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特許7341247モレキュラーシーブSSZ-115、その合成及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】モレキュラーシーブSSZ-115、その合成及び使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/46 20060101AFI20230901BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20230901BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20230901BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20230901BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
C01B39/46
B01J37/04 102
B01J37/08
B01J29/70 Z
B01J37/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021548622
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 IB2020051618
(87)【国際公開番号】W WO2020174407
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】62/811,225
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シエ、ダン
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-524406(JP,A)
【文献】特表2019-529303(JP,A)
【文献】特表2014-500224(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0291822(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/02
B01J 37/00
B01J 29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成されたままの形態で、下記の粉末X線回折パターンを有するモレキュラーシーブであって、
【化3】

モル濃度関係:
Al :(n)SiO
を有する組成を有し、式中、nが、5~100の範囲である、前記のモレキュラーシーブ
【請求項2】
モル濃度関係:
Al:(n)SiO
を有する組成を有し、式中、nが、10~60の範囲である、請求項1に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項3】
合成されたままの形態で、下記の粉末X線回折パターンを有するモレキュラーシーブであって、
【化1】

以下のモル濃度関係:
【表1】

を有する化学組成を有し、式中、Qが、1-メチル-1-[5-(トリメチルアンモニオ)ペンチル]ピロリジニウムジカチオンであり、Mが、第1族または第2族の金属である、前記のモレキュラーシーブ
【請求項4】
以下のモル濃度関係:
【表2】

を有する化学組成を有し、式中、Qが、1-メチル-1-[5-(トリメチルアンモニオ)ペンチル]ピロリジニウムジカチオンであり、Mが、第1族または第2族の金属である、請求項に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項5】
請求項に記載のモレキュラーシーブの合成方法であって、
(a)
(1)酸化ケイ素の供給源、
(2)酸化アルミニウムの供給源、
(3)第1族または第2族の金属(M)の供給源、
(4)1-メチル-1-[5-(トリメチルアンモニオ)ペンチル]ピロリジニウムジカチオンを含む構造指向剤(Q)、
(5)水酸化物イオン供給源、及び
(6)水
を含む反応混合物を提供し、ならびに
(b)前記反応混合物を、前記モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供することを含む、前記合成方法。
【請求項6】
前記反応混合物が、モル比換算で以下の組成:
【表3】

を有する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応混合物が、モル比換算で以下の組成:
【表4】

を有する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記結晶化条件が、125℃~200℃の温度を含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
有機化合物を含む原料から変換生成物への変換プロセスであって、前記原料を、請求項1に記載のモレキュラーシーブを含む触媒に、有機化合物変換条件で接触させることを含む、前記変換プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月27日提出の米国特許仮出願第62/811,225号の優先権及び利益を主張する。
【0002】
本開示は、SSZ-115と呼ばれる新規合成結晶性モレキュラーシーブ、その合成、ならびに有機化合物変換反応及び収着プロセスにおけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
モレキュラーシーブは、特徴的なX線回折(XRD)パターンによって示される画定された細孔構造を有する特徴的な結晶構造を有する、商業的に重要なクラスの物質である。結晶構造は、特定のタイプのモレキュラーシーブの特徴である空洞及びチャネル/細孔を画定する。
【0004】
本開示により、SSZ-115と呼ばれ、独特の粉末X線回折パターンを有する新規結晶性モレキュラーシーブを、構造指向剤として1-メチル-1-[5-(トリメチルアンモニオ)ペンチル]ピロリジニウムジカチオンを使用して合成した。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、合成されたままの形態で、図1に示すパターンと実質的に同じ粉末X線回折パターンを有するモレキュラーシーブを提供する。
【0006】
合成されたままの無水形態では、モレキュラーシーブは、以下のモル濃度関係を有する化学組成を有し得る:
【表0】

