(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F25B 47/02 20060101AFI20230901BHJP
【FI】
F25B47/02 510A
F25B47/02 510H
F25B47/02 530C
(21)【出願番号】P 2022531133
(86)(22)【出願日】2020-06-16
(86)【国際出願番号】 JP2020023544
(87)【国際公開番号】W WO2021255816
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】豊田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】米田 広
(72)【発明者】
【氏名】川村 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】関谷 禎夫
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-110576(JP,A)
【文献】特開2017-3176(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006596(WO,A1)
【文献】特開平10-281566(JP,A)
【文献】国際公開第2015/145714(WO,A1)
【文献】中国実用新案第203550265(CN,U)
【文献】国際公開第2017/145762(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、上部に室外送風ファンを備えたトップフロー形の室外熱交換器、及び室外膨張弁を有する室外機と、室内熱交換器、及び室内膨張弁を有する室内機と、前記室外機と前記室内機とを接続する液冷媒配管、及びガス冷媒配管を備えている空気調和装置において、
前記室外機の前記室外熱交換器が複数に分割されており、
複数に分割された前記室外熱交換器は、夫々にガスヘッダと液側分配器と前記室外膨張弁を有し、且つ複数に分割された前記室外熱交換器は、前記室外機の内部で水平方向に横並びに配置されていると共に、
暖房運転における除霜運転モードにおいては、分割された前記室外熱交換器の全てに前記室外送風ファンによって室外空気を送風し、更に室外空気の温度が氷点より低い場合は、分割された前記室外熱交換器のうち、除霜すべき前記室外熱交換器である除霜室外熱交換器に接続された前記室外膨張弁を全閉とし、前記室外膨張弁を全閉にした前記除霜室外熱交換器のみを室外空気による昇華作用によって除霜を行うように
すると共に、
前記圧縮機の吸入側と分割された前記室外熱交換器の両方を接続する冷媒通路の途中にアキュムレータが設けられ、更に前記アキュムレータと前記圧縮機の吐出側とはホットガスバイパスによって接続されていると共に、前記ホットガスバイパスには冷媒流量が調整可能なホットガス調整弁が設けられ、
前記除霜運転モードでは、前記室外膨張弁を全閉にして前記除霜室外熱交換器を室外空気よる昇華作用によって除霜を行うときに、
前記室外送風ファンの回転数を増加できると判断された場合には、前記室外送風ファンの回転数を増加させ、
前記室外送風ファンの回転数を増加できないと判断された場合に、前記圧縮機の回転数を増加できると判断された場合には、前記圧縮機の回転数を増加させ、更に前記ホットガス調整弁の開度を増加させる
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和装置において、
前記室外熱交換器の熱交換フィンはオフセットフィンである
ことを特徴とする空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気調和装置に係り、特に除霜運転モードを実行する空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
室内の暖房や冷房を行なう空気調和装置は、室外に設置される室外機と、室内に設置される室内機によって構成され、室内機と室外機には、空気と冷媒とを熱交換させる熱交換器と、熱交換器に空気を流す送風ファンと、室外機と室内機を接続する冷媒配管とが備えられている。
【0003】
そして、室外機の室外熱交換器は、室内を加熱する暖房運転の場合は外部空気の熱を吸収(吸熱)し、室内を冷却する冷房運転の場合は外部空気へ熱を放出(放熱)する機能を備えている。
