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特許7341158電気機械システム及び回転エネルギーを伝達するための位相調整歯車装置
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  • 特許-電気機械システム及び回転エネルギーを伝達するための位相調整歯車装置 図1
  • 特許-電気機械システム及び回転エネルギーを伝達するための位相調整歯車装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】電気機械システム及び回転エネルギーを伝達するための位相調整歯車装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/116 20060101AFI20230901BHJP
   F16H 3/54 20060101ALI20230901BHJP
   F16H 3/72 20060101ALI20230901BHJP
   F03D 15/00 20160101ALI20230901BHJP
【FI】
H02K7/116
F16H3/54
F16H3/72 A
F03D15/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020554587
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2018086360
(87)【国際公開番号】W WO2019122224
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-26
(31)【優先権主張番号】102017130880.6
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520223778
【氏名又は名称】パワートランス・エス・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イェルク・レクテンヴァルト
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0229324(US,A1)
【文献】特開平10-246173(JP,A)
【文献】実開平05-033662(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/00- 7/20
F16H 3/54
F16H 3/72
F03D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝動機構内の回転エネルギー、トルク、及び出力を伝達するための電気機械システムであって、前記伝動機構に連結された、エネルギー変換のための少なくとも1つの第1、第2及び第3の機械(2、3、4)と、遊星歯車装置(7)を備えた位相調整歯車装置(1)と、を有しており、前記遊星歯車装置の太陽歯車(8)は、第1のシャフト(5)を介して、トルクを伝達するために、前記第1の機械(2)に連結されており、前記遊星歯車装置の少なくとも1つの遊星歯車(9)は、第2のシャフト(6)を介して、トルクを伝達するために、前記第2の機械(3)に連結されており、前記第3の機械(4)は、三相同期機として構成されており、前記遊星歯車装置(7)の内歯車(10)は、前記三相同期機(4)のロータを形成しているシステムにおいて、前記内歯車(10)は、前記遊星歯車装置(7)のハウジング(15)に接続されていること、及び永久磁石(11)が、前記三相同期機を励起するために、前記内歯車(10)の外壁及び前記遊星歯車装置(7)の前記ハウジング(15)に配置されていること、を特徴とするシステム。
【請求項2】
前記三相同期機(4)が、エネルギー変換の制御のために、駆動電子機器(13)に連結されており、前記駆動電子機器(13)は、エネルギー変換が、前記三相同期機(4)内で、前記第1の機械及び/又は前記第2の機械(2、3)によって変換されるエネルギーに応じて行われるように構成されていることを特徴とする、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記駆動電子機器(13)は、前記三相同期機(4)が少なくとも一時的に四象限運転されるように構成されていることを特徴とする、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
