(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】バスバーの製造方法、バスバーおよび電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/503 20210101AFI20230901BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20230901BHJP
H01M 50/569 20210101ALI20230901BHJP
【FI】
H01M50/503
H01M50/505
H01M50/569
(21)【出願番号】P 2020554789
(86)(22)【出願日】2019-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2019034420
(87)【国際公開番号】W WO2020090216
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】P 2018202973
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】小島 康雅
(72)【発明者】
【氏名】三原 弘幸
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-092259(JP,A)
【文献】特開2000-040500(JP,A)
【文献】特開2000-138045(JP,A)
【文献】特開2017-216095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/503
H01M 50/505
H01M 50/569
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池を電気的に接続するバスバーの製造方法であって、
複数の電線の束における、当該束の延びる方向に所定の間隔をあけて並ぶ複数の第1領域に、圧力をかけて前記複数の電線を圧接し、各電池の出力端子に接合される複数の端子接合部を形成する工程を含むことを特徴とするバスバーの製造方法。
【請求項2】
前記束は、平編線である請求項1に記載のバスバーの製造方法。
【請求項3】
前記端子接合部の形成工程は、前記第1領域における非圧接領域側の縁部に、前記非圧接領域に近づくにつれて厚さが徐々に大きくなる傾斜部を形成することを含む請求項1または2に記載のバスバーの製造方法。
【請求項4】
前記端子接合部の形成工程の前に実施される工程であって、前記束における各第1領域を包含する複数の第2領域に圧力をかけて前記複数の電線を圧接し、前記第1領域に前駆端子接合部を形成し、前記第2領域のうち前記第1領域を除く領域に電圧検出線接続部を形成する工程を含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載のバスバーの製造方法。
【請求項5】
複数の電池を電気的に接続するバスバーであって、
各電池の出力端子に接合される複数の端子接合部と、
前記複数の端子接合部をつなぐ連結部と、を備え、
前記連結部は、複数の電線の束における非圧接部で構成され、
前記複数の端子接合部は、前記束における圧接部で構成されることを特徴とするバスバー。
【請求項6】
前記束は、平編線である請求項5に記載のバスバー。
【請求項7】
前記端子接合部は、前記連結部側の縁部に、前記連結部に近づくにつれて厚さが徐々に大きくなる傾斜部を有する請求項5または6に記載のバスバー。
【請求項8】
前記端子接合部と前記連結部との間に配置される電圧検出線接続部を備える請求項5乃至7のいずれか1項に記載のバスバー。
【請求項9】
前記端子接合部を3つ以上有する請求項5乃至8のいずれか1項に記載のバスバー。
【請求項10】
請求項5乃至9のいずれか1項に記載のバスバーと、
前記バスバーにより電気的に接続される複数の電池と、を備えることを特徴とする電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバーの製造方法、バスバーおよび電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両用等の、高い出力電圧が要求される電源として、複数個の電池が電気的に接続された電池モジュールが知られている。従来、このような電池モジュールでは、隣り合う電池の出力端子どうしがバスバーで接続されていた。電池モジュールに用いられるバスバーに関して、特許文献1には、板状のバスバーの中間に屈曲部を設けることで、バスバーで接続された出力端子どうしの相対変位を吸収する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電池モジュールのさらなる高容量化が求められており、この要求を満たすために電池の高容量化が進んでいる。