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特許7341153安全器具に収容されたシリンジを備えた注射システムを収容するためのシェル。
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】安全器具に収容されたシリンジを備えた注射システムを収容するためのシェル。
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20230901BHJP
   A61M 5/31 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
A61M5/32
A61M5/31 534
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020545781
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2019056583
(87)【国際公開番号】W WO2019179895
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】18162487.5
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】310021434
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランク カレル
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ ヴァレンチン
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ マンシュ
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-503282(JP,A)
【文献】特表2015-514518(JP,A)
【文献】特表2005-516741(JP,A)
【文献】特表2001-518366(JP,A)
【文献】特開2012-196452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全器具(103)に収容されたシリンジ(10)を備えた注射システム(101)を収容するためのシェル(50)であって、前記安全器具(103)は、
前記シリンジ(10)を収容するように構成された本体(20)と、
前記本体(20)に対して可動であり、シリンジの針(14)の少なくとも一部分を覆うことの可能なシールド(30)と、
前記本体(20)または前記安全器具のシールド(30)から外側に延在する少なくとも1つのフィンガーフランジ(31)と、
を有し、
前記シェル(50)は、長手方向の軸(105)に沿って延在し、
実質的に管状で、前記安全器具(103)の少なくとも遠位部を収容するように構成されたハウジング(51)と、
前記安全器具(103)の前記フィンガーフランジ(31)を収容するように構成されたケーシング(52)と、
を備え、
前記ケーシング(52)は、
前記フィンガーフランジ(31)をスナップ特徴(60)の遠位面(61)から遠位に挿入し得るように、前記ケーシング(52)への前記フィンガーフランジ(31)の挿入中に、外側に曲がるように構成された少なくとも2つの前記スナップ特徴(60)と
各スナップ特徴の遠位面(61)から遠位に位置する突起部(70)であって、前記フィンガーフランジ(31)が前記スナップ特徴(60)の前記遠位面(61)から遠位に挿入されると、前記フィンガーフランジ(31)に内向きの付勢力を加えるように構成された前記突起部(70)と、
を備えた、シェル。
【請求項2】
前記シェル(50)が単一の部品として作られることを特徴とする、請求項1に記載のシェル。
【請求項3】
前記突起部(70)は前記フィンガーフランジ(31)を内向きに押すように構成された保持面(71)を有し、前記保持面(71)は前記スナップ特徴の遠位面(61)に対して直交することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のシェル。
【請求項4】
前記シェル(50)への前記安全器具(103)の挿入を容易にするために、前記スナップ特徴(60)は傾斜した近位面(62)をさらに備えていることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のシェル。
【請求項5】
前記シェル(50)への前記安全器具(103)の挿入を容易にするために、前記突起部(70)は傾斜した近位面(72)を有していること、を特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のシェル。
【請求項6】
各突起部(70)は1つのスナップ特徴(60)から遠位に突起し、それにより前記スナップ特徴(60)を備えた単一のタブ(40)を形成し、前記タブ(40)は、