式中、Qは1-メチル-1-[5-(トリメチルアンモニオ)ペンチル]ピロリジニウムジカチオンであり、Mは、第1族または第2族の金属(M)である。
【0007】
別の態様では、焼成されたままの形態で、図3に示すパターンと実質的に同じ粉末X線回折パターンを有するモレキュラーシーブを提供する。
【0008】
焼成形態では、モレキュラーシーブは、以下のモル濃度関係を有する化学組成を有し得る:
Al:(n)SiO
式中、nは、5~100の範囲である。
【0009】
さらなる態様では、本明細書に記載のモレキュラーシーブの合成方法を提供し、方法は、(a)(1)酸化ケイ素供給源、(2)酸化アルミニウム供給源、(3)第1族または第2族の金属(M)供給源、(4)1-メチル-1-[5-(トリメチルアンモニオ)ペンチル]ピロリジニウムジカチオンを含む構造指向剤(Q)、(5)水酸化物イオン供給源、及び(6)水を含む反応混合物を提供し、(b)反応混合物をモレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供することを含む。
【0010】
さらに別の態様では、原料を、本明細書に記載のモレキュラーシーブを含む触媒と、有機化合物変換条件で接触させることを含む、有機化合物を含む原料から変換生成物への変換プロセスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の合成されたままのモレキュラーシーブ生成物の粉末X線回折(XRD)パターンを示す。
【0012】
図2】実施例1の合成されたままのモレキュラーシーブ生成物の走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像である。
【0013】
図3】実施例6の焼成モレキュラーシーブ生成物の粉末XRDパターンを示す。
【0014】
図4】SSZ-25(MWW型フレームワーク、上部のXRDパターン)、SSZ-70(*-SVY型フレームワーク、下部のXRDパターン)及び焼成SSZ-115(中央のXRDパターン)の粉末XRDパターンの比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
用語「合成されたままの」は、本明細書中では、結晶化後、構造指向剤を除去する前のその形態のモレキュラーシーブを指すために使用される。
【0016】
用語「無水」は、本明細書中では、物理的に吸着した水及び化学的に吸着した水の両方を実質的に欠くモレキュラーシーブを指すために使用される。
【0017】
本明細書中で使用する場合、周期表の族の付番スキームは、Chem.Eng.News 1985,63(5),26-27に記載されているとおりである。
【0018】
反応混合物
モレキュラーシーブSSZ-115は、(a)(1)酸化ケイ素供給源、(2)酸化アルミニウム供給源、(3)第1族または第2族の金属(M)供給源、(4)1-メチル-1-[5-(トリメチルアンモニオ)ペンチル]ピロリジニウムジカチオンを含む構造指向剤(Q)、(5)水酸化物イオン供給源、及び(6)水を含む反応混合物を提供し、(b)反応混合物をモレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供することにより合成することができる。
【0019】
反応混合物は、モル比に関して、表1に記載の範囲内の組成を有し得る。
【表1】
【0020】
酸化ケイ素の適切な供給源として、コロイド状シリカ、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、アルカリ金属ケイ酸塩、及びテトラアルキルオルトケイ酸塩が挙げられる。
【0021】
酸化アルミニウムの適切な供給源として、水和アルミナ、水酸化アルミニウム、アルカリ金属アルミン酸塩、アルミニウムアルコキシド、及び水溶性アルミニウム塩(例えば、硝酸アルミニウム)が挙げられる。
【0022】
酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合供給源を追加的または代替的に使用することができ、この供給源は、アルミノシリケートゼオライト(例えば、ゼオライトY)及び粘土または処理粘土(例えば、メタカオリン)を含み得る。
【0023】