電池が高容量化すると電池の寸法変化量が大きくなるため、バスバーで接続された出力端子どうしの相対的な変位量が大きくなる。このため、バスバーには、出力端子どうしのより大きな変位に追従して、電池間の電気的接続の安定性を高めることが求められる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、電池間の電気的接続の安定性を高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、バスバーの製造方法である。当該製造方法は、複数の電池を電気的に接続するバスバーの製造方法であって、複数の電線の束における、当該束の延びる方向に所定の間隔をあけて並ぶ複数の第1領域に、圧力をかけて複数の電線を圧接し、各電池の出力端子に接合される複数の端子接合部を形成する工程を含む。
【0007】
本発明の他の態様は、バスバーである。当該バスバーは、複数の電池を電気的に接続するバスバーであって、各電池の出力端子に接合される複数の端子接合部と、複数の端子接合部をつなぐ連結部と、を備える。連結部は、複数の電線の束における非圧接部で構成され、複数の端子接合部は、複数の電線の束における圧接部で構成される。
【0008】
本発明の他の態様は、電池モジュールである。当該電池モジュールは、上記態様のバスバーと、バスバーにより電気的に接続される複数の電池と、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電池間の電気的接続の安定性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る電池モジュールの斜視図である。
【
図2】
図2(A)は、バスバーの斜視図である。
図2(B)は、バスバーの側面図である。
【
図3】
図3(A)~
図3(D)は、バスバーの製造工程を示す側面図である。
【
図4】
図4(A)~
図4(E)は、変形例1に係るバスバーの製造工程を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
図1は、実施の形態に係る電池モジュールの斜視図である。電池モジュール1は、複数の電池2と、複数のバスバー4と、一対のエンドプレート6と、一対の拘束部材8と、を主な構成として備える。
【0014】
各電池2は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池等の充電可能な二次電池である。電池2は、いわゆる角形電池であり、扁平な直方体形状の外装缶を有する。外装缶の一面には略長方形状の開口(図示せず)が設けられ、この開口を介して外装缶に電極体や電解液等が収容される。外装缶の開口には、外装缶を封止する封口板10が設けられる。封口板10は、矩形状の板である。
【0015】
封口板10には、長手方向の一端寄りに正極の出力端子12が設けられ、他端寄りに負極の出力端子12が設けられる。一対の出力端子12はそれぞれ、電極体を構成する正極板、負極板と電気的に接続される。以下では適宜、正極の出力端子12を正極端子12aと称し、負極の出力端子12を負極端子12bと称する。また、出力端子12の極性を区別する必要がない場合、正極端子12aと負極端子12bとをまとめて出力端子12と称する。外装缶、封口板10および出力端子12は導電体であり、例えば金属製である。封口板10と外装缶の開口とは、溶接等により接合される。各出力端子12は、封口板10に形成された貫通孔(図示せず)に挿通される。各出力端子12と各貫通孔との間には、絶縁性のシール部材が介在する。
【0016】
本実施の形態では、説明の便宜上、封口板10が配置される側の面を電池2の上面、封口板10とは反対側の面を電池2の底面とする。また、電池2は、上面および底面をつなぐ2つの主表面を有する。この主表面は、電池2が有する6つの面のうち面積の最も大きい面である。また、主表面は、上面および底面の長辺に接続される長側面である。上面、底面および2つの主表面を除いた残り2つの面は、電池2の側面である。この側面は、上面および底面の短辺に接続される短側面である。これらの方向および位置は、便宜上規定したものである。したがって、例えば、本発明において上面と規定された部分は、底面と規定された部分よりも必ず上方に位置することを意味するものではない。
【0017】
封口板10には、一対の出力端子12の間に安全弁(図示せず)が設けられる。安全弁は、外装缶の内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、内部のガスを放出できるように構成される。各電池2の安全弁は、ガスダクト(図示せず)に接続され、電池内部のガスは安全弁からガスダクトに排出される。
