(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】管状回転子
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20230901BHJP
A61M 5/20 20060101ALN20230901BHJP
【FI】
A61M5/315 500
A61M5/20 510
(21)【出願番号】P 2022526242
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2020078225
(87)【国際公開番号】W WO2021089269
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-05-16
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520011887
【氏名又は名称】エスエイチエル・メディカル・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンデシュ・ボストロム
【審査官】石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/137701(WO,A1)
【文献】特表2013-526904(JP,A)
【文献】国際公開第2011/123024(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3184134(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達装置のための管状回転子(1)であって、
長手方向軸(L)に沿って延在し、近位端および遠位端を有する管状本体(11)と、
前記管状本体(11)の外面および内面に配置された機械的部材であって、前記薬剤送達装置の他の部分に配置された対応する機械的部材と協働するよう構成されている機械的部材と、
前記管状本体(11)の前記近位端に一体的にまたは固定的に配置された管状弾性構造(12)であって、前記薬剤送達装置内に配置された薬剤容器(10)の遠位端面(101)に当接するよう構成された近位接触面を備える、管状弾性構造(12)と、
を備え、
前記管状回転子(1)は、前記薬剤容器(10)に対して回転可能に構成されている、管状回転子(1)。
【請求項2】
前記管状弾性構造(12)は、前記管状回転子(1)の長手方向軸(L)に沿って軸方向に変形するか、または前記管状回転子(1)の長手方向軸(L)に対して半径方向に変形するか、またはそれらの組み合わせのいずれかとなるように構成されている、請求項1に記載の管状回転子(1)。
【請求項3】
前記管状弾性構造(12)の変形は、前記薬剤送達装置の組み立て中の前記薬剤容器(10)の工学的公差を補償するように構成されている、請求項
2に記載の管状回転子(1)。
【請求項4】
前記管状弾性構造(12)の変形は、前記薬剤容器(10)の前記遠位端面(101)に加えられた力を放散するように構成されている、請求項
2または
3に記載の管状回転子(1)。
【請求項5】
薬剤送達装置であって、
前記薬剤送達装置は、請求項1~
4のいずれか一項に記載の管状回転子(1)を備え、
前記薬剤送達装置は、前記薬剤送達装置の前記他の部分の1つである伸縮式送達カバー(4)をさらに備え、前記伸縮式送達カバー(4)は、前記対応する機械的部材の1つであり、前記管状本体(11)の前記外面に配置された前記機械的部材(13)と協働するよう構成された遠位ガイド要素(42)を備え、前記長手方向軸(L)に沿った前記伸縮式送達カバー(4)の遠位軸方向移動が前記管状回転子(1)を第1の回転位置から第2の回転位置に回転させる、薬剤送達装置。
【請求項6】
前記薬剤送達装置は、前記薬剤送達装置の前記他の部分の1つである付勢されたプランジャロッド(9)をさらに備え、前記付勢されたプランジャロッド(9)は、前記管状回転子(1)が前記第1の回転位置にある場合に前記管状本体(11)の前記内面の機械的部材と解放可能に係合されるように構成された前記対応する機械的部材の1つである係合要素を備え、前記長手方向軸に沿った前記付勢されたプランジャロッド(9)の軸方向移動が防止される、請求項
5に記載の薬剤送達装置。
【請求項7】