第1族または第2族の金属(M)は、結晶化プロセスに有害ではない任意のM含有化合物であり得る。第1族または第2族の金属は、ナトリウムまたはカリウムであり得る。第1族または第2族の金属の供給源には、金属水酸化物、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫酸塩、金属硝酸塩、及び金属カルボン酸塩が含まれ得る。本明細書中の語句「第1族または第2族の金属」とは、第1族の金属と第2族の金属を代替として使用することを意味するのではなく、1つ以上の第1族の金属を単独で、または1つ以上の第2族の金属と組み合わせて使用することができ、1つ以上の第2族の金属を単独で、または1つ以上の第1族の金属と組み合わせて使用することができることを意味する。通常、第1族の金属が好ましい。適切な第1族または第2族金属には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0024】
構造指向剤(Q)は、以下の構造(1)で表される1-メチル-1-[5-(トリメチルアンモニオ)ペンチル]ピロリジニウムジカチオンを含む:
【化1】
【0025】
Qの適切な供給源は、水酸化物及び/またはジ四級アンモニウム化合物の他の塩である。
【0026】
反応混合物は、以前の合成に由来するSSZ-115などのモレキュラーシーブ物質のシードを、反応混合物の0.01~10,000重量ppm(例えば、100~5000重量ppm)の量で含み得る。シーディングは、完全な結晶化の発生に必要な時間の短縮に有効であり得る。さらに、シーディングは、望ましくないフェーズにわたって、核形成及び/またはSSZ-115の形成を促進することによって得られる生成物の純度の向上をもたらし得る。
【0027】
反応混合物成分は、複数の供給源から供給することができる。また、2つ以上の反応成分を1つの供給源によって提供することができる。
【0028】
反応混合物は、バッチ式または連続的に調製することができる。本明細書に記載のモレキュラーシーブの結晶サイズ、形態及び結晶化時間は、反応混合物の性質及び結晶化条件によって様々に異なり得る。
【0029】
結晶化と合成後の処理
上記の反応混合物からのモレキュラーシーブの結晶化は、ポリプロピレンジャーまたはテフロンで裏打ちされたもしくはステンレス鋼のオートクレーブなどの適切な反応容器内で、静置、転倒または撹拌条件下のいずれかで、結晶化が起こるのに十分な時間(例えば、約2~40日、または5~30日)の間、125℃~200℃(例えば、140℃~170℃)で実施することができる。結晶化は通常オートクレーブ内で行われるため、反応混合物は自生圧力を受ける。
【0030】
モレキュラーシーブ結晶が形成された後、遠心分離や濾過などの標準的な機械的分離技術によって、反応混合物から固体生成物を回収する。回収した結晶を、水洗した後、数秒~数分(例えば、フラッシュ乾燥の場合は5秒~10分)または数時間(例えば、75℃~150℃のオーブン乾燥の場合は約4~24時間)乾燥させ、合成されたままのSSZ-115結晶を取得する。乾燥工程は、大気圧または真空下で実施することができる。
【0031】
結晶化プロセスの結果として、回収した結晶性モレキュラーシーブ生成物は、その細孔構造内に、合成に使用する構造指向剤の少なくとも一部を含む。
【0032】
合成されたままのモレキュラーシーブを、その合成に使用する構造指向剤の一部または全部を除去するための処理に供することができる。構造指向剤の除去は、合成されたままのゼオライトを、構造指向剤の一部または全部を除去するのに十分な温度で加熱する熱処理(例えば、焼成)によって実施することができる。熱処理には大気圧以下の圧力を使用することができるが、利便性の理由から大気圧が望ましい。熱処理は、少なくとも370℃の温度で少なくとも1分間、一般的には20時間以内(例えば、1~12時間)で実施することができる。熱処理は、最大925℃の温度で実施することができる。例えば、熱処理は、酸素含有ガスの存在下で、400℃~700℃の温度でおよそ1~8時間実施することができる。追加的または代替的に、構造指向剤を、オゾン処理することによって除去することができる。
【0033】
所望の範囲で、合成されたままのモレキュラーシーブ中の任意のカチオンを、当技術分野で周知の技術に従って、他のカチオンとのイオン交換によって置き換えることができる。好ましい置換カチオンとして、金属イオン、水素イオン、水素前駆体(例えば、アンモニウム)イオン及びそれらの混合物が挙げられる。特に好ましい置換カチオンは、特定の有機変換反応の触媒活性を調整するカチオンである。これらには、水素、希土類金属、及び元素周期表の第2族~第15族の金属が含まれる。
【0034】
モレキュラーシーブの特性評価
合成されたままの無水形態では、モレキュラーシーブSSZ-115は、表2に記載のように、以下のモル濃度関係を有する化学組成を有し得る:
【表2】

