(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】船舶用ガス充填装置
(51)【国際特許分類】
F17C 13/04 20060101AFI20230901BHJP
B63H 21/38 20060101ALI20230901BHJP
F17C 5/06 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
F17C13/04 301A
B63H21/38 C
F17C5/06
(21)【出願番号】P 2021139570
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000158312
【氏名又は名称】岩谷産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】▲はま▼浦 隆昌
(72)【発明者】
【氏名】岡野谷 哲平
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 晃
(72)【発明者】
【氏名】藤井 玲奈
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-055686(JP,A)
【文献】特開2013-177910(JP,A)
【文献】特開2004-084735(JP,A)
【文献】特開2014-109350(JP,A)
【文献】特開2006-336726(JP,A)
【文献】特開2003-336795(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0095807(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/04
B63H 21/38
F17C 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給源に接続される供給ノズルと、
一端が前記供給ノズルに接続され、他端が緊急離脱接手に接続される供給配管を備えた供給ユニットと、
前記緊急離脱接手
と船舶用燃料タンクに通じる充填口
との間に直列に複数配置される充填ホースと
、
隣接する充填ホース同士を接続する連結部を備え
、
該連結部は、
両端に円形凹部と、該2つの円形凹部を連通させる流路と、該2つの円形凹部の各々と外部とを連通させる気密確認用孔を有する本体部と、
前記隣接する充填ホースの各々の端部が接続されて前記本体部の各々の円形凹部に挿入される円筒状のホース金具と、
該ホース金具の各々の外表面に形成された雄ねじ部に各々螺合する押圧部材と、
該押圧部材の各々を端部に収容した状態で前記本体部の前記円形凹部の各々の内周面に形成された雌ねじ部と螺合する締付け部材とで構成されることを特徴とする船舶用ガス充填装置。
【請求項2】
前記隣接する充填ホースの接続部は、規定トルクで接続されていることを特徴とする請求項
1に記載の船舶用ガス充填装置。
【請求項3】
前記充填口の近傍に緊急停止スイッチを備え、該緊急停止スイッチからの出力でガス充填を停止することを特徴とする請求項
1又は
2に記載の船舶用ガス充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に水素ガス等のガスを供給する船舶用ガス充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の環境問題に対して脱炭素社会の実現に向けてカーボンニュートラルへの挑戦が産業構造や経済社会の変革をもたらしている。本出願人は、水素ガスを燃料として走行する燃料電池車に水素ガスを充填する水素充填装置を特許文献1で提案している。
【0003】
また、近年では船舶燃料に対する国際的な環境規制が強化され、CO2等の大気汚染物質が排出されるため、それを抑制するための制御や設備投資が必要となる。さらに、衝突や座礁により燃料が海上に流出した場合には重大な環境破壊を起こすおそれがある。
【0004】