【0018】
複数の電池2は、隣り合う電池2の主表面どうしが対向するにして所定の間隔で積層される。なお、「積層」は、任意の1方向に複数の部材を並べることを意味する。したがって、電池2の積層には、複数の電池2を水平に並べることも含まれる。また、各電池2は、出力端子12が同じ方向を向くように配置される。本実施の形態では便宜上、各電池2は、出力端子12が鉛直方向上方を向くように配置される。隣接する2つの電池2は、一方の電池2の正極端子12aと他方の電池2の負極端子12bとが隣り合うように積層される。
【0019】
正極端子12aと負極端子12bとは、バスバー4により電気的に接続される。つまり、バスバー4は、複数の電池2を電気的に接続する。直列接続の最外側に位置する出力端子12には、外部接続端子(図示せず)が電気的に接続される。外部接続端子は、電池モジュール1の外部に引き回される配線を介して外部負荷に接続される。なお、隣接する複数個の電池2における同極性の出力端子12どうしをバスバー4で並列接続して電池ブロックを形成し、電池ブロックどうし、または電池ブロックと電池2とを直列接続してもよい。バスバー4の構造については、後に詳細に説明する。
【0020】
電池モジュール1は、複数のセパレータ(図示せず)を有する。各セパレータは、絶縁スペーサとも呼ばれ、隣接する2つの電池2の間に配置されて、隣り合う2つの電池2の外装缶どうしを電気的に絶縁する。また、セパレータは、電池2とエンドプレート6との間に配置されて、電池2の外装缶とエンドプレート6とを電気的に絶縁する。各セパレータは、例えば絶縁性を有する樹脂からなる。セパレータを構成する樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ノリル(登録商標)樹脂(変性PPE)等の熱可塑性樹脂が例示される。
【0021】
積層された複数の電池2および複数のセパレータは、一対のエンドプレート6で挟まれる。各エンドプレート6は、例えば金属板からなる。一対のエンドプレート6は、電池2の積層方向Xにおける両端の電池2とセパレータを介して隣り合うように配置される。エンドプレート6における電池2の主表面と対向する面には、ねじ(図示せず)が螺合するねじ穴(図示せず)が設けられる。
【0022】
一対の拘束部材8は、バインドバーとも呼ばれ、積層方向Xを長手方向とする長尺状の部材である。一対の拘束部材8は、積層方向Xと直交し封口板10の長手方向と平行な方向Yにおいて、互いに向かい合うように配列される。一対の拘束部材8の間には、複数の電池2、複数のセパレータおよび一対のエンドプレート6が介在する。各拘束部材8は、電池2の側面と平行に延びる矩形状の平面部8aと、平面部8aの各端辺から電池2側に突出する4つの庇部8bとを有する。
【0023】
平面部8aには、電池2の側面を露出させる開口部8cが設けられる。開口部8cは、積層方向Xの外力に対する拘束部材8の剛性に極力影響しないよう配置されることが好ましい。これにより、拘束部材8の剛性を維持しながら、拘束部材8の軽量化を図ることができる。積層方向Xにおいて互いに対向する2つの庇部8bには、ねじが挿通される貫通孔8dが設けられる。
【0024】
電池モジュール1は、例えば以下のようにして組み立てられる。すなわち、まず複数の電池2と複数のセパレータとが交互に積層され、これらが一対のエンドプレート6で積層方向Xに挟まれて集合体が形成される。そして、集合体が一対の拘束部材8で方向Yに挟まれる。各拘束部材8は、貫通孔8dがエンドプレート6のねじ穴と重なるように位置合わせされる。そして、ねじが貫通孔8dに挿通され、ねじ穴に螺合される。このように、一対の拘束部材8が一対のエンドプレート6に係合されることで、複数の電池2と複数のセパレータとが拘束される。
【0025】
複数の電池2は、拘束部材8によって積層方向Xにおいて締め付けられることで、積層方向Xの位置決めがなされる。また、複数の電池2は、底面がセパレータを介して拘束部材8の下側の庇部8bに当接し、上面がセパレータを介して拘束部材8の上側の庇部8bに当接することで、電池2の上面と底面とが並ぶ方向Zの位置決めがなされる。これらの位置決めが完了した後に、各電池2の出力端子12にバスバー4が取り付けられて、各出力端子12が電気的に接続される。つづいて、カバー部材(図示せず)が各電池2の上面を覆うように取り付けられて、電池モジュール1が得られる。
【0026】
続いて、本実施の形態に係るバスバー4について詳細に説明する。
図2(A)は、バスバーの斜視図である。
図2(B)は、バスバーの側面図である。バスバー4は、複数の端子接合部14と、連結部16と、を備える。各端子接合部14は、各電池2の出力端子12に接合される。本実施の形態では、バスバー4によって2つの電池2が直列接続されている。このため、バスバー4は、2つの端子接合部14を有する。
