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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】撮像装置、携帯端末および露光制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/54 20230101AFI20230901BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20230901BHJP
   H04N 23/72 20230101ALI20230901BHJP
   H04N 23/73 20230101ALI20230901BHJP
   H04N 23/75 20230101ALI20230901BHJP
   G03B 7/091 20210101ALI20230901BHJP
【FI】
H04N23/54
H04N23/60 500
H04N23/72
H04N23/73
H04N23/75
G03B7/091
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021536559
(86)(22)【出願日】2019-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2019030080
(87)【国際公開番号】W WO2021019745
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中出 眞弓
(72)【発明者】
【氏名】川前 治
【審査官】高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-087796(JP,A)
【文献】特開2017-022491(JP,A)
【文献】国際公開第2015/156151(WO,A1)
【文献】特開2014-230099(JP,A)
【文献】特開2012-222540(JP,A)
【文献】特開2000-299822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/54
H04N 23/60
H04N 23/72
H04N 23/73
H04N 23/75
G03B 7/091
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像面にアレイ状に配置された複数の受光素子に取り込まれた光学像をセンサ信号に変換して出力する画像センサと、
前記画像センサの受光面に設けられ、第一格子パターンで光を変調する変調器と、
前記センサ信号に基づいて露光条件を決定し、設定されている露光条件を決定した前記露光条件に変更し、変更後の前記露光条件に従って露光制御を行う露光制御部と、
前記第一格子パターンに対応した第二格子パターンを生成し、当該第二格子パターンと前記センサ信号とからモアレ縞画像を生成し、当該モアレ縞画像から撮影画像を生成する画像処理部と、
前記変調器に表示させる前記第一格子パターンを制御する制御部と、
を備え、
前記露光条件は、前記画像センサの露光時間と前記変調器の透過率とを含み、
前記制御部は、複数の異なる格子パターンを用いてノイズを除去するフリンジスキャンを行うよう前記第一格子パターンを制御し、
前記制御部が、前記フリンジスキャンのうち、所定の時間間隔で前記第一格子パターンを周期的に変化させる時分割フリンジスキャンを行うよう制御する場合、前記露光制御部は、前記第一格子パターンを変化させる1周期中は、前記露光条件を維持すること
を特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1記載の撮像装置であって、
前記露光制御部は、前記センサ信号の信号値に応じて前記露光条件を決定すること
を特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項2記載の撮像装置であって、
前記露光制御部は、解析対象のセンサ信号の最大値が予め定めたセンサ信号閾値以上の場合、前記画像センサから出力されるセンサ信号の値が、前記解析対象のセンサ信号の値より小さくなるよう前記露光条件を決定すること
を特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項3記載の撮像装置であって、
前記露光制御部は、解析対象のセンサ信号の最小値が予め定めた第二センサ信号閾値未満の場合、前記画像センサから出力されるセンサ信号の値が、前記解析対象のセンサ信号の値より大きくなるよう前記露光条件を決定すること
を特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項3記載の撮像装置であって、
前記センサ信号閾値は、前記画像センサから出力されるセンサ信号がとり得る最大値に設定されること
を特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項3記載の撮像装置であって、
前記センサ信号閾値は、前記画像センサから出力されるセンサ信号がとり得る最頻値と最大値との間の値が設定されること
を特徴とする撮像装置。
【請求項7】
請求項3記載の撮像装置であって、
前記センサ信号閾値は、所定の幅を有する値に設定されること
を特徴とする撮像装置。
【請求項8】
請求項3記載の撮像装置であって、
前記露光制御部は、前記画像センサの露光時間および前記変調器の透過率の少なくとも一方を減少させるよう前記露光条件を決定すること
を特徴とする撮像装置。
【請求項9】
請求項8記載の撮像装置であって、
前記露光制御部は、前記変調器の透過率を減少させる場合、当該変調器の中心部ほど透過率が低くなるよう前記露光条件を決定すること
を特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項1記載の撮像装置であって、
前記変調器は、前記第一格子パターンを前記受光面に表示するパターン表示部を備え、
前記パターン表示部は、液晶表示素子を備え、
前記透過率は、前記液晶表示素子への印加電圧を変えることにより変化させること
を特徴とする撮像装置。
【請求項11】
請求項記載の撮像装置であって、
前記制御部が、前記フリンジスキャンのうち、前記第一格子パターンに複数の異なる格子パターンを表示させる空間分割フリンジスキャンを行うよう制御する場合、前記露光制御部は、前記異なる格子パターンが表示される前記変調器の領域に対応する画像センサの領域毎に、当該領域から出力される前記センサ信号に基づいて、前記露光条件を決定すること
を特徴とする撮像装置。
【請求項12】
請求項記載の撮像装置であって、
前記センサ信号に基づいて、被写体内の動きの有無を検出する動き判定部と、
前記動き判定部による判定結果に基づき、前記フリンジスキャンのうち、所定の時間間隔で前記第一格子パターンを周期的に変化させる時分割フリンジスキャンおよび前記第一格子パターンに複数の異なる格子パターンを表示させる空間分割フリンジスキャンのいずれを実行するか決定する撮像モード設定部と、を備え、
前記制御部は、前記撮像モード設定部が決定したフリンジスキャンを行うよう前記変調器に表示させる第一格子パターンを制御すること
を特徴とする撮像装置。
【請求項13】
請求項12記載の撮像装置であって、
前記撮像モード設定部は、前記動き判定部が動き無し、と判定した場合、前記時分割フリンジスキャンを実行すると決定すること
を特徴とする撮像装置。
【請求項14】
請求項12記載の撮像装置であって、
前記撮像モード設定部は、前記動き判定部が動き有り、と判定した場合、前記空間分割フリンジスキャンを実行すると決定すること
を特徴とする撮像装置。
【請求項15】
請求項1記載の撮像装置を備える携帯端末。
【請求項16】
撮像面にアレイ状に配置された複数の受光素子に取り込まれた光学像をセンサ信号に変換して出力する画像センサと、前記画像センサの受光面に設けられ、第一格子パターンで光を変調する変調器と、前記センサ信号に基づいて露光条件を決定し、設定されている露光条件を決定した前記露光条件に変更し、変更後の前記露光条件に従って露光制御を行う露光制御部と、前記第一格子パターンに対応した第二格子パターンを生成し、当該第二格子パターンと前記センサ信号とからモアレ縞画像を生成し、当該モアレ縞画像から撮影画像を生成する画像処理部と、前記変調器に表示させる前記第一格子パターンを制御する制御部と、を備える撮像装置における露光制御方法であって、
前記センサ信号に基づいて露光条件を決定し、
設定されている露光条件を、決定した前記露光条件に変更し、
変更後の前記露光条件に従って露光制御を行い、
前記露光条件は、前記画像センサの露光時間と前記変調器の透過率とを含み、
前記制御部は、複数の異なる格子パターンを用いてノイズを除去するフリンジスキャンを行うよう前記第一格子パターンを制御し、
前記制御部が、前記フリンジスキャンのうち、所定の時間間隔で前記第一格子パターンを周期的に変化させる時分割フリンジスキャンを行うよう制御する場合、前記露光制御部は、前記第一格子パターンを変化させる1周期中は前記露光条件を維持すること
を特徴とする露光制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。特に、レンズを用いない、レンズレスの撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるレンズレスの撮像装置(以下、レンズレス撮像装置と呼ぶ。)として、ゾーンプレート(FZP)を用いる撮像装置がある。このレンズレス撮像装置では、FZPにより被写体からの光線をモアレ縞の空間周波数として検出し、フーリエ変換像により被写体の像を再構築する。このようなレンズレス撮像装置は、小型・低コストを実現できる。
【0003】
例えば、特許文献1には、レンズレス撮像装置として、「撮像面にアレイ状に配列された複数の画素に取り込まれた光学像を画像信号に変換して出力する画像センサと、前記画像センサの受光面に設けられ、光の強度を変調する変調器と、前記画像センサから出力される画像信号を一時的に格納する画像記憶部と、前記画像記憶部から出力される画像信号の画像処理を行う信号処理部と、を具備し、前記変調器は、複数の同心円から構成される第1の格子パターンを有し、前記信号処理部は、前記画像記憶部から出力される画像信号を、複数の同心円から構成される仮想的な第2の格子パターンで変調することでモアレ縞画像を生成し、フォーカス位置に応じて前記第2の格子パターンの同心円の大きさを変更する(要約抜粋)」撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/149687号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、撮像にあたり、レンズレス撮像装置であっても、撮像素子(イメージセンサ)に充てる光の量を調節する露光制御が必要である。しかしながら、レンズレスであるため、一般にレンズを備える撮像装置で実行される、レンズ内部の絞り羽を制御してレンズを通る光量を制御する「絞り」という手法は使うことができない。また、特許文献1には、露光制御に関する記載はない。このため、現状のレンズレス撮像装置は、例えば、照明が変化するような環境、すなわち、光量が一定でない環境での使用には適さない。
【0006】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、環境によらず、高品質な映像を取得可能なレンズレス撮像技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、レンズレス撮像装置であって、撮像面にアレイ状に配置された複数の受光素子に取り込まれた光学像をセンサ信号に変換して出力する画像センサと、前記画像センサの受光面に設けられ、第一格子パターンで光を変調する変調器と、前記センサ信号に基づいて露光条件を決定し、設定されている露光条件を決定した前記露光条件に変更し、変更後の前記露光条件に従って露光制御を行う露光制御部と、前記第一格子パターンに対応した第二格子パターンを生成し、当該第二格子パターンと前記センサ信号とからモアレ縞画像を生成し、当該モアレ縞画像から撮影画像を生成する画像処理部と、前記変調器に表示させる前記第一格子パターンを制御する制御部と、を備え、前記露光条件は、前記画像センサの露光時間と前記変調器の透過率とを含み、前記制御部は、複数の異なる格子パターンを用いてノイズを除去するフリンジスキャンを行うよう前記第一格子パターンを制御し、前記制御部が、前記フリンジスキャンのうち、所定の時間間隔で前記第一格子パターンを周期的に変化させる時分割フリンジスキャンを行うよう制御する場合、前記露光制御部は、前記第一格子パターンを変化させる1周期中は、前記露光条件を維持することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、撮像面にアレイ状に配置された複数の受光素子に取り込まれた光学像をセンサ信号に変換して出力する画像センサと、前記画像センサの受光面に設けられ、第一格子パターンで光を変調する変調器と、前記センサ信号に基づいて露光条件を決定し、設定されている露光条件を決定した前記露光条件に変更し、変更後の前記露光条件に従って露光制御を行う露光制御部と、前記第一格子パターンに対応した第二格子パターンを生成し、当該第二格子パターンと前記センサ信号とからモアレ縞画像を生成し、当該モアレ縞画像から撮影画像を生成する画像処理部と、前記変調器に表示させる前記第一格子パターンを制御する制御部と、を備える撮像装置における露光制御方法であって、前記センサ信号に基づいて露光条件を決定し、設定されている露光条件を、決定した前記露光条件に変更し、変更後の前記露光条件に従って露光制御を行い、前記露光条件は、前記画像センサの露光時間と前記変調器の透過率とを含み、前記制御部は、複数の異なる格子パターンを用いてノイズを除去するフリンジスキャンを行うよう前記第一格子パターンを制御し、前記制御部が、前記フリンジスキャンのうち、所定の時間間隔で前記第一格子パターンを周期的に変化させる時分割フリンジスキャンを行うよう制御する場合、前記露光制御部は、前記第一格子パターンを変化させる1周期中は前記露光条件を維持することを特徴とする
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レンズレスの撮像装置により、環境によらず、高品質な映像を取得できる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は、本発明の実施形態の基本的なレンズレス撮像装置の構成図であり、(b)および(c)は、それぞれ、本発明の実施形態の撮像装置の変調器の一例を説明するための説明図である。
図2】(a)~(c)は、それぞれ、本発明の実施形態の格子パターンの一例を説明するための説明図である。
図3】本発明の実施形態の画像処理部による画像処理のフローチャートである。
図4】(a)は、斜め入射平行光による格子基板表面から裏面への照射像が面内ずれを生じることを、(b)~(d)は、本発明の実施形態の、格子基板両面の格子の軸がそろった場合のモアレ縞の生成と周波数スペクトルを、それぞれ、説明するための説明図である。
図5】(a)は、本発明の実施形態の表面格子と裏面格子の軸をずらして配置する場合の模式図であり、(b)~(d)は、本発明の実施形態の格子基板両面の格子をずらして配置する場合のモアレ縞の生成と周波数スペクトルを、それぞれ説明するための説明図である。
図6】(a)は、物体を構成する各点からの光がセンサに対してなす角を、(b)は、物体を撮影した場合の空間周波数スペクトルを、それぞれ、説明するための説明図である。
図7】(a)は、物体が無限距離にある場合に表側格子パターンが投影されることを、(b)は、物体が無限距離にある場合に生成されるモアレ縞の例を、それぞれ説明するための説明図である。
