(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】投与のための方法およびレシニフェラトキシンで心血管疾患を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/357 20060101AFI20230901BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230901BHJP
A61K 31/4468 20060101ALI20230901BHJP
A61K 31/485 20060101ALI20230901BHJP
A61K 31/4535 20060101ALI20230901BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20230901BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20230901BHJP
A61K 31/417 20060101ALI20230901BHJP
A61K 31/435 20060101ALI20230901BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20230901BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20230901BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20230901BHJP
A61K 31/4184 20060101ALI20230901BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230901BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230901BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
A61K31/357
A61K9/08
A61K31/4468
A61K31/485
A61K31/4535
A61K31/454
A61K31/407
A61K31/417
A61K31/435
A61K31/135
A61K38/07
A61K38/08
A61K31/4184
A61K45/00
A61P9/12
A61P43/00 121
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021170184
(22)【出願日】2021-10-18
(62)【分割の表示】P 2018553923の分割
【原出願日】2017-04-13
【審査請求日】2021-11-16
(32)【優先日】2016-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508221224
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ネブラスカ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アービング・エイチ・ズッカー
(72)【発明者】
【氏名】ハンジュン・ワン
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0080460(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0158973(US,A1)
【文献】国際公開第2012/045587(WO,A1)
【文献】米国特許第08829028(US,B2)
【文献】米国特許第09289387(US,B2)
【文献】特表2008-540638(JP,A)
【文献】Hypertension,2015年,Vol.66, Abstract No.P216,p.1-2
【文献】YAKUGAKU ZASSHI,2014年,Vol.134, No.3,p.373-378
【文献】Cells,2014年,Vol.3,p.517-545
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 45/00
A61K 38/00-38/58
A61K 9/00- 9/72
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシニフェラトキシンを有効成分として含む、対象における高血圧または高血圧前症を治療するための医薬であって、前記対象の第1~第4胸椎レベルの1つ以上に位置する硬膜外腔に投与される、医薬。
【請求項2】
レシニフェラトキシンを有効成分として含む、対象における軽症高血圧または高血圧前症を予防的に治療するための医薬であって、前記対象の第1~第4胸椎レベルの1つ以上に位置する硬膜外腔に投与される、医薬。
【請求項3】
レシニフェラトキシンを有効成分として含む、対象における高血圧または高血圧前症を治療するための医薬であって、前記医薬が、溶液1mLあたり0.6~10μgのレシニフェラトキシンの量で、前記対象の第1~第4胸椎レベルの1つ以上で硬膜外腔に投与するための溶液である、医薬。
【請求項4】
レシニフェラトキシンを有効成分として含む、対象における軽症高血圧または高血圧前症を予防的に治療するための医薬であって、前記医薬が、溶液1mLあたり0.6~10μgのレシニフェラトキシンの量で、前記対象の第1~第4胸椎レベルの1つ以上で硬膜外腔に投与するための溶液である、医薬。
【請求項5】
前記溶液が、前記1つ以上の椎骨レベルのそれぞれに約100μL超かつ約3mL未満の容量で投与される、請求項3または4に記載の医薬。
【請求項6】
レシニフェラトキシンを有効成分として含む、対象における高血圧または高血圧前症を治療するための医薬であって、オピオイド受容体アゴニストと併用することを特徴とし、前記対象の第1~第4胸椎レベルの1つ以上に位置する硬膜外腔に投与するための、医薬。
【請求項7】
レシニフェラトキシンを有効成分として含む、対象における軽症高血圧または高血圧前症を予防的に治療するための医薬であって、オピオイド受容体アゴニストと併用することを特徴とし、前記対象の第1~第4胸椎レベルの1つ以上に位置する硬膜外腔に投与するための、医薬。
【請求項8】
前記オピオイド受容体アゴニストが、μ-オピオイド受容体アゴニストである、請求項6または7に記載の医薬。
【請求項9】
前記オピオイド受容体アゴニストが、オピオイドである、請求項6または7に記載の医薬。
【請求項10】
前記オピオイド受容体アゴニストがフェンタニール、モルヒネ、コデイン、ヒドロコドン、オキシコドン、スフェンタニル、アルフェンタニル、レミフェンタニルまたはロフェンタニルである、請求項9に記載の医薬。
【請求項11】
前記オピオイド受容体アゴニストがセブラノパドール、エルクサドリン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボルファノール、ロペラミド、メタドン、ナルブフィン、メペリジン、タペンタドール、コデイン、DADLE、DAMGO、ジヒドロモルフィン、エンドモルフィン-1、エトニタゼン、フェンタニール、レボメサドン、モルヒネ、スフェンタニル、ブプレノルフィン、ブトルファノール、(-)-ペンタゾシン、ジプレノルフィン、またはレバロルファンである、請求項6または7に記載の医薬。
【請求項12】
前記フェンタニールが、前記対象の重量1kgにつき50~100μgのフェンタニールに相当する量で12時間おきに投与される、
請求項10に記載の医薬。
【請求項13】
前記オピオイド受容体アゴニストの投与が静脈内投与または腹腔内投与である、請求項6または7に記載の医薬。
【請求項14】
前記オピオイド受容体アゴニストが、レシニフェラトキシンの投与の前に投与される、請求項6または7に記載の医薬。
【請求項15】
前記オピオイド受容体アゴニストが、レシニフェラトキシンの投与の後に投与される、請求項6または7に記載の医薬。
【請求項16】
レシニフェラトキシンを有効成分として含む、対象における高血圧または高血圧前症を治療するための医薬であって、
無水アルビモパン、メチルナルトレキソン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ナルトリベン、ナルトリンドールまたはクァダゾシンから選択される薬剤と併用され、
前記対象の第1~第4胸椎レベルの1つ以上に位置する硬膜外腔に投与されることを特徴とする、医薬。
【請求項17】
レシニフェラトキシンを有効成分として含む、対象における軽症高血圧または高血圧前症を治療するための医薬であって、
無水アルビモパン、メチルナルトレキソン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ナルトリベン、ナルトリンドールまたはクァダゾシンから選択される薬剤と併用され、
前記対象の第1~第4胸椎レベルの1つ以上に位置する硬膜外腔に投与されることを特徴とする、医薬。
【請求項18】
前記レシニフェラトキシンが、第1胸椎に近接した硬膜外腔に投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項19】
前記レシニフェラトキシンが、第2胸椎に近接した硬膜外腔に投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項20】
前記レシニフェラトキシンが、第3胸椎に近接した硬膜外腔に投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項21】
前記レシニフェラトキシンが、第4胸椎に近接した硬膜外腔に投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項22】
前記医薬が、高血圧前症の治療または予防的治療のためのものである、請求項1~21のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項23】
前記医薬が、軽症高血圧の治療または予防的治療のためのものである、請求項1~21のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項24】
前記高血圧が、重症高血圧である、請求項1、3、5、6、8~16または18~21のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項25】
前記高血圧が、難治性高血圧である、請求項1、3、5、6、8~16または18~21のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項26】
前記対象が、ヒトである、請求項1~25のいずれか一項に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年4月13日に出願された「Methods for Admin
istration and Methods for Treating Cardi
ovascular Diseases with Resiniferatoxin」
と題する米国仮特許出願第62/322,079号に対する優先権を主張し、この開示は
その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府援助
本発明は、米国国立衛生研究所より与られた1R01HL126796-01A1(Z
ucker/Wang)の下、政府援助によりなされた。米国政府は、本発明に一定の権
利を有し得る。
【0003】
本開示は、心血管病態の寛解治療または予防的治療に関するものであり、一過性受容体
電位バニロイド1(TRPV1)製剤、例えば、レシニフェラトキシン(RTX)を硬膜
外投与するための方法を提供し、1つ以上の心血管病態を有する患者を治療または予防的
に治療するための心臓交感神経求心性神経のアブレーションまたは除神経を提供する。本
開示は、患者の1つ以上の胸椎レベルにおいて製剤を投与する方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
心血管病態は、相当数の対象を苦しめている。さらに、慢性心不全、高血圧、および高
血圧前症などの一部の心血管病態は、それら自体がさらなる心血管損傷および対象の心血
管系の健康を低下させる一因となることがある。うっ血性心不全(CHF)とは、心臓が
代謝に必要な十分な血流量を心血管系全体に維持することができなくなる病態をいう。薬
物療法(例えば、利尿薬、ACE阻害薬、ベータ遮断薬)、医療機器(例えば、除細動器
)および生活習慣の改善など、CHFの治療として様々なものが知られている。心筋虚血
とは、例えば、冠動脈の閉塞などによる、心臓への血液供給が不十分な病態をいう。
【0005】
CHFは、交感神経系の過剰活動を引き起こすことが知られており、(Wang an
d Zucker(1996)Am J.Physiol.271:R751-R756
)、心筋虚血も交感神経系の活動亢進(Zahner(2003)J.Physiol.
551.2:515-523)および求心性(知覚)神経の活性化(Wang et a
l.(2014)Hypertension 64(4):745-75)の一因となる
場合がある。活発かつ過剰な交感神経の励起および末梢抵抗は、動脈圧および心拍数を上
昇し得る。時間の経過とともに、動脈圧および心拍数の上昇は、慢性心不全のさらなる進
行の一因となり、心血管系に損傷を与えかねない。(Sing et al.(2000
)Cardiovasc.Res.45:713-719、Fowler et al.
