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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】ATRキナーゼの複素環式阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 413/14 20060101AFI20230901BHJP
   C07D 471/04 20060101ALI20230901BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20230901BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230901BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
C07D413/14 CSP
C07D471/04 104Z
C07D471/04 107Z
A61K31/5377
A61P35/00
A61P43/00 111
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020548995
(86)(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 US2019022727
(87)【国際公開番号】W WO2019178590
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】62/644,189
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518000729
【氏名又は名称】ボード オブ レジェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 W. 7th Street,Austin,TX 78701,U.S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】520011430
【氏名又は名称】ケムパートナー コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CHEMPARTNER CORPORATION
【住所又は居所原語表記】280 UTAH AVENUE, SUITE 100,SOUTH SAN FRANCISCO, CA 94080, US
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100117422
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 かおり
(72)【発明者】
【氏名】マリア エミリア ディ フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エル キャロル
(72)【発明者】
【氏名】スヤンブ ケサヴァ ヴィジャヤン ラマスワミ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】サラ ライブリー
(72)【発明者】
【氏名】ジジュン カン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ラポイント
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-526931(JP,A)
【文献】特表2016-540794(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0292588(US,A1)
【文献】特表2017-523987(JP,A)
【文献】特表2016-539155(JP,A)
【文献】特表2010-533161(JP,A)
【文献】特許第7159307(JP,B2)
【文献】国際公開第2017/121684(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(I)で表される化合物又はその塩。
【化1】

(式中、
及びRは、それぞれ1つ又は複数のR基で任意に置換されるC1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C3~6シクロアルキル、C3~6ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールから独立して選択されるか、又はR及びRは、それらが両方とも結合される硫黄と一緒に、1つ又は複数のR基で任意に置換されるヘテロシクロアルキル環を形成し、
は、水素、C1~6アルキル及びC1~6ハロアルキルから選択され、
は、それぞれ1つ又は複数のR基で任意に置換されるC5~10アリール及び5~10員ヘテロアリールから選択され、
各Rは、NR、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、OR、NRC(O)R、NRC(O)OR、NRC(O)NR、C(O)R、C(O)OR及びC(O)NRから独立して選択され、
各Rは、NR1112、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、OR11、NR10C(O)R11、NR10C(O)OR11、NR10C(O)NR1112、C(O)R11、C(O)OR11及びC(O)NR1112から独立して選択され、
各R、R及びRは、水素、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル及びヘテロシクロアルキルから独立して選択され、且つハロ、ヒドロキシ、C1~3アルキル、C1~3ハロアルキル及びC1~3アルコキシで任意に置換されるか、又はR、R及びRのいずれか2つは、それらが両方とも結合される原子と一緒に、3~7員シクロアルキル又はヘテロシクロアルキル環を形成してもよく、及び
各R10、R11及びR12は、水素、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル及びヘテロシクロアルキルから独立して選択され、且つハロ、ヒドロキシ及びアルコキシから選択される1つ又は複数の基で任意に置換されるか、又はR10、R11及びR12のいずれか2つは、それらが両方とも結合される原子と一緒に、3~7員シクロアルキル又はヘテロシクロアルキル環を形成してもよい。)
【請求項2】
構造式(II)で表される請求項1に記載の化合物又はその塩。
【化2】

(式中、
及びRは、それぞれ1つ又は複数のR基で任意に置換されるC1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C3~6シクロアルキル、C3~6ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールから独立して選択されるか、又はR及びRは、それらが両方とも結合される硫黄と一緒に、1つ又は複数のR基で任意に置換されるヘテロシクロアルキル環を形成し、
は、水素、C1~6アルキル及びC1~6ハロアルキルから選択され、
は、C5~10アリール及び5~10員ヘテロアリールから選択され、且つ1つ又は複数のR基で任意に置換され、
各Rは、NR、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、OR、NRC(O)R、NRC(O)OR、NRC(O)NR、C(O)R、C(O)OR及びC(O)NRから独立して選択され、
各Rは、NR1112、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、OR11、NR10C(O)R11、NR10C(O)OR11、NR10C(O)NR1112、C(O)R11、C(O)OR11及びC(O)NR1112から独立して選択され、
各R、R及びRは、水素、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル及びヘテロシクロアルキルから独立して選択され、且つハロ、ヒドロキシ、C1~3アルキル、C1~3ハロアルキル及びC1~3アルコキシで任意に置換されるか、又はR、R及びRのいずれか2つは、それらが両方とも結合される原子と一緒に、3~7員シクロアルキル又はヘテロシクロアルキル環をしてもよく、及び
各R10、R11及びR12は、水素、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル及びヘテロシクロアルキルから独立して選択され、且つハロ、ヒドロキシ及びアルコキシから選択される1つ又は複数の基で任意に置換されるか、又はR10、R11及びR12のいずれか2つは、それらが両方とも結合される原子と一緒に、3~7員シクロアルキル又はヘテロシクロアルキル環を形成してもよい。)
【請求項3】
は、C1~6アルキルであるか、メチルである請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
は、5~10員ヘテロアリールであり、且つ1つ又は複数のR基で任意に置換されるか、
は、インドール、ピロロピリジン、ピラゾロピリジン、イミダゾロピリジン、ピロロピラジン、ピラゾロピラジン、ピロロピリミジン、ピラゾロピリミジン、イミダゾロピリミジン、ピロロピリダジン、ピラゾロピリダジン及びイミダゾロピリダジンから選択され、且つ1つ又は複数のR基で任意に置換されるか、
は、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン、7H-ピロロ[2,3-c]ピリダジン、7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン及び5H-ピロロ[2,3-b]ピラジンから選択され、且つ1つ、2つ又は3つのR基で任意に置換されるか、
は、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンであり、且つ1つ又は2つのR基で任意に置換される請求項2又は3に記載の化合物。
【請求項5】
各Rは、NR1112、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、OR11、NR10C(O)R11、NR10C(O)OR11、NR10C(O)NR1112、C(O)R11、C(O)OR11及びC(O)NR1112から独立して選択されるか、
各Rは、NR1112、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ及びオキソから独立して選択される請求項2~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
各R は、NR 11 12 、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ及びオキソから独立して選択され、
は、
【化3】

から選択される請求項2~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
及びRは、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C3~6シクロアルキル、C3~6ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールから独立して選択され、且つ1つ又は2つのR基で任意に置換されるか、又はR及びRは、それらが両方とも結合される硫黄と一緒に、1つ又は2つのR基で任意に置換されるヘテロシクロアルキル環を形成し、
各Rは、NR、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、OR、NRC(O)R、NRC(O)OR、NRC(O)NR、C(O)R、C(O)OR及びC(O)NRから独立して選択される請求項1~のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
各Rは、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、OR、NRC(O)R、NRC(O)OR、NRC(O)NR、C(O)R、C(O)OR及びC(O)NRから独立して選択されるか、
各Rは、C(O)R、C(O)OR及びC(O)NRから独立して選択される請求項に記載の化合物。
【請求項9】
及びRは、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C3~6シクロアルキル、C3~6ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールから独立して選択されるか、
及びRは、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C3~6シクロアルキル及びC3~6ヘテロシクロアルキルから独立して選択され、且つ1つ又は2つのR基で任意に置換されるか、
及びRは、C1~4アルキル及びC3~6シクロアルキルから独立して選択されるか、
及びRは、それらが両方とも結合される硫黄と一緒に、1つ又は2つのR基で任意に置換されるヘテロシクロアルキル環を形成する請求項に記載の化合物。
【請求項10】
構造は、以下から選択される請求項1に記載の化合物。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】
【請求項11】
医薬として使用するための請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項12】
ATRキナーゼの阻害によって改善される疾患又は状態を予防又は治療するための請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項13】
薬学的に許容される担体とともに請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物を含み、塩基除去修復タンパク質を阻害又は調節する第2の治療薬をさらに含んでいてもよい医薬組成物。
【請求項14】
DNA損傷剤に対して細胞を感受性にするための請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項15】
DNA損傷からの細胞修復を阻止するための請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項16】
ATRキナーゼ媒介性疾患を治療するための請求項12に記載の医薬組成物であって、
ATRキナーゼ媒介性疾患が癌であり、
前記癌が、
(i)化学療法抵抗性癌であるか、
(ii)放射線療法抵抗性癌であるか、
(iii)ALT陽性癌であるか、
(iv)肉腫であるか、
(v)骨肉腫及び膠芽腫から選択される癌であるか、
(vi)肺癌、頭部及び頚部癌、膵臓癌、胃癌並びに脳腫瘍から選択される癌であるか、
(vii)非小細胞肺癌、小細胞肺癌、膵臓癌、胆管癌、頭部及び頚部癌、膀胱癌、大腸癌、膠芽腫、食道癌、乳癌、肝細胞癌並びに卵巣癌から選択される癌であるか、
(viii)塩基除去修復タンパク質に欠損を有する癌であるか、
(ix)ATMシグナル伝達カスケードに欠損を有する癌であり、該欠損は、TM、p53、CHK2、MRE11、RAD50、NBS1、53BP1、MDC1、H2AX、MCPH1/BRIT1、CTIP又はSMC1の1つ又は複数の改変された発現又は活性である請求項12に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年3月16日に出願された米国仮特許出願第62/644,189号明細書の優先権の利益を主張し、その開示は、あたかもその全体が本明細書中に記載されたかのように参照により本明細書に援用される。
【0002】
新規な複素環式化合物及び組成物並びに疾患を治療するための医薬品としてのそれらの適用が本明細書に開示される。さらに、癌などの疾患の治療のためにヒト又は動物対象におけるATRキナーゼ活性を阻害する方法も提供される。
【背景技術】
【0003】
毛細血管拡張性運動失調症及びRad3関連キナーゼ(ATR)は、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ関連タンパク質キナーゼ(PIKK)ファミリーのメンバーであり、これは、毛細血管拡張性運動失調症突然変異(ATM)キナーゼ、DNA依存性タンパク質キナーゼ(DNA-PK)、生殖器形態形成の抑制剤-1(SMG-1)、哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)及び形質転換/転写関連タンパク質(TRAPP)も含む。ATR及びATMは、細胞DNA損傷応答(DDR)経路の重要な調節物質であり、DNA損傷に対する応答のゲノム完全性の維持に関与する。多様な損傷事象のためにいくつかの異なるタイプのDNA病変が起こり得るが、そうしたものには、正常複製プロセシングのエラー、電離放射線(IR)及び遺伝毒性物質に対する曝露があり、特定の種類のDNA損傷を解決するために様々なDNA修復機構が進化している。
【0004】
ATMは、主に、二本鎖DNA切断(DSB)によって活性化され、これは、停止した複製フォークの崩壊又はIRへの曝露から起こり得る。ATMは、G1/Sチェックポイントの活性化において重要な役割を有し、これにより、DNA損傷を有する細胞は、S期に入ることが妨げられ、DNA複製の開始前のDNA修復が可能になる。効果は、主に、ATM、CHK2キナーゼ及び腫瘍抑制剤p53の主要な下流標的の2つのリン酸化によって媒介される。
【0005】
次に、停止した複製フォークに存在するか、又はDNA DSBのプロセシング後のDNA末端削り込みに由来する一本鎖DNA切断(SSB)に主に応答してATRが活性化される。複製タンパク質A(RPA)がDNA一本鎖に結合した後、ATR相互作用タンパク質(ATRIP)は、RPAコートDNA鎖に結合して、ATRをSSB損傷部位に動員する。この複合体へのさらなるタンパク質成分の動員により、ATRキナーゼの活性化が起こり、続いてCHK1キナーゼをはじめとするその下流エフェクターのリン酸化及び活性化が起こる。ATRの活性化により、複製起点発火が緩徐になり、停止した複製フォークが安定化して、DSBへのそれらの崩壊を防ぎ、損傷が修復されるとフォーク複製が再開される。ATR/CHK1経路は、G2/Mチェックポイントの主要な調節因子であり、これは、不完全なDNA複製及び/又はDNA損傷の存在下での細胞の早過ぎる有糸分裂開始を防止する(M.J.O’Connor,Molecular Cell,2015,60,November 19,p.547-560;A.M.Weber et al.,Pharmacology and Therapeutics 2015,149,124-138に論述されている)。
【0006】
DDRにおけるATRの重要な役割のため、ATRの薬理学的阻害は、いくつかの特定の環境において有効な癌治療法となり得る。実際に、数種の癌(例えば、癌遺伝子駆動の腫瘍)は、正常細胞と比較して高いレベルの複製ストレスを特徴とすることから、ATRの遮断は、それらのゲノム不安定性を増大させて、実質的な細胞死を誘導することができる(O.Gilad et al.,Cancer Res.70,9693-9702,2010)。さらに、ほとんどの癌は、1つ以上のDDR経路の喪失又は調節異常を特徴とするため、ゲノム不安定性が増大し、生存のために残ったDDR経路への依存性が高まる。例えば、p53中の突然変異のため、欠損G1チェックポイントを有する癌細胞は、DNA修復及び細胞生存を可能にするためにG2/Mチェックポイントに一層依存することになる。G2/Mチェックポイントの主要調節要素であるATRの阻害は、DNA損傷チェックポイントの完全な喪失を引き起こし、最終的にDNA損傷の蓄積及び分裂期崩壊を招き得る。機能性G1チェックポイントを備える正常細胞は、ATRの薬理学的阻害による影響をそれほど受けない。同様に、ATM欠損を有する癌細胞では、ATR阻害によって合成致死性依存性が起こり、感受性及び優先的殺傷の増大を招く。従って、欠損ATM及び/又はp53機能を有する腫瘍の治療にATR阻害を使用することができる(P.M.Reaper,M.R.Griffiths et al.,Nature Chem.Bio.7,428-430,2011)。
【0007】
ATRと、DDR経路の他の構成要素との間の別の潜在的合成致死性が報告されており、これは、XRCC1、ERCC1、MRE11及びMRN複合体の場合には他の構成要素の喪失/欠損を特徴とする癌の治療を含め、ATR阻害剤を用いた治療に活用され得る(A.M.Weber et al.,Pharmacology and Therapeutics 2015,149,124-138に論述されている)。近年、ヒト癌において高頻度に突然変異したSWI/SNFクロマチン-リモデリング複合体のメンバーである、ARID1Aが欠損した腫瘍におけるATR阻害について合成致死性依存性が報告されている(C.T.Williamson et al.,Nature Communications,2016,7,13837)。
【0008】
ATR阻害は、放射線療法及び化学療法などのDNA損傷治療薬と組み合わせた癌治療にも利用することができる。広く使用されている化学療法薬としては、代謝拮抗剤(例えば、ゲムシタビン)、白金塩などのDNA架橋剤、アルキル化剤(例えば、テモゾロミド)及びトポイソメラーゼの阻害剤(例えば、カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン)が挙げられる。これらの薬剤及び/又は電離放射線の投与により、様々なDNA病変が生じ、これにより癌細胞を最終的に分裂期崩壊及び細胞死に向かわせる。こうした薬剤で治療した癌細胞において、ATRシグナル伝達の阻害は、DNA損傷修復を阻止することができるため、誘導された複製ストレスに応答する癌細胞の、多くの場合に既に損なわれている能力をさらに低減し、従って前述の治療の有効性を増強することができる。
【0009】