式中、組成変数Q及びMは、本明細書において上記したとおりである。
【0035】
本モレキュラーシーブの合成されたままの形態は、合成されたままの形態を調製するために使用する反応混合物の反応物質のモル比とは異なるモル比を有し得ることに留意されたい。この結果は、反応混合物の反応物質の100%が、(反応混合物から)形成される結晶に対して、不完全にしか取り込まれないことが原因で発生し得る。
【0036】
焼成形態では、モレキュラーシーブSSZ-115は、以下のモル濃度関係を有する化学組成を有し得る:
Al:(n)SiO
式中、nは、5~100の範囲(例えば、5~75、5~60、5~50、10~100、10~75、または10~60)である。
【0037】
SSZ-115の合成されたままの形態及び焼成形態は、特徴的な粉末X線回折パターンを有する。モレキュラーシーブは、合成されたままの形態では、図1に示すパターンと実質的に同じ粉末XRDパターンを有する。焼成形態では、モレキュラーシーブは、図3に示すパターンと実質的に同じ粉末XRDパターンを有する。本明細書中で使用する場合、語句「実質的に同じ」とは、パターンがピークの位置に関して質的に同じであることを意味する。当業者であれば、2つの物質が実質的に同じ粉末X線回折パターンを有するかどうかを判定することができよう。
【0038】
本明細書に示す粉末X線回折パターンは、標準的な技術によって収集した。放射線はCuKα放射線であった。2θの関数(θはブラッグ角度である)としてのピークの高さと位置を、ピークの相対強度から読み取り(バックグラウンドに対して調整)、記録された線に対応する面間間隔であるdを計算することができる。
【0039】
回折パターンのわずかな変動は、格子定数の変化によるサンプルのフレームワーク種のモル比の変動によるものであり得る。さらに、無秩序な物質及び/または十分に小さい結晶は、ピークの形状と強度に影響を与え、大幅なピークの広がりをもたらす。回折パターンのわずかな変動は、調製に使用する有機化合物の変動からも生じ得る。焼成はまた、XRDパターンの小さなシフトを引き起こし得る。これらの小さな摂動にもかかわらず、基本的な結晶格子構造は変化しないままである。
【0040】
収着及び触媒作用
モレキュラーシーブSSZ-115は、現在の商業的/工業的重要性の多くを含む様々な有機化合物変換プロセスを触媒するための吸着剤または触媒として使用し得る。SSZ-115によって、それ自体で、または他の結晶性触媒を含む1つ以上の他の触媒活性物質と組み合わせて効果的に触媒される化学変換プロセスの例には、酸活性を有する触媒を必要とするプロセスが含まれる。SSZ-115によって触媒され得る有機変換プロセスの例として、分解、水素化分解、不均化、アルキル化、オリゴマー化、及び異性化が挙げられる。
【0041】
多くの触媒の場合と同様に、SSZ-115を、有機変換プロセスで使用する温度及び他の条件に耐性のある別の物質と組み合わせることが望ましい場合がある。そのような物質として、活性及び不活性物質、ならびに合成または天然ゼオライト、ならびに無機物質、例えば粘土、シリカ及び/または金属酸化物、例えばアルミナが挙げられる。後者は、天然の、またはシリカと金属酸化物の混合物を含むゼラチン状の沈殿物もしくはゲルの形態であり得る。活性のあるSSZ-115と組み合わせて(すなわち、新規物質の合成中にSSZ-115と組み合わせて、または存在する)物質を使用すると、特定の有機変換プロセスにおける触媒の変換及び/または選択性が変化する傾向がある。不活性物質は、所与のプロセスにおける変換量を制御するための希釈剤として適切に機能し、その結果、反応速度を制御するための他の手段を使用することなく、経済的かつ秩序だった方法で生成物を得ることができる。これらの物質を天然の粘土(例えば、ベントナイト及びカオリン)に組み込んで、商業的動作条件下での触媒の破砕強度を向上させてもよい。これらの物質(すなわち、粘土、酸化物など)は、触媒の結合剤として機能する。商業的使用においては、触媒が粉末状の物質に分解するのを防ぐことが望ましいため、良好な破砕強度を有する触媒を提供することが望ましい。これらの粘土及び/または酸化物結合剤は通常、触媒の破砕強度を向上させる目的でのみ使用されている。
【0042】
SSZ-115と共に合成することができる天然粘土として、サブベントナイトならびにDixie、McNamee、Georgia及びFlorida粘土として一般的に知られているカオリンを含むモンモリロナイト及びカオリンのファミリー、または主要な鉱物成分がハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、またはアナウキサイトである他の粘土が挙げられる。そのような粘土は、最初に採掘されたままの状態で使用するか、または最初に焼成、酸処理、または化学修飾に供して使用することができる。SSZ-115との合成に有用な結合剤としてはまた、無機酸化物、例えば、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ベリリア、アルミナ、及びそれらの混合物も挙げられる。
【0043】
前述の物質に加えて、SSZ-115は、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニアなどの多孔質マトリックス物質、ならびにシリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア シリカ-アルミナ-マグネシア及びシリカ-マグネシア-ジルコニアなどの三元組成物と共に合成することができる。
【0044】
SSZ-115と無機酸化物マトリックスの相対的な比率は広範に変動させてもよく、SSZ-115の含有量は合成物の1~90重量%(例えば、2~80重量%)の範囲であり得る。
【実施例
【0045】
以下の実施例は、非限定的であることが意図される。
【0046】
実施例1