前記薬剤送達装置は、付勢されたプランジャロッド(9)および前記付勢されたプランジャロッド(9)に関連する可撓性保持要素(21)を有する後キャップハウジング(2)をさらに備え、前記対応する機械的部材の1つである前記可撓性保持要素(21)は、前記管状回転子(1)が前記第1の回転位置にある場合に前記管状本体(11)の前記内面の機械的部材(15)と解放可能に係合されるように構成され、前記長手方向軸に沿った前記付勢されたプランジャロッド(9)の軸方向移動が防止される、請求項
5に記載の薬剤送達装置。
【請求項8】
前記薬剤送達装置は、前記付勢されたプランジャロッド(9)に関連した長手方向に延在する付勢されたフィードバック要素(3)をさらに備え、前記付勢されたフィードバック要素(3)は、前記管状回転子(1)が前記第1の回転位置にある場合に前記管状回転子(1)の前記管状弾性構造(12)の当接部に関連する保持部材(31)を備え、前記薬剤送達装置に対する前記付勢されたフィードバック要素(3)の軸方向移動が防止される、請求項
6または
7に記載の薬剤送達装置。
【請求項9】
前記付勢されたフィードバック要素(3)は、前記管状回転子(1)の前記内面および前記付勢されたプランジャロッド(9)の前記外面の間に配置され、前記付勢されたフィードバック要素(3)の前記保持部材(31)は、前記付勢されたプランジャロッド(9)の前記外面が前記付勢されたフィードバック要素(3)ともはや接触していない場合に前記管状回転子(1)の前記管状弾性構造(12)から外れるよう構成されている、請求項
8に記載の薬剤送達装置。
【請求項10】
前記管状回転子(1)の管状弾性構造(12)の前記当接部は、前記管状回転子(1)が前記第2の回転位置にある場合に前記付勢されたフィードバック要素(3)から外れるように構成されている、請求項
8記載の薬剤送達装置。
【請求項11】
前記薬剤送達装置は、薬剤容器(10)と、前記薬剤容器(10)の遠位端と接触するよう構成された傾斜面(22)を有する後部キャップハウジング(2)とをさらに備える、請求項
5~
10のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項12】
前記傾斜面(22)および前記薬剤容器(10)の前記遠位端の接触は、前記薬剤送達装置を組み立てる間に、前記後部キャップハウジングを前記薬剤容器に位置合わせするように構成され、前記薬剤容器のがたつきを防止する、請求項
11に記載の薬剤送達装置。
【請求項13】
前記薬剤送達装置は、薬剤容器キャリア(6)と、前記薬剤容器キャリア(6)および薬剤のフランジ(102)の間に配置されたダンパー要素(61)とをさらに備え、前記後部キャップハウジング(2)の前記傾斜面(22)は、前記薬剤容器(10)の前記遠位端を付勢するよう構成され、それにより前記ダンパー要素(61)が圧縮される、請求項
12に記載の薬剤送達装置。
【請求項14】
ダンパー要素(61)の圧縮は、前記薬剤送達装置の組み立て中の前記薬剤容器(10)の工学的公差を補償するよう構成されている、請求項
13に記載の
薬剤送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、薬剤送達装置用の管状回転子、具体的には、薬剤送達装置内で薬剤容器を定常状態に保持するための薬剤容器用の弾性構造を有する管状回転子に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤容器がその中に組み立てられた薬剤送達装置に関して、薬剤容器が、薬剤送達装置のハウジング内でガタガタ音を立てたり移動したりしないように支持されることがしばしば望まれる。薬剤容器と薬剤送達装置自体の両方の許容差の変動により、薬剤容器の支持体は、例えば硬い面に落ちた場合などに薬剤送達装置、したがって薬剤容器に加えられる力を処理するために、好ましくは柔軟性があり、場合によっては弾性もあるべきである。
【0003】
特許文献1は、いくつかの自動機能を備えた薬剤送達装置を開示しており、その薬剤送達装置は、市場で非常に好評である。薬剤送達装置は、回転可能な管状操作部材と、管状延長部分を有する後部キャップハウジングとを備え、回転可能な管状操作部材は、その内面に配置された内溝を介して、後部キャップハウジングの管状延長部分上の可撓性タングと相互作用し、薬剤送達装置の起動を制御するために、その外面に配置された外溝を介して起動部材と相互作用するように構成されている。後部キャップハウジングは、後部キャップハウジングおよび薬剤送達装置に対して回転可能な管状操作部材を軸方向に保持するように構成された突起と、薬剤送達装置に配置された薬剤容器の遠位端面に接触する弧状の可撓性要素の形態の支持構造とをさらに備える。支持構造は、薬剤容器の移動を防ぐために薬剤容器の近位方向に力を加える。