前記シェル(50)への前記安全器具(103)の挿入中に外側に弾性的に曲がり、前記スナップ特徴(60)の前記遠位面(61)から遠位への前記フィンガーフランジ(31)の挿入を可能とし、
前記フィンガーフランジ(31)が前記スナップ特徴(60)の前記遠位面(61)から遠位に位置する場合、前記フィンガーフランジ(31)に内向きの付勢力を加える、
ように構成されていることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の
シェル。
【請求項7】
前記ケーシング(52)の1つの壁(54)は、長手方向に延在する2つの脚部(42)と、前記シェルの軸(105)に直交する基部(43)と、を有したU字の形状を実質的に有したスロット(41)を備え、前記ケーシング(52)の壁の領域は前記タブ(40)を形成する前記スロットの内側に位置する、ことを特徴とする、請求項6に記載のシェル。
【請求項8】
前記ケーシング(52)の1つの側面の壁(54)にそれぞれ配置された少なくとも2つの突起部(70)を備え、前記突起部(70)は側面方向(X)に沿って前記軸(105)に対して対向している、ことを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか1つに記載のシェル。
【請求項9】
前記ケーシング(52)の対向する側面の壁(54)のそれぞれに1つに1つの突起部(70)を備えている、ことを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれか1つに記載のシェル。
【請求項10】
前記ケーシング(52)は前記ハウジング(51)に対して前記シェル(50)の拡大部を形成し、前記拡大部は側面方向(X)に延在する、ことを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか1つに記載のシェル。
【請求項11】
キャップリムーバーを収容するように構成された内部コンパートメント(58)を設けた遠位端部(57)をさらに備えている、ことを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれか1つに記載のシェル。
【請求項12】
前記ハウジング(51)の内側に少なくとも4つのリブ(80)をさらに備え、前記リブ(80)は前記シェル(50)内で前記安全器具(103)を中心に据えるように構成された、請求項1から請求項11のいずれか1つに記載のシェル。
【請求項13】
シリンジ(10)のための安全システム(102)であって、
前記シリンジ(10)を収容するように構成された本体(20)と、前記本体(20)に対して可動であり、シリンジの針(14)を覆うことの可能なシールド(30)であって、前記シールド(30)の近位端部に隣接して側方に延在するフィンガーフランジ(31)を有した前記シールド(30)と、を有した安全器具(103)と
前記安全器具(103)がシェル(50)内に装着され、前記スナップ特徴(60)および突起部(70)によって前記安全器具のシールド(30)の前記フィンガーフランジ(31)が前記シェル(50)に対して保持される、請求項1から請求項12のいずれか1つに記載の前記シェル(50)と、
を備えた安全システム。
【請求項14】
シリンジシステム(100)であって、請求項13に記載の安全システム(102)と、前記安全器具(103)の前記本体(20)に挿入されたシリンジ(10)であって、針(14)を備えた前記シリンジ(10)と、を備えたシリンジシステム。
【請求項15】
前記シェル(50)は、装着位置において、前記針(14)が所定の長さの前記シェル(50)の遠位端部(57)を超えるような長さを有している、ことを特徴とする、請求項14に記載のシリンジシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全器具に収容されたシリンジを備えた注射システムを収容するためのシェルに関する。本発明はさらに、安全器具およびそのようなシェルを備えたシリンジ用の安全システム、ならびにシリンジおよびそのような安全システムを備えたシリンジシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多発性硬化症または関節炎などのいくつかの病気は、毎日または毎週のように定期的に薬剤を患者に注射する必要がある。薬剤はプレフィルドシリンジなどの事前充填薬剤供給器具の形態で入手可能である。
【0003】
通常、患者は自己注射するように訓練され、自分で薬剤の注射に取り掛かることが可能である。それでも、注射システムは患者にとって注射を容易にするために提供されている。
【0004】
既知の注射システムは一般的に満足できるものであるが、それらは常にユーザーの期待のすべてを満たすとは限らない。特に、例えば手が変形している患者など、一部の患者には使用がかなり難しい場合があり得る。さらに、注射システムは患者の不安を軽減することを目的としているが、それでも針が見えることがあり、これは一部の患者を怖がらせることがある。
