(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 15/00 20060101AFI20230901BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20230901BHJP
C08C 19/00 20060101ALI20230901BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
C08L15/00
C08L7/00
C08C19/00
B60C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2020548135
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2019031666
(87)【国際公開番号】W WO2020059367
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2018176252
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019075022
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆嗣
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115112(JP,A)
【文献】特開昭57-063338(JP,A)
【文献】特表2004-524420(JP,A)
【文献】特開2008-143952(JP,A)
【文献】特開2015-218236(JP,A)
【文献】生化学辞典(第3版),第3版,株式会社東京化学同人 小澤 美奈子,1998年,第724頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性共役ジエン系重合体と、
天然ゴムと、
を含み、
前記変性共役ジエン系重合体は、一分子当たり変性基を
3~30個有し、分子間の当該変性基同士が非共有結合を有し、当該非共有結合1つ当たりのエネルギーが10~200kJ/molであ
り、
前記変性基が、-COOMおよび-OM(Mは、Li、NaまたはKである)からなる群より選択される1種以上であり、
前記変性共役ジエン系重合体が、共役ジエン化合物に由来する共役ジエン単位と、芳香族ビニル化合物に由来する芳香族ビニル単位とを含み、
前記芳香族ビニル化合物が、スチレンと、アルキルスチレンおよびハロゲン化アルキルスチレンからなる群より選択される1種以上とを含み、
前記変性基が、少なくとも芳香族ビニル単位のベンジル位に結合しており、
前記変性共役ジエン系重合体および前記天然ゴムの合計質量に対する、前記変性共役ジエン系重合体の質量の割合が、10~50質量%である、ゴム組成物。
【請求項2】
前記変性共役ジエン系重合体および前記天然ゴムの合計質量に対する、前記変性共役ジエン系重合体の質量の割合が、20~
50質量%である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記アルキルスチレンが、4-メチルスチレン、3-メチルスチレンおよび2,4-ジメチルスチレンからなる群より選択される1種以上であり、
前記ハロゲン化アルキルスチレンが、4-クロロメチルスチレンおよび3-クロロメチルスチレンからなる群より選択される1種以上である、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記変性基が、-COOLiおよび-OLiからなる群より選択される1種以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記変性基の数が、一分子当たり、3~20個である、請求項1~4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量が、100,000以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
フィラーをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いた、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2018年9月20日に出願の日本国特許出願第2018-176252号および2019年4月10日に出願の日本国特許出願第2019-075022号の優先権の利益を主張するものであり、それらの内容は、参照により本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ゴム組成物およびタイヤに関する。
【背景技術】
【0003】
近年、自動車の低燃費化に対する要求はより過酷なものとなりつつある。このような要求に対応するため、タイヤ性能についても転がり抵抗の低減が求められている。タイヤの転がり抵抗を下げる手法としては、ゴム組成物としてより発熱性の低い(低ロス性)材料を用いることが最も一般的な手法として行われている。
【0004】
このような方法としては、例えば、充填剤にカーボンブラックを用い、重合活性末端をスズ化合物にて修飾する方法(例えば、特許文献1参照)、同様にカーボンブラックを用い、重合活性末端にアミノ基を導入する方法(例えば、特許文献2参照)などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭60-255838号公報