前記駆動電子機器(13)は、前記第1の機械及び/又は前記第2の機械(2、3)によって変換されるエネルギーに応じて、前記三相同期機(4)の空隙トルクが少なくとも一時的に変化するように構成されていることを特徴とする、請求項又はに記載のシステム。
【請求項5】
前記遊星歯車装置(7)と、前記第1の機械及び/又は前記第2の機械(2、3)との間に、少なくとも1つのさらなる歯車装置(12)が配置されていることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記遊星歯車装置(7)が、少なくとも1つのさらなる歯車装置(12)と共に、共通の油室内に配置されていることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の機械又は前記第2の機械(2、3)が、電力供給装置に接続された三相非同期機として構成されていることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1の機械又は前記第2の機械(2、3)が、内燃機関、ターボ機関、風車ロータ又は風力タービンとして構成されていることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
遊星歯車装置(7)と、前記遊星歯車装置(7)に導入されたトルクを意図的に分割するための手段と、を有する位相調整歯車装置(1)であって、前記遊星歯車装置(7)は、中央に配置された太陽歯車(8)と、前記太陽歯車(8)に係合した、少なくとも1つの遊星歯車(9)と、を有しており、前記太陽歯車(8)は、第1のシャフト(5)と、トルクを伝達するために接続されており、少なくとも1つの前記遊星歯車(9)は、第2のシャフト(6)と、トルクを伝達するために接続されており、前記遊星歯車装置(7)の内歯車(10)は、回転可能に取り付けられており、前記遊星歯車装置(7)に導入されたトルクを意図的に分割するための前記手段は、駆動電子機器(13)の現在の動作状況に基づいて生成される制御信号に応じて、制動トルク又は加速トルクを前記内歯車(10)に導入し、前記遊星歯車装置(7)に導入されたトルクを意図的に分割するための前記手段は、三相同期機(4)を有しており、前記三相同期機のロータは、前記内歯車(10)又は前記内歯車(10)に接続された部材によって形成された位相調整歯車装置において、前記内歯車(10)は、前記遊星歯車装置(7)のハウジング(15)に接続されており、永久磁石(11)は、前記内歯車(10)の外壁及び前記遊星歯車装置(7)の前記ハウジング(15)に配置されていることを特徴とする位相調整歯車装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に回転エネルギー、トルク及び出力の可変速伝達のための電気機械システムと、独立請求項に記載された、当該システムのための位相調整歯車装置と、に関する。当該システムは、エネルギー変換のための複数の機械を備えており、当該機械は、伝動機構に連結されている。エネルギー変換のための各機械は、モータ又は発電機として運転可能であり、各機械が連結されている駆動軸又は出力軸の回転速度は変化する。電気機械システムは、伝動機構に連結された、エネルギー変換のための少なくとも1つの第1、第2及び第3の機械を備えた伝動機構と、遊星歯車装置を備えた位相調整歯車装置と、を有しており、遊星歯車装置の太陽歯車は、第1のシャフトを介してトルクを伝達するために、第1の機械に連結されており、遊星歯車装置の少なくとも1つの遊星歯車は、第2のシャフトを介してトルクを伝達するために、第2の機械に連結されており、第3の機械は、三相同期機として構成されており、遊星歯車装置の内歯車は、三相同期機のロータを形成している。
【背景技術】
【0002】
三相同期機を、差動歯車において、風力発電設備のために用いる電気機械システムは、特許文献1から知られている。
【0003】