【0005】
したがって、自己注射をより簡単に、安全に、そして感情的に困難にすることのない改良された注射システムが必要である。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様によれば、本発明は、安全器具に収容されたシリンジを有する注射システムを収容するためのシェルであって、安全器具が、シリンジを収容するように構成された本体と、本体に対して可動であり、シリンジの針の少なくとも一部を覆うことの可能なシールドと、本体または安全器具のシールドから外側に延在する少なくとも1つのフィンガーフランジと、を有する、シェルに関する。
シェルは、長手方向の軸に沿って延在し、
実質的に管状であり、安全器具の少なくとも遠位部を収容するように構成されたハウジングと、
安全器具のフィンガーフランジを収容するように構成されたケーシングと、
を備えており、
さらに、ケーシングは、
フィンガーフランジをスナップ特徴の遠位面から遠位に挿入し得るように、ケーシングへのフィンガーフランジの挿入中に、外側に曲がるように構成された少なくとも2つのスナップ特徴と、
各スナップ特徴の遠位面から遠位に位置する突起部であって、フィンガーフランジがスナップ特徴の遠位面から遠位に挿入されると、フィンガーフランジに内向きの付勢力を加えるように構成された突起部と、
を備えている。
【0007】
本願では、構成要素または装置で使用することを意図した注射器具に関して、前記構成要素または前記装置の遠位端部はユーザーの手から最も遠い端部を意味する、と理解されなければならず、近位端部はユーザーの手に最も近い端部を意味する、と理解されなければならない。したがって、本願では、遠位方向は注射器具を基準にした注射の方向として理解されなければならず、近位方向はその反対方向である。
【0008】
したがって、本発明により、注射システムは変形した手を持つ患者であっても操作がより容易な外部シェルに収容される。実際に、シェルは注射システムを収納するように構成されているため、前記注射システムよりも寸法が大きく、したがって、つかみやすく、扱いやすい。さらに、シェルはシリンジと直接接触しない外部コンポーネントであるため、安全システムとは異なり、形状に制限が少なく、適切に設計して扱いやすくすることができる。
【0009】
本発明によるシェルの別の利点は患者の不安を軽減するためにシリンジの針を隠すことを可能にすることである。実際、一般に安全器具は安全器具に収容されたシリンジおよびシリンジの内容物の目視検査を可能にするために透明であることが要求される。これは、例えシリンジの針が安全器具の遠位端部を超えて延在していなくても、安全器具を通して前記針を見ることができることを意味する。本発明では、目視検査の後に注射システムをシェルに挿入することができ、これはシェルが透明である必要がないことを意味する。外部不透明シェルを設けることは、事前の目視検査ステップを妨げることなく、針を患者の視界から隠すことを可能にする。
【0010】
本発明の別の重要な利点は注射システムがシェル内で非常に十分に保持されることである。より具体的には、スナップ特徴と突起部により、シェルは、
一方では、フィンガーフランジとシェルの間の隙間を制限または除去することにより、シェルの内側での安全器具の保持を改善し、これは安全器具のシェルの内側の揺れを防止し、
他方では、注射システムをシェルの内側に挿入するための高い挿入力を必要とせずに、および安全器具を変形または変化させることなく、このような高品質の保持効果を達成する、
ように構成されている。したがって、安全器具またはシェルの構成材料の破片が生じるリスクは回避される。
【0011】
より具体的には、スナップ特徴を使用して、フィンガーフランジを装着位置に固定することができ、すなわち安全器具をシェルの内側に軸方向に固定し、シェルから外れるのを防ぐ。突起部に関しては、その目的は安全器具を破損させる可能性のある圧力を実質的に加えることなく、好ましくは軸に実質的に直交し、シェルに対して安全器具を締め付けることである。
【0012】
スナップ特徴(および場合によっては突起部)は、例えば注射システムがシェルに収容されていない場合、休止位置から外側に曲がることができるため、注射システムの挿入が容易になる。特に注射システムはフィンガーフランジがスナップ特徴から遠位に位置付けられるまで挿入され、突起部に軸方向に面することができる。
【0013】
一実施形態では、シェルは単一の部品として作られる。例えばシェルはABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、またはコポリマーABS-PC(ポリカーボネート)などのプラスチック材料を射出することで成形できる。あるいは、ケーシング、スナップ特徴、および突起部は単一の部品として作成することができる。
【0014】