【文献】特開昭62-207342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、一般に高分子材料では、ヒステリシスロスが低いほど破壊へエネルギーが多くまわるため、強度(耐久性)は低下する。
【0007】
また、ゴム組成物を用いたタイヤなどのゴム物品の耐摩耗性を向上することも求められている。
【0008】
そこで、本発明は、低ロス性を高レベルに保ちながら、耐久性(耐亀裂性)と耐摩耗性とに優れるゴム組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、低ロス性を高レベルに保ちながら、耐久性(耐亀裂性)と耐摩耗性とに優れるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るゴム組成物は、変性共役ジエン系重合体と、天然ゴムと、を含み、前記変性共役ジエン系重合体は、一分子当たり変性基を2個以上有し、分子間の当該変性基同士が非共有結合を有し、当該非共有結合1つ当たりのエネルギーが10~200kJ/molである、ゴム組成物である。
本発明に係るゴム組成物は、低ロス性を高レベルに保ちながら、耐久性(耐亀裂性)と耐摩耗性とに優れる。
【0010】
本発明に係るタイヤは、上記いずれかのゴム組成物を用いた、タイヤである。
本発明に係るタイヤによれば、低ロス性を高レベルに保ちながら、耐久性(耐亀裂性)と耐摩耗性とに優れる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低ロス性を高レベルに保ちながら、耐久性(耐亀裂性)と耐摩耗性とに優れるゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、低ロス性を高レベルに保ちながら、耐久性(耐亀裂性)と耐摩耗性とに優れるタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0013】
本発明では、2以上の実施形態を任意に組み合わせることができる。
【0014】
本明細書において、「共役ジエン単位」は、変性共役ジエン系重合体における、共役ジエン化合物に由来する単位を指す。本明細書において、「共役ジエン化合物」は、共役系のジエン化合物を指す。
【0015】
本発明において、変性共役ジエン系重合体の変性基同士の非共有結合1つ当たりのエネルギーは、M06/6-31G(d,p)を基底関数として、量子化学計算プログラムにGaussian09を用いて求める。結合エネルギーは以下の通り計算する。まず非共有結合を形成するモノマーユニットだけをとりだし、会合状態のモデルを作製し会合状態のエネルギーを計算する。次いで会合状態を十分引き離し、解離状態のエネルギーを計算する。この会合状態のエネルギーと解離状態のエネルギーとの差から一分子あたりの結合エネルギーを求め、配位結合の数で割ることで1つあたりの結合エネルギーとする。
【0016】
本発明において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー社製「HLC-8020」、カラム:東ソー社製「GMH-XL」(2本直列)、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンから検量線を作製し、各変性共役ジエン系重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求める。重合瓶から重合セメントを一部抜き取り、脱気したイソプロパノールで重合反応を停止させ、THFで薄めた溶液のMwを測定することで、変性共役ジエン系共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量とする。
【0017】
(ゴム組成物)
本発明に係るゴム組成物は、変性共役ジエン系重合体と、天然ゴムと、を含み、前記変性共役ジエン系重合体は、一分子当たり変性基を2個以上有し、分子間の当該変性基同士が非共有結合を有し、当該非共有結合1つ当たりのエネルギーが10~200kJ/molである、ゴム組成物である。
本発明に係るゴム組成物は、低ロス性を高レベルに保ちながら、耐久性(耐亀裂性)と耐摩耗性とに優れる。
【0018】
以下、本発明のゴム組成物の必須成分である、変性共役ジエン系重合体および天然ゴムと、任意成分を例示説明する。
【0019】
<変性共役ジエン系重合体>
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分として、変性共役ジエン系重合体を含む。当該変性共役ジエン系重合体は、一分子当たり変性基を2個以上有し、分子間の当該変性基同士が非共有結合を有し、当該非共有結合1つ当たりのエネルギーが10~200kJ/molである、変性共役ジエン系重合体である。
【0020】
本発明のゴム組成物における変性共役ジエン系重合体は、低ロス性と耐久性に優れる。理論に拘束されることを望むものではないが、この理由は、分子間の当該変性基同士が、上記特定範囲の弱い結合エネルギーを持つ非共有結合を有することにより、ゴム組成物の架橋物において、低歪では、非共有結合を維持することによって低ロス性に優れ、一方、高歪では、非共有結合が切れて、ロスが発生することによって、耐久性に優れるものと推測される。
【0021】
変性共役ジエン系重合体において、前記非共有結合1つ当たりのエネルギーは、低ロス性と耐久性に優れる観点から、50~200kJ/molであることが好ましい。
【0022】