【0004】
このため、暖房運転においては、室外熱交換器の内部の冷媒の蒸発温度が氷点(0°C)より低くなった場合には、室外熱交換器の熱交換フィンの表面に霜がつき、この霜が成長して室外熱交換器の熱交換フィンの間を埋めることで、送風性能、特に風量が低下して十分な吸熱ができなくなる現象が生じる。したがって、暖房機能を備えた空気調和装置においては、着霜した霜を融かす除霜運転モードを実行するようにしている。
【0005】
この除霜運転モードにおいて、除霜に室外空気を利用して除霜を行う例が、国際公開第2017/145762号(特許文献1)に記載されている。この特許文献1に記載の空気調和装置は、霜を融かす熱源として室外空気を用いることで除霜を行うものであり、この時の運転を「外気除霜運転」と呼んでいる。
【0006】
特許文献1の外気除霜運転では、除霜される室外熱交換器(以下、除霜熱交換器という)に冷媒が流れないようにする一方、除霜されない室外熱交換器(以下、非除霜熱交換器という)には冷媒が流れるようにしている。
【0007】
また、外気除霜運転時の室外空気の流れは、室外送風ファンを駆動して第1開閉フラップ、及び第2開閉フラップの両方を開状態とし、除霜熱交換器、及び非除霜熱交換器の両方に室外空気が流れるようにしている。
【0008】
このように、特許文献1の外気除霜運転は、除霜熱交換器で除霜のため室外空気から吸熱すると共に、非除霜熱交換器でも吸熱して、非除霜熱交換器で吸熱して得た熱を室内熱交換器で暖房のため放熱するようにした運転である。
【0009】
ただ、この外気除霜運転では、室外空気の温度が氷点より高い場合に限り行うことを前提としており、氷点より高い室外空気を除霜熱交換器に通過させて霜を除去するようにしている。尚、ここでは、除霜熱交換器に冷媒が流れないようにしているため、除霜熱交換器ではあくまでも室外空気のみを用いた熱交換で除霜が行われる。
【0010】
一方、室外空気の温度が氷点より低い時の除霜運転では、除霜熱交換器にも冷媒を流して、室外空気と除霜熱交換器内の冷媒とが熱交換することで、除霜熱交換器内の冷媒の温度を上昇させている。
【0011】
除霜運転に入る前の通常の暖房運転において、除霜熱交換器は蒸発器として機能しているため、除霜熱交換器内の冷媒温度は室外空気温度より低くなっている。そして、室外空気の温度が氷点より低い場合に、室外空気を冷媒が流れる除霜熱交換器に送風することで、除霜熱交換器内の冷媒の温度を室外空気の温度近傍まで昇温させることができる。その結果、その後の除霜運転で要する熱エネルギーを低減することが可能となる。
【0012】
尚、室外空気の温度が氷点より低い時の除霜運転は、あくまでも「冷媒除霜運転」、又は「反転冷媒除霜運転」といった本格的な除霜運転に入る前段階として行う運転であり、除霜に必要となる熱エネルギーを減らすためのものである。ここで、「冷媒除霜運転」は、圧縮機から高温ガスの一部を除霜熱交換器に供給して除霜を行うものであり、「反転冷媒除霜運転」は、暖房運転から冷房運転に切り替えて圧縮機の高温ガスを除霜熱交換器に供給して除霜を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1においては、室外空気の温度が氷点より高い時に、2台の室外熱交換器のうち片方を除霜熱交換器として室外空気を流して除霜を行いながら、もう一方の非除霜熱交換器にて冷媒を蒸発させ暖房運転を継続する空気調和装置が記載されている。
【0015】
また、特許文献1に記載された空気調和装置では、室外空気の温度が氷点より低い時には、室外空気は除霜の目的のためではなく、除霜熱交換器の本格的な除霜運転に入る前段階として、冷媒に熱エネルギーを与えて除霜に必要となる熱を減らすという技術的な立場で暖房運転を実行している。
【0016】
しかしながら、室外空気の温度が氷点より低いときには、除霜熱交換器に温度が低い冷媒が流れているので、冷媒除霜運転や反転除霜運転に移行する間に霜が付着して、霜が成長するといった現象を生じる恐れがある。このため、その後の除霜時間が長くなるといった問題を生じる。
【0017】
