(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】微小流体装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230901BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230901BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20230901BHJP
C12N 1/00 20060101ALN20230901BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/34 D
G01N37/00 101
C12N1/00 B
(21)【出願番号】P 2020541502
(86)(22)【出願日】2019-02-15
(86)【国際出願番号】 SE2019050134
(87)【国際公開番号】W WO2019160491
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-02-14
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】517180431
【氏名又は名称】アストレゴ ダイアグノスティクス エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】バルテキン,オズデン
(72)【発明者】
【氏名】オーマン,オーヴ
(72)【発明者】
【氏名】ロブマール,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】エルフ,ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】オルソン,ミカエル
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0337500(US,A1)
【文献】国際公開第2017/188962(WO,A1)
【文献】Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2017年,Vol.114, No.34,pp.9170-9175, Supporting information
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的細胞を収容するように適合されたセルチャネル(20)を有する基板(10)と、
第1の流体ポート(31)と流体接続する第1の端部(32)を有する流入チャネル(30)であって、前記セルチャネル(20)のそれぞれの第1の端部(22)が、前記流入チャネル(30)と流体接続している、流入チャネル(30)と、
第3の流体ポート(41)と流体接続する流出チャネル(40)であって、前記セルチャネル(20)のそれぞれの第2の端部(24)が、前記流出チャネル(40)と流体接続しており、前記セルチャネル(20)が、前記標的細胞
がそれぞれの障害物(25)を通過して前記流出チャネル(40)に入ることを防ぐように設計されたそれぞれの障害物(25)を備える、流出チャネル(40)と、
フィルタチャネル(60)およびプレフィルタチャネル(70)を備えるプレフィルタ(50)であって、
前記フィルタチャネル(60)は、第1のフィルタポート(61)と流体接続する第1の端部(62)および第2のフィルタポート(65)と流体接続する第2の端部(64)を有し、
前記プレフィルタチャネル(70)は、前記標的細胞を収容するように適合され、前記プレフィルタチャネル(70)のそれぞれの第1の端部(72)は、前記フィルタチャネル(60)と流体接続しており、かつ前記プレフィルタチャネル(70)のそれぞれの第2の端部(74)は、前記流入チャネル(30)と流体接続しており、
流量制御装置(100)は、前記標的細胞および前記フィルタチャネル(60)の前記第1の端部(62)および前記第2の端部(64)の間を前後する混合粒子を含む生体試料の流れを誘導するように構成され、あるいは、前記第1のフィルタポート(61)および前記第2のフィルタポート(65)の間の前記生体試料の循環流であって、前記第1のフィルタポート(61)および前記第2のフィルタポート(65)の間の流体接続を介して循環流を誘導するように構成されることを特徴とする、プレフィルタ(50)、
を備える微少流体装置(1)。
【請求項2】
前記流量制御装置(100)が、前記流入チャネル(30)から前記プレフィルタチャネル(70)を通り前記フィルタチャネル(60
)に流体流を誘導するように構成される、請求項1に記載の微小流体装置(1)。
【請求項3】
前記流量制御装置(100)が、前記流入チャネル(30)から前記プレフィルタチャネル(70)を通り前記フィルタチャネル(60
)に、かつ前記流入チャネル(30)から前記セルチャネル(20)を通り前記流出チャネル(40
)に前記流体流を誘導するように構成される、請求項2に記載の微小流体装置(1)。
【請求項4】
前記フィルタチャネル(60)が第1のフィルタチャネル(60)であり;
前記プレフィルタチャネル(70)が第1のプレフィルタチャネル(70)であり;
前記プレフィルタ(50)が、
第3のフィルタポート(81)と流体接続する第1の端部(82)を有する第2のフィルタチャネル(80)と、
前記標的細胞を収容するように適合された第2のプレフィルタチャネル(90)を備え、前記第2のプレフィルタチャネル(90)のそれぞれの第1の端部(92)が、前記第2のフィルタチャネル(80)と流体接続しかつ前記第2のプレフィルタチャネル(90)のそれぞれの第2の端部(94)が、前記流入チャネル(30)と流体接続し、
前記第1のプレフィルタチャネル(70)の前記それぞれの第2の端部(74)が前記第2のフィルタチャネル(80)と流体接続している、
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の微小流体装置(1)。
【請求項5】
前記第1のプレフィルタチャネル(70)が、前記第2のプレフィルタチャネル(90)と比較してより大きい直径又はより大きい高さ及び/又は幅を有することを特徴とする、請求項4に記載の微小流体装置(1)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の微小流体装置(1)を操作する方法であって、前記方法が以下の工程:
前記標的細胞および前記フィルタチャネル(60)の前記第1の端部(62)および前記第2の端部(64)の間を前後する混合粒子を含む生体試料の流れを誘導する工程(S1);または
前記第1のフィルタポート(61)および前記第2のフィルタポート(65)の間の前記生体試料の循環流であって、前記第1のフィルタポート(61)および前記第2のフィルタポート(65)の間の流体接続を介して前記循環流を誘導する工程(S1);
を含み、かつ
前記プレフィルタチャネル(70)を介して前記流入チャネル(30)から流体流を前記フィルタチャネル(60)に誘導する工程(S2)であって、工程S2により、前記プレフィルタ(50)を洗浄して前記プレフィルタチャネル(70)を目詰まりさせる混合粒子を除去し、かつ/または前記プレフィルタチャネル(70)
の入口を遮断する前記混合粒子を除去する、工程(S2)、
を含む、方法。
【請求項7】
前記工程S2が、前記流入チャネル(30)から前記プレフィルタチャネル(70)を通り前記フィルタチャネル(60
)に、かつ前記流入チャネル(30)から前記セルチャネル(20)を通り前記流出チャネル(40
)に流体流を誘導する工程を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記工程S2が、
流体流を、前記流出チャネル(40)から前記セルチャネル(20)の少なくとも一部を通って前記流入チャネル(30)に、かつ前記プレフィルタチャネル(70)を通って前記フィルタチャネル(60)に誘導することを含む、請求項6又は7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、一般に、微小流体装置を対象とし、特に、混入粒子及び標的細胞を含む生体試料の分析に使用できるそのような微小流体装置を対象とする。