一実施形態では、変性共役ジエン系重合体において、前記非共有結合1つ当たりのエネルギーは、10kJ/mol以上、20kJ/mol以上、30kJ/mol以上、40kJ/mol以上、50kJ/mol以上、60kJ/mol以上、70kJ/mol以上、80kJ/mol以上、90kJ/mol以上、100kJ/mol以上、110kJ/mol以上、120kJ/mol以上、130kJ/mol以上、140kJ/mol以上、150kJ/mol以上、160kJ/mol以上、170kJ/mol以上、180kJ/mol以上、190kJ/mol以上または195kJ/mol以上である。別の実施形態では、変性共役ジエン系重合体において、前記非共有結合1つ当たりのエネルギーは、200kJ/mol以下、195kJ/mol以下、190kJ/mol以下、180kJ/mol以下、170kJ/mol以下、160kJ/mol以下、150kJ/mol以下、140kJ/mol以下、130kJ/mol以下、120kJ/mol以下、110kJ/mol以下、100kJ/mol以下、90kJ/mol以下、80kJ/mol以下、70kJ/mol以下、60kJ/mol以下、50kJ/mol以下、40kJ/mol以下、30kJ/mol以下または20kJ/mol以下である。
【0023】
変性共役ジエン系重合体のベースポリマー、すなわち、変性前の共役ジエン系重合体は、少なくとも共役ジエン単位を含む重合体であればよい。ベースポリマーとしては、例えば、共役ジエン単位のみからなる重合体;少なくとも共役ジエン単位と芳香族ビニル単位とを含む共重合体などが挙げられる。
【0024】
共役ジエン単位を形成する共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン(1,3-ブタジエン)、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエンなどが挙げられる。共役ジエン化合物は、置換されていてもよいし、非置換であってもよい。一実施形態では、共役ジエン化合物の炭素数は、4~8である。共役ジエン化合物としては、入手容易性の観点から、ブタジエン、イソプレンが好ましい。
【0025】
一実施形態では、共役ジエン化合物は、1,3-ブタジエンおよびイソプレンからなる群より選択される1種以上である。別の実施形態では、共役ジエン化合物は、1,3-ブタジエンのみである。
【0026】
変性共役ジエン系重合体中の共役ジエン単位の含有量は、特に限定されず、例えば、20mol%以上、30mol%以上、40mol%以上、50mol%以上、60mol%以上、70mol%以上、80mol%以上、90mol%以上または95mol%以上であり、100mol%以下、95mol%以下、90mol%以下、80mol%以下、70mol%以下、60mol%以下、50mol%以下、40mol%以下、30mol%以下または20mol%以下である。一実施形態では、変性共役ジエン系重合体中の共役ジエン単位の含有量は、50~100mol%である。
【0027】
芳香族ビニル単位を形成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、アルキルスチレン、ハロゲン化アルキルスチレンなどが挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、入手容易性の観点から、スチレンが好ましい。
【0028】
アルキルスチレンとしては、例えば、4-メチルスチレン、3-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレンなどが挙げられる。
【0029】
ハロゲン化アルキルスチレンのアルキル基の炭素数は、例えば、1~5個である。ハロゲン化アルキルスチレンのハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。ハロゲン化アルキルスチレンとしては、例えば、4-クロロメチルスチレン、3-クロロメチルスチレンなどが挙げられる。
【0030】
一実施形態では、芳香族ビニル化合物は、スチレン、アルキルスチレンおよびハロゲン化アルキルスチレンからなる群より選択される1種以上である。
【0031】
変性共役ジエン系重合体が、共役ジエン単位に加えて芳香族ビニル単位を含む場合、変性共役ジエン系重合体中の芳香族ビニル単位の含有量は、特に限定されず、例えば、0.1mol%以上、1mol%以上、5mol%以上、10mol%以上、20mol%以上、30mol%以上または40mol%以上であり、40mol%以下、30mol%以下、20mol%以下、10mol%以下、5mol%以下、1mol%以下または0.1mol%以下である。一実施形態では、変性共役ジエン系重合体中の芳香族ビニル単位の含有量は、0~45mol%である。
【0032】
共役ジエン単位および芳香族ビニル単位は、それぞれ、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
変性共役ジエン系重合体のベースポリマーとしては、例えば、スチレンブタジエン共重合体、ポリブタジエン、合成イソプレンゴムなどが挙げられる。
【0034】
変性共役ジエン系重合体が有する変性基としては、変性基同士で非共有結合を形成することができ、当該非共有結合1つ当たりのエネルギーが10~200kJ/molであれば、特に限定されず、例えば、-COOM、-OM(Mは、アルカリ金属原子である)などが挙げられる。
【0035】
アルカリ金属原子(M)としては、例えば、Li、Na、K、Rb、Csなどが挙げられる。
【0036】
本発明に係るゴム組成物では、前記変性基が、-COOMおよび-OM(Mは、アルカリ金属原子である)からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。これにより、適度な結合エネルギーをもつ配位結合を導入することができる。