一般的に、例えば発電機、内燃機関又はターボ機械等の、エネルギー変換のための、機械的に互いに連結された様々な機械を有する設備が知られている。このような設備には、しばしば、位相調整歯車装置が設けられており、当該位相調整歯車装置を用いて、様々な機械によって導入又は除去されるトルクが、可変速制御され得る。一般的に、遊星歯車機構又は遊星歯車装置は、用いられる位相調整歯車装置の主要な構成要素である。遊星歯車装置は、中央に配置され、中心軸に接続され、外側に歯を有する太陽歯車と、太陽歯車と噛み合う少なくとも1つの遊星歯車と、少なくとも1つの遊星歯車と係合している内歯車と、を有しており、当該内歯車に対して、少なくとも1つの遊星歯車が相対運動を実施する。
【0004】
多くの場合、主駆動側で変化する主駆動軸の回転速度にも関わらず、主出力軸において、少なくとも略不変の回転速度を保証するために、位相調整歯車装置が用いられる。風力の変動に起因する風車ロータの回転速度の変動を補償し、一方では風力発電設備の伝動機構を急激に生じる最大負荷から保護し、他方では発電機の効果的な運転を可能にするためには、対応する技術的解決法が、例えば風力発電設備に関して必要とされる。この関連において、特許文献2には、可変の入力回転速度と、略一定の出力回転速度と、を有する可変出力を伝達するための伝動機構が記載されている。ロータの変化する回転速度を、同期発電機の駆動軸の一定の回転速度に変換するために、流体力学的トルクコンバータに連結された、遊星歯車装置として構成された位相調整歯車装置が設けられている。位相調整歯車装置は、風力タービンの伝動機構内で、主要歯車装置と同期発電機との間に配置されている。風車ロータの出力軸は遊星歯車に、太陽歯車はトルクコンバータのポンプホイールを介して発電機軸に、内歯車はトルクコンバータのタービンホイールと接続されている。ガイドベーンの意図的な位置調整を通じて、トルクコンバータの制動効果が変化する。記載された技術的解決法の欠点は、一方では、トルクコンバータが比較的複雑な構造を有していることであり、他方では、まさに風力発電設備の経済性にとって重要な部分負荷領域における、システムに起因する油圧スリップによって、高い損失が生じることである。
【0005】
その他の点では、非特許文献1の「電気制御された位相調整歯車装置を備えた可変速風力発電設備」という記事から、風力発電設備の可変速運転のための、電気制御された、やはり遊星歯車装置として構成された位相調整歯車装置の使用が知られている。ここに記載された技術的解決法は、回転速度の可変性、すなわち風力発電設備のロータと発電機との間における回転速度比の意図的な変化を、設備の電気的ではなく機械的な部分において形成することに基づいている。このために、遊星歯車装置の内歯車に接続されたシャフトが、かご形ロータを有する、電力変換装置によって給電される非同期機を用いて、需要に応じて駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】オーストリア国特許発明第507395号明細書
【文献】独国特許発明第10314757号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】P. Caselitz他、会議録「DEWEK ’92」、p.171~175
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
回転エネルギーを受容又は放出する、エネルギー変換のための様々な機械を有する伝動機構における回転速度変化のための、先行技術から知られた技術的解決法に基づき、本発明の課題は、比較的単純な構造を有し、安定した、伝動機構の動的負荷を最小限に抑えるシステムを記載することにある。当該システムはさらに、様々な技術分野における有利な使用に適しているべきであり、特に効果的な発電機としての運転も、モータとしての運転も、可能にするべきである。さらに、電力供給網への電気エネルギーの供給が、可能な限り効果的に、かつ可能な限り複雑な電子機器及びその他の制御技術を用いずに可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題は、請求項1に記載の、回転エネルギーを伝達するための電気機械システムと、請求項12に記載の位相調整歯車装置と、を用いて解決される。本発明の有利な態様は、従属請求項の対象であり、以下の説明において、部分的に図面を用いて詳細に言及される。