併用療法でATR阻害を活用するさらに別の機会は、他のDDR剤と一緒に、例えばPoly ADPリボースポリメラーゼ(PARP)の阻害剤と組み合わせるものである。PARP阻害剤は、一本鎖DNA切断の修復を阻止することにより、DNA二本鎖切断の形成を引き起こす。相同組換え(HR)DNA修復経路が欠損した癌、例えばBRCA1/2突然変異型癌の場合、PARP阻害は、臨床的に有効であることが証明されている。近年の報告では、重要な細胞周期チェックポイントを同時にターゲティングすると(例えば、PARP阻害剤をATR阻害剤と組み合わせることにより)、PARP阻害剤抵抗性患者由来のモデルを含め、いくつかの前臨床癌モデルにおいて、PARP阻害に対する感受性の増大及び有意な効果が得られることを強調している。これらの知見は、他のDDR阻害剤と組み合わせたATR阻害の臨床適用の可能性を強調するものであり、当技術分野は、PARP阻害剤以外のいくつかの他の併用機会にも拡大する可能性がある(H.Kim et al.,Clinical Cancer Research,April 2017,DOI:10.1158/1078-0432.CCR-16-2273;A.Y.K.Lau et al.,AACR National Meeting 2017,Abstract 2494/25,ATR inhibitor AZD6738 as monotherapy and in combination with olaparib or chemotherapy:defining pre-clinical dose-schedules and efficacy modelling)。
【0010】
従って、ATR阻害剤を用いて、癌、細胞周期チェックポイントが欠損しているか、又はATM/p53経路の欠損若しくは他のDDR構成要素を含む更なる合成致死性依存性など、細胞DNA損傷修復経路が欠損した、高レベルの複製ストレスを特徴とする癌を治療するための方法が本明細書に開示される。また、本明細書には、ARID1Aが突然変異/欠損しているか、又は細胞経路が突然変異/欠損して、ATR経路を含む合成致死性依存性にある癌を治療するためにATR阻害剤を使用する方法も開示される。さらに、本明細書には、放射線、DNA損傷化学療法薬及びPARP阻害剤を含む他のDDR阻害剤と組み合わせてATR阻害剤を使用する癌の治療方法も開示される。
【0011】
さらに、ATRの阻害は、テロメア長さの調節に関連する特定の癌の治療の機会を提供する。テロメアは、ヘキサヌクレオチドDNAリピート配列とテロメア関連タンパク質との両方を含む核タンパク質複合体であり、これは、染色体の末端を安定化する役割を果たす。正常な体細胞では、経時的にテロメアが短縮すると、老化又はアポトーシスが起こり、この作用は、細胞寿命に対する上限としての役割を果たし得る。ほとんどの進行癌において、酵素テロメラーゼが活性化されるが、その役割は、DNAの3’末端にリピート配列を付加することであり、それによりテロメア短縮化プロセスを逆転させ、細胞寿命を延長する。従って、テロメラーゼの活性化は、癌細胞不死化に関与している。テロメアを維持するための第2のテロメラーゼ非依存性機構は、テロメラーゼ非依存性テロメア維持(ALT)と呼ばれ、ヒト癌全体の約5%に関与しており、骨肉腫及び膠芽腫をはじめとする特定の種類の癌において優勢である。ALTは、間葉系起源の腫瘍で富化され、通常、生存率の低下と関連する。研究により、ALTのためにATRキナーゼが機能的に必要とされること、及びALT細胞は、ATR阻害に一層感受性になることが判明した(R.L.Flynn,K.E.Cox,Science 2015,347(6219),273-277)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ALT陽性癌に対して効力を有する治療法が求められている。ALT経路は、よく理解されておらず、ALTを特徴とする癌は、テロメラーゼ阻害剤の作用に対して抵抗性である。従って、ATR阻害剤を用いて、癌、ALT陽性タイプの癌を治療するための方法が本明細書に記載される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書には、新規の化合物及び医薬組成物が開示され、そのいくつかは、ATRキナーゼを阻害することがわかっており、さらに化合物の投与により、患者のATRキナーゼ媒介性疾患を治療する方法を含め、化合物を合成及び使用する方法も一緒に開示される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
特定の実施形態では、化合物は、構造式(I):
【化1】

(式中、
及びRは、それぞれ1つ又は複数のR基で任意に置換されるC1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C3~6シクロアルキル、C3~6ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールから独立して選択されるか、又はR及びRは、それらが両方とも結合される硫黄と一緒に、1つ又は複数のR基で任意に置換されるヘテロシクロアルキル環を形成し;
は、水素、C1~6アルキル及びC1~6ハロアルキルから選択され;
は、それぞれ1つ又は複数のR基で任意に置換されるC5~10アリール及び5~10員ヘテロアリールから選択され;
各Rは、NR、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、OR、NRC(O)R、NRC(O)OR、NRC(O)NR、C(O)R、C(O)OR及びC(O)NRから独立して選択され;
各Rは、NR1112、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、OR11、NR10C(O)R11、NR10C(O)OR11、NR10C(O)NR1112、C(O)R11、C(O)OR11及びC(O)NR1112から独立して選択され;
各R、R及びRは、水素、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル及びヘテロシクロアルキルから独立して選択され、且つハロ、ヒドロキシ、C1~3アルキル、C1~3ハロアルキル及びC1~3アルコキシで任意に置換されるか;又はR、R及びRのいずれか2つは、それらが両方とも結合される原子と一緒に、3~7員シクロアルキル又はヘテロシクロアルキル環を形成することができ;及び
各R10、R11及びR12は、水素、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル及びヘテロシクロアルキルから独立して選択され、且つハロ、ヒドロキシ及びアルコキシから選択される1つ又は複数の基で任意に置換されるか;又はR10、R11及びR12のいずれか2つは、それらが両方とも結合される原子と一緒に、3~7員シクロアルキル又はヘテロシクロアルキル環を形成することができる)
又はその塩を有する。
【0015】
本明細書に開示される特定の化合物は、有用なATRキナーゼ阻害活性を備えると考えられ得るため、ATRキナーゼが能動的役割を果たす疾患若しくは病状の治療又は予防に使用され得る。従って、広範な態様において、特定の実施形態は、薬学的に許容される担体と共に本明細書に開示される1つ若しくは複数の化合物を含む医薬組成物、さらにそれらの化合物及び組成物を作製する方法並びに使用する方法も提供する。特定の実施形態は、ATRキナーゼを阻害する方法を提供する。他の実施形態は、こうした治療が必要な患者のATRキナーゼ介在性障害を治療する方法を提供し、これらの方法は、患者に治療有効量の本開示の化合物又は組成物を投与するステップを含む。また、ATRキナーゼの阻害によって改善される疾患又は病状を治療するための薬剤の製造での使用のための、本明細書に開示される特定の化合物の使用も提供される。
【0016】
特定の実施形態では、化合物は、構造式(II):
【化2】
(式中、
及びRは、それぞれ1つ又は複数のR基で任意に置換されるC1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C3~6シクロアルキル、C3~6ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールから独立して選択されるか、又はR及びRは、それらが両方とも結合される硫黄と一緒に、1つ又は複数のR基で任意に置換されるヘテロシクロアルキル環を形成し;
は、水素、C1~6アルキル及びC1~6ハロアルキルから選択され;
は、C5~10アリール及び5~10員ヘテロアリールから選択され、且つ1つ又は複数のR基で任意に置換され;
各Rは、NR、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、OR、NRC(O)R、NRC(O)OR、NRC(O)NR、C(O)R、C(O)OR及びC(O)NRから独立して選択され;
各Rは、NR1112、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、OR11、NR10C(O)R11、NR10C(O)OR11、NR10C(O)NR1112、C(O)R11、C(O)OR11及びC(O)NR1112から独立して選択され;
各R、R及びRは、水素、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル及びヘテロシクロアルキルから独立して選択され、且つハロ、ヒドロキシ、C1~3アルキル、C1~3ハロアルキル及びC1~3アルコキシで任意に置換されるか;又はR、R及びRのいずれか2つは、それらが両方とも結合される原子と一緒に、3~7員シクロアルキル又はヘテロシクロアルキル環を形成することができ;及び
各R10、R11及びR12は、水素、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル及びヘテロシクロアルキルから独立して選択され、且つハロ、ヒドロキシ及びアルコキシから選択される1つ又は複数の基で任意に置換されるか;又はR10、R11及びR12のいずれか2つは、それらが両方とも結合される原子と一緒に、3~7員シクロアルキル又はヘテロシクロアルキル環を形成することができる)
又はその塩を有する。
【0017】
特定の実施形態では、R及びRは、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C3~6シクロアルキル、C3~6ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールから独立して選択され、且つ1つ又は2つのR基で任意に置換されるか、又はR及びRは、それらが両方とも結合される硫黄と一緒に、1つ又は2つのR基で任意に置換されるヘテロシクロアルキル環を形成する。
【0018】
特定の実施形態では、R及びRは、それぞれ1つ又は2つのR基で任意に置換されるC1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C3~6シクロアルキル、C3~6ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールから独立して選択される。
【0019】
特定の実施形態では、R及びRは、それぞれ1つのR基で任意に置換されるC1~4アルキル及びC3~6シクロアルキルから独立して選択される。
【0020】
特定の実施形態では、R及びRは、C1~4アルキル及びC3~6シクロアルキルから独立して選択される。
【0021】
特定の実施形態では、R及びRは、それらが両方とも結合される硫黄と一緒に、1つ又は2つのR基で任意に置換されるヘテロシクロアルキル環を形成する。
【0022】
特定の実施形態では、R及びRは、それらが両方とも結合される硫黄と一緒に、1つのR基で任意に置換されるヘテロシクロアルキル環を形成する。
【0023】
特定の実施形態では、R及びRは、それらが両方とも結合される硫黄と一緒に、ヘテロシクロアルキル環を形成する。
【0024】
特定の実施形態では、R及びRは、それらが両方とも結合される硫黄並びに硫黄が結合される窒素及び酸素と一緒に、
【化3】
から選択される基Zである。
【0025】
特定の実施形態では、Rは、C1~6アルキルである。
【0026】
特定の実施形態では、Rは、メチルである。
【0027】
特定の実施形態では、Rは、5~10員ヘテロアリールであり、且つ1つ又は複数のR基で任意に置換される。
【0028】
特定の実施形態では、Rは、インドール、ピロロピリジン、ピラゾロピリジン、イミダゾロピリジン、ピロロピラジン、ピラゾロピラジン、ピロロピリミジン、ピラゾロピリミジン、イミダゾロピリミジン、ピロロピリダジン、ピラゾロピリダジン及びイミダゾロピリダジンから選択され、且つ1つ又は複数のR基で任意に置換される。
【0029】
特定の実施形態では、Rは、インドール、ピロロピリジン、ピラゾロピリジン、ピロロピラジン、ピラゾロピラジン、ピロロピリミジン、ピラゾロピリミジン、ピロロピリダジン及びピラゾロピリダジンから選択され、且つ1つ又は複数のR基で任意に置換される。
【0030】
特定の実施形態では、Rは、3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン、1H-イミダゾ[4,5-c]ピリダジン、プリン及び1H-イミダゾ[4,5-b]ピラジンから選択され、且つ1つ、2つ又は3つのR基で任意に置換される。
【0031】
特定の実施形態では、Rは、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン、7H-ピロロ[2,3-c]ピリダジン、7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン及び5H-ピロロ[2,3-b]ピラジンから選択され、且つ1つ、2つ又は3つのR基で任意に置換される。
【0032】
特定の実施形態では、Rは、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンであり、且つ1つ又は2つのR基で任意に置換される。
【0033】
特定の実施形態では、Rは、任意に置換されている、
【化4】
から選択される。
【0034】
特定の実施形態では、各Rは、NR、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、OR、NRC(O)R、NRC(O)OR、NRC(O)NR、C(O)R、C(O)OR及びC(O)NRから独立して選択される。
【0035】
特定の実施形態では、各Rは、C(O)R、C(O)OR及びC(O)NRから独立して選択される。
【0036】
特定の実施形態では、各Rは、C(O)R及びC(O)ORから独立して選択される。
【0037】
特定の実施形態では、各Rは、NR1112、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、OR11、NR10C(O)R11、NR10C(O)OR11、NR10C(O)NR1112、C(O)R11、C(O)OR11及びC(O)NR1112から独立して選択される。
【0038】
特定の実施形態では、各Rは、NR1112、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ及びオキソから独立して選択される。
【0039】
特定の実施形態では、各Rは、ハロゲン及びシアノから独立して選択される。
【0040】
本開示の特定の実施形態では、化合物は、構造式(III):
【化5】
(式中、
及びRは、それぞれ1つ又は複数のR基で任意に置換されるC1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C3~6シクロアルキル、C3~6ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールから独立して選択されるか、又はR及びRは、それらが両方とも結合される硫黄と一緒に、1つ又は複数のR基で任意に置換されるヘテロシクロアルキル環を形成し;
は、水素、C1~6アルキル及びC1~6ハロアルキルから選択され;
は、C5~10アリール及び5~10員ヘテロアリールから選択され、且つ1つ又は複数のR基で任意に置換され;
各Rは、NR、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、OR、NRC(O)R、NRC(O)OR、NRC(O)NR、C(O)R、C(O)OR及びC(O)NRから独立して選択され;
各Rは、NR1112、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、OR11、NR10C(O)R11、NR10C(O)OR11、NR10C(O)NR1112、C(O)R11、C(O)OR11及びC(O)NR1112から独立して選択され;
各R、R及びRは、水素、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル及びヘテロシクロアルキルから独立して選択され、且つハロ、ヒドロキシ、C1~3アルキル、C1~3ハロアルキル及びC1~3アルコキシで任意に置換されるか;又はR、R及びRのいずれか2つは、それらが両方とも結合される原子と一緒に、3~7員シクロアルキル又はヘテロシクロアルキル環を形成することができ;及び
各R10、R11及びR12は、水素、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル及びヘテロシクロアルキルから独立して選択され、且つハロ、ヒドロキシ及びアルコキシから選択される1つ又は複数の基で任意に置換されるか;又はR10、R11及びR12のいずれか2つは、それらが両方とも結合される原子と一緒に、3~7員シクロアルキル又はヘテロシクロアルキル環を形成することができる)
又はその塩を有する。
【0041】
本開示は、本明細書に記載される化合物とATRキナーゼを接触させるステップを含む、少なくとも1つのATRキナーゼ機能を阻害する方法にも関する。細胞表現型、細胞増殖、ATRキナーゼの活性、ATRキナーゼにより産生される生化学的出力の変化、ATRキナーゼの発現又はATRキナーゼと天然結合パートナーとの結合をモニターすることができる。このような方法は、疾患の治療様式、生物学的アッセイ、細胞アッセイ、生化学的アッセイなどであり得る。
【0042】
本明細書には、治療的に有効な量の、本明細書に開示される化合物又はその塩を、それを必要としている患者に投与することを含む、ATRキナーゼ介在性疾患を治療する方法も提供される。
【0043】
特定の実施形態では、ATRキナーゼ媒介性疾患は、増殖性疾患である。
【0044】
特定の実施形態では、増殖性疾患は、骨髄増殖性疾患である。
【0045】
特定の実施形態では、増殖性疾患は、癌である。
【0046】
特定の実施形態では、癌は、リンパ腫である。
【0047】
特定の実施形態では、癌は、B細胞リンパ腫である。
【0048】
特定の実施形態では、癌は、膵臓癌である。
【0049】
本明細書には、薬剤として使用するための、本明細書に開示の化合物も提供される。
【0050】
本明細書には、ATRキナーゼ媒介性疾患を治療するための医薬剤として使用するための、本明細書に開示される化合物も提供される。
【0051】
薬剤としての、本明細書に開示の化合物の使用も提供される。
【0052】
ATRキナーゼ媒介性疾患を治療するための薬剤としての、本明細書に開示の化合物の使用も提供される。
【0053】
ATRキナーゼ媒介性疾患を治療するための薬剤の製造に使用するための、本明細書に開示の化合物も提供される。
【0054】
ATRキナーゼ媒介性疾患を治療するための、本明細書に開示される化合物の使用も提供される。
【0055】
本明細書には、ATRキナーゼの阻害の方法であって、本明細書に開示される化合物又はその塩とATRキナーゼを接触させるステップを含む方法も提供される。
【0056】
本明細書には、患者において効果を達成する方法が提供され、これは、治療有効量の、本明細書に開示の化合物又はその塩を患者に投与することを含み、効果は、認知機能の向上から選択される。
【0057】
対象におけるATRキナーゼ介在性機能の調節の方法であって、治療的に有効な量の、本明細書に開示される化合物を投与することを含む方法も提供される。
【0058】
薬学的に許容される担体と一緒に、本明細書に開示の化合物を含む医薬組成物も提供される。
【0059】
特定の実施形態では、医薬組成物は、経口投与のために製剤化される。
【0060】
特定の実施形態では、経口投与医薬組成物は、錠剤及びカプセルから選択される。
【0061】
特定の実施形態では、医薬組成物は、非経口投与のために製剤化される。
【0062】
本明細書で使用される場合、以下の用語は、指示される意味を有する。
【0063】
値の範囲が開示され、「n・・・~n」又は「n・・・とnとの間」(ここで、n及びnは数である)という表記が使用される場合、他に規定されない限り、この表記は、これらの数自体及びこれらの数の間の範囲を含むことが意図される。この範囲は、両端の値間で、整数であっても連続し得、両端の値を含む。例として、「2~6つの炭素」という範囲は、炭素が整数単位になるため、2つ、3つ、4つ、5つ及び6つの炭素を含むことが意図される。例として、1μM、3μM及びその間の任意の有効桁数の全て(例えば、1.255μM、2.1μM、2.9999μMなど)を含むことが意図される「1~3μM(マイクロモル)」という範囲と比較されたい。
【0064】
本明細書で使用される「約」という用語は、この用語が修飾する数値がこのような値を誤差の範囲内の変数として示すものとすることが意図される。データのチャート又は表で与えられる平均値に対する標準偏差などの誤差の範囲が記載されていない場合、「約」という用語は、記載される値を包含し得る範囲を意味し、且つ有効数字を考慮して、その数字への切り上げ又は切り捨てによって含まれ得る範囲も意味すると理解されるべきである。
【0065】
本明細書で使用される「アシル」という用語は、単独又は組み合わせで、アルケニル、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、複素環又は任意の他の部分に結合したカルボニルを指し、カルボニルに結合される原子は炭素である。「アセチル」基は、-C(O)CH基を指す。「アルキルカルボニル」又は「アルカノイル」基は、カルボニル基を介して親分子部分に結合したアルキル基を指す。このような基の例としては、メチルカルボニル及びエチルカルボニルが挙げられる。アシル基の例としては、ホルミル、アルカノイル及びアロイルが挙げられる。