【0037】
本発明に係るゴム組成物では、前記変性基が、-COOLiおよび-OLiからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。これにより、適度な結合エネルギーを持つ配位結合をより容易に導入することができる。
【0038】
変性共役ジエン系重合体は、上述した変性基を一分子当たり2個以上有する。一分子当たり2個未満の場合、低ロス性、耐久性(耐亀裂性)および耐摩耗性の点で不十分である。
【0039】
変性共役ジエン系重合体が有する変性基の数は、一分子当たり2個以上であればよく、3個以上が好ましく、5個以上がより好ましい。取り扱い性の観点から、変性基の数は、一分子当たり30個以下が好ましく、15個以下がより好ましく、10個以下が更に好ましい。
【0040】
一実施形態では、変性共役ジエン系重合体が有する変性基の数は、一分子当たり、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、9.5個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、20個以上、25個以上または30個以上である。別の実施形態では、変性共役ジエン系重合体が有する変性基の数は、一分子当たり、30個以下、25個以下、20個以下、19個以下、18個以下、17個以下、16個以下、15個以下、14個以下、13個以下、12個以下、11個以下、10個以下、9.5個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下または3個以下である。
【0041】
変性共役ジエン系重合体の分子量は特に限定されず、適宜調節すればよい。例えば、変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、100,000以上または150,000以上であり、1,000,000以下、500,000以下または200,000以下である。
【0042】
本発明に係るゴム組成物では、前記変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量が、100,000以上であることが好ましい。これにより、耐亀裂性と耐摩耗性を高度に両立することができる。また、耐亀裂性と耐摩耗性との観点から、変性共役ジエン系重合体のMwは、150,000~250,000であることが好ましい。
【0043】
本発明に係るゴム組成物では、前記変性共役ジエン系重合体が、変性スチレンブタジエン共重合体および変性ポリブタジエンからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。これにより、低ロス性を高レベルに保ちながら、耐亀裂性と耐摩耗性とにより優れる。
【0044】
変性共役ジエン系重合体は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
ゴム成分における変性共役ジエン系重合体の割合は、適宜調節すればよい。例えば、変性共役ジエン系重合体および天然ゴムの合計質量に対する、変性共役ジエン系重合体の質量の割合は、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上または60質量%以上であり、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下または40質量%以下である。
【0046】
本発明に係るゴム組成物では、前記変性共役ジエン系重合体および前記天然ゴムの合計質量に対する、前記変性共役ジエン系重合体の質量の割合が、20~90質量%であることが好ましい。これにより、低ロス性を高レベルに保ちながら、耐亀裂性をより向上することができる。
【0047】
<変性共役ジエン系重合体の製造方法>
変性共役ジエン系重合体の製造方法は、特に限定されず、例えば、以下の(i)、(ii)および(iii)工程を含む製造方法を好適に用いることができる。
(i)重合開始剤としてのアルカリ金属化合物の存在下、共役ジエン化合物単独で、または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを、アニオン重合して、共役ジエン系重合体を形成する工程、
(ii)(i)工程の後、前記共役ジエン系重合体に、アルカリ金属化合物をさらに添加する工程、および
(iii)(ii)工程で得られた生成物を変性剤と反応させて、前記共役ジエン系重合体に変性基を導入する工程。
【0048】
(i)重合開始剤としてのアルカリ金属化合物の存在下、共役ジエン化合物単独で、または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを、アニオン重合して、共役ジエン系重合体を形成する工程(以下、単に(i)工程ということがある)は、例えば、特開2013-249379号、特開2016-003246号、特開2014-227458号などに記載の従来公知のアニオン重合と同様に行うことができる。共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物の例は、上述したとおりである。
【0049】
本明細書では、(i)工程で共役ジエン系重合体を形成するために用いられる少なくとも共役ジエン化合物を含む化合物(任意に、後述する芳香族ビニル化合物を含む)をまとめてモノマーということがある。
【0050】
一実施形態では、前記芳香族ビニル化合物が、スチレンと、アルキルスチレンおよびハロゲン化アルキルスチレンからなる群より選択される1種以上とを含むことが好ましい。これにより、変性基の導入がより容易になる。