そこで、世界的に脱炭素化に向けた取り組みが広がる中、地球環境への配慮から船舶燃料として水素ガスが注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、海上に停泊中の船舶に対して水素ガスを充填する場合には、19MPa程度の圧力で水素ガスを充填しているため、航続可能距離が短く遠出することができないばかりか、充填頻度が多くなり煩わしいという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、航続可能距離を延ばし、充填頻度を少なくすることができ、安全性で利便性のよい船舶用ガス充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、船舶用ガス充填装置であって、ガス供給源に接続される供給ノズルと、一端が前記供給ノズルに接続され、他端が緊急離脱接手に接続される供給配管を備えた供給ユニットと、前記緊急離脱接手と船舶用燃料タンクに通じる充填口との間に直列に複数配置される充填ホースと、隣接する充填ホース同士を接続する連結部を備え、該連結部は、両端に円形凹部と、該2つの円形凹部を連通させる流路と、該2つの円形凹部の各々と外部とを連通させる気密確認用孔を有する本体部と、前記隣接する充填ホースの各々の端部が接続されて前記本体部の各々の円形凹部に挿入される円筒状のホース金具と、該ホース金具の各々の外表面に形成された雄ねじ部に各々螺合する押圧部材と、該押圧部材の各々を端部に収容した状態で前記本体部の前記円形凹部の各々の内周面に形成された雌ねじ部と螺合する締付け部材とで構成されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、供給ユニットの供給配管に緊急離脱接手を備えるため、82MPa程度の高圧のガスを供給している際に充填ホースに大きな負荷がかかった場合でも緊急離脱接手が離脱して高圧ガスが噴き出すようなことがなく安全に高圧ガスを充填することができる。また、82MPa程度の高圧でガスを供給することで航続可能距離を延ばし、充填頻度を少なくすることができる。
また、充填ホースを複数本備え、隣接する充填ホース同士を接続することで、供給ユニットと船舶との距離が変化した場合でも容易に対応することができると共に、供給ユニットと船舶との距離が短くなったような場合でも充填ホース長さを調整することで圧力損失を少なくすることができる。
さらに、気密確認用孔によって連結部の気密状態を確認することができる。
【0011】
上記船舶用ガス充填装置において、前記隣接する充填ホースの接続部を規定トルクで接続することで漏洩リスクを低減することができる。
【0012】
上記船舶用ガス充填装置において、前記充填口の近傍に緊急停止スイッチを設け、該緊急停止スイッチからの出力でガス充填を停止することができ、緊急時にガス充填を停止できるので安全である。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、航続可能距離を延ばし、充填頻度を少なくすることができ、安全性で利便性のよい船舶用ガス充填装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る船舶用ガス充填装置の一実施の形態を示す全体構成図である。
【
図2】
図1に示す船舶用ガス充填装置の供給ユニットを示す全体斜視図である。
【
図3】
図1に示す船舶用ガス充填装置の充填ホース連結部を示す縦断面図である。
【
図4】
図1に示す船舶用ガス充填装置の動作説明図である。
【
図5】
図1に示す船舶用ガス充填装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る船舶用ガス充填装置の一実施の形態を示し、この船舶用ガス充填装置1は、ガス供給源としてのガス供給ユニット2から桟橋13に停泊している船舶3に水素ガスを供給するために設けられ、ガス供給ユニット2より供給ホース2aを介してガス供給ユニット5に接続される供給ノズル4と、一端が供給ノズル4に接続され、他端が緊急離脱接手6に接続される供給配管5aを備える供給ユニット5と、緊急離脱接手6と船舶3の燃料タンク(不図示)に通じる充填口3aに接続される複数本の充填ホース7(7A~7C)と、緊急停止スイッチ9bを備える機器ユニット9等で構成される。
【0017】
供給ユニット5は、
図2に示すように、使用していない際には全体がカバー5bで覆われ、取っ手5c、キャスタ5dを用いて移動可能に構成される。充填ホース7は供給ユニット5の側面に巻回され、複数本の充填ホース7が吊り下げられている。また、供給配管5aには、第1温度計5e、第1圧力計5f、置換弁5h、脱圧弁5jが配置され、置換弁5hを介して供給配管5aに窒素(N
2)を供給するための窒素供給装置5gが設けられる。第1温度計5e及び第1圧力計5fは充填状態の監視のために設けられる。
【0018】