【0010】
本発明は、伝動機構内の回転エネルギー、トルク及び出力を伝達するための電気機械システムに関するものであり、当該電気機械システムは、伝動機構に連結された、エネルギー変換のための少なくとも1つの第1、第2及び第3の機械と、遊星歯車装置として構成され、3つの機械と機能的に結合された位相調整歯車装置と、を有している。遊星歯車装置の太陽歯車は、第1のシャフトを介して、トルクを伝達するために、第1の機械に連結されており、少なくとも1つの遊星歯車は、第2のシャフトを介してトルクを伝達するために、第2の機械に連結されている。第3の機械は、三相同期機として構成されている。遊星歯車装置の内歯車は、三相同期機のロータを形成しており、三相同期機は、以下の説明において、読みやすさを考慮して、同期機と表記される。本発明は、内歯車が、遊星歯車装置のハウジングに接続されていること、及び遊星歯車装置の内歯車及び/又はハウジングに、三相同期機を励起するために、永久磁石が配置されている、特に固定されていることを特徴としている。
【0011】
同期機は、各動作状態に依存して、モータとして、又は発電機として運転されるので、必要に応じて、制動トルク又は加速トルクが、遊星歯車装置の内歯車に導入される。同期機の適切な作動は、有利には、駆動電子機器を用いて行われ、当該駆動電子機器は、各動作状況に基づいて、すなわち特に太陽歯車及び/又は少なくとも1つの遊星歯車又はこれらの歯車に連結されたシャフトの回転速度を考慮して、制御信号を生成する。例えば、遊星歯車装置の主駆動側におけるシャフトの回転速度が、主出力側において必要とされる回転速度に関して低すぎる場合、同期機は、適切な加速トルクを、内歯車に導入することができる。同様に、内歯車が、同期機によって、その位置に固定されること、又は内歯車が逆方向に回転することさえも考えられる。基本的に、遊星歯車装置を一段式又は多段式に設計することが考えられる。さらに、遊星歯車装置は、他の歯車装置、例えば風力発電設備の主駆動歯車装置、又は加工機若しくは工作機械の増速機に連結されていてよい。
【0012】
本発明の特別な実施形態によると、第3の機械は、永久磁石によって励起される同期機として構成されており、回転可能に取り付けられた遊星歯車装置の内歯車は、同期機の励起のために、永久磁石と機能的に接続されている。好ましくは、永久磁石によって励起される同期機は、2つ以上、特に4つの極を有する、多極同期機である。
【0013】
一般的に、内歯車自体が同期機のロータを形成し、永久磁石は直接内歯車上に配置、特に固定されていることが考えられる。とは言え、好ましくは内歯車が遊星歯車装置のハウジングに接続されており、永久磁石が、内歯車及び/又はハウジング上に配置、特に固定されていることが規定されている。
【0014】
本発明のさらなる実施形態では、同期機は、同期機内で実現したエネルギー変換の制御のために、駆動電子機器によって制御される。この関連において、エネルギー変換とは、特にモータとしての運転の場合は、電気エネルギーの回転エネルギーへの変換であり、発電機としての運転の場合は、回転エネルギーから電気エネルギーへの変換であると理解される。有利には、同期機内でのエネルギー変換が、少なくとも一時的に、第1の機械及び/若しくは第2の機械によって変換されるエネルギー、又はそれぞれ第1の機械及び/若しくは第2の機械によって放出若しくは受容される出力に依存して行われるように構成された駆動電子機器が設けられている。
【0015】
エネルギー変換のための第1の機械及び第2の機械に関しても、機械を発電機として、又はモータとして運転することが考えられる。その際、本発明では遊星歯車装置として構成された位相調整歯車装置は、伝動機構の主駆動軸及び主出力軸と接続されており、主駆動軸又は主出力軸はそれぞれ、太陽歯車に接続された中心軸か、又は少なくとも1つの遊星歯車にキャリアを介して接続された遊星キャリアである。このような方法で、モータ又は発電機が駆動軸を介して、又は発電機としての運転の場合には出力軸を介して、太陽歯車に直接又は間接に接続されていることがあり得る。少なくとも1つの遊星歯車、又は好ましくは複数の遊星歯車は、遊星キャリアに接続されており、遊星キャリアは、モータとしての運転の場合、直接出力軸を形成するか、又は少なくとも1つのさらなる出力段と接続されている。発電機としての運転の場合、出力フローが逆転し、遊星キャリアは、直接又は間接に駆動され、トルク、回転エネルギー及び出力を、少なくとも1つの遊星歯車に伝達する。
