選択され;
Rは、C1~C20の直鎖状のアルキル、C1~C20のアルコキシ、C1~C20のチオアルキル、C3~C20の分枝状のアルキル、C3~C20のシクロアルキル、C3~C20の分枝状のアルコキシ、C3~C20のシクロアルコキシ、C3~C20の分枝状のチオアルキル、C3~C20のシクロチオアルキル、C6~C20のアリール、およびC3~C20のヘテロアリールであり;
mは、1、2または3から選択され;
芳香族環A、B、CおよびDの少なくとも一つは、単結合を介してトリアジン環に連結されている。
【0168】
一実施形態によれば、有機電子素子の層材料として使用するための、式Iによる化合物が提供される:
【0169】
【0170】
X1~X20は、独立して、N、C-H、C-R1、C-Zから選択され、および/または化学結合によって互いに接続されているX1~X5、X6~X10、X11~X15、X16~X20の少なくとも二つが架橋してアネレート化された芳香族環またはアネレート化されたヘテロ芳香族環を形成し、かつ、
少なくとも一つのX1~X20がC-Zであり;または任意の少なくとも一つのX1~X20がC-Zであり、かつ少なくとも一つのX1~X20がC-R1であり;
R1は、-NR2R3または-BR2R3から選択され;
R2およびR3は、独立して選択されたC6-24のアリールおよびC2-20のヘテロアリールであり;
Zは式IIの置換基であり:
【0171】
【0172】
Ar1は、置換または非置換トリアジン環であり、C6-60のアリールまたはC2-60のヘテロアリールの置換基は、独立して、C1-20の直鎖状のアルキル、C3-20の分枝状のアルキルまたはC3-20のシクロアルキル、C1-12の直鎖状のフッ化アルキル、C1-12の直鎖状のフッ化アルコキシ、C3-12の分枝状のフッ化アルキル、C3-12の分枝状のフッ化アルコキシ、C3-12のシクロフッ化アルキル、C3-12のシクロフッ化アルコキシ、OR、SR、(P=O)R2から選択され;
Ar2は、独立して
X1~X20がC-Zではないことを除く式I、
置換または非置換のC6-60のアリールおよび置換または非置換のC2~C60のヘテロアリール;
から選択され:
C6-60のアリールおよびC2~C60のヘテロアリールの置換基は、独立して、C1~C20の直鎖状のアルキル、C3~C20の分枝状のアルキル、C3~C20のシクロアルキル、C1~C20の直鎖状のアルコキシ、C3~C20の分枝状のアルコキシ;C1~C12の直鎖状のフッ化アルキル、またはC1~C12の直鎖状のフッ化アルコキシ;C3~C12の分枝状のシクロフッ化アルキル、C3~C12のシクロフッ化アルキル、C3~C12のシクロフッ化アルコキシ;ニトリル;OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2;から選択され;
Rは、C1~C20の直鎖状のアルキル、C1~C20のアルコキシ、C1~C20のチオアルキル、C3~C20の分枝状のアルキル、C3~C20のシクロアルキル、C3~C20の分枝状のアルコキシ、C3~C20のシクロアルコキシ、C3~C20の分枝状のチオアルキル、C3~C20のシクロチオアルキル、C6~C20のアリール、およびC3~C20のヘテロアリールであり;
mは、1、2または3から選択され;
少なくとも一つの芳香族環A、B、Cおよびのいずれもが単結合を介してトリアジン環に結合しておらず、式Iの化合物は、その鏡像上に重なり合わらず、かつ、式Iの化合物のAr1およびAr2は同一ではない。
【0173】
一実施形態によれば、有機電子素子の層材料として使用するための、式Iによる化合物が提供される:
【0174】
【0175】
X1~X20は、独立して、N、C-H、C-R1、C-Zから選択され、および/または化学結合によって互いに接続されているX1~X5、X6~X10、X11~X15、X16~X20の少なくとも二つが架橋してアネレート化された芳香族環またはアネレート化されたヘテロ芳香族環を形成し、かつ、
少なくとも一つのX1~X20がC-Zであり;または任意の少なくとも一つのX1~X20がC-Zであり、かつ少なくとも一つのX1~X20がC-R1であり;
R1は、-NR2R3または-BR2R3から選択され;
R2およびR3は、独立して選択されたC6-24のアリールおよびC2-20のヘテロアリールであり;
Zは式IIの置換基であり:
【0176】
【0177】
Ar1は、置換または非置換トリアジン環であり、C6-60のアリールまたはC2-60のヘテロアリールの置換基は、独立して、C1-20の直鎖状のアルキル、C3-20の分枝状のアルキルまたはC3-20のシクロアルキル、C1-12の直鎖状のフッ化アルキル、C1-12の直鎖状のフッ化アルコキシ、C3-12の分枝状のフッ化アルキル、C3-12の分枝状のフッ化アルコキシ、C3-12のシクロフッ化アルキル、C3-12のシクロフッ化アルコキシ、OR、SR、(P=O)R2から選択され;
Ar2は、独立して
X1~X20がC-Zではないことを除く式I、
置換または非置換のC6-60のアリールおよび置換または非置換のC2~C60のヘテロアリール;
から選択され:
C6-60のアリールおよびC2~C60のヘテロアリールの置換基は、独立して、C1~C20の直鎖状のアルキル、C3~C20の分枝状のアルキルまたはC3~C20のシクロアルキル、C1~C20の直鎖状のアルコキシ、C3~C20の分枝状のアルコキシ;C1~C12の直鎖状のフッ化アルキル、またはC1~C12の直鎖状のフッ化アルコキシ;C3~C12の分枝状のシクロフッ化アルキル、C3~C12のシクロフッ化アルキル、C3~C12のシクロフッ化アルコキシ;ニトリル;OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2;から選択され;
Rは、C1~C20の直鎖状のアルキル、C1~C20のアルコキシ、C1~C20のチオアルキル、C3~C20の分枝状のアルキル、C3~C20のシクロアルキル、C3~C20の分枝状のアルコキシ、C3~C20のシクロアルコキシ、C3~C20の分枝状のチオアルキル、C3~C20のシクロチオアルキル、C6~C20のアリール、およびC3~C20のヘテロアリールであり;
mは、1、2または3から選択され;
芳香族環A、B、CおよびDの少なくとも一つは、単結合を介してトリアジン環に連結されており;式Iの化合物は、その鏡像上に重なり合わらず、式Iの化合物のAr1およびAr2は同一ではなく;かつ、Zは、少なくとも四つのC6アリール環を含み、または、好ましくは、Zは、少なくとも四つのC6アリール環および少なくとも一つの六員N-ヘテロアリール環を含む。
【0178】
式Iの化合物の一実施形態によれば:
Ar1基は、トリアジン環であり、
Ar2基は、1~10個の非ヘテロ芳香族6員環、好ましくは2~8個の非ヘテロ芳香族6員環、さらに好ましくは3~6個の非ヘテロ芳香族6員環;さらに好ましくは4または5個の非ヘテロ芳香族6員環を含んでいてよく;および/または
少なくとも1個のC6~C18のアリーレン、好ましくは少なくとも1個のC6~C12のアリーレンが少なくとも式(I)の芳香族環A、B、CおよびD上にアネレート化されている。
【0179】
一つの実施形態によれば、式Iにおいて:
X1~X20は、独立して、C-H、C-R1、C-Zから選択され、少なくとも一つのX1~X20は、C-Zから選択され;
R1は、-NR2R3または-BR2R3から選択され;
R2およびR3は、独立して選択されるC6-16のアリールまたはC2-12のヘテロアリールであり;
Zは、式IIの置換基であり:
【0180】
【0181】
Ar1は、トリアジン環であり;
Ar2は、独立して、置換または未置換のC12-60のアリール、または、置換または未置換のC10~C59のヘテロアリールから選択され;
置換基は、独立して、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、C2~C16のヘテロアリール、フッ素化されたC1~C6のアルキルまたはフッ素化されたC1~C6のアルコキシから選択され、
置換基は、C1~C20の直鎖状のアルキル、C3~C20の分枝状のアルキル、C3~C20のシクロアルキル、直鎖状のフッ素化されたC1~C12のアルキル、直鎖状のC1~C20のアルコキシ、分枝状のC1~C12のフッ化アルキル、C3~C12のシクロフッ化アルキル、分枝状のC1~C12のフッ化アルコキシ、C3~C12のシクロフッ化アルコキシ、ニトリル、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2、から選択され、
Rは、C1~C20の直鎖状のアルキル、C1~C20のアルコキシ、C1~C20のチオアルコキシ、C3~C20の分枝状アルキル、C3~C20のシクロアルキル、C3~C20の分枝状のアルコキシ、C3~C20のシクロアルコキシ、C3~C20の分枝状のチオアルキル、C3~C20のシクロチオアルキル、C6~C20のアリール、およびC3~C20のヘテロアリールであり;
mは、1、2または3から選択され、好ましくは1である。
【0182】
一つの実施形態によれば、式Iにおいて:
X1~X20は、独立して、C-HおよびC-Zから、および任意のC-H、C-R1およびC-Zから選択され;
少なくとも一つのX1~X20は、C-Zから選択され;
R1は、-NR2R3または-BR2R3から選択され;
R2およびR3は、独立して選択されるC6-16のアリールまたはC2-12のヘテロアリールであり;
Zは、式IIの置換基であり:
【0183】
【0184】
Ar1はトリアジン環であり;
Ar2は、独立して、置換または未置換のC12-60のアリール、または、置換または未置換のC10~C59のヘテロアリールから選択され;
置換基は、独立して、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、C2~C16のヘテロアリール、フッ素化されたC1~C6のアルキルまたはフッ素化されたC1~C6のアルコキシ、OR、SR、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から選択され;
Rは、独立して、直鎖状のC1~C20のアルキル、直鎖状のC1~C20のアルコキシ、直鎖状のC1~C20のチオアルキル、分枝状のC3~C20のアルキル、分岐状のC3~C20のアルコキシ、分枝状のC3~C20チオアルキル、C6-20のアリール、およびC3~C20のヘテロアリール、から選択され;
mは、1または2から選択され、好ましくは1である。
【0185】
一つの実施形態によれば、式Iにおいて:
X1~X20は、独立して、C-HおよびC-Zから選択され;
少なくとも一つのX1~X20は、C-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基であり:
【0186】
【0187】
Ar1はトリアジン環であり;
Ar2は、独立して、置換または未置換のC12-52のアリール、または、置換または未置換のC3~C51のヘテロアリールから選択され;
置換基は、独立して、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、C2~C16のヘテロアリール、フッ素化されたC1~C6のアルキルまたはフッ素化されたC1~C6のアルコキシ、OR、SR、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から選択され;
Rは、独立して、直鎖状のC1~C10のアルキル、直鎖状のC1~C10のアルコキシ、直鎖状のC1~C10のチオアルキル、分枝状のC3~C10のアルキル、分岐状のC3~C10のアルコキシ、分枝状のC3~C10チオアルキル、C6-12のアリールおよびC3~C11のヘテロアリール、から選択され;
mは、1または2から選択され、好ましくは1である。
【0188】
一つの実施形態によれば、式Iにおいて:
X1~X20は、独立して、C-HおよびC-Zから選択され;
少なくとも一つのX1~X20は、C-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基であり:
【0189】
【0190】
Ar1はトリアジン環であり;
Ar2は、独立して、置換または未置換のC12-52のアリール、または、置換または未置換のC3~C51のヘテロアリールから選択され;
置換基は、独立して、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、C2~C16のヘテロアリール、フッ素化されたC1~C6のアルキルまたはフッ素化されたC1~C6のアルコキシ、OR、SR、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から選択され;
Rは、独立して、直鎖状のC1~C10のアルキル、直鎖状のC1~C10のアルコキシ、直鎖状のC1~C10のチオアルキル、分枝状のC3~C10のアルキル、分岐状のC3~C10のアルコキシ、分枝状のC3~C10チオアルキル、C6-12のアリールおよびC3~C11のヘテロアリール、から選択され;
mは、1または2から選択され、好ましくは1である。
【0191】
一つの実施形態によれば、式Iにおいて:
X1~X20は、独立して、C-HおよびC-Zから選択され;
一つのX1~X20は、C-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基であり:
【0192】
【0193】
Ar1はトリアジン環であり;
Ar2は、独立して、置換または未置換のC12-52のアリール、または、置換または未置換のC3~C51のヘテロアリールから選択され;