スナップ特徴は好ましくはシェルの軸に直交する遠位面を有し得る。この遠位面はフィンガーフランジを装着位置に固定するための当接部を形成するように構成され得る。スナップ特徴は近位面、好ましくはシェルへの安全器具の挿入を容易にするために傾斜した近位面をさらに有し得る。
【0015】
突起部はフィンガーフランジを内向きに押すように構成された保持面を有し得る。保持面はスナップ特徴の近位面から遠位に位置し得る。保持面はスナップ特徴の遠位面に対して割線の方向に沿って延在し得る。
【0016】
突起部はシェルへの安全器具の挿入を容易にするために、近位面、好ましくは傾斜した近位面をさらに有し得る。しかしながら、突起部の近位面は必ずしも傾斜している必要はなく、特にスナップ特徴の近位面が突起部の近位面から近位に位置し傾斜している場合、これは必要ない。
【0017】
一実施形態では、各突起部は1つのスナップ特徴から遠位に突起することができ、それによりスナップ特徴を備えた単一のタブを形成し、タブは、
シェルへの安全器具の挿入中に外側に弾性的に曲がり、スナップ特徴の遠位面から遠位へのフィンガーフランジの挿入を可能とし、
フィンガーフランジがスナップ特徴の遠位面から遠位に位置する場合、フィンガーフランジに内向きの付勢力を加える、
ように構成される。
【0018】
前記タブは長手方向に延在することができる。
【0019】
ケーシングの1つの壁は、長手方向に延在する2つの脚部と、シェルの軸に直交する基部と、を有したU字の形状を実質的に有したスロットを備え得、ケーシングの壁の領域は前記タブを形成するスロットの内側に位置する。基部はスロットの遠位部分に位置し得る。基部に接続されていない脚の端を結ぶ線は、好ましくはスロットの近位部に位置する。前記線は、タブの変形または外側への旋回を可能にするヒンジを形成し得る。
【0020】
突起部はスロットの基部内で部分的にスナップ特徴からおよびタブから遠位に延在することができる。
【0021】
一実施形態によれば、シェルはケーシングの1つの側面の壁にそれぞれ配置された2つの突起部を備えることができ、突起部は側面方向に沿って軸に対して対向している。側面の前記壁は安全器具のシールドのフィンガーフランジが沿って延在する側面方向に平行なケーシングの周壁の一部である。
【0022】
言い換えれば、横断面が前記側面方向に直交しシェルの長手方向の軸を含むと定義される場合、ケーシングは前記横断面の両側に位置する2つの半ケーシングを備え得、シェルは各半ケーシングの1つの側面の壁に少なくとも1つの突起部を備えることができる。
【0023】
所定の半ケーシングに1つの突起部のみが設けられる場合、前記突起部は半ケーシングの反対側の側面の壁に対してフィンガーフランジを押し付ける。
【0024】
あるいは、シェルはケーシングの対向する側面の壁のそれぞれ1つに、例えば各半ケーシングの対向する側面の壁のそれぞれ1つに、1つの突起部、すなわち4つの突起部を備え得る。このような構成では、突起部はフィンガーフランジをそれらの間に締め付けることを可能とし、これは安全システムの均衡を保つ。
【0025】
別の実施形態によれば、シェルは各半ケーシングの1つの横断壁に1つの突起部、すなわち2つの突起部を備えることができる。前記横断壁は安全器具のシールドのフィンガーフランジが沿って延在する側面方向に直交なケーシングの周壁の一部である。したがって突起部はフィンガーフランジの側端部と接触状態にある。
【0026】
ケーシングはハウジングに対してシェルの拡大部を形成し得、前記拡大部は側面方向に延在する。このような構成はシェルの扱いやすさの改善を促進し得る。特に、使用者は前記拡大部の遠位面に指を置き得る。
【0027】
シェルはさらに、キャップリムーバーを収容するように構成された内部コンパートメントを設けた遠位端部を備え得る。キャップリムーバーは穿刺前に針を覆うためにシリンジの遠位端部に装着されたキャップを取り外すために使用できる。
【0028】
シェルはさらに、ハウジングの内側に少なくとも4つ、好ましくは6つのリブを備え得、リブはシェル内で安全器具を中心に据えるように構成されている。
【0029】
シェルはさらに、少なくとも1つの挿入ストッパー、好ましくは2つの挿入ストッパーを備え、装着位置で注射システムのための遠位当接部を形成するように構成され得る。挿入ストッパーはケーシング内の1つのリブの延長部によって形成され、フィンガーフランジが装着位置で前記挿入ストッパーに当接できるように構成され得る。
【0030】
第2の態様によれば、本発明は、シリンジ用の安全システムに関し、
シリンジを収容するように構成された本体と、本体に対して可動でありシリンジの針を覆うことの可能なシールドであって、シールドの近位端部に隣接して側方に延在するフィンガーフランジを有したシールドと、を有した安全器具と、
安全器具がシェル内に装着され、スナップ特徴および突起部によって安全器具のシールドのフィンガーフランジがシェルに対して保持される、前述のシェルと、
を備えている。
【0031】