【0004】
この解決策は非常にうまく機能する。ただし、より堅牢な解決策を開発する余地はまだある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、代替のより堅牢な解決策を得ることである。
【0007】
本開示において、「遠位方向」という用語が使用される場合、これは、薬剤送達装置の使用中に用量送達部位から離れる方向を指す。「遠位部/遠位端部」という用語が使用される場合、これは、薬剤送達装置の使用下で用量送達部位から最も遠くに位置する、送達装置の部品/端部、またはその部材の部品/端部を指す。これに対応して、「近位方向」という用語が使用される場合、これは、薬剤送達装置の使用中に用量送達部位に向かう方向を指す。「近位部/近位端部」という用語が使用される場合、これは、薬剤送達装置の使用下で用量送達部位の最も近くに位置する、送達装置の部品/端部、またはその部材の部品/端部を指す。
【0008】
さらに、「長手方向」、「長手方向に」、「軸方向」または「軸方向に」という用語は、近位端から遠位端まで、典型的には装置またはその構成要素に沿って、装置および/または構成要素の最長延伸方向に延びる方向を指す。
【0009】
同様に、「横方向」、「横方向の」、「横方向に」という用語は、長手方向に略垂直な方向を指す。
【0010】
さらに、本明細書で使用される「関連する」または「関連」という用語は、直接的および間接的な付着、隣接、接触、部分的または完全に付着する、および/またはそれらに近接することを含むが、これらに限定されない。
【0011】
本発明の目的は、薬剤送達装置のハウジングに対して回転可能な管状操作部材を軸方向に保持し、薬剤送達装置内の薬剤容器を支持する、単純で信頼できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、目的は、請求項1に記載の堅牢で信頼性の高い管状回転子によって達成される。
【0013】
薬剤送達装置用の管状回転子が提供され、管状回転子は、長手方向軸に沿って延在し、近位端および遠位端を有する管状本体と、管状本体の外面および内面に配置された機械的部材であって、薬剤送達装置の他の部分に配置された対応する機械的部材と協調するように構成される機械的部材と、本体の近位端に一体的または固定的に配置された管状弾性構造とを備え、管状弾性構造は、薬剤送達装置に配置された薬剤容器の遠位端面に当接するように構成された近位接触面を備える。
【0014】
一実施形態によれば、管状回転子は、薬剤容器に対して回転可能であるように構成される。
【0015】
一実施形態によれば、管状弾性構造は、管状回転子の長手方向軸に沿って軸方向に変形するか、管状回転子の長手方向軸に対して半径方向に変形するか、またはそれらの組み合わせのいずれかで構成される。
【0016】
一実施形態によれば、管状弾性構造は、少なくとも2つの可撓性の翼によって形成される。
【0017】
一実施形態によれば、少なくとも2つの可撓性の翼は、管状本体の近位方向において長手方向軸に対して半径方向外向きに延びる。
【0018】
一実施形態によれば、管状弾性構造は、ウェブ形状構造として形成される。
【0019】
一実施形態によれば、管状弾性構造は、可撓性アームとして形成され、可撓性アームは、管状本体の遠位端から長手方向軸に沿って延びることができ、可撓性アームの近位部分は、長手方向軸に対して半径方向に湾曲した弧として形成することができる。
【0020】
一実施形態によれば、管状弾性構造は、プラスチックばねであり、好ましくは、プラスチックばねは、長手方向軸に沿って延びる圧縮ばねの形態である。
【0021】
一実施形態によれば、管状弾性構造の変形は、薬剤送達装置の組み立て中の薬剤容器の工学的公差を補償するように構成される。
【0022】
一実施形態によれば、管状弾性構造の変形は、薬剤容器の遠位端面に加えられる力を放散するように構成される。
【0023】
一実施形態によれば、管状弾性構造の変形は、薬物容器に対して所定の位置で管状回転子を軸方向に支持するように構成される。
【0024】
一実施形態によれば、管状回転子は、薬剤送達装置において使用される。
【0025】
