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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】イメージング剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 491/048 20060101AFI20230901BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20230901BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20230901BHJP
   A61K 31/513 20060101ALN20230901BHJP
   A61P 25/28 20060101ALN20230901BHJP
   A61P 25/16 20060101ALN20230901BHJP
   A61P 25/14 20060101ALN20230901BHJP
   A61P 25/30 20060101ALN20230901BHJP
   A61P 25/18 20060101ALN20230901BHJP
【FI】
C07D491/048 CSP
A61K51/04 200
G01T1/161 A
A61K31/513
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/30
A61P25/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020529572
(86)(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018082649
(87)【国際公開番号】W WO2019105913
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】17204896.9
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514232085
【氏名又は名称】ユーシービー バイオファルマ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メルシエール、ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】バルデ、アン
(72)【発明者】
【氏名】バーメイレン、セリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ウッド、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】マギーレ、ラルフ
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-535275(JP,A)
【文献】PET用放射性薬剤の製造および品質管理 第4版,2011年01月,第27~29頁、第95~125頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
G01T
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ia)の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【化1】
【請求項2】
式(Ib)の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【化2】

(式中、フッ素は18Fである。)
【請求項3】
式(Ic)の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【化3】
【請求項4】
アトロプ異性体(-)が、少なくとも95:5の割合で、他のアトロプ異性体に対して存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
D1受容体に対するD1アロステリックモジュレーターの効果のインビボ定量化に使用するための、請求項1に記載の式(Ia)の化合物または請求項2に記載の式(Ib)の化合物。
【請求項6】
D1受容体に対するD1アロステリックモジュレーターの効果をインビトロまたはエキソビボで定量化するための、請求項に記載の式(Ic)の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射標識4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イル)誘導体および放射性トレーサーとしての、特にイメージング剤としてのそれらの使用に関する。
【0002】
特に、本発明は、放射標識6-[2-(フルオロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル]-1,5-ジメチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン化合物、および放射性トレーサーとしての、特にイメージング剤としてのそれらの使用に関する。
【0003】
さらに特に、本発明は、PETイメージング剤としての放射標識6-[2-(フルオロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル]-1,5-ジメチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
ヒト脳のドーパミン作動性ニューロンは、脳の健康および機能において中心的な役割を果たす。ドーパミン作動性神経伝達は、運動、認知および報酬行動にとって重要である。5つのシナプス後ドーパミン作動性神経受容体が特定されている(D~D)。
【0005】
モノアミンドーパミンは、GPCRの2つのファミリーを介して作用して、運動機能、報酬メカニズム、認知プロセスおよび他の生理学的機能を調節する。具体的には、ドーパミンは、主にG Gタンパク質に結合し、それによってcAMP産生を刺激するD1様(ドーパミンD1およびD5を含む)受容体、およびGi/q Gタンパク質に結合し、cAMP産生を減衰させるD2様(D2、D3およびD4を含む)受容体を介してニューロンに作用する。これらの受容体は、様々な脳の領域で広く発現されている。
【0006】
Stocchi,F.et al.Advances in dopamine receptor agonists for the treatment of Parkinson’s disease.Expert Opin Pharmacother 2016,17(14),1889-1902;Buckley,P.F.Broad therapeutic uses of atypical antipsychotic medications.Biol Psychiatry 2001,50(11),912-924;and Davidson,M.A.ADHD in adults:a review of the literature.J Atten Disord 2008,11(6),628-641に報告されるように、パーキンソン病、統合失調症、レストレスレッグス症候群およびADHDのために、ドーパミン作動性受容体でのアンタゴニストおよびアゴニスト作用様式に基づく医薬品が開発されている。
【0007】
しかしながら、一部のGPCRでは、サブタイプ間、例えばドーパミンD1とD5(D1様)またはD2とD3のリガンド結合部位の相同性が高いため、小分子を開発する、または十分な選択性を達成することが難しいことが判明しており、したがって既存の医薬品は副作用が完全にないわけではない。
【0008】
過去15年間にわたる、薬物開発における開発中止(attrition)を減少させるための多くの努力にもかかわらず、臨床試験に入る薬物が市場に届く可能性は依然として10%未満である。開発中止は、腫瘍学およびCNS薬物開発、特に生物学についての理解が限られている新規な標的で最も高い。Woodcock,J.and al.The FDA critical path initiative and its influence on new drug development.Annu Rev Med 2008,59,1-12に示されるように、より迅速でより良い決定を可能にする信頼性の高いトランスレーショナルな評価ツールを開発することが明確に必要とされている。
【0009】
生きているヒトの脳組織にアクセスすることは不可能であるため、CNS創薬をサポートするこのようなトランスレーショナルなツールの開発は、とりわけインビボイメージングなどの非侵襲的技術に依存しなければならない。ここ数年、陽電子放出断層撮影(PET)イメージングの使用が、CNS創薬をサポートするために広く開発されてきた。
【0010】
PETは、サイクロトロンで生成される同位体に依存する正確で高度な技術である。陽電子放出放射性核種が、例えば注射によって導入され、標的組織に蓄積する。これが崩壊すると陽電子を放出し、陽電子が近くの電子と即座に結合して、2つの識別可能なガンマ線が反対方向に同時に放出される。これらがPETカメラによって検出され、その起源を正確に示す。PETは非常に敏感な技術であるので、PETトレーサーまたはPETイメージング剤またはPETリガンドと呼ばれる少量の放射標識化合物を要する。
【0011】
PETイメージングは、ほとんどの小分子薬物候補に存在する原子の放射性同位元素の取り込みに依存しているため、特に適している。これは、前臨床および臨床薬物開発の様々な段階での意思決定プロセスをサポートするための定量的情報を提供することができる。
【0012】
例えば、PETイメージングは、生きている対象の脳内薬物動態情報を提供することができる。薬物候補の直接放射標識を通して、健康な対象と罹患した対象の両方での血液脳関門(BBB)浸透に関する情報を入手することができる。
【0013】
薬物開発プログラムの標的となるタンパク質/受容体用の検証されたPETイメージング剤の開発は、ブロッキング試験を通して、薬物候補の標的占有率または結合を評価する機会も提供する。これらの試験は、標的占有率と投与用量の関係、ならびに標的占有率の動態などの重要な情報を提供し得る。臨床開発の第I相で得られた場合、このような情報は、第II相POC試験に最も適切な用量範囲およびレジメンを選択するための意思決定となり得る。
【0014】
PETイメージング試験はまた、候補薬物の作用機序に関する洞察を提供し、患者の層別化、疾患進行の監視を可能にする、または薬理学の証拠として、もしくは第II相POC試験の客観的エンドポイントとして使用することができる。
【0015】
PETイメージング剤の設計には、必ずしも薬物候補の特性と足並みのそろわない特定の特性を有する化合物が必要である。
【0016】
化合物がPETイメージング剤として適切であるために必要とされる理想的な特性は、Zhang,L et al.Strategies to facilitate the discovery of novel CNS PET ligands.EJNMMI Radiopharmacy and Chemistry 2016,1(13),1-12;Need,A et al.Approaches for the discovery of novel positron emission tomography radiotracers for brain imaging.Clin.Transl.Imaging 2017,5(3),265-274;Pike,V.W.Considerations in the development of reversibly binding PET radioligands for brain imaging.Curr Med Chem.2016,23(18),1818-1869;Zhang,L.et al.Design and selection parameters to accelerate the discovery of novel central nervous system PET ligands and their application in the development of a novel phosphodiesterase 2A PET ligand.J Med Chem.2013,56(11),4568-4579に報告されている。しかしながら、これらの特性の適切な組み合わせは、多くの場合、達成が複雑である。
【0017】
さらに、インビボイメージングを超えて、インビトロまたはエキソビボで、例えば動物組織のオートラジオグラフィーで使用することができる放射性トレーサーも、薬物開発の意思決定において同様に重要である。これらの試験は、1つまたは複数の疾患に関連する特定の受容体を調節する化合物の作用機序を理解する、または化合物薬理作用から得られる標的密度の変化を理解するのに役立つ。
【0018】
D1様受容体は、多数の生理学的機能および行動プロセスに関与している。例えば、これらはシナプス可塑性、認知機能および目標指向運動機能だけでなく、報酬プロセスにも関与している。いくつかの生理学的/神経学的プロセスにおける役割のため、D1様受容体は、統合失調症の認知症状および陰性症状、古典的抗精神病療法に関連する認知障害、衝動性、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、パーキンソン病および関連する運動障害、ジストニア、ハンチントン病、レビー小体型認知症、アルツハイマー病、加齢に伴う認知低下、軽度認知障害(MCI)、薬物中毒睡眠障害およびアパシーを含む種々の障害に関与している。
Prante,O.,et al.Radioligands for the dopamine receptor subtypes.J Labelled Comp Radiopharm 2013,56(3-4),130-148に報告されているように、ドーパミン作動性神経受容体サブタイプのためにいくつかのPETイメージング剤が開発されている。
【0019】
しかしながら、これらのPETイメージング剤は、特に脳の新皮質におけるD1様受容体の選択性の欠如、不適切な薬物動態特性、または血液脳関門を通過して定量的測定を損ない得る放射性代謝産物の生成などの一定の欠点を呈する。
【0020】
これらのPETイメージング剤のほとんどはまた、アゴニストではなくアンタゴニストに基づいている。
【0021】