第3の態様によれば、本発明は、前述の安全システムを備えたシリンジシステム、および安全器具の本体に挿入されたシリンジに関し、シリンジは針を備えている。
【0032】
シェルは、装着位置において、針が所定の長さのシェルの遠位端部を超えるような長さを有し得る。シェルは、装着位置でシェルの遠位端部からの針の長さの露出を制御できるように、調整可能な長さを有し得る。実際には、製薬会社の要件や医療スタッフの要件などの要件に応じて、患者の皮膚への最大穿刺深さが異なる場合があり得る。シェルの長さは、シェルの遠位端部を超える必要な所定の針の長さを得るように適宜選択される。非限定的な例によれば、針はシェルの遠位端部を越えて、0.4から0.7mmの範囲内の間隔だけ延在し得る。
【0033】
別の態様によれば、本発明は、安全器具に収容されたシリンジを含む注射システムを収容するためのシェルに関する。安全器具は、シリンジを収容するように構成された本体と、本体に対して可動であり、シリンジの針の少なくとも一部を覆うように構成されたシールドと、本体または安全器具のシールドから外側に延在する少なくとも1つのフィンガーフランジと、を含む。シェルは、長手方向の軸に沿って延在し、実質的に管状であり安全器具の少なくとも遠位部を収容するように構成されたハウジングと、安全器具のフィンガーフランジを収容するように構成されたケーシングと、を含む。ケーシングは、フィンガーフランジがスナップ特徴の遠位面から遠位に挿入可能なように、ケーシングにフィンガーフランジを挿入中に外側に曲がるように構成された少なくとも2つのスナップ特徴と、各スナップ特徴の遠位面から遠位に位置する突起部と、を含む。突起部は、フィンガーフランジがスナップ特徴の遠位面から遠位に挿入されると、フィンガーフランジに内向きの付勢力を加えるように構成される。
【0034】
別の態様によると、本発明は、シリンジを収容するように構成された本体と、本体に対して可動であり、シリンジの針を覆うように構成されたシールドであって、近位端部に隣接して側方に延在するフィンガーフランジを有したシールドと、を有した安全器具を含むシリンジ用の安全システムに関する。安全システムはさらに、安全器具がシェル内に装着され、安全器具のシールドのフィンガーフランジがスナップ特徴および突起部によってシェルに対して保持される、本明細書に記載のシェルを含む。
【0035】
別の態様によれば、本発明は、シリンジを収容するように構成された本体と、本体に対して可動であり、シリンジの針を覆うように構成されたシールドであって、シールドの近位端部に隣接して側方に延在するフィンガーフランジを有したシールドと、を有した安全器具を含むシリンジシステムに関する。安全システムはさらに、安全器具がシェル内に装着され、安全器具のシールドのフィンガーフランジがスナップ特徴および突起部によってシェルに対して保持される、本明細書に記載のシェルを含む。シリンジシステムはさらに、安全器具の本体に挿入されたシリンジを含み、シリンジは針を備えている。
【0036】
これらおよび他の特徴および利点は、非限定的な例として本発明の実施形態を表す本明細書に添付された図を考慮して以下の説明を読むと明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明によるシリンジシステムの実施形態を示す。
図2図2は、シリンジシステムを形成するための本発明によるシェルに挿入することができる注射システムの分解図である。
図3図3は、使用前の注射システムを示す。
図4図4は、注射が完了し、システムが注射部位から引き抜かれた後の注射システムを示す。
図5図5は、図1の細部Aの拡大図である。
図6図6は、図1のシリンジシステムの上方斜視図である。
図7図7は、スナップ特徴および突起部を示すシェルの詳細図である。
図8図8は、安全器具のシールドの1つのフィンガーフランジを締め付ける突起部を示す安全システムの断面図である。
図9図9は、安全システムの部分斜視図である。
図10図10は、図9の面P9に沿った安全システムの断面図である。
図11図11は、安全システムの部分斜視図である。
図12図12は、図11の面P11に沿った安全システムの断面図である。
図13図13は、安全システムの斜視図である。
図14図14は、図13の面P13に沿った安全システムの断面図である。
図15図15は、図14の細部Bの拡大図である。
図16a図16aは、シェルへの注射システムの挿入中のシリンジシステムの連続的な構成を概略的に示す。
図16b図16bは、シェルへの注射システムの挿入中のシリンジシステムの連続的な構成を概略的に示す。
図16c図16cは、シェルへの注射システムの挿入中のシリンジシステムの連続的な構成を概略的に示す。
図17図17は、シリンジシステムの断面図であり、中心に据えるリブを示す。
図18図18は、シリンジシステムの別の断面図であり、挿入ストッパーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、注射システム101と、注射システム10を収容するためのシェル50と、を備えたシリンジシステム100を示す。