【0066】
本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、単独又は組み合わせで、1つ又は複数の二重結合を有し、且つ2~20個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖炭化水素ラジカルを指す。特定の実施形態では、アルケニルは、2~6つの炭素原子を含み得る。「アルケニレン」という用語は、エテニレン[(-CH=CH-),(-C::C-)]などの、2つ以上の位置で結合される炭素-炭素二重結合系を指す。適切なアルケニルラジカルの例としては、エテニル、プロペニル、2-メチルプロペニル、1,4-ブタジエニルなどが挙げられる。他に規定されない限り、「アルケニル」という用語は、「アルケニレン」基を含み得る。
【0067】
本明細書で使用される「アルコキシ」という用語は、単独又は組み合わせで、アルキルエーテルラジカルを指し、ここで、アルキルという用語は以下に定義される通りである。適切なアルキルエーテルラジカルの例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、iso-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシなどが挙げられる。
【0068】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、単独又は組み合わせで、1~20個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖アルキルラジカルを指す。特定の実施形態では、アルキルは、1~10個の炭素原子を含み得る。さらなる実施形態では、アルキルは、1~8つの炭素原子を含み得る。アルキル基は、任意に、以下に定義されるように置換され得る。アルキルラジカルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、iso-アミル、ヘキシル、オクチル、ノニルなどが挙げられる。本明細書で使用される「アルキレン」という用語は、単独又は組み合わせで、メチレン(-CH-)などの、2つ以上の位置で結合される直鎖又は分枝鎖飽和炭化水素から誘導される飽和脂肪族基を指す。他に規定されない限り、「アルキル」という用語は、「アルキレン」基を含み得る。
【0069】
本明細書で使用される「アルキルアミノ」という用語は、単独又は組み合わせで、アミノ基を介して親分子部分に結合されたアルキル基を指す。適切なアルキルアミノ基は、モノ-又はジアルキル化形成基、例えばN-メチルアミノ、N-エチルアミノ、N,N-ジメチルアミノ、N,N-エチルメチルアミノなどであり得る。
【0070】
本明細書で使用される「アルキリデン」という用語は、単独又は組み合わせで、炭素-炭素二重結合の1つの炭素原子が、アルケニル基が結合する部分に属するアルケニル基を指す。
【0071】
本明細書で使用される「アルキルチオ」という用語は、単独又は組み合わせで、アルキルチオエーテル(R-S-)ラジカルを指し、ここで、アルキルという用語は上記の通りであり、硫黄は単一又は二重に酸化され得る。適切なアルキルチオエーテルラジカルの例としては、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、イソプロピルチオ、n-ブチルチオ、iso-ブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、メタンスルホニル、エタンスルフィニルなどが挙げられる。
【0072】
本明細書で使用される「アルキニル」という用語は、単独又は組み合わせで、1つ又は複数の三重結合を有し、且つ2~20個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖炭化水素ラジカルを指す。特定の実施形態では、アルキニルは、2~6つの炭素原子を含む。さらなる実施形態では、アルキニルは、2~4つの炭素原子を含む。「アルキニレン」という用語は、エチニレン(-C:::C-、-C≡C-)などの、2つの位置で結合される炭素-炭素三重結合を指す。アルキニルラジカルの例としては、エチニル、プロピニル、ヒドロキシプロピニル、ブチン-1-イル、ブチン-2-イル、ペンチン-1-イル、3-メチルブチン-1-イル、ヘキシン-2-イルなどが挙げられる。他に規定されない限り、「アルキニル」という用語は、「アルキニレン」基を含み得る。
【0073】
本明細書で使用される「アミド」及び「カルバモイル」という用語は、単独又は組み合わせで、カルボニル基を介して親分子部分に結合された、以下に記載されるようなアミノ基(又はその逆も同様)を指す。本明細書で使用される「C-アミド」という用語は、単独又は組み合わせで、-C(O)N(RR’)基を指し、R及びR’は、本明細書中で定義される通りであるか、又は特に列挙された指定の「R」基によって定義される通りである。本明細書で使用される「N-アミド」という用語は、単独又は組み合わせで、RC(O)N(R’)-基を指し、R及びR’は、本明細書中で定義される通りであるか、又は特に列挙された指定の「R」基によって定義される通りである。本明細書で使用される「アシルアミノ」という用語は、単独又は組み合わせで、アミノ基を介して親部分に結合したアシル基を包含する。「アシルアミノ」基の一例は、アセチルアミノ(CHC(O)NH-)である。
【0074】
本明細書で使用される「アミノ」という用語は、単独又は組み合わせで、-NRR’を指し、ここで、R及びR’は、水素、アルキル、アシル、ヘテロアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール及びヘテロシクロアルキルから独立して選択され、それらのいずれも、任意に、それ自体が置換され得る。さらに、R及びR’は結合して、ヘテロシクロアルキルを形成し得、そのいずれかは任意に置換され得る。
【0075】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、単独又は組み合わせで、1つ、2つ又は3つの環を含有する炭素環式芳香族系を意味し、ここで、このような多環式環系は縮合される。「アリール」という用語は、フェニル、ナフチル、アントラセニル及びフェナントリルなどの芳香族基を包含する。
【0076】
本明細書で使用される「アリールアルケニル」又は「アラルケニル」という用語は、単独又は組み合わせで、アルケニル基を介して親分子部分に結合されたアリール基を指す。
【0077】
本明細書で使用される「アリールアルコキシ」又は「アラルコキシ」という用語は、単独又は組み合わせで、アルコキシ基を介して親分子部分に結合されたアリール基を指す。
【0078】
本明細書で使用される「アリールアルキル」又は「アラルキル」という用語は、単独又は組み合わせで、アルキル基を介して親分子部分に結合されたアリール基を指す。
【0079】
本明細書で使用される「アリールアルキニル」又は「アラルキニル」という用語は、単独又は組み合わせで、アルキニル基を介して親分子部分に結合されたアリール基を指す。
【0080】
本明細書で使用される「アリールアルカノイル」又は「アラルカノイル」又は「アロイル」という用語は、単独又は組み合わせで、ベンゾイル、ナフトイル、フェニルアセチル、3-フェニルプロピオニル(ヒドロシンナモイル)、4-フェニルブチリル、(2-ナフチル)アセチル、4-クロロヒドロシンナモイルなどのアリール置換アルカンカルボン酸から誘導されるアシルラジカルを指す。
【0081】
本明細書で使用されるアリールオキシという用語は、単独又は組み合わせで、オキシを介して親分子部分に結合されたアリール基を指す。
【0082】
本明細書で使用される「ベンゾ」及び「ベンズ」という用語は、単独又は組み合わせで、ベンゼンから誘導される二価のラジカルC=を指す。例としては、ベンゾチオフェン及びベンゾイミダゾールが挙げられる。
【0083】
本明細書で使用される「カルバマート」という用語は、単独又は組み合わせで、窒素又は酸末端のいずれかから親分子部分に結合され得るカルバミン酸のエステル(-NHCOO-)を指し、本明細書中で定義されるように任意に置換され得る。
【0084】
本明細書で使用される「O-カルバミル」という用語は、単独又は組み合わせで、-OC(O)NRR’基を指し、R及びR’は本明細書中で定義される通りである。
【0085】
本明細書で使用される「N-カルバミル」という用語は、単独又は組み合わせで、ROC(O)NR’-基を指し、R及びR’は本明細書中で定義される通りである。
【0086】
本明細書で使用される「カルボニル」という用語は、単独の場合にはホルミル[-C(O)H]を含み、組み合わせられる場合には-C(O)-基である。
【0087】
本明細書で使用される「カルボキシル」又は「カルボキシ」という用語は、-C(O)OH又は対応する「カルボキシラート」アニオン(カルボン酸塩における場合など)を指す。「O-カルボキシ」基はRC(O)O-基を指し、ここでRは、本明細書中で定義される通りである。「C-カルボキシ」基は-C(O)OR基を指し、ここでRは、本明細書中で定義される通りである。
【0088】
本明細書で使用される「シアノ」という用語は、単独又は組み合わせで、-CNを指す。
【0089】
本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、単独又は組み合わせで、飽和又は部分飽和の単環式、二環式又は三環式アルキル基を指し、ここで、各環状部分は3~12個の炭素原子環員を含有し、任意に、本明細書中で定義されるように任意に置換されたベンゾ縮合環系であり得る。特定の実施形態では、シクロアルキルは、5~7つの炭素原子を含み得る。このようなシクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、オクタヒドロナフチル、2,3-ジヒドロ-1H-インデニル、アダマンチルなどが挙げられる。本明細書で使用される「二環式環系」及び「三環式環系」は、デカヒドロナフタレン、オクタヒドロナフタレンなどの、両方が融合された環系並びに多環式(多中心)飽和若しくは部分飽和タイプを含むことが意図される。後者のタイプの異性体の例として、一般に、ビシクロ-[1.1.1]ペンタン、カンファー、アダマンタン及びビシクロ[3.2.1]オクタンが挙げられる。「シクロアルキル」は、本明細書で使用される場合、単独又は組み合わせで、以下に定義する通り、「ビシクロアルキル」、「架橋シクロアルキル」及び「スピロシクロアルキル」を包含する。
【0090】
「ビシクロアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、単独又は組み合わせで、2つの原子の存在を特徴とする環状アルキル系を指し、これらの原子は、「橋頭原子」と呼ばれ、3つの結合経路を介して互いに結合されている。従って、「ビシクロアルキル」は、例として、ノルボルナンとしても知られるビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[2.2.0]ヘキサン及びビシクロ[3.3.0]オクタンを包含する。
【0091】
「架橋シクロアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、単独又は組み合わせで、橋頭原子間の結合経路の3つ全てが少なくとも1つの原子を含有するビシクロアルキル系を指す。従って、「架橋シクロアルキル」は、例として、ノルボルナンとしても知られるビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタンを包括する。従って、「架橋シクロアルキル」は、ビシクロ[2.2.0]ヘキサン又はビシクロ[3.3.0]オクタンを包含しない。
【0092】
本明細書で使用される「エステル」という用語は、単独又は組み合わせで、炭素原子で結合される2つの部分を架橋するカルボキシ基を指す。
【0093】
本明細書で使用される「エーテル」という用語は、単独又は組み合わせで、炭素原子で結合される2つの部分を架橋するオキシ基を指す。
【0094】
本明細書で使用される「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、単独又は組み合わせで、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0095】
本明細書で使用される「ハロアルコキシ」という用語は、単独又は組み合わせで、酸素原子を介して親分子部分に結合されたハロアルキル基を指す。
【0096】
本明細書で使用される「ハロアルキル」という用語は、単独又は組み合わせで、1つ又は複数の水素がハロゲンによって置換された上記で定義されるような意味を有するアルキルラジカルを指す。特に、モノハロアルキル、ジハロアルキル及びポリハロアルキルラジカルが包含される。一例として、モノハロアルキルラジカルは、ラジカル内にヨード、ブロモ、クロロ又はフルオロ原子を有し得る。ジハロ及びポリハロアルキルラジカルは、2つ以上の同じハロ原子又は異なるハロラジカルの組み合わせを有し得る。ハロアルキルラジカルの例としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ジフルオロクロロメチル、ジクロロフルオロメチル、ジフルオロエチル、ジフルオロプロピル、ジクロロエチル及びジクロロプロピルが挙げられる。「ハロアルキレン」は、2つ以上の位置で結合されるハロアルキル基を指す。例としては、フルオロメチレン(-CFH-)、ジフルオロメチレン(-CF-)、クロロメチレン(-CHCl-)などが挙げられる。
【0097】
本明細書で使用される「ヘテロアルキル」という用語は、単独又は組み合わせで、完全飽和であるか又は1~3度の不飽和を含有し、規定の数の炭素原子と、N、O及びSから選択される1~3つのヘテロ原子とからなる、安定した直鎖、分枝鎖又はこれらの組み合わせを指し、ここで、N及びS原子は任意に酸化され得るか、又はNヘテロ原子は任意に四級化され得る。ヘテロ原子は、ヘテロアルキル基の任意の内部位置に配置され得る。例えば、-CH-NH-OCHなど、最大2つのヘテロ原子が連続し得る。
【0098】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、単独又は組み合わせで、3~15員不飽和ヘテロ単環式環又は縮合単環式、二環式若しくは三環式環系を指し、ここで、縮合環の少なくとも1つは、N、O及びSから選択される少なくとも1つの原子を含有する芳香族である。特定の実施形態では、ヘテロアリールは、環員として1~4つのヘテロ原子を含み得る。さらなる実施形態では、ヘテロアリールは、環員として1~2つのヘテロ原子を含み得る。特定の実施形態では、ヘテロアリールは、5~7つの原子を含み得る。また、この用語は、複素環式環がアリール環と縮合されるか、ヘテロアリール環が他のヘテロアリール環と縮合されるか、ヘテロアリール環がヘテロシクロアルキル環と縮合されるか、又はヘテロアリール環がシクロアルキル環と縮合された縮合多環式基も包含する。ヘテロアリール基の例としては、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル、ピラニル、フリル、チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンゾイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾピラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、クロモニル、クマリニル、ベンゾピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾロピリダジニル、テトラヒドロイソキノリニル、チエノピリジニル、フロピリジニル、ピロロピリジニルなどが挙げられる。例示的な三環式複素環基としては、カルバゾリル、ベンジドリル、フェナントロリニル、ジベンゾフラニル、アクリジニル、フェナントリジニル、キサンテニルなどが挙げられる。
【0099】
本明細書で使用される「ヘテロシクロアルキル」及び置き換え可能に「複素環」という用語は、単独又は組み合わせで、それぞれ環員として少なくとも1つのヘテロ原子を含む飽和、部分不飽和又は完全不飽和(しかし、非芳香族)単環式、二環式若しくは三環式基を指し、ここで、ヘテロ原子は、窒素、酸素及び硫黄から独立して選択され得る。特定の実施形態では、ヘテロシクロアルキルは、環員として1~4つのヘテロ原子を含む。別の実施形態では、ヘテロシクロアルキルは、環員として1~2つのヘテロ原子を含む。特定の実施形態では、ヘテロシクロアルキルは、各環に3~8つの環員を含む。別の実施形態では、ヘテロシクロアルキルは、各環に3~7つの環員を含む。またさらなる実施形態では、ヘテロシクロアルキルは、各環内に5~6つの環員を含み得る。「ヘテロシクロアルキル」及び「複素環」は、スルホン、スルホキシド、スルホキシイミン、スルフィミド、第3級窒素環員のN-オキシド並びに炭素環式縮合及びベンゾ縮合環系を含むことが意図され、さらに、両方の用語とも、本明細書中で定義されるようなアリール基又は付加的な複素環基に複素環が縮合された系も含む。複素環基の例としては、アジリジニル、アゼチジニル、1,3-ベンゾジオキソリル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロイソキノリニル、ジヒドロシンノリニル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロ[1,3]オキサゾロ[4,5-b]ピリジニル、ベンゾチアゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロピリジニル、1,3-ジオキサニル、1,4-ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、イソインドリニル、モルホリニル、ピペラジニル、ピロリジニル、テトラヒドロピリジニル、ピペリジニル、チオモルホリニルなどが挙げられる。特に禁止されない限り、複素環基は、任意に置換され得る。「ヘテロシクロアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、単独又は組み合わせで、以下に定義する通り、「ヘテロビシクロアルキル」及び「架橋ヘテロシクロアルキル」を包含することが理解される。
【0100】
「ヘテロビシクロアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、単独又は組み合わせで、2つの原子の存在を特徴とする複素環式アルキル系を指し、これらの原子は、「橋頭原子」と呼ばれ、3つの結合経路を介して互いに結合されている。従って、「ビシクロアルキル」は、例として、ノルボルナンとしても知られるビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[2.2.0]ヘキサン及びビシクロ[3.3.0]オクタンを包含する。
【0101】
「架橋ヘテロシクロアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、単独又は組み合わせで、橋頭原子間の結合経路の3つ全てが少なくとも1つの原子を含有するヘテロビシクロアルキル系を指す。従って、「架橋ヘテロシクロアルキル」は、例として、DABCOとしても知られる1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン及び7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタンを包含する。
【0102】
二環系は、当業者により認識される用語を用いて表すことができる。二環式化合物は、2つの環系の融合物として命名することができる。例えば、「ベンゾベンゼン」は、ナフタレンを指すことが理解されるであろう。具体的に限定されない限り、あらゆる環融合異性体がこの用語に包含され得る。例えば、「ベンゾナフタレン」は、アントラセン及びフェナントレンの両方を包含することが理解される。別の例として、ピロロピリジンは、ピリジンに融合するピロールを有するあらゆる化合物を包含することが理解され、従って4-アザインドール、5-アザインドール、6-アザインドール及び7-アザインドールを包含する。
【0103】
「ヘテロビシクロアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、単独又は組み合わせで、環員として少なくとも1つのヘテロ原子を含有する飽和、部分不飽和又は完全不飽和(しかし、非芳香族)の環状アルキル系を指し、これは、2つの原子の存在を特徴とし、これらの原子は、「橋頭原子」と呼ばれ、3つの結合経路を介して互いに結合されている。従って、「ヘテロビシクロアルキル」は、例として、7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、「DABCO」とも呼ばれる1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1-アザビシクロ[2.2.0]ヘキサン及び3-アザビシクロ[3.3.0]オクタンを包含する。
【0104】
「架橋ヘテロシクロアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、単独又は組み合わせで、橋頭原子間の結合経路の3つ全てが少なくとも1つの原子を含有するヘテロビシクロアルキル系を指す。従って、「架橋ヘテロシクロアルキル」は、例として、7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、「DABCO」とも呼ばれる1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを包含するが、1-アザビシクロ[2.2.0]ヘキサン又は3-アザビシクロ[3.3.0]オクタンを含まない。
【0105】