したがって、オルソステリックD1モジュレーター、ならびに内因性D1リガンドであるドーパミンのレベルに感受性であるため、D1様受容体のオルソステリックアゴニストイメージング剤、特にPETイメージング剤を開発することが望ましい。これにより、その受容体部位を標的とする薬物の効果に関するより正確な試験が可能になり、疾患状態における受容体刺激の変化を決定することが可能になる。
【0022】
近年、ドーパミン受容体、特にD1受容体の活性を調節し、D1媒介障害の治療に使用することができる非カテコール選択的D1様オルソステリックアゴニストまたはアロステリックモジュレーターを開発する新たな関心がある。
【0023】
D1非カテコールオルソステリックリガンドは、例えば、番号、国際公開第2014/072881号パンフレットで公開された国際特許出願に記載されている。
【0024】
D1様アロステリックモジュレーターは、例えば、番号、国際公開第2014/193781号パンフレットおよび番号、国際公開第2016/055479号パンフレットで公開された国際特許出願に記載されている。
【0025】
この新たな関心を考えると、薬剤候補の開発をサポートする、または目的の病理学におけるD1受容体の役割を描写するために、選択的D1様イメージング剤、特にインビトロ、エキソビボまたはインビボ試験およびヒト臨床試験で使用され得るD1様PETイメージング剤が必要である。
【発明の概要】
【0026】
したがって、本発明の1つの目的は、D1様受容体の選択的アゴニストであり、放射性トレーサーとして、特にPETイメージング剤として有用である化合物を提供することである。
【0027】
本発明による化合物を使用して、D1受容体の発現を画像化および定量化する方法を提供することも、本発明の目的である。
【0028】
本発明の別の目的は、内因性または外因性リガンドの有無にかかわらず、脳組織内の利用可能なD1様受容体の密度のインビトロまたはエキソビボ検出および定量化のための方法であって、組織を本発明による放射標識化合物で処理することと、前記放射標識化合物の結合レベルを測定することとを含む方法を提供することである。
【0029】
本発明の別の目的は、内因性または外因性リガンドの有無にかかわらず、脳内の利用可能なD1様受容体の密度のインビボ検出および定量化のための方法であって、有効量の本発明による放射標識化合物を対象に投与することと、関連関心領域中の前記放射標識化合物の脳取り込みレベルを測定することとを含む方法を提供することである。
【0030】
本発明のさらなる目的は、脳組織内のD1受容体の利用可能性に対するD1 PAMの効果のインビトロまたはエキソビボ検出および定量化のための方法であって、組織をD1 PAMと組み合わせた本発明による放射標識化合物で処理することと、PAMの存在下での前記放射標識化合物の結合増加を検出することとを含む方法を提供することである。
【0031】
本発明のさらに別の目的は、対象の脳内のD1受容体の利用可能性に対するD1 PAMの効果のインビボ検出および定量化のための方法であって、D1 PAMを投与することと組み合わせて、有効量の本発明による放射標識化合物を対象に投与することと、ベースライン条件と比較した、関連関心領域中の前記放射標識化合物の脳取り込みレベルの増加を検出することとを含む方法を提供することである。
【0032】
本発明のさらなる態様は、詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】ここで以下に記載される式(I)の化合物を使用した細胞ベースのD1受容体機能アッセイの結果を示す図である。
図2】ここで以下に記載される式(I)の放射標識化合物を使用したサルの脳インビボPETイメージングを示す図である。
図3】D1 PAMの非存在下または存在下でのヒト組換えD1受容体に対する、ここで以下に記載される式(I)の放射標識化合物、および放射標識D1アンタゴニストによるインビトロ結合実験を示す図である。
図4】D1 PAMの非存在下または存在下での、非ヒト霊長類(NHP)脳組織における式(I)の放射標識化合物を用いたオートラジオグラフィーエキソビボ結合実験を示す図である。
図5】D1 PAMの有無にかかわらず式(I)の放射標識化合物の存在下、サルで実施されたインビボ脳PETイメージング、および関連する標準化取り込み値(SUV)時間放射能曲線を示す図である。
図6】D1 PAMのインビボ投与後の脳の様々な領域における式(I)の放射標識化合物の増加した分布容積(V)を示す増強プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、放射標識されている式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、
【化1】

に関する。
【0035】
特に、本発明は、水素の少なくとも1つがHである;または炭素の少なくとも1つが11Cである;またはフッ素原子が18Fである、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0036】
一態様では、本発明は、以下で式(Ia)の化合物と呼ばれる、炭素の1つが11Cである、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩
【化2】

に関する。
【0037】
別の態様では、本発明は、以下で式(Ib)の化合物と呼ばれる、フッ素が18Fである、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩
【化3】

に関する。
【0038】
さらなる態様では、本発明は、以下で式(Ic)の化合物と呼ばれる、水素の1つまたは複数がHである、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩
【化4】

に関する。
【0039】
特定の化合物に関して本明細書で使用される「放射標識」という用語は、放射性同位元素で標識されたことを意味する。
【0040】
放射性同位元素とは、核が不安定で、α線、β線およびγ線の形態で放射線を自然放出することによって過剰なエネルギーを散逸する、質量の異なる化学元素のいくつかの種のいずれかである。本発明による放射性同位元素の具体例は、H、18Fおよび11Cである。
【0041】
本発明は、その範囲内に、上記の式(I)の化合物の薬学的に許容される塩を含む。医薬における使用のために、式(I)の化合物の塩は、薬学的に許容される塩である。しかしながら、他の塩は、本発明に使用する化合物またはその薬学的に許容される塩の調製において有用となり得る。薬学的に許容される塩の選択および調製の基礎となる標準的な原理は、例えば、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use,ed.P.H.Stahl&C.G.Wermuth,Wiley-VCH,2002に記載されている。
【0042】
本発明に関して、1つまたは複数の化合物への言及は、特定の異性体形態が具体的に言及されない限り、その可能な異性体形態の各々の化合物およびその混合物を包含することを意図している。
【0043】
特に、1つまたは複数の化合物への言及は、その可能なアトロプ異性体のそれぞれのその化合物を包含することを意図している。
【0044】
アトロプ異性体は、単結合の周りの回転が妨げられているために生じる立体異性体であり、立体ひずみまたは他の原因によるエネルギー差が、個々の配座異性体の単離を可能にするのに十分に高い回転の障壁を作り出す(例えば、Bringmann G.et al.Atroposelective Synthesis of Axially Chiral Biaryl Compounds.Angewandte Chemie International Edition.(2005)44(34):5384-5427参照)。
【0045】
アトロプ異性体は、一般的に異性体(+)および(-)として特定され、それらの配置は、当業者に周知の方法に従って旋光計で化合物の旋光度[α]を測定することによって決定される。
【0046】
一実施形態では、本発明は、アトロプ異性体(+)と(-)の50:50混合物である式(I)の放射標識化合物に関する。特定の実施形態では、本発明は、アトロプ異性体(-)から本質的になる式(I)の放射標識化合物に関する。
【0047】
アトロプ異性体への言及による「から本質的になる」という用語は、アトロプ異性体が他のアトロプ異性体に対して少なくとも95:5の比で存在することを意味する。
【0048】
本発明による式(I)の放射標識化合物は、D1のオルソステリックアゴニストである。これらは、セロトニン5-HT2A受容体にも結合する既存の放射標識D1トレーサーと比較して、D1様受容体に選択的であるため、特に有利である。
【0049】
したがって、一実施形態では、本発明は、D1様受容体の選択的オルソステリックアゴニストである、本明細書に記載される式(I)の化合物に関する。
【0050】
典型的には、本明細書に記載される式(I)の化合物は、少なくとも約8、好ましくは少なくとも約9のpKi値の形態で表されるD1様受容体に対する親和性を有する。これは、本明細書に記載される式(I)の化合物が、これらの受容体に対して低ナノモル濃度の範囲の親和性を有することを意味する。具体的な値は実験節で提供する。
【0051】
式(I)の非放射標識化合物で得られるpKiの値は、対応する放射標識化合物に転置可能であることが、当業者に理解されるだろう。
【0052】
競合的放射性リガンド結合アッセイを実施して、D1受容体に対する式(I)の化合物の親和性を測定し、80種の関連および非関連生物学的標的の大きなパネルに関する選択性を評価した。式(I)の化合物が、ナノモル濃度以下の範囲の親和性でD1およびD5受容体(以下、「D1様受容体」と呼ぶ)に結合し、他の試験した標的のいずれにも有意に結合しないことが示された。
【0053】
さらに、図1に示されるように、実験節でさらに詳述されるように、D1細胞ベースの機能アッセイにおける式(I)の化合物の活性および効力を実施し、D1受容体の内因性アゴニストリガンドであるドーパミンと比較した。このアッセイでは、ドーパミンによるように、式(I)の化合物によりインビトロでD1受容体が活性化されることが示された。さらに、本発明による化合物は、内因性リガンドのドーパミンと比較して、優れた効力(少なくとも8のpEC50値)を示す。具体的な値および条件については、実験節でさらに詳述する。
【0054】
上記および実験節で述べた証拠は、式(I)の放射標識化合物がD1様受容体の選択的アゴニストリガンドであるという事実を支持している。
【0055】
これにより、本明細書に記載される式(I)の放射標識化合物が、単独で、またはD1媒介疾患を治療するために開発されたD1オルソステリックもしくはアロステリックモジュレーターと組み合わせて、PETイメージング試験における使用に特に適したものとなる。
【0056】
別の実施形態では、本発明は、インビトロまたはエキソビボ試験について本明細書に記載される式(I)の放射標識化合物の使用に関する。
【0057】
この実施形態による特定の態様では、本発明は、インビトロまたはエキソビボ試験における式(Ic)の化合物の使用に関する。
【0058】
本発明はまた、脳内のD1受容体の発現を検出する方法であって、検出可能な量の本明細書に記載される式(I)の放射標識化合物をインビトロまたはエキソビボインキュベーションすることと、前記放射標識化合物を検出することとを含む方法に関する。
【0059】
このような方法は、D1受容体が役割を果たす疾患における利用可能なD1受容体の密度の定量化を可能にする。
【0060】
図4のグラフは、式(Ic)の化合物が、脳組織の線条体領域に見られる高レベルのD1受容体発現と一致して尾状核被殻に有意に結合することを示している。
【0061】
別の実施形態では、本発明は、インビボPETイメージング試験に使用するための式(I)の化合物に関する。この実施形態の一態様では、本発明は、インビボPETイメージング試験に使用するための式(Ia)または(Ib)の化合物に関する。
【0062】
別の実施形態では、本発明は、インビボPETイメージングに使用するための式(I)の化合物に関する。
【0063】
図2は、カニクイザルで式(Ia)の化合物を使用して実施されたPETイメージングを示しており、報告される脳内のD1様受容体の分布と一致した取り込みパターンを実証している。
【0064】
この実施形態の特定の態様では、本発明は、D1媒介障害のインビボ診断方法に使用するための式(I)の化合物に関する。
【0065】
この実施形態の別の特定の態様では、本発明は、D1受容体が役割を果たす疾患における利用可能なD1受容体の密度のインビボ定量化の方法に使用するための、本明細書に記載される式(I)の化合物に関する。
【0066】
本発明はまた、その範囲内に、D1受容体によって媒介される神経障害のインビボイメージングおよび検出の方法であって、検出可能な量の本明細書に記載される式(I)の放射標識化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与することと、D1受容体と結合した放射標識化合物を検出することとを含む方法を包含する。
【0067】
いくつかのインビボ試験が、式(I)の放射標識化合物、特に式(Ia)の化合物を使用して実施され、血液脳関門を通過し、したがってインビボPETイメージング試験におけるD1受容体の密度の定量化に影響を及ぼし得る関連する親油性代謝産物がないことを示している。
【0068】
さらに別の実施形態では、本発明は、D1オルソステリックリガンドの標的結合をインビトロまたはエキソビボで定量化するための式(I)の化合物の使用に関する。
【0069】
本発明はさらに、D1受容体の内因性または外因性オルソステリックリガンドの標的結合を測定するインビトロまたはエキソビボ方法に関する。
【0070】
さらに別の実施形態では、本発明は、D1様受容体のオルソステリックアゴニストの標的結合をインビボで画像化および測定する方法に使用するための、本明細書に記載される式(I)の化合物に関する。この実施形態の特定の態様では、本発明は、D1様受容体のオルソステリックアゴニストの標的結合をインビボで画像化および測定する方法に使用するための式(IaまたはIb)の化合物に関する。
【0071】
本明細書で使用される「標的結合」という用語は、オルソステリックまたはアロステリックでその意図されたタンパク質標的(D1様受容体)と相互作用し、下流生物学的イベントを誘発する内因性または外因性分子を意味する。
