(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】滑り覚模擬装置及び制御システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20230901BHJP
A63F 13/285 20140101ALI20230901BHJP
【FI】
G06F3/01 560
A63F13/285
(21)【出願番号】P 2022523510
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(86)【国際出願番号】 CN2020127480
(87)【国際公開番号】W WO2021155689
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】202010083750.5
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517392436
【氏名又は名称】▲騰▼▲訊▼科技(深▲セン▼)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100150197
【氏名又は名称】松尾 直樹
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 宇
(72)【発明者】
【氏名】▲蒋▼ 若萱
(72)【発明者】
【氏名】黎 雄
(72)【発明者】
【氏名】姜 ▲シン▼洋
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 正友
【審査官】菅原 浩二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05562572(US,A)
【文献】特開2017-084337(JP,A)
【文献】特開2018-008250(JP,A)
【文献】特開2010-191605(JP,A)
【文献】特開2006-285785(JP,A)
【文献】特開平09-081026(JP,A)
【文献】特表2021-519476(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0148432(US,A1)
【文献】国際公開第2019/180677(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0119821(KR,A)
【文献】特表2000-516829(JP,A)
【文献】西村 奈令大 他,高品位な摩擦感呈示のためのウェアラブルな遭遇型触覚呈示デバイス,第18回 日本バーチャルリアリティ学会大会論文集 [CD-ROM],日本,日本バーチャルリアリティ学会,2013年09月18日,第386-389頁
【文献】清水 俊介 他,ベルトの回転を利用した滑り感覚ディスプレイの開発,第17回日本バーチャルリアリティ学会大会 論文集 [CD-ROM] ,日本,日本バーチャルリアリティ学会,2012年09月12日,第457-458頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
A63F 13/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座と第1模擬アセンブリと第2模擬アセンブリとを備え、前記第1模擬アセンブリと前記第2模擬アセンブリとは何れも前記台座に設けられ、
前記第1模擬アセンブリは第1同期ベルトと2つの第1同期プーリーと第1モータとを備え、前記第1同期ベルトは2つの前記第1同期プーリーに張設され、前記第1モータは、2つの前記第1同期プーリー及び前記第1同期ベルトを回動駆動するように、一方の前記第1同期プーリーに伝動接続され、
前記第2模擬アセンブリは第2同期ベルトと2つの第2同期プーリーと第2モータとを備え、前記第2同期ベルトは2つの前記第2同期プーリーに張設され、前記第2モータは、2つの前記第2同期プーリー及び前記第2同期ベルトを回動駆動するように、一方の前記第2同期プーリーに伝動接続され、
前記第1同期ベルトは前記第2同期ベルトの内側に位置し、