10.20gの脱イオン水、0.64gの50%NaOH水溶液、4.79gの16.72% 1-メチル-1-[5-(トリメチルアンモニオ)ペンチル]ピロリジニウム水酸化物溶液及び2.00gのCBV720 Y-ゼオライト粉末(Zeolyst International、SiO/Al モル比=30)を、テフロンライナー内で一緒に混合した。得られたゲルを均一になるまで撹拌した。次いで、ライナーに蓋をして、Parr steelオートクレーブ反応器内に配置した。次いでオートクレーブをオーブンに入れ、静置条件下、150℃で10日間加熱した。固体生成物を遠心分離によって回収し、脱イオン水で洗浄し、95℃で乾燥させた。
【0047】
合成されたままの生成物の粉末XRDは、図1に示すパターンを示し、生成物が、SSZ-115と呼ばれる新規モレキュラーシーブ相の純粋形であることを示した。合成されたままの生成物のSEM画像を図2に示し、これは、結晶の均一な場を示している。
【0048】
生成物は、誘導結合プラズマ(ICP)元素分析によって決定されるように、SiO/Al モル比20.9を有していた。
【0049】
実施例2
10.27gの脱イオン水、0.52gの50%NaOH水溶液、4.79gの16.72% 1-メチル-1-[5-(トリメチルアンモニオ)ペンチル]ピロリジニウム水酸化物溶液及び2.00gのCBV760 Y-ゼオライト粉末(Zeolyst International、SiO/Al モル比=60)を、テフロンライナー内で一緒に混合した。得られたゲルを均一になるまで撹拌した。次いで、ライナーに蓋をして、Parr steelオートクレーブ反応器内に配置した。次いでオートクレーブをオーブンに入れ、静置条件下、150℃で8日間加熱した。固体生成物を遠心分離によって回収し、脱イオン水で洗浄し、95℃で乾燥させた。
【0050】
得られた生成物を、粉末XRD及びSEMによって、純粋なSSZ-115モレキュラーシーブとして同定した。
【0051】
生成物は、ICP元素分析によって決定されるように、SiO/Al モル比55.9を有していた。
【0052】
実験例3
5.23gの脱イオン水、0.30gの50%NaOH水溶液、5.56gの16.72% 1-メチル-1-[5-(トリメチルアンモニオ)ペンチル]ピロリジニウム水酸化物溶液、0.25gの50%Reheis F-2000水酸化アルミニウム乾燥ゲル及び5.00gのLUDOX(登録商標)AS-30コロイド状シリカ(水中の30重量%懸濁液)をテフロンライナー内で一緒に混合した。得られたゲルを均一になるまで撹拌した。次いで、ライナーに蓋をして、Parr steelオートクレーブ反応器内に配置した。次いで、オートクレーブをオーブンに入れ、43rpmでタンブリングしながら160℃で18日間加熱した。固体生成物を遠心分離によって回収し、脱イオン水で洗浄し、95℃で乾燥させた。
【0053】
得られた生成物を、粉末XRD及びSEMによって、純粋なSSZ-115モレキュラーシーブとして同定した。
【0054】
生成物は、ICP元素分析によって決定されるように、SiO/Al モル比20.1を有していた。
【0055】
実施例4
3.14gの脱イオン水、0.28gの45%KOH水溶液、3.34gの16.72% 1-メチル-1-[5-(トリメチルアンモニオ)ペンチル]ピロリジニウム水酸化物溶液、0.15gの50%Reheis F-2000水酸化アルミニウム乾燥ゲル及び3.00gのLUDOX(登録商標)AS-30コロイド状シリカをテフロンライナー内で一緒に混合した。得られたゲルを均一になるまで撹拌した。次いで、ライナーに蓋をして、Parr steelオートクレーブ反応器内に配置した。次いで、オートクレーブをオーブンに入れ、43rpmでタンブリングしながら160℃で30日間加熱した。固体生成物を遠心分離によって回収し、脱イオン水で洗浄し、95℃で乾燥させた。
【0056】
得られた生成物を、粉末XRD及びSEMによって、純粋なSSZ-115モレキュラーシーブとして同定した。
【0057】
生成物は、ICP元素分析によって決定されるように、SiO/Al モル比20.0を有していた。
【0058】
実施例5
0.24gの50%NaOH水溶液、2.23gの16.72% 1-メチル-1-[5-(トリメチルアンモニオ)ペンチル]ピロリジニウム水酸化物溶液、0.20gの50%Reheis F-2000水酸化アルミニウム乾燥ゲル及び3.00gのLUDOX(登録商標)AS-30コロイド状シリカをテフロンライナー内で一緒に混合した。得られたゲルを均一になるまで撹拌した。次いで、ライナーに蓋をして、Parr steelオートクレーブ反応器内に配置した。次いで、オートクレーブをオーブンに入れ、43rpmでタンブリングしながら160℃で11日間加熱した。固体生成物を遠心分離によって回収し、脱イオン水で洗浄し、95℃で乾燥させた。
【0059】
得られた生成物を、粉末XRD及びSEMによって、純粋なSSZ-115モレキュラーシーブとして同定した。
【0060】
生成物は、ICP元素分析によって決定されるように、SiO/Al モル比12.5を有していた。
【0061】
実施例6
実施例1の合成されたままのモレキュラーシーブを、540℃に加熱した空気の流通下、1℃/分の速度で、マッフル炉内で焼成し、540℃で5時間保持し、冷却し、次いで粉末XRDで分析した。
【0062】
焼成生成物の粉末XRDは、図3に示すパターンを示し、有機構造指向剤を除去するための焼成後に物質が安定であることを示した。
【0063】
図4は、SSZ-25(MWW型フレームワーク、上部のXRDパターン)、SSZ-70(*-SVY型フレームワーク、下部のXRDパターン)及び焼成SSZ-115(中央のXRDパターン)の粉末XRDパターンの比較を示す。
【0064】
実施例7
焼成した実施例4のモレキュラーシーブ物質を、10mL(モレキュラーシーブ1gあたり)の1N硝酸アンモニウム溶液で95℃、2時間処理した。混合物を冷却し、溶媒をデカントして取り除き、同じプロセスを繰り返した。
【0065】
乾燥後、生成物(NH-SSZ-115)を、N吸着質を使用して、B.E.T.法による微細孔容積分析に供した。モレキュラーシーブは、0.12cm/gの細孔容積を有していた。