【0072】
さらに、本発明者らは、驚くべきことに、本明細書に記載される式(I)のいくつかの放射標識化合物が、インビトロ、エキソビボおよびインビボでD受容体の正のアロステリックモジュレーターである化合物の効果を定量化するのに適していることを発見した。
【0073】
「アロステリックモジュレーター」という用語は、オルソステリック天然アゴニストとは異なる標的部位に結合するが、GPCRのコンフォメーション変化を誘導し、それによって受容体機能をアロステリックに調節する化合物を意味する。
【0074】
正のアロステリックモジュレーター(PAM)は、内因性リガンドの活性または外因性オルソステリックアゴニストの活性を増強する。
【0075】
D1 PAMは、内因性/外因性リガンドのオルソステリック部位とは異なる結合部位からD1受容体に作用するので、例えば、D1媒介性疾患に対する望ましい治療効果を得るために必要となるD1 PAM化合物の有効用量を最適化することができるようにするために、D1受容体に対するこれらの化合物の実際の効果を定量化する方法を有することが望ましい。
【0076】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、D1受容体に対するD1 PAMの効果のインビトロまたはエキソビボ定量化のための、本明細書に記載される式(I)の化合物の使用に関する。
【0077】
この実施形態の一態様では、本発明は、D1受容体に対するD1 PAMの効果のインビトロ定量化における式(Ic)の化合物の使用に関する。図3に示されるように、D1 PAM化合物は式(Ic)の化合物の結合特性を有意に改善した。
【0078】
この実施形態の一態様では、本発明は、D1受容体に対するD1 PAMの効果のエキソビボ定量化における式(Ic)の化合物の使用に関する。特に、本発明は、D1受容体に対するD1 PAMの効果のオートラジオグラフィー定量化における式(Ic)の化合物の使用に関する。
【0079】
図4は、オートラジオグラフィーにより、D1 PAM化合物の存在下で、NHP脳切片で測定された化合物(-)-Icの特異的結合が有意に増加することを示している。
【0080】
したがって、本発明はまた、その範囲内に、D1様受容体発現およびD1受容体を発現する細胞株または脳組織におけるD1アロステリックモジュレーターの効果のインビトロまたはオートラジオグラフィー検出および定量化のための方法を包含する。
【0081】
インビトロ放射性リガンド結合またはオートラジオグラフィー法は、生体試料をD1様もしくはD1オルソステリックまたはアロステリックリガンドの存在下または非存在下で本発明による放射標識化合物で処理することと、得られた結合した本発明の放射標識化合物を測定することによって、D1様受容体発現またはアロステリックモジュレーター効果を定量化することとを含む。
【0082】
別の特定の実施形態では、本発明は、D1受容体に対するD1 PAMの効果のインビボ定量化に使用するための式(Ia)または(Ib)の化合物に関する。
【0083】
したがって、本発明はまた、その範囲内に、D1様受容体発現およびD1アロステリックモジュレーターの効果のインビボ検出および定量化に使用するための式(Ia)または(Ib)の化合物を包含する。
【0084】
特定の実施形態では、本発明は、D1様受容体発現およびD1アロステリックモジュレーターの効果のインビボ検出および定量化に使用するための式(Ib)の化合物に関する。
【0085】
図5に示されるように、D1 PAM化合物は、式(Ib)の化合物、特に式(-)-(Ib)の化合物の結合特性を有意に改善した。このようなD1 PAMの増強効果を図6に示す。
【0086】
本明細書で「対象」について言及する場合、それは、ヒト、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウマ、ヒツジ、ウシ、ヒトまたは非ヒト霊長類、鳥類または両生類を指すことを意図している。好ましくは、マウス、ヒトまたは非ヒト霊長類、またはヒトが言及される。
【0087】
イメージング試験、特にインビボPETイメージング試験のために、式(I)の放射標識化合物またはそれらの薬学的に許容される塩は、医薬組成物の形態で投与され得る。
【0088】
したがって、本発明の別の実施形態は、検出可能な量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせて含む医薬組成物に関する。
【0089】
本明細書で使用される「検出可能な量」という用語は、選択された検出方法によって検出するのに必要な化合物の量を意味する。一般に、このような検出可能な量は、使用される化合物および検出方法に基づいて当業者によって決定されるだろう。
【0090】
したがって、本発明はまた、その範囲内に、D1媒介障害のインビボ診断に使用するための、式(I)の化合物およびそれらの医薬組成物を包含する。
【0091】
本明細書に記載される式(I)の放射標識化合物は、実験節でさらに詳述される方法に従って調製した。
【0092】
式(Ia)および(Ib)の化合物は、以下で中間体a13と呼ばれる、化合物2-(3,5-ジメチル-2,6-ジオキソ-1-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-4-イル)-5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)ベンジルアセタート
【化5】

からの多段階合成を通して調製した。反応条件については、実験節でさらに詳述する。
【0093】
式(Ic)の化合物は、当業者に知られており、実験節において以下でさらに詳述される方法に従って、Kerrの触媒の存在下で、化合物6-[2-(フルオロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル]-1,5-ジメチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(I)をトリチウム標識することによって調製される。
【0094】
実験節
I.式(I)の化合物の合成
a.略語/再現試薬
Ac:アセチル
Boc:tert-ブチルオキシカルボニル
ブライン:飽和塩化ナトリウム水溶液
Bz:ベンゾイル
cAMP:環状アデノシン一リン酸
DAST:ジエチルアミノ硫黄トリフルオリド
DCM:ジクロロメタン
DEA:ジエチルアミン
DMAP:4-ジメチルアミノピリジン
DMSO:ジメチルスルホキシド
dppf:1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
pEC50:最大応答の50%を生成する濃度
Erel:相対的有効性
ES:エレクトロスプレー陽イオン化
ESI:エレクトロスプレーイオン化
Et:エチル
EtOH:エタノール
EtO:ジエチルエーテル
EtOAc:酢酸エチル
h:時間
(h)D1R:ヒトドーパミンD1受容体
(h)D5R:(ヒト)ドーパミンD5受容体
HEK:ヒト胎児腎細胞
HEPES:4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸
HPLC:高圧液体クロマトグラフィー
HTRF:均一時間分解蛍光
LC:液体クロマトグラフィー
LCMS:液体クロマトグラフィー質量分析
LDA:リチウムジイソプロピルアミド
MeOH:メタノール
min.:分
NHP:非ヒト霊長類
NMR:核磁気共鳴
PAM:正のアロステリックモジュレーター
iPrOH:イソプロパノール
rt:室温
RV:反応容器
SEM:2-(トリメチルシリル)エトキシメチル
SFC:超臨界流体クロマトグラフィー
SPE:固相抽出
SUV:標準化取り込み値
TAC:時間放射能曲線
TEA:トリエチルアミン
TFA:トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
TLC:薄層クロマトグラフィー
WFI:注射用水
【0095】
b.分析方法
空気または水分に敏感な試薬を含む全ての反応は、乾燥溶媒およびガラス器具を使用して、窒素またはアルゴン雰囲気下で実施した。マイクロ波照射を必要とする実験は、オペレーティングソフトウェアのバージョン2.0でアップグレードされたBiotage Initiator Sixty電子レンジで実施する。実験は可能な限り速く必要な温度に到達するよう実行する(最大照射電力:400W、外部冷却なし)。市販の溶媒および試薬は一般に、さらに精製することなく使用し、適切な場合は無水溶媒(一般的にはAldrich Chemical Company製のSure-Seal(商標)製品またはACROS Organics製のAcroSeal(商標))を含む。一般に、反応を薄層クロマトグラフィー、HPLCまたは質量分析によって監視した。
【0096】
i)HPLC分析は以下の通り実施する:
方法A:酸性
HPLC分析は、LC-2010 CHTモジュール、SPD-M20Aフォトダイオードアレイ検出器(210~400nm)を備えたShimadzu HPLCシステムで、カラムYMC Triart C-18(150×4.6)mm 3μを使用して実施する。勾配溶出は、5mMギ酸アンモニウム水溶液+0.1%ギ酸(A相)、およびアセトニトリル+5%溶媒A+0.1%ギ酸(B相)で行い、勾配8.0分で5~95%Bを13.0分まで保持し、15.0分で5%Bを18.0分まで保持する。HPLC流量:1.0mL/分、注入量:10μL。
【0097】
方法B:塩基性
HPLC分析は、LC-2010 CHTモジュール、SPD-M20Aフォトダイオードアレイ検出器(210~400nm)を備えたShimadzu HPLCシステムで、カラムYMC Triart C-18(150×4.6)mm 3μを使用して実施する。勾配溶出は、5mMギ酸アンモニウム水溶液+0.1%アンモニア(A相)、およびアセトニトリル+5%溶媒A+0.1%アンモニア(B相)で行い、勾配8.0分で5~95%を13.0分まで保持し、15.0分で5%Bを18.0分まで保持する。HPLC流量。
【0098】
異なる分析条件を使用する場合、LCデータについて異なる保持時間(RT)が得られる可能性があることは、当業者に明らかであるだろう。
【0099】
ii)LCMSモードでの質量分析測定は以下の通り実施する:
方法A:酸性
Shimadzu 2010EVシングル四重極質量分析計を、LC-MS分析に使用する。この分光計は、ESI源およびLC-20ADバイナリグラジエントポンプ、SPD-M20Aフォトダイオードアレイ検出器(210~400nm)を備えている。データを、ポジティブモードおよびネガティブモードでm/z 70~1200のフルMSスキャンで取得する。逆相分析は、Waters XBridge C 18(30×2.1)mm 2.5μカラムを使用して行う。勾配溶出は、5mMギ酸アンモニウム水溶液+0.1%ギ酸(A相)、およびアセトニトリル+5%溶媒A+0.1%ギ酸(B相)で行い、勾配4.0分で5~95%Bを5.0分まで保持し、5.1分で5%Bを6.5分まで保持する。HPLC流量:1.0mL/分、注入量:5μL。
【0100】
MSパラメータ:検出器電圧1.5kV。ソースブロック温度200℃。脱溶媒温度240℃。噴霧ガス流量1.2L/分(窒素)。データを、ポジティブモードおよびネガティブモードでm/z 70~1200のフルMSスキャンで取得する。
【0101】
方法B:塩基性
Shimadzu 2010EVシングル四重極質量分析計を、LC-MS分析に使用する。この分光計は、ESI源およびLC-20ADバイナリグラジエントポンプ、SPD-M20Aフォトダイオードアレイ検出器(210~400nm)を備えている。データを、ポジティブモードおよびネガティブモードでm/z 70~1200のフルMSスキャンで取得する。逆相分析は、Waters XBridge C18(30×2.1)mm 2.5μカラムを使用して行う。勾配溶出は、5mMギ酸アンモニウム水溶液+0.1%アンモニア(溶媒A)、またはアセトニトリル+5%溶媒A+0.1%アンモニア(溶媒B)で行い、勾配4.0分で5~95%Bを5.0分まで保持し、5.1分で5%Bを6.5分まで保持する。HPLC流量:1.0mL/分、注入量:5μL。
【0102】
MSパラメータ:検出器電圧1.5kV。ソースブロック温度200℃。脱溶媒温度240℃。噴霧ガス流量1.2L/分(窒素)。データを、ポジティブモードおよびネガティブモードでm/z 70~1200のフルMSスキャンで取得する。
【0103】
NMRスペクトルは、オペレーティングシステムRedhat Enterprise Linux(Linuxは登録商標) 5.1.および5mm逆H/13Cプローブヘッドを備えたLinux(Linuxは登録商標) 3.2ソフトウェアを搭載したVarian MR 400MHz NMR分光計、またはオペレーティングシステムRedhat Enterprise Linux(Linuxは登録商標) 6.3および5mm逆H/13C/19Fトリプルプローブヘッドを備えたLinux(Linuxは登録商標) 3.2ソフトウェアを搭載したVarian VNMR 400MHz NMRで記録する。化合物を、DMSO-d、CDCl、MeODおよびDOなどの重水素化溶媒中で、プローブ温度300Kおよび濃度約4~5mg/mLで試験する。機器を使用した重水素化溶媒の重水素シグナルでロックする。化学シフトを、内部標準として使用されるTMS(テトラメチルシラン)からのppm低磁場で示す。
【0104】
旋光度([α])は、キュベット(l=1dm)内でPERKIN-ELMER偏光計341で、10mg/mLの濃度で、具体例に記載される温度で、589nm(ナトリウムランプ)で測定した。
【0105】
iii)分取精製は、酸性、塩基性および中性条件で以下のシステムを使用して実施する:
システムA.Waters分取HPLCシステム:
2998 PDA検出器を備えたバイナリポンプ2545モジュールを備え、2767サンプルマネージャーで構成されるWaters分取HPLC。Waters 3100シングル4重極検出器が、検出および収集トリガーに使用される。
【0106】
Shimadzu分取HPLCは、手動注入および手動画分収集を備えたバイナリLC8AポンプおよびSPD M20A PDA検出器からなる。
【0107】
上記の2つのシステムでは、以下のカラムを使用して精製が行われる:
Phenomenex、Synergy Fusion C18、(100×30)mm、4μ
YMC ODS(500×30)mm 10μ。