置換基は、独立して、ニトリル、ジアルキルホスフィンオキシド、ジアリールホスフィンオキシド、C2~C16のヘテロアリール、フッ素化されたC1~C6のアルキルまたはフッ素化されたC1~C6のアルコキシ、OR、SR、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から選択され;
Rは、独立して、直鎖状のC1~C10のアルキル、直鎖状のC1~C10のアルコキシ、直鎖状のC1~C10のチオアルキル、分枝状のC3~C10のアルキル、分岐状のC3~C10のアルコキシ、分枝状のC3~C10チオアルキル、C6-12のアリールおよびC3~C11のヘテロアリール、から選択され;
mは、1または2から選択され、好ましくは1である。
【0194】
一つの実施形態によれば、式Iにおいて:
X1~X20は、独立して、C-HおよびC-Zから選択され;
一つのX1~X20は、C-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基であり:
【0195】
【0196】
Ar1はトリアジン環であり;
Ar2は、独立して、置換または未置換のC12-52のアリール、または、置換または未置換のC3~C51のヘテロアリールから選択され;
置換基は、独立して、ニトリルおよび(P=O)R2から選択され;
Rは、独立して、直鎖状のC1~C10のアルキル、C6-20のアリールおよびC3~C11のヘテロアリール、から選択され;
mは、1または2から選択され、好ましくは1である。
【0197】
一つの実施形態によれば、式Iにおいて:
X1~X20は、独立して、C-HおよびC-Zから選択され;
一つのX1~X20は、C-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基であり:
【0198】
【0199】
Ar1はトリアジン環であり;
Ar2は、独立して、置換または未置換のC12-48のアリール、または、少なくとも一つの置換または未置換のC3~C17のヘテロアリールから選択され;
置換基は、独立して、ニトリルおよび(P=O)R2から選択され;
Rは、独立して、直鎖状のC1~C10のアルキル、C6-12のアリール、およびC3~C11のヘテロアリール、から選択され;
mは、1または2から選択され、好ましくは1である。
【0200】
一つの実施形態によれば、式Iにおいて:
式Iにおいて:
X1~X20は、独立して、C-HおよびC-Zから選択され;
一つのX1~X20は、C-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基であり:
【0201】
【0202】
Ar1はトリアジン環であり;
Ar2は、独立して、置換または未置換のC12-48のアリール、または、少なくとも一つの置換または未置換のC3~C17のヘテロアリールから選択され;
置換基は、独立して、ニトリルおよび(P=O)R2から選択され;
Rは、独立して、直鎖状のC1~C10のアルキルから選択され;
mは、1または2から選択され、好ましくは1である。
【0203】
一実施形態によれば、式Iの化合物は:
X1~X20は、独立して、C-HおよびC-Zから選択され;
一つのX1~X20は、C-Zから選択され;
Zは、式IIの置換基であり:
【0204】
【0205】
Ar1はトリアジン環であり;
Ar2は、独立して、未置換のC12-48のアリール、および、少なくとも一つの未置換のC3~C17のヘテロアリールから選択され;
置換基は、独立して、ニトリルおよび(P=O)R2から選択され;
Rは、独立して、直鎖状のC1~C10のアルキルから選択され;
mは、1または2から選択され、好ましくは1であってよい。
【0206】
式Iの化合物の一実施形態によれば、Zは、式IIIを有していてもよく:
【0207】
【0208】
Ar2は、独立して、置換または未置換のC6-60アリールまたはC2~C60のヘテロアリールから選択され;
置換基は、独立して、ニトリル、C1~C20のジアルキルホスフィンオキシド、C6-20のジアリールホスフィンオキシド、C2~C36のヘテロアリール、フッ素化されたC1~C6のアルキルまたはフッ素化されたC1~C6のアルコキシ、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2から選択され;
Rは、独立して、直鎖状のC1~C20のアルキル、直鎖状のC1~C20のアルコキシ、直鎖状のC1~C20のチオアルキル、分枝状のC3~C20のアルキル、分枝状のC3~C20のアルコキシ、分枝状のC3~C20のチオアルキル、C6-20のアリールおよびC3~C20のヘテロアリールから選択され;
mは、1または2から選択され、好ましくは1である。
【0209】
式Iの化合物の一実施形態によれば、Ar2は、式F1~F16から選択することができ:
【0210】
【0211】
Y1~Y5は、独立して、N、OR、SR、(C=O)R、(C=O)NR2、SiR3、(S=O)R、(S=O)2R、(P=O)R2、C-H、C-Rから選択され、および/または、化学結合によって互いに接続されているY1~Y5の少なくとも二つは、架橋されてアネレート化された芳香族環またはアネレート化されたヘテロ芳香族環を形成し、
Rは、独立して、直鎖状のC1~C20のアルキル、直鎖状のC1~C20のアルコキシ、直鎖状のC1~C20のチオアルキル、分枝状のC3~C20のアルキル、分枝状のC3~C20のアルコキシ、分枝状のC3~C20のチオアルキル、C6-20のアリール、およびC3~C20のヘテロアリールから選択される;
【0212】
【0213】
【0214】
一実施形態によれば、式Iの化合物、
Ar2は、少なくとも一つのピリジン、ピリミジンまたはトリアジン環、好ましくはトリアジン環を含み;および/または
Ar2は、少なくとも1個の置換または非置換ベンゾチアゾール基を含み;および/または
Ar2は、少なくとも一つのニトリルおよび/またはホスフィンオキシド置換基を含む;か、あるいは
Ar2は、ピリジン、ピリミジンまたはトリアジン環を含まない;および/または
Ar2は、置換または非置換ベンゾチアゾール基を含まない。
【0215】
一実施形態によれば、Ar2が少なくとも1個の置換または非置換の1,1,2,2-テトラフェニルエチレン基、好ましくは非置換の1,1,2,2-テトラフェニルエチレン基を含んでいてもよい式Iによる化合物は:
a)ピリジン、ピリミジンまたはトリアジン環、好ましくはトリアジン環に単結合を介して結合していてよく;または
b)フェニル基に単結合を介して結合しており、フェニル基は、ピリジン、ピリミジンまたはトリアジン環、好ましくはトリアジン環、に単結合を介して結合していてよい。
【0216】
一実施形態によれば、式Iの化合物は、G1~G28から選択することができる:
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
【0227】
この選択から式1の化合物を選択すると、特に良好な性能特性が得られる。
【0228】
[アノード]
アノードのための材料は、金属または金属酸化物、または有機材料であってよく、好ましくは約4.8eVを超える、より好ましくは約5.1eVを超える、最も好ましくは約5.3eVを超える仕事関数を有する材料であってもよい。好ましい金属は、Pt、AuまたはAgのような貴金属であり、好ましい金属酸化物は、ITOまたはIZOのような透明な金属酸化物であり、これは、反射カソードを有する底部発光OLEDにおいて有利に使用され得る。
【0229】
透明金属酸化物アノードまたは反射性金属アノードを含む素子では、アノードが約50nm~約100nmの厚さを有していてよく、半透明金属アノードは、約5nm~約15nmの薄さであってもよく、非透明金属アノードは、約15nm~約150nmの厚さを有していてよい。
【0230】
[正孔注入層(HIL)]
正孔注入層は、正孔輸送層に使用されるアノードと有機材料との間の界面特性を改善することができ、非平坦化アノード上に適用され、従って、アノードの表面を平坦化することができる。例えば、正孔注入層は、アノードの仕事関数と正孔輸送層のHOMOのエネルギー準位との差を調整するために、アノード材料の仕事関数と正孔輸送層のHOMOのエネルギー準位との間のその最高占有分子軌道(HOMO)のエネルギー準位の中央値を有する材料を含むことができる。
【0231】
正孔輸送領域が正孔注入層36を含む場合、正孔注入層は、例えば、真空蒸着、スピンコーティング、キャスティング、Langmuir-Blodgett(LB)法等の種々の方法のいずれかによって、アノード上に形成されてもよい。
【0232】
真空蒸着法を用いて正孔注入層を形成する場合、正孔注入層を形成するのに用いられる材料、ならびに、形成する正孔注入層の所望の構造および熱特性に応じて真空蒸着条件を変えることができ、例えば、100℃~500℃程度の温度、10-6Pa~10-1Pa程度の圧力、0.1~10nm/sec程度の蒸着速度で真空蒸着を行うことができるが、蒸着条件はこれに限定されない。
【0233】
スピンコーティングを用いて正孔注入層を形成する場合、正孔注入層を形成するために使用される材料、および形成される正孔注入層の所望の構造および熱特性によって、コーティング条件が変わり得る。例えば、塗布速度は約2000rpm~約5000rpmの範囲であり、塗布後に溶媒を除去するために加熱処理を行う温度は約80℃~約200℃の範囲であるが、塗布条件はこれに限定されない。
【0234】
正孔注入層は、導電率および/またはアノードからの正孔注入を改善するためにp-ドーパントをさらに含んでもよい。
【0235】
正孔注入層は、式1の化合物を含むことができる。
【0236】
別の実施形態では、正孔注入層が式1の化合物からなってもよい。
【0237】
[pドーパント]
別の態様では、p-ドーパントは、正孔注入層中に均一に分散させることができる。
【0238】
別の態様では、p-ドーパントは、正孔注入層中に、アノードにより近い高濃度で、カソードにより近い低濃度で存在することができる。
【0239】
p-ドーパントは、キノン誘導体またはラジアレン化合物のうちの一つであってもよいが、これらに限定されない。p-ドーパントの非限定的な例は、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)、2,3,5,6-テトラフルオロ-テトラシアノ-1,4-ベンゾキノンジメタン(F4-TCNQ)、4,4’,4''-((1E,1’E,1''E)-シクロプロパン-1,2,3-トリイリデネトリス(シアノメタニリデン))-トリス(2,3,5,6-テトラフルオロベンゾニトリル)等のキノン誘導体である。
【0240】
[正孔輸送層(HTL)]
正孔輸送層および電子阻止層を形成するための条件は、正孔注入層について上述した形成条件に基づいて規定することができる。
【0241】
電荷輸送領域の正孔輸送部の厚さは、約10nm~約1000nm、例えば、約10nm~約100nmとすることができる。電荷輸送領域の正孔輸送部が正孔注入層および正孔輸送層を含む場合、正孔注入層の厚さは、約10nm~約1000nm、例えば、約10nm~約100nmとすることができ、正孔輸送層の厚さは、約5nm~約200nm、例えば、約10nm~約150nmとすることができる。電荷輸送領域の正孔輸送部、HIL、およびHTLの厚さがこれらの範囲内にあるとき、動作電圧の大幅な増加なしに満足な正孔輸送特性が得られる可能性がある。
【0242】
正孔輸送領域で使用される正孔輸送マトリックス材料は、特に限定されない。好ましいのは、少なくとも6個の非局在化電子の共役系を含む共有結合化合物であり、好ましくは少なくとも1個の芳香環を含む有機化合物であり、より好ましくは少なくとも2個の芳香環を含む有機化合物であり、さらにより好ましくは少なくとも3個の芳香環を含む有機化合物であり、最も好ましくは少なくとも4個の芳香環を含む有機化合物である。正孔輸送層に広く使用されている正孔輸送マトリックス材料の典型例は、多環式芳香族炭化水素、トリアリーレンアミン化合物および複素環式芳香族化合物である。正孔輸送領域の種々の層で有用な正孔輸送行列のフロンティア軌道エネルギー準位の適切な範囲はよく知られている。HTLマトリックスのレドックス対HTLマトリックス/カチオンラジカルのレドックス電位に関して、好ましい値(例えば、参照としてフェロセン/フェロセニウムレドックス対に対するサイクリックボルタンメトリーによって測定される場合)は、0.0~1.0Vの範囲、より好ましくは0.2~0.7Vの範囲、さらにより好ましくは0.3~0.5Vの範囲であり得る。
【0243】
正孔輸送層は、式1の化合物を含むことができる。
【0244】
別の実施形態では、正孔輸送層が式1の化合物からなってもよい。
【0245】
[バッファ層]
電荷輸送領域の正孔輸送部は、バッファ層をさらに含んでいてもよい。
【0246】
適切に使用することができるバッファ層は、US6140763、US6614176およびUS2016/248022に開示されている。
【0247】
バッファ層は、EMLから放射される光の波長に従って、光の光共鳴距離を補償することができ、従って、効率を高めることができる。バッファ層は、式1の化合物を含むことができる。
【0248】
別の実施形態では、緩衝層が式1の化合物からなってもよい。
【0249】
[発光層(EML)]
発光層は真空蒸着、スピンコーティング、キャスティング、LB法等を用いることにより、正孔輸送領域上に形成することができる。真空蒸着またはスピンコーティングを用いて発光層を形成する場合、蒸着およびコーティングのための条件は、正孔注入層の形成のための条件と同様であり得るが、蒸着およびコーティングのための条件は、発光層を形成するために使用される材料に基づいて変化し得る。発光層は、エミッタホスト(EMLホスト)およびエミッタドーパント(さらなるエミッタのみ)を含んでもよい。
【0250】
[エミッタホスト]