前記第1同期ベルトと前記第2同期ベルトとが互いに対して摺動するように、前記第1同期ベルトにおける少なくとも1つの平直部の外面
が前記第2同期ベルトにおける平直部の内面に接触し、前記第1同期ベルトと前記第2同期ベルトはそれぞれの回動軸方向が異なる、滑り覚模擬装置。
【請求項2】
前記第1同期ベルトと前記第2同期ベルトとの回動軸方向が互いに垂直である、請求項1に記載の滑り覚模擬装置。
【請求項3】
前記第1同期ベルトの外面に凹凸模様が設けられている、請求項1に記載の滑り覚模擬装置。
【請求項4】
前記第2同期ベルトの厚みが1mmより小さい、請求項1に記載の滑り覚模擬装置。
【請求項5】
前記第2同期ベルトは内面が滑らかであるゴム材質である、請求項1に記載の滑り覚模擬装置。
【請求項6】
2つの前記第1同期プーリーと2つの前記第2同期プーリーは何れも柱形状である、請求項1に記載の滑り覚模擬装置。
【請求項7】
前記台座は底板と、2つの外側板と、2つの内側板と、を備え、
2つの前記外側板は平行且つ対向して設けられ、両者は何れも前記底板に固定接続され、2つの前記第2同期プーリーは何れも2つの前記外側板間に回動可能に設けられ、前記第2モータは前記底板に固定されるとともに、前記第2同期ベルトの外側に位置し、
2つの前記内側板は平行且つ対向して設けられ、2つの前記内側板は2つの前記外側板間に位置し、2つの前記内側板は2つの前記外側板に固定接続され、2つの前記第1同期プーリーは2つの前記内側板間に回動可能に設けられ、前記第1モータは一方の前記内側板に固定接続され、前記第1モータは前記第1同期ベルトの内側に位置する、請求項1に記載の滑り覚模擬装置。
【請求項8】
メインコントローラと、圧力センサと、請求項1から7の何れか一項に記載の滑り覚模擬装置とを備え、
前記メインコントローラは前記滑り覚模擬装置の前記第1モータ及び前記第2モータに電気的に接続され、前記メインコントローラは制御先の滑り覚データを受信するとともに、前記第1モータ及び前記第2モータの制御信号に変換することで、前記第1モータ及び前記第2モータの回転速度を制御し、
前記圧力センサは前記滑り覚模擬装置に設けられ、前記メインコントローラは前記圧力センサに電気的に接続され、前記メインコントローラは前記圧力センサの圧力データを受信するとともに、前記制御先の制御信号に変換する、制御システム。
【請求項9】
前記制御システムは、マスタ制御モジュールをさらに備え、前記マスタ制御モジュールは、マスタPIDコントローラと、前記第1モータの実際の回転速度を取得するように構成される第1センサと、前記第2モータの実際の回転速度を取得するように構成される第2センサとを備え、前記第1センサ及び第2センサは何れも前記マスタPIDコントローラに電気的に接続され、前記メインコントローラは前記マスタPIDコントローラを介して前記第1モータ及び前記第2モータに電気的に接続され、
前記マスタPIDコントローラは、前記第1センサ及び第2センサの感知データに基づいて、前記メインコントローラから前記第1モータ及び前記第2モータへ送信する制御信号を調整した後、前記第1モータ及び前記第2モータに出力する、請求項8に記載の制御システム。
【請求項10】
前記制御システムは、スレーブ制御モジュールをさらに備え、前記スレーブ制御モジュールは、スレーブPIDコントローラと、制御先の圧力を感知するように構成されるスレーブセンサとを備え、前記メインコントローラは前記スレーブPIDコントローラを介して前記スレーブセンサに電気的に接続され、
前記スレーブPIDコントローラは前記圧力センサ及び前記スレーブセンサの感知データに基づいて、前記メインコントローラから送信された圧力制御信号を調整した後、前記制御先に出力する、請求項8に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年2月07日に中国特許庁に提出された、出願番号が第202010083750.5号であり、発明の名称が「滑り覚模擬装置及び制御システム」である中国特許出願に基づく優先権を主張するものであり、該中国特許出願の全内容を参照として本出願に援用する。
【0002】
本出願は、遠隔操作制御分野に関し、特に、滑り覚模擬装置及び制御システムに関する。
【背景技術】
【0003】