【0051】
一実施形態では、前記共役ジエン系重合体を形成するモノマーに対して、前記アルキルスチレンおよびハロゲン化アルキルスチレンからなる群より選択される1種以上を合計0.1~3質量%の量で含むことが好ましい。これにより、製造時の作業性を確保しながら、低ロス性と耐久性に優れる。
【0052】
一実施形態では、前記アルキルスチレンが、4-メチルスチレンであり、前記ハロゲン化アルキルスチレンが、4-クロロメチルスチレンであることが好ましい。これにより、変性基の導入がさらに容易になる。
【0053】
重合開始剤として用いるアルカリ金属化合物としては、アニオン重合において公知のアルカリ金属化合物を用いることができる。アルカリ金属原子(M)としては、例えば、Li、Na、K、Rb、Csなどが挙げられる。アルカリ金属化合物としては、例えば、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物などが挙げられる。アルカリ金属化合物としては、有機アルカリ金属化合物が好ましい。
【0054】
有機アルカリ金属化合物としては、例えば、ヒドロカルビルリチウムおよびリチウムアミド化合物などが挙げられる。
【0055】
ヒドロカルビルリチウムとしては、例えば、炭素数2~20のヒドロカルビル基を有するものが好ましく、例えば、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、イソブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、フェニルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチルフェニルリチウム、4-フェニルブチルリチウム、シクロへキシルリチウム、シクロベンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物などが挙げられる。
【0056】
リチウムアミド化合物としては、例えば、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジへプチルアミド、リチウムジへキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ-2-エチルへキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム-N-メチルピベラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミドなどが挙げられる。
【0057】
より効率よく本発明の変性共役ジエン系重合体を合成することができることから、(i)工程で使用するアルカリ金属化合物は、n-ブチルリチウムが好ましい。
【0058】
(i)工程で使用するアルカリ金属化合物の量は、適宜調節すればよいが、例えば、変性共役ジエン系重合体を形成するモノマー100質量部に対して、0.2~20mmolの範囲とすればよい。
【0059】
(ii)(i)工程の後、前記共役ジエン系重合体に、アルカリ金属化合物をさらに添加する工程(以下、単に(ii)工程ということがある)で添加するアルカリ金属化合物のアルカリ金属原子(M)としては、例えば、Li、Na、K、Rb、Csなどが挙げられる。
【0060】
(ii)工程で添加するアルカリ金属化合物としては、(i)工程で説明したアルカリ金属化合物と同様である。(i)工程と(ii)工程のアルカリ金属化合物は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0061】
より効率よく本発明の変性共役ジエン系重合体を合成することができることから、(ii)工程で使用するアルカリ金属化合物は、sec-ブチルリチウムが好ましい。
【0062】
より効率よく本発明の変性共役ジエン系重合体を合成することができることから、(i)工程で使用するアルカリ金属化合物は、n-ブチルリチウムが好ましく、かつ、(ii)工程で使用するアルカリ金属化合物は、sec-ブチルリチウムが好ましい。
【0063】
(i)工程の後、別個に(ii)工程でアルカリ金属化合物をさらに添加することによって、(i)工程で形成された共役ジエン系重合体のポリマー主鎖の一方の末端以外の部分(ポリマー主鎖の途中など)にアルカリ金属原子が導入され(炭化水素鎖の水素原子がアルカリ金属原子で置換され)、その導入されたアルカリ金属原子が変性剤と反応し、分子間で非共有結合を形成し得る変性基が導入される。したがって、変性共役ジエン系重合体一分子当たりの変性基を2個以上とすることができる。
【0064】
上記一例の(i)、(ii)および(iii)工程を含む製造方法において、(ii)工程を行わない場合、通常、共役ジエン系重合体の重合活性末端のみにアルカリ金属が導入され、そしてその末端のみに変性基が導入される。したがって、(ii)工程を行わない場合、変性共役ジエン系重合体一分子当たりの変性基数は、1個となる。
【0065】
(ii)工程でアルカリ金属原子が導入される部分は、例えば、芳香族ビニル化合物としてスチレンを用いた場合、スチレンのポリマー主鎖との結合部分の3級炭素原子である。この他、例えば、芳香族ビニル化合物としてスチレンと、4-メチルスチレンを用いた場合、スチレンのポリマー主鎖との結合部分の3級炭素原子に加えて、4-メチルスチレンのポリマー主鎖との結合部分の3級炭素原子および4位のメチル基の1級炭素原子に、アルカリ金属原子が導入される。この場合、3級炭素原子よりも、1級炭素原子の方が、立体障害が小さいため、1級炭素原子の方にアルカリ金属原子が優先的に導入されると考えられる。また、芳香族ビニル化合物を含まない重合体の系では、芳香族ビニル化合物の場合より活性は劣るものの、アリル位の水素原子が追加で添加したアルカリ金属化合物のアルカリ金属原子と反応し、アルカリ金属原子が導入されると考えられる。