【0027】
連結部16は、複数の端子接合部14をつなぐ。連結部16は、複数の電線、つまり導電性の線材の束における非圧接部で構成される。したがって、連結部16において、各電線は互いに接合されていない。本実施の形態では、連結部16を構成する電線の束は、複数の電線が編み込まれた平編線である。電線の材質としては、銅やアルミニウム等が例示される。電線が銅線である場合には、ニッケルめっきや錫めっきが施されてもよい。また、本実施の形態の連結部16は、電池2から離間する方向に突き出るように湾曲している。
【0028】
2つの端子接合部14は、電池2の積層方向Xにおけるバスバー4の両端部に配置される。連結部16は、積層方向Xにおいて2つの端子接合部14の間に配置される。また、本実施の形態のバスバー4は、電圧検出線接続部18を備える。電圧検出線接続部18は、各端子接合部14と連結部16との間に配置される。したがって、バスバー4は、端子接合部14、電圧検出線接続部18、連結部16、電圧検出線接続部18および端子接合部14が積層方向Xでこの順に並んだ構造を有する。各電池2の電圧を検出するための電圧検出線(図示せず)は、いずれか一方の電圧検出線接続部18に、溶接等により電気的に接続される。
【0029】
各端子接合部14および各電圧検出線接続部18は、複数の電線の束における圧接部で構成される。つまり、複数の電線の束において、圧接された領域が端子接合部14および電圧検出線接続部18を構成し、圧接されていない領域が連結部16を構成する。したがって、バスバー4は、金属の一体成形品であり、端子接合部14、連結部16および電圧検出線接続部18の各部を互いに固定するための構造、例えば溶接部やかしめ固定部等を有しない。
【0030】
各端子接合部14は、出力端子12の嵌合部20を有する。本実施の形態の嵌合部20は、端子接合部14の端部に設けられた切り欠き部で構成される。嵌合部20に出力端子12が嵌合した状態で、端子接合部14が出力端子12に溶接等により接合される。これにより、各出力端子12がバスバー4を介して電気的に接続される。
【0031】
各端子接合部14は、出力端子12との電気的接続に支障がない程度に表面が滑らかな平板状である。同様に、各電圧検出線接続部18は、電圧検出線との電気的接続に支障がない程度に表面が滑らかな平板状である。また、各電圧検出線接続部18の厚さは、各端子接合部14の厚さよりも大きい。これにより、端子接合部14を薄くして溶接時間の短縮を図るとともに、電圧検出線接続部18を厚くしてバスバー4の電気抵抗の増大を抑制することができる。また、電圧検出線接続部18を厚くすることで、バスバー4の熱容量を増やすことができる。
【0032】
また、各端子接合部14は、連結部16側の縁部、つまり電圧検出線接続部18と接する縁部に、連結部16に近づくにつれて厚さが徐々に大きくなる傾斜部22を有する。傾斜部22を設けることで、端子接合部14と連結部16側(電圧検出線接続部18)との連結強度を高めることができる。言い換えれば、バスバー4が変形した際に、端子接合部14と電圧検出線接続部18との連結部に応力が集中することを抑制することができる。
【0033】
複数の電線の束における非圧接部で構成される連結部16は、バスバー4で連結される2つの出力端子12どうしが相対的に変位した場合に、この変位に追従して変形することができる。したがって、連結部16を有するバスバー4は、全体が板材で構成された従来のバスバーに比べて高い柔軟性を有する。
【0034】
連結部16は自身の変形によって、積層方向Xと交わる方向、つまりYZ平面方向における出力端子12の変位に追従することができる。また、連結部16は、方向Zに突き出るように湾曲した形状を有する。このため、積層方向Xにおける出力端子12の変位にも追従することができる。さらに、本実施の形態の連結部16は、平編線で構成されるため、連結部16の伸縮によっても積層方向Xにおける出力端子12の変位に追従することができる。なお、連結部16が平編線で構成される場合、連結部16は湾曲形状を有しなくてもよい。
【0035】
続いて、本実施の形態に係るバスバー4の製造方法について詳細に説明する。
図3(A)~
図3(D)は、バスバーの製造工程を示す側面図である。まず、
図3(A)に示すように、複数の電線の束として例えば平編線24を用意する。平編線24は、一方に長い長尺状である。次に、
図3(B)に示すように、平編線24の中央部を撓ませて、湾曲部26を形成する。
【0036】
続いて、