本明細書で使用される「ヒドラジニル」という用語は、単独又は組み合わせで、単一結合により結合された2つのアミノ基、すなわち-N-N-を指す。
【0106】
本明細書で使用される「ヒドロキシ」という用語は、単独又は組み合わせで、-OHを指す。
【0107】
本明細書で使用される「ヒドロキシアルキル」という用語は、単独又は組み合わせで、アルキル基を介して親分子部分に結合されたヒドロキシ基を指す。ヒドロキシアルキル基の例として、ヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチル及び2-ヒドロキシ-2-プロピルが挙げられる。
【0108】
本明細書で使用される「イミノ」という用語は、単独又は組み合わせで、=N-を指す。
【0109】
本明細書で使用される「イミノヒドロキシ」という用語は、単独又は組み合わせで、=N(OH)及び=N-O-を指す。
【0110】
「主鎖中で」という語句は、本明細書に開示される式のいずれか1つの化合物に対する基の結合点から始まる最も長い近接又は隣接する炭素原子の鎖を指す。
【0111】
「イソシアナト」という用語は、-NCO基を指す。
【0112】
「イソチオシアナト」という用語は、-NCS基を指す。
【0113】
「原子の直鎖」という語句は、炭素、窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される原子の最も長い直鎖を指す。
【0114】
本明細書で使用される「低級」という用語は、単独又は組み合わせで、他で特に定義されない場合には1~6つの炭素原子(すなわちC~Cアルキル)を含有することを意味する。
【0115】
本明細書で使用される「低級アリール」という用語は、単独又は組み合わせで、フェニル又はナフチルを意味し、これらは、いずれも規定されるように任意に置換され得る。
【0116】
本明細書で使用される「低級ヘテロアリール」という用語は、単独又は組み合わせで、1)5つ又は6つの環員を含み、そのうちの1~4つの環員がN、O及びSから選択されるヘテロ原子であり得る単環式ヘテロアリール、又は2)縮合環のいずれかが5つ又は6つの環員を含み、これらの間に、N、O及びSから選択される1~4つのヘテロ原子を含む二環式ヘテロアリールのいずれかを意味する。
【0117】
本明細書で使用される「低級シクロアルキル」という用語は、単独又は組み合わせで、3~6つの環員を有する単環式シクロアルキル(すなわちC~Cシクロアルキル)を意味する。低級シクロアルキルは不飽和であり得る。低級シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0118】
本明細書で使用される「低級ヘテロシクロアルキル」という用語は、単独又は組み合わせで、3~6つの環員を有し、そのうちの1~4つがN、O及びSから選択されるヘテロ原子であり得る単環式ヘテロシクロアルキル(すなわちC~Cヘテロシクロアルキル)を意味する。低級ヘテロシクロアルキルの例としては、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル及びモルホリニルが挙げられる。低級ヘテロシクロアルキルは不飽和であり得る。
【0119】
本明細書で使用される「低級アミノ」という用語は、単独又は組み合わせで、-NRR’を指し、ここで、R及びR’は、水素及び低級アルキルであって、それらのいずれかは、任意に置換され得る、水素及び低級アルキルから独立して選択される。
【0120】
本明細書で使用される「メルカプチル」という用語は、単独又は組み合わせで、RS-基を指し、ここで、Rは本明細書において定義される通りである。
【0121】
本明細書で使用される「ニトロ」という用語は、単独又は組み合わせで、-NOを指す。
【0122】
本明細書で使用される「オキシ」又は「オキサ」という用語は、単独又は組み合わせで、-O-を指す。
【0123】
本明細書で使用される「オキソ」という用語は、単独又は組み合わせで、=Oを指す。
【0124】
「ペルハロアルコキシ」という用語は、全ての水素原子がハロゲン原子によって置換されたアルコキシ基を指す。
【0125】
本明細書で使用される「ペルハロアルキル」という用語は、単独又は組み合わせで、全ての水素原子がハロゲン原子によって置換されたアルキル基を指す。
【0126】
「スピロシクロアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、単独又は組み合わせで、両方の環に共通の単一原子を有する2つの環を有するアルキル基を指す。スピロシクロアルキル系の例として、スピロ[3.3]ヘプタン及びスピロ[4.4]ノナンが挙げられる。
【0127】
「スピロヘテロシクロアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、単独又は組み合わせで、両方の環に共通の単一原子を有する2つの環を有するヘテロアルキル基を指す。スピロシクロアルキル系の例として、2-アザスピロ[3.3]ヘプタン及び3-アザスピロ[4.4]ノナンが挙げられる。
【0128】
本明細書で使用される「スルホナート」、「スルホン酸」及び「スルホニック」という用語は、単独又は組み合わせで、-SOH基及びそのアニオン(スルホン酸が塩の形態で使用される場合)を指す。
【0129】
本明細書で使用される「スルファニル」という用語は、単独又は組み合わせで、-S-を指す。
【0130】
本明細書で使用される「スルフィニル」という用語は、単独又は組み合わせで、-S(O)-を指す。
【0131】
本明細書で使用される「スルホニル」という用語は、単独又は組み合わせで、-S(O)-を指す。
【0132】
「N-スルホンアミド」という用語は、RS(=O)NR’-基を指し、ここで、R及びR’は、本明細書に定義する通りである。
【0133】
「S-スルホンアミド」という用語は、-S(=O)NRR’基を指し、ここで、R及びR’は、本明細書に定義する通りである。
【0134】
「スルフィミド」という用語は、RS(=NR’)R’’基を指し、ここで、R、R’及びR’’は、本明細書に定義する通りである。
【0135】
「スルホキシイミン」という用語は、RS(=O)(=NR’)R’’基を指し、ここで、R、R’及びR’’は、本明細書に定義する通りである。
【0136】
本明細書で使用される「チア」及び「チオ」という用語は、単独又は組み合わせで、-S-基又は酸素が硫黄で置換されたエーテルを指す。チオ基の酸化誘導体、すなわちスルフィニル及びスルホニルは、チア及びチオの定義に含まれる。
【0137】
本明細書で使用される「チオール」という用語は、単独又は組み合わせで、-SH基を指す。
【0138】
本明細書で使用される「チオカルボニル」という用語は、単独の場合にはチオホルミル-C(S)Hを含み、組み合わせられる場合には-C(S)-基である。
【0139】
「N-チオカルバミル」という用語はROC(S)NR’-基を指し、R及びR’は本明細書中で定義される通りである。
【0140】
「O-チオカルバミル」という用語は-OC(S)NRR’基を指し、R及びR’は本明細書中で定義される通りである。
【0141】
「チオシアナト」という用語は-CNS基を指す。
【0142】
「トリハロメタンスルホンアミド」という用語は、XCS(O)NR-基を指し、Xはハロゲンであり、Rは本明細書中で定義される通りである。
【0143】
「トリハロメタンスルホニル」という用語は、XCS(O)-基を指し、ここで、Xはハロゲンである。
【0144】
「トリハロメトキシ」という用語は、XCO-基を指し、ここで、Xはハロゲンである。
【0145】
「三置換シリル」という用語は、本明細書で使用される場合、単独又は組み合わせで、置換アミノの定義において、その3つの自由原子価が、本明細書に列記される基で置換されたシリコーン基を指す。例として、トリメチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。
【0146】
本明細書中の任意の定義は、任意の他の定義と組み合わせて使用されて、複合構造基を記述することができる。慣例により、任意のこのような定義の後方要素は、親部分に結合される要素である。例えば、複合基アルキルアミドは、アミド基を介して親分子に結合されたアルキル基を表し、アルコキシアルキルという用語は、アルキル基を介して親分子に結合されたアルコキシ基を表し得る。
【0147】
基が「無である」と定義される場合、この基が存在しないことが意味される。
【0148】
「任意に置換された」という用語は、先行する基が置換されていても、非置換であり得ることを意味する。置換される場合、「任意に置換された」基の置換基は、以下の基又は特定の指定された基のセットから独立して選択される1つ又は複数の置換基を単独又は組み合わせで含み得るが、これらに限定されない:低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルカノイル、低級ヘテロアルキル、低級ヘテロシクロアルキル、低級ハロアルキル、低級ハロアルケニル、低級ハロアルキニル、低級ペルハロアルキル、低級ペルハロアルコキシ、低級シクロアルキル、フェニル、アリール、アリールオキシ、低級アルコキシ、低級ハロアルコキシ、オキソ、低級アシルオキシ、カルボニル、カルボキシル、低級アルキルカルボニル、低級カルボキシエステル、低級カルボキサミド、シアノ、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、アリールアミノ、アミド、ニトロ、チオール、低級アルキルチオ、低級ハロアルキルチオ、低級ペルハロアルキルチオ、アリールチオ、スルホナート、スルホン酸、三置換シリル、N、SH、SCH、C(O)CH、COCH、COH、ピリジニル、チオフェン、フラニル、低級カルバマート及び低級尿素。構造的に実現可能である場合、2つの置換基が一緒に連結されて、0~3つのヘテロ原子からなる縮合された5員、6員又は7員炭素環式環又は複素環式環を形成し得、例えばメチレンジオキシ又はエチレンジオキシが形成される。任意に置換された基は、非置換であるか(例えば、-CHCH)、完全に置換されるか(例えば、-CFCF)、一置換されるか(例えば、-CHCHF)又は完全置換と一置換との間のいずれかのレベルで置換され得る(例えば、-CHCF)。置換についての限定なしに置換基が記載される場合、置換形態及び非置換形態の両方が包含される。置換基が「置換された」と限定される場合、置換形態が特に意図される。さらに、必要に応じて、ある部分に対して異なる任意の置換基セットが定義され得、これらの場合、任意の置換は、多くの場合、「で任意に置換された」という語句の直後に定義される通りであろう。
【0149】
単独で、且つ番号の指定なしに現れるR若しくはR’という用語又はR’’という用語は、他に定義されない限り、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール及びヘテロシクロアルキルから選択される部分を指し、これらは、いずれも任意に置換される。このようなR、R’及びR’’基は、本明細書中で定義されるように任意に置換されると理解されるべきである。R基が番号の指定を有するかどうかにかかわらず、R、R’及びR(ここで、n=(1、2、3、...n)である)を含む全てのR基、全ての置換基並びに全ての用語は、群からの選択に関して他の全てから独立していると理解されるべきである。任意の変数、置換基又は用語(例えば、アリール、複素環、Rなど)が式又は一般構造中に2回以上出現すれば、各出現におけるその定義は、他の全ての出現における定義から独立している。当業者は、特定の基が親分子に結合され得ること又は記載されるようないずれかの端部からの元素鎖中の位置を占有し得ることをさらに認識するであろう。例えば、-C(O)N(R)-などの非対称基は、炭素又は窒素のいずれかにおいて親部分に結合され得る。
【0150】
「エナンチオマー」という用語は、本明細書で使用される場合、単独又は組み合わせで、各立体中心上の絶対立体化学が異なる化合物の対の一方を指す。従って、化合物の対の各エナンチオマーは、他方のエナンチオマーの鏡像である。
【0151】
「エピマー」という用語は、本明細書で使用される場合、単独又は組み合わせで、単一の立体中心上の絶対立体化学が異なる化合物の対の一方を指す。
【0152】
「ジアステレオマー」という用語は、本明細書で使用される場合、単独又は組み合わせで、同一の立体化学を有さず、互いのエナンチオマーでもない化合物の対の一方を指す。
【0153】
本明細書に開示される化合物中には不斉中心が存在する。これらの中心は、キラル炭素原子の周りの置換基の立体配置に応じて記号「R」又は「S」で表される。本発明は、ジアステレオマー、エナンチオマー及びエピマー形態並びにD-異性体及びL-異性体並びにこれらの混合物を含む全ての立体化学的異性体を包含する。化合物の個々の立体異性体は、キラル中心を含有する市販の出発材料から合成により調製することができるか、又はエナンチオマー生成物の混合物の調製に続いて、ジアステレオマー混合物への変換などの分離を行い、その後、分離又は再結晶、クロマトグラフィ技術、キラルクロマトグラフィカラムでのエナンチオマーの直接分離又は当技術分野で知られている任意の他の適切な方法を行うことによって調製することができる。特定の立体化学の出発化合物は、市販されているか、又は当技術分野で知られている技術によって作製及び分割することができる。さらに、本明細書に開示される化合物は、幾何異性体として存在し得る。本開示は、全てのシス、トランス、シン、アンチ、entgegen(反対側)(E)及びzusammen(同じ側)(Z)異性体並びにこれらの適切な混合物を含む。さらに、化合物は互変異性体として存在することができ;あらゆる互変異性体が本開示によって提供される。加えて、本明細書に開示される化合物は、非溶媒和形態並びに水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒との溶媒和形態で存在することができる。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と同等であると考えられる。
【0154】
本明細書に開示される化合物のいくつかは、2つのジアステレオマーの混合物として存在することができる。一部の実施形態では、2つのジアステレオマーは、等量で存在する。一部の実施形態では、化合物は、60%以上の主要ジアステレオマーを含有する。一部の実施形態では、化合物は、70%以上の主要ジアステレオマーを含有する。一部の実施形態では、化合物は、80%以上の主要ジアステレオマーを含有する。一部の実施形態では、化合物は、90%以上の主要ジアステレオマーを含有する。一部の実施形態では、化合物は、95%以上の主要ジアステレオマーを含有する。一部の実施形態では、化合物は、98%以上の主要ジアステレオマーを含有する。
【0155】
「結合」という用語は、2つの原子間又は結合によって結合された原子がより大きい部分構造の一部である場合には2つの部分間の共有結合を指す。結合は、他に規定されない限り、単結合、二重結合又は三重結合であり得る。分子の図における2つの原子間の破線は、その位置に付加的な結合が存在してもしなくてもよいことを示す。
【0156】
本明細書で使用される「疾患」という用語は「障害」、「症候群」及び「状態」(病状などの場合)という用語と通常同義であることが意図され、且つ互換的に使用され、ここで、これらは全て、正常な機能を損なうヒト又は動物の身体又はその器官の1つの異常な状態を示し、通常、際立った徴候及び症状によって顕在化され、ヒト又は動物に寿命又は生活の質の低下を引き起こす。
【0157】
「併用療法」という用語は、本開示において記載される治療状態又は障害を治療するために2つ以上の治療薬を投与することを意味する。このような投与は、実質的に同時的な(例えば、固定された比率の活性成分を有する単一のカプセル又は各活性成分用の複数の別々のカプセルにおける)、これらの治療薬の同時投与を包含する。さらに、このような投与は、各タイプの治療薬の連続的な使用も包含する。いずれの場合も、治療計画は、本明細書に記載される状態又は障害の治療において、薬物併用の有益な効果を提供するであろう。
【0158】
「ATRキナーゼ阻害剤」は、本明細書において、本明細書に概略的に記載されるATR/ATRIP生化学アッセイ又はATRキナーゼpCHK1細胞アッセイで測定した場合、約100μM以下、より典型的には約50μM以下のATRキナーゼ活性に対してIC50を示す化合物を指すために用いられる。「IC50」は、酵素(例えば、ATRキナーゼ)の活性又は細胞中のセリン345でのCHK1のATR誘導性リン酸化を最大値の50%のレベルまで低減する阻害剤の濃度である。本明細書に開示される特定の化合物は、ATRキナーゼに対する阻害を示すことが見出されている。本明細書に記載のATRキナーゼアッセイで測定した場合、特定の実施形態では、化合物は、約10μM以下のATRキナーゼに対してIC50を示し得る;さらなる実施形態では、化合物は、約2μM以下のATRキナーゼに対してIC50を示し得る;また別の実施形態では、化合物は、約1μM以下のATRキナーゼに対してIC50を示し得る;さらに別の実施形態では、化合物は、約500nM以下のATRキナーゼに対してIC50を示し得る;また別の実施形態では、化合物は、約200nM以下のATRキナーゼに対してIC50を示し得る;また別の実施形態では、化合物は、約100nM以下のATRキナーゼに対してIC50を示し得る。
【0159】
「治療的に有効な」という語句は、疾患又は障害の治療において又は臨床的エンドポイントの達成において使用される活性成分の量を制限することが意図される。
【0160】
「治療的に許容可能」という用語は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応なしに患者の組織と接触させて使用するのに適しており、合理的な利益/リスク比とつり合い、且つその意図される使用に対して効果的である化合物(又は塩、プロドラッグ、互変異性体、両性イオン形態など)を指す。
【0161】
本明細書で使用される場合、患者の「治療」への言及は、予防を含むことが意図される。治療は、本質的に先行的であり得、すなわち疾患の防止を含み得る。疾患の防止は、例えば、病原体による感染の防止の場合など、疾患からの完全な保護を含むことがあるか、又は疾患の進行の防止を含むことがある。例えば、疾患の防止は、任意のレベルの疾患に関連するあらゆる作用の完全な排除を意味するわけではなく、代わりに臨床的に有意なレベル又は検出可能なレベルまで疾患の症状を防止することを意味し得る。また、疾患の防止は、疾患が疾患の後期まで進行するのを防止することも意味し得る。
【0162】
「患者」という用語は、一般に、「対象」という用語と同義であり、ヒトを含む全ての哺乳類が含まれる。患者の例としては、ヒト、雌ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ及びウサギなどの家畜並びにイヌ、ネコ、ウサギ及びウマなどのコンパニオンアニマルが挙げられる。好ましくは、患者はヒトである。
【0163】
「プロドラッグ」という用語は、インビボでより活性化される化合物を指す。本明細書に開示される特定の化合物は、「Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism:Chemistry,Biochemistry,and Enzymology」(Testa,Bernard and Mayer,Joachim M.Wiley-VHCA,Zurich,Switzerland 2003)に記載されるように、プロドラッグとして存在することもできる。本明細書に記載される化合物のプロドラッグはその化合物の構造的に修飾された形態であり、生理的条件下で容易に化学変化を受けてその化合物を提供する。さらに、プロドラッグは、エキソビボ環境において、化学的又は生化学的な方法によって化合物に変換され得る。例えば、プロドラッグは、適切な酵素又は化学試薬と共に経皮パッチリザーバー内に配置されたときに、化合物にゆっくり変換され得る。プロドラッグは、いくつかの状況では、化合物又は親薬物よりも投与するのが容易であり得るため、有用であることが多い。プロドラッグは、例えば、親薬物はそうではないが、経口投与により生体利用可能であり得る。また、プロドラッグは、親薬物と比較して、医薬組成物中で改善された溶解性を有し得る。プロドラッグの加水分解切断又は酸化的活性化に依存するものなどの様々な種類のプロドラッグ誘導体が当技術分野において知られている。プロドラッグの一例(限定はされない)は、エステル(「プロドラッグ」)として投与されるが、その後、活性の実体であるカルボン酸に代謝的に加水分解される化合物であり得る。付加的な例としては、化合物のペプチジル誘導体が挙げられる。
【0164】

本明細書に開示される化合物は、治療的に許容可能な塩として存在することができる。本開示は、酸付加塩を含む塩の形態での上記の化合物を含む。適切な塩としては、有機酸及び無機酸の両方によって形成される塩が挙げられる。このような酸付加塩は、通常、薬学的に許容可能であろう。しかしながら、対象の化合物を調製及び精製するために、薬学的に許容可能でない塩の塩が使用され得る。塩基付加塩も形成され、薬学的に許容可能であり得る。
【0165】