【0016】
その他の点では、システム全体、特に能率又は効率及び電気損失の最小化にとって、駆動電子機器が、同期機が少なくとも一時的に四象限運転されるように構成されていることが、特に有利である。さらに、本発明の特別なさらなる発展形態では、駆動電子機器が、第1の機械及び/又は第2の機械によって供給されるか、又は除去される出力に依存して、同期機の空隙トルクが可変であるように構成されていることが規定されている。対応して設けられた調整装置を用いて、ステータとロータとの間の磁束と、遊星歯車装置の内歯車に連結された同期機のロータの出力受容又は出力放出と、を意図的に目標を定めて変化させることが可能である。
【0017】
特に好ましい方法では、遊星歯車装置は、少なくとも1つのさらなる歯車装置と共に、共通の油室内に配置されている。この関連において、さらなる歯車装置が、遊星歯車装置に連結されており、遊星歯車装置と第1の機械又は第2の機械との間に配置されており、これら両方の歯車装置は、共通の油室内に、すなわち外側に対して油密に密封されたハウジング内に配置されていることが考えられる。このような方法で、一方では、遊星歯車装置と少なくとも1つの付加的な歯車装置とが特に省スペースに配置されることが可能であり、他方では、システム全体又は伝動機構全体に設けられた密封面の数と、それに伴って、シール及び保守箇所の数と、が最小化される。
【0018】
本発明のさらなる実施形態では、第1の機械又は第2の機械が、電力供給装置に接続された三相非同期機として構成されていることが規定されている。この関連において、第1の機械又は第2の機械が、電力供給網に接続されていると有利である。この際に設けられる三相非同期機は、モータとしての運転においても、発電機としての運転においても機能し得る。従って、例えば三相非同期機が、風車ロータ又は風力タービンによって可変速に放出される出力を電気エネルギーに変換し、接続された電力供給網に供給することが考えられる。このとき、本発明に基づいて構成された伝動機構に関して重要なのは、駆動側、すなわち風車ロータが位置している伝動機構の側における回転速度の変化にも関わらず、出力側、従って発電機側に位置する発電機軸は、少なくとも略一定の回転速度で回転するということである。
【0019】
しかしまた、第1の機械又は第2の機械として、別個に励起される、又は、永久磁石によって励起される同期機が用いられ得る。この場合、発電機軸は、極の対の数を通じて、ネットワークの周波数と同期していなければならない。
【0020】
本発明の代替的な態様によると、第1の機械は、三相非同期機であり、当該三相非同期機は、本発明に基づいて構成された位相調整歯車装置を有する伝動機構を通じて、工作機械又は加工機を、特に鉱山業において駆動する。この場合、有利な方法において、例えば工具における負荷の変化によってもたらされる加工機側での負荷変動が、意図的に、位相調整歯車装置と、特に内歯車とによって、これらに連結された同期機に導入される。さらに、加工機の穏やかで制御された始動が、非同期機の始動時に伝動機構に放出される出力が制御されて、内歯車の移動によって駆動され、発電機として機能する同期機を通じて電気エネルギーに変換され、当該電気エネルギーが、接続されたネットワークに再び放出されることによって実現され得る。
【0021】
本発明に基づいて構成された伝動機構を、爆発又は爆発性ガスから防護された領域で用いることを可能にするために、例えばモータ、周波数変換器及び持続的に励起された同期機等の、システムの各部材は、爆発又は爆発性ガスから防護されているように構成されている。
【0022】
本発明のさらなる態様が定めるところによると、第1の機械又は第2の機械は、内燃機関、又は、ガスタービン等のターボ機械として構成されている。それぞれ重要なのは、第1の機械及び/若しくは第2の機械によって、トルク若しくは出力が、伝動機構に導入されるか、又は伝動機構によって受容されることである。この関連において、本発明に基づいて構成された、位相調整歯車装置を有する電気機械システムを、車両伝動機構、特にハイブリッド駆動部を有する車両の伝動機構に関して、回転エネルギー、トルク及び出力を伝達するために用いることが考えられる。このような場合、第1の機械として、モータ、特に内燃機関が用いられ、このようなモータは、一般的にディーゼルエンジン、ガソリンエンジン又はガスエンジンであり得る。同様に、車両の駆動にタービンを用いることが考えられる。