図3(C)に示すように、前駆端子接合部28および電圧検出線接続部18の形成工程を実施する。この工程では、プレス装置等を用いて平編線24の所定領域を圧接し、前駆端子接合部28と、電圧検出線接続部18と、を形成する。具体的には、平編線24における複数の第2領域32に第1プレス金型34を押し当てて、各第2領域32に所定の圧力をかける。この工程において、第2領域32に加えられる力の大きさは、例えば1000kN~4000kNである。なお、必要に応じて、第1プレス金型34で第2領域32を押圧する際に、第2領域32を加熱してもよい。
【0037】
各第2領域32は、第1領域30を包含する領域である。第1領域30は、最終的に端子接合部14が形成される領域であり、複数の電線の束における当該束の延びる方向に所定の間隔をあけて並ぶ。本実施の形態では、2つの第1領域30が平編線24の両端に位置している。したがって、2つの第2領域32が湾曲部26を挟んで配置される。
【0038】
各第2領域32に第1プレス金型34が押し当てられることで、各第2領域32において複数の電線が圧接される。これにより、第1領域30に前駆端子接合部28が形成され、第2領域32のうち第1領域30を除く残余領域36に電圧検出線接続部18が形成される。2つの第2領域32の間に位置する湾曲部26は、圧接されることなく平編線24の状態のまま残る。
【0039】
続いて、
図3(D)に示すように、端子接合部14の形成工程を実施する。この工程では、プレス装置等を用いて複数の第1領域30をさらに圧接し、端子接合部14を形成する。具体的には、各第1領域30に第2プレス金型38を押し当てて、各第1領域30に所定の圧力をかける。この工程において、第1領域30に加えられる力の大きさは、例えば1000kN~4000kNである。なお、必要に応じて、第2プレス金型38で第1領域30を押圧する際に、第1領域30を加熱してもよい。
【0040】
各第1領域30に第2プレス金型38が押し当てられることで、各第1領域30において複数の電線、言い換えれば前駆端子接合部28がさらに圧接される。これにより、各第1領域30の前駆端子接合部28は厚さが薄くなり、端子接合部14となる。
【0041】
また、第2プレス金型38は、平編線24に当たる圧接面38aの縁部に、テーパ部38bを有する。テーパ部38bは、圧接面38aの縁部のうち、第2プレス金型38で圧接されない非圧接領域(湾曲部26や残余領域36)側の縁部に配置される。また、テーパ部38bは、圧接面38aの中央側から外側に向かうにつれて第1領域30から離間するように傾斜する。
【0042】
このような形状を有する第2プレス金型38で第1領域30が押圧されることで、第1領域30における非圧接領域側の縁部には、非圧接領域に近づくにつれて厚さが徐々に大きくなる傾斜部22が形成される。したがって、端子接合部14の形成工程には、傾斜部22の形成工程も含まれる。
【0043】
湾曲部26は、第1プレス金型34および第2プレス金型38のいずれによっても圧接されず、複数の電線が非圧接の状態のまま残る。この部分が連結部16となる。なお、第2プレス金型38に嵌合部20に対応する形状を設けておくことで、端子接合部14の形成と同時に嵌合部20を形成することができる。以上の工程により、バスバー4が得られる。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態に係るバスバー4の製造方法は、複数の電線の束における、当該束の延びる方向に所定の間隔をあけて並ぶ複数の第1領域30に、圧力をかけて複数の電線を圧接し、各電池2の出力端子12に接合される複数の端子接合部14を形成する工程を含む。つまり、本実施の形態に係るバスバー4の製造方法は、複数の電線の束に圧接加工を施して端子接合部14を形成するとともに、非圧接部を連結部16として用いて、バスバー4を製造している。
【0045】
したがって、このような製造方法で得られる本実施の形態のバスバー4は、複数の端子接合部14をつなぐ連結部16であって、複数の電線の束における非圧接部で構成される連結部16と、各電池2の出力端子12に接合される複数の端子接合部14であって、複数の電線の束における圧接部で構成される端子接合部14と、を備える。また、本実施の形態の電池モジュール1は、バスバー4と、バスバー4により電気的に接続される複数の電池2と、を備える。
【0046】
連結部16は互いに未接合である電線の束で構成され、したがって板材よりも高い柔軟性を有する。そして、バスバー4は、連結部16が変形することで出力端子12の変位を吸収する。このため、板材の中間領域に屈曲部を設けた従来のバスバーに比べて、本実施の形態のバスバー4は、出力端子12のより大きな変位に追従することができる。また、出力端子12のより多方向の変位に追従することができる。これにより、出力端子12どうしの変位によって端子接合部14と出力端子12との接合部に負荷がかかることをより一層抑制することができる。この結果、出力端子12どうしの接続信頼性および接続安定性を高めることができる。