本明細書で使用される「治療的に許容可能な塩」という用語は、水溶性又は油溶性又は分散性であり、本明細書で定義されるように治療的に許容可能である、本明細書に開示される化合物の塩又は両性イオン形態を表す。塩は、化合物の最終の単離及び精製中に又は別途、遊離塩基の形態の適切な化合物を適切な酸と反応させることによって調製され得る。代表的な酸付加塩には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、L-アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ゲンチジン酸塩、グルタル酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸)、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、DL-マンデル酸塩、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ホスホン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ピログルタミン酸塩、コハク酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、L-酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、パラ-トルエンスルホン酸塩(p-トシル酸塩)及びウンデカン酸塩が含まれる。また、本明細書に開示される化合物中の塩基性基は、塩化、臭化及びヨウ化メチル、エチル、プロピル及びブチル;硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチル及びジアミル;塩化、臭化及びヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチル及びステリル;並びに臭化ベンジル及びフェネチルによって四級化することができる。治療的に許容可能な付加塩を形成するために使用可能な酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸などの無機酸と、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸及びクエン酸などの有機酸とが挙げられる。また、塩は、化合物と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属イオンとの配位によって形成することもできる。従って、本開示は、本明細書に開示される化合物のナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウム塩などを企図する。
【0166】
塩基付加塩は、カルボキシ基を、金属カチオンの水酸化物、炭酸塩若しくは重炭酸塩などの適切な塩基と、又はアンモニア又は有機第1級、第2級若しくは第3級アミンと反応させることにより、化合物の最終の単離及び精製中に調製され得る。治療的に許容可能な塩のカチオンには、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びアルミニウム並びにアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N-ジベンジルフェネチルアミン、1-エフェンアミン及びN,N’-ジベンジルエチレンジアミンなどの非毒性第4級アミンカチオンが含まれる。塩基付加塩の形成のために有用な他の代表的な有機アミンには、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン及びピペラジンが含まれる。
【0167】
製剤
本開示の化合物又はその塩をそのままの化学物質として投与することが可能であり得るが、医薬製剤として提供することも可能である。従って、本明細書に開示される特定の化合物の1つ又は複数又はその1つ又は複数の薬学的に許容可能な塩、エステル、プロドラッグ、アミド若しくは溶媒和物を、その1つ又は複数の薬学的に許容可能な担体及び任意に1つ又は複数の他の治療成分と一緒に含む医薬製剤が本明細書において提供される。担体(単数又は複数)は、製剤の他の成分と適合性であり、且つそのレシピエントに対して有害でないという意味において「許容可能」でなければならない。適切な製剤は、選択される投与経路によって決まる。適切であり、且つ当技術分野において理解されるような周知の技術、担体及び賦形剤は、いずれも使用することができる。本明細書に開示される医薬組成物は、当技術分野において知られている任意の方法、例えば従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠作製、糊状化、乳化、カプセル化、封入又は圧縮プロセスによって製造され得る。
【0168】
製剤には、経口、非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、関節内及び髄内を含む)、腹腔内、経粘膜、経皮、直腸及び局所(真皮、頬側、舌下及び眼内を含む)投与に適したものが含まれるが、最も適切な経路は、例えば、レシピエントの状態及び障害に依存し得る。製剤は、都合よく、単位剤形で提供することができ、製薬の技術分野で周知の方法のいずれかによって調製することができる。通常、これらの方法は、本開示の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、エステル、アミド、プロドラッグ又は溶媒和物(「活性成分」)と、1つ又は複数の補助的な成分を構成する担体とを関連させるステップを含む。一般に、製剤は、活性成分と、液体担体又は微粉化した固体担体又はその両方とを均一且つ密接に関連させ、次に必要に応じて生成物を所望の製剤に成形することによって調製される。
【0169】
経口投与に適した本明細書に開示される化合物の製剤は、所定の量の活性成分をそれぞれが含有するカプセル、カシェ剤若しくは錠剤などの個別の単位として;粉末若しくは顆粒として;水性液体若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として;又は水中油液体エマルション若しくは油水中液体エマルションとして提供され得る。また、活性成分は、ボーラス、舐剤又はペーストとして提供され得る。
【0170】
経口的に使用することができる医薬調製物には、錠剤、ゼラチン製の押し込み型カプセル並びにゼラチン及び可塑剤(グリセロール又はソルビトールなど)で製造された密封ソフトカプセルが含まれる。錠剤は、任意に1つ又は複数の補助成分と共に、圧縮又は成形により製造され得る。圧縮錠剤は、結合剤、不活性希釈剤又は潤滑剤、界面活性剤若しくは分散剤と任意に混合された、粉末又は顆粒などの自由に流動する形態の活性成分を適切な機械で圧縮することによって調製され得る。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械で成形することによって製造され得る。錠剤は、任意に、コーティングするか又は割線を付けることができ、且つその中の活性成分の持続又は制御放出を提供するように処方することもできる。経口投与のための全ての製剤は、このような投与に適した投薬量でなければならない。押し込み型カプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤及び/又はタルク若しくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤並びに任意に安定剤と混合して、活性成分を含有することができる。ソフトカプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体中に溶解又は懸濁され得る。さらに、安定剤が添加され得る。糖衣錠コアには適切なコーティングが提供される。この目的のために、濃縮糖溶液を使用することができ、これは、任意に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液並びに適切な有機溶媒又は溶媒混合物を含有し得る。識別のため又は活性化合物用量の種々の組み合わせを特徴付けるために、染料又は顔料を錠剤又は糖衣錠コーティングに添加することができる。
【0171】
化合物は、注射により、例えばボーラス注入又は持続注入により、非経口投与のために処方され得る。注射用製剤は、保存料が添加された単位剤形、例えばアンプル又は複数回投与容器において提供され得る。組成物は、油性又は水性媒体中の懸濁液、溶液又はエマルションのような形態をとることができ、懸濁化剤、安定剤及び/又は分散剤などの製剤化剤を含有することができる。製剤は、単回投与又は複数回投与容器、例えば密封アンプル及びバイアルで提供することができ、使用の直前に無菌液体担体、例えば生理食塩水又は無菌のパイロジェンフリー水の添加のみを必要とする、粉末形態又はフリーズドライ(凍結乾燥した)状態で貯蔵することができる。即時注射溶液及び懸濁液は、上記の種類の無菌粉末、顆粒及び錠剤から調製され得る。
【0172】
非経口投与のための製剤には、酸化防止剤、緩衝剤、静菌薬及び対象とするレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含有し得る活性化合物の水性及び非水性(油性)無菌注射溶液並びに懸濁化剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性無菌懸濁液が含まれる。適切な親油性溶媒又は媒体には、ゴマ油などの脂肪油又はオレイン酸エチル若しくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル又はリポソームが含まれる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランなどの、懸濁液の粘度を増大させる物質を含有し得る。任意に、懸濁液は、適切な安定剤又は化合物の溶解度を増大させて非常に濃縮された溶液の調製を可能にする薬剤も含有し得る。
【0173】
前述の製剤に加えて、化合物は、デポー製剤として処方され得る。このような長時間作用型製剤は、移植(例えば、皮下又は筋肉内)により、又は筋肉内注射により投与され得る。従って、例えば、化合物は、適切な高分子又は疎水性材料(例えば、許容可能な油中のエマルションとして)又はイオン交換樹脂と共に又は難溶性誘導体として、例えば難溶性の塩として処方され得る。
【0174】
頬側又は舌下投与の場合、組成物は、従来の方法で処方される錠剤、ロゼンジ、トローチ又はゲルの形態をとることができる。このような組成物は、スクロース及びアカシア又はトラガカントなどの風味付けされた基剤中に活性成分を含み得る。
【0175】
化合物は、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール又は他のグリセリドなどの従来の坐薬基剤を含有する、坐薬又は停留浣腸などの直腸組成物において処方され得る。
【0176】
本明細書に開示される特定の化合物は、局所的に、すなわち非全身性投与により投与され得る。これには、化合物が血流中にあまり入らないように、本明細書に開示される化合物の上皮又は頬側口腔への外側からの適用並びにこのような化合物の耳、眼及び鼻への滴下が含まれる。対照的に、全身性の投与は、経口、静脈内、腹腔内及び筋肉内投与を指す。
【0177】
局所投与に適した製剤には、ゲル、リニメント、ローション、クリーム、軟膏又はペーストなどの、皮膚を通した炎症部位への浸透に適した液体又は半液体調製物並びに眼、耳又は鼻への投与に適した点滴剤が含まれる。局所投与のための活性成分は、例えば、製剤の0.001%~10%w/w(重量による)を含み得る。特定の実施形態では、活性成分は、10%w/wを含み得る。他の実施形態では、5%w/w未満を含み得る。特定の実施形態では、活性成分は、2%w/w~5%w/wを含み得る。他の実施形態では、製剤の0.1%~1%w/wを含み得る。
【0178】
吸入による投与の場合、化合物は、都合よく、注入器、ネブライザー加圧パック又はエアロゾルスプレーを送達するのに便利な他の手段から送達され得る。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切なガスなどの適切な噴射剤を含み得る。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することにより決定することができる。代わりに、吸入又は注入による投与の場合、本開示に従う化合物は、乾燥粉末組成物、例えば化合物と、ラクトース又はデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物の形態をとることができる。粉末組成物は、単位剤形、例えばカプセル、カートリッジ、ゼラチン又はブリスターパックにおいて提供することができ、吸入器又は注入器を用いて、単位剤形から粉末が投与され得る。
【0179】
好ましい単位剤形は、本明細書中で以下に記載されるような有効用量又はその適切な画分の活性成分を含有するものである。
【0180】
特に上記で挙げた成分に加えて、上記の製剤は、対象の製剤のタイプを考慮して当技術分野で慣習的な他の薬剤を含み得、例えば、経口投与に適したものは、風味剤を含み得る。
【0181】
化合物は、1日当たり0.1~500mg/kgの用量で、経口的に又は注射により投与され得る。成人の用量範囲は、一般に、5mg~2g/日である。個別の単位で提供される錠剤又は他の提示の形態は、このような投薬量又はその複数回で有効である量の1つ又は複数の化合物を都合よく含有することができ、例えば、単位は、5mg~500mg、通常約10mg~200mgを含有する。
【0182】
単一の剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、治療される宿主及び投与モードに応じて異なるであろう。
【0183】
化合物は、種々のモードで、例えば経口的に、局所的に又は注射により投与され得る。患者に投与される化合物の正確な量は、主治医の責任であり得る。任意の患者に対する特定の用量レベルは、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与の時間、投与経路、排出速度、複合薬、治療中の正確な障害及び治療中の徴候又は状態の重症度を含む様々な因子に依存し得る。また、投与経路は、状態及びその重症度に応じて異なり得る。
【0184】
特定の例では、本明細書に記載される化合物(又はその薬学的に許容可能な塩、エステル若しくはプロドラッグ)の少なくとも1つを、別の治療薬と組み合わせて投与することが適切であり得る。ごく一例として、本明細書の化合物の1つを受けるときに患者が経験する副作用の1つが高血圧である場合、降圧薬を最初の治療薬と組み合わせて投与することが適切であり得る。代わりに、ごく一例として、本明細書に記載される化合物の1つの治療有効性は、補助剤の投与によって増強され得る(すなわち、補助剤は、それ自体では、最小の治療利益のみを有し得るが、別の治療薬と組み合わせて、患者に対する全体の治療利益が増強される)。代わりに、ごく一例として、患者が経験する利益は、本明細書に記載される化合物の1つを、同様に治療利益を有する別の治療薬(治療レジメンも含む)と共に投与することにより増大され得る。ごく一例として、本明細書に記載される化合物の1つを投与することを含む糖尿病の治療において、患者に糖尿病のための別の治療薬も提供することにより、治療利益の増大が生じ得る。いずれの場合も、治療される疾患、障害又は状態にかかわらず、患者が経験する全体の利益は、単に2つの治療薬の相加利益であることがあるか、又は患者は相乗利益を経験することもある。
【0185】
組み合わせ及び併用療法
本開示の化合物は、単独で又は他の薬学的に活性の化合物と組み合わせて、前述したものなどの病状を治療するために使用することができる。本開示の化合物及び他の薬学的に活性の化合物は、同時に(同じ投与形態若しくは個別の投与形態のいずれかで)又は順次投与することができる。従って、一実施形態では、本開示は、治療有効量の1つ又は複数の本開示の化合物及び1つ又は複数の薬学的に活性の追加化合物を対象に投与することにより、病状を治療する方法を含む。
【0186】
別の実施形態では、本開示の1つ又は複数の化合物と、1つ又は複数の薬学的に活性の追加化合物と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物が提供される。
【0187】
別の実施形態では、1つ又は複数の薬学的に活性の追加化合物は、抗癌薬、増殖抑制薬及び抗炎症薬から選択される。
【0188】
本明細書に記載のATR阻害剤組成物は、治療しようとする病状に関するそれらの治療薬価について選択される他の治療薬と組み合わせても任意に使用される。一般に、本明細書に記載の化合物と、併用療法が使用される実施形態では、他の薬剤は、同じ医薬組成物で投与する必要はなく、物理的及び化学的特性が異なるために、任意に、別の経路により投与される。初期投与を、一般に、確立されたプロトコルに従って実施した後に、観察される効果に基づいて、用量、投与の様式及び投与時間を変更する。特定の例では、本明細書に記載のように、別の治療薬と組み合わせて、ATR阻害剤化合物を投与するのが適切である。あくまでも例として、ATR阻害剤の治療有効性は、やはり治療利益を有する別の治療薬の投与(これも治療レジメンを含む)によって増大される。治療対象の疾患、障害若しくは病状とは関係なく、患者が被る総合的利益は、単純に2つの治療薬の相加であるか、又は患者は、増大した(すなわち相乗的)利益を被る。代わりに、本明細書に開示される化合物が副作用を有する場合、その副作用を軽減する薬剤を投与するのが適切である場合もあるか;又はアジュバントの投与により、本明細書に記載される化合物の治療有効性を増大させることも可能である。
【0189】
治療有効量は、薬剤をいつ併用療法に使用するかに応じて変動する。併用療法レジメンに使用するための薬物及び他の薬剤の治療有効用量を実験により決定する方法は、立証された方法である。併用療法は、さらに、患者の臨床管理を補助するために、様々な時間で開始及び停止する定期的治療も含む。いずれの場合にも、複数の治療薬(そのうちの1つは、本明細書に記載のATR阻害剤である)を任意の順序で又は同時に投与することができる。同時の場合、複数の治療薬は、任意に、単一の、統一された形態又は複数の形態(あくまでも例として、単一丸薬若しくは2つの個別の丸薬のいずれかとして)で提供される。
【0190】
別の実施形態では、ATR阻害剤は、患者に追加利益をもたらす措置と任意に組み合わせて使用される。ATR阻害剤及び任意の追加治療薬は、疾患若しくは病状の発生の前、最中若しくは後に任意に投与され、ATR阻害剤を含む組成物の投与のタイミングは、一部の実施形態において変動する。従って、例えば、ATR阻害剤は、予防薬として使用され、疾患又は病状の発生を予防するために、病状又は疾患を発現する傾向がある対象に連続的に投与される。ATR阻害剤及び組成物は、任意に、症状の発症中又は発症後可能な限り早期に対象に投与される。本発明の実施形態を本明細書に示し、説明してきたが、当業者には、そうした実施形態は、例として提供されるに過ぎないことは明らかであろう。当業者は、本発明から逸脱することなく、多数の変形形態、変更形態及び代替形態を想起するであろう。本発明の一部の実施形態では、本発明を実施する際、本明細書に記載の実施形態に対して様々な代替物が使用される。
【0191】
ATR阻害剤は、抗癌剤と組み合わせて使用することができ、こうした抗癌剤として、限定はされないが、下記のクラス:アルキル化剤、抗代謝剤、植物アルカロイド及びテルペノイド類、トポイソメラーゼ阻害剤、細胞傷害性抗生物質、血管新生阻害剤及びチロシンキナーゼ阻害剤が挙げられる。
【0192】
癌及び腫瘍性疾患に使用するために、ATR阻害剤は、以下に挙げる非限定的な抗癌剤の例の1つ又は複数と一緒に使用するのが最適であり得る:
1)DNA損傷修復(DDR)経路の1つ又は複数に関与するタンパク質の阻害剤又はモジュレータ、例えば、
a.限定はされないが、オラパリブ、ニラパリブ、ルカパリブなどのPARP1/2;
b.限定はされないが、UCN-01、AZD7762、PF477736、SCH900776、MK-8776、LY2603618、V158411及びEXEL-9844などのチェックポイントキナーゼ1(CHK1);
c.限定はされないが、PV1019、NSC109555及びVRX0466617などのチェックポイントキナーゼ2(CHK2);
d.限定はされないが、XL-844、AZD7762及びPF-473336などの二重CHK1/CHK2;
e.限定はされないが、MK-1775及びPD0166285などのWEE1;
f.限定はされないが、KU-55933などのATM、
g.限定はされないが、NU7441及びM3814などのDNA依存性タンパク質キナーゼ;及び
h.DDRに関与するさらに別のタンパク質;
2)限定はされないが、以下に挙げる1つ若しくは複数の免疫チェックポイントの阻害剤又はモジュレータ:
a.ニボルマブ(OPDIVO)、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA)、ピジリズマブ(CT-011)及びAMP-224(AMPLIMMUNE)などのPD-1阻害剤;
b.アテゾリズマブ(TECENTRIQ)、アベルマブ(Bavencio)、デュルバルマブ(Imfinzi)、MPDL3280A(Tecentriq)、BMS-936559及びMEDI4736などのPD-L1阻害剤;
c.イピリムマブ(YERVOY)及びCP-675,206(TREMELIMUMAB)などの抗CTLA-4抗体;
d.T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン3(Tim-3)の阻害剤;
e.T細胞活性化のVドメインIgサープレッサ(Vista)の阻害剤;
f.B及びTリンパ球アテニュエータ(BTLA)の阻害剤;
g.リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)の阻害剤;及び
h.T細胞免疫グロブリン及び免疫受容体チロシンをベースとする抑制モチーフドメイン(TIGIT)の阻害剤;
3)テロメラーゼ阻害剤又はテロメアDNA結合化合物;
4)限定はされないが、クロラムブシル(LEUKERAN)、オキサリプラチン(ELOXATIN)、ストレプトゾシン(ZANOSAR)、ダカルバジン、イホスファミド、ロムスチン(CCNU)、プロカルバジン(MATULAN)、テモゾロミド(TEMODAR)及びチオテパなどのアルキル化剤;
5)限定はされないが、カルムスチン、クロラムブシル(LEUKERAN)、カルボプラチン(PARAPLATIN)、シスプラチン(PLATIN)、ブスルファン(MYLERAN)、メルファラン(ALKERAN)、ミトマイシン(MITOSOL)及びシクロホスファミド(ENDOXAN)などのDNA架橋剤;
6)限定はされないが、クラドリビン(LEUSTATIN)、シタラビン(ARA-C)メルカプトプリン(PURINETHOL)、チオグアニン、ペントスタチン(NIPENT)、シトシンアラビノシド(シタラビン、ARA-C)、ゲムシタビン(GEMZAR)、フルオロウラシル(5-FU、CARAC)、カペシタビン(XELODA)、ロイコボリン(FUSILEV)、メトトレキサート(RHEUMATREX)及びラルチトレキセドを含む抗代謝剤;