別の実施形態によれば、発光層は、エミッタホストとして式1の化合物を含む。
【0251】
エミッタホスト化合物は、炭素環および複素環から独立して選択される少なくとも三つの芳香環を有する。
【0252】
エミッタホストとして使用することができる他の化合物は、下記の式400で表されるアントラセンマトリックス化合物である:
【0253】
【0254】
式400において、Ar111およびAr112は各々独立して、置換または未置換のC6~C60アリーレン・グループであってもよく、Ar113~Ar116は各々独立して、置換または未置換のC1~C10のアルキル・グループまたは置換または未置換のC6~C60のアリーレン・グループであってもよく、そしてg、h、iおよびjは各々独立して、0から4までの整数であってもよい。
【0255】
いくつかの実施形態では、式400中のAr111およびAr112は各々独立して、フェニレン基、ナフタレン基、フェナントレニレン基、またはピレニレン基;または、各々がフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基のうちの少なくとも一つで置換されているフェニレン基、ナフタレン基、フェナントレニレン基、フルオレニル基、またはピレニレン基、のうちの一つであってよい。
【0256】
式400において、g、h、i、およびjは、それぞれ独立して、0、1、または2の整数であり得る。
【0257】
式400において、Ar113~Ar116は、それぞれ独立して、
フェニル基、ナフチル基、またはアントリル基の少なくとも一つで置換されたC1~C10アルキル基;
フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、フェナントレニル基、またはフルオレニル基;
各々が重水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基またはこれらの塩の少なくとも一つで置換されているフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、フェナントレニル基、またはフルオレニル基
スルホン酸基またはその塩、リン酸基またはその塩
C1~C60のアルキル基、C2~C60のアルケニル基、C2~C60のアルキニル基、C1~C60のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、フェナントレニル基、
またはフルオレニル基
【0258】
【0259】
あるいは式7または式8
【0260】
【0261】
であってよい。
【0262】
式7および式8において、Xは酸素原子および硫黄原子から選択されるが、本発明の実施形態はこれらに限定されない。
【0263】
式7において、R11~R14のいずれか一つは、Ar111への結合に使用される。Ar111への結合に使用されないR11~R14およびR15~R20は、R1~R8と同じである。
【0264】
式8において、R21~R24のいずれか一つは、Ar111への結合に使用される。Ar111への結合に使用されないR21~R24およびR25~R30は、R1~R8と同じである。
【0265】
好ましくは、EMLホストは、N、OまたはSからなる群から選択される1~3個のヘテロ原子を含む。より好ましくは、EMLホストは、SまたはOから選択される1個のヘテロ原子を含む。
【0266】
エミッタホスト化合物は、約0デバイ以上、約2.0デバイ以下の範囲の双極子モーメントを有していてよい。
【0267】
好ましくは、EMLホストの双極子モーメントは、0.2デバイ以上および1.45デバイ以下、好ましくは0.4デバイ以上および1.2デバイ以下、また好ましくは0.6デバイ以上および1.1デバイ以下に選択される。
【0268】
双極子モーメントは、プログラムパッケージTURBOMOLE V6.5に実装されているような6-31G*基底関数系を有するハイブリッド関数のB3LYPを用いる最適化を用いて算出される。二つ以上のコンホメーションが実行可能である場合、最低の総エネルギーを有するコンホメーションが、分子の双極子モーメントを決定するために選択される。この方法を用いて、2-(10-フェニル-9-アントラセニル)-ベンゾ[b]ナフト[2,3-d]フラン(CAS 1627916-48-6)は0.88デバイの双極子を有し、2-(6-(10-フェニルアントラセン-9-イル)ナフタレン-2-イル)ジベンゾ[b,d]チオフェン(CAS 1838604-62-8)は0.89デバイ、2-(6-(10-フェニルアントラセン-9-イル)ナフタレン-2-イル)ジベンゾ[b,d]フラン(CAS 1842354-89-5)は0.69デバイ、2-(7-(フェナントレン-9-イル)テトラフェン-12-イル)ジベンゾ[b,d]フラン(CAS 1965338-95-7)は0.64デバイ、4-(4-(7-(ナフタレン-1-イル)テトラフェン-12-イル)フェニル)ジベンゾ[b,d]フラン(CAS 1965338-96-8)は1.01デバイである。
【0269】
[エミッタドーパント]
ドーパントは発光させるために少量混合されるものであり、通常、多重励起により発光して三重項以上となる金属錯体等の材料であればよい。ドーパントとしては、例えば、無機、有機、有機/無機化合物であってよく、それらの1種以上を用いることができる。
【0270】
エミッタは、赤、緑、または青色のエミッタであってよい。
【0271】
ドーパントは、蛍光ドーパント、例えば、ter-フルオレンであってもよく、構造を以下に示す。4.4’-ビス(4-ジフェニルアミオスチリル)ビフェニル(DPAVBI)、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(TBPe)、および以下の化合物8は、蛍光青色ドーパントの例である。
【0272】
【0273】
ドーパントは、燐光ドーパントであってもよく、燐光ドーパントの例は、Ir、Pt、Os、Ti、Zr、Hf、Eu、Tb、Tm、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、またはこれらのそれらの組み合わせを含む有機金属化合物であってもよい。燐光性ドーパントは、例えば、式Zで表される化合物であってもよいが、これに限定されない:
J2MX (Z)
式Zにおいて、Mは金属であり、JおよびXは同一または異なり、Mと錯化合物を形成するリガンドである。
【0274】
Mは、例えば、Ir、Pt、Os、Ti、Zr、Hf、Eu、Tb、Tm、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pdまたはそれらの組み合わせであってもよく、JおよびXは例えば、二座配位しであってもよい。
【0275】
[電子輸送層(ETL)]
別の実施形態によれば、式1の化合物を含む有機半導体層は、電子輸送層である。別の実施形態では、電子輸送層が式1の化合物からなってもよい。
【0276】
例えば、本発明の一実施形態による有機発光ダイオードは、少なくとも一つの電子輸送層を含み、この場合、電子輸送層は、式1の化合物、または好ましくは式G1~G50の少なくとも一つの化合物を含む。
【0277】
別の実施形態では、有機電子素子は、二つ以上の電子輸送層によって形成された有機層の積み重なりの電子輸送領域を含み、少なくとも一つの電子輸送層は式1の化合物を含む。
【0278】
電子輸送層は、一つまたは二つ以上の異なる電子輸送化合物を含むことができる。
【0279】
別の実施形態によれば、第2の電子輸送層は、本発明による式1の化合物を少なくとも一つ含み、第1の電子輸送層は、本発明による式1の化合物とは異なるように選択され、:
アントラセン系化合物またはヘテロ置換アントラセン系化合物、好ましくは2-(4-(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン-2-イル)フェニル)-1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾールおよび/またはN4,N4''-ジ(ナフタレン-1-イル)-N4,N4''-ジフェニル-[1,1’:4’,1''-テルフェニル]-4,4''-ジアミンから選ばれてもよいマトリックス化合物を含む。
【0280】
別の実施形態によれば、第1の電子輸送層は、本発明による式1の化合物を少なくとも一つ含み、第2の電子輸送層は、本発明による式1の化合物とは異なるように選択されから選択され、:
酸化ホスフィン系化合物、好ましくは(3-(ジベンゾ[c,h]アクリジン-7-イル)フェニル)ジフェニルホスフィンオキシドおよび/またはフェニルビス(3-(ピレン-1-イル)フェニル)ホスフィンオキシドおよび/または3-フェニル-3H-ベンゾ[b]ジナフト[2,1-d:1’,2’-f]ホスフェピン-3-オキシド;または
置換フェナントロリン化合物、好ましくは2,4,7,9-テトラフェニル-1,10-フェナントロリンまたは2,9-ジ(ビフェニル-4-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリンから選択されてもよいマトリックス化合物を含む。
【0281】
別の実施形態によれば、第1の電子輸送層は、本発明による式1の化合物を少なくとも一つ含み、第2の電子輸送層は、本発明による式1の化合物とは異なるように選択され、ホスフィンオキシド系化合物、好ましくは(3-(ジベンゾ[c,h]アクリジン-7-イル)フェニル)ジフェニルホスフィンオキシドおよび/またはフェニルビス(3-(ピレン-1-イル)フェニル)ホスフィンオキシドおよび/または3-フェニル-3H-ベンゾ[b]ジナフト[2,1-d:1’,2’-f]ホスフェピン-3-オキシドから選択されてもよいマトリックス化合物を含む。
【0282】
別の実施形態によれば、第1および第2の電子輸送層は、式1の化合物を含み、当該式1の化合物は、同じものが選択されない。
【0283】
第1の電子輸送層の厚さは、約0.5nm~約100nm、例えば約2nm~約40nmとすることができる。第一の電子輸送層の厚さがこれらの範囲内にあるとき、第一の電子輸送層は、動作電圧の大幅な増加なしに、改善された電子輸送能力を有することができる。
【0284】
任意の第2の電子輸送層の厚さは、約1nm~約100nm、例えば約2nm~約20nmとすることができる。電子輸送層の厚さがこれらの範囲内にあるとき、電子輸送層は、動作電圧の大幅な増加なしに、満足な電子輸送能力を有し得る。
【0285】
電子輸送層は、アルカリハロゲン化物および/またはアルカリ有機錯体をさらに含んでもよい。
【0286】
別の実施形態によれば、第1および第2の電子輸送層は、式1の化合物を含み、当該第2の電子輸送層は、アルカリハロゲン化物および/または有機アルカリ錯体をさらに含む。
【0287】
[アルカリハロゲン化物]
アルカリ金属ハロゲン化物としても知られるハロゲン化アルカリは、化学式MXを有する無機化合物に含まれ、Mはアルカリ金属であり、Xはハロゲンである。
【0288】
Mは、Li、Na、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選択することができる。
【0289】
Xは、F、Cl、BrおよびIから選択することができる。
【0290】
本発明の様々な実施形態によれば、ハロゲン化リチウムが好ましい場合がある。ハロゲン化リチウムは、LiF、LiCl、LiBrおよびLiIを含む群から選択することができる。しかしながら、最も好ましいのはLiFである。
【0291】
アルカリハロゲン化物は、本質的に非発光性か、または非発光性である。
【0292】
[アルカリ有機錯体]
本発明の様々な実施形態によれば、リチウム有機錯体の有機配位子は、キノラート、ホウ酸塩、フェノラート、ピリジノラート、またはシッフ塩基配位子である;
好ましくは、リチウムキノラート錯体は、式III、IVまたはVを有する:
【0293】
【0294】
ここで、
A1~A6は、CH、CR、N、Oから同一にまたは独立して選択され;
Rは、水素、ハロゲン、1~20個の炭素原子を有するアルキルまたはアリーレンまたはヘテロアリーレンから同一にまたは独立して選択され、より好ましくはA1~A6がCHであり;
好ましくは、ホウ酸塩系有機配位子がテトラ(1H-ピラゾール-1-イル)ホウ酸塩であり;
好ましくは、フェノラートが、2-(ピリジン-2-イル)フェノラート、2-(ジフェニルホスホリル)フェノラート、イミダゾールフェノラート、または2-(ピリジン-2-イル)フェノラートであり、より好ましくは2-(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)フェノラートであり;
好ましくは、ピリジノラートが、2-(ジフェニルホスホリル)ピリジン-3-オラートである。
【0295】
本発明の種々の実施形態によれば、アルカリ有機錯体、好ましくはリチウム有機錯体の有機配位子は、キノラートであり得る。使用するのに適し得るキノラートは、WO 2013079217 A1に開示され、参考文献として組み込まれている。
【0296】
本発明の様々な実施形態によれば、リチウム有機錯体の有機配位子は、ホウ酸塩系の有機配位子であることができ、好ましくは、リチウム有機錯体は、テトラ(1H-ピラゾール-1-イル)ホウ酸リチウムである。好適に用いることができるホウ酸塩系有機配位子は、WO 2013079676 A1に開示され、参考文献として組み込まれている。
【0297】
本発明の様々な実施形態によれば、リチウム有機錯体の有機配位子は、フェノラート配位子であることができ、好ましくは、リチウム有機錯体が、リチウム2-(ジフェニルホスホリル)フェノラートである。好適に用いることができるフェノール酸塩リガンドは、WO 2013079678 A1に開示され、参考文献として組み込まれている。