【背景技術】
【0002】
背景
単細胞生物学での最近の進展により、同質遺伝子細胞は、同一の条件下で成長した場合にも、遺伝子発現及び挙動に大きな差異を示し得ることが明らかになった。それにより、経時的な表現型における細胞間の差異を特徴付けるために、新しい装置が必要とされる。そのような装置は、単一の細胞を培養及び監視する際に有効なツールであるために、特定の基準を満たす必要がある。例えば、これらの装置は、投入直後に表現型特性を監視できるように、細胞の投入が容易であるべきである。さらに、多くの異なる個々の細胞を並行して成長させて、細胞間の差異を特徴付け、かつ平均化による個々の細胞の特性評価における測定誤差を克服する必要がある。これらの装置は、例えば、系統依存的動態を監視するために、一定のかつ十分に制御された成長条件下で長期間細胞の培養を可能にするように設計されなければならない。装置が、新しい培養培地又は試験剤に応答して動態変化を監視するために培養条件を変更できるならば、さらに好ましい。例えば、並行して同質遺伝子細胞に対して異なる培養培地を試験するか、又は並行して異なる細胞株での培地変化に対する応答を監視することが有利であり得る。
【0003】
微小流体装置の所望の用途は、標的細胞が微小流体装置に投入された直後に、抗生物質又は他の試験薬剤のセットに対する生体試料中の細菌などの標的細胞の表現型応答を迅速にかつ並行して監視することである。そのような用途では、分析の速度を上げるために、生体試料を微小流体装置に直接投入できることが有利である。
【0004】
「マザーマシン(Mother Machine)」と名付けられた従来技術の微小流体装置が、Wangら、Current Biology 2010、20:1099-1103に開示されている。マザーマシンは、並行して多数の異なるセルチャネルで細胞を監視することを可能にする。しかしながら、この従来技術の微小流体装置は、いくつかの欠点を有する。例えば、細胞投入が複雑であり、微小流体装置中の培養条件を急速に変更することが困難である。
【0005】
生体試料の分析に有用なさらなる微小流体装置は、WO 2016/007063及びWO 2016/007068に示されている。
【0006】
Baltekinら、PNAS 2017、114(34):9170-9175は、微小流体装置を使用する、高速抗生物質感受性試験(AST)試験であるFASTestについて開示している。濾過サイズを徐々に減少させる異なるゾーンを有するフィルタ領域が微小流体装置のポートに設けられて、粉塵、成長培地中の大きな沈殿物及び気泡を捕捉する。
【0007】
そうでなければ微小流体装置中で標的細胞の捕捉を妨げ得る混入粒子を含む生体試料に使用できる、微小流体装置の必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的な目的は、混入粒子を含む生体試料を投入できる微小流体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この及び他の目的は、本明細書に開示される実施形態によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
実施形態の態様は、標的細胞を収容するように適合されたセルチャネルを有する基板を含む微小流体装置に関する。微小流体装置はまた、第1の流体ポートと流体接続する第1の端部と、第3の流体ポートと流体接続する流出チャネルとを有する流入チャネルを備える。セルチャネルのそれぞれの第1の端部は流入チャネルと流体接続し、セルチャネルのそれぞれの第2の端部は流出チャネルと流体接続する。セルチャネルは、標的細胞がそれぞれの障害物を通過して流出チャネルに入るのを阻止するように設計されたそれぞれの障害物を備える。微小流体装置は、第1のフィルタポートと流体接続する第1の端部を有するフィルタチャネルと、標的細胞を収容するように適合されたプレフィルタチャネルとをさらに備える。プレフィルタチャネルのそれぞれの第1の端部はフィルタチャネルと流体接続し、プレフィルタチャネルのそれぞれの第2の端部は流入チャネルと流体接続する。
【0011】
実施形態の別の態様は、実施形態に従い微小流体装置を操作する方法に関する。本方法は、流入チャネルからプレフィルタチャネルを通ってフィルタチャネルに流体流を誘導することを含む。
【0012】
微小流体装置は、標的細胞に加えて、生体試料中に存在する混入粒子を捕捉及び/又は排除するか、又はそのような混入粒子がセルチャネルに入る危険性を少なくとも著しく低減するように設計されたプレフィルタを備える。プレフィルタは、そうでなければプレフィルタ及びセルチャネルを通る生体試料の流れを妨害する混入粒子を目詰まりさせることなく洗浄することができる。それにより、微小流体装置は、高濃度の混入粒子及び/又は混入粒子に対して低い比率の標的細胞を含む生体試料に使用することができる。
【0013】
本実施形態は、そのさらなる目的及び利点と共に、添付の図面と共に以下の説明を参照することにより最もよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実施形態による微小流体装置の図である。
【
図2】
図2は、別の実施形態による微小流体装置の図である。
【
図3】
図3は、さらなる実施形態による微小流体装置の図である。
【
図4】
図4は、さらに別の実施形態による微小流体装置の図である。
【
図5】
図5は、さらなる実施形態による微小流体装置の図である。
【
図6】
図6は、一実施形態による微小流体装置に接続された流量制御装置を概略的に示す。
【
図7】
図7は、プレフィルタの実施形態を概略的に示す。
【
図8】
図8は、プレフィルタの別の実施形態を概略的に示す。
【
図9】
図9は、一実施形態による微小流体装置を操作する実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面全体を通して、同様の又は対応する要素には同じ参照番号が使用される。
【0016】
本発明は一般に、微小流体装置を対象とし、特に、混入粒子及び標的細胞を含む生体試料の分析に使用できるそのような微小流体装置を対象とする。
【0017】
微小流体装置は、生体試料中に存在する標的細胞を分析及び監視して、表現型及び/又は遺伝子型の特徴並びに形質などの標的細胞の様々な特徴を決定することを提案されてきた。この手法は一般に、液体培地中に標的細胞を主に含む実質的に純粋な生体試料の場合に、又は生体試料が比較的高い濃度で標的細胞を含む場合に良好に機能する。
【0018】
しかしながら、いくつかの用途では、生体試料は、複雑であり、いわゆる混入粒子をさらに含み、かつ/又は比較的低い濃度で標的細胞を含み得る。混入粒子は、標的細胞以外の細胞、細胞破片並びに粉塵及び/又は塵粒子などの非細胞材料を含み得る。これらの用途において、混入粒子は、微小流体装置を詰まらせることによって、微小流体装置での生体試料中に存在する標的細胞の効率的な捕捉を阻止する場合がある。さらに、生体試料が、標的細胞と比較して、比較的高い濃度の混入粒子を含む場合に、混入粒子は、微小流体装置での捕捉中に標的細胞と競合し、その結果、微小流体装置中で標的細胞を全く又はほとんど捕捉しない場合がある。いずれの場合も、微小流体装置で捕捉される標的細胞の数は、標的細胞の効率的な分析を行い、かつその特徴を決定するのに十分ではない。
【0019】
典型的な状況は、(仮の)敗血症患者から採取された血液試料を有することである。そのような場合、血液試料は、多くの場合、標的細胞として比較的低い濃度の感染原因菌と、混入粒子としての比較的はるかに高濃度の白血球(WBC)及び赤血球(RBC)とを含む。
【0020】
これは、そのような血液試料が微小流体装置に投入されると、WBC及びRBCが、細菌が捕捉されるべき微小流体装置中のセルチャネルを妨害及び閉塞させ、かつ/又は実質的に全てのセルチャネルを占有する場合があることを意味する。その結果、そのような血液試料を有する微小流体装置では、細菌が全く又はほとんど捕捉されない。
【0021】