本発明の目的は、室外空気の温度が氷点より低い条件においても、室外空気による外気除霜運転を可能としながら、かつ暖房能力の維持も可能とする空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の特徴は、室外機の室外熱交換器が複数に分割されており、複数に分割された室外熱交換器は、夫々にガスヘッダと液側分配器と室外膨張弁を有し、且つ複数に分割された室外熱交換器は、室外機内で水平方向に横並びに配置されていると共に、暖房運転における除霜運転モードにおいては、分割された室外熱交換器の両方に室外送風ファンによって室外空気を送風し、更に室外空気の温度が氷点より低い場合は、分割された室外熱交換器のうち、除霜すべき室外熱交換器に接続された室外膨張弁を全閉とし、室外膨張弁を全閉にした室外熱交換器のみ室外空気による昇華作用によって除霜を行うようにした、ところにある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、室外空気の温度が氷点より低い条件においても、暖房運転を継続しながら室外空気を利用した除霜が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】空気調和装置の室外機の概略構成を説明する外観斜視図である。
【
図2】空気調和装置の室外機の内部構成を説明する外観斜視図である。
【
図3】空気調和装置の冷凍サイクルを説明するサイクル系統図である。
【
図4】本発明の実施形態になる外気除霜運転時のフローチャートである。
【
図5】空気調和装置の室外熱交換器の外観斜視図である。
【
図6】空気調和装置の室外熱交換器の冷媒の流れを説明する概略図である。
【
図7】本発明の実施形態になる室外熱交換器の熱交換フィンの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0022】
先ず本発明の実施形態を説明する前に、本発明が必要とされる背景について、
図1~
図3を用いて説明する。尚、本実施形態で使用する室外機では、筐体の上部に室外送風ファンを有するトップフロー型の室外機を対象としている。このトップフロー型の室外機は、必要とされる冷暖房能力に対して熱交換器が小さくできるメリットがあり、商用ビル等の建築物で使用されるVRF(Variable refrigerant flow)方式の空気調和装置に多く適用されている。
【0023】
図1に示すように、本発明の実施形態で使用される室外機は、第一室外送風ファン22と第二室外送風ファン23、及び2つのベルマウス25、そして第一室外熱交換器20と第二室外熱交換器21、前面パネル29等によって構成されている。この2台の室外熱交換器は、室外機内で水平方向に横並びに配置されて設けてあり、夫々の室外熱交換器20、21毎に、1台の室外送風ファン22、23が対応するように設置されている。
【0024】
図2には、
図1で示した室外機から、室外送風ファン22、23と、ベルマウス25と、前面パネル29を取り外し、内部を見えるようにした斜視図を示している。室外機の内部には、圧縮機10、冷媒タンク28、アキュムレータ24、制御盤26が配置されている。制御盤26は、室外機に取り付けられたセンサ類の入出力部や、圧縮機10や室外送風ファン22、23の運転を制御する電気部品等が搭載されている。冷媒タンク28は、冷凍サイクルの途中に取り付けられており、冷房運転と暖房運転で、サイクル内で必要となる冷媒量の差を吸収するためのものである。
【0025】
図3には、冷凍サイクルのサイクル系統図を示している。商用ビルなどの建築物では、例えば、VRF方式と呼ばれる、1台から複数台の室外機と、この室外機と冷媒配管で接続された複数台の室内機を備えた空気調和装置が使用されている。
【0026】
このような空気調和装置は、いわゆる「マルチエアコンディショナーシステム」と呼ばれている。本実施例では、VRF方式の空気調和装置を対象としており、
図3もVRF方式の冷凍サイクルの概要を示している。室外機には、複数台の室内機が接続配管により接続されている。また
図3は、暖房運転時の冷凍サイクルを記載している。
【0027】
通常暖房運転時には、圧縮機10から吐出された高温の冷媒ガスは、冷媒配管11、四方弁12を通過してガス側阻止弁13に流れる。ここからガス側接続配管101によって室内機103とガス側阻止弁13が接続されている。ガス側阻止弁13より流れ出たガス冷媒は室内機103内の室内熱交換器104に流れる。尚、室内機103は2つの異なった居室107に設けられている。もちろん、これ以上の数の居室に設けることも可能である。
【0028】