【0298】
さらに、フェノラートリガンドは、ピリジノラートの群から選択することができ、好ましくは2-(ジフェニルホスホリル)ピリジン-3-オラートである。好適に用いることができるピリジンフェノラートリガンドは、特開2008195623号公報に開示され、参考文献として組み込まれている。
【0299】
さらに、フェノラート配位子は、イミダゾールフェノラートの群から選択することができ、好ましくは2-(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)フェノラートである。適当に用いることができるイミダゾルフェノラートリガンドは、特開2001291593号公報に開示され、参考文献として組み込まれている。
【0300】
また、フェノラート配位子は、オキサゾールフェノラートの群から選択することができ、好ましくは2-(ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)フェノラートである。好適に用いることができるオキサゾールフェノラートリガンドは、US20030165711に開示され、参考文献として組み込まれている。
【0301】
アルカリ有機錯体は、本質的に非発光性であってもよい。
【0302】
[n-ドーパント]
様々な実施形態によれば、式1の化合物を含む有機半導体層は、n-ドーパントをさらに含むことができる。
【0303】
n-ドーパントとして適切な電気的に中性の金属錯体は、例えば低酸化状態のいくつかの遷移金属の強い還元性錯体であってもよい。特に強いn-ドーパントは、WO2005/086251により詳細に記載されているように、例えばCr(II)、Mo(II)および/またはW2(hpp)4等のW(II)グアニジン酸塩錯体、から選択することができる。
【0304】
n-ドーパントとして適切な電気的に中性の有機ラジカルは、例えば、EP 1 837 926 B1、WO2007/107306、またはWO2007/107356により詳細に記載されているように、それらの安定なダイマー、オリゴマー、または高分子からの追加のエネルギーの供給によって生成される有機ラジカルであってもよい。このような適切なラジカルの具体例は、ジアゾリルラジカル、オキサゾリルラジカルおよび/またはチアゾリルラジカルであり得る。
【0305】
別の実施形態では、有機半導体層は、元素金属をさらに含むことができる。元素金属とは、その元素形態の金属の状態にある金属、金属合金、または金属クラスタである。金属相から、例えばバルク金属から真空熱蒸発によって蒸着された金属は、それらの元素形態で気化することとされている。さらに、気化した元素金属が共有結合マトリックスと一緒に堆積される場合、金属原子および/またはクラスタが共有結合マトリックスに埋め込まれるとされている。言い換えれば、真空熱蒸発によって調製される任意の金属ドープ共有結合材料は、金属を少なくとも部分的にその元素形態で含有するとされている。
【0306】
家庭用電化製品での使用には、放射性崩壊の非常に長いハーフトーン時間を有する核種または安定な核種を含有する金属のみが適用可能であろう。許容可能なレベルの原子安定性として、天然カリウムの原子安定性を採用することができる。
【0307】
一実施形態では、n-ドーパントは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属および第1遷移期間の金属、Ti、V、CrおよびMnから選択される正電荷を有する金属から選択される。好ましくは、n-ドーパントは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Sm、Eu、Tm、Ybから選択され、より好ましくはLi、Na、K、Rb、Cs、MgおよびYbから選択され、さらに好ましくはLi、Na、CsおよびYbから選択され、最も好ましくはLi、NaおよびYbから選択される。
【0308】
n-ドーパントは、本質的に非発光性であってもよい。
【0309】
[電子注入層(EIL)]
本発明の別の態様によれば、有機エレクトロルミネッセンス素子は、電子輸送層(第1-ETL)とカソードとの間に電子注入層をさらに含むことができる。
【0310】
電子注入層(EIL)は、カソードからの電子の注入を容易にすることができる。
【0311】
本発明の別の態様によれば、電子注入層は:
(i)実質的に元素の形態におけるアルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属から選択され、好ましくはLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、EuおよびYbから選択され、より好ましくはLi、Na、Mg、Ca、SrおよびYbから選択され、さらにより好ましくはLiおよびYbから選択され、最も好ましくはYbから選択される正電荷を有する金属、および/または、
(ii)アルカリ金属錯体および/またはアルカリ金属塩、好ましくはLi錯体および/または塩、より好ましくはLiキノリノラート、さらにより好ましくはリチウム8-ヒドロキシキノリノラート、最も好ましくは第2の電子輸送層(第2-ETL)のアルカリ金属塩および/または錯体は、注入層のアルカリ金属塩および/または錯体と同一である、を含む。
【0312】
電子注入層膜は、LiF、NaCl、CsF、Li2OおよびBaOから選択された少なくとも一つを含むことができる。
【0313】
EILの厚さは、約0.1nm~約10nm、または約0.3nm~約9nmとすることができる。電子注入層の厚さがこれらの範囲内にあるとき、電子注入層は、動作電圧の大幅な増加なしに、満足な電子注入能力を有することができる。
【0314】
電子注入層は、式1の化合物を含むことができる。
【0315】
[カソード]
カソードの材料としては、仕事関数の小さい金属、合金、導電性化合物、またはそれらの組み合わせを用いることができる。カソードの材料の具体例は、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム-リチウム(Al-Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)、銀(Ag)等であり得る。基板上に堆積された反射アノードを有するトップエミッション発光装置を製造するために、カソードは、光透過性電極として、例えばインジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、または銀(Ag)から形成されてもよい。
【0316】
透明金属酸化物カソードまたは反射金属カソードを含む装置では、カソードは、約50nmから約100nmの厚さを有してもよく、一方、半透明金属カソードは、約5nmから約15nmの薄さであってもよい。
【0317】
基板は、アノードの下またはカソード上にさらに配置されてもよい。基板は、一般的な有機発光ダイオードに用いられる基板であってもよく、機械的強度、熱安定性、透明性、表面平滑性、取り扱い易さおよび耐水性に優れたガラス基板または透明プラスチック基板であってもよい。
【0318】
正孔注入層は、アノードとしてのITOと正孔輸送層に使用される有機材料との間の界面特性を改善することができ、非平坦化ITO上に適用することができ、従って、ITOの表面を平坦化することができる。
【0319】
正孔注入層は、例えば真空蒸着、スピンコーティング、キャスティング、Langmuir-Blodgett(LB)法等の様々な方法のいずれかによってアノード上に形成されてもよい。
【0320】
正孔注入層が真空蒸着を用いて形成される場合、真空蒸着条件は、正孔注入層を形成するために使用される材料、ならびに、形成される正孔注入層の所望の構造および熱特性に応じて変化し得、例えば、真空蒸着は、約100℃~約500℃の温度、約10-8torr~約10-3Torrの圧力、および約0.01~約100Å/秒の蒸着速度で実施され得るが、蒸着条件はこれに限定されない。
【0321】
スピンコーティングを用いて正孔注入層を形成する場合、コーティング条件は、正孔注入層を形成するために使用される材料、ならびに、形成される正孔注入層の所望の構造および熱特性に応じて変わり得る。例えば、塗布速度は、約2000rpm~約5000rpmの範囲であってよく、塗布後に溶媒を除去するために加熱処理を行うときの温度は約80℃~約200℃の範囲であってよいが、コーティング条件はこれに限定されない。
【0322】
正孔輸送層および電子阻止層を形成するための条件は、正孔注入層について上述した形成条件に基づいて規定することができる。
【0323】
正孔輸送領域の厚さは、約100Å~約10000Åであってよく、例えば約100Å~約1000Åであってよい。正孔輸送領域が正孔注入層および正孔輸送層を含む場合、正孔注入層の厚さは、約100Å~約10,000Åであってよく、例えば約100Å~約1000Åであってよく、そして、正孔輸送層の厚さは、約50Å~約2,000Åであってよく、例えば約100Å~約1500Åであってよい。正孔輸送領域、HIL、およびHTLの厚さがこれらの範囲内にあるとき、動作電圧の大幅な増加なしに満足な正孔輸送特性が得られる可能性がある。
【0324】
発光層の厚さは、約100Å~約1000Åであってよく、例えば約200Å~約600Åであり得る。発光層の厚さがこれらの範囲内にある場合、発光層は、動作電圧の大幅な増加なしに、改善された発光特性を有し得る。
【0325】
次に、電子輸送領域を発光層上に配置する。
【0326】
電子輸送領域は、電子輸送層および電子注入層の少なくとも一方を含むことができる。
【0327】
電子輸送層の厚さは、約20Å~約1000Åであってよく、例えば約30Å~約300Åであってよい。電子輸送層の厚さがこれらの範囲内にあるとき、電子輸送層は、動作電圧の大幅な増加なしに、改善された電子輸送補助能力を有し得る。
【0328】
電子輸送層の厚さは、約100Å~約1000Åであってよく、例えば約150Å~約500Åであってよい。電子輸送層の厚さがこれらの範囲内にあるとき、電子輸送層は、動作電圧の大幅な増加なしに、満足な電子輸送能力を有し得る。
【0329】
また、電子輸送領域は、アノードからの電子の注入を容易にすることができる電子注入層(EIL)を含むことができる。
【0330】
電子注入層は、電子輸送層上に配置され、カソードからの電子注入を容易にし、最終的には電力効率を向上させる役割を果たすことができ、例えばLiF、Liq、NaCl、CsF、Li2O、BaO、Yb等の特に限定されない関連技術で用いられているいずれの材料を用いて形成され得る。
【0331】
電子注入層膜は、LiF、NaCl、CsF、Li2OおよびBaOから選択された少なくとも一つを含むことができる。
【0332】
EILの厚さは、約1Å~約100Åであってよく、または約3Å~約90Åであってもよい。電子注入層の厚さがこれらの範囲内にあるとき、電子注入層は、動作電圧の大幅な増加なしに、満足な電子注入能力を有することができる。
【0333】
第2の電極は、有機層上に配置されてもよい。第2の電極の材料は、仕事関数の小さい金属、合金、導電性化合物、またはそれらの組み合わせであってよい。第2の電極の材料の具体例は、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム-リチウム(Al-Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)、銀(Ag)等であり得る。トップエミッション型の発光素子を製造するために、第2の電極は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)または酸化インジウム亜鉛(IZO)から、光透過性電極として形成されてもよい。第2の電極は、カソードであってもよい。
【0334】
本発明の別の態様によれば、アノード電極上に、正孔注入層、正孔輸送層、任意の電子阻止層、発光層、任意の正孔阻止層、第1の電子輸送層、任意の第2の電子輸送層、電子注入層、およびカソードの他の層がその順序で堆積されるか、またはカソードから始まって、反対方向に堆積される、有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法が提供される。
【0335】
以下、実施例を参照して実施形態をより詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施例に限定されない。
【0336】
図面の説明
本発明のこれらおよび/または他の態様および利点は添付の図面と併せて、例示的な実施形態の以下の説明から明らかになり、より容易に理解されるのであろう:
図1は、発光層、一つの電子輸送層、および電子注入層を有する、本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の概略断面図である;
図2は、発光層および二つの電子輸送層を有する本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の概略断面図である;
図3は、発光層および三つの電子輸送層を有する本発明の例示的な実施形態に係るOLEDの概略断面図である;
図4は、発光層および一つの電子輸送層を有する本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の概略断面図である;
図5は、発光層および二つの電子輸送層を有する本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の概略断面図である;
図6は、発光層および三つの電子輸送層を有する本発明の例示的な実施形態に係るOLEDの概略断面図である。
【0337】
ここで、例示的な態様を詳細に参照し、その例を添付の図面に示し、全体を通して、同様の参照番号は同様の要素を指す。例示的な実施形態は図を参照することによって、その態様を説明するために、以下に記載される。