フィルタを備える微小流体装置が、Baltekinら、PNAS2017、114(34):9170-9175で提案されている。次いで、微小流体装置は、投入ポート中にフィルタ領域を含む。このフィルタ領域は、投入培地中の粉塵及び大きな沈殿物を捕捉し、培地から気泡を除去するのに有効であり得る。しかしながら、血液試料などの、標的細胞と類似の大きさの混入粒子が多く存在する生体試料は、最終的にフィルタ領域を目詰まりさせ、それによって、ポートを通る、さらに微小流体装置中への血液の流れを防ぐ。
【0022】
そのため、WBC及びRBCを有する血液試料などの混入粒子を含む生体試料の分析に使用できる微小流体装置の必要性が存在する。
【0023】
本実施形態の微小流体装置は、混入粒子の少なくとも一部を除去するように設計されたプレフィルタを備え、それによって、微小流体装置内の標的細胞を捕捉するために使用されるセルチャネルに到達し得るそのような混入粒子の数を抑えるか又は少なくとも著しく減少させる。実施形態の微小流体装置及びプレフィルタの重要な利点は、プレフィルタが混入粒子によって目詰まりしたり妨害されたりする場合にそれを洗浄できることである。プレフィルタのこのような洗浄は、微小流体装置の動作中に、標的細胞が既にセルチャネルに捕捉されている場合であっても行うことができる。
【0024】
そのため、生体試料が、プレフィルタ及び微小流体装置を詰まらせる場合があるそのような混入粒子を比較的多く含む場合であっても、プレフィルタを洗浄して、そのような目詰まり混入粒子を除去し、それによって、微小流体装置内の生体試料から標的細胞を捕捉し続けることができる。
【0025】
図1は、一実施形態による微小流体装置1の図である。微小流体装置1は、標的細胞を収容するように適合され、細胞捕捉とも呼ばれるセルチャネル20を有する基板10を備える。微小流体装置1はまた、第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32を有する流入チャネル30を備える。セルチャネル20のそれぞれの第1の端部22は流入チャネル30と流体接続する。微小流体装置1はさらに、第3の流体ポート41と流体接続する流出チャネル40を備える。セルチャネル20のそれぞれの第2の端部24は流出チャネル40と流体接続する。セルチャネル20は、標的細胞がそれぞれの障害物25を通過し流出チャネル40に入るのを阻止するか、又は少なくとも抑制するように設計されたそれぞれの障害物25を備える。微小流体装置1は、さらにプレフィルタ50を備える。プレフィルタ50は、第1のフィルタポート61と流体接続する第1の端部62を有するフィルタチャネル60を備える。プレフィルタ50はまた、標的細胞を収容するように適合されたプレフィルタチャネル70を備える。プレフィルタチャネル70のそれぞれの第1の端部72は、フィルタチャネル60と流体接続し、プレフィルタチャネル70のそれぞれの第2の端部74は、流入チャネル30と流体接続する。
【0026】
微小流体装置1の基板10は、複数の、すなわち、少なくとも2つ、最も一般的には数十、数百、又は数千又は数百万のセルチャネル20を有し、セルチャネル20は、流入チャネル30と流出チャネル40の間に延在している。セルチャネル20は好ましくは、
図1に示されるように互いに平行であり、第1の端部22は流入チャネル30と流体接続し、反対の第2の端部24は流出チャネル40と流体接続している。したがって、流入チャネル30に存在する生体試料は、セルチャネル20を通って流れ、さらに流出チャネル40に流入し、第3のポート41を通って流出し得る。
【0027】
セルチャネル20は、流入チャネル30で生体試料中に存在する標的細胞がセルチャネル20に入るのを可能にするのに十分に大きい幅及び高さ又は直径などのサイズ、並びに形状を有する寸法である。プレフィルタ50を通過し、大きすぎるか、又はセルチャネル20の断面サイズ及び形状に適合しないサイズ及び/又は形状を有する混入粒子はいずれも、第1の端部22を通ってセルチャネル20に入らない。
【0028】
特定の実施形態では、セルチャネル20の寸法は、100nm~100μmの範囲である。
【0029】
セルチャネル20の障害物25は、標的細胞が障害物25を通過して流出チャネル40に入るのを阻止する、直径、幅及び/又は高さなどの形状及び寸法を有するように設計される。したがって、標的細胞は、細胞チャネル20に閉じ込められ、捕捉されるようになる。
【0030】
セルチャネル20の障害物25は好ましくは、
図1に示すように、セルチャネル20の第2の端部24に配置されるか又はこれと接続している。これは、セルチャネル20あたり2個以上の標的細胞の捕捉及び/又はセルチャネル20内での標的細胞の成長、すなわち分裂を可能にする。
【0031】
混入粒子が入口、すなわち、セルチャネル20の第1の端部22を塞ぐ危険性を防止するか又は少なくとも著しく低減するために、生体試料中の標的細胞がセルチャネル20に入って、その中に捕捉されることを阻止するために、プレフィルタ50は、セルチャネル20の上流に配置される。これは、プレフィルタ50が、生体試料中に存在する混入粒子の少なくとも重要な部分を効果的に除去することにより、そのような混入粒子が流入チャネル30及びセルチャネル20に到達するのを阻止するか、又はそのような混入粒子の数を低下させることを意味する。
【0032】
図1に示すプレフィルタ50の実施形態では、プレフィルタ50は、好ましくは互いに平行である複数のプレフィルタチャネル70を備える。これらのプレフィルタチャネル70は、一実施形態では、セルチャネル20が有するような障害物25を有しないことを除いて、セルチャネル20と実質的に類似していてよい。
【0033】
次いで、プレフィルタチャネル70は、セルチャネル20と同じ断面サイズ及び形状を有するか、又は標的細胞がプレフィルタチャネル70に入りそこを通って流れることができる限り、異なるそのような断面サイズ及び/又は形状を有してよい。
【0034】
プレフィルタチャネル70は、フィルタチャネル60の第1の端部72から流入チャネル30の第2の端部74に向かって移動するときに、実質的に均一な断面サイズ及び形状を有してよい。別の実施形態では、断面サイズ及び/又は形状は、第1の端部72から第2の端部74へと連続的に又は1以上の工程でのいずれかで変化してよい。例えば、プレフィルタチャネル70の直径、幅又は高さは、第2の端部74と比較して、第1の端部72でより大きくてよい。プレフィルタチャネル70のこの狭小化は連続的であってよく、すなわち第1の端部72から第2の端部74に向かうときに、直径、幅又は高さを滑らかに減少させる。あるいは、プレフィルタチャネル70の狭小化は、1以上の工程で段階的であり得る。
【0035】
基板材料間に配置された平行なプレフィルタチャネル70を有する実施形態は単に、プレフィルタ50の例示的な例として見られるべきである。
図7及び8は、プレフィルタチャネル70を有するプレフィルタ50の他の実施形態を示す。
図7では、フィルタチャネル60と流入チャネル30の間でプレフィルタ50に複数のピラー71が配置されている。これらの複数のピラー71は、ピラー71間及びフィルタチャネル60から流入チャネル30へと延びるプレフィルタチャネル70を形成する。一実施形態では、ピラー71は、フィルタチャネル60と流入チャネル30の間のいわゆるプレフィルタ領域又はゾーン75で均一に分布される。そのような実施形態では、隣接するピラー71間のピラー間距離は、プレフィルタ領域又はゾーン75全体にわたって実質的に同じである。代替的な実施形態では、ピラー71は、フィルタチャネル60と投入チャネル30の間に延在し標的細胞がフィルタチャネル60からプレフィルタ領域又はゾーン75を通って流入チャネル30に流入することを可能にするのに十分な寸法を有するプレフィルタチャネル70がある限り、プレフィルタ領域又はゾーン75上で多かれ少なかれランダムに分布してよい。
【0036】
さらなる実施形態では、ピラー間の距離は、フィルタチャネル60から流入チャネル30に向かうときに、連続的に又は段階的に、プレフィルタ領域又はゾーン75上で変化してよい。例えば、ピラー間の距離は、フィルタチャネル60近くの隣接ピラー71間に比べて、流入チャネル30近くの隣接ピラー71間でより小さくてよい。
【0037】
図8は、プレフィルタ50の別の実施形態を示す。この実施形態では、プレフィルタ領域又はゾーン75は、その間に開口部を有するフィルタ構造73の列又はアレイを備える。これらの開口部は、それによって、標的細胞がフィルタ構造73の列又はアレイを通過するのを可能にする。そのため、プレフィルタ領域又はゾーン75は、図に示すようにプレフィルタチャネル70を備える。