ユーザはロボット又はゲームのキャラクタなどの制御先を遠隔操作する際に、ロボット又はゲームのキャラクタなどの制御先は運動中に触覚が生じ、ユーザに制御先の触覚を感知させるために、触覚を模擬する必要がある。従来の触覚模擬アセンブリは殆ど圧力触覚(圧覚と略称する)に対するものであり、滑り触覚(滑り覚と略称する)に対する装置が少ない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施例は、台座と第1模擬アセンブリと第2模擬アセンブリとを備え、前記第1模擬アセンブリと前記第2模擬アセンブリとは何れも前記台座に設けられ、
前記第1模擬アセンブリは第1同期ベルトと2つの第1同期プーリーと第1モータとを備え、前記第1同期ベルトは2つの前記第1同期プーリーに張設され、前記第1モータは、2つの前記第1同期プーリー及び前記第1同期ベルトを回動駆動するように、一方の前記第1同期プーリーに伝動接続され、
前記第2模擬アセンブリは第2同期ベルトと2つの第2同期プーリーと第2モータとを備え、前記第2同期ベルトは2つの前記第2同期プーリーに張設され、前記第2モータは、2つの前記第2同期プーリー及び前記第2同期ベルトを回動駆動するように、一方の前記第2同期プーリーに伝動接続され、
前記第1同期ベルトは前記第2同期ベルトの内側に位置し、前記第1同期ベルトにおける少なくとも1つの平直部の外面は前記第2同期ベルトにおける平直部の内面に接触し、前記第1同期ベルト及び前記第2同期ベルトはそれぞれの回動軸方向が異なる、滑り覚模擬装置を提供する。
【0005】
一方では、本発明は、メインコントローラと圧力センサと上記した滑り覚模擬装置とを備え、
前記メインコントローラは前記滑り覚模擬装置の第1モータ及び第2モータに電気的に接続され、前記メインコントローラは制御先の滑り覚データを受信するとともに前記第1モータ及び前記第2モータの制御信号に変換することで、前記第1モータ及び前記第2モータの回転速度を制御し、
前記圧力センサは前記滑り覚模擬装置に設けられ、前記メインコントローラは前記圧力センサに電気的に接続され、前記メインコントローラは前記圧力センサの圧力データを受信するとともに、制御先の制御信号に変換する、制御システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本出願の実施例に係る滑り覚模擬装置の構成概略図である。
【
図2】
図1における滑り覚模擬装置の平面図である。
【
図3】
図2における滑り覚模擬装置の第2同期ベルトが外された様子を示す平面図である。
【
図4】
図1における滑り覚模擬装置の分解図である。
【
図5】本出願の実施例における制御システムの制御原理図である。
【
図6】本出願の実施例における制御システムのマスタ制御モジュールの制御原理図である。
【
図7】本出願の実施例における制御システムのスレーブ制御モジュールの制御原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本出願の技術案をより明確に説明するために、上記で、実施態様に用いる必要がある図面を簡略に記載している。当然ながら、上記に記載の図面は、本出願の一部の実施態様にすぎず、当業者にとって、創造的な労力を払わなくても、これらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【0008】
以下では本願の実施形態における図面を参照しながら、本願の実施形態における技術案を明確且つ完全に説明する。
【0009】
本願の上記目的、特徴及び利点をより明確に理解するために、以下では、図面及び発明を実施するための形態を参照しながら本願を詳細に説明する。なお、衝突しない場合、本願の実施形態及び実施形態における特徴は互いに組み合わせることができる。
【0010】
本願を十分に理解するために、以下の記載には、具体的な詳細が多く記載されるが、記載された実施形態は本願の一部の実施形態に過ぎず、全部のものではない。当業者が本願の実施形態に基づいて創造的な労働を払わない前提で得た他の実施形態は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0011】