【0338】
ここで、第1の要素が第2の要素「上に」形成されるか、または配置されると言う場合、第1の要素は、第2の要素上に直接配置されてもよく、または一つ以上の他の要素がそれらの間に配置されてもよい。第1の要素が第2の要素「直上に」形成されるか、または配置されると言う場合、それらの間に他の要素は配置されない。
【0339】
用語「接触して挟まれて」は、中間の層が二つの隣接する層と直接接触する三つの層の配置を指す。
【0340】
本発明の一実施形態による有機発光ダイオードは、正孔輸送領域と、発光層と、式Iによる化合物を含む第1の電子輸送層とを含むことができる。
【0341】
図1は、本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオード100の概略断面図である。OLED100は、発光層150、式Iの化合物を含む電子輸送層(ETL)161および電子注入層180を備え、第1の電子輸送層161は、発光層150直上に配置され、電子注入層180は、第1の電子輸送層161直上に配置されている。
【0342】
図2は、本発明の一実施形態による有機発光ダイオード100の概略断面図である。OLED100は、発光層150、ならびに式Iの化合物を含む第1の電子輸送層161および第2の電子輸送層162を含む電子輸送層スタック(ETL)160を含み、第2の電子輸送層162は、第1の電子輸送層161直上に配置されている。
【0343】
図3は、本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオード100の概略断面図である。OLED100は、発光層150、ならびに、式Iの化合物を含む第1の電子輸送層161、式Iの化合物を含むが第1の電子輸送層の化合物とは異なる第2の電子輸送層162、および第3の電子輸送層163を含む電子輸送層スタック(ETL)160を含み、第2の電子輸送層162は、第1の電子輸送層161直上に配置され、第3の電子輸送層163は、第1の電子輸送層162直上に配置されている。
【0344】
図4は、本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオード100の概略断面図である。OLED100は、基板110、第1のアノード電極120、正孔注入層(HIL)130、正孔輸送層(HTL)140、発光層(EML)150、一つの第1の電子輸送層(ETL)161、電子注入層(EIL)180、およびカソード電極190を含む。第1の電子輸送層(ETL)161は、式Iの化合物を、そして場合によってはアルカリハロゲン化物またはアルカリ有機錯体を含む。電子輸送層(ETL)161は、EML150直上に形成されている。
【0345】
図5は、本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオード100の概略断面図である。OLED100は、基板110、第1のアノード電極120、正孔注入層(HIL)130、正孔輸送層(HTL)140、発光層(EML)150、電子輸送層スタック(ETL)160、電子注入層(EIL)180、およびカソード電極190を含む。電子輸送層(ETL)160は、第1電子輸送層161および第2電子輸送層162を含み、第1電子輸送層は、アノード(120)の近くに配置され、第2電子輸送層はカソード(190)の近くに配置されている。第1および/または第2の電子輸送層は、式Iの化合物を、そして場合によりアルカリハロゲン化物またはアルカリ有機錯体を含む。
【0346】
図6は、本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオード100の概略断面図である。OLED100は、基板110、第1のアノード電極120、正孔注入層(HIL)130、正孔輸送層(HTL)140、発光層(EML)150、電子輸送層スタック(ETL)160、電子注入層(EIL)180、および第2のカソード電極190を含む。電子輸送層スタック(ETL)160は、第一の電子輸送層161、第二の電子輸送層162および第三の電子輸送層163を含む。第一電子輸送層161は、発光層(EML)150直上に形成されている。第1、第2および/または第3の電子輸送層は、各層について異なる式Iの化合物を、そして場合によりアルカリハロゲン化物またはアルカリ有機錯体を含む。
【0347】
基板は、アノード120の下またはカソード190の上にさらに配置されてもよい。基板は、一般的な有機発光ダイオードに用いられる基板であってよく、機械的強度、熱安定性、透明性、表面平滑性、取り扱い易さおよび耐水性に優れたガラス基板または透明プラスチック基板であってもよい。
【0348】
正孔注入層130は、アノードとしてのITOと正孔輸送層140に使用される有機材料との間の界面特性を改善することができ、非平坦化ITO上に適用することができ、従って、ITOの表面を平坦化することができる。例えば、正孔注入層130は、アノードとしてのITOの仕事関数と正孔輸送層140のHOMOとの差を調整するために、ITOの仕事関数および正孔輸送層140のHOMOの間に特に望ましい導電率を有する材料を含んでもよい。
【0349】
正孔輸送領域が正孔注入層130を含む場合、正孔注入層は、例えば真空蒸着、スピンコーティング、キャスティング、Langmuir-Blodgett(LB)法等の種々の方法のいずれかによって、アノード120上に形成されてもよい。
【0350】
正孔注入層が真空蒸着を用いて形成される場合、真空蒸着条件は、正孔注入層を形成するために使用される材料、ならびに形成される正孔注入層の所望の構造および熱特性に応じて変化し得、例えば、真空蒸着は、約100℃~約500℃の温度、約10-8torr~約10-3Torrの圧力、および約0.01~約100Å/秒の蒸着速度で実施され得るが、蒸着条件はこれに限定されない。
【0351】
スピンコーティングを用いて正孔注入層を形成する場合、コーティング条件は、正孔注入層を形成するために使用される材料、ならびに形成される正孔注入層の所望の構造および熱特性に応じて変わり得る。例えば、塗布速度は、約2000rpm~約5000rpmの範囲であってよく、塗布後に溶媒を除去するために行われる加熱処理での温度は、約80℃~約200℃の範囲であってよいが、コーティング条件はこれに限定されない。
【0352】
正孔輸送層および電子阻止層を形成するための条件は、正孔注入層について上述した形成条件に基づいて規定することができる。
【0353】
正孔輸送領域の厚さは、約100Å~約10000Åであってよく、例えば約100Å~約1000Åであってよい。正孔輸送領域が正孔注入層および正孔輸送層を含む場合、正孔注入層の厚さは、約100Å~約10,000Åであってよく、例えば約100Å~約1000Åであってよく、正孔輸送層の厚さは約50Å~約2,000Åであってよく、例えば約100Å~約1500Åであってよい。正孔輸送領域、HIL、およびHTLの厚さがこれらの範囲内にあるとき、動作電圧の大幅な増加なしに満足な正孔輸送特性が得られ得る。
【0354】
発光層の厚さは、約100Å~約1000Åであってよく、例えば、約200Å~約600Åであってよい。発光層の厚さがこれらの範囲内にある場合、発光層は、動作電圧の大幅な増加なしに、改善された発光特性を有し得る。
【0355】
次に、電子輸送領域は、発光層上に配置される。
【0356】
電子輸送領域は、第2の電子輸送層、式Iの化合物を含む第1の電子輸送層、および電子注入層のうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0357】
電子輸送層の厚さは、約20Å~約1000Åであってよく、例えば、約30Å~約300Åであってよい。電子輸送層の厚さがこれらの範囲内にあるとき、電子輸送層は、動作電圧の大幅な増加なしに、改善された電子輸送補助能力を有し得る。
【0358】
電子輸送層の厚さは、約100Å~約1000Åであってよく、例えば、約150Å~約500Åであってよい。電子輸送層の厚さがこれらの範囲内にあるとき、電子輸送層は、動作電圧の大幅な増加なしに、満足な電子輸送能力を有し得る。
【0359】
また、電子輸送領域は、アノードからの電子の注入を容易にすることができる電子注入層(EIL)を含むことができる。
【0360】
電子注入層は、電子輸送層上に配置されてよく、カソードからの電子注入を容易にし、最終的には電力効率を向上させる役割を果たすことができ、例えばLiF、Liq、NaCl、CsF、Li2O、BaO、Yb等の、関連技術で用いられている、特に限定されないいかなる材料を用いて形成することができる。
【0361】
電子注入層膜は、LiF、NaCl、CsF、Li2OおよびBaOから選択された少なくとも一つを含むことができる。
【0362】
EILの厚さは、約1Å~約100Åであってよく、または約3Å~約90Åであってもよい。電子注入層の厚さがこれらの範囲内にあるとき、電子注入層は、動作電圧の大幅な増加なしに、満足な電子注入能力を有することができる。
【0363】
アノードは、有機層上に配置することができる。アノードの材料は、仕事関数の小さい金属、合金、導電性化合物、またはそれらの組み合わせであってよい。アノード120の材料の具体例は、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム-リチウム(Al-Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)、銀(Ag)等であってよい。トップエミッション型の発光素子を製造するために、アノード120は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)または酸化インジウム亜鉛(IZO)から光透過性電極として形成されてもよい。
【0364】
本発明の別の態様によれば、アノード電極(120)上に、正孔注入層(130)、正孔輸送層(140)、任意の電子阻止層、発光層(130)、式Iの化合物を含む第1の電子輸送層(161)、第2の電子輸送層(162)、電子注入層(180)、およびカソード(190)の他の層がこの順序で堆積されるか、または層がカソード(190)から始まって、他の方法で堆積される、有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法が提供される。
【0365】
[有機半導体層]
本発明に係る有機電子素子は、有機半導体層を含むことができ、少なくとも一つの有機半導体層は、式Iの化合物を含む。
【0366】
本発明に係る有機電子素子の有機半導体層は、本質的に非発光性または非発光性である。
【0367】
有機半導体層は、電子輸送層、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子阻止層、正孔阻止層または電子注入層、好ましくは電子輸送層または発光層、より好ましくは電子輸送層、であり得る。
【0368】
一実施形態によれば、有機半導体層は、光活性層とカソード層との間、好ましくは発光層または光吸収層とカソード層との間に配置することができ、好ましくは、有機半導体層は電子輸送層である。
【0369】
一実施形態によれば、有機半導体層は、少なくとも一つのアルカリハロゲン化物またはアルカリ有機錯体を含んでいてもよい。
【0370】
[有機電子素子]
本発明に係る有機電子素子は、式Iによる化合物を含む有機半導体層を含む。
【0371】
一実施形態に係る有機電子素子は、基板、アノード層、式1の化合物を含む有機半導体層、およびカソード層を含むことができる。
【0372】
一実施形態に係る有機電子素子は、式Iの少なくとも一つの化合物を含む少なくとも一つの有機半導体層、少なくとも一つのアノード層、少なくとも一つのカソード層、および少なくとも一つの発光層を含み、有機半導体層は、好ましくは発光層とカソード層との間に配置される。
【0373】
本発明に係る有機発光ダイオード(OLED)は、基板上に順次積層されたアノード、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、少なくとも一つの式1の化合物を含む電子輸送層(ETL)、およびカソードを含むことができる。なお、HTL、EML、ETLは、有機化合物からなる薄膜である。
【0374】
一実施形態に係る有機電子素子は、発光素子、薄膜トランジスタ、電池、表示装置または光発電電池、および好ましくは発光素子であり得る。
【0375】
一実施形態によれば、OLEDは、以下の層状構造を有することができ、当該層は、以下の順序を有する:
アノード層、正孔注入層、任意の第一の正孔輸送層、任意の第二の正孔輸送層、発光層、本発明に係る式1の化合物を含む電子輸送層、電子注入層、およびカソード層。
【0376】
本発明の別の態様によれば、有機電子素子の製造方法が提供され、当該方法は:
少なくとも一つの蒸着源、好ましくは二つの蒸着源およびより好ましくは少なくとも三つの蒸着源を用いる。
【0377】
適切であり得る堆積方法は:
真空熱蒸発による堆積;
溶液処理による堆積、好ましくは当該処理がスピンコーティング、印刷、キャスティングから選択され、および/または
スロットダイコーティング
を含む。
【0378】
本発明の様々な実施形態によれば、以下を使用する方法が提供され:
本発明に係る式1の化合物を放出するための第1の蒸着源、および
アルカリハロゲン化物またはアルカリ有機錯体、好ましくはハロゲン化リチウムまたはリチウム有機錯体を放出するための第2の蒸着源;
当該方法は、電子輸送層積層体を形成する工程を含み、それによって有機発光ダイオード(OLDE)を形成する:
第1の電子輸送層は、第1の堆積源から本発明に係る式1の化合物を放出することによって形成され、第2の堆積源からアルカリハロゲン化物またはアルカリ有機錯体、好ましくはハロゲン化リチウムまたはリチウム有機錯体を放出することによって形成される。
【0379】
本発明の様々な実施形態によれば、前記方法は、アノード電極上に、発光層、および、前記アノード電極と前記第1の電子輸送層との間に、正孔注入層を形成すること、正孔輸送層を形成すること、または正孔阻止層を形成すること、からなる群から選択される少なくとも一つの層を形成することをさらに含むことができる。
【0380】
本発明の種々の実施形態によれば、前記方法は、さらに、有機発光ダイオード(OLED)を形成する工程を含んでもよく、
基板上に第1のアノード電極が形成され、
前記第1のアノード電極上に発光層が形成され、
前記発光層上に電子輸送層スタックが形成され、好ましくは第1の電子輸送層が発光層上に形成され、そして任意の第2の電子輸送層が形成され、
そして最後にカソード電極が形成され、
任意の正孔注入層、正孔輸送層および正孔阻止層が、第1のアノード電極と前記発光層との間にその順で形成され、前記任意の電子注入層が電子輸送層およびカソード電極の間に形成される。
【0381】
本発明の様々な実施形態によれば、前記方法は、第1の電子輸送層上に電子注入層を形成するステップをさらに含むことができる。しかしながら、本発明のOLEDの様々な実施形態によれば、OLEDは、電子注入層を含まなくてもよい。
【0382】
様々な実施形態によれば、OLEDは、以下の層状構造を有することができ、当該層は、以下の順序を有する:
アノード、第一の正孔輸送層、第二の正孔輸送層、発光層、任意の第二の電子輸送層、本発明に係る式1の化合物を含む第一の電子輸送層、任意の電子注入層、およびカソード。
【0383】
本発明の別の態様によれば、本出願全体にわたって記載される任意の実施形態に係る少なくとも一つの有機発光素子を含む電子素子が提供され、好ましくは、電子素子は、本出願全体にわたって記載される実施形態のうちの一つにおいて有機発光ダイオードを含む。より好ましくは、電子素子は表示装置である。
【0384】
以下、実施例を参照して実施形態をより詳細に説明する。
【0385】
ただし、本開示は以下の実施例に限定されない。ここで、例示的な態様を詳細に参照する。
【0386】
[式1の化合物の調製]
式1の化合物は、以下の記載のように調製してもよいし、HuangらのChemical Communications (Cambridge, United Kingdom) (2012), 48(77), 9586-9588によって開示されているように調製してもよい。
【0387】
鈴木カップリングの一般的手順
【0388】
【0389】
セットアップは不活性雰囲気下で行われる。フラスコに、窒素向流下で、A、B、C、およびDを充填する。水(蒸留水)をN2(撹拌下)で30分間以下脱気する。溶媒混合物を添加し、混合物を撹拌しながら加熱する(TLC対照)。
【0390】
式1の化合物の合成
2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-3-イル)-4-フェニル-6-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,5-トリアジンの合成
【0391】
【0392】
試薬および反応条件:2-クロロ-4-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-3-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(1.0当量)、4,4,5,5-テトラメチル-2-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン(1.2当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.02当量)、炭酸カリウム(2.0当量)。75℃にて21時間(210mL、THF/H2O 2/1)。
【0393】
TLCによる反応完了後、5℃に冷却した。沈殿物を濾過し、ジクロロメタンに溶解し、そして水で洗浄した。フロリジルのパッドで有機相を濾過し、次いで濃縮した。ヘキサンを添加して、沈殿を形成し、濾過し、さらにトルエン中で再結晶した。15.6g(収率69%)。MS(ESI):670(M+H)。
【0394】
2-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-4-フェニル-6-(4-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,5-トリアジンの合成
【0395】
【0396】
試薬および反応条件:2-クロロ-4-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(1.0当量)、4,4,5,5-テトラメチル-2-(4-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン(1.2当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.02当量)、炭酸カリウム(2.0当量)。75℃にて66時間(180mL、THF/H2O 2/1)。
【0397】
TLCによる反応完了後、5℃まで冷却した。沈殿物を濾過し、ジクロロメタンに溶解し、そして水で洗浄した。フロリジルのパッドで有機相を濾過し、次いで濃縮した。ヘキサンを添加して十分な沈殿を形成し、濾過し、そしてトルエンで再結晶した。16.0g(収率87%)。MS(ESI):654(M+H)。
【0398】
2-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-4-フェニル-6-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,5-トリアジンの合成
【0399】
【0400】
試薬および反応条件:2-クロロ-4-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(1.0当量)、4,4,5,5-テトラメチル-2-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン(1.2当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.02当量)、炭酸カリウム(2.0当量)。90℃にて21時間(150mL、THF/H2O 2/1)。
【0401】
TLCによる反応完了後、沈殿物を濾過し、水およびメタノールで洗浄し、そしてメタノール中で洗浄した。次いで、固体を熱クロロホルムに溶解し、シリカゲルのパッドで濾過した。溶媒を蒸発させた。次いで固体をヘキサン中で洗浄した。15.3g(収率84%)。MS(ESI):670(M+H)。
【0402】
2,4-ジ(ナフタレン-2-イル)-6-(4-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,5-トリアジンの合成
【0403】
【0404】
試薬および反応条件:2-クロロ-4,6-ジ(ナフタレン-2-イル)-1,3,5-トリアジン(1.0当量)、4,4,5,5-テトラメチル-2-(4-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン(1.2当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.02当量)、炭酸カリウム(2.0当量)。75℃において64時間(180mL、THF/H2O 2/1)。
【0405】
TLCによる反応完了後、5℃に冷却した。沈殿物を濾過し、クロロホルムに溶解し、水で洗浄した。有機相をフロリジルのパッドで濾過し、次いで濃縮した。ヘキサンを添加して十分な沈殿物を形成し、濾過し、トルエン中でさらに洗浄した。16.3g(収率90%)。MS(ESI):664(M+H)。
【0406】
2-([1,1’-ビフェニル]-2-イル)-4-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-6-(3-(1,2,2-トリフェニル-ビニル)フェニル)-1,3,5-トリアジンの合成
【0407】
【0408】
試薬および反応条件:2-([1,1’-ビフェニル]-2-イル)-4-クロロ-6-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-1,3,5-トリアジン(1.0当量)、4,4,5,5-テトラメチル-2-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン(1.2当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.02当量)、炭酸カリウム(2.0当量)。75℃において21時間(75mL、THF/H2O 2/1)。
【0409】
TLCによる反応完了後、溶液を減圧蒸留した。粗固形物をクロロホルムに溶解し、水で洗浄した。有機相をフロリジルのパッドで濾過し、溶媒を蒸発させた。固体をジクロロメタンに溶解し、アセトニトリルを添加して析出させた。9.8g(収率92%)。MS(ESI):730(M+H)。
【0410】
2,4-ジ(ナフタレン-2-イル)-6-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,5-トリアジンの合成
【0411】
【0412】
試薬および反応条件:2-クロロ-4,6-ジ(ナフタレン-2-イル)-1,3,5-トリアジン(1.0当量)、4,4,5,5-テトラメチル-2-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン(1.2当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.04当量)、炭酸カリウム(2.0当量)。75℃において21時間(175mL、THF/H2O 2/1)。
【0413】
TLCによる反応完了後、溶媒を蒸発させた。粗固形物をクロロホルムに溶解し、水で洗浄した。有機相をシリカゲルのパッドで濾過した。溶媒を一部減圧留去させ、析出物を濾過した。12.0g(収率67%)。MS(ESI):664(M+H)。
【0414】
2-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-4-(ナフタレン-2-イル)-6-(3-(1,2,2-トリフェニル-ビニル)フェニル)-1,3,5-トリアジンの合成
【0415】
【0416】
試薬および反応条件:2-(4-クロロフェニル)-4-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-6-(ナフタレン-2-イル)-1,3,5-トリアジン(1.0当量)、4,4,5,5-テトラメチル-2-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン(1.2当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.02当量)、炭酸カリウム(2.0当量)。90℃にて17時間(160mL、ジオキサン/H2O 4/1)。
【0417】
TLCによる反応完了後、5℃に冷却した。析出物を濾過し、水で洗浄した。次いで、クロロホルムに溶解し、フロリジルのパッドで濾過し、そして溶媒を蒸発させた。固体をo-キシレンで再結晶した。3.5g(収率20%)。MS(ESI):704。
【0418】
2-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-4-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-6-(3-(1,2,2-トリフェニル-ビニル)フェニル)-1,3,5-トリアジンの合成
【0419】
【0420】
試薬および反応条件:2-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-4-クロロ-6-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-1,3,5-トリアジン(1.0当量)、4,4,5,5-テトラメチル-2-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン(1.2当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.02当量)、炭酸カリウム(2.0当量)。75℃にて24時間(125mL、THF/H2O 4/1)。
【0421】
TLCによる反応完了後、反応物を室温まで冷却し、沈殿物を濾過し、クロロホルムに溶解し、水で洗浄した。有機相をフロリジルのパッドで濾過し、次いで溶媒を蒸発させた。9.6g(収率78%)。MS(ESI):730(M+H)。
【0422】
2-フェニル-4-(4-(ピリジン-2-イル)フェニル)-6-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,5-トリアジンの合成
【0423】
【0424】
試薬および反応条件:2-クロロ-4-フェニル-6-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,5-トリアジン(1.0当量)、2-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)ピリジン(1.2当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.02当量)、炭酸カリウム(2.0当量)。75℃において21時間(90mL、THF/H2O 2/1)。