室内熱交換器104には、室内ファン105によって空気が流されており、空気は冷媒の熱を奪って室内に供給され、これによって室内を暖める。この室内熱交換器104内部で、冷媒は冷却され液化する。液化した液冷媒は、室内膨張弁106を通過し、液側接続配管102を通って、液側阻止弁14に流れる。
【0029】
液側阻止弁14から室外機100に流入した冷媒は、まず室外機100内に収納された第一室外膨張弁15と第二室外膨張弁16へ分かれて流れる。その後、ここには図示しない液分配器を通過し、第一室外熱交換器20と第二室外熱交換器21へ流れる。本実施例では、この液分配器と室外熱交換器の間の配管に、第一室外熱交換器20には第一熱交換器温度センサ17が、第二室外熱交換器21には第二熱交換器温度センサ18が取り付けられている。
【0030】
第一室外熱交換器20は第一室外送風ファン22と、第二室外熱交換器21は第二室外送風ファン23と対応するようになっており、室外送風ファン22、23によって室外熱交換器20、21へ室外空気が流される。また、第二室外熱交換器21の外部周辺には外気温度センサ19が配置されており、室外送風ファン23によって吸い込まれた室外空気の温度を検出している。
【0031】
第一室外熱交換器20と第二室外熱交換器21で蒸発してガス化したガス冷媒は、四方弁12を通過し、アキュムレータ24を経て、圧縮機10に戻り、再び圧縮機10の圧縮作用によって高温高圧のガスに圧縮される。これらの繰り返しによって暖房運転を継続することができる。
【0032】
一方、冷房運転時には、四方弁12によって、圧縮機10の吐出配管と第一室外熱交換器20と第二室外熱交換器21が接続され、ガス側阻止弁13とアキュムレータ24が接続されるように、四方弁12での接続が切り替えられる。
【0033】
これによって第一室外熱交換器20と第二室外熱交換器21、及び室内熱交換器104に流れる冷媒の流れ方向が逆転する。また冷房運転時には、第一室外熱交換器20と第二室外熱交換器21ではガス冷媒が凝縮して液化し、室内熱交換器104では、液冷媒が蒸発してガス化する。これらの繰り返しによって冷房運転を継続することができる。
【0034】
暖房運転時に、室内機103から液側接続管102を経て室外機100の液側阻止弁14に戻ってきた冷媒は、第一室外膨張弁15と第二室外膨張弁16にて減圧され、低温低圧の気液2相状態となり、第一室外熱交換器20と第二室外熱交換器21に流れる。
【0035】
第一室外熱交換器20と第二室外熱交換器21には、第一室外送風ファン22と第二室外送風ファン23によって室外の空気が流されており、冷媒は第一室外熱交換器20と第二室外熱交換器21を流れる室外の空気温度よりも低い温度になるよう減圧されている。このため第一室外熱交換器20と第二室外熱交換器21で冷媒は、室外空気の熱を吸熱して蒸発する。
【0036】
このとき、室外熱交換器20、21へ流れる冷媒の温度が氷点より低いと、室外熱交換器20、21の表面で霜が成長(着霜)することがある。霜は室外熱交換器20、21の熱交換フィンの風路を塞ぐため室外熱交換器20、21を流れる風量が減り、暖房性能を低下させてしまう。
【0037】
したがって一般的には、定期的に暖房運転を一時停止し、冷凍サイクルを冷房運転に切り替えて室外熱交換器へ圧縮機10の高温の吐出ガス(冷媒ガス)を流し、室外熱交換器20、21を暖めて霜を融かす反転冷媒除霜運転を行っている。この反転冷媒除霜運転のときに、暖房運転が一時停止するので、室内への暖気の供給が一時的に止まって快適性が低下することがある。
【0038】
また、室外熱交換器20、21のガス側出口に、通常の4方弁へ流れる流路に加える形で、圧縮機10の吐出口を接続する流路を設け、この2つの流路を切り換える切換弁を追加して、除霜対象の除霜熱交換器にのみ圧縮機10の吐出ガスが流れるような構成とした、冷媒除霜暖房運転も知られている。
【0039】
この冷媒除霜運転によれば、2台の室外熱交換器20、21のうち1台の室外熱交換器にのみ圧縮機10の吐出口から高温の冷媒ガスを供給できるため、素早い除霜が可能となる。また、もう片方の室外熱交換器は通常の暖房運転が可能となるため、室内の暖房を継続することができる。
【0040】
しかしながら、室外熱交換器20、21に切換弁と追加の接続配管が必要となるため、製品コストが増大する、また圧縮機を稼働させ、これによって生じさせた熱エネルギーを除霜に使うため、エネルギーロスに繋がる、といった課題がある。