本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
[1]
焼成されたままの形態で、図3に示すパターンと実質的に同じ粉末X線回折パターンを有するモレキュラーシーブ。
[2]
モル濃度関係:
Al :(n)SiO
を有する組成を有し、式中、nが、5~100の範囲である、[1]に記載のモレキュラーシーブ。
[3]
モル濃度関係:
Al :(n)SiO
を有する組成を有し、式中、nが、10~60の範囲である、[1]に記載のモレキュラーシーブ。
[4]
合成されたままの形態で、図1に示すパターンと実質的に同じ粉末X線回折パターンを有するモレキュラーシーブ。
[5]
以下のモル濃度関係:
【表1】

を有する化学組成を有し、式中、Qが、1-メチル-1-[5-(トリメチルアンモニオ)ペンチル]ピロリジニウムジカチオンであり、Mが、第1族または第2族の金属である、[4]に記載のモレキュラーシーブ。
[6]
以下のモル濃度関係:
【表2】

を有する化学組成を有し、式中、Qが、1-メチル-1-[5-(トリメチルアンモニオ)ペンチル]ピロリジニウムジカチオンであり、Mが、第1族または第2族の金属である、[4]に記載のモレキュラーシーブ。
[7]
[4]に記載のモレキュラーシーブの合成方法であって、
(a)
(1)酸化ケイ素の供給源、
(2)酸化アルミニウムの供給源、
(3)第1族または第2族の金属(M)の供給源、
(4)1-メチル-1-[5-(トリメチルアンモニオ)ペンチル]ピロリジニウムジカチオンを含む構造指向剤(Q)、
(5)水酸化物イオン供給源、及び
(6)水
を含む反応混合物を提供し、ならびに
(b)前記反応混合物を、前記モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供することを含む、前記合成方法。
[8]
前記反応混合物が、モル比換算で以下の組成:
【表3】

を有する、[7]に記載の方法。
[9]
前記反応混合物が、モル比換算で以下の組成:
【表4】

を有する、[7]に記載の方法。
[10]
前記結晶化条件が、125℃~200℃の温度を含む、[7]に記載の方法。
[11]
有機化合物を含む原料から変換生成物への変換プロセスであって、前記原料を、[1]に記載のモレキュラーシーブを含む触媒に、有機化合物変換条件で接触させることを含む、前記変換プロセス。

図1
図2
図3
図4