(1986)Circulation 74:1290-1302)
【0006】
高血圧とは、対象が慢性的に異常に高い動脈圧を呈する病態をいう。高血圧は、動脈壁
の肥厚および左心室の肥大など心血管系に損傷を与えることがあり、CHFの一因となり
得る。生活習慣の改善、利尿薬、ベータ遮断薬、およびACE阻害薬などを含む、多数の
高血圧の治療が知られている。一部の患者は難治性高血圧(治療抵抗性高血圧または薬剤
抵抗性高血圧と呼ばれることもある)を示し、利尿薬または他の薬物による治療にうまく
反応しない。
【0007】
心臓交感神経求心性神経反射(CSAR)の活動亢進は、CHFの対象に見られる過剰
な交感神経の励起に関連すると考えられている(Wang(2000)Heart Fa
il.Rev.5:57-71)。出願人は以前、心外膜または後根神経節(DRG)を
処置することにより、CSAR関連求心路末端またはDRGを化学的に切除または脱感作
することによりCSAR活性を減少させる方法を開示している。(米国特許出願第14/
484,235号)
【0008】
特定の一過性受容体電位バニロイド1(TRPV1)アゴニスト、例えば、レシニフェ
ラトキシン(RTX)は、DRGニューロンを脱感作する能力を示す。特に、RTXは、
強力かつ持続的ニューロンアブレーションを呈し、疼痛対策として研究されている(Ka
rai et al.(2004)J.Clin.Invest.113:1344-1
3521、Szabo et al.(1999)Brain Res.840:92-
98)。RTXは、カルシウム依存性毒作用を含むことによりTRPV1含有ニューロン
を破壊できる。ニューロン内の受容体は、適切なアゴニストの投与により脱感作でき、そ
こではアゴニストが痛覚に関連する急性反応を誘発し、続いて長期の脱感作がおこる。
【0009】
RTXは、バニリル置換基を有するホルボール関連ジテルペンである。RTXの構造を
図1に示す。バニリル基は、RTXがバニロイド受容体アゴニストとして機能することを
可能にするが、ホルボール部分は、かなりの程度および期間の脱感作効果に寄与すると考
えられている(Szallasi et al.(1999)Brit.J.Pharm
acol.128:428-434)。多数の類似化合物が報告されており、それぞれが
様々な程度の脱感作をもたらす(Szallasi et al.(1999)Brit
.J.Pharmacol.128:428-434)。RTXは、Euphorbia
resiniferaから単離することができ、合成もされてきた(Wender e
t al.(1997)J.Am.Chem.Soc.119:12976-12977
)。
【0010】
心血管治療のための医薬品製剤の投与は、様々な方法で達成されることができる。心外
膜投与および髄腔内投与は、一部の対象には有用だが、ある課題が存在する。例えば、体
内の複数箇所に相当な深さで注入することは、医師にとっては複雑で時間がかかるもので
あり、対象に対しては不快症状および損傷リスクの増加を引き起こす可能性がある。髄腔
内注入は、非活性成分、例えば保存剤または夾雑物などを脊柱管へ導入することによる危
害のリスクのために疎まれることがある。このリスクを低減するために必要な予防措置は
、髄腔内投与のための製剤の調製を複雑にする可能性がある。心外膜および髄腔内投与の
このような全般的な短所に加えて、本文脈、即ち脊柱内の神経アブレーションまたは除神
経において、髄腔内投与に代わるものは、脊柱管の脳脊髄液に製剤を投与することを避け
ることが特に望ましい。脳脊髄液は高泳動性を可能にし、脊柱管を介して著しいRTX移
動をもたらし得る。このRTX移動は、脊柱内の至る所で不必要な除神経をもたらす可能
性があり、CSARとは無関係な神経に潜在的に影響を及ぼす。さらに、心外膜投与は比
較的長く神経求心線維のアブレーションを呈するが、効果期間を延長することは、頻繁な
反復投与の必要がなく慢性心血管病態の治療にとって望ましい。
【0011】
したがって、心血管病態を治療または予防するために患者に対するリスクを低減したT
RPV1アゴニスト(例えばRTX)の標的投与の改善が当該技術分野において必要とさ
れている。
【発明の概要】
【0012】
本開示は、TRPV1アゴニスト(例えばRTX)硬膜外投与の方法を提供し、心臓交
感神経求心路末端の除神経を提供する。投与は、第1から第4の胸椎のうちの少なくとも
1つに対して行われる。本開示は、心不全、高血圧、交感神経励起の亢進、心肥大、左室
拡張末期圧(LVEDP)の上昇、肺水腫およびこれらの組み合わせからなる群から選択
される関連徴候を含む、1つ以上の心血管病態を治療する方法を提供する。
【0013】
硬膜外腔への投与は、より非侵襲的な治療、より容易な投与、ならびに脊柱管への髄腔
内注入または心臓への投与(例えば心外膜投与)に付随する潜在的な有害作用を低減する
ことなど、いくつかの利点がある。
【0014】
RTXの硬膜外投与はまた、心外膜投与と比較すると、より標的化した神経求心線維の
アブレーションおよびより長期持続するCSAR活性の減少を得ると考えられてきた。例
えば、ラットモデルにおいて、心外膜投与の約3~4ヶ月後にCSAR活性が増加したの
とは対照的に、硬膜外投与の6ヵ月後でもCSAR活性は減少したままだった。
【0015】
さらに、硬膜外腔への投与は、不必要または望ましくない神経をアブレーションまたは
除神経することを減らす可能性がある。硬膜外腔への注入は、脊柱管への投与と比較して
、製剤が脊柱内で移動する程度を減らす。製剤は、硬膜外腔内では脊柱管内よりもより低
い泳動性を経験するだろう。硬膜外腔内の組織は、脊柱管の脳脊髄液中でのより高い泳動
性と比較して、製剤の泳動性を遅延させる傾向があるだろう。
【0016】
さらに、各結節腫への投与とは対照的に、本出願のある種の実施形態では、特に単一の
硬膜外レベルに投与する場合においては、不必要な神経のアブレーションまたは除神経の
量を減らすのと同様に、注入数はさらに減らされる。
【0017】
患者の心血管病態を治療する方法がさらに本明細書において提供され、この方法は、患
者にオピオイド受容体アゴニストを投与することと、患者の第1~第4胸椎レベルの1つ
以上に位置する硬膜外腔に一過性受容体電位バニロイド1(TRPV1)受容体アゴニス
トを投与することと、を提供する。実施形態において、オピオイド受容体アゴニストはオ
ピオイドであり、オピオイドはフェンタニールである。オピオイド受容体アゴニストの投
与は、例えば、静脈内投与または腹腔内投与により行うことができる。オピオイド受容体
アゴニストの投与は、TRPV1アゴニストの投与前に行うことができる。例えば、TR
PV1アゴニストは、オピオイド受容体アゴニストの投与の直後、またはオピオイド受容
体アゴニスト投与後の若干の時間、例えば、1、2、3、4、5、10、15、30、4
5、60または90分後に投与され得る。
【0018】
オピオイド受容体アゴニストは、オピオイド受容体と結合し、オピオイド受容体を誘発
する任意の化合物を含んでもよい。オピオイド受容体アゴニストは、オピオイドを含む。
オピオイドは、例えば、モルヒネ、コデイン、ヒドロコドン、オキシコドン、フェンタニ
ールおよびそれらの類似体などの天然型化合物および合成化合物の両方を含む。オピオイ
ド受容体のある特定のクラスは、μ-オピオイド受容体である。具体的に、μ-オピオイ
ド受容体アゴニストとしては、セブラノパドール、エルクサドリン、ヒドロコドン、ヒド
ロモルホン、レボルファノール、ロペラミド、メタドン、ナルブフィン、メペリジン、タ
ペンタドール、コデイン、DADLE、DAMGO、ジヒドロモルフィン、エンドモルフ
ィン-1、エトニタゼン、フェンタニール、レボメサドン、モルヒネ、スフェンタニル、
ブプレノルフィン、ブトルファノール、(-)-ペンタゾシン、無水アルビモパン、ジプ
レノルフィン、レバロルファン、メチルナルトレキソン、ナルメフェン、ナロルフィン、
ナロキソン、ナルトレキソン、ナルトリベン、ナルトリンドールおよびクァダゾシンなど
が挙げられる。本明細書において、フェンタニールは、その類似体である、スフェンタニ
ル、アルフェンタニル、レミフェンタニルおよびロフェンタニルなどを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明は、添付図面とあわせて以下の詳細な説明から、より十分に理解されるだろう。
【0020】
【
図1】レシニフェラトキシン(RTX)の構造を示す。
【
図2】異なる椎骨レベルの活性を示す添付画像により、図示した椎骨レベル、すなわち最初の4つの胸椎レベルでのRTX注入についてのTRPV1受容体反応の強度を表す、ラットモデルの実験データを示す。
【
図3】
図3Aは、RTX無注入およびRTX注入ラット群についてのイソレクチンB4(IB4)およびTRPV1反応を表す、ラットモデルの実験データを示す。