【0066】
(ii)工程で添加するアルカリ金属化合物の量は、適宜調節すればよいが、例えば、変性共役ジエン系重合体を形成するモノマー100質量部に対して、0.2~20mmolの範囲とすればよい。
【0067】
(i)工程で添加するアルカリ金属化合物の量(mmol)と、(ii)工程で添加するアルカリ金属化合物の量(mmol)との比率((ii)/(i))は、0.5~100であることが好ましく、0.9~20であることがより好ましい。
【0068】
前記芳香族ビニル化合物が、スチレンと、アルキルスチレンおよびハロゲン化アルキルスチレンからなる群より選択される1種以上とを含む場合、(ii)工程で添加するアルカリ金属化合物の量は、例えば、変性共役ジエン系重合体を形成するモノマー100質量部に対して、0.1~3mmolの範囲とすればよく、0.1~1mmolが好ましい。これにより、作業性を確保しながら、低ロス性と耐久性に優れる。
【0069】
上記一例の(i)、(ii)および(iii)工程を含む製造方法を用いる場合、変性共役ジエン系重合体一分子当たりの変性基数は、以下の式から求められる。
(ii)工程で添加するアルカリ金属化合物の物質量(mmol)/(変性共役ジエン系重合体を形成するモノマーの仕込み量(g)/変性共役ジエン系重合体の数平均分子量Mn)
【0070】
上記(i)、(ii)および(iii)工程を含む製造方法において、変性共役ジエン系重合体一分子当たりの変性基を2個以上とする方法としては、例えば、(ii)工程で添加するアルカリ金属の量を増やす;および/または、モノマーとしての芳香族ビニル化合物の量を増やすなどが挙げられる。
【0071】
(iii)(ii)工程で得られた生成物を変性剤と反応させて、前記共役ジエン系重合体に変性基を導入する工程(以下、単に(iii)工程ということがある)で用いる変性剤としては、例えば、炭酸ガス(二酸化炭素)、二硫化炭素などが挙げられる。
【0072】
前記変性剤は、炭酸ガスであることが好ましい。これにより、極性基を容易に非極性ポリマー中へ導入することができる。
【0073】
変性剤の量は、適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、変性剤として炭酸ガスを用いる場合、(ii)工程の生成物を含む溶液の色が消えるまで炭酸ガスを吹き込めばよい。
【0074】
例えば、変性剤として、炭酸ガスを用いた場合、変性基は、-COOMとなる。例えば、変性剤として、アセトアルデヒドなどのアルデヒドを用いた場合、変性基は、-OMとなる。
【0075】
以下のスキームは、共役ジエン化合物としてブタジエンを、芳香族ビニル化合物としてスチレンと4-メチルスチレンを、(i)工程のアルカリ金属化合物としてn-ブチルリチウムを、(ii)工程のアルカリ金属化合物としてsec-ブチルリチウムを、(iii)工程の変性剤として炭酸ガスを、それぞれ、用いた場合の(i)~(iii)工程の一例を示したスキームである。なお、この一例では、説明の簡略化のため、(ii)工程で共役ジエン系重合体の4-メチルスチレン単位の4位のメチル部分のみにLi原子が導入された中間体生成物を示しているが、下記式中の*の付いた炭素原子、すなわち、スチレンのポリマー主鎖との結合部分の3級炭素原子と、4-メチルスチレンのポリマー主鎖との結合部分の3級炭素原子にもLi原子が導入され得る。
【化1】
【0076】
上の一例で得られた変性共役ジエン系重合体は、変性基として-COOLiを有し、例えば、この変性基中のカルボニル基のO原子が、別の変性共役ジエン系重合体分子の変性基中のLi原子に配位して非共有結合の一種である配位結合を形成する。なお、Li原子は配位数が4であるため、さらにもう二つの変性共役ジエン系重合体分子中の変性基のカルボニル基のO原子が前記Li原子に配位し得る。
【0077】
上記製造方法では、(ii)工程と(iii)工程を同時に行ってもよいし、(ii)工程の後に、(iii)工程を行ってもよい。
【0078】
上記製造方法では、(i)、(ii)および(iii)工程の他、(iii)工程において得られた変性共役ジエン系重合体を洗浄する工程などを含んでいてもよい。洗浄に用いる溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水、バッファー水などが挙げられる。
【0079】
本発明においては、変性共役ジエン系重合体に対して、酸を添加しないことが好ましい。酸を加えることで、例えばリチウムが変性共役ジエン系重合体から除かれ、配位結合を有さなくなる可能性があるためである。
【0080】
上述した(i)工程に代えて、公知の製造方法を用いて、共役ジエン系重合体(ベースポリマー)を形成してもよく、例えば、特開2017-101181号公報、国際公開第2015/190072号などに記載の多元共重合体の製造方法を用いて、共役ジエン系重合体を形成してもよい。
【0081】
<天然ゴム>
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分として、天然ゴムを含む。天然ゴムと、上記変性共役ジエン系重合体とのブレンドにより、低ロス性を高レベルに保ちながら、耐久性(耐亀裂性)と耐摩耗性とを向上することができる。天然ゴムは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
<その他のゴム成分>