一実施形態によれば、薬剤容器の遠位端面に加えられる力は、薬剤送達装置の自動浸透操作中に生成される。
【0026】
一実施形態によれば、管状弾性構造の変形は、薬物送達装置に対して所定の位置で管状回転子を軸方向に支持するように構成される。
【0027】
一実施形態によれば、薬剤送達装置は、薬剤送達装置の他の部分の1つである伸縮式送達部材カバーをさらに備え、伸縮式送達部材カバーは、対応する機械的部材の1つであり、管状本体の外面に配置された機械的部材と協働するように構成された遠位ガイド要素を備え、長手方向軸に沿った伸縮式送達部材カバーの遠位軸方向移動が、管状回転子を第1の回転位置から第2の回転位置に強制的に回転させる。
【0028】
一実施形態によれば、薬剤送達装置は、管状回転子を受容し、送達部材カバーを少なくとも部分的に受容するように構成されたハウジングをさらに含む。
【0029】
一実施形態によれば、送達部材カバーはガイド構造を備え、ハウジングの内面は、ガイド構造と相互作用するように構成されたカウンターガイド構造を備え、それにより送達装置のハウジングに対する送達部材カバーの回転を防止する。
【0030】
一実施形態によれば、薬剤送達装置は、薬剤送達装置の他の部分の1つである付勢されたプランジャロッドをさらに含み、付勢されたプランジャロッドは、対応する機械的部材の1つである係合要素を備え、管状回転子が第1の回転位置にある場合に管状本体の内面上の機械的部材と解放可能に係合するように構成され、それにより長手方向軸に沿った付勢されたプランジャロッドの軸方向の動きが防止される。
【0031】
一実施形態によれば、薬剤送達装置は、付勢されたプランジャロッドと、付勢されたプランジャロッドに関連付けられた可撓性保持要素を有する後部キャップハウジングとをさらに備え、対応する機械的部材の1つである可撓性保持要素は、管状回転子が第1の回転位置にある場合に管状本体の内面上の機械的部材と解放可能に係合するよう構成され、それにより長手方向軸に沿った付勢されたプランジャロッドの軸方向の動きが防止される。
【0032】
一実施形態によれば、薬剤送達装置は、付勢されたプランジャロッドに関連する長手方向に延びる付勢されたフィードバック要素をさらに備え、付勢されたクリック要素は、管状回転子が第1の回転位置にある場合に、管状回転子の管状弾性構造の当接部に関連する保持部材を備え、それにより薬剤送達装置に対する付勢されたフィードバック要素の軸方向の動きが防止される。
【0033】
一実施形態によれば、薬剤送達装置は、付勢されたプランジャロッドに関連する長手方向に延びる付勢されたフィードバック要素をさらに備え、付勢されたクリック要素は、後部キャップハウジングの当接部に関連する保持部材を備え、それにより薬剤送達装置に対する付勢されたフィードバック要素の軸方向の動きが防止される。
【0034】
一実施形態によれば、付勢されたフィードバック要素は、管状回転子の内面と付勢されたプランジャロッドの外面との間に配置され、付勢されたフィードバック要素の保持部材は、付勢されたプランジャロッドの外面が付勢されたフィードバック要素ともはや接触していない場合に、管状回転子の管状弾性構造から外れるように構成される。
【0035】
一実施形態によれば、管状回転子の管状弾性構造の当接部は、管状回転子が第2の回転位置にある場合に、付勢されたフィードバック要素から外れるように構成される。
【0036】
一実施形態によれば、付勢されたフィードバック要素は、後部キャップハウジングの内面と付勢されたプランジャロッドの外面との間に配置され、付勢されたフィードバック要素の保持部材は、付勢されたプランジャロッドの外面が付勢されたフィードバック要素ともはや接触していない場合に、後部キャップハウジングから外れるように構成される。
【0037】
一実施形態によれば、付勢されたフィードバック要素は、薬剤送達装置のハウジングに対して遠位方向に付勢されている。
【0038】
一実施形態によれば、付勢されたフィードバック要素は遠位に移動され、薬剤送達装置のハウジングの遠位部分に配置されたフィードバック発生器と相互作用し、それにより、薬剤送達装置のユーザへのフィードバックが生成される。
【0039】
一実施形態によれば、フィードバック発生器は、ハウジングの遠位端の内面に配置される。
【0040】
一実施形態によれば、フィードバック発生器は、後部キャップハウジングの遠位端の内面に配置される。
【0041】
一実施形態によれば、フィードバック発生器は、ハウジングの遠位部分に配置された別個の要素である。