図8】(a)は、物体が有限距離にある場合に表側格子パターンが拡大されることを、(b)は、物体が有限距離にある場合に生成されるモアレ縞の例を、(c)は、物体が有限距離にある場合に裏側格子パターンを補正したモアレ縞の例を、それぞれ説明するための説明図である。
図9】(a)は、本発明の実施形態の、裏側格子パターンを画像処理で実現する撮像装置の構成図であり、(b)は、裏側格子パターンを画像処理で実現する撮像装置の変調器を説明するための説明図である。
図10】本発明の実施形態の、裏側格子パターンを画像処理で実現する撮像装置の画像処理部による画像処理のフローチャートである。
図11】本発明の実施形態のリフォーカス可能な撮像装置の構成図である。
図12】本発明の実施形態のリフォーカス可能な撮像装置の画像処理部による画像処理のフローチャートである。
図13】(a)は、本発明の実施形態の時分割フリンジスキャンを実現する撮像装置の構成図であり、(b)~(e)は、それぞれ、本発明の実施形態の時分割フリンジスキャンに用いる格子パターン例を説明するための説明図である。
図14】(a)~(d)は、それぞれ、本発明の実施形態の時分割フリンジスキャンにおける変調器の電極配置と印加電圧とを説明するための説明図である。
図15】本発明の実施形態の時分割フリンジスキャン実行時の制御部による格子パターン制御処理のフローチャートである。
図16】本発明の実施形態の時分割フリンジスキャン実行時の画像処理のフローチャートである。
図17】(a)は、本発明の実施形態の空間分割フリンジスキャンを実現する撮像装置の構成図であり、(b)および(c)は、それぞれ、本発明の実施形態の空間分割フリンジスキャンに用いる格子パターン例を説明するための説明図である。
図18】本発明の実施形態の空間分割フリンジスキャン実行時の画像処理のフローチャートである。
図19】(a)は、第一実施形態の撮像装置の構成図であり、(b)は、第一実施形態の撮像装置のハードウェア構成図である。
図20】(a)は、第一実施形態のセンサ信号値の位置による変化を示すグラフであり、(b)は、第一実施形態のセンサ信号の信号値のヒストグラムである。
図21】(a)および(b)は、第一実施形態の変調器の透過率制御を、(c)は、第一実施形態の変調器の端子に印加する電圧と液晶表示素子の透過率との関係を、それぞれ、説明するための説明図である。
図22】(a)および(b)は、第一実施形態の変調器に表示される格子パターン例をそれぞれ説明するための説明図である。
図23】(a)は、第一実施形態の撮像処理の、(b)は、第一実施形態の画像処理を、(c)は、第一実施形態の露光制御処理を、それぞれ、説明するための説明図である。
図24】(a)は、第一実施形態の変形例の格子パターンの表示例を説明するための説明図であり、(b)および(c)は、センサ位置毎のセンサ信号値を示すグラフである。
図25】(a)は、第二実施形態の撮像処理の、(b)は、第二実施形態の露光制御処理の、それぞれ、フローチャートである。
図26】第二実施形態の露光条件変更タイミングを説明するための説明図である。
図27】(a)は、第二実施形態の変形例の撮像装置の構成図であり、(b)は、第二実施形態の変形例の格子パターンの一例を説明するための説明図である。
図28】第三実施形態の撮像装置の構成図である。
図29】(a)は、第三実施形態の撮像処理の、(b)は、第三実施形態の変形例の撮像処理の、それぞれ、フローチャートである。
図30】第三実施形態の撮像モード設定処理のフローチャートである。
図31】第三実施形態の変形例の撮像モード設定処理のフローチャートである。
図32】第四実施形態の携帯端末のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。
【0012】
以下に述べる実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、数値および範囲についても同様である。
【0013】
また、実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
本発明の各実施形態の説明に先立ち、各実施形態で共通に用いる、光学レンズを用いない撮像装置(レンズレス撮像装置;以下、単に撮像装置と呼ぶ。)の基本的な構成および処理を説明する。
【0015】
[撮像装置の構成]
図1(a)は、本実施形態1による撮像装置101aにおける構成の一例を示す説明図である。撮像装置101aは、結像させるレンズを用いることなく、外界の物体の画像を取得する装置である。撮像装置101aは、図1(a)に示すように、変調器102aと、画像センサ103と、画像処理部122aと、を備える。
【0016】
図1(b)に変調器102aの一例を示す。変調器102aは、画像センサ103の受光面に密着して固定される。変調器102aは、格子基板112aに形成された第一格子パターン104と、第二格子パターン105とを備える。格子基板112aは、例えばガラスやプラスティックなどの透明な材料で形成される。以降、格子基板112aの画像センサ103側を裏面と呼び、対向する面すなわち撮像対象側を表面と呼ぶ。従って、第一格子パターン104は、表面側格子パターン104と、第二格子パターン105は、裏面側格子パターン105とも呼ぶ。
【0017】
表面側格子パターン104および裏面側格子パターン105は、図2(a)に示すように、外側に向かうほど中心からの半径に反比例して格子パターンの間隔、すなわちピッチが狭くなる同心円状の格子パターンを備える。表面側格子パターン104および裏面側格子パターン105は、例えば半導体プロセスに用いられるスパッタリング法などによってアルミニウムなどを蒸着することによって形成される。アルミニウムが蒸着されたパターンと蒸着されていないパターンとによって濃淡がつけられる。なお、表面側格子パターン104および裏面側格子パターン105の形成は、これに限定されるものでなく、例えばインクジェットプリンタなどによる印刷などによって濃淡をつけて形成されてもよい。
【0018】
なお、ここでは変調器102aを実現するために、表面側格子パターン104および裏面側格子パターン105を格子基板112aに形成する方法について述べた。しかし、図1(c)に示すように表面側格子パターン104および裏面側格子パターン105を薄膜に形成し、支持部材112bにより保持する構成などによっても実現できる。
【0019】
表面側格子パターン104および裏面側格子パターン105を透過する光は、その格子パターンによって光の強度が変調される。透過した光は、画像センサ103にて受光される。
【0020】
画像センサ103は、撮像面にアレイ状に配置された複数の受光素子(撮像素子、イメージセンサ)に取り込まれた光学像を、センサ信号(RAWデータ)に変換して出力する。
【0021】
画像センサ103の表面には、受光素子であるセンサ画素103aが格子状に規則的に配置される。画像センサ103は、センサ画素103aが受光した光を電気信号であるセンサ信号に変換する。センサ画素103aは、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどで構成される。
【0022】
画像処理部122aは、画像センサ103から出力されたセンサ信号に対し、画像処理を施し、画像データを生成し、撮影画像として、画像表示装置107などに出力する。
【0023】
[画像処理]
ここで、画像処理部122aによる画像処理の概略について説明する。図3は、図1(a)の撮像装置101aの画像処理部122aによる画像処理の概略を示すフローチャートである。
【0024】
撮像装置101aでは、画像センサ103は、所定の時間間隔で、センサ信号を画像処理部122aに出力する。以下、画像センサ103がセンサ信号を出力する間隔を、駆動周期と呼ぶ。画像処理部122aは、画像センサ103からセンサ信号を受信する毎に、以下の画像処理を実行する。
【0025】
まず、画像処理部122aは、画像センサ103から得たセンサ信号に対し、デモザイキング処理等を行い、カラーのRGB(Red Green Blue)成分ごとのモアレ縞画像を生成するセンサ信号処理を行う(ステップS500)。
【0026】
次に、各モアレ縞画像に対し、RGB成分ごとに高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)などの2次元フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)演算により、周波数スペクトルを求める(ステップS501)。
【0027】
続いて、ステップS501の処理による周波数スペクトルのうち、必要な周波数領域のデータを切り出した後(ステップS502)、該周波数スペクトルの強度計算を行う(ステップS503)という処理を行い処理後の画像(処理後画像)を得る。
【0028】
本実施形態では、後述のように、複数の位相の異なるパターンを有する変調器を用いることがある。例えば、4種のパターンを有する変調器を使用する場合は4種の位相の異なる処理後画像を得、それぞれの強度を合成し、1枚の処理後画像を得る。以下、画像センサ103から得たセンサ信号から、周波数スペクトル算出、強度計算等を行い、処理後画像を取得する処理を現像処理と呼ぶ。また、この時点で得られる画像を現像画像と呼ぶ。
【0029】
そして、画像処理部122aは、得られた処理後画像に対してノイズ除去処理を行い(ステップS504)、コントラスト強調処理(ステップS505)などの画質調整処理を行う。
【0030】
画像処理部122aは、画質調整処理後の画像のカラーバランスを調整して(ステップS506)、出力信号として生成する(ステップS507)出力画像生成処理を行い、処理後の出力信号を撮影画像として出力する。以上により、画像処理部122aによる画像処理が終了となる。
【0031】
[撮像原理]
続いて、撮像装置101aによる撮像原理について説明する。
【0032】
まず、中心からの半径に対して反比例してピッチが細かくなる同心円状の表面側格子パターン104および裏面側格子パターン105は、以下のように定義する。レーザ干渉計などにおいて、平面波に近い球面波と参照光として用いる平面波とを干渉させる場合を想定する。同心円の中心である基準座標からの半径をrとし、そこでの球面波の位相をφ(r)とするとき、これを波面の曲がりの大きさを決める係数βを用いて、位相φ(r)は、以下の式(1)で表される。
【数1】
球面波にもかかわらず、半径rの2乗で表されているのは、平面波に近い球面波のため、展開の最低次のみで近似できるからである。この位相分布を持った光に平面波を干渉させると、以下の式(2)で示される干渉縞の強度分布が得られる。
【数2】
この干渉縞は、以下の式(3)を満たす半径位置で明るい線を持つ同心円の縞となる。
【数3】
縞のピッチをpとすると、以下の式(4)が得られる。
【数4】
【0033】
式(4)より、ピッチは、半径に対して反比例して狭くなることがわかる。このような縞を持つプレートは、フレネルゾーンプレートやガボールゾーンプレートと呼ばれる。このように定義される強度分布に比例した透過率分布をもった格子パターンを、図1(b)に示す表面側格子パターン104および裏面側格子パターン105として用いる。
【0034】
次に、図4(a)を用いて、入射状態について説明する。図4(a)は、入射状態を示す図である。
【0035】
このような格子パターンが両面に形成された厚さtの変調器102aに、図4(a)に示すように角度θで平行光が入射したとする。変調器102a中の屈折角をθとし、幾何光学的には、表面の格子の透過率が乗じられた光が、δ=t・tanθだけずれて裏面に入射し、仮に2つの同心円格子の中心がそろえて形成されていたとすると、裏面の格子の透過率がδだけずれて掛け合わされることになる。このとき、以下の式(5)で示す強度分布が得られる。
【数5】
【0036】
この展開式の第4項が、2つの格子のずれの方向にまっすぐな等間隔の縞模様を重なり合った領域一面に作ることがわかる。このような縞と縞の重ね合わせによって相対的に低い空間周波数で生じる縞はモアレ縞と呼ばれる。
【0037】
このようにまっすぐな等間隔の縞は、検出画像の2次元フーリエ変換によって得られる空間周波数分布に鋭いピークを生じる。その周波数の値からδの値、すなわち光線の入射角θを求めることが可能となる。
【0038】
このような全面で一様に等間隔で得られるモアレ縞は、同心円状の格子配置の対称性から、ずれの方向によらず同じピッチで生じることは明らかである。このような縞が得られるのは、格子パターンをフレネルゾーンプレートまたはガボールゾーンプレートで形成したことによるものであり、これ以外の格子パターンで、全面で一様な縞を得るのは困難と考えられる。但し、全面で一様に等間隔なモアレ縞が得ることが目的であり、格子パターンをフレネルゾーンプレートやガボールゾーンプレートに限定するものではない。
【0039】
式(5)の展開式の第2項でもフレネルゾーンプレートの強度がモアレ縞で変調された縞が生じることがわかる。しかしながら、2つの縞の積の周波数スペクトルは、それぞれのフーリエスペクトルのコンボリューションとなるため、鋭いピークは得られない。
【0040】
式(5)から鋭いピークを持つ成分のみを、以下の式(6)のように取り出す。
【数6】
そのフーリエスペクトルは、以下の式(7)で表される。
【数7】
ここで、Fはフーリエ変換の演算を表し、u、vは、x方向およびy方向の空間周波数座標、括弧を伴うδはデルタ関数である。この結果から、検出画像の空間周波数スペクトルにおいて、モアレ縞の空間周波数のピークがu=±δβ/πの位置に生じることがわかる。
【0041】
その様子を図4(b)~図4(d)に示す。これらの図において、左から右にかけては、光線と変調器102aの配置図、モアレ縞、および空間周波数スペクトルの模式図をそれぞれ示す。図4(b)は、垂直入射、図4(c)は、左側から角度θで光線が入射する場合、図4(d)は、右側から角度θで光線が入射する場合をそれぞれ示す。
【0042】
変調器102aの表面側に形成された表面側格子パターン104と裏面側に形成された裏面側格子パターン105とは、軸がそろっている。図4(b)では、表面側格子パターン104と裏面側格子パターン105との影が一致するのでモアレ縞は生じない。
【0043】
図4(c)および図4(d)では、表面側格子パターン104と裏面側格子パターン105とのずれが等しいために同じモアレが生じる。また、空間周波数スペクトルのピーク位置も一致する。従って、空間周波数スペクトルからは、光線の入射角が図4(c)の場合なのか、あるいは図4(d)の場合なのかを判別することができない。
【0044】
これを避けるためには、例えば図5(a)に示すように、変調器102aに垂直に入射する光線に対しても2つの格子パターンの影がずれて重なるようあらかじめ表面側格子パターン104および裏面側格子パターン105を光軸に対して相対的にずらしておく。
【0045】
軸上の垂直入射平面波に対して2つの格子の影の相対的なずれをδとする。このとき、入射角θの平面波によって生じるずれδは、以下の式(8)で表される。
【数8】
このとき、入射角θの光線のモアレ縞の空間周波数スペクトルのピークは周波数のプラス側では、以下の式(9)で示すuの位置となる。
【数9】
【0046】
画像センサ103の大きさをS、画像センサ103のx方向およびy方向の画素数を共にNとすると、2次元フーリエ変換による離散画像の空間周波数スペクトルは、-N/(2S)から+N/(2S)の範囲で得られる。
【0047】
このことから、プラス側の入射角とマイナス側の入射角を均等に受光することを考えれば、垂直入射平面波(θ=0)によるモアレ縞のスペクトルピーク位置は、原点(DC:直流成分)位置と、例えば+側端の周波数位置との中央位置、すなわち、以下の式(10)で表される空間周波数位置とするのが妥当である。
【数10】
【0048】
したがって、2つの格子の相対的な中心位置ずれは、以下の式(11)で表されるδとするのが妥当である。
【数11】
【0049】