本発明に係るゴム組成物には、上記変性共役ジエン系重合体と天然ゴム以外のゴム成分が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。このようなその他のゴム成分は、公知のゴム成分から適宜選択すればよい。その他のゴム成分としては、例えば、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、イソブチレンとp-メチルスチレンの共重合体の臭化物、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリロブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、スチレンイソプレンゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム、イソプレン-ブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、などが挙げられる。これらのその他のゴム成分は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
<その他の成分>
本発明に係るゴム組成物には、上記ゴム成分の他、ゴム組成物に配合される公知の添加剤を適宜配合してもよい。このような添加剤としては、例えば、フィラー、加硫剤(架橋剤)、加硫促進剤、老化防止剤、補強剤、軟化剤、加硫助剤、着色剤、難燃剤、滑剤、発泡剤、可塑剤、加工助剤、酸化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、着色防止剤、オイルなどが挙げられる。これらは、それぞれ、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
本発明に係るゴム組成物は、フィラーをさらに含むことが好ましい。これにより、低ロス性と耐久性により優れる。また、ウェットグリップ性能も向上する。
【0085】
<フィラー>
フィラーとしては、例えば、無機充填剤およびカーボンブラックなどが挙げられる。これらは、それぞれ、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。本明細書において、カーボンブラックは、無機充填剤には含まれないものとする。
【0086】
無機充填剤としては、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。
【0087】
無機充填剤を用いる場合、シランカップリング剤などを使用して、適宜無機充填剤の表面処理をしてもよい。
【0088】
カーボンブラックとしては、例えば、GPF(General Purpose Furnace)、FEF(Fast Extruding Furnace)、SRF(Semi-Reinforcing Furnace)、HAF(High Abrasion Furnace)、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate SAF)グレードのものなどが挙げられる。
【0089】
本発明に係るゴム組成物がフィラーを含む場合、その含有量は適宜調節すればよい。例えば、ゴム成分100質量部に対して、5~200質量部、10~200質量部または10~130質量部である。
【0090】
<加硫剤(架橋剤)>
加硫剤(架橋剤)としては、特に制限はなく、適宜選択すればよい。加硫剤としては、例えば、硫黄系加硫剤、有機過酸化物系加硫剤、無機加硫剤、ポリアミン加硫剤、樹脂架橋剤、硫黄化合物系加硫剤、オキシム-ニトロソアミン系加硫剤、硫黄などが挙げられる。
【0091】
本発明に係るゴム組成物が加硫剤を含む場合、その含有量は適宜調節すればよい。例えば、ゴム成分100質量部に対し、0.1~20質量部または0.1~10質量部である。
【0092】
<加硫促進剤>
加硫促進剤としては、特に制限はなく、適宜選択すればよい。加硫促進剤としては、例えば、グアジニン系化合物、アルデヒド-アミン系化合物、アルデヒド-アンモニア系化合物、チアゾール系化合物、スルフェンアミド系化合物、チオ尿素系化合物、チウラム系化合物、ジチオカルバメート系化合物、ザンテート系化合物などが挙げられる。
【0093】
本発明に係るゴム組成物が加硫促進剤を含む場合、その含有量は適宜調節すればよい。例えば、ゴム成分100質量部に対し、0.1~20質量部または0.1~10質量部である。
【0094】
本発明に係るゴム組成物の調製方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、変性共役ジエン系重合体と天然ゴムとを含む各成分を、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練り機を用いて混練りすることによって得られる。また、加硫促進剤と加硫剤以外の成分を非生成(ノンプロ)段階で混合し、その混合物に加硫促進剤と加硫剤を生成(プロ)段階で配合および混合してゴム組成物を調製してもよい。
【0095】
(ゴム製品)
本発明に係るゴム組成物を用いて得られるゴム製品としては、特に限定されないが、例えば、タイヤ、コンベヤベルト、防振ゴム、免震ゴム、ゴムクローラ、ホース、発泡体などが挙げられる。
【0096】
本発明に係るゴム組成物を用いてゴム製品を得る方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。ゴム組成物を架橋ないし加硫する条件としては、適宜調節すればよく、例えば、温度120~200℃、加温時間1分間~900分間とすればよい。
【0097】
(タイヤ)