【0042】
一実施形態によれば、フィードバックは、可聴フィードバック、触覚フィードバック、視覚フィードバック、または電子フィードバック信号である。
【0043】
一実施形態によれば、薬剤送達装置は、付勢されたプランジャロッドと付勢されたフィードバック要素との間に配置された付勢要素をさらに備え、付勢要素は、付勢されたプランジャロッドをハウジングの近位方向に付勢し、付勢されたフィードバック要素をハウジングの遠位方向に付勢するように構成される。
【0044】
一実施形態によれば、付勢要素は、ばねまたはガスボンベであり得る。
【0045】
一実施形態によれば、薬剤送達装置は、薬剤容器と、薬剤容器の遠位端と接触するように構成された傾斜面を有する後部キャップハウジングとをさらに備える。
【0046】
一実施形態によれば、傾斜面と薬剤容器の遠位端との間の接触は、薬剤送達装置の組み立て中に後部キャップハウジングを薬剤容器と整列させ、薬剤容器ががたつくのを防ぐように構成される。
【0047】
一実施形態によれば、薬剤送達装置は、薬剤容器キャリアと、薬剤容器キャリアと薬剤のフランジとの間に配置されたダンパー要素とをさらに備え、後部キャップハウジングの傾斜面は、薬剤容器の遠位端を付勢するように構成され、それにより、ダンパー要素が圧縮される。
【0048】
一実施形態によれば、ダンパー要素の圧縮は、薬剤送達装置の組み立て中の薬剤容器の工学的公差を補償するように構成される。
【0049】
一実施形態によれば、ダンパー要素の圧縮は、薬剤容器のフランジに伝達される力を放散するように構成される。
【0050】
一実施形態によれば、薬剤送達装置は、注射装置、オンボディ装置、吸入装置、鼻噴霧器または医療噴霧器であり得る。
【0051】
他の側面、特徴、および利点は、上記の説明、ならびに図および特許請求の範囲を含む以下の説明から明らかになるであろう。
【0052】
一般に、特許請求の範囲で使用されるすべての用語は、本明細書で別段の定めがない限り、技術分野におけるそれらの通常の意味に従って解釈されるべきである。特に明記されていない限り、「a/an/the 要素、装置、構成要素、手段」などへのすべての言及は、要素、装置、構成要素、手段などの少なくとも1つの例を指すものとして公然と解釈されるべきである。
【0053】
次に、本発明の概念の特定の実施形態を、一例として、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図2】第1の実施形態における
図1の管状回転子の内面を示す。
【
図3】
図1の管状回転子を有する薬剤送達装置の分解図を示す。
【
図4】第1の実施形態における薬剤送達装置の断面図を示す。
【
図5】薬剤容器に当接する本発明の管状回転子の斜視図を示す。
【
図6】プランジャロッドに接続された後部キャップハウジングと、第1の実施形態における
図3の薬剤送達装置の付勢されたフィードバック要素の保持機構とを示す。
【
図7】第1の実施形態における薬剤送達装置内の後部キャップハウジングの傾斜面を示す。
【
図8】薬剤送達装置がダンパー機能を備える本発明の第2の実施形態を示す。
【
図9】第1および第2の実施形態における
図1の管状回転子の内面の代替配置を示す。
【
図10】
図9の内面配置を有する管状回転子を有する薬剤送達装置の断面図を示す。
【
図11】第1の実施形態および第2の実施形態における、
図3の薬剤送達装置の付勢されたフィードバック要素の代替の保持機構を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の概念は、例示的な実施形態が示されている添付の図面を参照して、以下により完全に説明される。ただし、本発明の概念は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完全であり、本発明の概念の範囲を当業者に完全に伝えるように、例として提供されている。類似の符号は、説明全体で類似の要素を指す。
【0056】
図1は、長手方向軸Lに沿って延びる管状本体11と、管状本体11の外面上の機械的部材、好ましくはガイドトラック13と、管状回転体本体11の内面上の別の機械的部材、好ましくは、
図2に示されるような保持壁15と、管状本体11の外面に配置された可撓性ロック舌片14と、管状本体11の近位端に一体的または固定的に配置された管状弾性構造12とを備える管状回転子を示す。