図5(b)~図5(d)は、表面側格子パターン104と裏面側格子パターン105とをずらして配置した場合のモアレ縞の生成および周波数スペクトルを説明する模式図である。図4(b)~図4(d)と同様に、左側は光線と変調器102aの配置図、中央列はモアレ縞、そして右側は空間周波数スペクトルを示す。また、図5(b)は、光線が垂直入射の場合であり、図5(c)は、光線が左側から角度θで入射する場合であり、図5(d)は、光線が右側から角度θで入射する場合である。
【0050】
表面側格子パターン104と裏面側格子パターン105とは、あらかじめδだけずらして配置される。そのため、図5(b)でもモアレ縞が生じ、空間周波数スペクトルにピークが現れる。そのずらし量δは、上記したとおり、ピーク位置が原点から片側のスペクトル範囲の中央に現れるように設定される。このとき図5(c)では、ずれδがさらに大きくなる方向、図5(d)では、小さくなる方向となっている。このため、図4(c)、図4(d)と異なり、図5(c)と図5(d)との違いがスペクトルのピーク位置から判別できる。このピークのスペクトル像がすなわち無限遠の光束を示す輝点であり、撮像装置101aによる撮影像にほかならない。
【0051】
受光できる平行光の入射角の最大角度をθmaxとすると、このときの、モアレ縞のスペクトルピーク位置は、以下の式(12)で示される位置umaxとなる。
【数12】
撮像装置101aにて受光できる最大画角tanθmaxは、以下の式(13)で与えられる。
【数13】
【0052】
一般的なレンズを用いた結像との類推から、画角θmaxの平行光を画像センサの端で焦点を結んで受光すると考えると、レンズを用いない撮像装置101aの実効的な焦点距離feffは、以下の式(14)に相当すると考えることができる。
【数14】
【0053】
ここで、式(13)より画角は変調器102aの厚さt、表面側格子パターン104および裏面側格子パターン105の係数βによって変更可能であることが判る。よって、例えば変調器102aが図1(c)の構成であり支持部材112bの長さを変更可能な機能を有していれば、撮像時に画角を変更して撮像することも可能となる。
【0054】
なお、式(2)で示すように、格子パターンの透過率分布は、基本的に正弦波的な特性があることを想定しているが、格子パターンの基本周波数成分としてそのような成分があればよい。例えば、前述したように図2(a)に示す表面側格子パターン104および裏面側格子パターン105のように、格子パターンの透過率を2値化してもよい。
【0055】
また、図2(b)に示す格子パターン104bのように、透過率が高い格子領域と低い領域のdutyを変えて、透過率の高い領域の幅を広げて透過率を高めてもよい。これにより、格子パターンからの回折を抑圧するなどの効果も得られ、撮影像の劣化を低減可能である。
【0056】
さらに、図2(c)に示すように、格子パターン104cは、複数の直線で構成され、当該複数の直線は、基準座標に対して直線間距離が反比例して狭くなるものであってもよい。
【0057】
以上の説明では、いずれも入射光線は同時には1つの入射角度だけであったが、実際に撮像装置101aがカメラとして作用するためには、複数の入射角度の光が同時に入射する場合を想定しなければならない。このような複数の入射角の光は、裏面側格子パターン105に入射する時点ですでに複数の表側格子の像を重なり合わせることになる。
【0058】
もし、これらが相互にモアレ縞を生じると、信号成分である裏面側格子パターン105とのモアレ縞の検出を阻害するノイズとなることが懸念される。しかし、実際は、表面側格子パターン104の像どうしの重なりはモアレ像のピークを生じず、ピークを生じるのは裏面側格子パターン105との重なりだけになる。その理由について以下に説明する。
【0059】
まず、複数の入射角の光線による表面側格子パターン104の影どうしの重なりは、積ではなく和であることが大きな違いである。1つの入射角の光による表面側格子パターン104の影と裏面側格子パターン105との重なりでは、表面側格子パターン104の影である光の強度分布に、裏面側格子パターン105の透過率を乗算することで、裏面側格子パターン105を透過したあとの光強度分布が得られる。
【0060】
これに対して、表面側格子パターン104に複数入射する角度の異なる光による影どうしの重なりは、光の重なり合いなので、積ではなく、和になるのである。和の場合は、以下の式(15)に示すように、もとのフレネルゾーンプレートの格子の分布に、モアレ縞の分布を乗算した分布となる。
【数15】
【0061】
したがって、その周波数スペクトルは、それぞれの周波数スペクトルの重なり積分で表される。そのため、たとえモアレのスペクトルが単独で鋭いピークをもったとしても、実際上、その位置にフレネルゾーンプレートの周波数スペクトルのゴーストが生じるだけである。つまり、スペクトルに鋭いピークは生じない。
【0062】
したがって、複数の入射角の光を入れても検出されるモアレ像のスペクトルは、常に表面側の表面側格子パターン104と裏面側の裏面側格子パターン105との積のモアレだけであり、裏面側格子パターン105が単一である以上、検出されるスペクトルのピークは1つの入射角に対して1つだけとなる。
【0063】
ここで、これまで検出することを説明してきた平行光と、実際の物体からの光との対応について図6(a)を用いて模式的に説明する。図6(a)は、物体を構成する各点からの光が画像センサ103に対してなす角を説明する説明図である。
【0064】
被写体400を構成する各点からの光は、厳密には点光源からの球面波として、撮像装置101aの変調器102aおよび画像センサ103(以下、図6(a)では格子センサ一体基板113という)に入射する。このとき、被写体400に対して格子センサ一体基板113が十分に小さい場合や、十分に遠い場合には、各点から、格子センサ一体基板113を照明する光の入射角が同じとみなすことができる。
【0065】
式(9)から求められる微小角度変位Δθに対するモアレの空間周波数変位Δuが、画像センサの空間周波数の最小解像度である1/S以下となる関係から、Δθが平行光とみなせる条件は、以下の式(16)で表される。
【数16】
この条件下であれば、無限遠の物体に対して撮像装置101aで撮像が可能であり、これまでの議論から高速フーリエ変換(FFT)によって、図6(b)に示すような像を得ることができる。
【0066】
[有限距離物体の撮像原理]
ここで、これまで述べた無限遠の場合における表面側の表面側格子パターン104の裏面への射影の様子を図7(a)に示す。
【0067】
無限遠の物体を構成する点401からの球面波は、十分に長い距離を伝搬する間に平面波となり表面側格子パターン104を照射し、その投影像402が下の面に投影される場合、投影像は表面側格子パターン104とほぼ同じ形状である。その結果、投影像402に対して、裏面側格子パターン105の透過率分布を乗じることにより、図7(b)に示すような等間隔な直線状のモアレ縞を得ることができる。
【0068】
一方、有限距離の物体に対する撮像について説明する。図8(a)は、撮像する物体が有限距離にある場合に表面側格子パターン104の裏面への射影が表面側格子パターン104より拡大されることを示す説明図である。
【0069】
図8(a)に示すように、物体を構成する点403からの球面波が表面側の表面側格子パターン104を照射し、その投影像404が下の面に投影される場合、投影像はほぼ一様に拡大される。なお、この拡大率αは、表面側格子パターン104から点403までの距離fを用いて、以下の式(17)のように算出できる。
【数17】
そのため、平行光に対して設計された裏面側の格子パターンの透過率分布をそのまま乗じたのでは、図8(b)に示すように、等間隔な直線状のモアレ縞は生じなくなる。
【0070】
しかし、一様に拡大された表面側格子パターン104の影に合わせて、裏面側格子パターン105を拡大するならば、図8(c)に示すように、拡大された投影像404に対して再び、等間隔な直線状のモアレ縞を生じさせることができる。従って、裏面側格子パターン105の係数βをβ/αとすることで補正が可能である。
【0071】
これにより、必ずしも無限遠でない距離の点403からの光を選択的に再生することができる。これによって、任意の位置に焦点合わせて撮像を行うことができる。
【0072】
[第二撮像装置]
次に、変調器102aの構成を簡略化した第二撮像装置(以下、単に撮像装置101b)を説明する。
【0073】
撮像装置101aの変調器102aでは、格子基板112aの表面および裏面にそれぞれ同一形状の表面側格子パターン104および裏面側格子パターン105を、互いにずらして形成する。これにより、撮像装置101aでは、入射する平行光の角度をモアレ縞の空間周波数スペクトルから検知して像を現像する。
【0074】
ここで、裏面側格子パターン105は、画像センサ103に密着して入射する光の強度を変調する光学素子であり、入射光に依らず同じ格子パターンである。よって、撮像装置101bでは、裏面側格子パターン105を除去した変調器102bを使用し、裏面側格子パターン105に相当する処理を、画像処理部で実行する。
【0075】
まず、撮像装置101bの構成を、図9(a)に示す。本図に示すように、撮像装置101bは、変調器102bと画像処理部122bとを備える。そして、画像処理部122bは、強度変調部106を備える。画像センサ103および画像処理部122bは、バス109で接続される。
【0076】
変調器102bは、変調器102aから裏面側格子パターン105を除去した変調器である。
【0077】
強度変調部106は、裏面側格子パターン105に相当する処理を行う。
【0078】
この時の変調器102bの構成の詳細を、図9(b)に示す。変調器102bは、格子基板112aに形成された表面側格子パターンを備える。変調器102aとは異なり、裏面側格子パターン105は、備えない。この構成によって、格子基板112aに形成する格子パターンを1面減らすことができる。それにより、変調器102bの製造コストを低減することができるとともに光利用効率を向上させることもできる。
【0079】
ここで、画像処理部122bによる画像処理の流れを説明する。図10は、画像処理部122bによる画像処理の概略を示す処理フローである。画像処理部122bによる画像処理が、画像処理部122aによる画像処理と異なる点は、ステップS511の処理である。
【0080】
本画像処理においても、画像処理部122bは、画像センサ103からセンサ信号を受信する毎に、以下の画像処理を実行する。なお、ここで画像センサ103から受信するセンサ信号は、撮像装置101aの場合と異なり、裏面側格子パターンを通過していないセンサ信号である。
【0081】
画像処理部122bは、画像センサ103から得たセンサ信号に対し、センサ信号処理を行う(ステップS500)。
【0082】
次に、強度変調部106は、各RGB成分のモアレ縞画像に対し、それぞれ裏面格子強度変調処理を行う(ステップS511)。裏面格子強度変調処理は、裏面側格子パターン105を透過したことに相当するモアレ縞画像を生成する処理である。
【0083】
具体的には、強度変調部106は、式(5)に相当する演算を行う。すなわち、強度変調部106は、裏面側格子パターン105を生成し、センサ信号処理後のセンサ信号に対し乗算する。
【0084】
なお、裏面側格子パターン105として、2値化したパターンを想定する場合、黒に相当する領域の画像センサ103の、処理後のセンサ信号値を0にするだけでもよい。これにより、乗算回路の規模を抑圧することができる。
【0085】
なお、裏面格子強度変調処理は、センサ信号処理に先立って行ってもよい。
【0086】
以降、図10のステップS501~507の処理は、図3の同符号のステップの処理と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0087】
なお、撮像装置101bでは、強度変調部106により裏面側格子パターン105に相当する処理を実現する。しかしながら、裏面側格子パターン105は、画像センサ103に密着して入射する光の強度を変調する光学素子である。このため、画像センサ103の感度を、実効的に裏面側格子パターン105の透過率を加味して設定することによっても実現できる。
【0088】
[第三撮像装置]
裏面側格子パターン105を画像処理部122bで行う撮像装置101bによれば、撮像後に任意の距離にフォーカスを合わせることも可能となる。
【0089】
これを実現する第三撮像装置(以下、単に撮像装置101cと呼ぶ。)の構成を図11に示す。撮像装置101cは、本図に示すように、画像センサ103と、変調器102bと、記憶部121と、画像処理部122cと、フォーカス設定部123と、を備える。これらの各部は、例えば、バス109で接続される。
【0090】
画像センサ103はおよび変調器102bは、撮像装置101bと同様の構成を有する。
【0091】
記憶部121は、例えば、撮像後のフォーカス調整を可能とするため、画像センサ103から出力される各受光素子のセンサ信号を一時的に格納する。なお、画像センサ103全体の、各受光素子のセンサ信号の集合、すなわち、1フレーム分のセンサ信号を、センサ画像と呼ぶ。センサ画像は、各受光素子について、その位置を示す情報と、センサ信号の値とを有する。
【0092】
フォーカス設定部123は、フォーカス距離情報(任意の距離フォーカスを合せるための公知の距離情報)を、画像処理部122cに出力する。フォーカス距離情報は、例えば、撮像装置101cに備え付けられたつまみ等の設定装置や、GUI(Graphical User Interface)などを介して、ユーザから受け付ける。
【0093】
画像処理部122cは、画像処理部122bと略同様の処理を行う。ただし、フォーカス設定部123を介して設定されたフォーカス距離情報を用いて裏面格子のピッチを決定する裏面格子ピッチ決定処理をさらに行う。
【0094】
裏面格子ピッチ決定処理は、フォーカス設定部123の出力であるフォーカス距離情報をfとして式(17)を用いて拡大率αを算出し、裏面側格子パターン105の係数βを、その拡大率αで除算した値(β/α)とする計算を行う処理である。
【0095】
ここで、画像処理部122cによる画像処理の流れを説明する。図12は、画像処理部122cによる画像処理の概略を示す処理フローである。この画像処理が、画像処理部122bによる画像処理と異なる点は、ステップS521の処理である。
【0096】
本画像処理では、画像処理部122cは、画像センサ103により記憶部121にセンサ信号が格納される毎に、以下の画像処理を実行する。なお、ここで画像センサ103が記憶部121に格納するセンサ信号は、撮像装置101aの場合と異なり、裏面側格子パターンを通過していないセンサ信号である。
【0097】
画像処理部122cは、画像センサ103が記憶部121に格納した最新のセンサ信号に対し、センサ信号処理を行う(ステップS500)。
【0098】
次に、画像処理部122cは、上記手法で、フォーカス距離情報を用いて、裏面格子ピッチ決定処理を行う(ステップS521)。
【0099】
その後、画像処理部122cは、各RGB成分のモアレ縞画像に対し、それぞれ、裏面格子強度変調処理を行う(ステップS511)。本処理は、画像処理部122bの強度変調部106による裏面格子強度変調処理と同じである。
【0100】
以降、図12のステップS501~S506の処理は、図3の同符号のステップの処理と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0101】
以上説明したように、撮像装置101cによれば、高速フーリエ変換などの簡単な演算によって外界の物体像を得ることができ、さらに撮像後に任意の距離にフォーカスを調整可能となる。従来のカメラにおいてフォーカスを変更するためには再撮像が必要であったが、撮像装置101cでは1度の撮像しか必要としない。
【0102】
[第四撮像装置・第五撮像装置]
撮像装置101a~撮像装置101cでは、式(5)から鋭いピークを持つ成分のみを取り出した式(6)に基づいて、センサ信号から現像処理等を行い、撮影画像を得る。しかし、実際には式(5)の第4項以外の項がノイズとなる。このノイズを取り除く構成を備える第四撮像装置を説明する。
【0103】