7)限定はされないが、ドセタキセル(TAXITERE)、パクリタキセル(ABRAXANE、TAXOL)などのタキサン、ビンクリスチン(ONCOVIN)、ビンブラスチン、ビンデシン及びビノレルビン(NAVELBINE)などのビンカアルカロイドを含む抗分裂剤(多くの場合に植物アルカロイド及びテルペノイドである)又はそれらの誘導体;
8)限定はされないが、アマクリン、カンプトテシン(CTP)、ゲニステイン、イリノテカン(CAMPTOSAR)、トポテカン(HYCAMTIN)、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN)、ダウノルビシン(CERUBIDINE)、エピルビシン(ELLENCE)、ICRF-193、テニポシド(VUMON)、ミトキサントロン(NOVANTRONE)及びエトポシド(EPOSIN)などのトポイソメラーゼ阻害剤;
9)限定はされないが、フルダラビン(FLUDARA)、アフィジコリン、ガンシクロビル及びシドホビルなどのDNA複製阻害剤;
10)限定はされないが、ヒドロキシウレアなどのリボヌクレオシド二リン酸レダクターゼ阻害剤;
11)限定はされないが、アクチノマイシンD(ダクチノマイシン、COSMEGEN)及びプリカマイシン(ミトラマイシン)などの転写阻害剤;
12)限定はされないが、ブレオマイシン(BLENOXANE)、イダルビシンなどのDNA切断剤、
13)限定はされないが、アクチノマイシンD(ダクチノマイシン、COSMEGEN)などの細胞障害性抗生物質、
14)限定はされないが、アミノグルテチミド、アナストロゾール(ARIMIDEX)、レトロゾール(FEMARA)、ボロゾール(RIVIZOR)及びエキセメスタン(AROMASIN)を含むアロマターゼ阻害剤;
15)限定はされないが、ゲニステイン、スニチニブ(SUTENT)及びベバシズマブ(AVASTIN)を含む血管新生阻害剤;
16)限定されないが、アミノグルテチミド(CYTADREN)、ビカルタミド(CASODEX)、シプロテロン、フルタミド(EULEXIN)、ニルタミド(NILANDRON)を含む抗ステロイド及び抗アンドロゲン;
17)限定はされないが、イマチニブ(GLEEVEC)、エルロチニブ(TARCEVA)、ラパチニブ(TYKERB)、ソラフェニブ(NEXAVAR)及びアキシチニブ(INLYTA)を含むチロシンキナーゼ阻害剤;
18)限定されないが、エベロリムス、テミシロリムス(TORISEL)及びシロリムスを含むmTOR阻害剤;
19)限定されないが、トラスツズマブ(HERCEPTIN)及びリツキシマブ(RITUXAN)を含むモノクローナル抗体;
20)コルジセピンなどのアポトーシス誘導剤;
21)限定はされないが、クリンダマイシン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、アニソマイシン及びシクロヘキシミドなどのタンパク質合成阻害剤;
22)限定はされないが、メトホルミン及びフェンホルミンなどの抗糖尿病薬;
23)限定はされないが、以下に挙げる抗生物質:
a.限定はされないが、ドキシサイクリンなどのテトラサイクリン;
b.限定はされないが、アジトロマイシンなどのエリスロマイシン;
c.限定はされないが、チゲサイクリンなどのグリシルグリシン;
d.限定はされないが、パモ酸ピルビニウムなどの駆虫薬;
e.限定はされないが、ペニシリン及びセファロスポリンなどのβラクタム;
f.限定はされないが、ダウノルビシン及びドキソルビシンなどのアントラサイクリン抗生物質;
g.限定はされないが、クロラムフェニコール、マイトマイシンC及びアクチノマイシンなどの他の抗生物質;
24)限定はされないが、ムロモナブ-CD3、インフリキシマブ(REMICADE)、アダリムマブ(HUMIRA)、オマリズマブ(XOLAIR)、ダクリズマブ(ZENAPAX)、リツキシマブ(RITUXAN)、イブリツモマブ(ZEVALIN)、トシツモマブ(BEXXAR)、セツキシマブ(ERBITUX)、トラスツズマブ(HERCEPTIN)、ADCETRIS、アレムツズマブ(CAMPATH-1H)、Lym-1(ONCOLYM)、イピリムマブ(YERVOY)、ビタキシン、ベバシズマブ(AVASTIN)及びアブシキシマブ(REOPRO)などの抗体治療剤;並びに
25)バチルス・カルメット・ゲラン桿菌(Bacillus Calmette-Guerin)(B-C-G)ワクチン;ブセレリン(ETILAMIDE);クロロキン(ARALEN);クロドロン酸塩、パミドロン酸塩及びその他のビスホスホネート;コルヒチン;デメトキシビリジン;ジクロロ酢酸塩;エストラムスチン;フィルグラスチム(NEUPOGEN);フルドロコルチゾン(FLORINEF);ゴセレリン(ZOLADEX);インターフェロン;ロイコボリン;ロイプロリド(LUPRON);レバミソール;ロニダミン;メスナ;メトホルミン;ミトタン(o,p’-DDD、LYSODREN);ノコダゾール;オクトレオチド(SANDOSTATIN);ペリホシン;ポルフィマー(特に光線及び放射線療法と組み合わせて);スラミン;タモキシフェン;二塩化チタノセン;トレチノイン;フルオキシメステロン(HALOTESTIN)などのアナボリックステロイド;エストラジオール、ジエチルスチルベストロール(DES)及びジエネストロールなどのエストロゲン;メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(MPA)及びメゲストロールなどのプロゲスチン;並びにテストステロンなどの他の薬剤。
【0193】
いずれの場合も、複数の治療薬(そのうちの少なくとも1つは、本明細書に開示される化合物である)を任意の順序で投与するか又は同時に投与し得る。同時の場合、複数の治療薬は、単一の統合形態又は複数の形態で(ごく一例として、単一丸薬又は2つの別々の丸薬として)提供され得る。治療薬の一方を複数回用量で投与し得るか、又は両方を複数回用量で投与し得る。同時でない場合、複数回用量間のタイミングは、数分~4週の範囲の任意の期間であり得る。
【0194】
従って、別の態様では、特定の実施形態は、このような治療を必要としているヒト又は動物対象においてATRキナーゼ介在性障害を治療するための方法を提供し、本方法は、当技術分野で知られている障害を治療するための少なくとも1つの付加的な薬剤と組み合わせて、対象の障害を軽減又は予防するのに有効な量の、本明細書に開示の化合物を対象に投与することを含む。関連の態様では、特定の実施形態は、ATRキナーゼ介在性障害を治療するための1つ又は複数の付加的な薬剤と組み合わせて、少なくとも1つの本明細書に開示の化合物を含む治療組成物を提供する。
【0195】
本明細書に開示される化合物、組成物及び方法によって治療しようとする具体的な疾患として、癌をはじめとする増殖性疾患及び過剰増殖性疾患が挙げられる。
【0196】
ヒトの治療に有用であることに加えて、本明細書に開示される特定の化合物及び製剤は、コンパニオンアニマル、エキゾチックアニマル及び家畜(哺乳類、げっ歯類などを含む)の獣医学的治療のためにも有用であり得る。より好ましい動物として、ウマ、イヌ及びネコが挙げられる。
【0197】
略語一覧
Boc=tert-ブチルオキシカルボニル;BPin=4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル;Br=臭素;Bu=n-ブチル;t-Bu=tert-ブチル=2,2-ジメチルエチル;℃=摂氏;CBz=カルボキシベンジル;CDCl=重水素化クロロホルム;CDCN=重水素化アセトニトリル;DBN=1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)ノン-5-エン;DBU=1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデク-7-エン;DCM=CHCl=ジクロロメタン;DDTT=3-((ジメチルアミノメチリデン)アミノ)-3H-1,2,4-ジチアゾール-5-チオン;DIPEA=iPrNEt=ジイソプロピルエチルアミン;DMAP=4-ジメチルアミノピリジン;DMF=ジメチルホルムアミド;DMF-d=ジメチルホルムアミド-d;DMSO=ジメチルスルホキシド;DMSO-d=ジメチルスルホキシド-d;DMTr=ジメトキシトリチル=(4-メトキシフェニル)(フェニル)メチル;DO=重水素化水;dppf=1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン;EA=EtOAc=酢酸エチル;ES+=エレクトロスプレーポジティブイオン化;ES-=エレクトロスプレーネガティブイオン化;Et=エチル;EtOH=エタノール;h=時間;H=水素;HCl=塩化水素;HCONH=ギ酸アンモニウム;HO=水;HPLC=高速液体クロマトグラフィ、別名:分取高速液体クロマトグラフィ;int.=中間体;iPr=イソプロピル=2-プロピル;M=モル;mCPBA=m-クロロ過安息香酸;MeCN=CHCN=アセトニトリル;MeOH=メタノール;MHz=メガヘルツ;mL=ミリリットル;min=分;MS=質量分析;MsCl=メタンスルホニルクロリド;MW=マイクロ波;N=窒素;NH=アンモニア;NHOH=水酸化アンモニウム;NMP=N-メチル-2-ピロリドン;H-NMR=プロトン核磁気共鳴;31P-NMR=リン核磁気共鳴;PBS=リン酸緩衝食塩水;PE=石油エーテル;Pin=ピナコール=2,3-ジメチルブタン-2,3-ジオール;Pin=4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン);Piv=ピバロイル=(CHC-C(=O)-;prep-HPLC=分取高速液体クロマトグラフィ(preparative high pressure liquid chromatography)、別名:分取高速液体クロマトグラフィ(preparative high performance liquid chromatography);RT=室温;NaOH=水酸化ナトリウム;Pd(dppf)Cl=[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド;RuPhos=ジシクロヘキシル(2’,6’-ジイソプロポキシ-[1,1’-ビスフェニル]-2-イル)ホスフィン;THF=テトラヒドロフラン;Py=ピリジン;SFC=超臨界流体クロマトグラフィ;TBSCl=tert-ブチルジメチルシリルクロリド;TEA=トリエチルアミン;TEAB=重炭酸テトラエチルアンモニウム;TMSCl=塩化トリメチルシリル;TFA=トリフルオロ酢酸;KCO=炭酸カリウム;μL=ul=マイクロリットル。
【0198】
化合物を調製する一般的合成方法
本開示を実施するために以下のスキームを使用することができる。
【0199】
【化6】
スキーム1は、ジクロロピリジン1及びスルホキシイミンを用いたバックワルドカップリング反応、次にクロロピリジン2及びボロン酸エステルを用いた鈴木カップリング反応により、ピリジン化合物3が得られることを示す。
【0200】
【化7】
スキーム2は、クロロピリジン2及びアリールアミンを用いたバックワルドカップリング反応、次に鉄を用いた還元により、アミノ中間体5が得られることを示す。続いて、オルトエステル又はカルボン酸のいずれかを用いた環化により、ピリジン化合物6が得られる。
【0201】
【化8】
スキーム3は、クロロピリジン2及びベンズイミダゾールを用いたバックワルドカップリングにより、ピリジン化合物6が得られることを示す。
【0202】
一般的方法
以下の実施例化合物は、スキーム1~3の方法によって調製される。
【0203】
中間体A
【化9】
(R)-4-(2,6-ジクロロピリジン-4-イル)-3-メチルモルホリン
【化10】
(R)-4-(2,6-ジクロロピリジン-4-イル)-3-メチルモルホリン:2,6-ジクロロ-4-ヨードピリジン(25g、93mmol)、PPh(2.87g、91.6mmol)、Pd(OAc)(1.04g、4.49mmol)及びKPO(60.2g、273.8mmol)のDMF(400mL)中の溶液に(R)-3-メチルモルホリン(17.4g、146mmol)を添加し、反応混合物を100℃で4h攪拌した。混合物をRTまで冷却し、減圧下で濃縮した。残渣をEtOAc(200mL)に溶解させ、HO(150mL)を用いて分配した後、各層を分離した。水層をEtOAc(3×150mL)で抽出した。合わせた有機層を水(3×100mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン中0~10%EtOAc)で精製することにより、白色固体として標題化合物(17.5g、72%収率)を得た。MS(ES+)C1012ClO 理論値:246、実測値:247[M+H]
【0204】
中間体B
【化11】
イミノジメチル-λ-スルファノン
ステップ1
【化12】
カルバミン酸ベンジル(ジメチル(オキソ)-λ-スルファネイリデン):DMSO(780mg、10.0mmol)、カルバミン酸ベンジル(2.3g、15mmol)、Rh(OAc)(110mg、0.25mmol)及びMgO(1.6g、40mmol)のDCM(100mL)中の懸濁液にPhI(OAc)(4.8g、15mmol)を添加した。得られた混合物を室温で16h攪拌した。反応混合物を濾過した後、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(石油エーテル中0~90%EtOAc)で精製することにより、白色固体として標題化合物(900mg、40%収率)を得た。
MS(ES)C1013NOS 理論値:227、実測値:228[M+H]
【0205】
ステップ2
【化13】
イミノジメチル-λ-スルファノン:先行ステップからの生成物(600mg、2.6mmol)及びPd/C(243mg、2.6mmol)をMeOH(20mL)に懸濁させた。混合物を1atmのHの雰囲気下で16h攪拌した。反応混合物をNでパージし、CELITE(登録商標)で濾過した後、濾過物をMeOH(10mL)で洗浄した。混合物を減圧下で濃縮することにより、無色の油として標題化合物(205mg、85%収率)を得た。MS(ES)CNOS 理論値:93、実測値94[M+H]
【0206】
中間体C
【化14】
シクロプロピル(イミノ)(メチル)-λ-スルファノン
ステップ1
【化15】
(メチルスルフィニル)シクロプロパン:1-ブロモ-4-(メチルスルフィニル)ベンゼン(10.5g、48.0mmol)のTHF(100mL)中の溶液にシクロプロピルマグネシウムブロミド(1M、72mL、72mmol)を0℃でゆっくりと添加した。混合物を0℃で1.5h攪拌した。飽和水性NHClを添加し(200mL)、各層を分離した後、水層をCHCl(5×150mL)で抽出した。合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(石油エーテル中50~100%EtOAc)で精製することにより、黄色の油として標題化合物(3.2g、64%収率)を得た。MS(ES)COS 理論値:104、実測値105[M+H]
【0207】
ステップ2
【化16】
カルバミン酸ベンジル(シクロプロピル(メチル)(オキソ)-λ-スルファネイリデン):先行ステップからの生成物(2.35g、22.6mmol)のDCM(100mL)中の溶液にカルバミン酸ベンジル(5.1g、34mmol)、PhI(OAc)(11g、34mmol)、Rh(OAc)(0.25g、0.56mmol)及びMgO(3.6g、90mmol)を添加し、得られた混合物をRTで16h攪拌した。反応混合物をCELITE(登録商標)で濾過した後、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(石油エーテル中20~50%EtOAc)で精製することにより、黄色の油として標題化合物(2.2g、39%収率)を得た。MS(ES)C1215NOS 理論値:253、実測値254[M+H]
【0208】
ステップ3
【化17】
シクロプロピル(イミノ)(メチル)-λ-スルファノン:先行ステップからの生成物(2.2g、8.7mmol)のMeOH(100mL)中の溶液にN下でPd/C(2.2g)を添加した。N雰囲気を排除してから、Hでパージした(3×)。混合物を50℃まで加熱し、H雰囲気下で3h攪拌した。混合物をRTまで冷却し、CELITE(登録商標)で濾過した後、減圧下で濃縮することにより、黄色の油として標題化合物(1.05g、96%収率)を得た。MS(ES)CNOS 理論値:119、実測値120[M+H]
【0209】
中間体D
【化18】
イムノ(メチル)(オキセタン-3-イル)-λ-スルファノン
ステップ1
【化19】
3-(メチルスルフィニル)オキセタン:3-ヨードオキセタン(6.0g、32.6mmol)のDMF(60mL)中の溶液にN下でCHSNa(2.28g、32.6mmol)を添加した。反応混合物を室温で1h攪拌した。EtOAc(120mL)及び水(80mL)を添加し、各層を分離した後、有機層を塩水(80mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過した。EtOAcの溶液にMeOH(60mL)、水(60mL)及びNaIO(6.2g、29.3mmol)を添加し、反応混合物を室温で16h攪拌した。混合物を濾過した後、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(石油エーテル中50%EtOAc~DCM中10%MeOH)で精製することにより、薄黄色の油として標題化合物(3.5g、90%収率)を得た。MS(ES)CS 理論値:120、実測値121[M+H]
【0210】
ステップ2
【化20】
カルバミン酸ベンジル(メチル(オキセタン-3-イル)(オキソ)-λ-スルファネイリデン):先行ステップからの生成物(3.5g、29mmol)のDCM(260mL)中の溶液にカルバミン酸ベンジル(6.58g、43.6mmol)、Rh(OAc)(383mg、0.873mmol)、PhI(OAc)(14.0g、43.6mmol)及びMgO(4.7g、116mmol)を添加し、N雰囲気下、室温で混合物を16h攪拌した。反応混合物をCELITE(登録商標)で濾過した後、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(石油エーテル中20~50%EtOAc)で精製することにより、薄黄色の油として標題化合物(4.1g、52%収率)を得た。MS(ES)C1215NOS 理論値:269、実測値270[M+H]
【0211】
ステップ3
【化21】
イムノ(メチル)(オキセタン-3-イル)-λ-スルファノン:先行ステップからの生成物(4.1g、15mmol)のMeOH(60mL)中の溶液にN下でPd/C(4.1g)を添加した。この雰囲気を除去してから、Hで3回パージした。混合物を50℃に加熱し、H雰囲気下で3h攪拌した。混合物を室温まで冷却し、CELITE(登録商標)で濾過した後、減圧下で濃縮することにより、薄黄色の油として標題化合物(1.7g、83%収率)を得た。
【0212】
MS(ES)CNOS 理論値:135、実測値136[M+H]
【0213】
中間体E
【化22】
2-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン
ステップ1
【化23】
4-ブロモ-2-メチル-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン:-78℃の4-ブロモ-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(1.0g、2.9mmol)のTHF(30mL)中の溶液にLDA(2.9mL、2M、THF中)を添加し、混合物をAr雰囲気下、-78℃で1h攪拌した。MeI(4.0g、29mmol)を添加し、混合物を室温まで昇温させてから、3h攪拌した。飽和水性NHCl(50mL)を添加し、水層をEtOAc(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を逆相分取HPLC(移動相:A=10mM NHHCO/HO、B=MeCN;勾配:B=65~95%;18分;カラム:Welch XB-C18、10μm、21.2×250mm)により精製することにより、白色固体として標題化合物(420mg、40%収率)を得た。MS(ES)C1513BrNS 理論値:364、実測値365[M+H]
【0214】
ステップ2
【化24】
2-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン:反応バイアルを先行反応からの生成物(410mg、1.13mmol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)(345mg、1.3mmol)、KOAc(277mg、2.8mmol)及びPd(dppf)Cl(82mg、0.11mmol)のジオキサン(5mL)溶液で充填した。1分間のArバブリングにより混合物を脱ガスした。混合物を80℃に加熱し、5hr攪拌した。混合物を室温まで冷却し、CELITE(登録商標)で濾過した後、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(石油エーテル中20%EtOAc)で精製することにより、白色固体として標題化合物(350mg、75%収率)を得た。
MS(ES)C2125BNS 理論値412、実測値331[M-81]
【0215】
中間体F
【化25】
6-メトキシ-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン
ステップ1
【化26】