【0038】
図8では、フィルタ構造73の単一の列又はアレイは、プレフィルタ領域又はゾーン75に配置されている。これは単に、例示的な例として見られるべきである。実際には、基本的にフィルタ構造73のマトリクスを形成するために、次々に配置される複数のそのような列又はアレイを有することが可能である。そのような場合、異なる列のフィルタ構造73は互いに整列されてよく、又は互いに少なくとも部分的にずれていてもよい。前者の場合は、プレフィルタチャネル70はフィルタ構造73の開口部間で直線のチャネルであるが、後者の場合は、プレフィルタチャネル70は、フィルタ構造73の異なる列の中のずれた開口部間でジグザグである。
【0039】
複数の列又はアレイのフィルタ構造73の場合、隣接するフィルタ構造73間の距離は、全ての列又はアレイで同じである、すなわち、均一な開口部を有してよい。あるいは、隣接するフィルタ構造73間の距離は、異なる列間で異なってよく、例えば、そのような距離はより大きく、それによって、距離と比較してフィルタチャネル60に近接するフィルタ構造73の列の開口部を有し、それによって、流入チャネル30に近いフィルタ構造73の列の開口部を有する。
【0040】
図1でのような平行なプレフィルタチャネル70、
図7のようなピラー画定プレフィルタチャネル70及び
図8のようなフィルタ構造73の間のプレフィルタチャネル70を有するよりも、プレフィルタ領域又はゾーン75にプレフィルタチャネル70を形成するさらなる代替方法がある。本実施形態はそれにより、これらの例示的な実施例に限定されるものではない。例えば、フィルタチャネル60と流入チャネル30の間でプレフィルタ領域若しくはゾーン75に配置される基板又は半透過性膜構造を通って延在する連続的な孔を、プレフィルタチャネル70として代替的に使用することができる。
【0041】
以下では、微小流体装置1の様々な実施形態をより詳細に、かつ
図1によるプレフィルタ領域又はゾーン75を有するプレフィルタ50と共に説明する。しかしながら、微小流体装置1のこれらの様々な実施形態は、
図7又は
図8の中のものなどの他のプレフィルタの実施形態を代替的に有してもよい。
【0042】
図1に示すような微小流体装置1の動作中に、生体試料は、好ましくは、第1のフィルタポート61を介して微小流体装置1内に投入される。生体試料は、フィルタチャネル60を通って、プレフィルタチャネル70に流入する。生体試料中に存在し、十分に大きなサイズ、形状及び/又は剛性を有する混入粒子は、プレフィルタチャネル70の第1の端部72に入ることを阻止され、それによってフィルタチャネル60に残る。しかしながら、生体試料中に存在するいかなる標的細胞も、第1の端部72に入り、プレフィルタチャネル70を通って流入チャネル30に流入する。プレフィルタチャネル70のサイズ及び/又は寸法が変わる場合、混入粒子は実際には、第1の端部72を通ってプレフィルタチャネル70に入ってもよいが、その後、大きすぎるか、又はさらにプレフィルタ領域若しくはゾーン75を通ってプレフィルタチャネル70の第2の端部74に向かって流れるのを阻止する形状を有することに起因して、プレフィルタチャネル70の長さに沿ってどこかに留まってもよい。
【0043】
生体試料の流れは、流入チャネル30からセルチャネル20を通り、その後、流出チャネル40及び第3の流体ポート41に流出し続ける。生体試料の流れに存在するいかなる標的細胞も、障害物25の存在によりセルチャネル20で捕えられる。
【0044】
プレフィルタチャネル70を目詰まりさせるか、かつ/又はプレフィルタチャネル70の入口を遮断する混入粒子のため、プレフィルタ50を洗浄する必要がある場合に、第1の流体ポート31から第1のフィルタポート61を通って出る逆方向の流体流を確立することができる。その後、流体は流入チャネル30からプレフィルタチャネル70を通るが逆方向に、すなわち、第2の端部74から第1の端部72に向かい、その後にフィルタチャネル60に流れる。その後、詰まっている混入粒子は、流体流によって洗い流され、第1のフィルタポート61を通って流出する。この逆方向の流れは、好ましくは、培養培地、洗浄培地又は他の液体などの、混入粒子を含まない流体流である。
【0045】
プレフィルタ50の洗浄中に、第1の流体ポート31からの流れを有することにより、流体はまた好ましくは、セルチャネル20に入り、流出チャネル40を通り、第3の流体ポート41から流出する。プレフィルタ50の洗浄中にセルチャネル20を通るこの流れは、セルチャネル20で捕捉された標的細胞を洗い流す危険性を低下させる。したがって、セルチャネル20で既に捕捉された標的細胞はいずれも、洗浄プロセス中にセルチャネル20に保持される。
【0046】
一実施形態では、微小流体装置1は、
図6を参照すると、流入チャネル30から複数のプレフィルタチャネル70を通ってフィルタチャネル60に流体流を誘導するように構成される、流量制御装置100を備える。
【0047】
また、第3の流体ポート41から流出チャネル40及びセルチャネル20を通って流入チャネル30に流体流を導くことにより、プレフィルタ50の洗浄を行うことも可能である。その後、流体流は、プレフィルタチャネル70を通ってフィルタチャネル60に入り、第1のフィルタポート61を通って流出し続ける。
【0048】
この後者の実施形態は、特に、セルチャネル20のいずれかの中で標的細胞が全く捕捉されないか、又はほとんど捕捉されない場合に用いられ得る。そのような標的細胞がセルチャネル20に存在する場合、標的細胞は、逆方向の流体流のために、セルチャネル20から押し出される。したがって、プレフィルタ洗浄が第3の流体ポート41から第1のフィルタポート61への逆方向の流体流を用いて微小流体装置1において行われる場合には、捕捉された標的細胞がどのセルチャネル20にも存在しないという初期検証又は検査を最初に行うことが好ましい。セルチャネル20に存在する標的細胞20がある場合には、プレフィルタ洗浄を、第1の流体ポート31から第1のフィルタポート61への逆方向の流れを指示することにより、代わりに行うことが好ましい。代替として、標的細胞を含む選択されたセルチャネル20を通る逆方向の流れを阻止しながら、セルチャネル20の一部だけを通る逆方向の流れを導くことが可能である。この手法では、標的細胞を含む選択されたセルチャネル20の第2の端部24で一時的な流体ブロック又は制限が設けられ、それにより流体がこれらのセルチャネル20を通って流れるのを阻止する。そのような一時的なブロック又は制限は、例えば、微小流体装置1の蓋として作用する膜に圧力を提供し、選択されたセルチャネル20の第2の端部24と整列された膜の一部を、選択されたセルチャネル20の第2の端部24の中に押し下げ、それをブロックさせることによって達成できる。このさらなる実施例では、押圧可能な膜が基板10上に設けられる。
【0049】
セルチャネル20に標的細胞が存在するか否かの検証又は検査を行い、それによって、一時的に閉塞又は制限されるべきそれらのセルチャネル20を識別することは、本明細書にさらに記載される技術に従って実施できる。
【0050】
図2は、別の実施形態による微小流体装置1の図である。この実施形態では、微小流体装置1は、第2のフィルタポート65と流体接続する第2の端部64を有するフィルタチャネル60を備える。したがって、フィルタチャネル60は、その端部62、64の各々にそれぞれのフィルタポート61、65を有する。
【0051】
フィルタチャネル60の両端62、64にフィルタポート61、65を有することは、生体試料中に存在する標的細胞の連続培養を含む、微小流体装置1の長期の投入及び捕捉段階を可能にする。
【0052】
例えば、
図6を参照すると、流量制御装置100は、フィルタチャネル60の第1の端部62と第2の端部64の間で標的細胞、すなわち、生体試料を含む流体の流れを前後に誘導するように提供され、構成され得る。これは、生体試料が、端部62、64の間で前後に流れ、すなわち、第1の端部62から第2の端部64に向かって流れ、その後第2の端部64から第1の端部62に戻るように流れることができることを意味する。
【0053】