図3Bは、26週間にわたって測定された、RTX無処置(ビヒクル)群および硬膜外RTX処置群についての平均動脈圧(MAP)および腎交感神経活動(RSNA)を表す、ラットモデルの実験データを示す。
図3Cは、26週間にわたって測定された、RTX無処置(ビヒクル)群および心外膜RTX処置群についてのMAPおよびRSNAを表す、ラットモデルの実験データを示す。
【
図4】TRPV1およびサブスタンスP(SP)の両方を染色したT2脊髄後角の画像を示し、RTX注入を受けた対象を対照群と比較する。
【
図5】スプラーグドーリーラット各4群:ビヒクルのみを投与したシャムラット(カラムA)、RTXを硬膜外投与したシャムラット(カラムB)、ビヒクルのみを投与した誘発慢性心不全(CHF)のラット(カラムC)、およびRTXを硬膜外投与した誘発慢性心不全(CHF)のラット(カラムD)、(各群n=9~16)の心機能の実験データを示し、その実験データは、体重、心臓重量、心臓重量と体重(HW/BW)の比、湿肺重量と体重(WLW/BW)の比、左室収縮末期圧(LVESP)、左室拡張末期圧(LVEDP)、左室圧の最大一次導関数(dp/dt
max)、左室圧の最小一次導関数(dp/dt
min)および梗塞サイズを含む。ビヒクル群のシャムと比べて統計的な有意値をアスタリスク(*)で示し、ビヒクルのみの群のCHFと比べて統計的な有意値をダガー(†)で示す。有意基準は両方とも、P<0.05レベルであった。
【
図6】スプラーグドーリーラット各4群:ビヒクルのみを投与したシャムラット(カラムE)、RTXを心外膜投与したシャムラット(カラムF)、ビヒクルのみを投与した誘発慢性心不全(CHF)のラット(カラムG)、およびRTXを心外膜投与した誘発慢性心不全(CHF)のラット(カラムH)、(各群n=20~25)の心機能の実験データを示し、その実験データは、体重、心臓重量、心臓重量と体重(HW/BW)の比、湿肺重量と体重(WLW/BW)の比、平均動脈圧(MAP)、左室拡張末期圧(LVEDP)、心拍数、左室圧の最大一次導関数(dp/dt
max)、左室圧の最小一次導関数(dp/dt
min)および梗塞サイズを含む。ビヒクル群のシャムと比べて統計的な有意値をアスタリスク(*)で示し、ビヒクルのみの群のCHFと比べて統計的な有意値をダガー(†)で示す。有意基準は両方とも、P<0.05レベルであった。
【
図7A】28週間にわたって、RTX無処置(n=20)および心外膜RTX処置(n=19)した誘発CHFラットの長期生存率を表す、ラットモデルの実験データを示す。
【
図7B】28週間にわたって、RTX無処置(n=10)および第1から第4胸椎レベルへの硬膜外RTX処置(n=9)した誘発CHFラットの長期生存率を表す、ラットモデルの実験データを示す。
【
図8】無処置のシャムラット、無処置の誘発CHFラット、心外膜RTX処置した誘発CHFラット、硬膜外RTX処置した誘発CHFラットについての動脈圧(ABP)および心臓交感神経活動(CSNA)を表す、ラットモデルの実験データを示す。
【
図9】シャムおよびビヒクルのみ、シャムおよびRTX、CHFおよびビヒクルのみ、ならびにRTX群のCHFについての、心臓交感神経活動(CSNA)および腎交感神経活動(RSNA)に対する基礎的な心臓交感神経緊張を表す、ラットモデルの実験データを示す。いずれの場合においても、ビヒクルの投与またはRTXとビヒクルの投与は硬膜外であった。ビヒクル群のシャムと比べて統計的な有意値をアスタリスク(*)で示し、ビヒクルのみの群のCHFと比べて統計的な有意値を番号記号(#)で示す。有意基準は両方とも、P<0.05レベルであった。
【
図10】シャムおよびビヒクルのみ、シャムおよびRTX、CHFおよびビヒクルのみ、ならびにRTX投与群のCHFについての収縮終期圧・容量関係(ESPVR)を表す、ラットモデルの実験データを示す。いずれの場合においても、ビヒクルの投与またはRTXとビヒクルの投与は硬膜外であった。ビヒクル群のシャムと比べて統計的な有意値(P<0.05レベル)を、アスタリスク(*)によって示す。
【
図11】シャムおよびビヒクルのみ、シャムおよびRTX、CHFおよびビヒクルのみ、ならびにRTX投与群のCHFについての拡張終期圧・容量関係(EDPVR)を表す、ラットモデルの実験データを示す。いずれの場合においても、ビヒクルの投与またはRTXとビヒクルの投与は硬膜外であった。ビヒクル群のシャムと比べて統計的な有意値をアスタリスク(*)で示し、ビヒクルのみの群のCHFと比べて統計的な有意値を番号記号(#)で示す。有意基準は両方とも、P<0.05レベルであった。
【
図12】シャムおよびビヒクルのみ、シャムおよびRTX、CHFおよびビヒクルのみ、ならびにRTX投与群のCHF(n=5~8)についての24時間の平均動脈圧(MAP)を表す、ラットモデルの実験データを示す。研究は、心筋梗塞の10~12週後に実行した。
【
図13】
図13Aは、RTX処置した初期高血圧性の(すなわち、高血圧前症または軽症高血圧の)対象を特徴とするラットモデル、およびビヒクル処置のみの対照群の実験データから平均動脈圧(MAP)示す。白抜き丸は対照群を示し、黒丸はRTX処置群を示す。グラフ上の矢印で示すように、0日目に注入することによりRTXの硬膜外投与が行われる。アスタリスク(*)および横線は、2つの集団間において有意差のあるデータを示す。
図13Bは、RTX処置した初期高血圧性の(すなわち、高血圧前症または軽症高血圧の)対象を特徴とするラットモデル、およびビヒクル処置のみの対照群の実験データからの収縮期動脈圧を示す。白抜き丸は対照群を示し、黒丸はRTX処置群を示す。グラフ上の矢印で示すように、0日目に注入することによりRTXの硬膜外投与が行われる。アスタリスク(*)および横線は、2つの集団間において有意差のあるデータを示す。
図13Cは、RTX処置した初期高血圧性の(すなわち、高血圧前症または軽症高血圧の)対象を特徴とするラットモデル、およびビヒクル処置のみの対照群の実験データからの拡張期動脈圧を示す。白抜き丸は対照群を示し、黒丸はRTX処置群を示す。グラフ上の矢印で示すように、0日目に注入することによりRTXの硬膜外投与が行われる。アスタリスク(*)および横線は、2つの集団間において有意差のあるデータを示す。
【
図14】
図14Aは、RTX処置群およびビヒクル処置のみの対照群を含む、確定高血圧を伴う自然発生高血圧ラット(SHR)モデルの実験データからの平均動脈圧(MAP)を示す。白抜き丸は対照群を示し、黒丸はRTX処置群を示す。グラフ上の矢印で示すように、0日目に注入することによりRTXの硬膜外投与が行われる。いずれの場合においても、アスタリスク(*)および横線は、2つの群間において有意差のあるデータを示す。
図14Bは、RTX処置群およびビヒクル処置のみの対照群を含む、確定高血圧を伴う自然発生高血圧ラット(SHR)モデルの実験データからの収縮期動脈圧を示す。白抜き丸は対照群を示し、黒丸はRTX処置群を示す。グラフ上の矢印で示すように、0日目に注入することによりRTXの硬膜外投与が行われる。いずれの場合においても、アスタリスク(*)および横線は、2つの群間において有意差のあるデータを示す。
図14Cは、RTX処置群およびビヒクル処置のみの対照群を含む、確定高血圧を伴う自然発生高血圧ラット(SHR)モデルの実験データからの拡張期動脈圧を示す。白抜き丸は対照群を示し、黒丸はRTX処置群を示す。グラフ上の矢印で示すように、0日目に注入することによりRTXの硬膜外投与が行われる。いずれの場合においても、アスタリスク(*)および横線は、2つの群間において有意差のあるデータを示す。
【
図15A】L2~L5領域の腰椎投与によってRTX処置した確定高血圧ラットモデルの実験データからの平均動脈圧(MAP)をmmHgで示し、0日目のRTX投与とともに投与前の7日間および投与後の60日間を示している。血圧測定は、1日あたり平均8時間である。
【
図15B】L2~L5領域の腰椎投与によってRTX処置した確定高血圧ラットモデルの実験データからの心拍数(1分あたりの拍数)を示し、0日目のRTX投与とともに、投与前の7日間および投与後の60日間を示している。血圧測定は、1日あたり平均8時間である。
【
図16】高血圧ラットの自由行動下血圧(ABP)、MAPおよび心拍数を示し、RTXの投与前、投与中、投与後と経時的に示す。T1~T4の各椎骨レベルにRTXを投与する時間を、アスタリスクで示す。
【
図17】高血圧ラットの自由行動下血圧(ABP)、MAPおよび心拍数を示し、7μg/kgのフェンタニールを静脈内投与する前処置を受けた対象について、RTXの投与前、投与中、投与後と経時的に示す。T1~T4の各椎骨レベルにRTXを投与する時間を、アスタリスクで示す。
【
図18】高血圧ラット3群の比較データを示し、第1群(n=9)は前処置を受けず(RTXのみ)、第2群(n=7)は20μg/kgのフェンタニールを腹腔内投与する前処置を受け(RTX+IP Fen(20μg/kg))、第3群(n=5)は、3.5μg/kgのフェンタニールを静脈内投与する前処置を受けた(IV Fen(3.5μg/kg))。データは、ベースライン測定値を超えるMAPおよび心拍数の変化を示す。