【0039】
注射システム101はシリンジ10および安全器具103を含む。
【0040】
シリンジ10は、バレル11―好ましくは近位外部のフランジ12を有した―と、プランジャーロッド13および針14を備えている。怪我や汚染を回避するために、使用前に針14を覆うためのキャップ15がさらに設けられ得る。キャップ15をバレル11の近位端部に着脱可能に装着し得る。プランジャーロッド13はさらに、注射を行うためにユーザーの指によって押される近位部材16を備え得、これはディスク形状であることができる。
【0041】
安全器具103は、シリンジ10を収容するように構成されている。安全器具103は、
シリンジ10を収容するように構成された本体20と、
本体20に対して可動であり、シリンジの針14の少なくとも一部を覆うことの可能なシールド30と、
シールド30の近位端部または本体20の近位端部に隣接して側方に延在するフィンガーフランジ31であって、遠位面34を有したフィンガーフランジ31と、
を備えている。
【0042】
シェル50および安全器具103は、シリンジ10用の安全システム102を形成する。シリンジシステム100は、安全システム102およびシリンジ10を備えている。
【0043】
図1および図6に示すように、シェルは軸105に沿って延在する。好ましくは、シリンジシステム100およびその構成部品は同じ軸105を有している。長手方向Zは軸105の方向として定義される。「遠位に」および「近位に」という用語は前記長手方向Zを基準として使用される。側面方向Xは、軸105に直交する方向として、およびシールド30のフィンガーフランジ31が沿って延在する一般的な方向として定義される。横断方向Yは、長手方向Zと側面方向Xに直交する方向として定義される。
【0044】
シリンジシステム100、またはその構成部品の少なくとも一部は、1つまたは2つの対称軸、すなわち(X、Z)に平行な側方の面P1および/または(Y、Z)に平行な横断面P2を有し得る。
【0045】
注射システム101の非限定的な例は、図2図3、および図4に示しており、その開示が参照により本明細書全体に組み込まれる、WO 2013/159059に記載されたシステムと少なくとも部分的に類似できる。
【0046】
シリンジ10は、本体20の管状部23に収容され、本体20の近位部で内向きに突出する留め具21などの適切な手段によって装着位置に固定される。バレル11のフランジ12を、前記留め具と、軸105に対して直交して延在し留め具21から遠位に位置する本体20の壁22と、の間にスナップ留めし得る。
【0047】
シールド30は好ましくは本体20を収容する管状部33を備えている。シールド30は、本体20に対して軸方向に動くことができる。使用前に、図3に示すように、本体20は、例えば留め具21または本体20の別のパーツ(図5参照)と連携できる少なくとも1つのクランプ32によって、スプリング45の作用に対抗してシールド30に対して所定の位置に保持される。
【0048】
一実施形態では、図3に示すように、針14は使用前に安全器具103の遠位端部を越えて延在し得る。注射が完了すると、クランプ32または他の保持部材が解放される。これは、プランジャーロッド13、例えば近位部材16の作用によって達成することができ、これは留め具21をクランプ32から解放することができる。
【0049】
結果として、注射システム101が患者の皮膚から取り外された際、図4に示すように、スプリング45は、シールド30を本体20に対して遠位に移動させ、それにより針14の少なくとも一部が覆われる。
【0050】
別の実施形態(不図示)では、注射システム101を使用する前に、針14をシールド30で覆い得る。したがって穿刺中、シールド30はスプリング45の作用に対抗して本体に対し近位に移動し、それにより針14はシールドの遠位端部を越えて延在できる。注射が完了した後、注射システム101が患者の皮膚から外されると、スプリング45はシールド30を本体20に対して遠位に移動させ、それにより針14の少なくとも一部が覆われる。
【0051】
シェル50は、実質的に管状であり、安全器具103の遠位部を収容するように構成されたハウジング51を備えている。シェル50はさらに、安全器具のフィンガーフランジ31を収容するように構成されたケーシング52を備えている。
【0052】
ケーシング52は、ハウジング51に対してシェル50の拡大部を形成でき、前記拡大部は側面方向Xに延在する。ケーシングはシェル50の近位部に位置できる。
【0053】
ケーシング52は、横断面P2の両側に位置する2つの半ケーシングを備え得る。
【0054】
横断面P2の各側で、ケーシング52は、好ましくは軸105に実質的に直交する遠位面53と、好ましくはP1に平行して延在する2つの対向する側面の壁54および好ましくはP2と平行して延在する1つの横断壁55を含む周壁と、を有することができる。図6に見られるように、1つの側面の壁54と横断壁55との間の接合部は湾曲しており、したがってケーシング52は実質的にU字形状の断面を有している。ケーシング52の近位端部は開いている。