本実施形態の特定の実施では、第1の流体リザーバ2が第1のフィルタポート61に接続され、第2の流体リザーバ4が第2のフィルタポート65に接続される。このような場合、流量制御装置100は、第1の流体リザーバ2から第1のフィルタポート61を通り、フィルタチャネル60を通って第2のフィルタポート65を通って出て、第2の流体リザーバ4に生体試料の流れを誘導するように構成できる。次いで、流量制御装置100は、逆方向に、すなわち、第2の流体リザーバ4から第2のフィルタポート65を通り、フィルタチャネル60を通って第1のフィルタポート61を通って出て、第1の流体リザーバ2中へと、生体試料の流れを誘導するように構成される。
【0054】
別の実施形態では、流量制御装置100は、第1のフィルタポート61と第2のフィルタポート65の間で、標的細胞を含む流体、すなわち、生体試料の循環流を誘導するように構成される。この実施形態では、生体試料は、前後に振動するよりむしろ、一つの及び同じ方向に流れる。そのような場合、第1のフィルタポート61と第2のフィルタポート65の間に流体接続が存在する。この流体接続は好ましくは、生体試料を含有するように適合された少なくとも1つの流体リザーバを備える。この流体接続は、例えば、基板10に設けられた管又はチャネルであり得る。
【0055】
いずれの場合においても、生体試料をフィルタチャネル60に流して、それによりセルチャネル20に存在する標的細胞を捕捉する機会を増加させることができる。加えて、流量制御装置100の制御によるフィルタチャネル60中の生体試料の流れは、生体試料中の標的細胞の培養を可能にする。これは、生体試料が最初に非常に少ない標的細胞を含む場合であっても、培養が、これらの標的細胞が生体試料の振動流又は円形流中に成長及び増殖することを可能にすることを意味する。したがって、セルチャネル20中で標的細胞を捕捉する機会は、それにより経時的に増大する。
【0056】
図3は、微小流体装置1のさらなる実施形態の図である。この実施形態では、微小流体装置1のフィルタチャネル60は、複数の、すなわち、少なくとも2つの第1のフィルタポート61、63と流体接続する第1の端部62と、複数の第2のフィルタポート65、67と流体接続する第2の端部64とを有する。
【0057】
微小流体装置1のこの実施形態は、生体試料を培養培地又は他の流体若しくは液体と混合することを可能にする。例えば、第1及び第2のフィルタポート61、65は、前述のように、生体試料を含有するように適合された1以上の流体リザーバ2、4に接続されてよい。そのような場合、第1のフィルタポート63及び/又は第2のフィルタポート67は、培養培地又は他の流体若しくは液体を含有するように適合された1以上の流体リザーバに接続されてよい。第1のフィルタポート63及び第2のフィルタポート67の他方を廃棄ポートとして使用しながら、第1のフィルタポート63及び第2のフィルタポート67の一方をこのような流体リザーバと接続することも可能である。
【0058】
図4は、さらに別の実施形態による微小流体装置1の図である。この実施形態では、微小流体チャネル1の流入チャネル30は、第2の流体ポート33と流体接続する第2の端部34を有する。
【0059】
そのため、流入チャネル30は、それぞれの端部32、34の各々に接続されたそれぞれの流体ポート31、33を有する。さらなる実施形態では、流入チャネル30の第1の端部32及び第2の端部34の少なくとも一方は、フィルタチャネル60に対して
図3に示すように、複数の流体ポートと流体接続されてよい。
【0060】
したがって、微小流体装置1の実施形態は、第1のフィルタポート61と流体接続する第1の端部62を有するフィルタチャネル60及び第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32を有する流入チャネル30;複数の第1のフィルタポート61、63と流体接続する第1の端部62を有するフィルタチャネル60及び第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32を有する流入チャネル30;第1のフィルタポート61と流体接続する第1の端部62を有するフィルタチャネル60及び複数の第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32を有する流入チャネル30;第1のフィルタポート61と流体接続する第1の端部62と第2のフィルタポート65と流体接続する第2の端部64とを有するフィルタチャネル60及び第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32を有する流入チャネル30;複数の第1のフィルタポート61、63と流体接続する第1の端部62と第2のフィルタポート65と流体接続する第2の端部64とを有するフィルタチャネル60、及び第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32を有する流入チャネル30;複数の第1のフィルタポート61と流体接続する第1の端部62と複数の第2のフィルタポート65、67と流体接続する第2の端部64とを有するフィルタチャネル60、及び第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32を有する流入チャネル30;第1のフィルタポート61と流体接続する第1の端部62を有するフィルタチャネル60、及び第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32と第2の流体ポート33と流体接続する第2の端部34とを有する流入チャネル30;第1のフィルタポート61と流体接続する第1の端部62を有するフィルタチャネル60、及び複数の第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32と第2の流体ポート33と流体接続する第2の端部34とを有する流入チャネル30;第1のフィルタポート61と流体接続する第1の端部62を有するフィルタチャネル60、及び複数の第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32と複数の第2の流体ポート33と流体接続する第2の端部34とを有する流入チャネル30;第1のフィルタポート61と流体接続する第1の端部62と第2のフィルタポート65と接続する第2の端部64とを有するフィルタチャネル60、及び第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32と第2の流体ポート33と流体接続する第2の端部34とを有する流入チャネル30;第1のフィルタポート61と流体接続する第1の端部62と第2のフィルタポート65と接続する第2の端部64とを有するフィルタチャネル60、及び複数の第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32と第2の流体ポート33と流体接続する第2の端部34とを有する流入チャネル30;第1のフィルタポート61と流体接続する第1の端部62と第2のフィルタポート65と接続する第2の端部64とを有するフィルタチャネル60、及び複数の第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32と複数の第2の流体ポート33と流体接続する第2の端部34とを有する流入チャネル30;複数の第1のフィルタポート61、63と流体接続する第1の端部62と第2のフィルタポート65と接続する第2の端部64とを有するフィルタチャネル60、及び第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32と第2の流体ポート33と流体接続する第2の端部34とを有する流入チャネル30;複数の第1のフィルタポート61、63と流体接続する第1の端部62と第2のフィルタポート65と接続する第2の端部64とを有するフィルタチャネル60、及び複数の第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32と第2の流体ポート33と流体接続する第2の端部34とを有する流入チャネル30;複数の第1のフィルタポート61、63と流体接続する第1の端部62と第2のフィルタポート65と接続する第2の端部64とを有するフィルタチャネル60、及び