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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】電動弁及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20230901BHJP
   F16K 47/02 20060101ALI20230901BHJP
   F25B 41/35 20210101ALI20230901BHJP
   F16K 1/42 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F16K47/02 D
F25B41/35
F16K1/42 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022067467
(22)【出願日】2022-04-15
(62)【分割の表示】P 2020172585の分割
【原出願日】2015-12-24
(65)【公開番号】P2022105334
(43)【公開日】2022-07-13
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 一也
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-281324(JP,A)
【文献】特開2015-143543(JP,A)
【文献】特開2005-221095(JP,A)
【文献】特開2017-89864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00-31/05
F16K 1/42,47/02
F25B 41/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次継手管が連通される弁室と二次継手管とを、弁ポートを介して連通する電動弁であって、前記弁ポートに、弁室側に設けられてニードル弁により開口面積が増減される第1ポートと、前記第1ポートを抜けた前記ニードル弁が挿入可能な、前記第1ポートより内径の大きな第2ポートと、前記第1ポートと前記第2ポートとを繋ぐ第1テーパ部を備えた電動弁において、
前記弁ポートに、前記二次継手管側に位置する第3ポートと、前記第2ポートと前記第3ポートとを繋ぐ第2テーパ部を備え、前記第1ポートの内径D1と前記第2ポートの内径D2と前記第3ポートの内径D3との関係がD1<D2<D3となっており、
前記第1ポート、前記第2ポート、及び前記第3ポートは、各々の軸線を中心とする円柱の側面の形状を有し、
前記軸線の方向について、前記第2ポートの長さが、当該第2ポートにおける前記二次継手管側の開口部から前記弁ポートにおける前記二次継手管側の開口部までの長さよりも短く、前記第1ポートから前記二次継手管にかけて流路の内径が拡大することを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記弁ポートにおける前記二次継手管側の開口部が、前記二次継手管の内周面よりも内側に位置し、かつ、前記二次継手管の弁室側の端部が、前記弁ポートにおける前記二次継手管側の開口部よりも前記弁室側に位置することを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記第2ポートの内径が、当該第2ポートの長さよりも大きく、
前記第3ポートの内径が、当該第3ポートの長さよりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動弁。
【請求項4】
冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮された前記冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮された前記冷媒を膨張させる絞り装置と、膨張した前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、
請求項1~3のうち何れか一項に記載の電動弁が、前記絞り装置として用いられている
ことを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機等において冷媒の流量を制御するニードル弁型の電動弁に関し、特に、ニードル弁に対する弁ポートの形状を改良した電動弁、及び、そのような電動弁を備える冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍サイクルにおいて、冷媒の流量を制御する電動弁から発生する、流体通過に伴う騒音がしばしば問題となることがある。このような騒音対策を施すようにした電動弁として、例えば特許5696093号公報(特許文献1)に開示されたものがある。
【0003】
特許文献1の電動弁は、弁ポートを第1ポートと第2ポートとで構成し、第1ポートと第2ポートとの間にテーパ部を設けたものである。さらに、第2ポートの内径を第1ポートの内径より僅かに大きくするとともに、第2ポートの長さを第1ポートの長さよりも十分に長くしたものである。