【
図19】高血圧ラット3群の比較データを示し、第1群(n=9)は前処置を受けず(RTXのみ)、第2群(n=7)は20μg/kgのフェンタニールを腹腔内投与する前処置を受け(RTX+IP Fen(20μg/kg))、第3群(n=5)は、3.5μg/kgのフェンタニールを静脈内投与する前処置を受けた(IV Fen(3.5μg/kg))。データは、各群の、処置前(ベースライン)、前処置を受けた群(「Fen」と指定)の前処置後、およびRTX処置後についてのMAPを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、対象における心血管病態(複数可)を治療する方法に関し、該方法は、一過
性受容体電位バニロイド1(TRPV1)アゴニストを患者の第1~第4胸椎レベルの少
なくとも1つ以上の硬膜外腔に投与することを含む。ある種の実施形態において、心血管
病態はうっ血性心不全であってもよい。あるいは、心血管病態は、患者の心筋の瘢痕化で
もあってもよい。あるいは、心血管病態は、高血圧、高血圧前症、または軽症高血圧から
なる群から選択されてもよい。心血管病態は、重症高血圧もしくは薬剤耐性高血圧または
難治性高血圧を含んでもよい。
【0022】
さらに、本開示によるTRPV1アゴニストの投与は、単一の椎骨レベルに行われても
よい。ある種の実施形態において、TRPV1アゴニストは、第1胸椎に近接した硬膜外
腔に投与されてもよく、TRPV1アゴニストは、第2胸椎に近接した硬膜外腔に投与さ
れてもよく、TRPV1アゴニストは、第3胸椎に近接した硬膜外腔に投与されてもよく
、またはTRPV1アゴニストは、第4胸椎に近接した硬膜外腔に投与されてもよい。
【0023】
本開示は、さらに、対象において心血管病態を治療する方法に関し、該方法は、レシニ
フェラトキシン(RTX)を患者の第1~第4胸椎レベルの少なくとも1つの硬膜外腔に
投与することを含む。ある種の実施形態において、心血管病態はうっ血性心不全であって
もよい。あるいは、心血管病態は、患者の心筋の瘢痕化であってもよい。あるいは、心血
管病態は、高血圧、高血圧前症、または軽症高血圧からなる群から選択されてもよい。あ
るいは、心血管病態は、重症高血圧または難治性高血圧からなる群から選択されてもよい
。ある種の実施形態において、RTXは、第1胸椎に近接した硬膜外腔に投与されてもよ
く、RTXは、第2胸椎に近接した硬膜外腔に投与されてもよく、RTXは、第3胸椎に
近接した硬膜外腔に投与されてもよく、またはRTXは、第4胸椎に近接した硬膜外腔に
投与されてもよい。
【0024】
本開示は、対象を予防的に治療する方法であって、該対象が高血圧前症または軽症高血
圧を有し、該方法が、該対象の胸椎に近接した硬膜外腔にTRPV1アゴニストを投与す
ることを含む、方法に関する。
【0025】
本開示は、一部の実施形態において、対象を予防的に治療する方法であって、該対象が
高血圧前症または軽症高血圧を有し、該方法が該対象の胸椎に近接した硬膜外腔にRTX
を投与することを含む、方法に関する。
【0026】
本開示は、さらに、一部の実施形態において、患者の心血管病態を治療する方法であっ
て、該方法が該患者の第1~第4胸椎レベルの1つ以上の硬膜外腔に、約0.06μg超
かつ約30μg未満の量のRTXを投与することを含む、方法に関する。
【0027】
本開示は、さらに、一部の実施形態において、患者の心血管病態を治療する方法であっ
て、該方法が該患者の第1~第4胸椎レベルの1つ以上の硬膜外腔に溶液を投与すること
を含み、該溶液が溶液1ミリリットル(mL)につき0.6~10μgのRTXを含む、
方法に関する。ある種の実施形態において、該溶液は、約100μL超かつ約3mL未満
の量で、該1つ以上の椎骨レベルそれぞれに投与されてもよい。
【0028】
ヒト対象について、「高血圧」という用語は、患者が(i)140mmHg以上の収縮
期血圧、および(ii)90mmHg以上の拡張期血圧のいずれかまたはその両方を呈す
る病態を意味する。「高血圧前症」または「軽症高血圧」という用語は、患者が(i)1
20mmHg以上140mmHg未満の収縮期血圧、および(ii)80mmHg以上9
0mmHg未満の拡張期血圧のいずれかまたはその両方を呈する病態を意味する。「重症
高血圧」という用語は、患者が(i)180mmHg以上の収縮期血圧、または(ii)
110mmHg以上の拡張期血圧のいずれかまたはその両方を呈する病態を意味する。非
ヒト対象について、「高血圧」「高血圧前症」「軽症高血圧」および「重症高血圧」とい
う用語は、ヒト対象における前述のものに相当する非ヒト対象における持続血圧を意味す
る。「治療抵抗性高血圧」という用語は、患者の血圧が目標血圧を上回ったままであるた
め患者は少なくとも3つの異なる種類の降圧剤で併用療法中であり、降圧剤はそれぞれ最
適用量で処方され、好ましくは3剤のうち少なくとも1つが利尿薬である、病態を意味す
る。
【0029】
「硬膜外腔」という用語は、脊柱の椎骨と硬膜の間の空間の一部を意味する。用語「椎
骨レベル」は、椎骨およびその椎骨に近接した脊柱の部分を意味する。椎骨レベルは、硬
膜外腔、硬膜、および脊髄を含む椎骨の空間内部を含む。
【0030】
椎骨レベルは数値的に示され、第1胸椎レベルは頸椎に近接した椎骨レベルであり、頭
蓋骨に最も近い胸椎である。その呼称に従って、椎骨レベルの番号付けは、腰椎の方へ向
かって脊椎を下に進む。胸椎は、T1~T12に指定されている。
【0031】
心臓交感神経活動の上昇に対応する交感神経励起に関連した神経は、最初の4つの胸椎
レベルで主に見られる(Evans et al.(1953)N.Engl.J.Me
d.249:791-796)。したがって、最初の4つの胸椎レベルのうち1つ以上に
投与することは、心臓交感神経求心性神経活動に関連した神経が主に最初の4つの胸椎レ
ベルに見られるため、有利な場合がある。これらの胸椎レベルを治療することによって、
これらの交感神経求心性神経の除神経は実質的に達成され、それは他の椎骨レベルで神経
を最小限または部分的に除神経またはアブレーションをするだけで達成される。
図2は、
図示した椎骨レベル(T1~T4)にRTX注入した後のTRPV1受容体の反応を示す
。
図2は、最初の4つの胸椎レベル内に投与する場合、バニロイド受容体強度の減少が、
処置した4つの椎骨レベル、ならびに処置した椎骨レベルに近接した1つまたは2つの椎
骨レベルに通常局在することを実証する。さらに、図に挿入された小画像は、C8からT
5の椎骨レベルと比較して、C6、C7、T6、T7、およびL4の椎骨レベルで見られ
る活性強度がより大きいことを示す。
【0032】
1つ、2つまたはそれ以上の各椎骨レベルへの注入によって、硬膜外腔への投与がなさ
れる。2つの注入が行われる場合は、2つの注入は、椎骨の各側面に1つずつ注入するこ
とからなる場合がある(すなわち、両側性注入)。ヒト対象での実施形態において、投与
は段階的に発生してもよく、すなわち、第一段階において、患者は、1つまたは2つの椎
骨レベルで片側注入を受け、その後短い回復期間をとってもよい。その後、充分な効果が
見られない場合、処置した椎骨レベルとは反対側、他の椎骨レベル、またはその両方に注
入することにより、投与の後続段階が行われてもよい。投与は、医療注入/デバイスによ
って代替的に行われてもよい。ラットモデルにおいて、投与は、T13~L1胸椎領域で
クモ膜下腔へのカテーテル挿入により、T1レベルへ進んだ後、引き戻し、所望の椎骨レ
ベルで連続注入することによって行われた。
【0033】
一実施形態において、ガイダンスのための蛍光透視法を使用して、硬膜外腔への注入の
ために硬膜外腔の方向へ針を皮膚に挿入することにより、ヒト対象は、RTX(各椎骨レ
ベルのそれぞれ側面に0.6~10μg/mL、100μL~1.5mL)硬膜外注入を
受けることができる。一実施形態において、まず1つ以上の椎骨レベルの片側への注入に
より患者を処置してもよい。続いて、大きな効果が必要とされる場合には、(前回の椎骨
)レベルまたは別のレベルで反対側面に注入することにより患者を処置してもよい。片側
の椎骨レベルの治療は、単一結節腫を主に治療してもよい。限られた数の神経節による初
期治療、次いで、必要であれば、治療を増加させることで神経アブレーションに伴う副作
用を制御することができる。
【0034】
さらに、他の薬の投与後、またはその直前に、RTXを並行して送達できる。例えば、
RTX送達の直前に、特定のオピオイドまたは他の薬剤を投与することは、血圧および/
または心拍数の短期的な有害変化を減少または鈍化させ得る。したがって、オピオイド(
例えばフェンタニールまたは他の薬剤)は、既知のルート、例えば、静注、経口、頬、腹