緊急離脱接手6は、内部を高圧の水素ガスが流れる充填ホース7が無理に引張られた時に充填ホース7が切断せず、かつガス供給ユニット2側、船舶3の燃料タンク側から高圧の水素ガスが漏出しないようにするために設けられる。この緊急離脱接手6は、充填ホース7や充填ホース7の連結部8(8A、8B)の引張り強度よりも弱い脆弱部として形成され、充填ホース7が引張られたときには、脆弱な緊急離脱接手6の部分から分離し、分離したときに水素ガスが漏れ出さないように、ソケット、プラグの通路に各々遮断弁(不図示)を有する。
【0019】
連結部8は、
図3に示すように、内部に流路8bと、上下方向に貫通する気密確認用孔8c、8dとを有し、左右両端に円形凹部を有する本体部8aと、充填ホース7の端部が接続されて本体部8aの左右両凹部に挿入される円筒状のホース金具8e、8fと、ホース金具8e、8fの外表面に形成された雄ねじ部に各々螺合する押圧部材8m、8nと、押圧部材8m、8nを端部に収容した状態で本体部8aと螺合する締付け部材8j、8kとで構成される。
【0020】
連結部8を組み立てる際には、締付け部材8j、8kをホース金具8e、8fに挿入し、ホース金具8e、8fに押圧部材8m、8nを取付けた後に本体部8aに挿入して締付け部材8j、8kを締め付ける。締付け部材8j、8kにより押圧部材8m、8nに本体部8a方向への力が加わり、ホース金具8e、8fの各々のテーパ部8g、8hと、本体部8aの円錐状凹部8p、8qとが当接してシール部が形成され、締付け部材8j、8kが規定トルクで締付けられると気密が確保される。気密状態の確認は、気密確認用孔8c、8dにガス検知器を接続したり、発泡液を塗布して行う。
【0021】
船舶3の充填口3aの近傍には、機器ユニット9が配置され、機器ユニット9から充填口3aに向かう配管12の端部には充填ノズル11が設けられ、充填ノズル11を充填口3aに接続することでバルブ(不図示)が開き、水素ガスが船舶3の燃料タンクに導入される。
【0022】
機器ユニット9には、第2温度計9a、緊急停止スイッチ9bが設けられ、緊急停止スイッチ9bは、有線又は無線によりガス供給ユニット2に接続され、緊急停止スイッチ9bからの出力でガス供給ユニット2からのガス充填を停止することができる。第2温度計9aは充填状態の監視のために設けられる。
【0023】
次に、上記構成を有する船舶用ガス充填装置1の動作について、
図1を中心に参照しながら説明する。
【0024】
まず、前準備1として、充填ホース7(7A~7C)等の内部に存在する空気を窒素ガスで置換する。新規に充填ホース7を連結して船舶3にガス充填を行う場合には、ガス供給ユニット2からの供給ノズル4を供給ユニット5の接続口5kに接続せず、また充填ノズル11を充填口3aに接続せずに、置換弁5hを開いて窒素供給装置5gから供給配管5aに窒素ガスを供給し、供給ユニット5の接続口5kから充填ノズル11まで(
図4の黒塗り部分)窒素ガスを充満させた後、脱圧弁5jを開いて空気を放出する。この操作を例えば5回位行って充填ホース7等の内部を窒素ガスで満たす。これにより、充填ホース7等の内部の空気を不活性ガス(窒素ガス)と置換し、燃焼や爆発等を防止する。
【0025】
次に、前準備2として、充填ホース7等の内部を水素ガスで置換する。上記の状態でさらにガス供給ユニット2からの供給ノズル4を供給ユニット5の接続口5kに接続して水素ガスを供給後(
図5の黒塗り部分に水素ガスが供給される)、脱圧弁5jを開いて充填ホース7等の内部のガスを放出する。この操作を例えば5回位行って充填ホース7等の内部を水素ガスで満たす。これによって、供給する水素ガスの高純度化を図ることができる。
【0026】
次に、前準備3として、上記の状態で使用圧力(82MPa)まで水素ガスを供給し、漏れのないことを確認する。これらの前準備1、2、3が終了すると、充填ノズル11を船舶3の充填口3aに接続し、ガス供給ユニット2から船舶3の燃料タンクに水素ガスを供給する。
【0027】
尚、上記実施の形態においては、本発明に係る船舶用ガス充填装置によって水素ガスを充填する場合について説明したが、水素ガスに代えてLNG、アンモニア等を充填することもできる。また、図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術範囲を限定する趣旨の記述ではない。
【符号の説明】
【0028】
1 船舶用ガス充填装置
2 ガス供給ユニット
3 船舶
4 供給ノズル
5 供給ユニット
6 緊急離脱接手
7 充填ホース
8 連結部
9 機器ユニット
11 充填ノズル
12 配管
13 桟橋