【0004】
そして、特許文献1のものでは、図5に示すように、ニードル弁aと第1ポートbの隙間を通った冷媒は、テーパ部cと第2ポートdを通って二次継手管側へ流れる。このとき、ニードル弁aと第1ポートbの隙間を通った冷媒の流れは、テーパ部cに倣って第2ポートdの内壁に沿う形で流れる。第2ポートdの内径は第1ポートbの内径より僅かに大きいだけであり、第1ポートbから第2ポートdに流れる間に、圧力を急激に回復させることがない。また、第2ポートdの長さが十分長いので、冷媒の流れは第2ポートdで整流化される。したがって、キャビテーションの破裂を抑制することができるとともに、冷媒の流れを安定化することができ、騒音を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許5696093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の発明も、騒音を低減する効果が得られるが、特定の冷媒状態において騒音を発生させる可能性がある。例えば、特許文献1のものでは、第2ポートにおいて流体の流れを整流できるが、この第2ポートは第1ポートよりも僅かに大きな内径であり、かつ、その長さが第1ポートより十分に長くなっている。このため、流体は整流化されるが、この第2ポート内での流速が減速せず、流速音(流速が高いことに起因する音)により騒音が発生する場合がある。特に、高負荷時には弁ポートの前後の差圧が高く、この流速音が騒音の大きな要因となっている。
【0007】
本発明は、弁ポートを改良することにより、騒音を低減した電動弁、及び、そのような電動弁を備える冷凍サイクルシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の電動弁は、一次継手管が連通される弁室と二次継手管とを、弁ポートを介して連通する電動弁であって、前記弁ポートに、弁室側に設けられてニードル弁により開口面積が増減される第1ポートと、前記第1ポートを抜けた前記ニードル弁が挿入可能な、前記第1ポートより内径の大きな第2ポートと、前記第1ポートと前記第2ポートとを繋ぐ第1テーパ部を備えた電動弁において、前記弁ポートに、前記二次継手管側に位置する第3ポートと、前記第2ポートと前記第3ポートとを繋ぐ第2テーパ部を備え、前記第1ポートの内径D1と前記第2ポートの内径D2と前記第3ポートの内径D3との関係がD1<D2<D3となっており、前記第1ポート、前記第2ポート、及び前記第3ポートは、各々の軸線を中心とする円柱の側面の形状を有し、前記軸線の方向について、前記第2ポートの長さが、当該第2ポートにおける前記二次継手管側の開口部から前記弁ポートにおける前記二次継手管側の開口部までの長さよりも短く、前記第1ポートから前記二次継手管にかけて流路の内径が拡大することを特徴とする。
また、他の電動弁は、一次継手管が連通される弁室と二次継手管とを、弁ポートを介して連通する電動弁であって、前記弁ポートに、弁室側に設けられてニードル弁により開口面積が増減される第1ポートと、前記第1ポートより内径の大きな第2ポートと、前記第1ポートと前記第2ポートとを繋ぐ第1テーパ部を備えた電動弁において、前記弁ポートに、前記二次継手管側に位置する第3ポートと、前記第2ポートと前記第3ポートとを繋ぐ第2テーパ部を備え、前記第1ポートの内径D1と前記第2ポートの内径D2と前記第3ポートの内径D3との関係がD1<D2<D3となっており、前記第1ポート、前記第2ポート、及び前記第3ポートは、各々の軸線を中心とする円柱の側面の形状を有し、前記軸線の方向について、前記第1ポートの長さをL1、前記第1テーパ部と前記第2ポートとの長さをL2、前記第2テーパ部と前記第3ポートとの長さをL3としたとき、1≦L3/L2≦5となっており、前記二次継手管の内側に、前記弁ポートの前記二次継手管側の開口部が位置することを特徴とする。
請求項2の電動弁は、請求項1に記載の電動弁であって、前記弁ポートにおける前記二次継手管側の開口部が、前記二次継手管の内周面よりも内側に位置し、かつ、前記二次継手管の弁室側の端部が、前記弁ポートにおける前記二次継手管側の開口部よりも前記弁室側に位置することを特徴とする。
請求項3の電動弁は、請求項1又は2に記載の電動弁であって、前記第2ポートの内径が、当該第2ポートの長さよりも大きく、前記第3ポートの内径が、当該第3ポートの長さよりも大きいことを特徴とする。
請求項4の冷凍サイクルシステムは、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮された前記冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮された前記冷媒を膨張させる絞り装置と、膨張した前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1~3のうち何れか一項に記載の電動弁が、前記絞り装置として用いられていることを特徴とする。