膜、直腸または他のルートを介して与えられてもよい。
【0035】
本開示は、以下の実施例に対する参照によってさらに理解され得る。これらの実施例は
、本開示の様々な実施形態を示すが、単に例示目的として示されるものと理解すべきであ
る。
【実施例】
【0036】
慢性心不全対象の処置
以下の実施例1から9は、誘発CHFラットのデータについて述べる。本実施例は、C
HF対象におけるRTX処置と関連した多くの指標の改善を示す。本ラットモデルは、R
TX心外膜投与および各種対照群と比べた、RTX硬膜外投与の比較を提供する。心外膜
データのために、誘発心筋梗塞(冠状動脈結紮)を開腹手術する際に同時に、RTXをス
ワブで直接心外膜に投与した。
【0037】
RTXの硬膜外投与のために、小さい正中切開が、T13-L1胸椎領域でなされた。
表層性筋の切開の後に、2つの小開口(約2mm×2mm)をT13椎骨の左側面および
右側面に作った。ポリエチレンカテーテル(PE-10)を左穴よりクモ膜下腔に挿入し
、徐々に、左T1レベルへ約5.5~6cm進めた所で、最初の注入(6μg/mL、1
0μL)をRTXの拡散を最小化するために非常に遅い速度で行った。次いで、カテーテ
ルを、左T2、T3およびT4の方へそれぞれ約0.5cm引き戻し、各分節に連続注入
(各10μL)を実施した。次いで、カテーテルを引き抜き、同じ注入を、右側で繰り返
した。シリコーンジェルを使用し、T13椎骨の穴を封止した。筋肉を覆う皮膚を3-0
ポリプロピレン縫合糸で閉じた。単純結節縫合を使用し、皮膚を閉じた。
【0038】
実施例1
図3A~4Bは、本出願の実施形態に従いラット研究の実験結果を示す。
図3Aは、硬
膜外RTX無注入ラット群および硬膜外RTX注入ラット群でのイソレクチンB4(IB
4)およびTRPV1反応を表す、ラットモデルの実験データを示す。
図3Bは、26週
間にわたって測定された、RTX無処置(ビヒクル)群および硬膜外RTX処置群での平
均動脈圧(MAP)および腎交感神経活動(RSNA)を表す、ラットモデルの実験デー
タを示す。
図3Cは、26週間にわたって測定された、RTX無処置(ビヒクル)群およ
び心外膜RTX処置群についてのMAPおよびRSNAを表す、ラットモデルの実験デー
タを示す。
【0039】
図3Aは、視覚的に明白な発現増加を示すビヒクルのみの処置と比較して、RTX処置
後の様々なサイズのDRG神経細胞におけるイソレクチンB4(IB4)およびTRPV
1の発現減退を示す。
図3Bは、RTX無処置群およびRTX処置群のCSAR活性化に
対する反応を示す。
図3Bは、平均動脈圧(MAP)および腎交感神経活動(RSNA)
でのRTXの作用が長期に及ぶことを示している。硬膜外RTX投与の後、RTX無処置
(ビヒクル)の対照ラットと比較して、MAPおよびRNSAの両方は大幅減少を示す。
その大幅減少は、1週、5~6週、9~11週および24~26週に観察される。
【0040】
図3Cは、RTXの心外膜投与を使用したラット研究の実験データを示す。
図3Cは、
心外膜RTX投与後の心臓交感神経求心性神経アブレーションはわずか約3~4ヵ月間だ
ったことを示す。
図3Bは、硬膜外RTX投与後の心臓交感神経求心性神経アブレーショ
ンは少なくとも6ヵ月間だったことを示す。
【0041】
実施例2
図4は、本出願の実施形態に従いラット研究の実験結果を示す。
図4は、TRPV1お
よびサブスタンスP(SP)の両方を染色したT2脊髄後角の画像を示し、RTX注入を
受けた対象を対照群と比較する。T1~T4のDRGレベルでのRTXの硬膜外塗布は、
胸髄後角に突き出ている、ほとんどすべてのSP-含有C線維求心性神経(ペプチド作動
性)およびイソレクチンB4(IB4)陽性C線維求心性神経(非ペプチド作動性)の大
部分を、切断した。
図4は、TRPV1タンパク質の発現減少および細胞体を含むIB4
の破壊を示し、これは小径神経細胞が切断されたことを示唆する。SPを発現する脊髄後
角の神経細胞をRTXにより切断した。IB4は小径求心性神経の指標であり、SPは神
経炎症の指標である。いずれの場合においても、対照群と比較して、RTX処置対象群の
画像におけるシグナルの減少から、発現の減少は目にみえて明らかである
【0042】
実施例3
図5は、本出願の実施形態に従いラット研究の実験結果を示す。
図5は、スプラーグド
ーリーラットの各4群:ビヒクルのみを投与したシャムラット(カラムA)、RTXを硬
膜外投与したシャムラット(カラムB)、ビヒクルのみを投与した誘発慢性心不全(CH
F)のラット(カラムC)、およびRTXを硬膜外投与した誘発慢性心不全(CHF)の
ラット(カラムD)(各群n=9~16)の心機能の実験データを示す。その実験データ
は、体重、心臓重量、心臓重量と体重(HW/BW)の比、湿肺重量と体重(WLW/B
W)の比、左室収縮末期圧(LVESP)、左室拡張末期圧(LVEDP)、左室圧の最
大一次導関数(dp/dt
max)、左室圧の最小一次導関数(dp/dt
min)およ
び梗塞サイズを含む。ビヒクル群のシャムと比べて統計的な有意値をアスタリスク(*)
で示し、ビヒクルのみの群のCHFと比べて統計的な有意値をダガー(†)で示す。有意
基準は両方とも、P<0.05レベルであった。「CHF+ビヒクル」と表したカラムは
、誘発慢性心不全対照ラットの様々な指標を示す。「CHF+RTX」と表したカラムは
、硬膜外RTX注入を受けた誘発慢性心不全ラットの様々な指標を示す。「シャム+ビヒ
クル」および「シャム+RTX」と表したカラムは、硬膜外RTX処置した誘発慢性心不
全を伴わないシャムラットと、硬膜外RTX処置しない誘発慢性心不全を伴わないシャム
ラットを、それぞれ比較する。
【0043】
カラムCおよびAの比較は、試験されたラット群について、以下の慢性心不全に関する
統計的に有意な効果を示す。:心臓重量、体重(心肥大に合わせた)に対する割合として
の心臓重量、体重(肺うっ血に合わせた)に対する割合としての湿肺重量、および左室拡
張末期圧における大幅増加、心筋収縮力の減少を示す、左室圧の最大一次導関数(dp/
dtmax)および左室圧の最小一次導関数(dp/dtmix)の大幅減少(絶対項に
おいて)。これらの結果はそれぞれ、慢性心不全において予想される心臓の弱体化と一致
している。カラムDは、RTX硬膜外投与を受けた群が、心臓重量、体重に対する割合と
しての心臓重量、体重に対する割合としての湿肺重量、左室拡張末期圧、および左室圧最
小一次導関数(dp/dtmin)に関して、統計学的に有意な心臓血管機能の改善を示
すことを示す。特に、シャムと比較して慢性心不全群では380%の上昇を示す、左室拡
張末期圧が、RTX処置後に60%だけ上昇を示した。カラムCおよびDにおいて見られ
る梗塞サイズの類似性(統計的に有意でない差)は、結果の改善が対象の梗塞のサイズに
よって説明できないことを示唆する。
【0044】
図6は、比較のために心外膜投与によるRTXでの処置を示す。
図6は、スプラーグド
ーリーラット各4群:ビヒクルのみを投与したシャムラット(カラムE)、RTXを心外
膜投与したシャムラット(カラムF)、ビヒクルのみを投与した誘発慢性心不全(CHF
)のラット(カラムG)、およびRTXを心外膜投与した誘発慢性心不全(CHF)のラ
ット(カラムH)(各群n=20~25)の心機能の実験データを示す。実験データは、
体重、心臓重量、心臓重量と体重(HW/BW)の比、湿肺重量と体重(WLW/BW)
の比、平均動脈圧(MAP)、左室拡張末期圧(LVEDP)、心拍数、左室圧の最大一
次導関数(dp/dt
max)、左室圧の最小一次導関数(dp/dt
min)および梗
塞サイズを含む。ビヒクル群のシャムと比べて統計的な有意値をアスタリスク(*)で示
し、ビヒクルのみの群のCHFと比べて統計的な有意値をダガー(†)で示す。有意基準
は両方とも、P<0.05レベルであった。
【0045】
図6カラムHと
図5カラムDとの比較により、硬膜外投与によって得られる結果は、心
外膜投与によって得られる結果と同等、または場合によっては(例えば左室拡張末期圧)
より良好であることが認められた。上述のように、硬膜外処置には、投与の容易さおよび
処置による潜在的な副作用について心外膜処置に勝る多くの利点があり、心外膜処置に伴
う一過性の効果に比べると持続的な生理学的効果をももたらす。したがって、一部の患者
にとっては、心外膜処置に少なくとも同等の有効性を有する硬膜外処置が好ましい。
【0046】
実施例4
図7は、本出願の実施形態に従いラット研究の実験結果を示す。
図7Aは、28週間に
わたって、RTX無処置(n=20)および心外膜RTX処置(n=19)した誘発CH
Fラットの長期生存率を表す、ラットモデルの実験データを示す。
図7Bは、28週間に
わたって、RTX無処置(n=10)および第1から第4胸椎レベルへの硬膜外RTX処
置(n=9)した誘発CHFラットの長期生存率を表す、ラットモデルの実験データを示