複数の第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32と複数の第2の流体ポート33と流体接続する第2の端部34とを有する流入チャネル30;複数の第1のフィルタポート61、63と流体接続する第1の端部62と複数の第2のフィルタポート65、67と接続する第2の端部64とを有するフィルタチャネル60、及び第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32と第2の流体ポート33と流体接続する第2の端部34とを有する流入チャネル30;複数の第1のフィルタポート61、63と流体接続する第1の端部62と複数の第2のフィルタポート65、67と接続する第2の端部64とを有するフィルタチャネル60、及び複数の第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32と第2の流体ポート33と流体接続する第2の端部34とを有する流入チャネル30;複数の第1のフィルタポート61、63と流体接続する第1の端部62と複数の第2のフィルタポート65、67と接続する第2の端部64とを有するフィルタチャネル60、及び複数の第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32と複数の第2の流体ポート33と流体接続する第2の端部34とを有する流入チャネル30;複数の第1のフィルタポート61、63と流体接続する第1の端部62を有するフィルタチャネル60、及び複数の第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32を有する流入チャネル30;複数の第1のフィルタポート61、63と流体接続する第1の端部62を有するフィルタチャネル60、及び第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32と第2の流体ポート33と流体接続する第2の端部34とを有する流入チャネル30;複数の第1のフィルタポート61、63と流体接続する第1の端部62を有するフィルタチャネル60、及び複数の第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32と第2の流体ポート33と流体接続する第2の端部34とを有する流入チャネル30;複数の第1のフィルタポート61、63と流体接続する第1の端部62を有するフィルタチャネル60、及び複数の第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32と複数の第2の流体ポート33と流体接続する第2の端部34とを有する流入チャネル30;第1のフィルタポート61と流体接続する第1の端部62と第2のフィルタポート65と流体接続する第2の端部64とを有するフィルタチャネル60、及び複数の第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32を有する流入チャネル30;複数の第1のフィルタポート61、63と流体接続する第1の端部62と第2のフィルタポート65と流体接続する第2の端部64とを有するフィルタチャネル60、及び複数の第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32を有する流入チャネル30;複数の第1のフィルタポート61、63と流体接続する第1の端部62と複数の第2のフィルタポート65、67と流体接続する第2の端部64とを有するフィルタチャネル60、及び複数の第1の流体ポート31と流体接続する第1の端部32を有する流入チャネル30、を含む。
【0061】
1つ又は複数の流体ポートを有する概念は流出チャネル40にも適用することができ、それは単一の流体ポート41と、流出チャネル40のそれぞれの端部と流体接続するそれぞれの流体ポートと、流出チャネル40の第1の端部と流体接続する複数の流体ポートと、流出チャネル40の第2の端部と流体接続する流体ポート、又は第1の端部と流体接続する複数の流体ポートと、第2の端部と流体接続する複数の流体ポートを備えてよい。
【0062】
図5は、プレフィルタチャネル70、90の複数のセットを有する微小流体装置1のさらに別の実施形態の図である。この実施形態では、フィルタチャネル60は第1のフィルタチャネル60であり、プレフィルタチャネル70は第1のフィルタチャネル70である。プレフィルタ50はまた、第3のフィルタポート81と流体接続する第1の端部82を有する第2のフィルタチャネル80と、標的細胞を収容するように適合された第2のプレフィルタチャネル90とを備える。第2のプレフィルタチャネル90のそれぞれの第1の端部92は、第2のフィルタチャネル80と流体接続し、第2のプレフィルタチャネル90のそれぞれの第2の端部94は、流入チャネル30と流体接続している。この実施形態では、第1のプレフィルタチャネル70のそれぞれの第2の端部74は、第2のフィルタチャネル80と流体接続している。
【0063】
そのため、
図5に示す実施形態は、複数の、すなわち、少なくとも2つの、フィルタチャネル60、80とプレフィルタチャネル70、90のセットを有するプレフィルタ50を備える。次いで、これらのセットは、第1のフィルタチャネル60と第1のプレフィルタチャネル70の上流のセットと、第2のフィルタチャネル80と第2のプレフィルタチャネル90の下流のセットとを有し上流対下流が第1のフィルタチャネル60から流出チャネル40へ向かう流れ方向に関する基板10で直列に配置される。
【0064】
一実施形態では、第2のプレフィルタチャネル90及び第1のプレフィルタチャネル70は、同じ直径、幅及び高さ、並びに同じ断面形状を有する。これは、フィルタチャネル60、80とプレフィルタチャネル70、90の2セットが実質的に同じであることを意味する。別の実施形態では、第2のプレフィルタチャネル90は、第1のプレフィルタチャネル70と比較して、異なる直径、幅及び高さ並びに/又は断面形状を有してよい。特に、第1のプレフィルタチャネル70は、第2のプレフィルタチャネル90と比較して、より大きい直径又はより大きい高さ及び/若しくは幅を有する。
【0065】
したがって、プレフィルタチャネル70、90の断面積は好ましくは、第2のプレフィルタチャネル90と比較して第1のプレフィルタチャネル70の方がより大きい。第1及び第2のプレフィルタチャネル70、90の少なくとも1つが狭くなる断面形状を有する場合には、第2の端部74における第1のプレフィルタチャネル70の直径、幅及び/又は高さは好ましくは、第2の端部94における第2のプレフィルタチャネル90の直径、幅及び/又は高さよりも大きい。
【0066】
第1と第2のプレフィルタチャネル70、90の両方は、第1の端部72、92から第2の端部74、94へ移動するときに、均一な断面形状及びサイズを有してよい。あるいは、第1及び第2のプレフィルタチャネル70、90の一方又は両方は、連続的に又は段階的に狭くなるプレフィルタチャネル70、90などの第2の端部74、94と比較して、第1の端部72、92において異なる断面形状及びサイズを有してよい。
【0067】
複数のフィルタチャネル60、80及び複数のプレフィルタチャネル70、90を有するこの概念は当然ながら、異なる寸法を有する可能性のあるそのようなフィルタチャネル60、80とプレフィルタチャネル70、90の3以上のセットに拡張できる。
【0068】
第1のフィルタチャネル60及び第2のフィルタチャネル80は、前述のように、及び
図1~3に例示されるような、任意の数のフィルタポートを有してよい。
【0069】
図5に示すプレフィルタ50は、様々な実施形態によれば、混入粒子を詰まらせることなく洗浄できる。例えば、プレフィルタチャネル70、90の各セットを個別に洗浄できる。第1のプレフィルタチャネル70の別々の洗浄は、第3のフィルタポート81から第2のフィルタチャネル80及び第1のプレフィルタチャネル70及び第1のフィルタチャネル60を通って、その接続されているフィルタポート61、65のうちの1つから流出する逆方向の流れを指示することによって行うことができる。これに対応して、第2のプレフィルタチャネル90の別々の洗浄は、第1の流体ポート31から流入チャネル30及び第2のプレフィルタチャネル90及び第2のフィルタチャネル80を通って、第3のフィルタポート81から流出する逆方向の流れを指示することによって行ってよい。