【0057】
図3は、管状回転子を備える第1の実施形態における薬剤送達装置の分解図を示す。薬剤送達装置は、長手方向に延びるハウジング7と、ハウジング7の近位端に関連する保護キャップ5と、ハウジング内に配置された軸方向にスライド可能な伸縮式送達部材カバー4と、薬剤容器10を受け入れるように配置された薬剤容器キャリア6とを備える。薬剤容器キャリア6は、薬剤容器10と共に、ハウジング7に軸方向に固定されている。
【0058】
薬剤送達装置は、パワーパックアセンブリをさらに備え、パワーパックアセンブリは、係合要素、好ましくはその外面上の保持凹所を備える付勢されたプランジャロッド9と、付勢されたプランジャロッドをハウジング7の近位方向に付勢して、薬剤容器10に含まれる薬剤を空にするように構成された付勢要素8と、付勢要素8からの付勢力に対して付勢されたプランジャロッド9の保持凹所と係合するように配置された可撓性保持要素21で構成される後部キャップハウジング2とを含む。
図4に示すように、管状回転子1は、後部キャップハウジング2を囲むように構成され、管状回転子1の保持壁15は、管状回転子が第1の回転位置にある場合に可撓性保持要素と整列するように構成され、可撓性保持要素は、保持壁15によって曲がることが防止され、それによって付勢されたプランジャロッドがハウジング7に対して近位方向に移動するのが防止される。
【0059】
薬剤送達装置の送達部材カバー4は、薬剤容器10の送達部材を覆うように構成された近位カバー要素41と、遠位ガード要素42、好ましくはリブまたは突起とを備える。送達部材カバー4は、好ましくは、送達部材カバー4の外面およびハウジング7の内面上の溝および隆起構成を介してハウジング7に回転固定配置されている。遠位ガード要素42は、管状回転子のガイドトラック13に載置され、送達部材カバーがハウジング7に対して遠位方向に軸方向に移動する場合に、管状回転子のガイドトラック13に沿って軸方向に移動するように構成される。
図1に見られるように、ガイドトラック13は、カム壁を備え、その結果、遠位ガード要素42の軸方向の動きは、カム壁を介して管状回転子を第2の回転位置に回転させる。これにより、管状回転子の保持壁15は、後部キャップハウジングの可撓性保持要素と位置合わせされなくなる。可撓性保持要素21および付勢されたプランジャロッド9の保持凹所は、くさび形のインターフェースを形成し、管状回転子1の保持壁15が、可撓性保持要素21の外面にもはや整列されなくなると、可撓性保持要素21は、くさび形のインターフェースを介して付勢要素8の付勢力の下で屈曲し、それによって、付勢されたプランジャロッド9が解放され、近位方向に移動することができる。これにより、送達部材カバー4は、薬物送達装置の薬物送達操作を起動するための薬物送達装置の起動要素として機能する。
【0060】
遠位ガード要素42が管状回転子1を第2の回転位置に回転させると、遠位ガード要素42は、管状回転子1のロック舌片15に対して遠位に配置される。したがって、送達部材カバー4が送達カバー付勢部材(図示せず)によって近位方向に付勢されると、それにより、遠位ガード要素42は、ロック舌片15を通過し、その結果、送達部材カバーのさらなる遠位移動は、ロック舌片の崖面および遠位ガード要素42によって防止される。
【0061】
薬剤容器10は、薬剤容器キャリア6に受け入れられ、ハウジング7の内面と薬剤容器キャリア6の外面との間の別の溝および隆起部の係合を介して、ハウジング7に対して回転固定される。管状回転子1の管状弾性構造12は、薬剤容器10に対して回転可能である。管状弾性構造12は、
図5に示すように、薬剤容器10の遠位端面101に当接するように構成された近位接触面を備える。
【0062】
管状弾性構造12は、薬剤送達装置の近位方向に向かって半径方向外向きに徐々に延びる一対の弾性翼によって形成することができる。またはウェブ形状で形成される。管状弾性構造12は、長手方向軸Lに対して軸方向および/または半径方向に変形可能である。
【0063】
管状弾性構造12は変形可能であるため、管状回転子1は、それによって、薬剤送達装置を組み立てている間、例えば薬剤容器または管状回転子の長さの差によって生じる薬剤容器10の工学的公差または管状回転子の工学的公差を補償することができる。
【0064】