第四撮像装置(以下、単に撮像装置101d)では、フリンジスキャンにより、ノイズをキャンセルする。
【0104】
まず、フリンジスキャンによるノイズキャンセルの原理を説明する。式(2)の干渉縞の強度分布において、表面側格子パターン104の初期位相をΦ、裏面側格子パターン105の初期位相をΦとすると、式(5)は、以下の式(18)のように表すことができる。
【数18】
ここで、三角関数の直交性を利用し、式(18)を、初期位相Φ、Φに関して積分すると、式(19)に示すように、ノイズ項がキャンセルされ単一周波数の定数倍の項が残る。
【数19】
前述の議論から、これをフーリエ変換すれば、空間周波数分布にノイズのない鋭いピークを生じることになる。
【0105】
ここで、式(19)は、積分の形で示しているが、実際には、初期位相Φ、Φを、0~2πの間の、複数の異なる値に設定し、それぞれの初期位相で得た強度分布の総和を計算することにより同様の効果が得られる。
【0106】
例えば、初期位相Φ、Φは、0~2πの間の角度を等分して設定すればよい。具体的には、0~2πを4等分して得られる値{0、π/2、π、3π/2}を、それぞれ設定してもよいし、3等分して得られる値{0、π/3、2π/3}を、設定してもよい。
【0107】
式(19)は、さらに簡略化できる。式(19)では、初期位相Φ、Φを、独立して変えることができる。しかし、両初期位相Φ、Φを等しく(Φ=Φ)することで、ノイズ項をキャンセルできる。すなわち、表面側格子パターン104と裏面側格子パターン105との初期位相に、同じ位相を適用する。
【0108】
式(19)においてΦ=Φ=Φとした場合の積分結果を、以下の式(20)に示す。
【数20】
Φ=Φ=Φとすることで、式(20)に示すように、ノイズ項がキャンセルされ、単一周波数の定数倍の項が残る。このとき、Φは、0~2πの間の角度が等分されるように設定すればよい。Φには、例えば、0と、0~2πを4等分した時の0と成す角である{π/2、π、3π/2}と、をそれぞれ設定すればよい。
【0109】
なお、Φには、等分せずとも、直交する2位相である{0、π/2}を使用してもノイズ項をキャンセルでき、さらに簡略化できる。
【0110】
なお、撮像装置101bのように、裏面側格子パターン105の代わりに、画像処理部122bが強度変調部106を備え、裏面側格子パターン105に相当する演算を実施する場合、裏面側格子パターン105として負値を扱える。
【0111】
この場合、式(18)は、以下の式(21)で表すことができる(Φ=Φ=Φ)。
【数21】
【0112】
ここで、裏面側格子パターン105は既知であるため、式(21)から裏面側格子パターン105を減算し、Φ={0、π/2}の場合について加算すれば、式(22)のように、ノイズ項がキャンセルされ単一周波数の定数倍の項が残ることになる。
【数22】
【0113】
また、撮像装置101a~101cでは、前述のように表面側格子パターン104と裏面側格子パターン105とを、あらかじめδ0ずらすことで、空間周波数空間に生じる2つの撮影画像を分離する。しかし、この方法では撮影画像の画素数が半分になる。そこで、表面側格子パターン104と裏面側格子パターン105とを、前述のようにδ0ずらさずに撮影画像の重複を回避する方法について説明する。
【0114】
式(19)のフリンジスキャンにおいて、cosの代わりに、以下の式(23)に示すようにexpを用い複素平面上で演算する。
【数23】
【0115】
これによりノイズ項がキャンセルされ、単一周波数の定数倍の項が残る。式(23)中のexp(2iβδx)をフーリエ変換すれば、以下の式(24)となる。
【数24】
すなわち、式(7)のように2つのピークを生じず、単一の現像画像を得られることが判る。
【0116】
このように、複素平面上で演算することにより、表面側格子パターン104、裏面側格子パターン105をずらす必要がない。このため、画素数を有効に使用可能となる。
【0117】
以上のフリンジスキャンに基づくノイズキャンセルを実現する撮像装置を説明する。フリンジスキャンでは、少なくとも表面側格子パターン104として初期位相の異なる複数の格子パターンを使用する。これを実現するには、時分割で格子パターンを切り替える手法と、空間分割で格子パターンを切り替える手法とがある。以下、時分割で格子パターンを切り替える手法を、時分割フリンジスキャンと、空間分割で格子パターンを切り替える手法を、空間分割フリンジスキャンと、それぞれ呼ぶ。
【0118】
[時分割フリンジスキャン]
図13(a)に時分割フリンジスキャンを実現する第四撮像装置(以下、撮像装置101dと呼ぶ。)を示す。撮像装置101dは、本図に示すように、画像センサ103と、変調器102dと、記憶部121と、画像処理部122dと、制御部124と、各構成を接続するバス109と、を備える。
【0119】
変調器102dは、格子基板112aと、格子パターン表示部140とを備える。格子パターン表示部140は、表示される格子パターンを電気的に変更可能な、例えば、液晶表示素子等で構成される。
【0120】
撮像装置101dでは、例えば、図13(b)~図13(e)に示すように、異なる4つの初期位相に対応する格子パターン141、142、143、144を、それぞれ切替表示可能である。なお、図13(b)~図13(e)に示す格子パターン141~144は、それぞれ、初期位相ΦもしくはΦが、{0、π/2、π、3π/2}の場合を示す。
【0121】
制御部124は、画像センサ103、変調器102d、および画像処理部122d等の動作を制御する。撮像装置101dでは、さらに、変調器102dを制御し、駆動周期毎に、予め定めた異なる複数の初期位相に対応する格子パターンを順に表示させる。
【0122】
画像処理部122dは、画像処理部122が行う処理に加え、変調器102dに設定される各格子パターンで取得したセンサ信号を加算する。画像処理部122dによる画像処理の詳細は、後述する。
【0123】
記憶部121は、画像センサ103から出力される各受光素子のセンサ信号を一時的に格納する。また、撮像装置101dでは、さらに、各格子パターンで取得した強度変調後のセンサ信号を加算する加算メモリ領域を備える。
【0124】
ここで、変調器102dの格子パターン表示部140の詳細を説明する。図13(b)~図13(e)に示すように、格子パターン表示部140に表示される各格子パターン141~144は、それぞれ複数の線で構成される。格子パターン142は、格子パターン141から位相がπ/2ずれた格子パターンであり、格子パターン143は、格子パターン141から位相がπずれた格子パターンであり、格子パターン144は、格子パターン141から位相が3π/2ずれた格子パターンである。
【0125】
図13(b)~図13(e)に示す各格子パターン141~144は、それぞれ、複数の同心円から構成され、複数の同心円の間隔(ピッチ)は、半径に対して反比例して狭くなる。
【0126】
前述のように、これら格子パターン141~144は、変調器102dの格子パターン表示部140を構成する液晶表示素子の電極に印加する電圧を変化させることにより実現する。
【0127】
図13(b)~図13(e)に示す、各格子パターンを実現する格子パターン表示部140の電極配置の例および印加電圧例を図14(a)~図14(d)に示す。
【0128】
格子パターン表示部140には、格子パターンの1周期を4分割するように同心円状電極が配置される。そして、内側から4本おきに電極が結線され、外周部から駆動端子として4本の端子電極が引き出されている。これら4つの端子電極にそれぞれ印加する電圧状態を、“0”と“1”との2つの状態間で時間的に切り替え、上記4種の格子パターン141~144を生成する。すなわち、格子パターンの初期位相ΦもしくはΦを、図14(a)~図14(d)のように{0、π/2、π、3π/2}と切り替えることが可能となる。
【0129】
なお、図14(a)~図14(d)において、電圧状態として”1”を印加した電極を、黒で示す。また、電圧状態として”0”を印加した電極を、白で示す。このように、“1”を印加した電極が光を遮蔽し、“0”を印加した電極が光を透過させる。
【0130】
次に、撮像装置101dの制御部124による、格子パターン制御処理を説明する。図15は、格子パターン制御処理の処理フローである。本処理は、ユーザによる撮影開始の指示等を契機に開始される。
【0131】
制御部124は、格子パターン表示部140にM(Mは2以上の整数)種の異なる初期位相に対応する格子パターンを、予め定めた順に、周期的に表示させる。表示される格子パターンの変更を位相シフトと呼ぶ。位相シフトは、画像センサ103が、センサ信号を画像処理部122dに出力する毎に、制御部124からの指示により行われる。
【0132】
なお、カウンタの値mは、初期値が1であり、制御部124が、格子パターン表示部140に表示させる格子パターンを変更する毎(位相シフト毎)に、1インクリメントされ、Mまで達したら、1に戻る。カウンタの値がmの場合、m番目の格子パターンが格子パターン表示部140に表示され、得られたセンサ信号は、この格子パターンによるものである。
【0133】
制御部124は、撮像開始の指示を受け付けると、まず、カウンタの値mを、初期化(m=1)する(ステップS541)。
【0134】
制御部124は、終了指示を受け付けるまで、以下の処理を繰り返す(ステップS542)。
【0135】
まず、制御部124は、m番目の格子パターンを格子パターン表示部140に表示させる(位相シフト)(ステップS543)。そして、画像センサ103が、センサ信号を記憶部121に出力したことを検出すると(ステップS544)、カウンタの値mがMに達したか否か(m=M)を判別する(ステップS545)。
【0136】
制御部124は、M未満であれば(S545;No)、カウンタの値mを1インクリメントする(ステップS546)、S543へ戻り、位相シフトさせ、m番目の格子パターンを格子パターン表示部140に表示させる。一方、カウンタの値mがMである場合(S545;Yes)、制御部124は、ステップS541へ戻り、mの値を初期化する。
【0137】
これにより、制御部124は、M種の表示パターンを、格子パターン表示部140に順次表示させることができる。
【0138】
次に、撮像装置101dの画像処理部122dによる画像処理の流れを説明する。図16は、画像処理部122dによる画像処理の処理フローである。本画像処理においても、画像処理部122dは、画像センサ103により記憶部121にセンサ信号が格納される毎に、以下の画像処理を実行する。
【0139】
ここでは、前述の式(20)、すなわち、初期位相Φ=Φとする場合を例にあげて説明する。また、上述のように、制御部124により、格子パターン表示部140には、M種の表示パターンが順に表示されるものとする。そして、制御部124が設定するカウンタの値mを、画像処理部122dも参照する。
【0140】
画像処理部122dによる画像処理が、画像処理部122bによる画像処理と異なる点は、ステップS531~S534の処理である。
【0141】
画像処理部122dは、画像センサ103が記憶部121に格納した最新のセンサ信号に対し、センサ信号処理を行う(ステップS500)。
【0142】
次に、式(20)、すなわち、Φ=Φであることが前提であるため、画像処理部122dは、撮像に使用する表面側格子パターン104と同じ初期位相とするよう位相シフトさせ(ステップS531)、位相シフト後の位相を初期位相として持つ裏面側格子パターン105を生成する。
【0143】
画像処理部122dは、各RGB成分のモアレ縞画像に対し、それぞれ、裏面格子強度変調処理を行う(ステップS511)。ここでは、画像処理部122dは、ステップS531で生成した裏面側格子パターン105を、センサ信号処理後のセンサ信号に乗算する。
【0144】
画像処理部122dは、裏面格子強度変調処理後のセンサ信号を、加算メモリに加算する(ステップS532)。
【0145】
次に、画像処理部122dは、カウンタの値mがMであるか否かを判別する(ステップS533)。
【0146】
カウンタの値mがMである場合(S533;Yes)、画像処理部122dは、S501~S507の処理を行う。これらの処理は、図3の同符号のステップの処理と同様である。ただし、S501の2次元フーリエ変換演算は、加算メモリに格納された信号で構成されるモアレ縞画像に対して行う。
【0147】
その後、画像処理部122dは、加算メモリをクリアし(ステップS534)、処理を終了する。
【0148】
一方、カウンタの値mがM未満の場合(S533;No)、画像処理部122dは、そのまま、処理を終了する。なお、次に、画像センサ103からセンサ信号を受信すると、本画像処理を開始する。
【0149】
なお、上記画像処理の流れは、式(20)が成りたつ場合を例に説明したが、式(19)、式(22)、式(23)で表現される場合にも同様に適用することが可能である。
【0150】
[空間分割フリンジスキャン]
次に、空間分割フリンジスキャンを実現する第五撮像装置(以下、撮像装置101eと呼ぶ。)を説明する。図17(a)に、撮像装置101eを示す。本図に示すように、撮像装置101eは、画像センサ103と、変調器102eと、記憶部121と、画像処理部122eと、画像分割部125と、各構成を接続するバス109と、を備える。
【0151】
変調器102eは、複数の位相の異なる格子パターンを2次元的に並べた格子パターン150を有する。変調器102eの格子パターン150の一例を、図17(b)に示す。本図に示すように、格子パターン150は、例えば、初期位相ΦもしくはΦが、それぞれ{0、π/2、π、3π/2}である格子パターンを、2次元的に並べたパターン配置を有する。
【0152】
画像分割部125は、画像センサ103からの出力を、変調器102eのパターン配置に応じた領域に分割し、画像処理部122に順次伝送する。図17(b)の例では、画像センサ103からの出力を、2×2、すなわち、4つの領域に分割する。
【0153】
画像処理部122eは、画像処理を行う。画像処理部122eによる画像処理は、画像処理部122dによる画像処理と同じである。ただし、画像分割部125が分割した各領域について、それぞれ、裏面格子強度変調処理を行い、加算する。
【0154】
図18は、撮像装置101eの画像分割部125および画像処理部122eによる画像分割および画像処理の処理フローである。本処理は、画像センサ103がセンサ信号を記憶部121に格納する毎に実行される。なお、本処理では、画像は、M分割するものとする。すなわち、変調器102eは、初期位相の異なるM個の格子パターンが2次元的に配置されたものとする。
【0155】
まず、画像分割部125は、センサ画像を、格子パターンの配置に応じた領域に、M分割する(ステップS551)。
【0156】
そして、画像処理部122eは、M分割された各領域のセンサ信号について(ステップS552、S554、S555)、上述のセンサ信号処理(ステップS500)および裏面格子強度変調(ステップS511)を行い、加算メモリに加算する(ステップS553)。
【0157】
M分割された全領域について、上記処理を終えると、画像処理部122eは、加算メモリに記憶された信号に関し、上述のS501~S507の処理を行い、最後の加算メモリをクリアし(ステップS556)、処理を終了する。
【0158】
なお、式(20)に基づくフリンジスキャンでは、4位相必要である。このため変調器102eは、2×2の4つに分割され、4種の初期位相を有する格子パターンが配置される。しかし、式(22)に基づくフリンジスキャンでは2位相で実現できる。このため、この場合、変調器102eは、1×2の2種の初期位相を有する格子パターン配置でも実現可能である。
【0159】
この場合の格子パターン150の例を図17(c)に示す。この変調器102eは、例えば、初期位相ΦもしくはΦが、それぞれ、{0、π}である格子パターンを2次元的に並べた構成である。
【0160】
この格子パターン150を用いる場合、画像分割部125は、この位相数に応じて、画像センサ103からの出力を、1×2の領域に分割する。