また、以下の各実施例の説明は図面を参照しながら本願が実施可能な特定の実施例を例示するためのものである。本願において言及される方向用語、例えば、「長い」、「左右」、「上下」などは、図面を参照する場合の方向に過ぎず、したがって、使用される方向用語は本願をよりよく、より明確に説明・理解するためであり、言及される装置又は素子が特定の方位を有し、特定の方位で構造や操作しなければならないことを指示や示唆するわけではないため、本願を限定するものと解され得ない。特に明確な規定や限定がない限り、用語「取り付け」、「連結」、「接続」について広義に理解すべきであり、例えば、固定接続であってもよく、着脱可能に接続されてもよく、又は一体に接続されてもよく、機械的接続であってもよく、直接連結してもよく、中間媒体を介して間接的に連結してもよく、両素子の内部が連通してもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて本願における上記用語の具体的な説明意味を理解することができる。
【0012】
従来のせん断力表示装置において、1つ又は複数の二次元又は三次元空間で移動する接触部材上で皮膚のせん断力が発生し得る。接触制御器での模擬運動は、制御対象の様々な方面をユーザに反映することができ、そのため、ハンドルによる模擬ゲームにおける仮想触感として用いることができ、ユーザのゲーム体験を向上させる。該態様はゲームにおける物体の運動及びその速度による振動感を模擬することができるが、移動範囲が非常に制限され、且つ単一の方向に垂直に移動しかできず、同一の平面における全方向運動を反映することができず、しかも構造が複雑で、加工しにくい。
【0013】
これに鑑みて、本願の実施例は滑り覚模擬装置及び制御システムを提供し、遠隔操作中に滑り触覚を模擬し、ユーザに複数の方向、速度における滑りを同期的に感知させることができる。
【0014】
図1を参照すると、本出願の実施例は、滑り覚模擬装置を提供し、ユーザ(マスタ)が制御先装置(例えば、ロボット)を操作しているとき、ロボットの指先の触覚センサにより提供される滑り触覚のフィードバックを模擬し、ユーザにロボットが把持している物体の滑り方向及び速度を感知させることができる。
【0015】
滑り覚模擬装置は、台座300と第1模擬アセンブリ100と第2模擬アセンブリ200とを備え、第1模擬アセンブリ100と第2模擬アセンブリ200とは何れも台座300に設けられる。第1模擬アセンブリ100と第2模擬アセンブリ200とは何れも同期ベルト構造である。具体的には、
図2、
図3及び
図4に示すように、第1模擬アセンブリ100は第1同期ベルト11と2つの第1同期プーリー12と第1モータ13とを備え、第1同期ベルト11は2つの第1同期プーリー12に張設され、第1モータ13は、2つの第1同期プーリー12及び第1同期ベルト11を回動駆動するように、一方の第1同期プーリー12に伝動接続され、第2模擬アセンブリ200は第2同期ベルト21と2つの第2同期プーリー22と第2モータ23とを備え、第2同期ベルト21は2つの第2同期プーリー22に張設され、第2モータ23は、2つの第2同期プーリー22及び第2同期ベルト21を回動駆動するように、一方の第2同期プーリー22に伝動接続される。
【0016】
第1同期ベルト11は第2同期ベルト21の内側に位置し、第1同期ベルト11における少なくとも1つの平直部は第2同期ベルト21の平直部に接触し、第1同期ベルト11及び第2同期ベルト21はそれぞれの回動軸方向が異なる。
【0017】
ここで、第1同期ベルト11が2つの第1同期プーリー12に張設された後、第1同期ベルト11は2つの第1同期プーリー12にそれぞれ接触する2つの円弧部、2つの第1同期プーリー12間に位置する2つの平直部を形成すると理解可能である。相応には、第2同期ベルト21も2つの円弧部と2つの平直部を有する。第1同期ベルト11の2つの平直部のうち少なくとも1つの平直部が第2同期ベルト21の平直部に接触し、ユーザの指がこの第2同期ベルト21の平直部に置かれる場合、第1同期ベルト11の前記平直部の移動が第2同期ベルト21を介してユーザの指に伝達可能であり、ユーザに第1同期ベルト11の摺動を感じさせる。第1同期ベルト11と第2同期ベルト21とは、面と面との接触であり、接触面積を増加させ、ユーザが滑りを感知しやすいようにすることができる。本実施例において、第1同期ベルト11における上方に位置する平直部(即ちユーザの指に近くて台座から離れる平直部)のみは第2同期ベルト21の平直部に接触することで、第1同期ベルト11と第2同期ベルト21との間の摩擦力を減少させ、摩擦力による第1同期ベルト及び第2同期ベルトの速度への影響を減少させ、滑り覚の正確性を確保する。ここでは、他の実施態様において、第1同期ベルトの2つの平直部は、それぞれ第2同期ベルトの2つの平直部に接触してもよい。