【0041】
一方で、特許文献1に記載されているように、室外熱交換器を2つに分割し、分割した室外熱交換器の夫々に室外膨張弁を設け、室外空気の温度が氷点より高い場合に、片側の除霜熱交換器の室外膨張弁を閉じ、室外送風ファンにより風を送ることで除霜する外気除霜運転についても知られている。
【0042】
この特許文献1の方法では、室外空気の温度が氷点より高いと、圧縮機は止めずに、片側の除霜熱交換器の室外膨張弁を全閉として冷媒供給を止めて室外空気による除霜を行うので、除霜熱交換器の表面に付着した霜は融けて水となり、重力によって下方へ排除されるようになる。更に残りのもう一方の非除霜熱交換器を用いて、暖房運転を継続することが可能となる。
【0043】
一方、室外空気の温度が氷点より低い場合は、除霜運転で必要とする熱エネルギーを低減することを目的として、除霜熱交換器の室外膨張弁を開くことで除霜熱交換器に冷媒を流し、除霜熱交換器内の冷媒の温度を室外空気の温度近傍まで昇温させるようにしている。その後、高温の冷媒ガスを利用した冷媒除霜運転、もしくは、反転冷媒除霜運転を行うようにしている。
【0044】
しかしながら、室外空気の温度が氷点より低い温度においては、除霜熱交換器に温度が低い冷媒が流れているので、冷媒除霜運転や反転除霜運転に移行する間に霜が再付着して、霜が成長するといった現象を生じる恐れがある。このため、その後の除霜時間が長くなるといった問題を生じる。
【実施例】
【0045】
このような課題を解決するために、本実施形態では、積極的に霜の昇華作用を用いることで、室外空気の温度が氷点より低い場合でも外気除霜運転を行うことを特徴としている。このような外気除霜運転は、室外空気の温度が氷点より低い場合であっても、相対湿度が100%未満であり、除霜熱交換器に冷媒の供給が停止されて除霜熱交換器の冷媒による冷却が無い場合には、昇華作用によって熱交換フィン上の霜は送風されている室外空気へ散逸する、という事実に立脚している。
【0046】
したがって、室外空気の温度が氷点より低い条件において、除霜熱交換器の室外膨張弁を全閉として温度の低い冷媒が流れるのを停止し、室外送風ファンによる送風を継続することで昇華作用によって除霜が可能となる。
【0047】
ここで、この昇華作用による除霜は、室外空気の温度と湿度によって除霜時間が変わる。従って、除霜時間の完了を予め定めた時間で管理するのは困難である。本実施形態では、室外熱交換器毎に対応する室外送風ファンの電力量をモニタすることで、除霜の完了指標としている。
【0048】
つまり、外気除霜運転においては、室外送風ファンを同一回転数に維持した状態で、除霜中の電力量が着霜前に回復したことをもって除霜完了とする判断が可能となる。尚、着霜が発生したと判断する着霜電力閾値や、除霜が完了したと判断する除霜電力閾値は、予め着霜後と着霜前の室外送風ファンの電力量を求めておいて、これらの電力量を基準にして上述した判断に利用することができる。
【0049】
ここで、
図3においては、室外送風ファンは分割された室外熱交換器20、21の夫々に設けてあるが、1個の室外送風ファンとすることもできる。その理由は、外気除霜運転では分割された室外熱交換器20、21の双方とも送風されるためである。
【0050】
また、外気除霜運転に切り替えた際、一方の除霜熱交換器の室外膨張弁を全閉とするため、他方の非除霜熱交換器の室外膨張弁の開度を増大させない限り、または圧縮機回転数を低下させない限り、室外熱交換器内部の蒸発温度、または圧縮機吸込み圧力が低下する。
【0051】
そして、室外熱交換器の蒸発温度の低下は、霜の成長を加速させると共に、着霜量の増加につながる。また圧縮機の吸込み部の冷媒圧力の低下は、冷媒循環量の低下につながり、暖房能力の低下にもつながる。更に、圧縮機の回転数の低下自体も冷媒循環量の低下と暖房能力の低下につながる。
【0052】
一方で、暖房運転を継続する側の非除霜熱交換器の室外膨張弁の開度を大きく増大させると、室外送風ファンの回転数の増加や、室外熱交換器の熱交換能力に余裕がない場合には、冷媒のガス化が不十分となり、圧縮機へ液冷媒が供給されることとなる。ただ、圧縮機と繋がる途中にアキュムレータが設けてあるので、ここに液冷媒が一時保管されて直ぐに圧縮機に大量の液冷媒が供給されて圧縮機の故障へつながることはないが、一般的に圧縮機は過剰な液冷媒の戻り込みにより故障することが考えられる。