4-ブロモ-6-メトキシ-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン:N雰囲気下、0℃の4-ブロモ-6-メトキシ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(800mg、3.5mmol)のTHF(50mL)中の溶液に水素化ナトリウム(鉱油中60パーセント、280mg、7.0mmol)をゆっくりと添加した。反応混合物は、室温まで昇温することができ、30分間攪拌された。塩化4-メチルベンゼン-1-スルホニル(798mg、4.2mmol)を添加し、反応混合物をRTで2時間攪拌した。水を添加し(1mL)、混合物を減圧下で濃縮した。残渣をDCM(100mL)に溶解させ、2M炭酸ナトリウム(2×30mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過した後、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン中0~50%EtOAc)で精製することにより、白色固体として標題化合物(1.2g、90%収率)を得た。MS(ES)C1513BrNS 理論値380、実測値381[M+H]
【0216】
ステップ2
【化27】
6-メトキシ-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン:反応バイアルを先行反応からの生成物(500mg、1.3mmol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)(498mg、1.97mmol)、Pd(dppf)Cl(95mg、0.13mmol)及びKOAc(382mg、3.9mmol)のジオキサン(5mL)溶液で充填した。1分間のArバブリングにより混合物を脱ガスした。混合物を90℃で加熱し、16h攪拌した。混合物を室温まで冷却し、CELITE(登録商標)で濾過した後、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン中0~25%EtOAc)で精製することにより、白色固体として標題化合物(350mg、75%収率)を得た。
MS(ES)C2125BNS 理論値428、実測値347[M-81]
【0217】
中間体G
【化28】
4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン
【化29】
4-ブロモ-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン:0℃の4-ブロモ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン(300mg、1.5mmol)のDMF(10mL)中の溶液にNaH(92mg、2.25mmol、60%)を添加し、反応混合物を0℃で2h攪拌した。反応混合物を室温まで昇温し、TsCl(429mg、2.25mmol)を添加し、混合物を60℃に加熱し、さらに2h攪拌した。HO(10mL)を添加し、各層を分離した後、水層をEtOAc(3×15mL)で抽出した。合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、濾過した後、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(石油エーテル中0~20%EtOAc)で精製することにより、白色固体として標題化合物(300mg、57%収率)を得た。MS(ES)C1411BrNS 理論値350、実測値351[M-81]
【0218】
ステップ2
【化30】
4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン:先行ステップからの生成物(300mg、0.86mmol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)(254mg、1.0mmol)、Pd(dppf)Cl(63mg、0.086mmol)及びKOAc(169mg、1.72mmol)のジオキサン(10mL)中の混合物をArで脱ガスし、反応混合物を120℃で4h加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、CELITE(登録商標)で濾過した後、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(石油エーテル中10~60%EtOAc)で精製することにより、白色固体として標題化合物(100mg、29%収率)を得た。MS(ES)C2023BNS 理論値398、実測値399[M+H]
【0219】
中間体H
【化31】
4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン-2,3-ジアミン
【化32】
4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン-2,3-ジアミン:4-ブロモピリジン-2,3-ジアミン(200mg、1.07mmol)、KOAc(262mg、2.67mmol)及び4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)(544mg、2.14mmol)のジオキサン(10mL)中の溶液にPd(dppf)Cl(63mg、0.086mmol)を添加し、Ar雰囲気下、80℃で混合物を16h攪拌した。反応混合物をRTまで冷却し、CELITE(登録商標)で濾過した後、減圧下で濃縮した。残渣を石油エーテル(20mL)に溶解させてから、10分間攪拌し、濾過し、濃縮することにより、褐色固体として標題化合物(>250mg、推定量)を得た。(ES)C1118BN 理論値:235、実測値154[M-81]
【0220】
中間体I
【化33】
6-クロロ-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン
【化34】
6-クロロ-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン:4-ブロモ-6-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(100mg、0.432mmol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)(121mg、0.475mmol)及び酢酸カリウム(127mg、1.30mmol)のジオキサン(2160μL)中の懸濁液をNで1分間脱ガスした。PdCl(dppf)-CHCl(17mg、0.022mmol)を添加し、混合物をNでさらに1分間脱ガスした。反応混合物を100℃まで加熱し、12h攪拌した。混合物を室温まで冷却し、CELITE(登録商標)で濾過した後、減圧下で濃縮することにより、褐色固体として標題化合物(推定量)を得た。MS(ES+)C1316BClN 理論値:278、実測値:279[M+H]
【0221】
中間体J
【化35】
2-(((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール
【化36】
2-(((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール:室温の(1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)メタノール(1.66g、11.2mmol)、イミダゾール(0.92g、13.4mmol)及びDMAP(68mg、0.56mmol)のDMF(10mL)中の溶液にクロロトリイソプロピルシラン(2.87mL、13.5mmol)を添加し、反応混合物を室温で16h攪拌した。混合物を水(100mL)に注ぎ込み、各層を分離した後、水層をジエチルエーテル(2×100mL)で抽出した。合わせた有機層を水(2×50mL)及び塩水(50mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過した後、減圧下で濃縮することにより、白色固体として標題化合物(3.40g、100%収率)を得た。MS(ES)C1728OSi 理論値:304、実測値:305[M+H]
【実施例
【0222】
実施例1
【化37】
(R)-ジメチル-((4-(3-メチルモルホリノ)-6-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)ピリジン-2-イル)イミノ)-λ-スルファノン
ステップ1
【化38】
(R)-((6-クロロ-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノン:Int.A(5.0g、20mmol)、Int.B(1.86g、20mmol)、Pd(dba)(900mg、0.1mmol)、X-phos(480mg、0.10mmol)及びCsCO(13g、40mmol)のジオキサン(100mL)中の混合物を90℃に16h加熱した。反応混合物をRTまで冷却し、CELITE(登録商標)で濾過した後、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(石油エーテル中10~75%EtOAc)で精製することにより、白色固体として標題化合物(3.4g、56%収率)を得た。MS(ES)C1218ClNS 理論値:303、実測値304[M+H]
【0223】
ステップ2
【化39】
(R)-ジメチル-((4-(3-メチルモルホリノ)-6-(1-トシル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)ピリジン-2-イル)イミノ)-λ-スルファノン:Ar雰囲気下、先行ステップからの生成物(4.5g、14.85mmol)、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(7.1g、17.82mmol)、Pd(dppf)Cl(1.09g、1.49mmol)及びKCO(6.2g、44.6mmol)のジオキサン/HO(120mL/24mL)中の混合物を90℃に16h加熱した。混合物を室温まで冷却し、CELITE(登録商標)で濾過した後、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(石油エーテル中10~80%EtOAc)で精製することにより、褐色固体として標題化合物(6.48g、81%収率)を得た。MS(ES)C2629 理論値:539、実測値:540[M+H]
【0224】
ステップ3
【化40】
(R)-ジメチル-((4-(3-メチルモルホリノ)-6-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)ピリジン-2-イル)イミノ)-λ-スルファノン:先行ステップからの生成物(10g、18.55mmol)のMeOH(150mL)及びTHF(75mL)中の溶液に水性NaOH(5N、37mL、186mmol)を添加した。反応混合物は、50℃であり、2h攪拌された。混合物を室温まで冷却し、6~7のpHに達するまで2N HClを添加し、水(200mL)を添加した後、水層をDCM(3×200mL)で抽出した。合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(DCM中2~5%MeOH)で精製することにより、黄色固体として標題化合物(4.9g、68%収率)を得た。
【0225】
H NMR(500MHz,DMSO-d)δ 11.68(s,1H),8.26(d,J=5.0Hz,1H),7.49(dd,J=6.7,4.1Hz,2H),7.81(dd,J=3.4,2.0Hz,1H),6.96(d,J=1.9Hz,1H),6.09(d,J=1.9Hz,1H),4.06(d,J=6.8Hz,1H),3.94(dd,J=10.8,3.4Hz,1H),3.69(dt,J=11.4,7.0Hz,2H),3.52(dt,J=24.2,8.0Hz,2H),3.38(d,J=4.5Hz,6H),3.11-3.01(m,1H),1.12(d,J=6.6Hz,3H)ppm.MS(ES)C1923S 理論値:385,実測値:386[M+H]
【0226】
実施例2
【化41】
(R)-((6-(3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-7-イル)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノン
ステップ1
【化42】
(R)-((2’,3’-ジアミノ-4-(3-メチルモルホリノ)-[2,4’-ビピリジン]-6-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノン:Int.A(150mg、0.49mmol)、Int.H(350mg、推定1.07mmol)、NaCO(130mg、1.2mmol)及びPd(dppf)Cl(18mg、0.024mmol)のジオキサン(20mL)及びHO(4mL)中の混合物を80℃で加熱し、Ar雰囲気下で16h攪拌した。反応混合物を室温まで冷却し、CELITE(登録商標)で濾過した後、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(DCM中1~15%)MeOH)で精製することにより、褐色固体として標題化合物(150mg、80%収率)を得た。MS(ES)C1724S 理論値:376、実測値:377[M+H]
【0227】
ステップ2
【化43】
(R)-((6-(3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-7-イル)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノン:マイクロ波バイアルを先行ステップからの生成物(130mg、0.34mmol)、ギ酸(48mg、1.0mmol)及びオルトギ酸トリエチル(3mL)で充填し、Arで1分間脱ガスした。マイクロ波反応器内で混合物を150℃で1.5h加熱した。混合物を減圧下で濃縮した。残渣を逆相分取HPLC(移動相:A=10mM NHHCO/HO、B=MeCN;勾配:B=18~48%;18分;カラム:Welch XB-C18、10μm、21.2×250mm、30mL/分)で精製することにより、白色固体として標題化合物(32mg、21%収率)を得た。H NMR(500MHz,DMSO-d)δ 12.49(s,1H),8.59-8.35(m,2H),7.96(dd,1H),7.29(s,1H),6.11(d,1H),4.17(d,1H),3.97(t,1H),3.82-3.49(m,4H),3.42(d,6H),3.16-3.02(m,1H),1.13(d,3H)ppm;MS(ES)C1822S 理論値:386,実測値:387[M+H]
【0228】
実施例3a/b
【化44】
(R)-シクロプロピル(メチル)((4-((R)-3-メチルモルホリノ)-6-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)ピリジン-2-イル)イミノ)-λ-スルファノン、及び
(S)-シクロプロピル(メチル)((4-((R)-3-メチルモルホリノ)-6-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)ピリジン-2-イル)イミノ)-λ-スルファノン
【化45】
(R)-シクロプロピル(メチル)((4-((R)-3-メチルモルホリノ)-6-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)ピリジン-2-イル)イミノ)-λ-スルファノン及び(S)-シクロプロピル(メチル)((4-((R)-3-メチルモルホリノ)-6-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)ピリジン-2-イル)イミノ)-λ-スルファノン:シクロプロピル(メチル)((4-((R)-3-メチルモルホリノ)-6-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)ピリジン-2-イル)イミノ)-λ-スルファノンを実施例1に従って合成した。化合物の混合物をキラルSFC(移動相:CO/MeOH(0.2%メタノールアンモニア)=40/60;流量:80g/分;3.5分;カラム温度:35℃;背圧:100bar;カラム:Daicel CHIRALPAK(登録商標)AD、10μm、20mm×250mm)で分離することにより、白色固体として標題化合物3a(150mg、38%収率、99%ee)及び3b(148mg、37%収率、96%ee)を得た。実施例CP-AR-0360:R=1.7分、実施例CP-AR-0361:R=2.43分。
【0229】
実施例3a:((S)-シクロプロピル(メチル)又は(R)-シクロプロピル(メチル)):R=1.7分:H NMR(500MHz,DMSO-d)δ 11.68(s,1H),8.26(d,J=5.0Hz,1H),7.51-7.46(m,2H),7.16(dd,J=3.4,2.0Hz,1H),6.96(d,J=2.1Hz,1H),6.10(d,J=2.1Hz,1H),4.11-4.03(m,1H),3.98-3.91(m,1H),3.72(d,J=11.3Hz,1H),3.67(dd,J=11.0,2.8Hz,2H),3.57-3.48(m,1H),3.47(s,3H),3.06(td,J=12.4,11.8,3.6Hz,1H),2.97-2.88(m,1H),1.22-1.14(m,2H),1.13(d,J=6.6Hz,3H),1.10-0.99(m,2H)ppm;MS(ES)C2125S 理論値:411,実測値:412[M+H]
【0230】
実施例3b:((S)-シクロプロピル(メチル)又は(R)-シクロプロピル(メチル)):R=2.4分:H NMR(500MHz,DMSO-d)δ 11.67(s,1H),8.26(d,J=5.0Hz,1H),7.52-7.46(m,2H),7.16(dd,J=3.5,1.9Hz,1H),6.96(d,J=2.2Hz,1H),6.10(d,J=2.1Hz,1H),4.11-4.04(m,1H),3.94(dd,J=11.3,3.7Hz,1H),3.72(d,J=11.2Hz,1H),3.67(dd,J=11.3,3.0Hz,1H),3.54(dd,J=12.0,3.1Hz,1H),3.51-3.44(m,4H),3.07(td,J=12.2,3.9Hz,1H),2.99-2.90(m,1H),1.22-1.13(m,2H),1.11(d,J=6.6Hz,3H),1.09-0.98(m,2H);MS(ES)C2125S 理論値:411,実測値:412[M+H]
【0231】
実施例4
【化46】
(R)-ジメチル((6-(2-メチル-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イル)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)-λ-スルファノン
ステップ1
【化47】
(R)-ジメチル((4-(3-メチルモルホリノ)-6-((3-ニトロピリジン-2-イル)アミノ)ピリジン-2-イル)イミノ)-λ-スルファノン:反応バイアルを(R)-((6-クロロ-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノン(実施例1、ステップ1)(200mg、0.658mmol)、3-ニトロピリジン-2-アミン(110mg、0.790mmol)及びジオキサン(3.29mL)で充填し、混合物をNで30秒間脱ガスした。CsCO(643mg、1.98mmol)、Pddba(60mg、0.066mmol)及びXantphos(76mg、0.13mmol)を添加し、混合物をNで30秒間脱ガスした。バイアルを密閉し、100℃で16h加熱した。混合物をRTまで冷却し、CELITE(登録商標)で濾過した後、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(DCM中0~10%MeOH)で精製することにより、オレンジ色の固体として標題化合物(244mg、46%収率)を得た。MS(ES+)C1722S 理論値:406、実測値:407[M+H]
【0232】
ステップ2
【化48】
(R)-((6-((3-アミノピリジン-2-イル)アミノ)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノン:先行ステップからの生成物(244mg、0.300mmol)のEtOH(1.5mL)中の溶液に塩化アンモニウム(64mg、1.2mmol)、水(500μL)及び鉄(67mg、1.2mmol)を添加し、得られた混合物を100℃で3h攪拌した。混合物をRTまで冷却し、CELITE(登録商標)で濾過した後、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(DCM中0~20%MeOH)で精製することにより、薄黄色の固体として標題化合物(84mg、74%収率)を得た。MS(ES+)C1724S 理論値:376、実測値:377[M+H]
【0233】
ステップ3
【化49】
(R)-ジメチル((6-(2-メチル-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イル)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)-λ-スルファノン:先行ステップからの生成物(50mg、0.13mmol)のトルエン(266μL)中の溶液にオルト酢酸トリエチル(49μL、0.27mmol)及びTsOH(2.5mg、0.013mmol)を添加し、得られた混合物を110℃で16h攪拌した。混合物を室温まで冷却し、減圧下で濃縮した。残渣をマストリガー分取HPLC(移動相:A=0.1%TFA/HO、B=0.1%TFA/MeCN;勾配:B=10~40%;26分;カラム:XBridge C18、5μm、19mm×150mm)で精製することにより、白色固体として標題化合物(37mg、44%収率)を得た。
【0234】