管状回転子1の管状弾性構造12の変形もまた、ハウジング7に対する管状回転子1の軸方向位置を支持および固定するように構成されている。管状回転子1は、薬剤送達装置が組み立てられた後、薬剤容器10の遠位端面101上に載置される。遠位ガード要素42が管状回転子1のロック舌片15を通過する間、近位付勢力は、遠位ガード要素42とロック舌片15との間の一時的な係合を介して管状回転子1に伝達され得る。このような近位付勢力は、管状回転子1の管状弾性構造12の変形によって吸収することができ、管状弾性構造12は、管状回転子1に付勢力がもはや伝達されなくなった後、管状本体11を軸方向に元の位置に戻す。
【0065】
薬剤送達装置は、長手方向に延在する付勢されたフィードバック要素3をさらに備える。付勢されたフィードバック要素は、付勢されたフィードバック要素の遠位端から付勢されたフィードバック要素の近位端まで延びる弾性長手方向延在アームを備える。付勢されたフィードバック要素3は、その遠位端で付勢要素8と係合するように構成され、付勢要素8によって薬剤送達装置のハウジング7に対して遠位方向に付勢される。
【0066】
付勢フィードバック要素3は、後部キャップハウジング2の内面と付勢されたプランジャロッド9の外面との間に配置されている。付勢されたフィードバック要素3は、
図6に示すように、後部キャップハウジング2の近位端縁に配置された当接部と係合するように構成された付勢フィードバック要素3の弾性長手方向延材アームの近位端に配置された保持部材31を備える。保持部材31は、フィードバック要素の遠位軸方向の動きが防止されるように、当接部に対して半径方向外側に延びるように構成される。好ましい実施形態では、付勢されたフィードバック要素3の保持部材31と当接部との間に形成されるインターフェースは、長手方向軸Lに対して所定の角度で形成される。このような角度のあるインターフェースにより、当接部によって加えられる保持力が生じ、近位方向の軸方向の分割力と半径方向内向きの分割力に分割される。したがって、付勢されたプランジャロッド9が解放されて近位に移動し、付勢されたプランジャロッド9の外面が付勢されたフィードバック要素3と接触しなくなると、付勢されたフィードバック要素3の保持部材31は、半径方向内向きの分割力により内側に付勢され、保持部材31が当接部から外れる。
【0067】
付勢されたフィードバック要素3の弾性長手方向延材アームは、半径方向に付勢されたプリテンション力でさらに修正され得、付勢されたプランジャロッドが解放されて近位に移動し、付勢されたプランジャロッド9の外面がもはや付勢されたフィードバック要素3と接触しなくなると、付勢されたフィードバック要素3の保持部材31は、半径方向に付勢されたプリテンション力により内側に付勢され、その結果、保持部材31は当接部から解放される。このような修正は、当接部から保持部材31の係合解除メカニズムのための別の解決策を提供し得る。
【0068】
保持部材31が当接部から外れると、付勢されたフィードバック要素3は、付勢されたフィードバック要素3が後部キャップハウジングの内面またはハウジング7に当たり、それによってフィードバックが生成されるまで、付勢要素8の付勢力の下でハウジング7の遠位方向に移動される。このようなフィードバックは、可聴で触覚的なフィードバックである場合がある。または、後部キャップハウジング2またはハウジング7に表示ウィンドウおよび/またはスイッチがさらに配置されている場合、付勢されたフィードバック要素3の一部がウィンドウに表示され、視覚的なフィードバックを提供するか、スイッチをオンにして電子信号を生成する。
【0069】
後部キャップハウジング2は、後部キャップハウジングの近位端に配置された傾斜面22をさらに備える。傾斜面22は、
図7に示すように、薬剤容器10の遠位内縁103と一致し、接触するように構成されている。傾斜面と薬剤容器10の遠位内縁103との間の接触は、特に付勢されたプランジャロッド9が組み立てプロセス中に薬剤容器10の遠位端と離れている場合、薬剤送達装置の組み立て中に後部キャップハウジング2を薬剤容器10と位置合わせするように構成される。
【0070】
傾斜面22はまた、薬剤送達装置内の薬剤容器のがたつきが防止されるように、薬剤容器10をその遠位内縁から支持することができる。
【0071】
管状回転子を含む薬剤送達装置の第2の実施形態では、薬剤送達装置は、
図8に示されるような弾性ダンパー機構61をさらに備える。ダンパー機構61は、リング形状またはC形状に形成することができる。ダンパー機構61は、薬剤容器キャリア6の遠位端と薬剤容器10のフランジ102の近位端との間に配置されている。