【0070】
あるいは、2セットのプレフィルタチャネル70、90は、第1の流体ポート31、流入チャネル30から、第2のプレフィルタチャネル90、第2のフィルタチャネル80、第1のプレフィルタチャネル70及び第1のフィルタチャネル60を通って、その接続されたフィルタポート61、63のいずれか又は全てから流出する逆方向の流れを提供することによって、組み合わせた操作で洗浄できる。この組み合わせ洗浄は代替的にまた、第3の流体ポート41からの流体流を提供することによって、本明細書で先に説明したように、セルチャネル20の全て又は選択された部分を通る逆方向の流れを含んでよい。
【0071】
流量制御装置100は、微小流体装置1を介して、生体試料などの流体流及び任意の培養培地又は他の流体若しくは液体を導きかつ制御するために様々な実施形態に従って実施できる。
【0072】
図6は、各フィルタ及び流体ポートがそれぞれの流体リザーバ2、3、4、5に接続され、それらが今度は流量制御装置100に接続され及び流量制御装置100により制御される、実施形態を示す。これは、生体試料の微小流体装置1への投入、セルチャネル20での標的細胞の捕捉、プレフィルタ50の洗浄、セルチャネル20での標的細胞の培養、又は振動流若しくは循環流における標的細胞の培養などの、どの操作を行うかに応じて、それぞれの流体リザーバ2、3、4、5からの又はそこへ向かう流体流を制御することを意味する。
【0073】
一実施形態では、流量制御装置100は、圧力駆動された流れを提供する圧力制御装置である。そのような場合、圧力制御装置は、フィルタポート61、65、81及び流体ポート31、41に印加される流体圧力を制御して、流体流の方向を制御するように構成される。例えば、第1のフィルタチャネル60における生体試料の振動流を達成するために、圧力制御装置は好ましくは、第1のフィルタポート61及び第2のフィルタポート65に印加される流体圧力を制御して、第1のフィルタチャネル60の第1の端部62と第2の端部64の間で、標的細胞を含む流体流を前後に誘導するように構成される。
【0074】
使用できる非限定的であるが、例示的なそのような圧力制御装置の例は、FestoAGによる比例圧力調整器VEABである。
【0075】
他の流量制御の解決法は、流体流の方向を制御するためにバルブと接続する1以上のポンプを使用することを含んでよい。
【0076】
図1~
図6において、プレフィルタ50は、セルチャネル20、流入チャネル30及び流出チャネル40と同じ基板10に配置されるか又は設けられるように図示されている。そのような実装が可能である。代替実施形態では、プレフィルタ50は、第1の基板に配置されるか又は設けられ、一方でセルチャネル20、流入チャネル30及び流出チャネル40は、微小流体装置1の第2の基板10に配置されるか又は設けられる。両方の実施形態は、プレフィルタ50が流入チャネル30と流体接続している限り可能である。
【0077】
微小流体装置1の基板10又は複数の基板は、プラスチック材料などの任意の材料でできており、セルチャネル20、流入チャネル30、流出チャネル40及びプレフィルタ50を構成する構造を画定できる。流体ポート31、33、41及びフィルタポート61、63、65、67、81は、基板10に存在してよい。あるいは、それらは、基板10の外側に設けられてもよく、次いで、好ましくは、流入チャネル30、流出チャネル40及びフィルタチャネル60、80のそれぞれの端部32、34、62、64、82にそれぞれの管で接続される。
【0078】
基板10に適する材料の非限定的な例は、ZEON Chemicals L.P.によって販売される環状オレフィンポリマー(COP)であるZEONEX(登録商標)及びZEONOR(登録商標)並びにTopas Advanced Polymersによって販売される環状オレフィンコポリマー(COC)であるTOPAS(登録商標)を含む。これらの材料は、透過性及び背景の蛍光の点で優れた光学特徴を有する。それらはまた、加熱される場合に良好な流れの特徴を有し、したがって微小流体装置の基板の形成を可能にする小さな構造を複製し得る。
【0079】
基板10に適する材料の他の例は、ガラス、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリ(p-フェニレンスルフィド)(PPS)を含む。
【0080】
基板10は、好ましくは透明であり、基板10を通して撮像を可能にする。
【0081】
一実施形態では、蓋(図示せず)が、基板10上に配置される。その後、この蓋は、基板10で画定されるチャネル20、30、40、60、70、80、90のためのカバー又は蓋として機能する。蓋は、プラスチック材料又はガラスで作られてよい。蓋は、好ましくは透明であり、蓋を通る撮像を可能にする。
【0082】
本実施形態の微小流体装置1は、生体試料中に存在する標的細胞の表現型特性を監視又は分析するのに有用である。
【0083】
一実施形態では、生体試料は、全血試料、希釈血液試料又は血液培養試料などの血液試料である。生体試料の他の例は、尿試料、唾液試料、糞便試料、脳脊髄液試料、羊水試料、乳試料、痰由来試料又はリンパ試料などの他の体液試料を含む。あるいは、生体試料は、生検などの身体組織から得ることができる。他の例は、細菌混入について試験される食品試料、乳棒炎試験のためのウシ、ヤギ又は他の乳生成動物由来の乳を含む。実際には、本発明の実施形態によれば、微小流体装置1に投入することができる細胞を含む任意の生体試料を使用できる。
【0084】
一実施形態では、セルチャネル20における標的細胞の表現型特性は、試験剤に対する標的細胞の表現型応答を決定することによって行われる。それゆえ、そのような方法では、セルチャネル20中の標的細胞は、試験剤に暴露される。この試験剤は、任意の分子、化合物、組成物、又は分子、化合物若しくは組成物の混合物であり得る。関連する実施形態では、標的細胞はより一般的に、細胞チャネル20中の1以上の刺激にさらされる。そのような1以上の刺激は、必ずしも試験剤である必要はないが、代わりに、温度変化などの環境条件の変化であり得る。そのため、1以上の刺激に対する標的細胞の表現型応答がその後、決定される。
【0085】
そのため、一実施形態では、セルチャネル20中の標的細胞は、試験剤に暴露される。この試験剤は、生体試料自体に含まれ得る。あるいは、試験剤は、微小流体装置1のポートの1つ、典型的には第1の流体ポート31及び第2の流体ポート33の1つを使用して、培養培地又は他の流体若しくは液体などに添加されてよい。
【0086】
試験剤に対する標的細胞の表現型応答を決定することは、標的細胞についての成長速度、形状、サイズ、経時的な成長速度を規定する成長速度曲線の形、経時的な細胞長を規定する長さ曲線の形、経時的な細胞面積を規定する面積曲線の形、色、光学密度、吸収スペクトル、導電性、熱生成又はそれらの混合物の少なくとも1つを決定することを含んでよい。
【0087】
標的細胞の表現型応答の決定は典型的には、細胞チャネル20中の標的細胞を1回又は複数の時点で監視することを伴う。そのため、試験剤への標的細胞の特定の表現型応答に応じて、標的細胞を1回又は複数の時点で監視することは十分である。
【0088】
標的細胞の監視は、細胞チャネル20中の標的細胞の少なくとも1つの画像を取得することを含んでよい。単一の時点で単一の画像を取得できるか、又は複数の時点で複数の画像が取得される。
【0089】
特定の実施形態では、少なくとも1つの画像は、電荷結合素子(CCD)カメラ若しくは相補型金属酸化物半導体(CMOS)カメラなどのカメラに接続された位相コントラスト顕微鏡などの顕微鏡、又は蛍光用共焦点走査システム、ラマン撮像、コヒーレントアンチストークスラマン散乱(CARS)、刺激ラマン散乱(SRS)、並びに死細胞及び生細胞にスペクトル変化を与える類似の化学的感受性技術を用いて取得される。これは、化学的に特異的なプローブ及び色素などの、成長培地へのコントラスト増強添加物を伴う又は伴わない、1つ又はいくつかの波長での測定値を含む。
【0090】
画像は必ずしも領域の2D写真である必要はなく、例えば、微小流体装置1での選択された位置におけるライン走査に対応してもよい。
【0091】