YMC Triart(250×30)mm 10μ。
【0108】
システムB.SFCでの精製
2545共溶媒ポンプおよびCo2ポンプ、カラムオーブン、2767オートサンプラーおよびフラクションコレクター、システムの圧力を維持するためのABPR、2998 PDA検出器で構成されるThar SFC 100分取システム。システムはMasslynx V4.1ソフトウェアによって制御される。SFCのカラムは、以下に列挙されるものから選択される:
Virdis、2-エチルピリジン(250×30)mm、5μ
Virdis、CSH Fluro Phenyl(250×30)mm、5μ
Phenomenex Luna Hilic(250×30)mm、5μ
YMC、シアノ(250×19)mm、5μ
YMC、ジオール(250×30)mm、10μ
Chiralpak IA(250×30)mm、5μ
【0109】
C. 中間体の合成
C.1. 6-ブロモ-1,5-ジメチル-3-(2-トリメチルシリルエトキシメチル)ピリミジン-2,4-ジオンa1の合成
【化6】
【0110】
a1は、番号、国際公開第2014/072881号パンフレットで公開された国際特許出願に開示されており、ここに記載されている方法に従って調製される。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ5.21(s,2H),3.56(t,J=7.83Hz,2H),3.52(s,3H),1.99(s,3H),0.83(t,J=7.83Hz,2H),-0.04(s,9H)。
【0111】
C.2.6-ヨード-5-メチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンa6の合成
【化7】
【0112】
C.2.1. 5-メチルピリミジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンa3の合成
MeOH(500mL)中のNa(3.18g、137mmol)の溶液に、尿素(8.28g、137mmol)を添加し、引き続いてジエチル2-メチルプロパンジオアートa2(20.0g、114mmol)を添加した。反応混合物を16時間加熱還流した。反応の進行をTLCおよびLCMSで監視した。完了後、反応混合物を真空下で濃縮した。残渣をHClの2N水溶液でpH3に酸性化し、次いで、-10℃で冷却し、同じ温度で3時間撹拌した。反応混合物を濾過し、冷水(50mL)、EtO(100mL)およびヘキサン(100mL)で洗浄した。得られた粗生成物を真空下で乾燥させて、5-メチルピリミジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンa3を15g、白色固体として得た。
収率(粗):92%
LCMS(ES):143(M+H)
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.07(s,2H),3.63(q,J=6.80Hz,1H),1.29(d,J=6.80Hz,3H)。
【0113】
C.2.2. 2,4,6-トリクロロ-5-メチルピリミジンa4の合成
POCl(158g、1035mmol)中の5-メチルピリミジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンa3(15.0g、105mmol)の溶液に、HPO(2mL)を添加し、反応混合物100℃で45分間加熱した。反応の進行をTLCで監視した。完了後、反応混合物を氷に注ぎ入れ、濾過し、真空下で乾燥させて、粗2,4,6-トリクロロ-5-メチルピリミジンa4を8g、白色固体として得て、これをさらに精製することなく次のステップに使用した。
【0114】
C.2.3. 6-クロロ-5-メチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンa5の合成
粗2,4,6-トリクロロ-5-メチルピリミジンa4(8.00g、40.8mmol)のNaOHの10%水溶液(75mL)中撹拌溶液を1.5時間加熱還流した。反応の進行をTLCおよびLCMSで監視した。完了後、反応混合物をHClの2N水溶液でpH2に酸性化し、濾過し、真空下で乾燥させて、6-クロロ-5-メチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンa5を4.8g、白色固体として得て、これをさらに精製することなく次のステップに使用した。
収率(粗):21%
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.78(s,1H),11.29(s,1H),1.80(s,3H)。
【0115】
C.2.4. 6-ヨード-5-メチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンa6の合成
6-クロロ-5-メチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンa5(4.80g、0.30mmol)およびNaI(23.4g、150mmol)のHI(60mL)中撹拌溶液を、密封管内、室温で66時間撹拌した。反応の進行をTLCおよびLCMSで監視した。完了後、反応混合物を濾過し、冷水(50mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて、6-ヨード-5-メチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンa6を2.1g得て、これを褐色固体として単離し、これをさらに精製することなく次のステップに使用した。
LCMS(ES):253(M+H)
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.21(s,1H),1.90(s,3H)。
【0116】
C.3. 5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)-2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジルアセタートa12の合成
a12を、国際特許出願、国際公開第2014/072881号パンフレットに記載されている手順と同様の手順に従って、以下に具体的に示されるように、多段階合成を介して化合物a7から調製した。
【化8】
【0117】
C.3.1. 4-(4-ブロモ-3-メチルフェノキシ)フロ[3,2-c]ピリジンa8の合成
DMSO(300mL)中の4-クロロフロ[3,2-c]ピリジンa7(12g、78.1mmol)および4-ブロモ-3-メチルフェノール(17.5g、93.7mmol)の溶液に、CsCO(63.4g、195mmol)を添加し、反応混合物を125℃で16時間加熱した。反応の進行をTLCおよびLCMSで監視した。完了後、反応混合物を氷上に注ぎ、濾過した。残渣をEtOAc(100mL)に溶解し、ブライン(2×100mL)で洗浄した。有機層を分離し、無水NaSO上で乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗生成物を、ペンタン中1%EtO(100mL)による研和によって精製して、4-(4-ブロモ-3-メチルフェノキシ)フロ[3,2-c]ピリジンa8を12.6g、ベージュ色固体として得た。
収率:53%
LCMS(ES):304(M+H)
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.14(s,1H),7.96(d,J=6.00Hz,1H),7.61(d,J=8.80Hz,1H),7.46(d,J=5.60Hz,1H),7.25(d,J=1.20Hz,1H),7.10(s,1H),7.04-6.98(m,1H),2.34(s,3H)。
【0118】
C.3.2. 4-(4-ブロモ-3-(ブロモメチル)フェノキシ)フロ[3,2-c]ピリジンa9の合成
CCl(250mL)中の4-(4-ブロモ-3-メチルフェノキシ)フロ[3,2-c]ピリジンa8(12.5g、41.1mmol)の溶液に、NBS(8.05g、45.2mmol)およびBz(1.99g、8.22mmol)を添加した。反応混合物を80℃で12時間加熱した。反応の進行をTLCおよびLCMSで監視した。完了後、反応混合物をDCM(100mL)および水(100mL)で希釈した。有機層をNaOHの1N水溶液(50mL)およびブライン(50mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、真空下で濃縮して、4-(4-ブロモ-3-(ブロモメチル)フェノキシ)フロ[3,2-c]ピリジンa9 22gを褐色半固体として得て、これをさらに精製することなく次のステップに使用した。
LCMS(ES):284(M+H)
【0119】
C.3.3. (2-ブロモ-5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)メタノールa10の合成
DMF(80mL)中の4-(4-ブロモ-3-(ブロモメチル)フェノキシ)フロ[3,2-c]ピリジンa9(22.0g、57.4mmol)溶液に、NaOAc(23.0g、287mmol)を添加し、反応混合物を80℃で3時間加熱した。反応の進行をTLCおよびLCMSで監視した。完了後、反応混合物をDCM(100mL)および水(50mL)で希釈した。有機層を無水NaSO上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣をMeOH(50mL)に溶解し、引き続いてNaOHの1N水溶液(20mL)を添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮した。残渣を水(100mL)で希釈し、EtOAc(3×40mL)で抽出した。有機層を無水NaSO上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣を、溶離液としてヘキサン中20%EtOAcを使用するカラムクロマトグラフィーによって精製して、(2-ブロモ-5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)メタノールa10を3.5g、白色固体として得た。
収率:19%
LCMS(ES):320(M+H)
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.14(d,J=2.40Hz,1H),7.96(d,J=5.60Hz,1H),7.61(d,J=8.80Hz,1H),7.48(d,J=6.00Hz,1H),7.32(d,J=2.80Hz,1H),7.12-7.08(m,2H),5.51(t,J=5.60Hz,1H),4.51(d,J=5.60Hz,2H)。
【0120】
C.3.4. 2-ブロモ-5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)ベンジルアセタートa11の合成
THF(50mL)中の(2-ブロモ-5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)メタノールa10(3.50g、11.0mmol)の溶液に、ピリジン(2.60g、33.0mmol)を0℃で添加し、反応混合物を同じ温度で10分間撹拌した。塩化アセチル(1.73g、22.0mmol)を0℃で滴加し、反応混合物を100℃で16時間加熱した。反応の進行をTLCおよびLCMSで監視した。完了後、反応混合物をNaHCOの飽和水溶液で中和し、EtOAc(50mL)で抽出した。有機層を水(50mL)およびブライン(10mL)で連続的に洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣を、溶離液としてヘキサン中2~5%EtOAcを使用するカラムクロマトグラフィーによって精製して、2-ブロモ-5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)ベンジルアセタートa11を4g、無色液体として得た。
収率:98%
LCMS(ES):362(M+H)
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.14(d,J=2.00Hz,1H),7.95(d,J=6.00Hz,1H),7.69(d,J=8.80Hz,1H),7.49-7.45(m,1H),7.35(d,J=2.80Hz,1H),7.20-7.17(m,1H),7.14-7.11(m,1H),5.10(s,2H),2.07(s,3H)。
【0121】
C.3.5. 5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)-2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジルアセタートa12の合成
ジオキサン(50mL)中の2-ブロモ-5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)ベンジルアセタートa11(4g、11.1mmol)および4,4,5,5-テトラメチル-2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロラン(3.66g、14.4mmol)の溶液に、KOAc(3.26g、33.3mmol)を添加した。反応混合物をアルゴンで30分間パージし、次いで、PdCl(dppf).DCM(2.70g、3.33mmol)を添加し、反応混合物を再びアルゴンで5分間パージした。反応混合物を110℃で16時間加熱した。反応の進行をTLCおよびLCMSで監視した。完了後、反応混合物をEtOAc(50mL)で希釈し、Celite(登録商標)を通して濾過した。濾液を真空下で濃縮した。残渣を、ヘキサン中10~12%EtOAcを使用するカラムクロマトグラフィーによって精製して、5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)-2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジルアセタートa12を4.1g得て、これを灰白色固体として単離した。
LCMS(ES):410(M+H)
【0122】