【0047】
また、屈曲部で柔軟性を確保していた従来のバスバーでは、電池2の高容量化にともなう出力端子12の変位量の増加に対応するためには、屈曲部を大型化する必要があった。この場合、方向Zにおけるバスバーの寸法の増大、つまりバスバーの高背化を招く。これに対し、本実施の形態のバスバー4は、電線で構成される連結部16によって出力端子12の変位を吸収している。さらに、本実施の形態の連結部16は平編線24であり、連結部16自体が伸縮する。このため、バスバー4の高背化を抑制しながら、出力端子12の変位量の増加に対応することができる。
【0048】
また、かしめ端子(圧着端子ともいう)が電線の両端に設けられ、2つのかしめ端子と電線とが直線上に並ぶ従来の配線コードは、2つの出力端子12の間隔が狭いために設置が困難であった。すなわち、かしめ端子は、出力端子との接合部に加えて電線への固定部を有する。このため、2つのかしめ端子と電線とが直線上に並ぶ構造では、2つのかしめ端子の積層方向Xにおける合計寸法だけでも、2つの出力端子12の間隔を上回り得る。この場合、隣り合う電池2の間隔を拡げなければ、当該構造を有するバスバーの設置は困難である。
【0049】
しかしながら、電池2の間隔を拡げることは、電池モジュール1の大型化もしくはエネルギー密度の低下を招き、電池2ひいては電池モジュール1の高容量化の要請に対して逆行することになる。これに対し、本実施の形態のバスバー4では、複数の電線の束における非圧接部が連結部16を構成し、当該束における圧接部が端子接合部14を構成している。つまり、バスバー4は金属の一体成形品であり、端子接合部14は連結部16への固定部を有することなく連結部16と連続している。よって、電池2の間隔を拡げることなく隣り合う出力端子12どうしを電気的に接続することができる。また、積層方向Xにおける連結部16の延在領域をより多く確保することができる。これにより、2つの出力端子12の変位に対する連結部16の追従性をより高めることができる。
【0050】
以上より、本実施の形態の製造方法によって得られるバスバー4によれば、電池2の高容量化にともなって電池2の寸法変化量が増大しても、電池2間の安定的な電気的接続を維持することができる。つまり、電池2間の電気的接続の安定性を高めることができる。また、これにより、電池モジュール1の信頼性を高めることができる。また、バスバー4の高背化や電池2の間隔の拡張に起因する電池モジュール1の大型化もしくはエネルギー密度の低下を回避することもできる。
【0051】
また、本実施の形態に係るバスバー4の製造方法では、端子接合部14の形成工程において、第1領域30における非圧接領域側の縁部に、非圧接領域に近づくにつれて厚さが徐々に大きくなる傾斜部22を形成することを含む。したがって、本実施の形態に係るバスバー4は、端子接合部14における連結部16側の縁部に、連結部16に近づくにつれて厚さが徐々に大きくなる傾斜部22を有する。このように、端子接合部14の縁部における厚さを段階的もしくは連続的に変化させることで、バスバー4に外部から力が加わった際に、端子接合部14の縁部への応力集中を抑制することができる。よって、電池2間の電気的接続の安定性をより高めることができる。
【0052】
また、本実施の形態に係るバスバー4の製造方法は、端子接合部14の形成工程の前に実施される工程であって、電線の束における各第1領域30を包含する複数の第2領域32に圧力をかけて複数の電線を圧接し、第1領域30に前駆端子接合部28を形成し、第2領域32のうち第1領域30を除く残余領域36に電圧検出線接続部18を形成する工程を含む。したがって、本実施の形態に係るバスバー4は、端子接合部14と連結部16との間に配置される電圧検出線接続部18を備える。
【0053】
バスバー4に電圧検出線接続部18を設けることで、バスバー4と電圧検出線との電気的接続をより確実に得ることができる。これにより、電池モジュール1の信頼性をより高めることができる。また、第1段階の圧接で電圧検出線接続部18と前駆端子接合部28とを形成し、第2段階の圧接で前駆端子接合部28を端子接合部14に仕上げている。このため、電圧検出線接続部18の厚さを端子接合部14の厚さよりも大きくすることができる。したがって、端子接合部14を薄くして溶接時間の短縮を図り、もって溶接時の熱で電池2が損傷することを抑制するとともに、電圧検出線接続部18を厚くしてバスバー4の電気抵抗の増大や熱容量の低下を抑制することができる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。実施の形態に含まれる構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0055】