細胞チャネル20を通る導電率の測定又は電子測定装置を用いる細胞チャネル20での熱生成などの、細胞チャネル20における標的細胞の存在を検出する他の技術を、細胞チャネル20の画像を取得する代わりに、又はその相補物として使用できる。
【0092】
第1の実施例では、試験剤は抗生物質である。この実施例では、微小流体装置1を使用して、細菌などの標的細胞の抗生物質に対する感受性を決定できる。
【0093】
第2の実施例では、試験剤は細胞増殖抑制剤である。そのような実施例では、微小流体装置1を用いて、セルチャネル20での標的細胞の監視に基づき、癌細胞などの標的細胞の細胞増殖抑制剤への感受性を決定する。
【0094】
第3の実施例では、試験剤は、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)プローブなどのプローブである。そのような場合、FISHプローブは、細胞チャネル20での標的細胞の監視に基づいて、細胞チャネル20で捕捉された特定の標的細胞を識別するために使用できる。異なるそのようなFISHプローブは異なる標的細胞を標的とし、それにより、FISHプローブが標的細胞に特異的に結合するか否かに応じて標的細胞の独自性を決定することを可能にする。FISHプローブは、23S rRNAなどの種特異的RNA又はDNA配列を標的にできる。血液培養物中の微生物を識別するためのFISHプローブを使用するより多くの情報については、kempfら、Journal of Clinical Microbiology 2000、38(2):830-838で言及されている。異なる細菌に適合されたFISHプローブは、http://probebase.csb.univie.ac.at/node/8で見出すことができる。
【0095】
種の識別は有利には、上記の実施例のいずれかに従って、試験剤に対する標的細胞の表現型応答の決定と組み合わせることができる。そのような場合、種の識別は好ましくは、抗生物質又は細胞増殖抑制剤に対する表現型応答の後に行われる。このようにして、種の識別は、細胞チャネル20中の試験剤に対する表現型応答の解釈を容易にすることができ、それは生体試料が種又は株の標的細胞の混合物を含む場合に特に有利である。
【0096】
図9は、本実施形態に従い微小流体装置1を操作する方法を示すフローチャートである。本方法は、工程S2において、流入チャネル30からプレフィルタチャネル70を通ってフィルタチャネル60に流体流を誘導することを含む。
【0097】
それゆえ、工程S2で定義された微小流体装置1を操作するこの方法は、微小流体装置1のプレフィルタ50を、詰まっている混入粒子から洗浄することに関する。
【0098】
一実施形態では、流体流はまた、工程S2において、流入チャネル30からセルチャネル20を通って出力チャネル40内に流れるように誘導される。このようにして、セルチャネル20を通る流れの方向を維持しながら流れを逆方向にしてプレフィルタ50を洗浄することが可能である。
【0099】
特定の実施形態では、工程S2は、流体圧力を第1の流体ポート31に印加して、流入チャネル30からプレフィルタチャネル70を通ってフィルタチャネル60内に流体流を誘導することを含む。
【0100】
一実施形態では、工程S2は、流出チャネル40からセルチャネル20の少なくとも一部を通って流入チャネル30に入り、プレフィルタチャネル70を通ってフィルタチャネル70に流体流を誘導することを含む。
【0101】
この実施形態では、洗浄操作は、セルチャネル20の少なくとも一つの選択された部分も通過する逆方向の流れを提供することを伴う。上で説明したように、セルチャネル20の選択された部分は好ましくは、捕捉された標的細胞を欠く。それゆえ、逆方向の流れは好ましくは、標的細胞を含む任意のセルチャネル20を通って流れることを阻止され又は少なくとも著しく低減されて、それにより以前に捕捉された標的細胞を洗い流す危険性を低減する。
【0102】
標的細胞を含むセルチャネル20の識別は、前述のように、セルチャネル20の1以上の画像を取得することに基づいて行うことができる。
【0103】
一実施形態では、あるマーカーに特異的に結合する蛍光プローブを用いて、標的細胞を標識し、タグ付けしてよい。そのような場合、セルチャネル20中の蛍光を測定することにより、セルチャネル20に存在する標的細胞を同定できる。蛍光プローブはあるマーカーに特異的に結合する。このマーカーは、標的細胞中又は受容体などの標的細胞の細胞膜中のタンパク質などの、分子であり得る。あるいは、マーカーは、特定のDNA又は遺伝子配列又は特定のmRNA配列などの、核酸分子であり得る。
【0104】
蛍光プローブは、例えば、標的細胞を混入粒子と明確に区別するインタカレートDNA結合色素であり得る。蛍光プローブは、死細胞にのみ入る、生死スクリーニング色素であり得る。
【0105】
蛍光プローブは、標的細胞に特異的に結合する蛍光抗体であり得、例えば、異なる表面抗原を有する異なる細菌種、表面抗原に基づく他の細胞からの癌細胞、妊娠した女性自身の細胞からの循環胎児細胞の区別を可能にする。
【0106】
蛍光プローブは、16S又は23SリボソームRNAなどの種特異的RNAを標的とする蛍光オリゴヌクレオチドであり得る。
【0107】
蛍光プローブの特異的結合は、親和性及び/又は結合活性に基づいて決定できる。蛍光プローブと標的マーカーの解離平衡定数(Kd)によって表される親和性は、標的マーカーと蛍光プローブの間の結合強度の尺度である。Kdの値が小さいほど、結合強度は強くなる。あるいは、親和性は、1/Kdである、親和性定数(Ka)としても表すことができる。当業者には明らかなように、親和性は、目的の特定の標的マーカーに応じて、それ自体公知の方法で決定できる。
【0108】
結合活性は、蛍光プローブと標的マーカーの間の結合強度の尺度である。結合活性は、標的マーカーと蛍光プローブ上の結合部位の間の親和性と、蛍光プローブ上に存在する結合部位の数の両方に関連する。
【0109】
一般に、10-4M超の任意のKd値(又は104M-1未満の任意のka値)は、非特異的結合を示すと一般的に考えられている。
【0110】
標的マーカーへの蛍光プローブの特異的結合は、例えば、スキャッチャード分析及び/又は競合結合アッセイ、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)及びサンドイッチ競合アッセイ、並びに当技術分野においてそれ自体公知の異なる変異体などを含む、それ自体公知の任意の適切な方法で決定できる。
【0111】
上記において、プローブは蛍光プローブで例示してきた。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。実際には、蛍光プローブ、染色プローブ、化学発光プローブ、放射標識プローブ、金ビーズなどの検出可能かつ測定可能な任意のプローブを実施形態に従って使用できる。
【0112】
この方法はまた、任意選択の工程S1を含んでよい。そのような場合、微小流体装置1のフィルタチャネル60は、第2の流体ポート65と流体接続する第2の端部64を有する。一実施形態では、この工程S1は、フィルタチャネル60の第1の端部62と第2の端部64の間で、標的細胞を含む流体の流れを前後に誘導することを含む。
【0113】
例えば、この工程S1は、第1のフィルタポート61及び第2のフィルタポート65に印加される流体圧力を制御して、フィルタチャネル60の第1の端部62と第2の端部64の間で、標的細胞を含む流体の流れを前後に誘導することによって得ることができる。
【0114】
別の実施形態では、工程S1は、第1のフィルタポート61と第2のフィルタポート65の間で、標的細胞を含む流体の循環流を誘導することを含む。
【0115】
上記の実施形態は、本発明のいくつかの例示的な実施例として理解されるべきである。当業者なら、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な改変、組み合わせ及び変更が実施形態に対してなされ得ることを理解するであろう。特に、異なる実施形態における異なる部分の解決法を、技術的に可能である他の構成で組み合わせることができる。しかしながら、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。