C.4. 2-(3,5-ジメチル-2,6-ジオキソ-1-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-4-イル)-5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)ベンジルアセタートa13、a13_アトロプ異性体_1およびa13_アトロプ異性体_2の合成
【化9】

ジオキサン(9mL)および水(1mL)中の5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)-2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジルアセタートa12(200mg、0.49mmol)および6-ブロモ-1,5-ジメチル-3-(2-トリメチルシリルエトキシメチル)ピリミジン-2,4-ジオンa1(130mg、0.38mmol)の溶液に、KCO(160mg、1.13mmol)を添加した。反応混合物をアルゴンで30分間パージした。PdCl(dppf).DCM(90mg、0.11mmol)を添加し、反応混合物を再びアルゴンで5分間パージした。反応混合物をマイクロ波照射下、120℃で2時間加熱した。反応の進行をTLCおよびLCMSで監視した。13×0.20gで反応を繰り返し、14の反応の粗混合物を合わせた。反応混合物をEtOAc(150mL)で希釈し、Celite(登録商標)を通して濾過し、EtOAc(250mL)で洗浄した。濾液を真空下で濃縮した。残渣を、溶離液としてヘキサン中20~40%EtOAcを使用するカラムクロマトグラフィーによって精製して、2-(3,5-ジメチル-2,6-ジオキソ-1-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-4-イル)-5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)ベンジルアセタートa13を827mg、アトロプ異性体(+)と(-)のラセミ混合物である白色固体として得た。
収率:31%
LCMS(ES):494(M+H-SiMe
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.18(d,J=1.96Hz,1H),8.05(d,J=5.87Hz,1H),7.54(dd,J=5.87,0.98Hz,1H),7.49(s,1H),7.44(s,2H),7.14-7.12(m,1H),5.76(s,2H),5.32(s,2H),3.68-3.59(m,2H),2.97(s,3H),1.95(s,3H),1.55(s,3H),1.17(t,J=7.09Hz,2H),-0.01(s,9H)。
【0123】
ラセミ体2-(3,5-ジメチル-2,6-ジオキソ-1-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-4-イル)-5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)ベンジルアセタートa13 500mgのキラル分離(LC、YMC Chiralart Cellulose-SC、250*4.6mm、1mL/分、252nm、25℃、溶離液:50%n-ヘキサン(+0.1%DEA)、50%iPrOH)によって、
- 白色固体としての2-(3,5-ジメチル-2,6-ジオキソ-1-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-4-イル)-5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)ベンジルアセタート(a13_アトロプ異性体1)151mg。
収率:30%
LCMS(ES):494(M+H-SiMe
キラル分析(LC、YMC Chiralart Cellulose-SC、250*4.6mm、1mL/分、252nm、溶離液:50%n-ヘキサン(+0.1%DEA)、50%iPrOH)RT 28.93分、98.5%ee。
- 白色固体としての2-(3,5-ジメチル-2,6-ジオキソ-1-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-4-イル)-5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)ベンジルアセタート(a13_アトロプ異性体2)152mg。
収率:30%
LCMS(ES):494(M+H-SiMe
キラル分析(LC、YMC Chiralart Cellulose-SC、250*4.6mm、1mL/分、252nm、溶離液:50%n-ヘキサン(+0.1%DEA)、50%iPrOH)RT 31.28分、92.5%ee。
【0124】
それぞれのアトロプ異性体の特定の配置(+)または(-)を、この段階では割り当てなかった。
【0125】
D. 式(I)の化合物の合成
D.1. 6-(2-(フルオロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-1,5-ジメチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(+)-(I)および(-)-(I)の合成。
【化10】

D.1.1. 6-(4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)-1,5-ジメチル-3-((2-(トリメチルシリル))エトキシ)メチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンa14_アトロプ異性体1およびa14_アトロプ異性体2の合成
THF(7.71mL)および水(860μL)中の2-(3,5-ジメチル-2,6-ジオキソ-1-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-4-イル)-5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)ベンジルアセタートa13_アトロプ異性体1(151mg、0.27mmol)の溶液に、NaOH(50mg、1.36mmol)を添加した。反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応の進行をTLCおよびLCMSで監視した。完了後、反応混合物を真空下で濃縮した。残渣を水(15mL)で希釈し、EtOAc(2×50mL)で抽出した。有機層をブライン(10mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、真空下で濃縮して、6-(4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)-1,5-ジメチル-3-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンa14_アトロプ異性体1を124mg、淡褐色液体として得て、これをさらに精製することなく次のステップに使用した。
収率(粗):90%
LCMS(ES):510(M+H)
【0126】
6-(4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)-1,5-ジメチル-3-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンa14_アトロプ異性体2
化合物a14_アトロプ異性体2は、2-(3,5-ジメチル-2,6-ジオキソ-1-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-4-イル)-5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)ベンジルアセタートa13_アトロプ異性体1を出発物質として使用して同じ方法により合成することができる。
収率(粗):93%。
LCMS(ES):510(M+H)
【0127】
それぞれのアトロプ異性体の特定の配置(+)または(-)を、この段階では割り当てなかった。
【0128】
D.1.2. 6-(2-(フルオロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-1,5-ジメチル-3-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンa15_アトロプ異性体1およびa15_アトロプ異性体2の合成
DCM(3mL)中の6-(4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)-1,5-ジメチル-3-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンa14_アトロプ異性体1(0.13g、0.25mmol)の溶液に、0℃でDAST(0.20g、1.23mmol)を添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応の進行をTLCおよびLCMSで監視した。完了後、反応混合物をNaHCOの飽和水溶液(2mL)でクエンチし、EtOAc(2×10mL)で抽出した。有機層を水(10mL)およびブライン(5mL)で連続的に洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣を、溶離液としてヘキサン中20~30%EtOAcを使用するカラムクロマトグラフィーによって精製して、6-(2-(フルオロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-1,5-ジメチル-3-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンa15_アトロプ異性体1を74mg、灰白色固体として得た。
収率:59%
LCMS(ES):512(M+H)
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.18(d,J=2.45Hz,1H),8.05(d,J=5.87Hz,1H),7.58-7.53(m,2H),7.48(s,2H),7.16-7.12(m,1H),5.39(d,J=2.45Hz,1H),5.32(s,2H),5.27(s,1H),3.69-3.62(m,2H),2.93(s,3H),1.54(s,3H),0.92-0.84(m,2H),0.03(s,9H)。
【0129】
6-(2-(フルオロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-1,5-ジメチル-3-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンa15_アトロプ異性体2
化合物a15_アトロプ異性体2は、6-(4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)-1,5-ジメチル-3-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンa14_アトロプ異性体2を出発物質として使用して同じ方法により合成することができる。
収率:58%
LCMS(ES):512(M+H)
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.18(d,J=2.45Hz,1H),8.05(d,J=5.87Hz,1H),7.58-7.53(m,2H),7.48(s,2H),7.16-7.12(m,1H),5.39(d,J=2.45Hz,1H),5.32(s,2H),5.27(s,1H),3.69-3.62(m,2H),2.93(s,3H),1.54(s,3H),0.92-0.84(m,2H),0.03(s,9H)。
【0130】
それぞれのアトロプ異性体の特定の配置(+)または(-)を、この段階では割り当てなかった。
【0131】
D.1.3. 6-(2-(フルオロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-1,5-ジメチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(+)-(I)および(-)-(I)の合成
DCM(1mL)中の6-(2-(フルオロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-1,5-ジメチル-3-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンa15_アトロプ異性体1(0.07g、0.15mmol)の溶液に、0℃でTFA(1mL)を添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応の進行をTLCおよびLCMSで監視した。完了後、反応混合物を真空下で濃縮した。残渣をCHCN(1mL)および25%アンモニア水溶液(1mL)に溶解した。反応混合物を30分間撹拌し、次いで、濾過し、冷水(2mL)で洗浄し、真空下で乾燥させた。残渣をDCM:ペンタン(1:4、2.5mL)による研和によって精製し、真空下で乾燥させて、6-(2-(フルオロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-1,5-ジメチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンのアトロプ異性体(+)(+)-(I)20mgを灰白色固体として得た。
収率:36%
HPLC純度:97.5%
LCMS(ES):382(M+H)
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.48(s,1H),8.16-8.19(m,1H),8.05(d,J=5.87Hz,1H),7.56-7.52(m,2H),7.49-7.44(m,2H),7.13(d,J=1.47Hz,1H),5.39(d,J=3.42Hz,1H),5.27(d,J=2.93Hz,1H),2.86(s,3H),1.48(s,3H)。
[α]D(MeOH,30°C)=+14.7
【0132】
6-(2-(フルオロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-1,5-ジメチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(I)アトロプ異性体()、((-)-I)