【0009】
電動弁は、
D2-D1≦D3-D2
となっていることが好適である。
【0010】
また、電動弁は、前記第1テーパ部のテーパ角をθ1、前記第2テーパ部のテーパ角をθ2、前記第1ポートの長さをL1、前記第1テーパ部と第2ポートとの長さをL2、前記第2テーパ部と前記第3ポートとの長さをL3としたとき、
1mm≦D1≦4.5mm、
60°≦θ1≦150°、
20°≦θ2≦90°、
0.1mm≦L1≦0.5mm、
1≦L2/L1≦39
1<L3/L2≦38
1.03≦D2/D1≦1.5
1.02≦D3/D2≦5.52
となっていることが好適である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1乃至3の電動弁及び請求項4の冷凍サイクルシステムによれば、第1ポートとニードル弁との隙間から流れる冷媒が第2ポートに流出したとき、第2ポート内で圧力を急激に回復させることがなく、流れを整流化して冷媒の流れを安定化することができ、キャビテーションの破裂を抑制することができる。さらに、第2ポートから第2テーパ部と第3ポートに流れるときに、流速が減速するので流速音を低減することができる。したがって、騒音を低減することができる。
【0012】
また、上記の好適な電動弁によれば、D2-D1≦D3-D2となっているので、第2ポートに対して、第2テーパ部から第3ポートにかけて大きく拡径するので、流速の減速効果が高くなり、さらに流速音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の電動弁の縦断面図である。
図2】本発明の実施形態の電動弁における弁ポート近傍の要部拡大縦断面図である。
図3】本発明の実施形態の電動弁における弁ポートの作用を説明する図である。
図4】本発明の実施形態の電動弁を用いた空気調和機の一例を示す図である。
図5】従来の電動弁の弁ポートの作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の電動弁の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は実施形態の電動弁の縦断面図、図2は実施形態の電動弁における弁ポート近傍の要部拡大縦断面図、図3は実施形態の電動弁における弁ポートの作用を説明する図、図4は実施形態の電動弁を用いた空気調和機の一例を示す図である。
【0015】
まず、図4に基づいて実施形態に係る空気調和機について説明する。空気調和機は、実施形態の電動弁10、室外ユニット100に搭載された室外熱交換器20、室内ユニット200に搭載された室内熱交換器30、流路切換弁40、圧縮機50を有しており、これらの各要素は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成している。この冷凍サイクルは本発明の電動弁を適用する冷凍サイクルの一例であり、本発明の電動弁は。ビル用のマルチエアコン等の室内機側の絞り装置等、他のシステムにも適用することができる。
【0016】
冷凍サイクルの流路は流路切換弁40により暖房モードおよび冷房モードの2通りの流路に切換えられ、暖房モードでは実線の矢印で示すように、圧縮機50で圧縮された冷媒が流路切換弁40から室内熱交換器30に流入され、室内熱交換器30から流出する冷媒が、管路60を通って電動弁10に流入される。そして、この電動弁10で冷媒が膨張され、室外熱交換器20、流路切換弁40、圧縮機50の順に循環される。冷房モードでは、破線の矢印で示すように、圧縮機50で圧縮された冷媒が流路切換弁40から室外熱交換器20に流入され、室外熱交換器20から流出する冷媒が電動弁10で膨張され、管路60を流れて室内熱交換器30に流入される。この室内熱交換器30に流入された冷媒は、流路切換弁40を介して圧縮機50に流入される。なお、この図4に示す例では、暖房モード時に、冷媒を電動弁10の一次継手管21から二次継手管22へ流す構成となっているが、配管の接続を逆にして、暖房モード時に、冷媒を二次継手管22から一次継手管21へ流す構成としてもよい。
【0017】
電動弁10は、冷媒の流量を制御する絞り装置として働き、暖房モードでは、室外熱交換器20が蒸発器として機能し、室内熱交換器30が凝縮器として機能し、室内の暖房がなされる。また、冷房モードでは、室外熱交換器20が凝縮器として機能し、室内熱交換器30が蒸発器として機能し、室内の冷房がなされる。
【0018】
次に、図1及び図2に基づいて実施形態の電動弁10について説明する。この電動弁10は、弁ハウジング1を有し、弁ハウジング1には円筒シリンダ状の弁室1Aが形成されている。また、弁ハウジング1には第1ポート11と、第2ポート12と、第3ポート13とが形成されている。また、第1ポート11と第2ポート12との間に第1テーパ部14が形成され、第2ポート12と第3ポート13との間に第2テーパ部15が形成されている。さらに、弁ハウジング1には、側面側から弁室1Aに連通する一次継手管21が取り付けられるとともに、弁室1Aの軸線X方向の片側端部に二次継手管22が取り付けられている。そして、第1ポート11、第1テーパ部14、第2ポート12、第2テーパ部15及び第3ポート13を介して、弁室1Aと二次継手管22とが導通可能となっている。