【0018】
第1同期ベルト11及び第2同期ベルト21はそれぞれの回動軸方向が異なり、即ち、それぞれの回動軸方向が互いに平行ではなく、ある角度で交差していることで、第1同期ベルト11と第2同期ベルト21の摺動方向には、成す角があり、ユーザの指が第2同期ベルト21に置かれているとき、第1同期ベルト11及び第2同期ベルト21の摺動を同時に感じ、また第1同期ベルト11及び第2同期ベルト21の両者の摺動の重なりによって、実際の滑りの全体方向及び速度を判断することができる。
【0019】
本実施例において、第1同期ベルト11と第2同期ベルト21は、それぞれの回動軸方向が互いに垂直であり、実際の滑りの全方向及び速度を横方向及び縦方向の両方向の速度に分解することができ、第1同期ベルト11及び第2同期ベルト21はそれぞれ縦方向及び横方向の滑り速度を模擬し、アルゴリズムを単純化することができ、多方向の模擬に役立つ。勿論、他の実施態様において、第1同期ベルト11と第2同期ベルト21はそれぞれの回動軸方向が他の角度で交差してもよく、両者が平行ではなければ、如何なる方向の速度を合成することができる。
【0020】
第1同期ベルト11の摺動が第2同期ベルト21を介して効果的にユーザに伝達され得るように、第1同期ベルト11の外面には、凹凸模様が設けられている。さらに、具体的には、本実施例において、第1同期ベルト11に両面歯付きのゴムベルトを使用し、内面歯を利用することで、第1同期ベルト11に2つの第1同期プーリー12と効果的に噛合させて伝動させることができ、外面歯を利用することで、ユーザに顕著な表面凸模様の触感を与えることができ、第2同期ベルト21と識別しやすくなる。
【0021】
第2同期ベルト21の厚みをできるだけ減少させるように、第2同期ベルト21の厚みを1mmより小さくすることで、第1同期ベルト11を介して第1同期ベルト11の摺動をユーザに感知させやすくなる。
【0022】
第2同期ベルト21は内面が滑らかであるゴム材質であり、第1同期ベルト11と接触する時の摩擦力を小さくすることができるとともに、2つの第2同期プーリー22との間の効果的な伝動を同時に満たすことができる。
【0023】
本出願の滑り覚模擬装置は第1同期ベルト11と第2同期ベルト21が協働する2つの同期ベルト構造を採用して、無限に回動することができ、変位範囲が制限されず、連続的な滑り覚模擬を提供することができ、2方向の摺動合成により、方向、速度の異なる滑り模擬を実現することができ、構成が単純であり、製造しやすく、コストが低く、ユーザに制御先装置の滑り速度と方向をリアルタイムに感じさせることで、制御先に制御信号をリアルタイムに送信して被制御端の滑り速度を変更する。
【0024】
本実施例において、
図4に示すように、第1同期プーリー12及び第2同期プーリー22は何れも柱形状であることにより、第1同期プーリー12及び第2同期プーリー22の幅(回動軸方向のサイズ)を相対的に大きくすることができ、第1同期ベルト及び第2同期ベルトの両者が交差接触した接触面積が相対的に大きくなり、ユーザが滑りを感知しやすくなる。
【0025】
図3及び
図4に示すように、台座300は底板30と2つの外側板32とを備え、2つの外側板32は平行且つ対向して設けられ、且つ両者は何れも底板30に固定接続され、2つの第2同期プーリー22は何れも2つの外側板32間に回動可能に設けられ、一方の第2同期プーリー22と外側板32との間に、第2張力機構が設けられる。第2張力機構は第2滑り子251と第2止めネジ252とを備える。外側板32には第2摺動孔325が設けられ、第2滑り子251は、第2摺動孔325内に摺動可能に設けられ、その摺動方向が2つの第2同期プーリー22の配置方向である。第2止めネジ252は外側板32に螺着されるとともに、第2摺動孔325内に延在し、第2滑り子251と連結される。第2同期プーリー22は第2回動軸を介して第2滑り子251に回動可能に接続される。第2止めネジ252と第2滑り子251との協働により、第2同期プーリー22を移動させ、第2同期ベルト21の張り度合いを調整することができ、第1同期ベルト11と第2同期ベルト21との間の接触の密着度を調節しやすくなる。