(変形例1)
図4(A)~
図4(E)は、変形例1に係るバスバーの製造工程を示す側面図である。本変形例は、熱溶着工程を含む点が実施の形態と異なる。具体的には、まず
図4(A)に示すように、複数の電線の束として例えば平編線24を用意する。次に、
図4(B)に示すように、平編線24の中央部を撓ませて、湾曲部26を形成する。
【0056】
続いて、
図4(C)に示すように、熱溶着工程を実施する。この工程では、複数の第2領域32に熱板40を押し当てて、各第2領域32を加熱および加圧する。これにより、各第2領域32に延在する複数の電線が互いに熱溶着されて、熱溶着部42が形成される。この工程において、第2領域32の加熱温度は、例えば300℃~1200℃である。また、第2領域32に加えられる力の大きさは、例えば1000kN~4000kNである。
【0057】
続いて、
図4(D)に示すように、前駆端子接合部28および電圧検出線接続部18の形成工程を実施する。この工程では、複数の第2領域32に第1プレス金型34を押し当てて、各第2領域32に所定の圧力をかける。各第2領域32に第1プレス金型34が押し当てられることで、熱溶着部42のうち第1領域30に延在する部分が前駆端子接合部28となり、第2領域32のうち残余領域36に延在する部分が電圧検出線接続部18となる。
【0058】
続いて、
図4(E)に示すように、端子接合部14の形成工程を実施する。この工程では、各第1領域30に第2プレス金型38を押し当てて、各第1領域30に所定の圧力をかける。各第1領域30に第2プレス金型38が押し当てられることで、前駆端子接合部28が端子接合部14となる。また、第2プレス金型38を第1領域30に押し当てることで、第1領域30における非圧接領域側の縁部に傾斜部22が形成される。
【0059】
湾曲部26は、熱板40、第1プレス金型34および第2プレス金型38のいずれによっても加熱もしくは圧接されず、複数の電線が非圧接の状態のまま残る。この部分が連結部16となる。以上の工程により、バスバー4が得られる。
【0060】
本変形例では、平編線24のプレス加工が施される領域に、プレス加工の前に熱溶着処理を施している。これにより、その後のプレス加工が容易になる。また、プレス加工での端子接合部14および電圧検出線接続部18の加工精度を高めることができる。なお、第1プレス金型34を用いたプレス加工を省略して、熱溶着により電圧検出線接続部18と前駆端子接合部28とを形成してもよい。
【0061】
(変形例2)
図5は、変形例2に係るバスバーの斜視図である。実施の形態では、バスバー4は2つの端子接合部14を有するが、特にこの構成に限定されず、バスバー4は端子接合部14を3つ以上有してもよい。変形例2に係るバスバー4は、4つの端子接合部14を有する。端子接合部14を3つ以上有するバスバー4によれば、複数個の電池2が並列接続された電池ブロックを形成するとともに、これらの電池ブロックどうし、または電池ブロックと電池2とを直列接続することができる。
【0062】
なお、バスバー4が備える端子接合部14の数は、例えば次のような方法により容易に変更することができる。すなわち、複数のバスバー4に対応する長さの平編線24をプレス加工ラインにセットし、平編線24に連続的または同時に複数の端子接合部14を形成する。その後、製造したいバスバー4が備える端子接合部14の数に応じて、加工済みの平編線24の切断位置を調整する。これにより、任意の数の端子接合部14を備えるバスバー4を、容易に量産することができる。よって、電池モジュール1の設計自由度を高めることができる。
【0063】
(その他の変形例)
実施の形態や変形例では、第1プレス金型34での圧接と第2プレス金型38での圧接との2段階で端子接合部14および電圧検出線接続部18を形成している。しかしながら、特にこの構成に限定されない。例えば、端子接合部14の厚さと電圧検出線接続部18の厚さとの差に対応する段差部を有するプレス金型を用いて、1回のプレスで端子接合部14と電圧検出線接続部18とを同時に成形してもよい。
【0064】
電圧検出線接続部18は省略してもよい。この場合、連結部16と端子接合部14とが直につながったバスバー4が得られる。電池モジュール1が備える電池2の数は特に限定されない。エンドプレート6や拘束部材8の形状、ならびにエンドプレート6と拘束部材8との締結構造を含む、電池モジュール1の各部の構造も特に限定されない。
【符号の説明】
【0065】
1 電池モジュール、 2 電池、 4 バスバー、 12 出力端子、 14 端子接合部、 16 連結部、 18 電圧検出線接続部、 22 傾斜部、 24 平編線、 28 前駆端子接合部、 30 第1領域、 32 第2領域。