【0019】
弁ハウジング1の上部には支持部材3が取り付けられている。支持部材3には軸線X方向に長いガイド孔3aが形成されており、このガイド孔3aには円筒状の弁ホルダ4が軸線X方向に摺動可能に嵌合されている。弁ホルダ4は弁室1Aと同軸に取り付けられ、この弁ホルダ4の下端部には端部にニードル弁5aを有する弁体5が固着されている。また、弁ホルダ4内には、バネ受け41が軸線X方向に移動可能に設けられ、バネ受け41と弁体5との間には圧縮コイルバネ42が所定の荷重を与えられた状態で取り付けられている。
【0020】
弁ハウジング1の上端には、ステッピングモータ6のケース61が溶接等によって気密に固定されている。ケース61内には、外周部を多極に着磁されたマグネットロータ62が回転可能に設けられ、このマグネットロータ62にはロータ軸63が固着されている。ロータ軸63の上端部は、ケース61の天井部から垂下された円筒状のガイド64内に回転可能に嵌合されている。また、ケース61の外周には、ステータコイル65が配設されており、このステータコイル65にパルス信号が与えられることにより、そのパルス数に応じてマグネットロータ62が回転される。そして、このマグネットロータ62の回転によってマグネットロータ62と一体のロータ軸63が回転する。なお、ガイド64の外周にはマグネットロータ62に対する回転ストッパ機構66が設けられている。
【0021】
弁ホルダ4の上端部はステッピングモータ6のロータ軸63の下端部に係合され、弁ホルダ4はロータ軸63によって回転可能に吊り下げた状態で支持されている。また、ロータ軸63には雄ねじ部63aが形成されており、この雄ねじ部63aは支持部材3に形成された雌ねじ部3bに螺合している。
【0022】
以上の構成により、マグネットロータ62の回転に伴ってロータ軸63は軸線X方向に移動する。この回転に伴うロータ軸63の軸線X方向移動によって弁ホルダ4と共に弁体5が軸線X方向に移動する。そして、弁体5は、ニードル弁5aの部分で第1ポート11の開口面積を増減し、一次継手管21から二次継手管22へ流れる流体の流量を制御する。
【0023】
第1ポート11、第2ポート12及び第3ポート13は、軸線Xを中心とする円柱の側面の形状をしており、図2に示すように、第1ポート11の内径D1はニードル弁5aの外周に合わせた寸法である。また、第2ポート12の内径D2は第1ポート11の内径D1より僅かに大きな寸法である。第3ポート13の内径D3は第2ポート12の内径D21より大きな寸法で、かつ、二次継手管22の内径D4よりも小さな寸法となっている。なお、図2において各径D1~D4には直径を示す「φ」を付記してある。第1ポート11の長さL1は内径D1に比して小さな寸法であり、第1テーパ部14と第2ポート12とを合わせた長さL2は第1ポート11の長さL1より大きな寸法となっている。第2テーパ部15と第3ポート13とを合わせた長さL3は第1テーパ部14と第2ポート12とを合わせた長さL2より大きな寸法となっている。
【0024】
第1テーパ部14及び第2テーパ部15は、軸線Xを中心とする円錐台の側面の形状をしており、第1テーパ部14の内側面は第1ポート11から第2ポート12にかけて内径が拡大する形状、第2テーパ部15の内側面は第2ポート12から第3ポート13にかけて内径が拡大する形状をしている。そして、第1テーパ部14の開き角度であるテーパ角θ1、第2テーパ部15の開き角度であるテーパ角θ2は適宜設定されている。なお、これらの寸法及び角度は図2に図示のものには限定されるものではなく、これらの寸法及び角度の条件については後述する。
【0025】
図3に示すように、ニードル弁5aと第1ポート11の隙間を通った冷媒は、第1テーパ部14、第2ポート12、第2テーパ部15及び第3ポート13を通って二次継手管22へ流れる。このとき、ニードル弁5aと第1ポート11の隙間は最も狭い箇所であり、ここで流速は最大になるが、第1ポート11の長さL1は可能な限り短くなっており、この隙間を通った冷媒の流れは、第1テーパ部14に倣って直ぐに第2ポート12の内壁に沿う形で流れる。第2ポート12の内径D2は第1ポート11の内径D1より僅かに大きいだけであり、第1ポート11から第2ポート12に流れる間に、圧力を急激に回復させることがない。また、第2ポート12の長さは長いので、冷媒の流れは第2ポート12で整流化される。したがって、キャビテーションの破裂を抑制することができるとともに、冷媒の流れを安定化することができる。
【0026】
第2ポート12を通った冷媒の流れは、第2テーパ部15に倣って圧力を回復すなわち高くしながら第3ポート13に流れる。この第3ポート13の内径D3は第2ポート12の内径D2より大きいので、第2テーパ部15に倣って流れる間に流速が減速される。すなわち、第2ポート12である程度整流化しながら、直ぐに流速を減速するので、流速音が低減する。さらに、第2テーパ部15を通って減速された冷媒の流れは、第3ポート13に流れるが、冷媒の流れは第2ポート12ですでに整流されているので、この第3ポート13内では、冷媒の流れは乱れにくく、キャビテーションの破裂を抑制することができる。