【0161】
このように、空間分割フリンジスキャンを用いれば、時分割フリンジスキャンの変調器102dのように電気的に切り替える必要がない。従って、変調器102dを、安価に作製することができる。また、空間分割フリンジスキャンでは、複数の初期位相の撮像タイミングが同じである。このため、動体の撮像が可能である。
【0162】
なお、2位相より4位相のほうが現像後に高画質な画像を望める。しかし、4位相に比べ2位相は処理量が軽くできる。また、2位相では水平ライン毎にシャッタタイミングが異なるCMOS型の画像センサを動画撮像に使用することができる。しかし、空間分割フリンジスキャンを用いると画像を分割するため解像度が実効的に低下する。よって、解像度を上げる必要がある静止物の撮像には時分割フリンジスキャンが適している。
【0163】
<<第一実施形態>>
以上、撮像装置101a~101eによる撮像の基本原理および画質を向上するための処理について説明した。次に、本発明の第一実施形態について説明する。本実施形態の撮像装置は、前述の撮像装置101a~101eを様々な明るさの環境で使用するための、露光制御機能を備える。
【0164】
上述の撮像装置101a~101eのように、レンズを使用しない撮像装置では、レンズ付きのカメラのようにレンズの開口率を変えた露光制御ができない。そこで、本実施形態では、変調器の透過部分の透過率を制御したり、画像センサ103の露光時間を変えたり、両方を制御したりすることにより露光制御する。
【0165】
[撮像装置の構成]
まず、本実施形態の撮像装置200の構成を説明する。図19(a)に本実施形態の撮像装置200の構成図を示す。本実施形態の撮像装置200は、画像センサ103と、変調器102fと、記憶部121と、露光制御部210と、画像処理部220と、制御部230と、これらを接続するバス109と、を備える。
【0166】
画像センサ103は、上記各撮像装置101a~101eの画像センサ103と同様である。すなわち、画像センサ103は、撮像面にアレイ状に配置された複数の受光素子に取り込まれた光学像をセンサ信号に変換して出力する。
【0167】
変調器102fは、画像センサ103の受光面に設けられ、表面側格子パターン(第一格子パターン)で光を変調する。本実施形態では、格子基板112aと、格子基板112a上に配置される格子パターン表示部160と、を備える。格子パターン表示部160は、表面側格子パターンを表示させる。本実施形態では、表示する格子パターンの透過率を電気的に変更可能な、例えば、液晶表示素子等で構成される。
【0168】
記憶部121は、画像センサ103から出力されたセンサ信号、画像処理部で処理途中の信号等を記憶する。基本的に上記撮像装置101b~101eの記憶部121と同様である。
【0169】
画像処理部220は、画像センサ103から出力されたセンサ信号に画像処理を施し、撮影画像を生成する。本実施形態では、表面側格子パターン104に対応した裏面側格子パターン(第二格子パターン)105を生成し、その裏面側格子パターン105とセンサ信号とからモアレ縞画像を生成し、そのモアレ縞画像から、被写体の画像である撮影画像を生成する。なお、生成された撮影画像は、外部に出力され、例えば、画像表示装置107等に表示される。
【0170】
本実施形態の画像処理部220は、現像処理部221と、画質調整処理部222と、画像出力処理部223とを備える。
【0171】
現像処理部221は、画像センサ103が取得し、記憶部121に記憶したセンサ信号から現像画像を得る現像処理を行う。例えば、図3の処理フローでは、S500のセンサ信号処理と、S501の2次元FFT演算と、S502のスペクトル切り出し処理と、S503の強度計算と、の各処理を行い、被写体400の現像画像を得る。
【0172】
また、現像処理部221は、強度変調部106の機能を備えてもよい。この場合は、例えば、図10の処理フローにおける、S511の裏面格子強度変調処理をさらに実行する。
【0173】
画質調整処理部222は、現像処理部221で生成した現像画像の画質を調整する画質調整処理を行う。例えば、図3の処理フローでは、S504のノイズ除去と、S505のコントラスト強調と、の各処理を行う。
【0174】
画像出力処理部223は画質調整後の信号を、出力形態に合わせた映像信号(撮影画像)に変換する出力画像生成処理を行う。例えば、図3の処理フローでは、S506のカラーバランス調整と、S507の出力信号生成処理とを行う。
【0175】
露光制御部210は、画像センサ103から出力され、記憶部121に記憶されセンサ信号に基づいて露光条件(露光環境)を決定し、決定した露光条件に従って露光制御を行う。露光条件は、画像センサ103の露光時間と、変調器102fの透過率とを含む。本実施形態では、センサ信号の明るさ(信号値)を解析し、例えば、解析対象のセンサ信号の信号値の最大値が予め定めた閾値を超える場合、以後、画像センサ103から出力されるセンサ信号の信号値が、解析対象のセンサ信号の信号値よりも小さくなるよう露光条件を変更する。
【0176】
これを実現するため、本実施形態の露光制御部210は、明るさ解析部211と、センサ制御部212と、変調器制御部213と、を備える。
【0177】
明るさ解析部211は、画像センサ103から出力されたセンサ信号の明るさを解析し、解析結果をセンサ制御部212および/または変調器制御部213に通知する。センサ信号は、記憶部121に格納される。
【0178】
センサ制御部212は、解析結果に応じて、画像センサ103の露光時間を決定し、決定した露光時間になるよう画像センサ103を制御する。
【0179】
変調器制御部213は、解析結果に応じて、変調器102fの透過率を決定し、決定した透過率になるよう変調器102fを制御する。
【0180】
制御部230は、撮像装置200の全体の動作を制御する。
【0181】
[ハードウェア構成]
撮像装置200のハードウェア構成を、図19(b)に示す。本図に示すように、本実施形態の撮像装置200は、例えば、CPU301と、ROM311と、RAM312と、ストレージ313と、外部機器インタフェース(I/F)314と、これらの各部を接続するバス302と、を備える。なお、撮像装置200は、さらに通信装置320を備えてもよい。
【0182】
CPU301は、撮像装置200全体の動作を制御する。また、CPU301は、通信装置320を備える場合、当該通信装置320を介して外部ネットワーク上のサーバから各種情報を取得する。
【0183】
ROM311およびストレージ313は、CPU301の指示により制御される。また、ROM311およびストレージ313は、アプリケーションプログラムを保存する。また、アプリケーションプログラムで作成した各種データ、あるいは、アプリケーションプログラムを実行するために必要な各種データを保存する。ストレージ313は、撮像装置200に内蔵されたものでもよいし、撮像装置200に着脱可能な可搬型のメモリでもよい。
【0184】
RAM312は、基本動作プログラムやその他の動作プログラム実行時のワークエリアである。CPU301の指示により制御される。
【0185】
CPU301は、ROM311またはストレージ313に格納しているアプリケーションプログラムをRAM312にロードして実行することにより、上記各機能を実現する。
【0186】
なお、アプリケーションプログラムは、撮像装置200が出荷されるまでに予めROM311および/またはストレージ313に格納されていても良いし、CD(Compact Disk)・DVD(Digital Versatile Disk)などの光学メディアや半導体メモリ等の媒体に格納されて図示しない媒体接続部を介して撮像装置200にインストールされても良い。
【0187】
また、通信装置320を介して外部ネットワークからダウンロードしてインストールしてもよい。また、図示しない外部機器接続インタフェースを介して、外部機器から移動またはコピーしてインストールされてもよい。
【0188】
なお、アプリケーションプログラムは、同様の機能を持つ処理部として、ハードウェアで実現することも可能である。
【0189】
また、記憶部121は、ROM311、RAM312、および/またはストレージ313に構築される。
【0190】
外部機器インタフェース314は、例えば、画像表示装置107や操作装置とのインタフェースである。外部機器インタフェース314を介して、処理結果を外部に出力したり、外部からの操作指示等を受け付けたりする。
【0191】
通信装置320は、外部機器との通信を実現する。
【0192】
[明るさ解析]
ここで、明るさ解析部211による明るさ解析処理について説明する。本実施形態では、明るさ解析部211は、画像センサ103が取得したセンサ信号(センサ画像)を用いて明るさ解析を行う。明るさ解析部211は、取得したセンサ画像に含まれるセンサ信号の中から、最も明るい(大きい)センサ信号の値(センサ信号値)を特定する。そして、特定したセンサ信号値が、予め定めたセンサ信号閾値以上であるか、センサ信号閾値未満であるかを判別する。そして、判別結果を、解析結果として出力する。
【0193】
画像センサ103の各受光素子で収集した光量は、変調器102fを通して得られる光の集合体である。本実施形態では、この各受光素子で収集した光量を電気信号に変換したセンサ信号で構成されるセンサ画像を、明るさ解析の対象とする。なお、後述するように、画像処理部220で現像処理をした後の被写体400の映像を明るさ解析の対象としてもよい。
【0194】
図20(a)に、センサ画像の各受光素子の出力値であるセンサ信号の信号値(明るさ)の変化のイメージの例を示す。図20(a)は、12ビット出力の画像センサ103の例であり、横軸は画像センサ103の、ある横1ラインの複数のセンサ画素103aの位置(センサ位置)を示す。また、縦軸は各センサ画素の明るさであるセンサ信号値である。センサ信号値は、大きいほど明るく、最小の明るさ0から、最大の明るさ4095まで表現できる。また、グラフ411は、横1ラインの各センサ画素103aのセンサ信号値の変化を示すグラフである。
【0195】
レンズレス撮像装置では、コントラストが大きな被写体400を撮像しても、通常、センサ信号値は、変調器102fの透過部を通過した部分か、不透過部に相当する部分かによる変化が生じるだけである。すなわち、グラフ411に示すように、各センサ画素103aの明るさには、それ程の変化は発生しない。例えば、グラフ411の例では、幅421に収まる。
【0196】
レンズレス撮像装置で、現像処理後の画質を上げるためには、センサ信号値の明るさ、暗さの振幅を、できるだけ精度よく得ることが重要である。このため、センサ信号値は、大きいほどよい。一方、センサ信号値が飽和すると、飽和したセンサ画素だけではなく、全体に画質劣化が生じる。以上のことから、レンズレス撮像装置では画像センサ103の各センサ画素103aのセンサ信号値が、飽和しない範囲で、できるだけ大きな値になるよう、露光を制御する。
【0197】
本実施形態の明るさ解析部211は、各センサ信号値の最大値が、予め定めたセンサ信号閾値422内であるか否かを判別し、判別結果を解析結果として出力する。このセンサ信号閾値422は、各センサ信号値が飽和しないよう定められる。図20(a)の例では、飽和値(4095)が設定される。本実施形態では、解析結果として、例えば、センサ信号の最大値がセンサ信号閾値422未満である場合、それを意味する信号を、一方、それ以外の場合は、センサ信号の最大値を出力する。センサ信号閾値422は、予め記憶部121に記憶される。
【0198】
[透過率制御]
次に、変調器制御部213による変調器102fの透過部分の透過率の制御について説明する。図21(a)および図21(b)は、変調器102fの透過部分の透過率制御の説明図である。
【0199】
本実施形態の格子パターン表示部160は、例えば、撮像装置101dの格子パターン表示部140同様、格子パターンの1周期を4分割するように同心円状電極が配置され、内側から4本おきに電極が結線され、外周部から駆動端子として4本の端子電極(以下、単に端子と呼ぶ。)160a160b、160c、160dが引き出されている。これらの端子160a~160dに、それぞれ、予め定めた電圧を印加し、0または1の電圧状態を生成し、透過部160eおよび不透過部160fを有する格子パターンを実現する。
【0200】
例えば、図21(a)に示すように、端子160aおよび160dに液晶表示素子を透過とする電圧を印加し、端子160bおよび端子160cに、液晶表示素子を不透過とする電圧を印加する。これにより、透過部160eおよび不透過部160fを実現する。
【0201】
本実施形態の変調器制御部213は、明るさ解析部211の解析結果に応じて、液晶表示素子を透過とする電圧を変化させ、図21(b)に示すように、その透過率を変化させる。
【0202】
ここで、端子160a~160dに印加する電圧と、液晶表示素子の透過率との関係を説明する。図21(c)は、両者の関係を示すグラフである。本図において、電位差は、端子160a~160dに印加する電圧と、端子160a~160dの液晶を挟んで反対側の共通電極に印加する電圧との電位差である。なお、上述のように、本実施形態では、液晶表示素子として、電位差が無い(0)ときに光を透過させ、電位差が最大(max)のときに光を透過させない素子を用いる。
【0203】
本図に示すように、端子160a~160dに印可する電圧により電位差を0からVmaxまで変化させると、液晶表示素子の透過率は、単調に低減する。すなわち、格子パターン表示部160に用いられる液晶表示素子は、印加する電圧による電位差を小さくすればするほど、透過率は大きくなる。
【0204】
上記撮像装置101dでは、透過部160eに接続される端子160aおよび160dには、電位差が0になるよう電圧を印加する。一方、不透過部160fに接続される端子160b、160cには、電位差がVmaxとなるよう電圧が印加される。
【0205】
そして、変調器制御部213は、明るさ解析部211の解析結果に応じて、端子160aおよび160dに印加する電圧を、電位差が0からVmaxとの間で変化させる。
【0206】
例えば、解析結果が、センサ信号の信号値が飽和していることを示す結果である場合、変調器制御部213は、端子160aおよび端子160dに印加する電圧を高くし、透過率を低減させる。一方、センサ信号の信号値が飽和していないことを示す解析結果が得られた場合、透過率を上昇させるよう、印加する電圧を低減させる。
【0207】
ここで、変調器102fに、決まったバターン以外の様々なパターンを表示生成できる、画素毎の透過率の制御が可能な液晶パネルとした時の格子パターン表示部160に表示される格子パターンを、図22(a)および図22(b)に示す。
【0208】
図22(a)は、露光制御を行う前の、初期状態の格子パターン161の例である。本図に示すように、変調器102fには、透過率が最大の透過部と、透過率が最小の不透過部とが表示される。
【0209】
図22(b)は、露光制御後の格子パターン162の例である。ここでは、画像センサ103が飽和し、透過部分のセンサの透過率を低減させるよう露光制御を行った場合の例である。本図に示すように、透過部の透過率が、低減される。
【0210】
[撮影処理]
次に、本実施形態の撮像装置200による、撮像処理の流れを説明する。図23(a)は、撮像処理の処理フローである。本処理は、ユーザから起動の指示を受け付けると開始する。また、露光条件には、初期値が設定される。
【0211】
制御部230は、終了の指示を受け付けるまで(ステップS1101)、以下の処理を繰り返す。なお、終了指示を受け付けたら、処理を終了する。
【0212】
まず、前述した駆動周期ごとに、画像センサ103が、センサ信号を、記憶部121に出力する(ステップS1102)。
【0213】
画像センサ103がセンサ信号を記憶部121に出力すると、露光制御部210は、最新のセンサ信号に基づいて、露光条件を決定する露光制御処理を行う(ステップS1103)。
【0214】
画像処理部220は、最新のセンサ信号に対し、画像処理を行い(ステップS1104)、撮影画像を生成し、例えば、画像表示装置107等に出力する(ステップS1105)。