す。
図7は、RTX処置した誘発慢性心不全ラットおよびRTX無処置の誘発慢性心不全
ラットの生存率を示す。
図7Aにおいて、処置は、心外膜だった。
図7Bにおいて、処置
は、硬膜外だった。
図7Bに示すとおり、硬膜外RTXで処置されたラットの長期生存率
は、RTXで処置されなかったラットの生存率より有意に高かった。特に、RTX無処置
では、10匹のラットのうち7匹が、28週間の間に死んだ。しかし、RTX処置した9
匹のラットのうち2匹だけ、同期間に死んだ。さらに、硬膜外処置は、心外膜処置で報告
されたものとおよそ同等の改善を示した。
【0047】
実施例5
図8は、本出願の実施形態に従いラット研究の実験結果を示す。
図8は、無処置のシャ
ムラット、無処置の誘発CHFラット、心外膜RTX処置した誘発CHFラット、硬膜外
RTX処置した誘発CHFラットについての動脈圧(ABP)および心臓交感神経活動(
CSNA)を表す、ラットモデルの実験データを示す。
図8は、CHF群でのCSNAの
増加を示し、心外膜および硬膜外両方のRTX処置は、未治療のCHF群と比較して大幅
なCSNAの減少を示したが、硬膜外RTX処置は、心外膜RTX処置より大幅に低いC
SNAを示した。
【0048】
実施例6
図9は、本出願の実施形態に従いラット研究の実験結果を示す。
図9は、シャムおよび
ビヒクルのみ、シャムおよびRTX、CHFおよびビヒクルのみ、ならびにRTX群のC
HFについての、心臓交感神経活動(CSNA)および腎交感神経活動(RSNA)に対
する基礎的な心臓交感神経の緊張を表す、ラットモデルの実験データを示す。いずれの場
合においても、ビヒクルの投与またはRTXとビヒクルの投与は硬膜外であった。ビヒク
ル群のシャムと比べて統計的な有意値をアスタリスク(*)で示し、ビヒクルのみの群の
CHFと比べて統計的な有意値を番号記号(#)で示す。有意基準は両方とも、P<0.
05レベルであった。
図9は、心臓交感神経活動(CSNA)および腎交感神経活動(R
SNA)に対する基礎的な心臓交感神経の緊張を表す。誘発CHFは、心臓交感神経緊張
の大幅増加を引き起こし、それは、RTXで処置されたラット群によって示されなかった
。未治療のCHF群集と比較した、RTX処置したCHF群の値の差異は、統計的に有意
だったが、RTX処置したCHF群と非CHF群との間の差異は、統計的に有意でなかっ
た。
【0049】
実施例7
図10は、本出願の実施形態に従いラット研究の実験結果を示す。
図10は、シャムお
よびビヒクルのみ、シャムおよびRTX、CHFおよびビヒクルのみ、ならびにRTX投
与群のCHFについての収縮終期圧・容量関係(ESPVR)を表す、ラットモデルの実
験データを示す。いずれの場合においても、ビヒクルの投与またはRTXとビヒクルの投
与は硬膜外であった。ビヒクル群のシャムと比べて統計的な有意値(P<0.05レベル
)を、アスタリスク(*)によって示す。
図10は、収縮終末期圧・容量関係(ESPV
R)を示し、心臓の収縮機能に相関している。CHFは、ESPVRの減退に対応し、硬
膜外RTXにより無影響と現れた。類似の結果は、心外膜RTX処置に対して見られた。
(Wang et al.(2014)Hypertension 64(4):745
-75)
【0050】
実施例8
図11は、本出願の実施形態に従いラット研究の実験結果を示す。
図11は、シャムお
よびビヒクルのみ、シャムおよびRTX、CHFおよびビヒクルのみ、ならびにRTX投
与群のCHFついての拡張末期圧・容量関係(EDPVR)を表す、ラットモデルの実験
データを示す。いずれの場合においても、ビヒクルの投与またはRTXとビヒクルの投与
は硬膜外であった。ビヒクル群のシャムと比べて統計的な有意値をアスタリスク(*)で
示し、ビヒクルのみの群のCHFと比べて統計的な有意値を番号記号(#)で示す。有意
基準は両方とも、P<0.05レベルであった。
【0051】
図11は、拡張末期圧・容量関係(EDPVR)を示し、心臓の拡張機能に相関してい
る。CHFは、EDPVRの上昇に対応する。
図11は、RTX処置したCHF群のED
PVRは、未治療のCHF群と比べて統計的に有意に小さかったが、RTX処置したCH
F群とCHFのない群との間のEDPVR差は、統計的に有意ではなかったことを示す。
【0052】
実施例9
図12は、本出願の実施形態に従いラット研究の実験結果を示す。
図12は、シャムお
よびビヒクルのみ、CHFおよびビヒクルのみ、ならびにRTXを硬膜外投与したCHF
群の24時間の平均動脈圧(MAP)を表す、ラットモデルの実験データを示す。各群、
n=6-8である。研究は、心筋梗塞後の10~12週間に実行した。
図12は、24時
間の平均動脈圧(MAP)を示す。硬膜外RTXによる処置は、CHFラット群の低MA
Pに対応する。
【0053】
高血圧および高血圧前症の対象の治療
実験データはまた、ラットモデルを使用して高血圧および高血圧前症の対象(すなわち
、軽症高血圧または初期高血圧)のための良好な治療を示した。高血圧性モデルは、遺伝
的な自然発生高血圧ラット(SHR)である。初期高血圧ラットは、生後8週で処置され
、血圧が実験の始めに最小限上昇した群を反映する。実施例10および11は、高血圧お
よび高血圧前症の対象(すなわち、軽度の高血圧または初期高血圧)および誘発CHFの
ない対象の治療について示す。これらの対象にとって、RTXの硬膜外投与は血圧の完全
な減少と関連し得る。さらに、RTXで処置された対象は、対照群と比較して、時間とと
もに血圧上昇は小さいことがある。または、処置が血圧を完全に低下させ、時間とともに
上昇も弱まっていることの両方に関連することがある。
【0054】
実施例10
図13は、初期高血圧のラットを使用した研究の実験結果を示す。
図13Aは、RTX
処置した初期高血圧性の(すなわち、高血圧前症または軽症高血圧の)対象を特徴とする
ラットモデル、およびビヒクル処置のみの対照群の実験データから平均動脈圧(MAP)
示す。白抜き丸は対照群を示し、黒丸はRTX処置群を示す。各グラフ上の矢印で示すよ
うに、0日目に注入することによりRTXの硬膜外投与が行われる。アスタリスク(*)
および横線は、2つの集団間において有意差のあるデータを示す。
図13Bは、RTX処
置した初期高血圧性の(すなわち、高血圧前症または軽症高血圧の)対象を特徴とするラ
ットモデル、およびビヒクル処置のみの対照群の実験データからの収縮期動脈圧を示す。
白抜き丸は対照群を示し、黒丸はRTX処置群を示す。各グラフ上の矢印で示すように、
0日目に注入することによりRTXの硬膜外投与が行われる。アスタリスク(*)および
横線は、2つの集団間において有意差のあるデータを示す。
図13Cは、RTX処置した
初期高血圧性の(すなわち、高血圧前症または軽症高血圧の)対象を特徴とするラットモ
デル、およびビヒクル処置のみの対照群の実験データからの拡張期動脈圧を示す。白抜き
丸は対照群を示し、黒丸はRTX処置群を示す。各グラフ上の矢印で示すように、0日目
に注入することによりRTXの硬膜外投与が行われる。アスタリスク(*)および横線は
、2つの集団間において有意差のあるデータを示す。
【0055】
図13Aは、上述の実験中に測定される平均動脈圧(MAP)を示し、RTX注入の後
はわずかに減少する。しかし、それ以上に有意なのは、RTX注入を受けたラット群が研
究期間中ほぼ安定したMAPを示したが、ビヒクルのみの群で報告されるMAPは同期間
中増加し続けた。その結果、
図13Aのアスタリスクおよび線によって示されるように、
RTX処置群についてのMAPは20日目およびそれ以降、有意に減少した。
【0056】
図13Bは、上述の研究中の収縮期動脈圧を示す。
図13Bは、収縮期動脈圧が、ほぼ
同じ血圧に回復する前に、RTX注入後数日以内にわずかに低下し、研究期間の間、その
血圧を維持したことを示す。それに対し、ビヒクルのみの群の収縮期動脈圧は、研究期間
を通して上昇し続けた。約23日目までおよびそれ以降、RTX処置群は、対照群より有
意に低い血圧を示した。
【0057】
図13Cは、上述の研究中の拡張期動脈圧を示す。
図13Cは、RTX処置群において
、拡張期動脈圧が研究期間にわたってほぼ安定したままだったことを示す。それに対し、
ビヒクルのみの群の拡張期動脈圧は、研究期間にわたって上昇し続けた。約22日目まで
またはそれ以降、RTX処置群は、対照群に比べて有意に低い血圧を示した。
【0058】
実施例11
図14A~14Cは、さらに、(SHR)モデルを使用した研究の実験結果を示す。図
14Aは、RTX処置群およびビヒクル投与のみの対照群を含む、確定高血圧を伴う自然
発生高血圧ラット(SHR)モデルの実験データからの平均動脈圧(MAP)を示す。確
定高血圧ラットは、生後16週で処置され、血圧がRTX投与の最初で上昇した群を反映
する。白抜き丸は対照群を示し、黒丸はRTX処置群を示す。各グラフ上の矢印で示すよ