化合物(-)-Iは、6-(2-(フルオロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-1,5-ジメチル-3-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンa15_アトロプ異性体2を出発物質として使用して同じ方法により合成することができる。
HPLC純度:99.8%
LCMS(ES):382(M+H)
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.48(s,1H),8.19-8.16(m,1H),8.05(d,J=5.87Hz,1H),7.56-7.52(m,2H),7.46(brs,2H),7.13(d,J=1.47Hz,1H),5.39(d,J=3.42Hz,1H),5.27(d,J=2.93Hz,1H),2.86(s,3H),1.48(s,3H)。
[α]D(MeOH,30°C)=-8.3
【0133】
D.2. [11C]-6-(2-(フルオロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-1,5-ジメチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(Ia)のアトロプ異性体(-)、(-)-(Ia)の合成
【化11】

D.2.1. 4-(4-ブロモ-3-(フルオロメチル)フェノキシ)フロ[3,2-c]ピリジンa16の合成
DCM(100mL)中の(2-ブロモ-5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)メタノールa10(5g、15.7mmol)の溶液に、0℃でDAST(10g、62.8mmol)を添加し、次いで、反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応の進行をTLCおよびLCMSで監視した。完了後、反応混合物をNaHCOの飽和水溶液(20mL)でクエンチし、DCM(100mL)で抽出した。有機層を無水NaSO上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣を、溶離液としてヘキサン中10~15%EtOAcを使用するカラムクロマトグラフィーによって精製して、4-(4-ブロモ-3-(フルオロメチル)フェノキシ)フロ[3,2-c]ピリジンa16を2.1g、灰白色固体として得た。
収率:41%
LCMS(ES):322(M+H)
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.99(d,J=6.00Hz,1H),7.68-7.64(m,1H),7.59(d,J=8.80Hz,1H),7.38-7.36(m,1H),7.22(d,J=5.60Hz,1H),7.14-7.10(m,1H),6.91(s,1H),5.46(d,J=46.8Hz,2H)。
【0134】
D.2.2. 4-(3-(フルオロメチル)-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ)フロ[3,2-c]ピリジンa17の合成
ジオキサン(50mL)中の4-(4-ブロモ-3-(フルオロメチル)フェノキシ)フロ[3,2-c]ピリジンa16(2g、6.23mmol)および4,4,5,5-テトラメチル-2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロラン(2.05g、8.09mmol)の溶液に、KOAc(1.83g、18.6mmol)を添加し、次いで、反応物をアルゴンで30分間パージした。PdCl(dppf)(1.52g、1.86mmol)を添加し、反応混合物を再びアルゴンで5分間パージした。反応混合物を100℃で12時間加熱した。反応の進行をTLCおよびLCMSで監視した。完了後、反応混合物を、Celite(登録商標)を通して濾過し、EtOAc(100mL)で洗浄した。濾液を真空下で濃縮した。残渣を、溶離液としてヘキサン中10%EtOAcを使用するカラムクロマトグラフィーによって精製して、4-(3-(フルオロメチル)-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ)フロ[3,2-c]ピリジンa17を2.1g、灰白色固体として得た。
収率:91%
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.16-8.14(m,1H),7.98(d,J=5.20Hz,1H),7.79(d,J=8.40Hz,1H),7.49(d,J=6.00Hz,1H),7.32-7.28(m,1H),7.24-7.20(m,1H),7.09(s,1H),5.65(d,J=47.6Hz,2H),1.31(s,12H)。
【0135】
D.2.3. 6-(2-(フルオロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-5-メチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンa18の合成
ジオキサン(10mL)および水(1mL)中の4-(3-(フルオロメチル)-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ)フロ[3,2-c]ピリジンa17(100mg、0.27mmol)および6-ヨード-5-メチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンa6(130mg、0.54mmol)の溶液に、KCO(110mg、0.81mmol)を添加し、反応物をアルゴンで30分間パージした。PdCl(dppf)(60mg、0.08mmol)を添加し、反応混合物を再びアルゴンで5分間パージした。反応混合物を80℃で1時間加熱した。反応の進行をTLCおよびLCMSで監視した。完了後、反応混合物を、Celite(登録商標)を通して濾過した。濾液を真空下で濃縮した。残渣を、溶離液としてヘキサン中50~60%EtOAcを使用するカラムクロマトグラフィーによって精製して、6-(2-(フルオロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-5-メチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンa18を20mg、灰白色固体として得た。
収率:21%
HPLC純度:98.4%
LCMS(ES):368(M+H)
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.18(s,1H),10.85(s,1H),8.17(d,J=2.00Hz,1H),8.02(d,J=6.00Hz,1H),7.52(d,J=6.00Hz,1H),7.45-7.37(m,3H),7.11(d,J=1.60Hz,1H),5.36(d,J=46.8Hz,2H),1.51(s,3H)。
【0136】
D.2.4. [11C]-6-(2-(フルオロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-1,5-ジメチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(Ia)のアトロプ異性体(-)、(-)-(Ia)の合成
2つのアトロプ異性体の混合物としての[11C]-(6-(2-(フルオロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-1,5-ジメチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン)を、a18前駆体および[11C]メタンから出発して調製した。[11C]メタンは、GE PETtraceサイクロトロンで、窒素ガス中水素10%の混合物を含有するガス標的に16.5MeVの陽子ビームを照射し、14N(p,α)11C核反応およびその後のメタンを形成するための炭素-11と窒素の標的内反応により[11C]メタンを生成することによって生成した。
【0137】
次いで、生成された[11C]メタンを、約-180℃でHayeSepトラップに捕捉し、その後、これにヘリウムを流して、微量の水素および窒素を除去した。次いで、捕捉された[11C]メタンを、加熱下で再循環システムに放出し、約720℃でヨウ素蒸気と反応させて、[11C]ヨウ化メチルを生成した。再循環後、[11C]ヨウ化メチルをヘリウム流中、不活性担体上に加熱銀トリフラートを含有するカラムに通過させて、標識剤、[11C]メチルトリフラートを生成した。今度は、これを非標識前駆体a18、0.2~0.4mg、0.5M NaOH水溶液4~5μlおよびアセトン600~700μlを含有する溶液に捕捉させた。
【0138】
約120秒後、反応混合物を水で希釈し、半分取XBridge C18カラム(200×10mm、5μm)に移し、流量7mL/分で、アセトニトリルとNHOH水溶液(0.15%)29:71の混合物で溶出した。溶出液を、連続的に接続された放射能およびUV検出器で監視し、UV検出器は254nmに設定した。放射標識生成物を含有するピークを収集し、滅菌水約50mlに希釈し、Waters Oasis 3cc SPEカートリッジに通過させて、生成物を捕捉した。次いで、カートリッジを滅菌水8mLで洗浄し、生成物を、生理食塩水12mlを含有するバイアルに、96%エタノール約1.1mlで溶出した。次いで、生成物を、0.22μm滅菌フィルタ(Millex GV)を通して濾過した。品質管理用の試料を、濾過後に生成物バイアルから採取した。放射化学的純度を、254nmに設定したUV検出器で、移動相としてアセトニトリル/NHOH水溶液(0.15%)25:75を用いて、分析用XBridge C18カラム(150×4.6mm、5μm)を使用して、直列に接続された放射能およびUV検出器と、標準的HPLCシステムを使用して決定した。
【0139】
2つのアトロプ異性体は通常のC18 HPLCカラムでは分離できないため、分離のためにキラル分離法を開発した。
【0140】
(Ia)のアトロプ異性体(-)を単離するために、流量5mL/分で、254nmに設定されたUV検出器を使用して、アセトニトリル/エタノール7:93混合物を移動相として使用するChiralpak IAカラム(250×10mm、5μm)を使用して、半分取HPLCを実施した。反応自体および生成物の配合は、上記のように実施した。
【0141】
放射化学的純度およびアトロプ異性体純度を、流量1ml/分で、254nmに設定されたUV検出器を使用して、MeCN/EtOH 7:93移動相で溶出するChiralpak IA-3分析カラムを備えた標準的なHPLCシステムを使用して決定した((-)-Iaの保持時間=7.2分、ee>99%)。
【0142】
D.3. [18F]-6-(2-(フルオロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-1,5-ジメチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(Ib)のアトロプ異性体(-)、(-)-(Ib)の合成
【化12】

D.3.1. 2-(3,5-ジメチル-2,6-ジオキソ-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-4-イル)-5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)ベンジルアセタートa19の合成
DCM(50mL)中の2-(3,5-ジメチル-2,6-ジオキソ-1-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-4-イル)-5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)ベンジルアセタートa13(2.60g、4.71mmol)の溶液に、0℃でTFA(26.0mL、350mmol)を添加し、次いで、反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応の進行をTLCおよびLCMSで監視した。完了後、反応混合物を真空下で濃縮した。残渣をアセトニトリル:アンモニア混合物(1:1、10mL)に溶解し、30分間撹拌した。反応混合物を濾過し、冷水(20mL)およびペンタン(20mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて、2-(3,5-ジメチル-2,6-ジオキソ-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-4-イル)-5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)ベンジルアセタートa19を1.6g、灰白色固体として得て、これをさらに精製することなく次のステップに使用した。
収率(粗):81%
LCMS(ES):422(M+H)
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ11.47(s,1H),8.18(d,J=1.96Hz,1H),8.05(d,J=5.87Hz,1H),7.54(dd,J=5.87,0.98Hz,1H),7.48(s,1H),7.45-7.41(m,2H),7.13(s,1H),5.02-4.97(m,1H),4.97-4.91(m,1H),2.90(s,3H),1.97(s,3H),1.50(s,3H)。
【0143】
D.3.2. tert-ブチル4-(2-(アセトキシメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-3,5-ジメチル-2,6-ジオキソ-3,6-ジヒドロピリミジン-1(2H)-カルボキシラートa20の合成