【0072】
第2の実施形態では、後部キャップハウジング2の傾斜面22は、付勢力がダンパー機構61の変形を引き起こすように、薬剤容器10の遠位端に付勢をかけるように構成される。代替の実施形態では、傾斜面22は、後部キャップハウジング2の近位端が薬剤容器10の遠位端に直接付勢をかけるように、後部キャップハウジング2から取り外されてもよい。
【0073】
ダンパー機構61の変形は、薬剤送達装置の組み立て中の薬剤容器10の工学的交差を補償するように構成される。薬剤容器10が長ければ、ダンパー機構61の変形が少なくなるか、変形しない。そして、薬剤容器10が短い場合、ダンパー機構61は大きく変形するであろう。
【0074】
第2の実施形態では、管状回転子1の管状弾性構造12は、管状回転子1が薬剤送達装置に組み立てられている間、管状回転子1および薬剤送達装置の他の構成要素の工学公差を補償するようにのみ構成される、ハウジング1に対する管状回転子1の軸方向位置を支持する。それにより管状回転子1が薬剤容器10に加える力が少なくなり、その間の摩擦が少なくなり、回転しやすくなる。この実施形態の配置は、高蓄積エネルギー付勢要素8を有する薬剤送達装置で使用されることが好ましい。管状回転子1の保持壁15と後部キャップハウジング2の可撓性保持要素との間の摩擦が高くなる可能性があるため、管状回転子1と薬剤容器10との間の摩擦を低くすることができる。
【0075】
第1および第2の実施形態による管状回転子1は、後部キャップハウジング2なしで薬剤送達装置においてさらに使用することができる。この実施形態の管状回転子1の保持壁15は、
図9に示すように保持棚部15’として変更され、付勢されたプランジャロッド9の係合要素は、半径方向外向きに延びる保持翼として変更され、
図10に示すように、第1の回転位置において管状回転子1の保持棚部15’に載置されるように構成される。管状回転子1が第2の回転位置に回転されるまで、保持棚部15’は、付勢されたプランジャロッド9の保持翼ともはや位置合わせおよび係合されておらず、それにより付勢されたプランジャロッド9が解放され、近位に移動する。代替の実施形態では、付勢されたプランジャロッド9の係合要素も保持溝として変更することができ、管状回転子1の保持棚部15’は、保持溝と係合するように構成された保持突起として変更することができる。
【0076】
第1および第2の実施形態による管状回転子1は、付勢されたフィードバック要素3を保持するようにさらに配置することができる。当接部は、
図11に示すように管状弾性構造12に配置されている。この実施形態では、保持部材31は、上記のような構成により当接部から外れるように、または管状回転子1が第2の回転位置に回転した場合に当接部から外れるように構成される。さらに、付勢フィードバック要素の保持部材31は、管状回転子が第1の回転位置にあり、パワーパックアセンブリが薬剤容器10と接触するように組み立てられる前に、管状回転子1が後部キャップハウジング2に対して近位に移動するのを軸方向に保持するように構成される。この実施形態は、後部キャップハウジング2のない薬剤送達装置にも好ましい。
【0077】
薬剤容器10がハウジング7に対して軸方向に可動に配置されている場合、ダンパー機構61の変形はまた、薬剤容器10のフランジ102に加えられた衝撃力を放散することができ、その結果、薬剤容器10への損傷が防止される。
【0078】
本発明の概念は、いくつかの例を参照して上で説明されてきた。しかし、当業者によって容易に理解されるように、上に開示されたもの以外の実施形態は、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本発明の概念の範囲内で等しく可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 管状回転子
2 後部キャップハウジング
3 付勢フィードバック要素
4 伸縮式送達部カバー
5 保護キャップ
6 薬剤容器キャリア
7 ハウジング
8 付勢要素
9 プランジャロッド
10 薬剤容器
11 管状本体
12 管状弾性構造
13 機械的部材,ガイドラック
14 可撓性ロック舌片
15 機械的部材,保持壁
15’ 保持棚部
21 可撓性保持要素
22 傾斜面
31 保持部材
41 近位カバー要素
42 遠位ガード要素
61 ダンパー機構
101 遠位端面
102 フランジ
103 遠位内縁