【0055】
言い換えれば、シェル50は、横断方向Yに沿って見た場合、実質的にTの形状を有することができる。これは、使用者がケーシング52の遠位面53に指を置くことができるので、シェル50の取り扱いを容易にする。
【0056】
さらに、ハウジング51は、ケーシング52から遠位に位置する2つの対向する側面の凹部56を有し得て、それにより、シェル50の把持がユーザーにとってさらに容易になる。
【0057】
シェル50の遠位端部57は、キャップリムーバー(不図示)を収容するように構成された内部コンパートメント58、および/または注射部位上でのシリンジシステム100の適切な配置の改善を可能とする外部カラー59を設け得る。
【0058】
ケーシング52は、
安全器具のシールド30のフィンガーフランジ31を装着位置に固定するように構成された少なくとも2つのスナップ特徴60であって、安全器具103がシェル50に対して近位に移動すること、および最終的にはシェル50から外れること、から防止する軸方向の当接部として機能し得るスナップ特徴60と、
各スナップ特徴に関連付けられた突起部70と、
を備えている。
各突起部70は内向きに突出している。各突起部は、シェル50の内側の安全器具103の揺れを防止する、または少なくとも制限するように、シェル50に対して安全器具103を締め付けるように構成される。装着位置では、シェルに対する安全器具の動きを制限または防止するために、突起部が安全器具のフィンガーフランジをシェルに向かってまたは対して押し付けることができる。
【0059】
例示的に図示した実施形態では、シェル50は、ケーシング52の対向する側面の壁54のそれぞれ1つに1つのスナップ特徴60および1つの突起部70の1つのセットを、すなわちそのような4つのセット、を備えている。しかしながら、シェル50の内側の安全器具103の十分な保持を提供することを可能にすることを条件として、他の実装が想定できるであろう。
【0060】
1つのスナップ特徴60および1つの突起部70は、同一のタブ40上に内向きに配置することができる。図5図7に示すように、ケーシング52の各側面の壁54は、長手方向に延在する2つの脚部42とシェルの軸105に直交する基部43を有したU字の形状を実質的に有したスロット41を備えている。スロット41の内側に位置するケーシングの壁54の領域は前記タブ40を形成する。タブ40は、実質的に長方形であることができ、長手方向に延在することができる。
【0061】
スロット41の基部43はスロット41の遠位部分に位置し得、一方では、基部43に接続されていない脚部42の端部を結ぶ線44は、好ましくはスロット41の近位部に位置し得る。前記線44はタブ40の変形または外側への旋回を可能にするヒンジを形成し得る。
【0062】
図7に見られるように、スナップ特徴60は好ましくはシェルの軸105に直交する遠位面61を有することができ、これはフィンガーフランジ31を装着位置に固定するための当接部を形成するように構成することができる。スナップ特徴60はさらに、好ましくはシェル50への安全器具103の挿入を容易にするために傾斜した、近位面62を有することができる。
【0063】
突起部70は、好ましくはシェル50内の安全器具103の休止位置または装着位置において実質的に長手方向である保持面71を有することができる。保持面71は、フィンガーフランジ31を内向きに押すように構成され得る。保持面71は遠位面61から遠位に位置し得る。突起部70は好ましくはシェル50への安全器具103の挿入を容易にするために傾斜した近位面72を有することができる。
【0064】
保持面71はフィンガーフランジ31に対する把持効果を増加するように構成することができる。そのために、保持面71は特定の表面状態(マイクロレリーフなど)を有し得、または熱可塑性エラストマー(TPE)もしくは熱可塑性ポリウレタン(TPU)などの適切な材料の薄膜に覆われ得る。把持効果の増加により、安全器具103とシェル50の間の揺れをさらに低減することが可能になる。
【0065】
突起部70は、スナップ特徴60から遠位に、そして好ましくはまた部分的にスロットの基部43内でタブから遠位に延在し得る。
【0066】
1つのケーシング52および対応するスナップ特徴60と、突起部70および候補のタブ40は、単一の部品として作ることができる。好ましくは、シェル50全体を単一の部品として作ることができる。ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)またはコポリマーABS-PC(ポリカーボネート)などのプラスチック材料の射出成形を製法として使用できる。
【0067】
実際には、好ましくは事前充填のシリンジ10が安全器具103に装着され、注射システム101を形成する。その後、注射システム101は装着位置までシェル50へ挿入される。