【0026】
図1及び
図2に示すように、第2モータ23は底板30に固定され、第2モータ23は、第2同期ベルト21の内側に第1同期ベルト11が設けられるように、第2同期ベルト21の外側に位置する。より具体的には、第2モータ23は2つの外側板32間にも位置し、且つ第2モータ23と2つの第2同期プーリー22は並設されることで、空間を節約し、装置全体の構造が小型化になる。第2モータ23と一方の第2同期プーリー22との間は第2歯車組24を介して伝動されることで、両者間の効果的な伝動が図れ、ここで、他の実施態様において、第2モータ23と第2同期プーリー22との間は、またベルト伝動、チェーン伝動などの他の伝動方式により両者間の効果的な伝動を実現することができる。
【0027】
図3及び
図4に示すように、台座300は2つの内側板31をさらに備え、2つの内側板31は平行且つ対向して設けられ、2つの内側板31は2つの外側板32間に位置し、2つの内側板31は2つの外側板32に固定接続される。2つの第1同期プーリー12は2つの内側板31間に回動可能に設けられ、その一方の第1同期プーリー12と内側板31との間に、第1張力機構が設けられる。本実施例において、内側板31は外側板32に対して垂直に設けられることで、第1同期ベルト11と第2同期ベルト21との回動軸方向が互いに垂直になるようにする。
【0028】
図4及び
図1に示すように、第1張力機構は、第1滑り子151と第1止めネジ152とを備える。内側板31には第1摺動孔(図示せず)が設けられ、第1滑り子151は、第1摺動孔内に摺動可能に設けられ、その摺動方向が2つの第1同期プーリー12の配置方向である。第1止めネジ152は外側板32及びの内側板31に螺着されるとともに、第1摺動孔内に延在し、第1滑り子151と連結される。第1同期プーリー12は第1回動軸を介して第1滑り子151に回動可能に接続される。第1止めネジ152と第1滑り子151との協働により、第1同期プーリー12を移動させ、第1同期ベルト11の張り度合いを調整することができ、第1同期ベルト11と第2同期ベルト21との間の接触の密着度を調節しやすくなる。
【0029】
図3及び
図4に示すように、第1モータ13は一方の内側板31に固定接続され、第1モータ13は第1同期ベルト11の内側に位置し、構造が相対的に小型化になる。第1モータ13は第1歯車組14を介して一方の第1同期プーリー12に伝動接続される。ここで、他の実施態様において、第1モータ13と第1同期プーリー12との間は、またベルト伝動、チェーン伝動などの他の伝動方式により両者間の効果的な伝動を実現することができる。
【0030】
第1モータ13及び第2モータ23は何れも直流モータを採用することができ、電圧を制御することで、両者から出力される回転速度を制御することができ、第1同期ベルト11及び第2同期ベルト21の回転速度を制御することができる。
【0031】
本出願の実施例に係る滑り覚模擬装置全体は構造が単純で且つ小型化になり、体積が小さく、製造しやすく、コストが低い。
【0032】
本出願の実施例は、メインコントローラと、滑り覚模擬装置に設けられる圧力センサと、上記した滑り覚模擬装置と、を備える制御システムをさらに提供する。メインコントローラは、滑り覚模擬装置の第1モータ13及び第2モータ23に電気的に接続され、メインコントローラは制御先の滑り覚データを受信するとともに、第1モータ13及び第2モータ23の制御信号に変換することで、第1モータ13及び第2モータ23の回転速度を制御し、圧力センサは滑り覚模擬装置に設けられ、メインコントローラは圧力センサに電気的に接続され、メインコントローラは圧力センサの圧力データを受信するとともに、制御先の制御信号に変換する。
【0033】