【0027】
このように、第2ポート12である程度整流化し、第2テーパ部15を介して第3ポート13に流すことで、第2テーパ部15で整流化を保ったまま流速を減速することができる。これにより、第3ポート13における流れの乱れを低減してキャビテーションの破裂を抑制でき、かつ、第2テーパ部15で流速を減速して流速音を低減できる。すなわち、第2ポート12の長さは特許文献1のものに比して短くなっている分、流速音の低減を図ることができる。
【0028】
実施形態における電動弁10は、一次継手管21と二次継手管22との圧力差が高い場合に、流速音の低減効果が高いものであり、第1ポート11、第2ポート12、第3ポート13、第1テーパ部14、第2テーパ部15、及び二次継手22の各部の寸法及び角度は以下の条件を満たすように設定されている。
【0029】
以下に、一次継手管21と二次継手管22との圧力差が高い場合に、流速音の低減効果が高い実施形態の各部の寸法及び角度の条件を示す。第1ポート11の内径D1は、
1mm≦D1≦4.5mm
であり、第2ポート12の内径D2は、
1.15mm≦D2≦4.9mm
であり、第3ポート13の内径D3は、
4.6mm≦D3≦6.35mm
であり、二次継手22の内径D4は、
6.35mm≦D4
である。
【0030】
また、第1テーパ部14のテーパ角θ1は、
60°≦θ1≦150°
の範囲であり、第2テーパ部15のテーパ角θ2は、
20°≦θ2≦90°
の範囲である。
【0031】
また、第1ポート11の長さL1は、
0.1mm≦L1≦0.5mm
であり、このL1は短いほど騒音が低下する。第1テーパ部14と第2ポート12の長さL2は、
0.5mm≦L2≦3.9mm
であり、これらの長さL1,L2に組み合わせは、L1+L2が、
1mm≦L1+L2≦4mm
となる条件により設定されている。また、第1ポート11の長さL1と、第1テーパ部14と第2ポート12の長さL2と、第2テーパ部15と第3ポート13の長さL3の総和L1+L2+L3は、
6mm≦L1+L2+L3≦23mm
である。
【0032】
また、第1テーパ部14と第2ポート12の長さL2と、第1ポート11の長さL1の比L2/L1は、
1≦L2/L1≦39
の範囲であり、第2テーパ部15と第3ポート13の長さL3と、第1テーパ部14と第2ポート12の長さL2の比L3/L2は、
0.57<L3/L2≦38(好ましくは、1<L3/L2≦38)
の範囲であり、第2ポート12の内径D2と第1ポート11の内径D1の寸法比D2/D1は、
1.03≦D2/D1≦1.5
の範囲であり、第3ポート13の内径D3と第2ポート12の内径D2の寸法比D3/D2は、
1.02≦D3/D2≦5.52
の範囲である。
【0033】
次に、実施形態の電動弁についての各寸法比と騒音低減の実測例について説明する。この実測例は、一次継手管21内の圧力が2.8~3.4(MPa)で、二次継手管22内の圧力が1.2~1.8(MPa)とした運転条件で、実施形態の電動弁で測定した騒音と、特許文献1の電動弁(その条件)において測定した騒音と対比したものである。すなわち、高負荷時で流速音が発生し易い条件において騒音低減の効果が特に顕著であることを示す実測例である。その実測例を以下の表1乃至表6に示す。表1乃至表6において、特許文献1の電動弁における騒音よりも、2dB以上音圧が低下した場合を「○○○」で示し、1~2dB音圧が低下した場合を「○○」で示している。また、音圧の低下が1dB以下の場合を「○」で示している。なお、音圧はA特性を用いて評価している。
【0034】
表1はL2/L1とθ1の関係を示している。
【0035】
【表1】
【0036】
表2はL2/L1とD2/D1の関係を示している。
【0037】
【表2】
【0038】
表3はL2/L1とθ2の関係を示している。
【0039】
【表3】
【0040】
表4はL2/L1とD3/D2の関係を示している。
【0041】
【表4】
【0042】
表5はD3/D2とθ2の関係を示している。
【0043】
【表5】
【0044】
表6はD3/D2とL3/L2の関係を示している。
【0045】
【表6】
【0046】
これらの表から判るように、第3ポート及び第2テーパ部を設けることにより、従来よりも騒音の低減が実現されている。また、一次継手管21と二次継手管22との圧力差が高い場合でも、「○○」及び「○○○」の範囲にすれば、1dB以上騒音を低減することができ、より顕著な効果を得ることができる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1 弁ハウジング
1A 弁室
11 第1ポート
12 第2ポート
13 第3ポート
14 第1テーパ部
15 第2テーパ部
21 一次継手管
22 二次継手管
3 支持部材
4 弁ホルダ
5 弁体
5a ニードル弁
6 ステッピングモータ
X 軸線
図1
図2
図3
図4
図5