2-(3,5-ジメチル-2,6-ジオキソ-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-4-イル)-5-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)ベンジルアセタートa19(1.60g、3.80mmol)、(Boc)O(1.57mL、6.83mmol)、トリエチルアミン(0.64mL、4.56mmol)およびDMAP(0.05g、0.38mmol)をTHF(33.3mL)に溶解し、反応混合物を70℃で16時間加熱した。反応の進行をTLCおよびLCMSで監視した。完了後、反応混合物を真空下で濃縮した。残渣を、溶離液としてヘキサン中70~80%EtOAcを使用するカラムクロマトグラフィーによって精製して、tert-ブチル4-(2-(アセトキシメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-3,5-ジメチル-2,6-ジオキソ-3,6-ジヒドロピリミジン-1(2H)-カルボキシラートa20を1.1g、灰白色固体として得た。
収率:56%
LCMS(ES):522(M+H)
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.17(d,J=1.96Hz,1H),8.04(d,J=5.87Hz,1H),7.52(d,J=5.87Hz,1H),7.40(d,J=8.31Hz,2H),7.34-7.30(m,1H),7.10(d,J=1.47Hz,1H),4.33-4.38(m,2H),2.94(s,3H),1.95(s,3H),1.55(s,9H),1.52(s,3H)。
【0144】
D.3.3. tert-ブチル4-(4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)-3,5-ジメチル-2,6-ジオキソ-3,6-ジヒドロピリミジン-1(2H)-カルボキシラートa21の合成
THF(15mL)および水(2mL)中のtert-ブチル4-(2-(アセトキシメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-3,5-ジメチル-2,6-ジオキソ-3,6-ジヒドロピリミジン-1(2H)-カルボキシラートa20(1.1g、2.11mmol)の溶液に、NaOH(90mg、2.32mmol)を添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応の進行をTLCおよびLCMSで監視した。完了後、反応混合物を真空下で濃縮した。残渣をEtOAc(2×50mL)で抽出した。有機層を無水NaSO上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣を、溶離液としてヘキサン中50%EtOAcを使用するカラムクロマトグラフィーによって精製して、tert-ブチル4-(4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)-3,5-ジメチル-2,6-ジオキソ-3,6-ジヒドロピリミジン-1(2H)-カルボキシラートa21を300mg、白色固体として得た。
収率:30%
LCMS(ES):480(M+H)
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.14(s,1H),8.01(d,J=5.87Hz,1H),7.50(d,J=5.87Hz,1H),7.40-7.34(m,2H),7.32-7.27(m,1H),7.08(s,1H),5.37(t,J=5.62Hz,1H),4.36-4.29(m,2H),2.91(s,3H),1.52(s,9H),1.49(s,3H)。
【0145】
D.3.4. tert-ブチル4-(2-(クロロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-3,5-ジメチル-2,6-ジオキソ-3,6-ジヒドロピリミジン-1(2H)-カルボキシラートa22の合成
DCM(5mL)中のtert-ブチル4-(4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)-3,5-ジメチル-2,6-ジオキソ-3,6-ジヒドロピリミジン-1(2H)-カルボキシラートa21(300mg、0.63mmol)の溶液に、0℃でSOCl(0.09g、0.75mmol)のDCM(1mL)溶液を添加し、次いで、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応の進行をTLCおよびLCMSで監視した。完了後、反応混合物をNaHCOの飽和水溶液(5mL)でクエンチし、DCM(2×20mL)で抽出した。有機層を無水NaSO上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣を、溶離液としてヘキサン中50~55%EtOAcを使用するカラムクロマトグラフィーによって精製して、tert-ブチル4-(2-(クロロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-3,5-ジメチル-2,6-ジオキソ-3,6-ジヒドロピリミジン-1(2H)-カルボキシラートa22を150m、白色固体として得た。
収率:48%
HPLC純度:98.4%
LCMS(ES):498(M+H)
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.18(d,J=1.96Hz,1H),8.05(d,J=5.87Hz,1H),7.57(d,J=1.96Hz,1H),7.54(d,J=5.38Hz,1H),7.51-7.48(m,1H),7.46-7.43(m,1H),7.13(d,J=1.47Hz,1H),4.72(s,2H),2.93(s,3H),1.56(s,9H),1.55(brs,3H)。
【0146】
D.3.5. [18F]-6-(2-(フルオロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-1,5-ジメチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(Ib)のアトロプ異性体(-)、(-)-(Ib)の合成
典型的な手順で、輸送用バイアル(サイクロトロン施設から得られた標的水)中の[18F]フッ化物をイオン交換カートリッジに移し、捕捉する。次いで、これを炭酸カリウムおよびKryptofix 222の溶液でTRACERlab(登録商標)モジュールの反応容器(RV1)に溶出する。真空およびヘリウム流下、95℃で4分間加熱することによって、溶液を最初に蒸発させる。アセトニトリル(1mL)をRV1に添加し、同じ条件下、真空下で2分間蒸発を続ける。アセトニトリル(1mL)の2回目の添加後、真空およびヘリウム流下、95℃で2分間、最終的な蒸発を行う。次いで、反応器を50℃に冷却する。
【0147】
無水アセトニトリル中の前駆体a22(0.7mg)の溶液を反応容器に添加し、反応混合物を80℃で5分間加熱する。5分後、反応器を70℃に冷却し、塩酸(1M)を添加し、70℃で4分間加熱した後、40℃に冷却し、WFIで希釈する。混合物をRV1から中間固相抽出カートリッジ(SPE、Oasis HLB light)に移す。RV1をメタノールですすぎ、SPEを通して移して、生成物を、WFIを事前充填したRV2に生溶出する。RV2の全内容物を、精製のためにHPLCインジェクターループに移す。
【0148】
(-)-Ibの単離を、半分取Chiralcel OJ-Hカラム(5μm、250×10mm)およびPhenomenex Luna C18(2)(10μm、250×10mm)を使用してHPLCによって実施し、4mL/分の流量で、アセトニトリル/酢酸アンモニウム溶液(5mM)(40/60、v/v)の混合物で溶出する。生成物画分を、WFI中アスコルビン酸25mLを含有するフラスコ1に収集する。希釈した生成物混合物をtC18固相抽出カートリッジに通過させ、カートリッジをWFI中アスコルビン酸10mLですすぐ。放射標識生成物を、200プルーフUSPグレードエタノール1mLを含むSPEカートリッジから、配合ベース10mLが事前充填された配合フラスコに溶出する。カートリッジを配合ベース4mLですすぎ、洗液を配合フラスコの内容物と混合する。得られた溶液を、滅菌0.2μmメンブレンフィルタに通過させ、滅菌フィルタベントバイアル(最終生成物バイアル、FPV)に送る。
【0149】
放射化学的純度を、UV検出器を254nmに設定して、移動相として、15分で80/20まで増加するMeOH/5 mM NH4OAc 50/50を用いて、分析Kinetex EVO C18カラム(250×4.6mm、5μm)を使用して、直列に接続された放射能およびUV検出器と、標準的HPLCシステムを使用して決定した((-)-1bの保持時間=9.7分、放射化学的純度99%超)。
【0150】
アトロプ異性体の純度を、UV検出器を254nmに設定して、流量1ml/分で、MeCN/5mM NH4OAc 40/60移動相で溶出する、分析chiralpak OJ-Hカラム(250×4.6mm、5μM)を使用して、直列に接続された放射能およびUV検出器と、標準的HPLCシステムを使用して決定した((-)-1aの保持時間=10.1分、ee>99%)。
【0151】
D.4. [H]-6-(2-(フルオロメチル)-4-(フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルオキシ)フェニル)-1,5-ジメチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(Ic)のアトロプ異性体(-)、(-)-(Ic)の合成
式(-)-(I)の化合物(2mg)、Kerrの触媒(2mg)およびジクロロメタン(1mL)をトリチウム標識フラスコで合わせ、5Ciのトリチウムガス下で2.5時間撹拌した。不安定なトリチウムをエタノールから繰り返し蒸発乾固させて除去した。残渣をエタノール(20mL)に溶解した。粗(-)-(Ic)を、流量3mL/分で、勾配として60分間にわたって20%B~100%Bで、溶離液Aとしての水+TFA(0.1%)、溶離液Bとしてのアセトニトリル+TFA(0.1%)を用いて、Gemini C18 5μ 250×10mmカラムを使用してHPLCによって精製した。(-)-(Ic)を収集し、回転蒸発乾固し、エタノール(20mL)に溶解した。
【0152】
高速液体クロマトグラフィーによって決定される(-)-(Ic)の放射化学的純度を、放射能検出器を用いて、流量1mL/分(勾配t=0で20%B~t=20分で100%に及ぶ)で、溶離液Aとしての水/TFAおよび溶離液B相としてCHCN/TFAで溶出されるinertsil ODS3分析カラム(150×4.6mm、5μM)を使用して測定した((-)-(Ic)の保持時間=12.9分、放射化学的純度=99.4%)。
【0153】
LCMS(ES):384(M+H)の主イオンは、ほぼ1トリチウムの取り込みおよび18Ci/mmolで測定された比放射能と一致している。
【0154】
E. 生物学
D1受容体に対する化合物(I)活性を評価するために、機能アッセイでこれを試験した。機能アッセイは、均一時間分解蛍光(HTRF)アッセイで環状アデノシン一リン酸(cAMP)の生成の刺激を測定し、内因性アゴニストであるドーパミンの濃度を増加させることによるcAMPの最大増加を100%のD1受容体活性化として定義する。試験すると、化合物(±)-(I)は、有意な直接的アゴニスト様効果を示す。
【0155】
化合物(I)のD1に対する親和性および選択性を評価するために、これを競合的放射性リガンド結合アッセイで試験した。次いで、競合的放射性リガンド結合アッセイを使用して、D1受容体に対する(±)-Iの親和性を測定し、80種の関連および非関連標的の大きなパネルに関するその選択性を評価した。化合物(±)-(I)は、ナノモル濃度以下の範囲の親和性でD1およびD5受容体に結合し、他の試験した標的のいずれにも有意には結合しない。
【0156】
次いで、化合物(-)-(I)をトリチウム標識して、
1)既知のD1アンタゴニスト[H]SCH23390および式(-)-(Ic)のD1アゴニスト化合物の放射性リガンド結合特性、および
2)D1正のアロステリックモジュレーター(PAM)がD1受容体(D1R)へのアゴニストまたはアンタゴニストの結合を増強する能力
を測定および比較した。オートラジオグラフィーによって、非ヒト霊長類(NHP)脳切片上でヒトD1Rを発現する細胞膜上での放射性リガンド結合の増加としてD1 PAM誘導増強を測定した。
【0157】
化合物を試験した特定のアッセイ条件を以下に記載する。
【0158】
E.1. 材料および方法
ヒトドーパミンD1Rの一過的トランスフェクションを、ヒト胎児腎細胞(HEK hD1R)でpcDNA3.1ベクターを使用して実施した。
【0159】
非ヒト霊長類(NHP)アカゲザル(Macaca mulatta)の脳切片は、Motac(Bordeaux、フランス)から提供され、全ての動物実験は欧州の動物使用に関する倫理ガイダンスおよび法律に従って実施した。
【0160】
D1アンタゴニスト化合物は、Perkin Elmer(Zaventem、ベルギー)から入手した[H]SCH23390(比放射能73 Ci/mmol)である。
【0161】
HTRF cAMPダイナミックアッセイキット、ヒト神経上皮腫SK-N-MC細胞、および他の全ての試薬は分析グレードのものであり、従来の商業的供給元から入手し、製造業者の推奨に従って使用した。
【0162】
データはExcelおよびGraphpad Prism(登録商標)ソフトウェアを使用して分析した。K、Bmax、pIC50およびpEC50およびErelは、様々な競合的およびアロステリックな結合および機能的活動モデルを表す方程式に従って、コンピューター化された曲線当てはめによって測定した。
【0163】
E.2. cAMP HTRF D1機能アッセイ
ドーパミンD1RはGs型Gタンパク質に結合しており、その活性化により細胞内cAMP濃度([cAMP])が増加する。[cAMP]の変化を、D1Rを内因的に発現するヒト神経上皮腫SK-N-MC細胞でHTRF技術を使用して測定した。384ウェルプレートで、1ウェル当たり20000個細胞を、0.1mMイソブチルメチルキサンチンおよび10の増加する濃度のドーパミンまたは式(I)の化合物(10-5M~10-12M)を含有する最終体積20μLの20mM HEPESで緩衝化したハンクス平衡塩溶液(HBSS HEPES緩衝液、pH7.4)中、室温で1時間インキュベートした。反応を、共に溶解緩衝液に希釈した10μLのd2検出試薬とクリプタート試薬を連続して添加することによって終結した。室温で60分の期間の後、標準曲線を使用してHTRF放出比の変化を決定し、[cAMP]に変換した。全てのインキュベーションを2連で実施し、結果をドーパミンの濃度-効果曲線と比較した。化合物の効力pEC50は、cAMPレベルの活性化の50%を生成する化合物の濃度の-log10であり、Erelは、ドーパミンの濃度を増加させることによって生成される最大応答と比較した化合物によって生成される最大%増強として定義される相対有効性である(Erel1=ドーパミン最大応答)。