メインコントローラは制御先からの滑り方向及び速度の滑り覚データの伝送を受けた後、メインコントローラは制御先の滑り方向及び速度を第1モータ13及び第2モータ23の電圧制御信号に変換することで、第1同期ベルト11及び第2同期ベルト21が相応する回転速度になるように、第1モータ13及び第2モータ23から出力された回転速度を制御することができる。ユーザの指は滑り覚模擬装置の第2同期ベルト21の表面をタッチすると、制御先の滑りを感じるとともに、滑り覚模擬装置の第2同期ベルト21に適切な押圧力を付勢することができ、圧力センサがユーザにより付勢された圧力を感知し、またこの圧力をメインコントローラによって制御先に出力することで、制御先は被挟持物に相応する圧力を付勢し、被挟持物を締め付け、滑りによる挟持や把持動作の失敗を防止する。
【0034】
本実施例において、圧力センサは台座300の底部に設けられ、ユーザは第2同期ベルト21に圧力を付勢した後、滑り覚模擬装置全体に圧力を付勢し、台座300の底部の圧力センサを用いて滑り覚模擬装置全体にかかる圧力を感知することができる。他の実施態様において、圧力センサは、第1同期ベルト11に設けられてもよく、ユーザが第2同期ベルト21に圧力を付勢した後、圧力が第1同期ベルト11を介して第1同期ベルト11の内側に位置する圧力センサに伝達されることで、圧力センサはユーザにより付勢された圧力値を感知することができる。ここで、圧力センサはユーザにより付勢された圧力を感知できればよく、圧力センサは必要に応じて滑り覚センサの他の適切な位置に設けられてもよい。
【0035】
さらに、本実施例において、制御システムはマスタ制御モジュールを備え、マスタ制御モジュールはマスタPIDコントローラと、第1モータ13の実際の回転速度を取得するように構成される第1センサと、第2モータ23の実際の回転速度を取得するように構成される第2センサと、を備える。第1センサ及び第2センサは何れもマスタPIDコントローラに電気的に接続される。メインコントローラは前記マスタPIDコントローラを介して、前記第1モータ13及び前記第2モータ23に電気的に接続され、マスタPIDコントローラは第1センサ及び第2センサの感知データに基づいて、メインコントローラから第1モータ及び第2モータへ送信する制御信号を調整した後、第1モータ及び第2モータに出力する。マスタPIDコントローラはPID制御(proportional-integral-derivative control,PID制御と略称する)規則により、メインコントローラから第1モータ13及び第2モータ23へ送信する制御信号を第1センサ及び第2センサの実際の回転速度データと組み合わせして計算分析を行い、第1モータ13及び第2モータ23への調速制御を実現する。
【0036】
本出願の実施例において、第1モータ13及び第2モータ23は、いずれも小電力直流モータを採用し、またエンコーダが内蔵され、内蔵されたエンコーダを利用して第1モータ13、第2モータ23の実際の回転速度を取得することができ、さらに、第1同期ベルト11、第2同期ベルト21の実際の回転速度を算出することで、滑りの速度及び方向が正確であるか否かを判断し、即ち、第1モータ13、第2モータ23の自身のエンコーダを第1センサ及び第2センサとして用いることができ、構造を単純化し、製造しやすくなる。ここで、他の実施態様において、第1センサは第1同期ベルト11の回転速度を直接感知するセンサであってもよく、第1センサが台座300に設けられてもよい。相応には、第2センサが第2同期ベルト21の回転速度を直接感知するセンサであってもよく、第2センサが台座300に設けられてもよい。これにより、第1同期ベルト11、第2同期ベルト21の実際の回転速度を検出して取得することで、第1モータ13及び第2モータ23の実際の回転速度を算出することができる。
【0037】
図5及び
図6に示すように、マスタ制御モジュールによる第1モータ13の調速原理は、メインコントローラは第1モータ13への所定の回転速度を出力し、第1センサは第1モータ13の実際の回転速度を感知し、所定の回転速度r(t)と実際の回転速度n(t)を比較し、その差分e(t)=r(t)-n(t)であり、マスタPIDコントローラはそれを調整した後、電圧制御信号u(t)を出力し、u(t)は電力増幅された後、第1モータ13を、その回転速度を変更するように駆動することで、滑り速度の模擬を実現する。マスタ制御モジュールによる第2モータ23の調速原理は第1モータ13と同じであり、ここで説明を省略する。