【0215】
[画像処理]
次に、ステップS1104の画像処理部220による画像処理の流れを説明する。図23(b)は、本実施形態の画像処理の処理フローである。
【0216】
まず、現像処理部221は、記憶部121に記憶された、1フレーム分の最新のセンサ信号を抽出し、そのセンサ信号に対し、現像処理を行う(ステップS1201)。現像処理は、上述のS500~S503の処理である。
【0217】
次に、画質調整処理部222は、画質調整処理を行う(ステップS1202)。画質調整処理は、上述のS504~S505の処理である。
【0218】
画像出力処理部223は、出力画像生成処理を行う(ステップS1203)。出力画像生成処理は、上述のS506~S507の処理である。
【0219】
なお、画像処理は、撮影が行われている間中行ってもよいが、リアルタイムに撮影画像を表示する必要がない場合は、行わなくてもよい。すなわち、センサ信号を記憶部121にその取得時間に対応づけて記憶し、適当なタイミングで画像処理を行ってもよい。このように構成することで、撮像装置200の処理負荷を低減でき、低い処理能力の装置であっても、スムーズな撮影が可能になる。
【0220】
[露光制御処理]
次に、露光制御処理の流れを説明する。図23(c)は、本実施形態の露光制御部210による露光制御処理の流れである。
【0221】
まず、明るさ解析部211は、記憶部121に記憶された最新のセンサ信号を抽出し、そのセンサ信号の明るさを解析する明るさ解析処理を行う(ステップS1301)。
【0222】
露光制御部210は、明るさ解析部211による解析結果が、露光条件が適切を意味するか否かを判別する(ステップS1302)。ここでは、センサ信号の最大値がセンサ信号閾値422未満であることを示す場合、露光制御部210は、露光条件が適切と判断する。この場合(S1302;Yes)、そのまま処理を終了する。
【0223】
一方、解析結果が、露光条件が不適切を意味する場合(S1302;No)、すなわち、センサ信号の最大値がセンサ信号閾値422以上であることを示す場合、露光制御部210は、センサ制御部212および変調器制御部213の少なくとも一方に、その旨を通知する。
【0224】
センサ制御部212および変調器制御部213は、それぞれ、センサ信号の最大値がセンサ信号閾値422未満となるよう、画像センサ103の露光時間および変調器102fの透過率をそれぞれ算出し、露光条件を決定する(ステップS1303)。
【0225】
なお、従来のレンズ付きのカメラ同様に画像センサ103のシャッタタイミング(露光時間)によっても露光制御可能である。
【0226】
画像センサ103は、駆動周期ごとに、センサ信号を出力する。また、画像センサ103は、駆動周期を最大とする露光期間を設定することができる。
【0227】
本実施形態での、センサ制御部212は、明るさ解析部211から解析結果を受信すると、解析結果に応じて、画像センサ103の最適な露光時間と変調器102fの透過率とを決定する。
【0228】
本実施形態では、画像センサ103の最適な露光時間と変調器102fの透過率とを合わせて制御することにより、より広範囲での露光制御が可能になる。
【0229】
なお、本実施形態では、露光時間および透過率のいずれを制御することにより露光条件を改善するかは、予め定めておく。両方を制御する場合は、露光時間および透過率の両方により、所望の露光条件を達成するよう、露光時間および透過率を決定する。
【0230】
センサ制御部212および変調器制御部213は、それぞれ、決定した露光条件を実現するよう画像センサ103の露光時間および変調器102fの透過率を変更し(ステップS1304)、処理を終了する。
【0231】
なお、露光条件が不適切と判断された場合、画像センサ103の露光時間と変調器102fの透過率とのいずれを調整するかは、予め定めておく。調整は、いずれか一方であってもよいし、両方を適宜調整し、新たな露光条件を決定してもよい。
【0232】
露光時間および透過率は、センサ信号の最大値とセンサ信号閾値422とを用いて、演算により算出する。なお、露光時間および透過率は、予め定めた変化量だけ変化させ、センサ信号の最大値を算出することを繰り返し、決定してもよい。また、半値法等を用いて決定してもよい。
【0233】
以上説明したように、本実施形態の撮像装置200は、撮像面にアレイ状に配置された複数の受光素子に取り込まれた光学像をセンサ信号に変換して出力する画像センサ103と、画像センサ103の受光面に設けられ、第一格子パターンで光を変調する変調器102fと、センサ信号に基づいて露光条件を決定し、設定されている露光条件を決定した露光条件に変更し、変更後の露光条件に従って露光制御を行う露光制御部210と、第一格子パターンに対応した第二格子パターンを生成し、第二格子パターンとセンサ信号とからモアレ縞画像を生成し、当該モアレ縞画像から撮影画像を生成する画像処理部220と、を備える。そして、露光条件は、画像センサ103の露光時間と変調器102fの透過率とを含む。
【0234】
このように、本実施形態は、センサ信号に基づいて露光条件を決定する露光制御部210を備える。このため、本実施形態によれば、レンズレス撮像装置(撮像装置200)において、露光制御が可能となる。従って、レンズレスの撮像装置200であっても、光量が一定でないような環境であっても、環境によらず、高品質な映像を取得できる。
【0235】
特に、本実施形態によれば、現像処理前のセンサ信号の信号値により、露光条件を決定する。また、このとき、予め定めた閾値と、センサ信号値の最大値または最小値との比較により露光条件を変更すべきか否かを判別する。従って、少ない処理負担で迅速に最適な露光条件を決定できる。
【0236】
また、変調器102fの透過率は、変調器102fの液晶表示素子への印加電圧を変えることにより変化させる。従って、簡易な構成で最適な露光条件を設定できる。
【0237】
特に、本実施形態によれば、変調器102fの透過率および画像センサ103の露光時間の両者が制御可能である。透過率および露光時間の両者を制御することにより、光量の低減を最小に抑えた露光制御が可能になる。
【0238】
<変形例1>
なお、上記実施形態では、明るさ解析部211は、露光制御の要否を、画像センサ103のセンサ信号値の最大値が、センサ信号閾値422未満であるか否かで判別している。しかしながら、露光制御の要否の判別手法は、これに限定されない。
【0239】
例えば、さらに、図20(a)に示すように、センサ信号値の最小値を規定する第二センサ信号閾値423を設けてもよい。そして、明るさ解析部211は、センサ信号値の最大値がセンサ信号閾値422未満かつ、センサ信号の最小値が第二センサ信号閾値423以上である場合、露光条件は適と判別してもよい。第二センサ信号閾値423は、予め記憶部121に記憶される。
【0240】
この場合も、明るさ解析部211は、露光条件が適と判別された場合は、それを意味する信号を、一方、露光条件が不適と判別した場合は、センサ信号の最大値または最小値を、解析結果として出力する。
【0241】
露光制御部210は、センサ信号の最大値を受信した場合は、上記手法で、新たな露光条件を決定する。一方、センサ信号の最小値を受信した場合は、露光時間を長くする、および、透過率を高める、の少なくとも一方が実現されるよう、シャッタタイミングおよび透過率を変更する。
【0242】
本変形例によれば、簡易な構成で、センサ信号値を所望の値幅に納めることができる露光条件を決定できる。従って、より高品質の撮影画像を得ることができる。
【0243】
なお、センサ信号閾値422は、センサ信号値の取り得る最大値(飽和値)に限定されない。ここで、センサ信号値のヒストグラム412を図20(b)に示す。本図に示すように、センサ信号値として取る値は、所定の信号値(最頻値)の周辺で突出して高くなり、最頻値から離れるに従って小さくなる。
【0244】
センサ信号値のヒストグラムを算出し、センサ信号閾値内に一定数あるいは所定割合のセンサ信号が含まれるよう、センサ信号閾値424を決定してもよい。これにより、画像センサ103に欠陥のある受光素子がある場合や、強い平行光の光源を受光している受光素子の影響を取り除くことができる。なお、この場合、センサ信号閾値424は、最頻値と最大値との間の値となる。
【0245】
また、上記実施形態では、画像センサ103がセンサ信号を出力する毎に、露光制御部210は、露光条件が適切か否かを判別し、不適切な場合は、露光条件を変更している。ここで、判別に用いるセンサ信号閾値を所定の値とすると、センサ信号値が少し変わっただけで、露光条件が変更される。これは、フリッカの原因となる。従って、これを避けるため、センサ信号閾値422、第二センサ信号閾値423、センサ信号閾値424等に、所定の幅を設けてもよい。
【0246】
<変形例2>
露光調整にあたり、変調器102fの格子パターンの透過率は、部分的に変更してもよい。図24(a)に、透過率を部分的に変えて露光調整した格子パターン163の一例を示す。
【0247】
画像センサ103は、各受光素子(センサ画素103a)に入射する光の角度により光量取得の特性が異なる光線入射角特性を有する。このため、中心部に近いセンサ画素103aほど光の入射が多く、輝度レベルが高くなり、周辺部ほど輝度レベルが低くなる。この特性による画質劣化の影響は、例えば、フリンジスキャン等を用いることにより、軽減はされるが、輝度レベル低下とともに振幅も小さくなるため、解像度を向上させにくい。
【0248】
そこで、変調器制御部213は、変調器102fに表示する格子パターンを、図24(a)に示すように、中心部は透過率が低く、周辺部は透過率が高くなるよう生成する。
【0249】
図24(b)および図24(c)に、このような、部分的な光量制御の前後のセンサ信号値の例を示す。図24(b)および図24(c)は、それぞれ、画像センサ103の横1ラインのセンサ画素値を示す。ここでは、12ビット出力の画像センサ103の例であり、横軸は画像センサ103の、ある横1ラインのセンサ画素の位置(センサ位置)を示す。また、縦軸は各センサ画素の明るさであるセンサ信号値である。
【0250】
なお、センサ画素値は、図20(a)に示すようにセンサ画素毎に細かな揺れがある。しかし、図24(b)および図24(c)では、細かな揺れは省略し、大まかなセンサ画素値の変化のイメージを示す。
【0251】
図24(b)のグラフ413は、変調器102fで、部分的な(センサ画素103aの位置毎の)透過率制御を行っていない状態での各センサ画素103aのセンサ信号値である。上述のように、変調器102fの光線入射角特性により中央部が明るく、センサ信号値も大きい。一方、周辺部は暗く、センサ信号値も小さい。この状態では、周辺部の光の揺れが小さく、精度よく揺れをとれない。
【0252】
そこで、図24(a)に示すように、変調器102fの、周辺部は透過率の高い状態にして、中心部に向かうにつれて、徐々に透過率を下げる。これにより、中央部の光量が低減し、画像センサ103から出力されるセンサ信号値は、図24(c)のグラフ414のように、中央部も、周辺部もほぼ変わらない値になる。
【0253】
なお、このとき、画像センサ103の露光時間を長くすると、全体のセンサ信号値のレベルを上げることができる。このような処理を施した際のセンサ信号値をグラフ415で示す。これにより、位相差による画素値の差をより精度よく取り出すことが可能になる。
【0254】
以上説明したように、光線入射角特性がある画像センサ103では、変調器102fの透過率を部分的に変えることにより、画質を向上させることができる。また、このとき、併せて露光時間を制御することにより、さらに画質を向上させることができる。
【0255】
<<第二実施形態>>
次に、本発明の第二実施形態を説明する。本実施形態では、撮像装置の処理にフリンジスキャンを適用する場合について説明する。以下、本実施形態では、第一実施形態と同名の構成は、特に明示の説明が無い限り、第一実施形態と同様の構成および機能を有する。以下、本実施形態について、第一実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。以下、フリンジスキャンの内、時分割フリンジスキャンを行う場合を例にあげて説明する。
【0256】
本実施形態の撮像装置200は、基本的に第一実施形態の撮像装置200と同様の構成を有する。
【0257】
ただし、本実施形態の制御部230は、画像センサ103の駆動周期ごとに、変調器102fの格子パターン表示部160に表示させる格子パターンの位相を変化させる。制御部230は、予め定めた種類の、位相の異なる格子パターンを、予め定めた順に周期的に表示させる。これは、撮像装置101dと同様である。
【0258】
また、露光制御部210は、1枚の撮影画像を生成する間は、同じ露光条件となるよう露光制御を行う。すなわち、異なる位相の格子パターンを順に表示させている間は、露光条件を変更しない。
【0259】
本実施形態の撮像処理の流れを説明する。図25(a)は、本実施形態の撮像処理の処理フローである。ここでは、M種の異なる格子パターンを順に周期的に表示させ、M枚のセンサ画像から、撮影画像を生成する。
【0260】
なお、カウンタの値mは、初期値が1であり、制御部230が、格子パターン表示部160に表示させる格子パターンを変更する毎(位相シフト毎)に、1インクリメントされ、Mまで達したら、1に戻る。カウンタの値がmの場合、m番目の格子パターンが格子パターン表示部160に表示され、得られたセンサ信号は、この格子パターンによるものである。
【0261】
制御部230は、撮像開始の指示を受け付けると、まず、カウンタの値mを、初期化(m=1)する(ステップS2101)。
【0262】
制御部230は、終了指示を受け付けるまで、以下の処理を繰り返す(ステップS2102)。
【0263】
まず、m番目の格子パターンを格子パターン表示部160に表示させる(位相シフト)(ステップS2103)。そして、画像センサ103が、センサ信号を記憶部121に出力したことを検出すると(ステップS2104)、露光制御部210に、露光制御処理を実行させ(ステップS2105)、また、画像処理部220に、画像処理を実行させる(ステップS2106)。
【0264】
その後、制御部230は、カウンタの値mがMに達したか否か(m=M)を判別する(ステップS2107)。
【0265】
そして、M未満であれば(S2107;No)、制御部230は、カウンタの値mを1インクリメントし(ステップS2108)、S2103へ戻り、位相シフトさせ、m番目の格子パターンを格子パターン表示部160に表示させる。一方、カウンタの値mがMである場合(S2107;Yes)、ステップS2101へ戻り、mの値を初期化する。
【0266】
なお、ステップS2106で行う画像処理部220による画像処理は、上記撮像装置101dの画像処理部122dによる画像処理の流れと同様である。
【0267】
ステップS2105で行う、露光制御部210による露光制御処理について説明する。図25(b)は、本実施形態の露光制御処理の処理フローである。
【0268】
本実施形態の露光制御処理は、基本的に第一実施形態の露光制御処理と同じである。ただし、本実施形態では、上述のように、異なるM種の初期位相の格子パターンを順に表示する1周期間は、露光条件を変更しない。従って、例えば、明るさ解析処理の前に、カウンタの値mがMであるか否かを判別する(ステップS2201)。
【0269】
そして、カウンタの値mがMである場合のみ、その後の露光制御処理(S1301~S1304)を実行する。一方、カウンタの値mがM以外の場合は、そのまま露光制御処理を行わず、処理を終了する。
【0270】
本実施形態においても、露光条件は、画像センサ103の露光時間および変調器102fの透過率の少なくとも一方を変えることにより変化させる。
【0271】
なお、露光制御処理において、カウンタの値mがMであるか否かの判別は、上記タイミングに限定されない。例えば、S1302において、露光条件が不適と判別された後に行ってもよい。この場合は、カウンタの値mがMである場合のみ、露光条件の決定処理を行う。