うに、0日目に注入することによりRTXの硬膜外投与が行われる。いずれの場合におい
ても、アスタリスク(*)および横線は、2つの群間において有意差のあるデータを示す
。
図14Bは、RTX処置群およびビヒクル処置のみの対照群を含む、自然発生高血圧ラ
ット(SHR)モデルの実験データからの収縮期動脈圧を示す。白抜き丸は対照群を示し
、黒丸はRTX処置群を示す。各グラフ上の矢印で示すように、0日目に注入することに
よりRTXの硬膜外投与が行われる。いずれの場合においても、アスタリスク(*)およ
び横線は、2つの群間において有意差のあるデータを示す。
図14Cは、RTX処置群お
よびビヒクル処置のみの対照群を含む、自然発生高血圧ラット(SHR)モデルの実験デ
ータからの拡張期動脈圧を示す。白抜き丸は対照群を示し、黒丸はRTX処置群を示す。
各グラフ上の矢印で示すように、0日目に注入することによりRTXの硬膜外投与が行わ
れる。いずれの場合においても、アスタリスク(*)および横線は、2つの群間において
有意差のあるデータを示す。これらの対象は、心筋梗塞を誘発するために処置しなかった
。データは、ビヒクルのみ注入したSHRラット(n=7)とビヒクルおよびRTXを注
入したSHRラット(n=7)の比較を可能にした。
【0059】
図14Aは、注入前の試験最初の数日間に示されたベースラインレベルと比較して、注
入後数日以内で平均動脈圧(MAP)がRTX処置ラットにおいて若干の減少を示したこ
とを表す。このMAPの減少は、55日の研究期間を通じて観察された。約8日目まで、
図14Aのアスタリスクおよび線によって示されるように、減少は、ビヒクルのみの群と
比較して有意だった。残りの研究の間中、この有意差は見られた。さらに、ビヒクルのみ
の群は、MAPで上昇傾向を経験し、それはRTX処置群において見られなかった。
図1
4Bは、同群の収縮期動脈圧を示す。ここでもまた、注入前の試験最初の7日間により示
されたベースラインレベルと比較すると、RTX処置群は注入後の減少を報告した。残り
の研究の間中、この血圧の低下は維持された。RTX処置群は、約7日目まで、およびそ
れ以降、ビヒクルのみの群に比べて有意な差を示した。さらに、ビヒクルのみの群は、研
究の過程で血圧がより顕著な上昇を示した。
図14Cは、同群の拡張期動脈圧を示す。こ
こでもまた、注入前の試験最初の7日間により示されたベースラインレベルと比較すると
、RTX処置群は注入後の減少を報告した。残りの研究の間中ずっと、この血圧の低下は
維持された。RTX処置群は、約8日目まで、およびそれ以降、ビヒクルのみの群に比べ
て有意な差を示した。さらに、ビヒクルのみの群は、研究の過程で血圧がより顕著な上昇
を示した。
【0060】
実施例11は、RTX処置に反応した確定高血圧ラットを示す。処置前、確定高血圧ラ
ットの平均MAPは、初期高血圧ラットの平均MAPより約10~15mmHg高かった
。
図14Aと
図13Aの比較。処置後、確定高血圧ラットと初期高血圧ラットは両方、約
125~130mmHgの類似のMAPを示した。これらの結果は、初期高血圧ラットと
確定高血圧ラット両方に対する利点を実証する。
【0061】
実施例12
実施例12は、RTX投与をラット群の腰部(L2~L5)に実施した実験について説
明する。実施例12は、腰部への投与は、第1~第4胸椎レベルへの投与で得られる持続
的な高血圧治療を達成しない。
【0062】
図15Aは、L2~L5領域の腰椎投与によってRTX処置した確定高血圧ラットモデ
ルの実験データからの平均動脈圧(MAP)をmmHgで示し、0日目に行ったRTX投
与とともに投与前の7日間および投与後の60日間を示している。
図15Aは、MAPは
、腰椎注入の後すぐに減少したが、その後増加し始め、処置後、約15~20で、最初(
注入前)のベースラインに戻ったことを示す。血圧は、研究期間の終了まで、注入前ベー
スラインレベルを上回って上昇し続けた。
【0063】
図15Bは、L2~L5領域の腰椎投与を介してRTX処置した確定高血圧ラットモデ
ルの実験データからの心拍数(1分あたりの拍数)を示し、0日目のRTX投与とともに
、投与前の7日間および投与後の60日間を示している。
図15Bは、RTX注入後の心
拍数の上昇を示し、注入後約2~10日で鎮静する。
【0064】
さらに、TRPV1求心性神経のための免疫蛍光研究は、投与の後、L2~L5レベル
で行われた。処置後、L2~L5レベル内で、DRGニューロンは、ほとんどのTRPV
1求心性神経の消失を示した。L1は強力な蛍光を示し、多数のTRPV1求心性神経が
残っていることを示している。T1~T5レベル内で、L2~L5注入の後、TRPV1
求心性神経の減少は見られなかった。心臓内で、TRPV1蛍光は、心筋の表面および心
臓組織内に残った。免疫蛍光研究は、腰椎投与の効果が局所的であり、心臓組織または無
処置の椎骨レベル内で有意な除神経もたらさなかったことを示した。
【0065】
実施例12は、L2~L5椎骨レベルへの投与後に、T1~T4椎骨レベルへの処置に
伴う持続的な高血圧の低下が見られなかったことを実証する。さらに、免疫蛍光研究によ
り、TRPV1除神経は、L2~L5の処置後、局在したことが確認された。
【0066】
一過性の血圧上昇および心拍数上昇への対処
本開示に従って実施される実験により、本明細書に記載のTRPV1アゴニスト(例え
ばRTX)の投与が、血圧、心拍数、またはその両方の一過性の上昇を引き起こし得るこ
とが実証された。この一過性の上昇は、RTX注入後に発生することがあり、数分間、例
えば約5分または10分間、持続することがある。この上昇は、特に高血圧など隠れた心
臓病態の患者に有害作用がある場合があり、そのような患者には現在治療を受け得る多く
の患者が含まれると思われる。
【0067】
本開示に従って実施された実験により、一過性の血圧上昇と心拍数が、オピオイド受容
体アゴニスト、より具体的にはμ-オピオイド受容体アゴニストでの前処置により軽減ま
たは除去され得ることもまた実証された。後述のように、実施例14において、μ-オピ
オイド受容体アゴニストフェンタニールを使用して試験を実施した。この投与により、一
過性の血圧および心拍数上昇が軽減または除去されることが判った。
【0068】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、μ-オピオイド受容体
アゴニストの投与により、脊柱後角のオピオイド受容体の活性化がもたらされることがあ
り、それよって一過性の交感神経の励起を抑制する。さらに、アゴニストは、RTX投与
に伴う痛覚入力を阻害し得る。
【0069】
実施例13
実施例13は、オピオイド受容体アゴニストによる対象の前処置が、RTX注入後に見
られる平均血圧、MAPおよび心拍数の短期上昇を制御するために使用するできることを
実証する。本文脈において、T1~T4椎骨レベルへの硬膜外RTX投与は、血圧および
心拍数の短期上昇を起こすことがある。
図16は、図上のアスタリスクで示した各注入時
間ともに、T1~T4椎骨レベルへの投与後の実験結果を示す。結果は、ABP、MAP
および心拍数が短期間に大幅に上昇し、注入後も数分間にわたって継続したことを実証し
た。この短期上昇は、患者にとって不快症状を伴うことがあり、極端な場合、患者、特に
すでに極度の高血圧または他の心臓病態を呈する患者に害を及ぼすことがある。
【0070】
実施例13は、この短期の血圧および心拍数の上昇が、フェンタニールを使用して患者
を前処置することによって軽減または除去できることを示している。本研究では、静脈注
入および腹腔内注入を使用して前処置を実施した。投与の適切な形態は、処置される対象
に基づいて選択されてもよい。例えば、ヒト患者においては、一般的に静脈内投与が好ま
しい場合がある。
図17は、7μg/kgのフェンタニール静脈内投与(IV)による前
処置を示す。前と同じように、アスタリスクは、RTX注入がなされた時間を示す。結果
は、特にフェンタニールを投与されなかった対象において見られた上昇と比較すると、前
処置を受けた対象では、RTX投与後にABP、MAPおよび心拍数はほとんどまたは全
く短期上昇を示さないことが実証された(
図16)。
【0071】
実施例14
実施例14はさらに、短期血圧および心拍数の上昇を制御する手段として、RTX投与
前のオピオイド前処置を示す。研究は、高血圧ラットモデルを使用した。研究において、
第1群は前処置を受けなかった。第2群は、20μg/kgのフェンタニールを腹腔内注
入で前処置した。第3群は、3.5μg/kgのフェンタニールを静脈内投与で前処置し
た。
図18は、3群のそれぞれのMAPおよび心拍数測定値の転換ベースラインを示す。
結果は、前処置のない群では平均約30mmHgおよび70bpm短期上昇したことを示
した。20μg/kgのフェンタニールで腹腔内注入の前処置を受けた群は、前処置のな