【0164】
ヒト神経芽細胞腫SK-N-MC細胞で試験した場合、化合物(-)-Iは、ドーパミンと比較して、pEC50が8.3、Erelが53%のD1部分アゴニスト様効果を示した。化合物(-)-1とドーパミンについての比較機能結果を表1に要約し、図1にさらに示す。
【表1】
【0165】
E.3. 化合物(±)-IのヒトD1Rに対する親和性および選択性プロファイル
組換えヒトD1Rに対する式(±)-(I)の化合物の親和性(pKi)を、[H]SCH23390放射性リガンド競合結合実験によってCEREP(Celle l’Evescault、フランス)で測定した。化合物(±)-Iは、ヒトD1RについてpKi9.2を示した。
【0166】
ヒトD1Rについての化合物選択性を、受容体、トランスポーター、酵素およびイオンチャネルを含む80種の標的(2連のデータでn=1)のパネルに対してCEREPで、10μMで評価した。潜在的に関連する親和性を、ドーパミンD5受容体(D5R)、タキキニンNK1受容体およびアデノシン輸送体(ADET)の3つの標的のみで特定したところ、10μMの化合物(±)-(I)で60%超の阻害を示した。次いで、ヒトD5R、NK1受容体およびADETに対する式(±)-Iの化合物の親和性(pKi)を測定した。式(±)-Iの化合物は、他の79種の試験した標的(pKi 6.0以下)に対して1000倍超選択的であるので、D1様(D1RおよびD5R)選択的リガンドである(ヒトD5RのpKiは9.4)。
【0167】
E.4. 放射性リガンド結合アッセイ
HEK hD1R細胞の膜を使用して、放射性リガンド結合を測定した。トランスフェクションの48時間後、細胞を1500gおよび4℃で10分間の遠心分離によってペレット化した。ペレットを氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1回洗浄し、上記のように遠心分離した。ペレットを、15mMトリス-HCl、0.3mMエチレンジアミン四酢酸、1mMエチレングリコール四酢酸、2mM MgCl(pH7.5)を含有し、プロテアーゼ阻害剤カクテルを補充した緩衝液でホモジネートした。ホモジネートを2回凍結融解し、25℃で平衡化し、引き続いて、10分間DNAse(10U/ml)処理した。その後、溶液を40000gおよび4℃で30分間遠心分離した。最後に、ペレットを、250mMスクロースを含有する20mMトリス-HCl緩衝液(pH7.4)に再懸濁し、D1放射性リガンド結合アッセイまで-80℃で貯蔵した。HEK hD1Rの膜調製物(1アッセイ当たり5μgのタンパク質)を、25℃で120分間、1%DMSOを含有する0.2ml結合緩衝液中(-)-(Ic)または[H]SCH23390とインキュベートした。インキュベーション期間の最後に、タンパク質結合放射性リガンドを、事前浸漬GF/Bガラスファイバーフィルタを通して濾過することによって回収した。フィルタをアッセイ体積の少なくとも4倍の氷冷50mMトリスHCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。濾過ステップ全体は10秒を超えなかった。フィルタを乾燥させ、液体シンチレーションによって放射能を測定した。飽和結合アッセイを、10μM D1 PAM、化合物a(CAS1900706-51-5)および化合物b(CAS1904661-53-5)(段落E.7ならびに図5および図6では化合物Bとも呼ばれる)の非存在下および存在下で、増加する濃度の(-)-(Ic)または[H]SCH23390(0.5~50nM)を使用して行った。
【0168】
競合/増強結合実験を、一定の(-)-(Ic)濃度(1~4nM)および10の増加する濃度の(-)-(Ic)または化合物b(10-10M~10-5M)で行った。全ての実験で、非特異的結合(NSB)を、10μMの標識されていないそれぞれの化合物の存在下で観察された残留放射性リガンド結合として定義した。
【0169】
D1 PAM化合物はD1アンタゴニスト放射性リガンド[H]SCH23390結合に影響を与えませなかった(図3A)が、Bmaxを45%増加させ、Kを20%減少させることにより、D1アゴニスト放射性リガンド(-)-(Ic)の結合特性を有意に改善した(図3B)。
【0170】
D1 PAM化合物が、D1Rへの低ナノモル濃度(PETトレーサーに関連)のアゴニスト放射性リガンド(-)-(Ic)結合を増強する能力が、図3Cで実証された((-)-(Ic)結合の50%超の増強)。
【0171】
得られた曲線を図3に示す。
【0172】
E.5. オートラジオグラフィー
12μmの脳切片を新鮮な凍結NHP脳半球から調製し、ガラス製顕微鏡スライドに配置した。オートラジオグラフィー実験は、HBSS HEPES緩衝液(pH7.4)中、室温で実施した。NHP脳切片を最初に30分間平衡化した後、1%DMSO中[H]化合物と1時間インキュベートした。次いで、スライドを氷冷50mMトリス-HCl緩衝液(pH7.4)中で5分間洗浄し、引き続いて氷冷蒸留水で2回洗浄した。切片を大気圧下、室温で乾燥させた。切片上の放射能を、直接カウンターを使用して、蛍光面へのスライドの曝露後に間接的に測定した。全てのオートラジオグラフィー実験で、[H]標準を定量化に含め、NSBを10μM非標識化合物の存在下で観察される[H]化合物の残留結合として定義した。
【0173】
NHP脳切片に対するオートラジオグラフィーで試験すると、既知のD1様トレーサーと同様に(Cadet JL et al.Dopamine D1 receptors,regulation of gene expression in the brain,and neurodegeneration.CNS Neurol Disord Drug Targets.(2010)9(5):526-538)、(-)-Icは、これらの構造(Cadetら)で見られる高レベルのD1受容体発現と一致した尾状核被殻における有意な結合(総結合)を実証した。この結合は置換可能であり、20%は非特異的結合として評価された(10μMの化合物(I)の存在下で測定)。
【0174】
10μM D1 PAM化合物bの存在下では、(-)-Ic特異的結合が有意に増加し(150%超)、有意な増強があることを示している。
【0175】
図4は、オートラジオグラフィーアッセイで得られた結果を示している。挿入は、データ定量化のために選択された領域を示す。データを、重複の平均±標準偏差として表す。
【0176】
E.6. カニクイザルにおけるインビボPETイメージング試験
カニクイザル(雌、体重6.02kg)で実験を実施した。サルを、ケタミンの筋肉内注射を使用して鎮静し、実験の期間中、セボフルラン、酸素および医療用空気の混合物を使用して麻酔をかけ続けた。795GBq/μmolの比放射能で141MBqの(-)-(Ia)を静脈内投与した後、ベースラインスキャンを実施し、Siemens HRRT PETスキャナー(Siemens Preclinical Solutions、Knoxville、TN)を使用して脳のPET画像を取得した。
【0177】
データを123分間取得し、以下のフレームタイミングでサイノグラムにビニングした:9×20秒;3×1分;5×3分;および17×6分。この試験で使用した関心領域は、尾状核、被殻、小脳、前頭皮質、後頭皮質、淡蒼球、中脳、腹側線条体、視床および側頭皮質であった。関心領域をPETスキャンに適用するための登録パラメータを取得し、領域の時間放射能曲線(TAC)を作成した。代謝産物分析のため、(-)-(Ia)投与の4、15、30、60、90、120分後に静脈血試料を採取した。
【0178】
(-)-Iaの標準化取り込み値(SUV)時間放射能曲線
(-)-Iaの標準化取り込み値(SUV)時間放射能曲線を、複数の関心領域で取得した。(-)-Iaのピーク取り込みは、種々の脳領域にわたって投与後5~10分で約3.5~4のSUVに達し、引き続いて、D1受容体のない参照領域から予想されるように、小脳から急速に洗い流されて、60分で約1のSUVに達する。
【0179】
尾状核および被殻関心領域からの洗い流しは有意に遅く、60分で約2のSUVに達し、これは報告されたこれらの領域でのD1の分布から予想されるだろう。小脳を参照領域およびローガン参照組織モデルとして使用すると、結合電位(BPND)は、尾状核および被殻でそれぞれ0.94および0.87と計算され、これは、式(-)-(Ia)の化合物がPETイメージングによって確実に定量化できる特定の結合を有することを意味する。
【0180】
33~63分の間に得られた合計SUV画像は、脳組織のオートラジオグラフィーおよび報告される線条体構造での取り込みが高いD1の分布と一致することを実証している。
【0181】
式(I)の化合物の代謝産物プロファイル
(-)-Iaの代謝産物のプロファイルを、いくつかの時点で投与後に収集した静脈血試料のラジオHPLC分析によって決定した。血漿中の親画分は、15分で85%、30分で60%、60分でまだ約45%である。以前に報告されたD1アゴニストトレーサーとは対照的に、血液脳関門を通過する可能性が低い親水性代謝産物のみが検出されている。
【0182】
E.7. カニクイザルにおけるインビボ増強PETイメージング試験
MPI Research(Mattawan、MI)に収容されている2匹のカニクイザル(Macaca fascicularis)を、インビボ増強PET試験の研究対象として使用した。
【0183】
E.7.1. 化合物の投与および画像取得
各動物をプロポフォールivボーラス(2.5~5.0mk/kg)で麻酔し、化合物Bのi.v用量投与の開始前に少なくとも30分間、プロポフォールiv持続速度注入(CRI、0.1~0.6mg/kg/分)で維持した。いくつかの用量レベルを投与した。20mg/kg(総用量)の用量レベルでは、化合物Bを負荷注入用量8.54mg/kgとして投与し;CRI 34.2mg/kg/時間で約15分間にわたって投与し、引き続いて、注入維持量11.45mg/kgで投与し;およそ40分間にわたって17.2mg/kg/時間の速度でCRIを介して投与した。およそ55分の総注入時間後、化合物Bの投与を中止した。化合物(-)-Ibをボーラス注射によってiv投与し、化合物B注入開始の10分後に投与を開始した。脳イメージングデータを、microPET Focus 220スキャナー(Siemens Medical Systems、Knoxville、TN)での放射性トレーサーの投与開始直後に取得した。動的放出データを、化合物(-)-Ib注射直後に120分間にわたってリストモードで収集し、次いで、マルチフレームの動的画像(6×0.5分、3×1分、2×2分および22×5分フレーム)に再構築した。PET画像を、PETカメラ製造業者によって提供されるソフトウェアおよび方法論を使用して、検出器の正規化、デッドタイム、不均一なラディアルサンプリング、減衰、散乱および放射性崩壊について補正した。
【0184】
E.7.2. 動脈血サンプリング
化合物(-)-Ib投与後、化合物(-)-Ibを投与する前、および化合物(-)-Ibの注射後最大120分までの13時点で、動脈血試料を中央腸骨動脈から採取した。全ての血液試料を抗凝固剤チューブに収集し、ガンマカウンターによる放射能の定量化、HPLCによる経時的な血漿中の化合物(-)-Ib親画分および血中の化合物(-)-Ibエキソビボ安定性の測定まで、氷上で貯蔵した。
【0185】
E.7.3. 画像処理および分析
再構成された動的脳PET画像を転送し、画像処理PMODソフトウェアパッケージ(PMOD Technologies、Zurich、スイス)を使用して分析した。ベースラインで取得されたPET画像を、以前に取得された動物の脳の構造的磁気共鳴画像法(MRI)に合わせた。動物の脳のMRIを、一般的なMRカニクイザル脳テンプレートに空間的に正規化し、得られた正規化変換をPET画像に適用した。薬物試験中に取得されたその後のPET画像を、最初にベースライン画像に合わせ、次いで、ベースライン画像から既に計算された変換を使用して、共通のMRテンプレート空間に変換した。
【0186】
テンプレート空間で定義される関心領域(ROI)をPET画像に適用して、時間放射能曲線(TAC)を計算した。各ROI内の平均放射能濃度(kBq/cc)を決定し、経時的な局所脳放射能濃度を表すTACを作成した。脳のTACおよび画像を、動物の体重および注射用量で正規化することによって、SUV単位(g/mL)で提示した。
【0187】
血漿ベース方法ローガングラフ解析(LGA)を局所TACに適用して、各脳領域の分布(V)の総体積を決定した。モデリングに使用した動脈入力関数は、測定された親画分を使用して代謝産物についての血漿放射能を補正することによって作成した。
【0188】
処理-V ベースラインがy軸上にあり、V 処理がx軸上にある、全体的占有率ラッセンプロットと概念が類似の増強プロットを使用した。次いで、特定のシグナルの増加として定義される増強、増強=V 処理/V ベースライン(式中、Vは特定の分布体積である)を、グラフの勾配/(1-勾配)としての増強プロットから導出することができ、変位不可能な分布体積(VND)は、グラフのx切片によって与えられる。
【0189】
E.7.4. 結果
ベースラインおよび20mg/kgの化合物Bの投与後に取得された40~90分間にわたる平均(時間加重)のSUV PET画像と関連する時間放射能曲線を図5に示す。両画像は、化合物Bの取り込みに対する化合物Bの効果を示しており、D1アロステリック部位への化合物Bの結合による化合物(-)-Ibの増強により、取り込みの増加が観察される。
【0190】
増強効果を定量化するために、ベースライン時およびLGAを使用した化合物Bの投与後の時間放射能曲線から分布量(V)を推定した。20mg/kgでは、カニクイザルの尾状核および被殻で平均で約100%の増加が観察された。
【0191】
尾状核、被殻、腹側線条体、淡蒼球、黒質、島、帯状回および小脳についての増強プロットを図6に示す。
【0192】
プロットから、55分間にわたって注入された20mg/kgの化合物Bの総用量について、増強がおよそ136%と推定された。

図1
図2
図3
図4
図5
図6