【0272】
また、S1303の後で判別してもよい。この場合は、S1303で決定した露光条件を、記憶部121に、決定した日時に対応づけて記憶する。そして、カウンタの値mがMである場合、最新の露光条件を抽出し、その露光条件に変更してもよい。
【0273】
さらに、カウンタの値mがMでない場合、センサ信号出力を、加算メモリに加算するよう構成してもよい。この構成では、カウンタの値mがMの場合、明るさ解析部211は、加算メモリ上に加算されたセンサ信号に対して明るさ解析を行う。この場合は、カウンタの値mがMの場合、露光制御処理終了の直前に加算メモリをクリアする。
【0274】
例えば、露光制御を、画像センサ103のシャッタタイミング(露光時間)により行う場合の、本実施形態の制御例を、図26に示す。ここでは、4種の格子パターンを順に表示させるものとする。なお、本図において、シャッタタイミングの信号が1のとき、受光素子(センサ画素)は、露光状態にあり、0のとき、露光していない状態である。すなわち、シャッタがONの期間が露光期間である。
【0275】
本図に示すように、4種の格子パターンをそれぞれ順に表示させる期間(4回の駆動周期)は、露光条件(露光時間)は変更しない。露光条件を変更する場合は、1番目の格子パターンを表示させる直前である。
【0276】
以上説明したように、本実施形態の撮像装置200は、第一実施形態の構成に、変調器102fに表示させる第一格子パターンを制御する制御部230をさらに備え、制御部230は、複数の異なる格子パターンを用いてノイズを除去するフリンジスキャンを行うよう表示させる第一格子パターンを制御する。
【0277】
このため、本実施形態によれば、第一実施形態の効果に加え、フリンジスキャンを実行可能であるため、さらに、ノイズを抑えることができる。従って、より高品質な撮影画像を得ることができる。
【0278】
また、本実施形態によれば、制御部230が、時分割フリンジスキャンを行う際、露光制御部210は、第一格子パターンを変化させる1周期中は、露光条件を維持する。従って、本実施形態によれば、フリンジスキャン可能なレンズレス撮像装置において、フリンジスキャンの効果を損なうことなく露光制御ができる。
【0279】
<変形例3>
なお、上記実施形態では、時分割フリンジスキャンを用いる場合を例にあげて説明しているが、空間フリンジスキャンであってもよい。本変形例の撮像装置200aの構成を、図27(a)に示す。
【0280】
本変形例では、第二実施形態と同名の構成は、時に明示の説明が無い限り、第二実施形態と同様の構成および機能を有する。以下、本変形例について、第二実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0281】
本実施形態の撮像装置200aは、第二実施形態の構成に加え、画像分割部125を備える。画像分割部125は、撮像装置101eの画像分割部125と同様であるため、ここでは、説明を省略する。
【0282】
本実施形態の制御部230は、第二実施形態とは異なり、駆動周期毎に、異なる格子パターンを順に格子パターン表示部160に表示させない。その代わり、例えば、図17(b)に示すように、位相の異なる複数の格子パターンを2次元的に配置した格子パターン150を表示させる。
【0283】
また、変調器制御部213は、変調器102fの、格子パターン表示領域毎に、透過率を変更可能とする。
【0284】
本実施形態の撮像処理、露光制御処理は、第一実施形態と同様であり、画像処理は、撮像装置101eによる画像処理と同様である。
【0285】
ただし、露光制御部210は、画像センサ103の露光時間により、露光条件を制御する場合は、画像センサ103の全センサ信号を用いて、露光の適否を判別する。
【0286】
一方、変調器102fの透過率により、露光条件を制御する場合は、各格子パターン表示領域に対応する、画像センサ103の受光素子(センサ画素)から出力されるセンサ信号毎に、露光条件の適否を判別する。そして、露光条件の変更も、各格子パターンの表示領域毎に行う。
【0287】
図27(b)に、格子パターン(Φ、Φ=3π/2)のみ、透過率を変化させる場合の、格子パターン表示部160に表示される格子パターン150aの例を示す。
【0288】
本変形例によれば、制御部230が、空間分割フリンジスキャンを行う際、露光制御部210は、異なる格子パターンが表示される変調器102fの領域に対応する画像センサ103の領域毎に、その領域から出力されるセンサ信号に基づいて、露光条件を、それぞれ決定する。従って、本実施形態によれば、フリンジスキャン可能なレンズレス撮像装置において、フリンジスキャンの効果を損なうことなく露光制御ができる。
【0289】
なお、本実施形態およびその変形例においても、第一実施形態の各種の変形例は、適用可能である。
【0290】
<<第三実施形態>>
本発明の第三実施形態を説明する。本実施形態では、第二実施形態同様、フリンジスキャンを実行する。ただし、本実施形態では、撮像対象である被写体400の動きの有無を判定し、空間分割フリンジスキャンと時分割フリンジスキャンとを切り替える。
【0291】
フリンジスキャンを行うにあたり、被写体400が静止している場合は、1つの位相パターンを1枚の変調器に表示し、時間で位相パターンを変化させる時分割フリンジスキャンがよい。これは、時分割フリンジスキャンの方が1つの位相パターンで取得する光量が多く、その分、画質が良くなるからである。一方、被写体400に動きがある場合は、4つの位相パターンを同時に撮像する空間分割フリンジスキャンがよい。これは、合成する4つの画像の取得時間が異なる場合、被写体400の動き量だけズレが生じるためである。
【0292】
本実施形態では、このフリンジスキャンの特性に基づき、被写体400の動きの有無により、実行するフリンジスキャンの方式を切り替える。すなわち、被写体400に動きがあると判定された場合は、空間分割フリンジスキャンを、被写体400に動きがないと判定された場合は、時分割フリンジスキャンを用いる。これにより、最適な撮像ができる。
【0293】
以下、本実施形態では、空間分割フリンジスキャンを用いる撮像モードを、動体撮像モードと、また、時分割フリンジスキャンを用いる撮像モードを、静止体撮像モードとそれぞれ呼ぶ。
【0294】
本実施形態の撮像装置200bは、基本的に第二実施形態と同様である。以下、本実施形態において、第二実施形態と同名の構成については、特に明示の記載が無い限り、同様の機能を有する。以下、本実施形態について、第二実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0295】
図28に、本実施形態の撮像装置200bの構成図を示す。本実施形態の撮像装置200aは、画像センサ103と、変調器102fと、記憶部121と、画像処理部220と、制御部230と、露光制御部210と、各構成を接続するバス109と、を備える。
【0296】
画像処理部220は、現像処理部221と、画質調整処理部222と、画像出力処理部223と、を備える。また、露光制御部210は、明るさ解析部211と、センサ制御部212と、変調器制御部213と、を備える。
【0297】
さらに、本実施形態の撮像装置200bは、動き判定部231および撮像モード設定部232をさらに備える。
【0298】
動き判定部231は、被写体400に動きがあるか否かを判定し、判定結果を撮像モード設定部232に出力する。動きの有無は、例えば、記憶部121に記憶されているセンサ画像に基づいて判定する。
【0299】
撮像モード設定部232は、ユーザからの指示または動き判定部231の判定結果に基づいて、撮像モードを設定する。本実施形態では、動体撮像モードか、静止体撮像モードかを決定する。
【0300】
制御部230は、撮像モード設定部232が設定した撮像モードに応じて、格子パターン表示部160に表示させる格子パターンを制御する。また、動体撮像モードに設定された場合は、駆動周期毎に、表示させる格子パターンを予め定めた順に変化させる。
【0301】
また、本実施形態では、記憶部121には、現在の撮像モードを特定する情報が、撮像モード情報として格納される。また、過去に取得したセンサ画像は、取得時刻と、取得時の撮像モードと、取得時の撮像モードが動体撮像モードである場合は、その位相パターンとに対応づけて記憶される。
【0302】
[撮像処理]
まず、本実施形態の撮像処理の流れを説明する。図29(a)は、本実施形態の撮像処理の処理フローである。本処理は、ユーザから起動の指示を受け付けると開始する。起動指示は、ユーザが直接あるいは遠隔から開始ボタンを押すような手動による指示や、予め設定したタイマーにより自動的に出される指示がある。また、露光条件は、初期値が設定される。
【0303】
本実施形態の撮像処理は、基本的に第一実施形態の撮像処理と同じである。ただし、本実施形態では、画像センサ103からセンサ信号が出力される(ステップS1102)と、動き判定部231により動き判定が行われ、撮像モード設定部232により撮像モードを設定する撮像モード設定処理が実行される(ステップS3101)。以降の処理は、第一実施形態と同様である。
【0304】
ただし、撮像モード設定処理において撮像モードとして動体撮像モードが設定された場合は、第二実施形態の時分割フリンジスキャン実行時同様、カウンタにより格子パターンの変更をカウントし、露光制御の実施等を制限する。
【0305】
[撮像モード設定処理]
次に、上記ステップS3101の撮像モード設定処理の流れを説明する。図30は、本実施形態の撮像モード設定処理の処理フローである。
【0306】
動き判定部231は、記憶部121に記憶された、1フレーム分の最新のセンサ信号(センサ画像)と、撮像モード情報と、を取得する(ステップS3201)。
【0307】
動き判定部231は、撮像モード情報に基づいて、現在の撮像モードが動体撮像モードであるか否かを判別する(ステップS3202)。
【0308】
動体撮像モードと判別された場合(S3202;Yes)、動き判定部231は、最新のセンサ画像の1フレーム前(前フレーム)のセンサ画像を比較用センサ画像として取得する(ステップS3203)。なお、動体撮像モードと判別された場合とは、空間分割フリンジスキャンで、最新のセンサ画像が取得された場合である。
【0309】
一方、動体撮像モードと判別されない場合(S3202;No)、動き判定部231は、前同位相フレームのセンサ画像を、比較用センサ画像として取得する(ステップS3204)。なお、動体撮像モードと判別されない場合とは、静止体撮像モードと判別された場合であって、時分割フリンジスキャンで、最新のセンサ画像が取得された場合である。また、前同位相フレームは、最新のセンサ画像よりも前に取得されたセンサ画像の中で、最新のセンサ画像取得時と同じ位相パターンで取得された最も新しいセンサ画像である。
【0310】
動き判定部231は、最新のセンサ画像と、比較用センサ画像との差分を算出する(ステップS3205)。なお、センサ画像は被写体400を認識できるものではないので、画像データ全体にどれだけ変化があったかを、差分として算出する。センサ画素毎の差分を算出し、その合計を算出してもよいし、全センサ画素値の合計間の差分を算出してもよい。その他の手法であってもよい。
【0311】
次に、動き判定部231は、算出した差分が、予め定めた差分閾値以上であるか否かを判別し(ステップS3206)。差分閾値は、予め記憶部121に格納される。
【0312】
そして、差分が差分閾値以上である場合(S2106;Yes)、動き判定部231は、動き有りと判別し、判別結果を撮像モード設定部232に出力する。そして、撮像モード設定部232は、それを受け、動体撮像モードに設定し(ステップS3207)、処理を終了する。
【0313】
一方、差分が差分閾値未満である場合(S2106;No)、動き無し、と判別し、判別結果を撮像モード設定部232に出力する。そして、撮像モード設定部232は、それを受け、静止体撮像モードに設定し(ステップS3208)、処理を終了する。
【0314】
設定した撮像モードは、記憶部121に最新の撮像モードとして格納され、露光制御部210および画像処理部220により参照される。
【0315】
なお、撮像モード設定部232が動体撮像モードと設定した場合、制御部230は、例えば、空間分割フリンジスキャン用の格子パターン150を、変調器102fに表示させる。また、露光制御部210および画像処理部220は、それぞれ、空間分割フリンジスキャン時の露光制御処理および画像処理を行う。
【0316】
また、撮像モード設定部232が静止体撮像モードと設定した場合、制御部230は、例えば、格子パターン141~144を、変調器102fに順次、周期的に表示させる。また、露光制御部210および画像処理部220は、それぞれ、時分割フリンジスキャン時の露光制御処理および画像処理を行う。
【0317】
以上説明したように、本実施形態の撮像装置200aは、撮像装置200に、さらに、センサ信号に基づいて、被写体400内の動きの有無を検出する動き判定部231と、動き判定部231による判定結果に基づき、時分割フリンジスキャンおよび空間分割フリンジスキャンのいずれを実行するか決定する撮像モード設定部232と、を備え、制御部230は、撮像モード設定部が決定したフリンジスキャンを行うよう変調器102fに表示させる第一格子パターンを制御するとともに、露光制御部210および画像処理部220の動作を制御する。
【0318】
そして、撮像モード設定部232は、動き判定部231が動き無し、と判定した場合、時分割フリンジスキャンを実行すると決定し、動き判定部231が動き有り、と判定した場合、空間分割フリンジスキャンを実行すると決定する。
【0319】
このように、本実施形態によれば、被写体400に応じた最適な撮像を実現できる。従って、効率的に、最適な品質の画像を得ることができる。
【0320】
また、本実施形態によれば、いずれのフリンジスキャンを実行するかを、被写体400の動きの有無で決定する。そして、被写体400の動きの有無を、センサ画像で判定するため、迅速に判定できる。また、判定のために現像処理を行う必要が無いため、処理負担を低減できる。
【0321】
<変形例4>
なお、上記実施形態では、センサ画像を用いて所定のセンサ画像との差分を取ることにより、動きの有無を判別しているが、これに限定されない。現像処理を含む画像処理を行い、得られた撮影画像で動きの有無を判別してもよい。
【0322】
なお、この場合は、撮像処理では、図29(b)に示すように、センサ信号が出力(S1102)された後、露光制御処理(S1103)と画像処理(S1104)とを行い、得られた撮影画像で、撮像モードを設定する(S3101)という流れである。
【0323】
図31は、撮影画像を用いて、動きの有無を判定する場合の、撮像モード設定処理の処理フローである。本処理は、記憶部121に1フレーム分の撮影画像が記憶されたことを契機に開始される。
【0324】
まず、動き判定部231は、記憶部121から、最新の撮影画像を取得する(ステップS3301)。
【0325】
次に、動き判定部231は、同じく記憶部121から、比較用の撮影画像(比較用撮影画像)を取得する(ステップS3302)。ここでは、例えば、最新の撮影画像より前に記憶された最も新しい撮影画像(直前撮影画像)を取得する。
【0326】
なお、比較用撮影画像は、これに限定されない。直前撮影画像を含む、直近の複数の撮影画像から生成された画像を、比較用撮影画像としてもよい。このとき、比較用撮影画像は、例えば、直近の複数の撮影画像の各画素の画素値に統計的な処理を施して得られた値を、当該画素の画素値とする。統計的な処理は、例えば、平均、合計等である。
【0327】
最新の撮影画像と比較用撮影画像とを比較し、動体の有無を検出する(ステップS3303)。動体の有無の検出には、既存の動体有無検出手法を用いてもよいし、差分を算出して、差分が差分閾値以上か未満かで判断してもよい。
【0328】