【0023】
本発明の特別なさらなる発展形態においては、車両の伝動機構は、内燃機関又はタービンが好ましくはエネルギーに関して最適な領域において稼働する一方で、車両の駆動軸の回転速度の調整が、少なくとも部分的に、遊星歯車装置の内歯車に連結された持続的に励起された同期機によって行われるように構成されている。車両が停止している場合、有利には、車両内の電気エネルギー貯蔵装置が、そのロータが遊星歯車装置の内歯車によって、又は内歯車に接続された遊星歯車装置ハウジングによって形成される同期機によって充電される。
【0024】
回転エネルギーを伝達するための電気機械システムの他に、本発明は、遊星歯車装置と、遊星歯車装置に導入されるトルクを意図的に分割するための手段と、を有する位相調整歯車装置にも関する。遊星歯車装置は、中央に配置された太陽歯車と、太陽歯車に係合した、少なくとも1つの遊星歯車と、を有しており、このうち、太陽歯車は、第1のシャフトに、トルクを伝達するために接続されており、少なくとも1つの遊星歯車は、第2のシャフトに、トルクを伝達するために接続されている。さらに、遊星歯車装置は、回転可能に取り付けられた内歯車を有しており、内歯車には、遊星歯車装置に導入されたトルクを意図的に分割するための手段が、好ましくは駆動電子機器の現在の動作状況に基づいて生成される制御信号に依存して、制動力又は加速力を導入する。遊星歯車装置に導入されたトルクを意図的に分割するための手段は、同期機を有しており、当該同期機のロータは、内歯車又は内歯車に接続された部材によって形成される。本発明に基づいて構成された位相調整歯車装置は、内歯車が、永久磁石が配置された遊星歯車装置のハウジングに接続されていることを特徴としている。好ましくは、同期機は、間接又は直接に内歯車に接続された永久磁石によって励起される。特に内歯車は、永久磁石が固定されている遊星歯車装置のハウジングに接続されていてよい。この際、永久磁石は、遊星歯車装置のハウジング及び/又は内歯車の外壁の上に載置され得るか、又は中にはめ込まれ得る。
【0025】
本発明に基づいて構成された、回転エネルギー、トルク及び出力を伝達するための電気機械システムと、可変速に動作し得る伝動機構の実現に適した位相調整歯車装置と、は内歯車が遊星歯車装置のハウジングに接続されていることと、内歯車及び/又は遊星歯車装置のハウジングには、永久磁石が、三相同期機の励起のために配置されていることと、を特徴としている。内歯車及び/又は遊星歯車装置のハウジングは、同期機のロータを形成している。好ましくは、当該同期機は、持続的に励起された同期機であり、永久磁石は、特に内歯車及び/又は内歯車に接続された遊星歯車装置のハウジングに固定されている。例えば遊星歯車装置の主駆動軸又は主出力軸の回転速度等の動作パラメータに依存した、同期機の適切な作動によって、様々な負荷条件に依存して、同期機によって出力が、伝動機構に導入されるか、又は取り出される。同期機が出力を伝動機構から受容する限りにおいて、電気エネルギーが生成され、接続された電力供給網に供給される。
【0026】
従って、本発明に係る位相調整歯車装置を有する伝動機構の動作の間、主伝動機構及び同期機の出力が加算又は減算されることが可能である。減算の場合、主伝動機構によって伝達される出力又はトルクの一部が、同期機によって受容かつ放出され、適切な駆動電子機器を用いることによって、連続的な制御と、従って回転速度「0」から、モータ又は発電機の方向における連続的な回転速度調整と、が可能である。この際、出力の一部のみが、駆動電子機器を通じて誘導され、それによって、電子機器における対応する省力がもたらされる。
【0027】
以下において、本発明を、発明思想全体を限定することなく、個別の実施形態を基に、図面を用いて詳細に説明する。示されているのは以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】風力発電設備の伝動機構を示す図である。