【0068】
この挿入動作の間、図16aから図16cに概略的に示すように、安全器具のシールド30のフィンガーフランジ31はケーシング52の内側でシェル50に対して遠位に動く。
【0069】
最初は図16aに示すように、タブ40、スナップ特徴60および突起部70は休止位置にある。
【0070】
次に図16bに示すように、フィンガーフランジ31の遠位面34はスナップ特徴60の近位面62と接触し、タブ40を外側に弾性的に曲げる。これはスナップ特徴60の遠位面61から遠位へのフィンガーフランジ31の挿入を可能にする。
【0071】
注射システム101が装着位置にある場合、すなわちシェル50への挿入動作が終わると、図16cに示すように、フィンガーフランジ31はスナップ特徴6の遠位面から遠
位に位置し、スナップ特徴60の遠位面61により装着位置に固定される。

【0072】
さらに、休止状態でのY方向に沿った突起部70の保持面71の間の距離D70はフィンガーフランジ31の横寸法L31(図16b参照)よりも小さいので、注射システム101が装着位置にある場合、突起部70はフィンガーフランジ31に内向きの付勢力を加える。言い換えると、向かい合う突起部70のそれぞれは安全器具のシールド30のフィンガーフランジ31をその他の突起部70に向かって押し付ける。したがって、フィンガーフランジ31は突起部70の間で締め付けられ、これはシェル50に対する安全器具103の動きを制限、またはさらに防止する。
【0073】
突起部70は安全器具103がシェル50の内側で揺れるのを防止するための防振ダンパーとして機能する。
【0074】
タブ40の外側への可撓性のおかげで、スナップ特徴60もまた注射システム101の挿入中に外側へ曲がる。結果として、スナップ特徴60の長さは―タブ40に対して直交、すなわち例示的な実施形態では横断方向Yに沿って―、特にフィンガーフランジ31がスナップ特徴60と接触する際に、挿入運動を阻害することなく適正に長くすることができる。スナップ特徴60のそのようなより長い長さは、シェル50の内側にスナップ留めされた安全器具103を保持するためのより効率的な当接部を提供するので有利である。
【0075】
有利なことに、シェル50はさらに、好ましくは挿入中および装着位置の両方で、安全器具103をシェル50内の中心に据えるためのリブ80を備え得る。これらのリブ80は図17に見ることができ、これはハウジング51の側面の凹部56の位相で、軸105に直交する面におけるシリンジシステム100の断面図である。
【0076】
リブ80はハウジング50の内面の一部または全体にわたって延在し得る。リブ80はハウジング50の内面から内向きに直交し突出し得る。それらはシールド30の管状部33の外面に接触するか、または非常に接近して位置し得る。
【0077】
シェル50は、少なくとも4つのリブ80、好ましくは6つのリブ80、すなわち、ハウジング50の対向する横断壁に配置された2つの対面するリブ80aと、ハウジング50の対向する側面の壁に配置された2組の対面するリブ80b、80cと、を備え得る。
【0078】
さらに、シェル50は、装着位置で注射システム101のための当接部を形成し、前記注射システム101が前記装着位置からシェル50に対してさらに遠位に移動するのを防ぐように構成された挿入ストッパー81を設けることができる。挿入ストッパー81はまた、適切な装着位置の制御を可能にする。そのために挿入ストッパー81は調整または変更することができる。
【0079】
好ましくは軸105に対して互いに反対側に配置された2つの挿入ストッパー81を設け得る。
【0080】
図18に示すように、挿入ストッパー81はケーシング52の遠位面53から内向きに突出することができ、フィンガーフランジ31と協働するように構成することができる。面P1において、挿入ストッパー81は1つのリブ80aの連続部に形成され得る。
【0081】
装着位置では、図1に示すように、針14は所定の長さのシェル50の遠位端部57を越えて延在できる。好ましくは、針の損傷を防ぐために針はキャップ15によって覆われ、そのキャップ15は前述のようにキャップリムーバーによって覆うことができる。キャップ15が取り外されると、シリンジシステム100は使用の準備ができている。
【0082】
外部シェルを提供することにより、本発明は注射システム101を使用するにあたり、より容易におよび外傷性を少なくする。安全器具103がシェル50の内側で揺れるのをさらに防止することにより、本発明は安全器具103がその動きによって損傷しないことを保証し、シリンジシステム100の認められた品質に有害である揺れに関連する騒音を制限または防止する。
【0083】
本発明は、もちろん、例としての上記の実施形態に限定されず、記載された手段のすべての技術的等価物および代替物、ならびにそれらの組み合わせを包含する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16a
図16b
図16c
図17
図18