【0038】
制御システムは、スレーブ制御モジュールをさらに備え、スレーブ制御モジュールはスレーブPIDコントローラと、制御先の圧力を感知するように構成されるスレーブセンサと、を備える。メインコントローラはスレーブPIDコントローラを介してスレーブセンサに電気的に接続され、スレーブPIDコントローラは圧力センサ及びスレーブセンサの感知データに基づいて、メインコントローラから送信された圧力制御信号を調整した後、制御先に出力する。
【0039】
本実施例において、制御先の圧力はロボットのハンドによる物体への付勢を例として説明する。圧力センサはユーザの手により付勢された力を感知し、スレーブセンサはロボットのハンドから実際に出力された力を感知し、ロボットが出力する力は、ロボットのモータ及びロボットの指の機械伝動部材によって実現され、スレーブPIDコントローラから制御先へ送信された圧力制御信号は、ロボットの機械伝動部材であるモータの電圧信号である。
【0040】
図7に示すように、スレーブ制御モジュールの調節原理は、圧力センサにより感知された、人の手により付勢された力を入力r(t)とし、それとロボットのハンドから実際に出力された力n(t)とが比較され、その差分がe(t)=r(t)-n(t)であり、スレーブPIDコントローラにより調整された後、ロボットのハンドの電圧制御信号u(t)が出力され、モータの回転速度とロボットの指の付勢力との変換を経て、ロボットのハンド又は把持器の駆動直流モータは、その回転速度を変更することで、ロボットの指による物体への付勢力を調整し、物体の摺動を阻止して滑りを防止する。
【0041】
本願の制御システムにおいて、制御先に対する圧力制御において、メインコントローラを利用して人の手により付勢される圧力値をロボットのモータの電圧に簡単にマッピングすることができ、スレーブ制御モジュールを採用する必要がなく、すなわちロボットのハンドからの実際の付勢をフィードバックとする必要がなく、制御システム及び制御方式を単純化することができる。
【0042】
本出願の実施例に係る滑り覚模擬装置及び制御システムは、ユーザ(マスタ)がロボット(スレーブ)を遠隔操作する際に、ロボットの指先の触覚センサにより提供される滑り触覚フィードバックを模擬することで、ユーザに、ロボットが把持する物体の滑り方向及び速度を感知させる。本出願の実施例は2つの直交する第1同期ベルト11と第2同期ベルト21を利用し、第1同期ベルト11及び第2同期ベルト21の回転速度を制御することで、ユーザにロボット端末の物体の摺動方向及び速度を感知させる。ロボットのハンドの触覚センサは、把持される物体には摺動が発生したか又は発生しようとすると感知又は事前判定すると、このフィードバック信号は入力として制御システムを介して滑り覚模擬装置における第1同期ベルト11及び第2同期ベルト21を駆動することで、ユーザに反応を促す。滑り覚模擬装置に集積された圧力センサによりユーザの反応が収集され、収集したユーザの力信号を入力としてロボットのハンドの挟持力を制御し、物体の滑りを阻止し、閉ループの制御システムを形成する。
【0043】
本態様のハードウェアは、構造が単純であり、製造しやすく、コストが低く、また制御システムが採用するアルゴリズムも単純で効率的で、実現しやすい。
【0044】
本出願の実施例に係る滑り覚模擬装置及び制御システムは、ロボットのハンドの滑りを模擬できるだけではなく、ロボットの他の部位又は場合にも適用することができ、例えば仮想現実、コンピュータゲーム、ヒューマンコンピュータインタラクションなどである。
【0045】
以上は本出願の例示的な実施形態であり、指摘すべきものとして、当業者にとって、本出願の原理から逸脱しない前提で、さらにいくつかの改良や修飾を行うことができ、これらの改良や修飾も本出願の保護範囲と見なされる。
【符号の説明】
【0046】
11 第1同期ベルト
12 第1同期プーリー
13 第1モータ
14 第1歯車組
21 第2同期ベルト
22 第2同期プーリー
23 第2モータ
24 第2歯車組
30 底板
31 内側板
32 外側板
100 第1模擬アセンブリ
151 第1滑り子
152 第1止めネジ
200 第2模擬アセンブリ
251 第2滑り子
252 第2止めネジ
300 台座
325 第2摺動孔