い群と比較して、MAPのごくわずかな上昇および心拍数の有意に少ない上昇を実証した
。3.5μg/kgのフェンタニールで静脈内投与の前処置を受けた群は、MAPおよび
心拍数の減少を示した。
【0072】
図19は、処置された各群のMAPに対する絶対数を示す。
図19は、処置前(ベース
ライン)、前処置後(前処置をうけている群の場合は「Fen」)、およびRTX投与後
の心拍数を示す。
図19は、オピオイド受容体アゴニストの単独投与が血圧のわずかな減
少をもたらしたことを示す。しかし、RTX処置前のMAPの減少は、緩和されたRTX
後の反応を得るのに必要ではなかった。すなわち、オピオイド受容体アゴニストの投与は
、患者の血圧が比較的安定するように設定することができる。血圧変動の減少は、完全な
減少に伴う利点に加えて、さらなる恩恵を患者に提供してもよい。
【0073】
実施例14は、フェンタニールによる前処置により、RTX注入に伴う短期の血圧およ
び心拍数の上昇を劇的に低下させ、または、血圧および心拍数の短期減少を達成したとい
ってもよい程度にまで戻すことができることを実証する。結果は、静脈内および腹腔内処
置は両方とも有効であってもよく、必要とされる用量は2つの投与形態では大きく異なる
ことを実証する。結果は、腹腔内投与より、静脈内投与の方が少量のフェンタニールです
むことを示す。
【0074】
参照による援用
本出願全体を通じて引用され得るすべての引用文献(文献参照、特許、特許出願および
ウェブサイトを含む)の内容は、その箇所で引用される文献と同様にその全体が参照によ
り本明細書に明白に組み込まれる。本発明の実施は、特に指示がない限り、当技術分野に
おいて周知の手術、心臓学、放射線学、および画像下治療の従来技術を使用する。
【0075】
等価物
本発明は、その精神または本質的な特徴を逸脱しない範囲で他の特定の形態で具現化す
ることができる。前述の実施形態は、したがって、本願記載の本発明を限定するよりむし
ろ、あらゆる点で例証と考慮されるべきである。本発明の範囲は、したがって、前述の説
明によるよりむしろ添付の特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と同等の意味や
範囲内でのすべての変更は、したがって、本明細書に包含されることが意図されている。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
対象における心血管病態を治療する方法であって、
前記対象の第1~第4胸椎レベルの1つ以上に位置する硬膜外腔に一過性受容体電位バニロイド1(TRPV1)受容体アゴニストを投与することを含む、方法。
(項目2)
前記対象がヒトである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記心血管病態がうっ血性心不全である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記心血管病態が前記対象の心筋の瘢痕化である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記心血管病態が高血圧、高血圧前症、または軽症高血圧からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記心血管病態が重症高血圧および難治性高血圧のうちの少なくとも1つからなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記一過性受容体電位バニロイド1(TRPV1)受容体アゴニストが、第1胸椎に近接した前記硬膜外腔に投与される、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記一過性受容体電位バニロイド1(TRPV1)受容体アゴニストが、第2胸椎に近接した前記硬膜外腔に投与される、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記一過性受容体電位バニロイド1(TRPV1)受容体アゴニストが、第3胸椎に近接した前記硬膜外腔に投与される、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記一過性受容体電位バニロイド1(TRPV1)受容体アゴニストが、第4胸椎に近接した前記硬膜外腔に投与される、項目1に記載の方法。
(項目11)
高血圧の対象において血圧を降下させる方法であって、
前記対象の第1~第4胸椎レベルの1つ以上に位置する硬膜外腔に一過性受容体電位バニロイド1(TRPV1)受容体アゴニストを投与することを含む、方法。
(項目12)
収縮期高血圧の対象において収縮期血圧を降下させる方法であって、
前記対象の第1~第4胸椎レベルの1つ以上に位置する硬膜外腔に一過性受容体電位バニロイド1(TRPV1)受容体アゴニストを投与することを含む、方法。
(項目13)
拡張期高血圧の対象において拡張期血圧を降下させる方法であって、
前記対象の第1~第4胸椎レベルの1つ以上に位置する硬膜外腔に一過性受容体電位バニロイド1(TRPV1)受容体アゴニストを投与することを含む、方法。
(項目14)
対象における心血管病態を治療する方法であって、
前記対象の第1~第4胸椎レベルの1つ以上で硬膜外腔にレシニフェラトキシンを投与することを含む、方法。
(項目15)
前記対象がヒトである、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記心血管病態がうっ血性心不全である、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記心血管病態が前記対象の心筋の瘢痕化である、項目14に記載の方法。
(項目18)
前記心血管病態が高血圧、高血圧前症、または軽症高血圧からなる群から選択される、項目14に記載の方法。
(項目19)
前記心血管病態が重症高血圧および難治性高血圧のうちの少なくとも1つからなる群から選択される、項目14に記載の方法。
(項目20)
前記レシニフェラトキシンが、第1胸椎に近接した前記硬膜外腔に投与される、項目14に記載の方法。
(項目21)
前記レシニフェラトキシンが、第2胸椎に近接した前記硬膜外腔に投与される、項目14に記載の方法。
(項目22)
前記レシニフェラトキシンが、第3胸椎に近接した前記硬膜外腔に投与される、項目14に記載の方法。
(項目23)
前記レシニフェラトキシンが、第4胸椎に近接した前記硬膜外腔に投与される、項目14に記載の方法。
(項目24)
対象を予防的に治療する方法であって、前記対象が高血圧前症または軽症高血圧を有し、前記方法が、前記対象の胸椎に近接した硬膜外腔に一過性受容体電位バニロイド1(TRPV1)受容体アゴニストを投与することを含む、方法。
(項目25)
対象を予防的に治療する方法であって、前記対象が高血圧前症または軽症高血圧を有し、前記方法が、前記対象の胸椎に近接した硬膜外腔にレシニフェラトキシンを投与することを含む、方法。
(項目26)
対象における心血管病態を治療する方法であって、
前記対象の第1~第4胸椎レベルの1つ以上の硬膜外腔にある量のレシニフェラトキシンを投与することを含み、前記量が、約0.06マイクログラム超かつ約30マイクログラム未満である、方法。
(項目27)
対象における心血管病態を治療する方法であって、
前記対象の第1~第4胸椎レベルの1つ以上の硬膜外腔に溶液を投与することを含み、前記溶液が溶液1ミリリットルにつき0.6~10マイクログラムのレシニフェラトキシンを含む、方法。
(項目28)
前記溶液が、前記1つ以上の椎骨レベルのそれぞれに約100マイクロリットル超かつ約3ミリリットル未満の容量で投与される、項目27に記載の方法。
(項目29)
対象における心血管病態を治療する方法であって、
オピオイド受容体アゴニストを前記対象に投与することと、
前記対象の第1~第4胸椎レベルの1つ以上に位置する硬膜外腔に一過性受容体電位バニロイド1(TRPV1)受容体アゴニストを投与することと、を含む、方法。
(項目30)
前記対象がヒトである、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記オピオイド受容体がμ-オピオイド受容体である、項目29に記載の方法。
(項目32)
前記オピオイド受容体アゴニストがオピオイドである、項目29に記載の方法。
(項目33)
前記オピオイドがフェンタニールである、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記フェンタニールを、対象重量1kgにつき50~100μgのフェンタニールに相当する量で12時間おきに投与する、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記オピオイド受容体アゴニストの投与が静脈内投与または腹腔内投与である、項目29に記載の方法。