そして、動体が検出された場合(S3303;Yes)、動き判定部231は、動き有りと判別し、判別結果を撮像モード設定部232に出力する。そして、撮像モード設定部232は、それを受け、動体撮像モードに設定し(ステップS3304)、処理を終了する。
【0329】
一方、動体が検出されない場合(S3303;No)、動き判定部231は、動き無しと判別し、判別結果を撮像モード設定部232に出力する。そして、撮像モード設定部232は、それを受け、静止体撮像モードに設定し(ステップS3305)、処理を終了する。
【0330】
以上のように動体の有無を検出し、変調器および現像方式を切り替えることにより最適な撮影が可能になる。この場合、例えば、既存の動き判別処理手法を用い、動かない背景と、動きのある被写体とを区別し、被写体そのものの動きの有無を判別できる。これにより、より正確に動きの有無を判別できる。
【0331】
なお、本変形例において、動体の有無を判別するのは、撮影画像でなくてもよい。例えば、画質調整等を行う前の現像処理のみを行って得た現像画像であってもよい。
【0332】
<<第四実施形態>>
本発明の第四実施形態を説明する。本実施形態では、上記撮像装置200、200a、200b(以下、撮像装置200で代表する。)の機能の一部または全部を、携帯型情報通信装置(以下、携帯端末と呼ぶ。)に搭載する。これにより、本実施形態では、レンズレス撮像装置を用い、小型かつ薄型で、露光制御可能な携帯端末を実現する。
【0333】
なお、携帯端末は、無線通信機能と、情報処理機能と、撮像機能と、表示機能と、を有する情報処理装置であればよく、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、ウォッチやヘッドマウントディスプレイなどのウェアラブル端末、フィーチャーフォン、または、その他の携帯用デジタル機器等である。
【0334】
本実施形態の携帯端末300のハードウェア構成図を、図32に示す。本図に示すように、携帯端末300は、CPU(Central Processing Unit)301と、バス302と、記憶装置310と、通信装置320と、拡張I/F327と、操作器330と、ビデオプロセッサ340と、オーディオプロセッサ350と、センサ360と、を備える。
【0335】
CPU301は、携帯端末300全体を制御するマイクロプロセッサユニットである。バス302はCPU301と携帯端末300内の各動作ブロックとの間でデータ送受信を行うためのデータ通信路である。
【0336】
CPU301は、ユーザの操作要求を、操作器330を介して受け取り、ビデオプロセッサ340、通信装置320、各種プログラム機能部を制御する。
【0337】
さらに、CPU301は、通信装置320を経由して外部ネットワーク、上のサーバから各種情報を取得し、各種プログラム機能部に渡す機能も有する。
【0338】
記憶装置310は、ROM(Read Only Memory)311と、RAM(Random Access Memory)312と、ストレージ313とを備える。
【0339】
ROM311は、オペレーティングシステムなどの基本動作プログラムやその他の動作プログラムが格納されたメモリである。ROM311として、例えば、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)やフラッシュROMのような書き換え可能なROMが用いられる。
【0340】
ストレージ313は、携帯端末300の動作プログラムや動作設定値、本実施形態の各機能を実現するために必要な各種のプログラムや各種のデータを記憶する。ストレージ313は、携帯端末300に外部から電源が供給されていない状態であっても記憶している情報を保持する。このため、ストレージ313には、例えば、フラッシュROMやSSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)等のデバイスが用いられる。
【0341】
ストレージ313は、CPU301の指示により制御され、アプリケーションプログラムを保存する。また、アプリケーションプログラムで作成した各種情報を保存する。また、通信装置320から受信した信号から映像音声ストリーム等のコンテンツを保存してもよい。また、ストレージ313は携帯端末300に内蔵されたものでもよい。携帯端末300に着脱可能な可搬型のメモリでもよい。
【0342】
RAM312は、基本動作プログラムやその他の動作プログラム実行時のワークエリアである。RAM312は、CPU301の指示により制御される。CPU301によって、ストレージ313に格納しているアプリケーションプログラムの機能部がRAM312に、展開される。ストレージ313には、図示はしていないが、例えば、図19(a)の露光制御部210、画像処理部220、制御部230を実現するプログラムが格納される。すなわち、本実施形態では、CPU301が、記憶装置310(ストレージ313またはROM311)に記憶されたアプリケーションプログラムを、RAM312に展開し、実行することにより、各種機能が実現される。
【0343】
なお、アプリケーションプログラムは、携帯端末300が出荷されるまでに予めストレージ313等に格納されていても良いし、CD(Compact Disk)・DVD(Digital Versatile Disk)などの光学メディアや半導体メモリ等の媒体に格納されて図示しない媒体接続部を介して携帯端末300にインストールされても良い。
【0344】
また、アプリケーションプログラムは、後述する通信装置320および図示しない無線ルータを介して図示しない外部ネットワークからダウンロードしてインストールしてもよい。また、移動体通信インタフェースを介して図示しない基地局を介して配信元からダウンロードしてインストールしてもよい。さらに、ネットワークを介してアプリケーションプログラムを取得したパーソナルコンピュータ(PC)に図示しない外部機器接続I/Fを介して接続し、PCから携帯端末300にムーブまたはコピーしてインストールすることも可能である。
【0345】
さらに、アプリケーションプログラムは、同様の機能を持つ処理部として、ハードウェアで実現することも可能である。ハードウェアとして実現する場合は、各処理部が主体となり、各機能を実現する。
【0346】
通信装置320は、通信インタフェース(I/F)321と、移動体通信インタフェース322と、を備える。
【0347】
通信I/F321は、例えば、無線LANなどにより、図示しない無線ルータに接続される。また、通信I/F321は、無線ルータを介して外部ネットワークと接続され、外部ネットワーク上のサーバ等と情報の送受信を行う。無線ルータとの通信機能に加えて、またはこれに替えて、Wi‐Fi(登録商標)などの無線LANなどの方法で、無線ルータを介さずにサーバと直接通信することが可能である。
【0348】
通信I/F321は、異なる通信方式を行うチップをそれぞれ実装しても良い。また、複数の通信方式を扱う1つのチップとして実装されていても良い。例えば、Bluetooth(登録商標)等の他の情報機器と直接通信する機能により、データの送受信を直接行う。
【0349】
移動体通信I/F322は、GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)方式、W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)方式やCDMA2000方式、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)方式などの第3世代移動通信システム(以下「3G」と表記する)、またはLTE(Long Term Evolution)方式や第五世代(5G)と呼ばれる新しい次世代通信システムなどの移動体通信網を利用して基地局を通して通信ネットワークに接続され、通信ネットワーク上のサーバと情報の送受信を行うことができる。
【0350】
また、通信I/F321による外部ネットワークとの接続を移動体通信I/F322による通信ネットワーク接続より優先するようにすることもできる。
【0351】
拡張I/F327は、携帯端末300の機能を拡張するためのインタフェース群である。本実施形態では、映像/音声I/F、操作機器I/F、メモリI/F等を備える。映像/音声I/Fは、外部映像/音声出力機器からの映像信号/音声信号の入力、外部映像/音声入力機器への映像信号/音声信号の出力、等を行う。キーボード等の外部操作機器は、操作機器I/Fを介して接続される。メモリI/Fは、メモリカードやその他のメモリ媒体を接続してデータの送受信を行う。
【0352】
操作器330は、携帯端末300に対する操作指示の入力を行う。本実施形態では、ディスプレイ341に重ねて配置したタッチパネルおよびボタンスイッチを並べた操作キーを備える。なお、そのいずれか一方のみであっても良い。また、拡張I/F327に接続したキーボード等を用いて携帯端末300の操作を行っても良い。また、有線通信又は無線通信により接続された別体の携帯情報端末機器を用いて携帯端末300の操作を行っても良い。また、タッチパネル機能はディスプレイ341が備えていてもよい。
【0353】
ビデオプロセッサ340は、ディスプレイ341と、画像信号プロセッサ342と、カメラ343と、を備える。
【0354】
ディスプレイ341は、例えば液晶パネル等の表示デバイスであり、画像信号プロセッサ342で処理した画像データを表示し、携帯端末300のユーザに提供する。本実施形態では、撮像装置200の画像表示装置107としても機能する。
【0355】
画像信号プロセッサ342は図示を省略したビデオRAMを備え、ビデオRAMに入力された画像データに基づいてディスプレイ341が駆動される。また、画像信号プロセッサ342は、必要に応じてフォーマット変換、メニューやその他のOSD(On-Screen Display)信号の重畳処理等を行う。
【0356】
カメラ343は、入射した光を電気信号に変換することにより、周囲や対象物を画像データとして取得する撮像装置である。本実施形態では、撮像装置200である。
【0357】
オーディオプロセッサ350は、スピーカ351と、音声信号プロセッサ352と、マイク353と、を備える。スピーカ351は、音声信号プロセッサ352で処理した音声信号を携帯端末300のユーザに提供する。マイク353は、ユーザの声などを音声データに変換して入力する。
【0358】
センサ360は、携帯端末300の状態を検出するためのセンサ群である。本実施形態では、例えば、GPS(Global Positioning System)受信器361と、ジャイロセンサ362と、地磁気センサ363と、加速度センサ364と、照度センサ365と、距離センサ366と、生体情報センサ367と、を備える。
【0359】
尚、他のセンサ群により、携帯端末300の位置、傾き、方角、動き、および周囲の明るさ、ユーザの生体情報等を検出する。また、携帯端末300が、気圧センサ等、圧力センサ他のセンサを更に備えていても良い。なお、位置情報は、GPS受信器361により取得する。GPS電波が入りにくい場所等では、通信装置320によりWi-FiのAP装置の位置情報を用いて取得してもよいし、同様に通信装置320により基地局の位置情報および電話通信電波の伝搬遅延を用いた位置情報取得方法により取得してもよい。また、これらのセンサ群は、必ずしも全てを備えていなくてもよい。
【0360】
なお、図32に示す携帯端末300の構成例は、本実施形態に必須ではない構成も多数含んでいるが、これらが備えられていない構成であっても本実施形態の効果を損なうことはない。また、デジタル放送受信機能や電子マネー決済機能等、図示していない構成が更に加えられていても良い。
【0361】
本実施形態の撮像方法および動作は、上記各実施形態および変形例と同様である。
【0362】
このように、本実施形態によれば、携帯端末300が、上述の撮像装置200を備える。このため、携帯端末300での撮像の画質を向上させつつ、小型化、薄型化を図ることができる。
【0363】
本携帯端末300においては、様々な撮像環境での撮像が想定され、撮像装置200の変調器102fを、撮像環境に合わせて制御することにより最適な撮像が可能になる。
【0364】
本発明は上記した実施形態および変形例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態および変形例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態または変形例の構成の一部を他の実施形態や変形例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施形態または変形例の構成に他の実施形態または変形例の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態または変形例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0365】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ部や、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0366】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0367】
101a:撮像装置、101b:撮像装置、101c:撮像装置、101d:撮像装置、101e:撮像装置、102a:変調器、102b:変調器、102d:変調器、102e:変調器、102f:変調器、103:画像センサ、103a:センサ画素、104:第一格子パターン(表面側格子パターン)、104b:格子パターン、104c:格子パターン、105:第二格子パターン(裏面側格子パターン)、106:強度変調部、107:画像表示装置、109:バス、112a:格子基板、112b:支持部材、113:格子センサ一体基板、121:記憶部、122:画像処理部、122a:画像処理部、122b:画像処理部、122c:画像処理部、122d:画像処理部、122e:画像処理部、123:フォーカス設定部、124:制御部、125:画像分割部、
140:格子パターン表示部、141:格子パターン、142:格子パターン、143:格子パターン、144:格子パターン、150:格子パターン、150a:格子パターン、160:格子パターン表示部、160a:端子、160b:端子、160c:端子、160d:端子、160e:透過部、160f:不透過部、161:格子パターン、162:格子パターン、163:格子パターン、
200:撮像装置、200a:撮像装置、200b:撮像装置、210:露光制御部、211:明るさ解析部、212:センサ制御部、213:変調器制御部、220:画像処理部、221:現像処理部、222:画質調整処理部、223:画像出力処理部、230:制御部、231:動き判定部、232:撮像モード設定部、
300:携帯端末、301:CPU、302:バス、310:記憶装置、311:ROM、312:RAM、313:ストレージ、314:外部機器インタフェース、320:通信装置、321:通信I/F、322:移動体通信インタフェース(I/F)、327:拡張I/F、330:操作器、340:ビデオプロセッサ、341:ディスプレイ、342:画像信号プロセッサ、343:カメラ、350:オーディオプロセッサ、351:スピーカ、352:音声信号プロセッサ、353:マイク、360:センサ、361:GPS受信器、362:ジャイロセンサ、363:地磁気センサ、364:加速度センサ、365:照度センサ、366:距離センサ、367:生体情報センサ、
400:被写体、401:点、402:投影像、403:点、404:投影像、411:グラフ、412:ヒストグラム、413:グラフ、414:グラフ、415:グラフ、422:センサ信号閾値、423:第二センサ信号閾値、424:センサ信号閾値

図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
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