【0425】
TLCによる反応完了後、溶媒を蒸発させた。粗固形分をジクロロメタンに溶解し、水で洗浄した。有機相をフロリジルのパッドで濾過し、溶媒を蒸発させた。粗固形分をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン 3/1からヘキサン/ジクロロメタン 2/1)によって精製した。集められた固形分をジクロロメタンに溶解し、メタノールの添加により析出させた。6.2g(収率46%)。MS(ESI):640(M+H)。
【0426】
2-(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-4-フェニル-6-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,5-トリアジンの合成
【0427】
【0428】
試薬および反応条件:2-クロロ-4-(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(1.0当量)、4,4,5,5-テトラメチル-2-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン(1.2当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.02当量)、炭酸カリウム(2.0当量)。100℃にて18時間(600mL、トルエン/エタノール/H2O 4/1/1)。
【0429】
TLCによる反応完了後、溶媒を蒸発させた。粗混合物をクロロホルムに溶解し、水で洗浄した。有機相をシリカゲルのパッドで濾過し、溶媒を蒸発させた。生じたオイルを、ヘキサン/ジクロロメタンの混合液中で一晩撹拌した。固形分を濾過し、シクロヘキサンとトルエンの熱混合液に溶解した。少量の不溶な副生物を濾別した。溶液を室温まで冷却し、析出物を濾過した。10.5g(収率40%)。MS(ESI):804(M+H)。
【0430】
2-フェニル-4,6-ビス(4-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,5-トリアジンの合成
【0431】
【0432】
試薬および反応条件:2,4-ジクロロ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(1.0当量)、4,4,5,5-テトラメチル-2-(4-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン(2.2当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.04当量)、炭酸カリウム(4.0当量)。90℃にて17時間(126mL、ジオキサン/H2O 2/1)。
【0433】
TLCによる反応完了後、反応を室温まで冷却し、溶媒を蒸発させた。粗化合物をクロロホルムに溶解し、水で洗浄した。有機相をシリカゲルのパッドで濾過し、次いで溶媒を蒸発させた。粗固形物を、まずトルエン中で、次いでクロロベンゼン中で再結晶した。5.5g(収率49%)。MS(ESI):818(M+H)。
【0434】
2-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-4,6-ビス(4-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,5-トリアジンの合成
【0435】
【0436】
試薬および反応条件:2,4-ジクロロ-6-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-1,3,5-トリアジン(1.0当量)、4,4,5,5-テトラメチル-2-(4-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン(2.2当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.04当量)、炭酸カリウム(4.0当量)。90℃にて17時間(112mL、ジオキサン/H2O 2/1)。
【0437】
TLCによる反応完了後、反応を室温まで冷却し、溶媒を蒸発させた。粗化合物をクロロホルムに溶解し、水で洗浄した。析出物を濾過し、水で洗浄した。次いで、それをジクロロメタンに溶解し、フロリジルのパッドで濾過し、次いで濃縮して析出物を発生せた。シクロヘキサンの添加により析出物を生じさせ、固体を濾過し、トルエンで再結晶した。4.1g(収率36%)。MS(ESI):908(M+H)。
【0438】
2-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-4,6-ビス(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,5-トリアジンの合成
【0439】
【0440】
試薬および反応条件:2,4-ジクロロ-6-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-1,3,5-トリアジン(1.0当量)、4,4,5,5-テトラメチル-2-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン(2.2当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.04当量)、炭酸カリウム(4.0当量)。100℃にて19時間(150mL、THF/H2O 2/1)。
【0441】
TLCによる反応完了後、溶媒を蒸発させた。粗混合物をクロロホルムに溶解し、水で洗浄した。有機相をシリカゲルのパッドで濾過し、溶媒を蒸発させた。生じたオイルをヘキサン/ジクロロメタンの混合液中で一晩撹拌した。次いで固形物を濾過し、クロロホルムに溶解し、ヘキサンの添加により析出させた。最後にジクロロメタンに溶解し、シクロヘキサノンの添加により析出させた。6.2g(収率36%)。MS(ESI):908(M+H)。
【0442】
中間体の合成
Chemical Communications, 48(77), 9586-9588; 2012に従った、4,4,5,5-テトラメチル-2-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン、4,4,5,5-テトラメチル-2-(4-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン、(2-(3-ブロモフェニル)エテン-1,1,2-トリイル)トリベンゼンおよび(2-(4-ブロモフェニル)エテン-1,1,2-トリイル)トリベンゼンの合成。
【0443】
【0444】
Angewandte Chemie International Edition, 54(50), 15284-15288; 2015に従った、2-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)ピリジンの合成。
【0445】
【0446】
米国特許公開公報20130248830(2013年9月26日)に従った、2-クロロ-4,6-ジ(ナフタレン-2-イル)-1,3,5-トリアジンの合成。
【0447】
【0448】
Repub. Korean Kongkae Taeho Kongbo, 2014094408(2014年6月30日)に従った、2,4-ジクロロ-6-(ナフタレン-2-イル)-1,3,5-トリアジンの合成。
【0449】
【0450】
PCT国際出願(2016204375、2016年12月22日)に従った、2-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジンの合成。
【0451】
【0452】
2,4-ジクロロ-6-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-1,3,5-トリアジンの合成は、ナフチル類似体である2,4-ジクロロ-6-(ナフタレン-2-イル)-1,3,5-トリアジンについて報告されている手順と同じ手順に従ってグリニャール反応によって合成した。
【0453】
【0454】
2-(3-ブロモ-5-クロロフェニル)ベンゾ[d]チアゾールの合成は、2-(4-ブロモフェニル)ベンゾ[d]チアゾール(欧州特許出願1746096、2007年1月24日より)の合成と同じ手順に従って、3-ブロモ-5-クロロ安息香酸を出発物質として合成した。
【0455】
【0456】
2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-3-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロランの合成は、PCT国際出願(2015165826、2015年11月5日)に従って実行した。
【0457】
【0458】
2-クロロ-4-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-3-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジンの合成
【0459】
【0460】
試薬および反応条件:2,4-ジクロロ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(1.0当量)、2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-3-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(0.8当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.02当量)、炭酸カリウム(2.0当量)。65℃において4時間(270mL THF/トルエン/H2O 1/1/1)。
【0461】
TLCによる反応完了後、溶媒を蒸発させた。粗混合物をトルエンに溶解し、水で洗浄した。有機相をフロリジルのパッドで濾過し、一部の溶媒を蒸発させた。ヘキサンを添加すると、沈殿が観察された。次いで、固体を濾過し、トルエン中で再結晶させた。12.6g(収率37%)。GC-MS:373。
【0462】
2-クロロ-4-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジンの合成
【0463】
【0464】
試薬および反応条件:2,4-ジクロロ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(1.0当量)、ジベンゾ[b,d]フラン-3-イルボロン酸(0.8当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.02当量)、炭酸カリウム(2.0当量)。100℃において1時間(1110mL THF/トルエン/H2O 1/1/1)。
【0465】
TLCによる反応完了後、反応物を5℃に冷却した。沈殿物を濾過し、水で洗浄した。固体を60℃でクロロホルムに溶解し、シリカゲルのパッドで濾過し、一部の溶媒を蒸発させた。ヘキサンを添加すると沈殿物が生じた。固体を濾過し、昇華によってさらに精製した。63g(収率41%)。GC-MS:357。
【0466】
2-クロロ-4-フェニル-6-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,5-トリアジンの合成
【0467】
【0468】
試薬および反応条件:2,4-ジクロロ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(1.0当量)、4,4,5,5-テトラメチル-2-(3-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン(0.8当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.02当量)+Pd(dppf)Cl2(0.05当量)、炭酸カリウム(2.0当量)。65℃において13時間(450mL THF/トルエン/H2O 1/1/1)。
【0469】
TLCによる反応完了後、水相を分離した。有機相を水で抽出した。溶媒を蒸発させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン 4/1)によって精製し、そのようにして直接使用した。11.5g(収率25%)。GC-MS:521。
【0470】
2-クロロ-4-(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジンの合成
【0471】
【0472】
試薬および反応条件:2,4-ジクロロ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(1.0当量)、2-(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(0.8当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.02当量)、炭酸カリウム(2.0当量)。95℃において7時間(900mL THF/トルエン/H2O 1/1/1)。
【0473】
TLCによる反応完了後、水相を分離し、有機相を水で洗浄した。一部の有機溶媒を蒸発させ、アセトニトリルを添加すると、沈殿が観察された。次いで、固体を濾過し、カラムクロマトグラフィー(トルエン/ヘキサン 1/2)によりさらに精製した。14.5g(収率42%)。ESI-MS:508(M+H)。
【0474】