図2】加工機の伝動機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明に基づいて構成された、回転エネルギー、トルク及び出力を伝達するための電気機械システムを示しており、当該電気機械システムは、風力発電設備の伝動機構として用いられる。特に当該システムは、回転エネルギー、トルク及び出力の可変速伝達を行うように構成されている。エネルギー変換のための第1の機械及び第2の機械2、3は、この場合、非同期機2及び風車ロータ3であり、これらは両方、主伝動機構を介して互いに接続されている。風力発電設備の風車ロータ3は、ロータ出力軸14と、主歯車装置12と、これらと一列に接続された、遊星歯車装置7として構成された位相調整歯車装置1と、を通じて、非同期発電機2に接続されている。非同期発電機2は、電力供給網に接続されており、風車ロータ3によって伝動機構に導入された出力を、電気エネルギーに変換する。この際、風車ロータ3と、それに伴ってロータ出力軸14と、が可変速に回転する一方で、発電機軸の回転速度は少なくとも略一定であることが重要である。
【0030】
非同期発電機2の代わりに、同期発電機を用いることも可能である。この場合、発電機軸は、極の対の数を通じて、ネットワークの周波数と同期していなければならない。
【0031】
遊星歯車装置7の太陽歯車8は、非同期発電機2の駆動軸5に接続されている。加えて、太陽歯車8を取り巻く遊星歯車9は、キャリアと、キャリアに接続された遊星キャリア6と、主歯車装置12と、を通じて、少なくとも間接的に、ロータ出力軸14及び風力発電設備のロータ3に接続されている。遊星歯車9は、さらに、遊星歯車装置7の内歯車10を動かすか、又は内歯車10によって駆動される。内歯車10は、やはり、遊星歯車装置7のハウジング15に接続されており、内歯車10とハウジング15とは、回転可能に取り付けられている。
【0032】
遊星歯車装置7のハウジング15と、内歯車10の外壁と、には、永久磁石11が、内歯車10がハウジング15と共に、持続的に励起された多極同期機のロータを形成するように固定されており、当該同期機は、伝動機構に連結された、エネルギー変換のための第3の機械4である。同期機4は、周波数変換器16を有する駆動電子機器13によって制御され、動作状況に依存して、必要に応じて、出力が、同期機4から内歯車10に伝達されるか、又は内歯車10から受容されるように動作する。このような方法で、同期機4を用いて、必要に応じて、制動トルク又は加速トルクを内歯車10と、従って遊星歯車装置7に接続された伝動機構と、に導入することが可能である。
【0033】
風速と、従って出力と、が低い場合、非同期発電機2は停止される。風車ロータ3によって生じる出力は、この場合、ロータ出力軸14、主歯車装置12、遊星キャリア6、遊星歯車9、及び内歯車10を通じて、同期機4に導入され、それによって、同期機4は発電機として動作し、生成された電気エネルギーは、駆動電子機器13を通じて直接、接続された電力供給網に供給される。風車ロータ3の回転速度が、非同期発電機2の発電機軸5の公称回転速度に略到達すると同時に、そのブレーキが解除され、持続的に励起された同期機4によって、位相角と回転数とが、接続されたネットワークに存在する値に対応し、発電機2が、ネットワークに直接接続され得るまで、発電機軸において付加的な回転が生じる。
【0034】
非同期発電機2が、電力供給網に接続されたと同時に、持続的に励起された同期機4は、同期機4が遊星歯車装置7のハウジング15と、ハウジング15に接続された内歯車10と、のみを保持するように動作する。この動作状態において、持続的に励起された同期機4は、接続された電力供給網に出力を放出することもなく、電力供給網から言うに値する程度の出力を受容することもない。結果として、広い範囲にわたって、伝動機構の出力が、同時に正弦波である電圧曲線及び電流曲線において、一定の回転速度で動作している非同期機2を用いて、接続された電力供給網に供給され得る。しかしまた、内歯車10が適切な制動装置によって止められる場合、持続的に励起された同期機を、設備の当該回転速度範囲において、完全に停止させることも可能である。
【0035】