本発明に係るタイヤは、上記いずれかのゴム組成物を用いた、タイヤである。本発明のゴム組成物のタイヤにおける適用部位としては、特に限定されないが、例えば、トレッドゴム、ベーストレッドゴム、サイドウォールゴム、サイド補強ゴムおよびビードフィラーなどが挙げられる。
【0098】
タイヤを製造する方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。実施例において、配合量は、特に断らない限り、質量部を意味する。
【0100】
実施例で用いた材料の詳細は以下のとおりである。
天然ゴム:RSS#3
変性共役ジエン系重合体:変性SBR、後述する方法で調製
カーボンブラック:HAF、東海カーボン社製の「N234」
オイル:JX日鉱日石エネルギー社製の「JOMO PROCESS NC300BN」
ワックス:精工化学社製の商品名「サンタイト(登録商標)」
老化防止剤:N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製の商品名「ノクラック(登録商標) 6C」
加硫促進剤:N-(シクロヘキシル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、大内新興化学工業社製の商品名「ノクセラー(登録商標)CZ-G」
【0101】
実施例において、変性共役ジエン系重合体の変性基同士の非共有結合1つ当たりのエネルギーは、前述した方法により求めた。また、実施例において、重合体のブタジエン部分のビニル含量(表中、Viと表す)[%]と、スチレン含量(表中、Stと表す)[%]を1H-NMRの積分比から求めた。また、重合体の重量平均分子量は、前述した方法により求めた。
【0102】
実施例において、変性共役ジエン系重合体の変性基数は、上述した方法により算出した。
【0103】
COOLi変性SBRの調製
(i)工程として、不活性雰囲気としたガラス瓶の中にシクロヘキサン(240g)、ブタジエン/シクロヘキサン溶液(25質量%、194g)、スチレン/シクロヘキサン溶液(27質量%、46g)、4-メチルスチレン(480mg)を加え混合したのち、2,2-ジ-(2-テトラヒドロフリル)プロパン/シクロヘキサン溶液(1M、0.35mL)とn-ブチルリチウム(1.6M、0.42mL)を添加した。50℃で1時間ゆるやかに振とう、重合が完了し、共役ジエン系重合体の形成を確認した。
【0104】
(ii)工程として、(i)工程で得られた共役ジエン系重合体を含む溶液に、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(418mg)、sec-ブチルリチウム(1.0M、4.0mL)を加えて、70℃で2時間振とうさせた。
【0105】
(iii)工程として、(ii)工程で得られた溶液に、炭酸ガスを色が消えるまで吹き込み、変性反応を完了させた。
【0106】
その後、得られたポリマーセメントへ2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液(BHT濃度:5質量%)0.5mLを加えたのち、イソプロパノールで再沈殿させ、減圧乾燥させることで目的とする変性スチレンブタジエン共重合体(COOLi変性SBR)を得た。
【0107】
表1および表2に示す配合処方に従い、通常のバンバリーミキサーを用いて、ゴム組成物を製造した。そして、このゴム組成物について、以下に示すように、JIS K 6251に従い、100%伸びにおける引張応力(表2中、100%応力と表記)を測定した。また、このゴム組成物を160℃、20分間加硫して得たゴム加硫物について、以下に示すように、低ロス性、耐亀裂成長性および耐摩耗性の評価を行った。これらの結果を表2に示す。
【0108】
【0109】
【0110】
<100%伸びにおける引張応力>
各ゴム組成物について、JIS K 6251に従い、JISダンベル状3号型試験片を作製し、100%伸びにおける引張応力(MPa)を、試験温度24±4℃にて測定した。
【0111】
<低ロス性>
TAインスツルメント社製の粘弾性測定装置を用いて、温度50℃、周波数15Hz、歪10%で損失正接(tanδ)を測定した。tanδの値は、その逆数をとり、比較例1の値を100とし、指数表示した。指数値が大きいほど、低ロス性に優れることを示す。
【0112】
<耐亀裂性>
JIS3号試験片の中心部に0.5mmの亀裂を入れ、室温で40~150%の一定歪みで繰り返し疲労を与え、サンプルが切断するまでの回数を測定した。比較例1の回数を100とし、指数表示した。指数値が大きいほど、耐亀裂性(耐久性)に優れることを示す。
【0113】
<耐摩耗性>
各ゴム加硫物について、ランボーン式摩耗試験機を用い、室温におけるスリップ率25%での摩耗量を測定した。比較例1のゴム加硫物の摩耗量の逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れることを示す。
【0114】
表2に示すように、実施例では、低ロス性を高レベルに保ちながら、耐久性(耐亀裂性)と耐摩耗性とに優れる。実施例では、応力も向上している。応力が高いゴムであっても耐久性(耐亀裂性)が向上しており、応力を下げることでさらに耐久性が向上させることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明によれば、低ロス性を高レベルに保ちながら、耐久性(耐亀裂性)と耐摩耗性とに優れるゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、低ロス性を高レベルに保ちながら、耐久性(耐亀裂性)と耐摩耗性とに優れるタイヤを提供することができる。