H NMR(600MHz,メタノール-d)δ 8.39(d,J=4.9Hz,1H),8.13(d,J=8.0Hz,1H),7.50-7.44(m,1H),7.04(s,1H),6.54(s,1H),4.15-4.09(m,1H),4.03(dd,J=11.7,3.9Hz,1H),3.82(d,J=11.8Hz,1H),3.77(d,J=12.0Hz,1H),3.69(d,J=13.3Hz,1H),3.64(t,J=12.0Hz,1H),3.48(d,J=5.4Hz,6H),3.42(td,J=12.7,4.1Hz,1H),2.71(s,3H),1.35(d,J=6.7Hz,3H)ppm;MS(ES+)C1924S 理論値:400,実測値:401[M+H]
【0235】
実施例5
【化50】
(R)-((6-(3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イル)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノン
実施例4に従うが、ステップ3でオルト酢酸トリエチルの代わりにオルトギ酸トリエチルを使用する変更を加えて、実施例5を合成した。H NMR(600MHz,メタノール-d)δ 9.07(s,1H),8.52(d,J=4.9Hz,1H),8.24(d,J=8.1Hz,1H),7.54-7.49(m,1H),7.43(s,1H),6.39(s,1H),4.19-4.11(m,1H),4.08-4.02(m,1H),3.84(d,J=11.7Hz,1H),3.79(d,J=11.4Hz,1H),3.71-3.62(m,2H),3.50(d,J=3.5Hz,6H),3.43-3.37(m,1H),1.35(d,J=6.8Hz,3H)ppm;MS(ES+)C1822S 理論値:386,実測値:387[M+H]
【0236】
実施例6
【化51】
(R)-((6-(2-(ジフルオロメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノン
ステップ1
【化52】
実施例4に従うが、ステップ1で3-ニトロピリジン-2-アミンの代わりに2-ニトロアニリンを使用する変更を加えて、(R)-((6-((2-アミノフェニル)アミノ)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノンを合成した。
【0237】
(R)-((6-(2-ジフルオロメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノン:(R)-((6-((2-アミノフェニル)アミノ)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノン(50mg、0.13mmol)のトルエン(266μL)中の溶液に2,2-ジフルオロ酢酸(26mg、0.27mmol)及びTsOH(2.5mg、0.013mmol)を添加し、得られた混合物を110℃で16h攪拌した。混合物を室温まで冷却し、減圧下で濃縮した。残渣をマストリガー分取HPLC(移動相:A=0.1%TFA/HO、B=0.1%TFA/MeCN;勾配:B=10~50%;26分;カラム:XBridge C18、5μm、19mm×150mm)で精製することにより、薄黄色の固体として標題化合物(28mg、32%収率)を得た。
【0238】
H NMR(600MHz,メタノール-d)δ 7.84(d,J=8.0Hz,1H),7.57(d,J=8.1Hz,1H),7.51-7.44(m,2H),7.32(t,J=52.5Hz,1H),6.94(d,J=2.2Hz,1H),6.46(d,J=2.2Hz,1H),4.11-4.06(m,1H),4.02(dd,J=11.2,4.0Hz,1H),3.82-3.74(m,2H),3.66-3.60(m,2H),3.44(s,6H),3.32-3.29(m,1H),1.32(d,J=6.7Hz,3H);MS(ES)C2023S 理論値:435,実測値:436[M+H]
【0239】
実施例7
【化53】
(R)-((6-(2-(ヒドロキシメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノン
ステップ1
【化54】
(R)-ジメチル((4-(3-メチルモルホリノ)-6-(2-(((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)ピリジン-2-イル)イミノ)-λ-スルファノン:(R)-((6-クロロ-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノン(156mg、0.513mmol)及びInt.J(0188mg、0.616mmol)のジオキサン(5mL)中の溶液をNで5分間脱ガスした。NaOtBu(98mg、1.03mmol)及びt-BuBrettPhos Pd G3プレ触媒(44mg、0.051mmol)を添加し、混合物を1分間超音波処理した後、90℃で70分間加熱した。反応物を室温まで冷却し、酢酸エチル(20mL)で希釈し、CELITE(登録商標)で濾過した後、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(1:1:1 DCM:ヘキサン:1%EtNを含むアセトン)で精製することにより、白色固体として標題化合物(178mg、61%収率)を得た。MS(ES)C2945SSi 理論値:571、実測値:572[M+H]
【0240】
ステップ2
【化55】
(R)-((6-(2-(ヒドロキシメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノン:Nalgene(商標)バイアル内の先行ステップからの生成物(0.28g、0.494mmol)のTHF(5mL)中の溶液に30%HF-ピリジン複合体(1.0mL)を添加し、得られた混合物を室温で90分間攪拌した。飽和水性NaHCO(50mL)を添加し、得られた混合物を15分間激しく攪拌した。水層をDCM(3×30mL)で抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濾過した後、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(DCM中2~10%MeOH/10%NHOH)で精製することにより、白色固体として標題化合物(156mg、74%収率)を得た。
【0241】
H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ ppm 7.76-7.91(m,1H),7.51-7.63(m,1H),7.29-7.40(m,2H),6.52(d,J=2.26Hz,1H),6.19(d,J=2.01Hz,1H),4.91(s,2H),4.04(dd,J=11.54,3.51Hz,1H),3.89(q,J=6.78Hz,1H),3.76-3.85(m,2H),3.66(td,J=11.80,3.51Hz,1H),3.42-3.43(m,1H),3.20-3.22(m,1H),3.20-3.44(m,6H),1.31(d,J=6.53Hz,3H)ppm;MS(ES)C2025S 理論値:415,実測値:416[M+H]
【0242】
実施例8
【化56】
(R)-((6-(2-(フルオロメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノン
【化57】
(R)-((6-(2-(フルオロメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノン:0℃の(R)-((6-(2-(ヒドロキシメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノン(91mg、0.219mmol)のDCM(5mL)中の溶液に三フッ化ジエチルアミノ硫黄(DAST、70μL、0.529mmol)を添加し、得られた混合物を室温まで昇温させてから、30分間攪拌した。飽和水性NaHCO(25mL)を添加し、混合物を15分間激しく攪拌した。各層を分離した後、水層をDCM(2×25mL)で抽出した。合わせた有機層をMgSO4で乾燥させ、濾過した後、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(DCM中2~10%MeOH/10%NHOH)で精製することにより、白色固体として標題化合物(48mg、53%収率)を得た。
【0243】
H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ ppm 7.83-7.98(m,1H),7.72(dd,J=6.53,2.76Hz,1H),7.34-7.48(m,2H),6.54(d,J=1.51Hz,1H),6.21(d,J=1.51Hz,1H),5.89(d,J=0.75Hz,1H),5.78(s,1H),4.04(br dd,J=11.42,3.39Hz,1H),3.86-3.94(m,1H),3.75-3.86(m,2H),3.66(td,J=11.80,3.26Hz,1H),3.21-3.42(m,8H),1.30(d,J=6.78Hz,3H)ppm;MS(ES)C2024FNS 理論値:417,実測値:418[M+H]
【0244】
実施例9
【化58】
(R)-((6-(2-アミノ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノン
【化59】
実施例4に従うが、ステップ1で3-ニトロピリジン-2-アミンの代わりに2-ニトロアニリンを使用する変更を加えて、(R)-((6-((2-アミノフェニル)アミノ)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノンを合成した。
【0245】
(R)-((6-(2-アミノ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノン:BrCN(68mg、0.64mmol)のHO(3mL)中の溶液に(R)-((6-((2-アミノフェニル)アミノ)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノン(200mg、0.53mmol)のMeOH(3mL)中の溶液を滴下した。得られた混合物を室温で16h攪拌した。混合物を減圧下で濃縮した。残渣を水性飽和NaHCO(10mL)とEtOAc(10mL)の間で配分した。各層を分離し、水層をEtOAc(2×10mL)で抽出した。合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をマストリガー分取HPLC(移動相:A=0.1%TFA/HO、B=ACN;勾配:B=10~90%;17分;カラム:XBridge C8、10μm、19mm×250mm)で精製することにより、グレーの固体として標題化合物(31mg、14%)を得た。
【0246】
H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.43(t,J=7.8,2H),7.06(t,J=7.5Hz,1H),6.55(s,1H),6.22(s,2H),6.05(s,1H),4.04(d,J=8.4Hz,1H),3.94-3.74(m,3H),3.65(t,J=10.4Hz,1H),3.46-3.15(m,8H),1.28(d,J =6.6Hz,3H)ppm;MS(ES)C1924S 理論値:400,実測値:401[M+H]
【0247】
実施例10
【化60】
(R)-ジメチル((6-(2-(メチルアミノ)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)-λ-スルファノン
【化61】
実施例4に従うが、ステップ1で3-ニトロピリジン-2-アミンの代わりに2-ニトロアニリンを使用する変更を加えて、(R)-((6-((2-アミノフェニル)アミノ)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノンを合成した。
【0248】
(R)-ジメチル((6-(2-(メチルアミノ)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)-λ-スルファノン:(R)-((6-((2-アミノフェニル)アミノ)-4-(3-メチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)イミノ)ジメチル-λ-スルファノン(100mg、0.266mmol)のピリジン(5mL)中の溶液にイソチオシアナトメタン(21mg、0.29mmol)を添加した。混合物を80℃で加熱し、30分間攪拌した。EDCI(71mg、0.37mmol)を添加し、反応混合物を80℃でさらに16h攪拌した。反応混合物を室温まで冷却し、水を添加し(10mL)、水層をEtOAc(2×10mL)で抽出した。合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をマストリガー分取HPLC(移動相:A=0.1%TFA/HO、B=ACN;勾配:B=10~90%;17分;カラム:XBridge C、10μm、19mm×250mm)で精製することにより、白色固体として標題化合物(37mg、34%)を得た。
【0249】
H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.74(s,1H),7.51(d,J=7.6Hz,1H),7.40(d,J=7.6Hz,1H),7.15(t,J=7.5Hz,1H),7.03(t,J=7.5Hz,1H),6.55(s,1H),6.02(s,1H),4.03(d,J=9.2Hz,1H),3.92-3.73(m,3H),3.65(t,J=10.2Hz,1H),3.43-3.20(m,8H),3.15(d,J=4.5Hz,3H),1.27(d,J=6.5Hz,3H)ppm;MS(ES)C2026S 理論値:414,実測値:415[M+H]
【0250】
表1に記載する化合物は、手順欄(「Proc.」)に示す通り、上に説明した方法を用いて合成した。中間体Cについて説明したように、適切なスルホキシイミンを調製した。「Ex.No.」は、上の実施例番号又は同じ方法を用いる別の化合物に対応する。「MW」は、計算分子量であり、「[M+H]」は、質量分光法により実測された分子イオン量である。
【0251】
【表1】
【0252】
【表2】
【0253】
【表3】
【0254】
【表4】
【0255】
【表5】
【0256】
【表6】
【0257】
【表7】
【0258】
以下の化合物は、概して、当技術分野で公知の方法及び前述の方法を用いて作製することができる。
【化62】
【0259】
式Iの化合物がATR/ATRIP複合体の触媒活性を阻害する能力は、以下に記載する通り、CHK1のATR媒介性リン酸化後、Caliperによるアッセイ及びAlphascreenアッセイにおいてHT-29細胞中で測定した。
【0260】
ATR/ATRIP酵素アッセイ
ヒト完全長FLAG-TEV-ATR及びHis-ATRIPをHEK293細胞に同時発現させた。細胞ペレット(20g)を採取し、100mLの溶解バッファー(20mM Tris-HCl pH7.5 室温、137mM NaCl、10%グリセロール、1mM DTT、1%(v/v)Tween-20、0.1%(v/v)NP-40、コンプリートプロテアーゼインヒビターカクテル錠、ホスファターゼインヒビターカクテル錠、2mM MgCl、0.2mM EDTA及び1mM ATP)中に溶解させた。音波処理及び遠心分離後、上清を、バッファーA(20mM Tris-HCl pH7.5 室温、137mM NaCl、10%グリセロール、1mM DTT、2mM MgCl及び0.2mM EDTA)中で予め平衡させておいた1mLの抗FLAG樹脂(Sigmaカタログ♯A2220)と一緒に4℃で3時間インキュベートした。サンプルをカラムにロードし、バッファーAで3回洗浄した。続いて、タンパク質を2mlのバッファーB(バッファーA+200μg/ml 3×FLAGペプチド)で溶離した。
【0261】
新規の化学物質がこのATR/ATRIP複合体中のATR触媒活性を阻害する能力は、Caliperをベースとしたアッセイを用いて評価した。1×キナーゼ反応バッファー(25mM HEPES pH8、0.0055%Brij-35、10mM MnCl及び1mM DTT)を用いて、2×酵素溶液(すなわち4nM酵素)を調製した。次に、2μM ATPで補充した1×キナーゼ反応バッファー中の10uM FAM標識RAD17ペプチド(GL Biochem、カタログ#524315)から構成される2×ペプチド溶液を調製した。10μLの2×酵素溶液を、100%DMSO中の60nLの試験化合物(3×階段希釈から)を含有するアッセイプレートに移した。28℃で30分のインキュベーション後、10μLの2×ペプチド溶液を同じアッセイプレートに移した。反応物を28℃で6時間インキュベートした。30μLの停止バッファー(100mM HEPES pH7.5、0.015%Brij-35、0.2%Coating-3 Reagent(PerkinElmer、カタログ♯PN760050)及び50mM EDTA)を添加した後、データをCaliper計器で収集した。次の式により、変換値を阻害値に変換した:%阻害=(最大変換)/(最大-最小)*100(式中、「最大」は、DMSOコントロールに対応し、「最小」は、低コントロールに対応する)。IC50値は、XLFitにおいて次の式を用いて計算した:Y=最下位+(最上位-最下位)/1+(IC50/X)^HillSlope)。
【0262】
【表8】
【0263】
pCHK1細胞アッセイ
DNA損傷を誘導するために用いられる化学物質である4-ニトロキノリンN-オキシドの添加後、ATRキナーゼの阻害剤は、セリン345での下流標的Chk1キナーゼのATR駆動リン酸化を有効に阻害した。本明細書に記載のATRの阻害剤の細胞IC50をHT-29結腸直腸腺癌細胞中で測定した。加湿インキュベータ(37℃、5%CO及び周囲O)を用いて、10%ウシ胎仔血清(Sigmaカタログ#F2442)及び1×ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibcoカタログ#15140-122)を添加したマッコイ(McCoy)5A培地(ATCCカタログ#30-2007)中にHT-29細胞を常用的に維持した。
【0264】
CHK1(p-Ser345)ALPHASCREEN(登録商標)SUREFIRE(登録商標)アッセイを用意するために、細胞を採取し、10%ウシ胎仔血清及び1×ペニシリン-ストレプトマイシンを添加したマッコイ(McCoy)5A培地中に再懸濁させた。384ウェル黒色CELLSTAR(登録商標)Tissue Culture Plate(VWRカタログ#89085-314)上に40μLの容積中13,000細胞/ウェルの密度で細胞を接種した。5%CO及び周囲Oと共に37℃でマイクロプレートを一晩(約20時間)インキュベートした。試験化合物のストック溶液を100%DMSO(Sigma、カタログ#D2650)中に調製し、100%DMSOを用いて連続的に1:3に希釈した。化合物を培地中でさらに1:33に希釈し、10μL/ウェルを組織培養プレートに移した。化合物の添加後、マイクロプレートを37℃で90分間インキュベートした。培地で希釈した(最終濃度12μM)10μLの4-ニトロキノリンN-オキシド(Sigma Aldrichカタログ#N8141-1G)を組織培養プレートに添加した後、37℃で120分のインキュベーションを行った。次に、細胞をPBSで洗浄し、水で1×に希釈した10μL/ウェルのSUREFIRE(登録商標)キット溶解バッファー(PerkinElmerカタログ#TGRCHK1S50K)を用いて、500rpmのオービタルシェーカにより室温で20分間混合しながら溶解させた。溶解物を-20℃で一晩凍結させた。
【0265】
続いて、4μL/ウェルの溶解物を組織培養プレートから384-ウェルの白色、低容積、PROXIPLATE(商標)(PerkinElmerカタログ#600828)に移した。SUREFIRE(登録商標)キット活性化バッファー(PerkinElmerカタログ#TGRCHK1S50K)を希釈することにより調製した5μL/ウェルのアクセプタービーズ溶液と、SUREFIRE(登録商標)キット反応バッファー(PerkinElmerカタログ#TGRCHK1S50K)中のALPHASCREEN(登録商標)Protein Aアクセプタービーズ(PerkinElmerカタログ#6760617R)とを薄明りの下で溶解物に添加した後、室温で120分間インキュベートした。SUREFIRE(登録商標)キット希釈バッファー(PerkinElmerカタログ#TGRCHK1S50K)中でALPHASCREEN(登録商標)ストレプトアビジンドナービーズ(PerkinElmerカタログ#6760617R)を希釈することにより調製した2μL/ウェルのドナービーズ溶液を薄明りの下で添加した後、室温でさらに120分間インキュベートした。ENVISION(登録商標)プレートリーダ(PerkinElmer)を用いて、pCHK1 ALPHASCREEN(登録商標)シグナルを測定した。Genedata Screenerソフトウェアを使用し、4パラメータロジスティック曲線当てはめを用いてIC50値を計算した。各化合物濃度についてのコントロール率(%)を以下の式:100*(化合物-Min)/(Max-Min)(式中、「Max」は、高コントロール、すなわちDMSOであり、「Min」は、低コントロール、すなわち5μM ATR阻害剤である)により計算した。
【0266】
【表9】
【0267】
製剤例
本明細書に開示の方法及び当技術分野で公知の方法により、医薬組成物を調製することができる。
【0268】
本出願において引用される全ての参考文献、特許又は特許出願(米国又は海外)は、あたかもその全体が本明細書中に記載されたかのように本明細書に援用される。何らかの矛盾が生じる場合、本明細書に文字通り開示される材料が優先される。
【0269】
前述の説明から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確認することができ、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、種々の使用及び条件に適応させるように本発明の種々の変化形態及び修飾形態をなし得る。