例えば突風によって、風車ロータ3の回転速度と、従って回転数と、がさらに上昇する場合、これによって付加的に伝動機構内に供給される出力は、同期機4のロータとして構成された内歯車10の回転によって、電気エネルギーに変換され、電気エネルギーは、駆動電子機器13を通じて、接続されたネットワークに供給される。さらに、比較的強い突風が、図1に示された持続的に励起された同期機4の空隙トルクの調整によって、付加的に補償され得る。
【0036】
風力発電設備の伝動機構を基に示した、位相調整歯車装置1を有する電気機械システムの特別な利点は、システム全体が機械的に過負荷になることなく、突風が、同期機4のロータの付加的な加速と、従って発電量の増大と、をもたらすという点にある。言及されたシステム挙動は、二重に給電される非同期発電機に接続された風力発電設備のシステム挙動と類似しているが、例えば摩耗しやすいカーボンブラシの使用、及び接続された電力供給網の支援の欠如といった、風力発電設備のシステム挙動の欠点を回避している。
【0037】
図2には、本発明に基づいて構成された、位相調整歯車装置1を有する電気機械システムの、トルク、回転エネルギー及び出力の、例えば鉱山業で用いられるような加工機の伝動機構における伝達のための使用が示されている。特に、当該システムは、トルク、回転エネルギー及び出力を可変速に伝達するように構成されている。図2に係る伝動機構は、エネルギー変換のための第1の機械2を形成する非同期モータを有しており、非同期モータは、当該実施形態では主伝動機構に連結されたエネルギー変換のための第2の機械3である加工機と同じく、電力供給網に直接接続されている。対応する伝動機構が、鉱山業又はその他の爆発の危険のある分野において用いられる限りにおいて、設備の部材全体、特に使用される電気モータ及び発電機は、爆発又は爆発性ガスから防護されるように構成されるべきである。
【0038】
図1との関連において言及される伝動機構と比較すると、風車ロータを除いて、同じか又は少なくとも類似の部材が使用されるが、出力フローは、伝動機構において逆の方向に、すなわち非同期モータ2から、モータ出力軸5、遊星歯車装置7として構成された位相調整歯車装置1、遊星キャリア6、付加的な歯車装置段12及び加工機3の駆動軸17を通って、加工機3まで流れる。図示された実施形態の利点は、モータとして動作する非同期機2が、電力供給網に直接接続され得ることである。非同期機2がネットワークに接続される間、同時に、持続的に励起された、伝動機構に連結されたエネルギー変換のための第3の機械4である同期機の空隙には、駆動電子機器13によって、小さい逆トルクが形成され、それによって、同期機4のロータとして構成された内歯車10が回転し、非同期機2によって伝動機構に導入された出力は、大部分が、同期機4とその駆動電子機器13とを通じて、電気エネルギーの形で、接続された電力供給網に供給される。この際、特に初期段階の開始時に、非同期機2によって放出される出力は、略完全に、同期機4によって、再び電力供給網に供給される。同期機4内の逆トルクを軟らかく形成することによって、伝動機構のパルス状の過負荷が、略完全に回避される。
【0039】
非同期機2と、位相調整歯車装置1及び増速機12を通じて非同期機2に接続された加工機3と、が動作回転速度に達した後、伝動機構は準定置運転の状態にあり、同期機4内での所定のトルクを位相調整歯車装置1で調整することによって、過負荷クラッチの効果が得られる。例えば加工機3の障害による過負荷状況は、同期機4のロータの加速をもたらし、伝動機構のその他の部材に機械的に過負荷を加えることなく、伝動機構内における、非同期機2によって形成される付加的な出力を、再び直接ネットワークに供給する可能性がある。出力の一部のみが駆動電子機器13を通じて誘導されるので、駆動電子機器13は、出力に対応して調整され、比較的安価に製造可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 位相調整歯車装置
2 第1の機械:モータ/発電機
3 第2の機械:モータ/発電機
4 第3の機械:三相同期機
5 第1のシャフト:駆動軸又は出力軸
6 第2のシャフト:駆動軸又は出力軸
7 遊星歯車装置
8 太陽歯車
9 遊星歯車
10 内歯車
11 永久磁石
12 さらなる歯車装置段
13 駆動電子機器
14 ロータ出力軸
15 遊星歯車装置のハウジング
16 周波数変換器
17 加工機の駆動軸
図1
図2