2-クロロ-4-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-6-(ナフタレン-2-イル)-1,3,5-トリアジンの合成
【0475】
【0476】
試薬および反応条件:2,4-ジクロロ-6-(ナフタレン-2-イル)-1,3,5-トリアジン(1.0当量)、ジベンゾ[b,d]フラン-3-イルボロン酸(0.8当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.02当量)、炭酸カリウム(2.0当量)。90℃において2時間(2550mL、THF/トルエン/H2O 1/1/1)。
【0477】
TLCによる反応完了後、反応を室温まで冷却した。沈殿物を濾過し、水で洗浄した。固体を熱クロロベンゼンに溶解し、シリカゲルのパッドで濾過し、一部の溶媒を蒸発させた。固体を濾過し、酢酸エチルで洗浄し、昇華によってさらに精製した。130.8g(収率41%)。ESI-MS:408(M+H)。
【0478】
2-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-4-クロロ-6-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-1,3,5-トリアジンの合成
【0479】
【0480】
試薬および反応条件:2-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン(1.0当量)、ジベンゾ[b,d]フラン-3-イルボロン酸(0.8当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.02当量)、炭酸カリウム(2.0当量)、65℃において4時間(2400mL THF/トルエン/H2O 1/1/1)。
【0481】
TLCによる反応完了後、反応を室温まで冷却した。沈殿物を濾過し、水で洗浄した。固体を熱トルエンに溶解し、シリカゲルのパッドで熱濾過し、一部の溶媒を蒸発させた。固体を濾過した。60g(収率27%)。ESI-MS:434(M+H)。
【0482】
2-([1,1’-ビフェニル]-2-イル)-4-クロロ-6-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-1,3,5-トリアジンの合成
【0483】
【0484】
試薬および反応条件:2,4-ジクロロ-6-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-1,3,5-トリアジン(1.0当量)、[1,1’-ビフェニル]-2-イルボロン酸(0.8当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.05当量)、炭酸カリウム(2.5当量)。65℃において11時間(570mL THF/トルエン/H2O 1/1/1)。
【0485】
TLCによる反応完了後、溶媒を蒸発させた。粗混合物をクロロホルムに溶解し、水で洗浄した。有機相をシリカゲルのパッドで濾過し、一部の溶媒を蒸発させた。ヘキサンを添加すると、沈殿が観察された。次に固体を濾過し、ジクロロメタン中で撹拌し、再び濾過した。12.8g(収率39%)。GC-MS:433。
【0486】
[有機電子素子の製造の一般的手順]
一般的な有機電子素子としては、有機発光ダイオード(OLED:organic light-emitting diode)、有機光電池(OSC:organic photovoltaic cell)、有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field-effect transistor)または有機発光トランジスタ(OLET:organic light emitting transistor)が挙げられる。
【0487】
有機電子素子の任意の機能層は、式1の化合物を含んでもよく、または、式1の化合物から構成されていてもよい。
【0488】
OLEDは、個々の機能層から構成させて、上部電極を介して発光するトップエミッション型OLEDを形成してもよい。ここで、個々の機能層の順序は、以下のようであってよい:不透明アノード層(下部電極)/正孔注入層/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/透明カソード層(上部電極)。「/」は、個々の層間の接触面を示す。各層自体は、数層のサブ層(sub-layer)によって構成されていてもよい。
【0489】
OLEDは、個々の機能層から構成させて、下部電極を介して発光するボトムエミッション型OLEDを形成してもよい。ここで、個々の機能層の順序は、以下のようであってよい:透明アノード層(下部電極)/正孔注入層/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/不透明カソード層(上部電極)。「/」は、個々の層間の接触面を示す。各層自体は、数層のサブ層によって構成されていてもよい。
【0490】
有機電子素子において式1の化合物を利用する技術的利点を実証するために、トップエミッション型OLED素子を作製した。
【0491】
[トップエミッション型素子の製造]
トップエミッション型素子について、実施例1~8および比較例1では、ガラス基板を50mm×50mm×0.7mmの大きさに切った。イソプロピルアルコールで5分間超音波洗浄した後、純水で5分間超音波洗浄し、その後UVオゾンで30分間再度洗浄し、第1電極を作製した。100nmのAgを10-5mbar~10-7mbarの圧力で蒸着させて、アノードを形成した。次に、92体積%のビフェニル-4-イル(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-アミン(CAS 1242056-42-3)および8体積%の4,4’,4''-((1E,1’E,1''E)-シクロプロパン-1,2,3-トリイリデントリス(シアノメタニルイリデン))トリス(2,3,5,6-テトラフルオロベンゾニトリル)をAg電極に真空蒸着させて、10nmの厚さを有するHILを形成した。次に、ビフェニル-4-イル(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-アミン(CAS 1242056-42-3)をHILに真空蒸着させて、118nmの厚さを有するHTLを形成した。次に、N,N-ビス(4-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)フェニル)-[1,1’:4’,1''-テルフェニル]-4-アミン(CAS 1198399-61-9)をHTLに真空蒸着させて、5nmの厚さを有する電子阻止層(EBL)を形成した。
【0492】
トップエミッション型素子に関し、97体積%のH09(Sun Fine Chemicals)をEMLホストとして、3体積%のBD200(Sun Fine Chemicals)を蛍光青ドーパントとして、EBL上に蒸着し、厚さ20nmの青色発光EMLを形成した。次に、2,4-ジフェニル-6-(4’,5’,6’-トリフェニル-[1,1’:2’,1'':3'',1''':3''',1''''-キンキフェニル]-3''''-イル)-1,3,5-トリアジンを、発光層に蒸着させて、5nmの厚さを有する正孔阻止層を形成した。次に、実施例LL~MMおよび比較例NNに従って、正孔阻止層上に、電子輸送層を31nmの厚さで形成した。電子輸送層は、50重量%の式1の化合物(または比較化合物)および50重量%の8-ヒドロキシキノリノラート-リチウム(LiQ)を含む。
【0493】
次に、厚さ2nmのYbを蒸着して、電子注入層を電子輸送層上に形成した。Agを、10-7mbarにおいて0.01~1Å/sの速度で蒸着して、厚さ11nmのカソードを形成した。ビフェニル-4-イル(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-アミンのキャップ層を厚さ75nmのカソード上に形成した。
【0494】
OLED積層体は、ガラススライドを用いて素子を封入することにより、周囲環境から保護されている。これにより、さらなる保護のためのゲッター材料を含んだ空洞が形成される。
【0495】
先行技術と比較した本発明の実施例の性能を評価するために、トップエミッション型OLEDの光出力を周囲条件下(20℃)において測定する。Keithley 2400のソースメータを用いて電流電圧の測定を行い、「V」として記録する。トップエミッション型素子について、10mA/cm2におけるCIE座標および輝度(単位:カンデラ)を、Instrument Systems製の分光計CAS140 CT(Deutsche Akkreditierungsstelle (DAkkS)によって較正されている)を用いて測定する。電流効率Ceffは、10mA/cm2で、cd/Aで測定する。
【0496】
トップエミッション型素子において、発光は前方に向けられ、非ランバート反射によるものであり、また、微小空洞に大きく依存する。従って、外部量子効率(EQE)および出力効率(lm/W)は、ボトムエミッション型素子と比べて高い。
【0497】
【0498】
【0499】
[融点]
融点(Tm)は、上述のTGA-DSC測定のDSC曲線から、または、個別のDSC測定から、ピーク温度として測定される(Mettler Toledo DSC 822e、サンプルを、室温から溶融の完了まで、純窒素を流しながら、10K/分の加熱速度で加熱する。4~6mgのサンプル量を、蓋付きの40μLのMettler Toledo アルミニウムパンに入れる。蓋には1mm未満の孔が開けられている)。
【0500】
[ガラス転移温度]
ガラス転移温度(Tg)は、DIN EN ISO 11357(2010年3月公開)に記載されているように、窒素下で、そして示差走査熱量計Mettler Toledo DSC 822eにおける10K/分の加熱速度で測定される。
【0501】
[レート開始温度]
気相への遷移に対するレート開始温度(TRO)は、100mgの化合物をVTE源へ入れることで測定される。VTE源として、Kurt J. Lesker Company (www.lesker.com)またはCreaPhys GmbH (http://www.creaphys.com)によって提供されている、有機材料の点源を使用する。VTE(真空熱蒸着、vacuum thermal evaporation)源の温度は、VTE源中の化合物と直接接触する熱電対によって測定する。
【0502】
VTE源は、真空チャンバ内で10-7mbar~10-8mbarの圧力下において、15K/分の一定の速度で加熱され、VTE源内部の温度は熱電対で測定した。化合物の蒸着を、QCM検出器を用いて検出する。当該検出器は、検出器の石英結晶上に積層された化合物を検出する。石英結晶上への積層速度は、1秒間当たりのオングストロームで測定される。レート開始温度を測定するために、VTE源の温度に対して対数目盛上の積層速度をプロットする。レート開始は、QCM検出器上に顕著な蒸着が起こるときの温度である(0.02Å/秒の速度で定義される)。VTE源を3回加熱冷却し、2回目および3回目のみの実施から得られた結果を、レート開始温度の測定に使用する。レート開始温度の測定によって、化合物の揮発性の間接的な尺度である。レート開始温度が高いほど、化合物の揮発性が低い。
【0503】
[本発明の技術的効果]
まとめると、固有の分子構造である式1の化合物を含む有機電素子は、高い電子効率を有する。ガラス転移温度およびレート開始温度は、有機半導体層の大量生産に許容し得る範囲内である。
【0504】
表1:比較化合物の構造式、ガラス転移温度、融点、レート開始速度
【0505】
【0506】
表2:発明化合物の構造式、ガラス転移温度、融点、レート開始温度
【0507】
【0508】
【0509】
【0510】
表1には、比較化合物のガラス転移温度、溶融温度、レート開始温度を示す。
【0511】
表2には、式1の化合物のガラス転移温度、溶融温度、レート開始温度を示す。
【0512】
表3:式Iの化合物と比較化合物およびアルカリ有機錯体を含む電子輸送層を含むトップエミッション型OLED素子の性能データ。発明実施例は増加されたcd/A効率を示す。
【0513】
【表7】
本発明は、実用的な実施形態の例として現在考えられるものと関連させて説明したが、本発明は開示された実施形態に限定されるものではなく、反対に、添付されている特許請求の範囲の技術思想および範囲内に含まれる様々な変更および等価な構成を包含するものとして理解されるべきである。従って、上述の実施形態は、例示的であり、本発明をなんら限定しないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0514】
【
図1】発光層、一つの電子輸送層、および電子注入層を有する、本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の概略断面図である。
【
図2】発光層および二つの電子輸送層を有する本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の概略断面図である。
【
図3】発光層および三つの電子輸送層を有する本発明の例示的な実施形態に係るOLEDの概略断面図である。
【
図4】発光層および一つの電子輸送層を有する本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の概略断面図である。
【
図5】発光層および二つの電子輸送層を有する本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の概略断面図である。
【
図6】発光層および三つの電子輸送層を有する本発明の例示的な実施形態に係るOLEDの概略断面図である。