【0053】
そこで本実施例では、除霜熱交換器の側の室外膨張弁を全閉にすることに加えて、
図3に示すように、圧縮機10とアキュムレータ24を結ぶ冷媒流路であるホットガスバイパス51を備え、そのホットガスバイパス51の間に冷媒流量が調整可能なホットガス調整弁52を設ける構成とした。つまり、圧縮機10の吸入側と分割された室外熱交換器20、21の両方を接続する冷媒通路の途中にアキュムレータ24が設けられ、更にアキュムレータ24と圧縮機10の吐出側とはホットガスバイパス51によって接続されていると共に、ホットガスバイパス51には冷媒流量が調整可能なホットガス調整弁52が設けられている。
【0054】
これにより、非除霜熱交換器での冷媒のガス化が不十分な時に、圧縮機10の吐出口からでる高温の冷媒ガスをアキュムレータ24に戻すことで、アキュムレータ24内の液冷媒を蒸発させることができる。これによって、室内機103へ流れる冷媒の比エントロピーと循環量を維持し、暖房能力を維持することができる。
【0055】
特に本実施形態では、室外送風ファン22、23の回転数が増加させられないような暖房運転を行っている状態において、外気除霜運転を行う場合に、除霜熱交換器、例えば、第一室外熱交換器20に対応する第一室外膨張弁15を全閉としながら、非除霜熱交換器、例えば第二室外熱交換器21に対応する第二室外膨張弁16の開度を増大する方向に動作させる。更に、圧縮機10の吐出口とアキュムレータ24を介して圧縮機期の吸込口を接続するホットガスバイパス51に設けられたホットガス調整弁52を開けて、圧縮機10の回転数を増加させるように動作させる。
【0056】
これによって、冷媒循環量を維持しながら、暖房運転を継続するための非除霜熱交換器である第2室外熱交換器21に対応する室外膨張弁16の開度を増大するため、非除霜熱交換器の蒸発温度を下げ過ぎることがなく、着霜の恐れを抑制できるようになる。
【0057】
また、暖房運転を継続する非除霜熱交換器(第二室外熱交換器21)で蒸発しきれなかった液冷媒は、圧縮機10から吐出される冷媒ガスの一部を、アキュムレータ24の手前に供給される高温ガスによって蒸発させることができる。
【0058】
これに伴って、圧縮機10はこの冷媒を蒸発させる分だけ余計に冷媒を圧縮する必要があるので、室内機へ流れる冷媒循環量を維持するためには、圧縮機の回転数を増やす必要がある。しかしながら、圧縮機10のエネルギーを除霜に使う場合に比べて、圧縮機10のエネルギーは全て暖房のために使用されるので、エネルギーの損失は少ないものとなる。
【0059】
図4には、本実施形態の外気除霜運転を実行する時のフローチャートを示している。この制御フローは、制御盤26に内蔵されたマイクロコンピュータによって実行される。
【0060】
≪ステップS10≫
先ずステップS10においては、暖房運転中に除霜運転モードを実行するタイミングの到来を待機している。例えば、暖房運転を行っている状態において、所定の時間間隔で発生される割込みタイミングで除霜運転モードを立ち上げる。割込みタイミングが到来すると除霜運転モードが立ち上がり、ステップS11に移行する。
【0061】
≪ステップS11≫
ステップS11においては、室外送風ファンの電力量が着霜電力閾値を超えたかどうかを判断し、着霜が発生した状態ではないと判断されると再びステップS10に戻って割り込みタイミングの到来を待つことになる。一方、室外送風ファンの電力量が着霜電力閾値を超えたかどうかを判断し、着霜が発生した判断される(推定される)とステップS12に移行する。
【0062】
≪ステップS12≫
ステップS12においては、外気温度センサ19によって室外空気の温度を測定し、氷点より低い状態が所定時間に亘り継続すると、本実施形態の特徴である昇華作用による除霜運転モードを実行する。この場合はステップS14に移行する。一方、室外温度が氷点より高い状態であると、ステップS13に移行する。
【0063】
≪ステップS13≫
ステップS13においては、他の除霜モードを開始する。この他の除霜モードは、本実施形態と関連性が低いので説明を省略するが、例えば、冷媒除霜運転であっても良い。
【0064】
≪ステップS14≫
ステップS14においては、ステップS11で着霜状態であること、及びステップS12で室外温度が氷点より低いことが判定されているので、昇華作用による外気除霜運転の立ち上げを開始する。昇華作用による外気除霜運転の立ち上げが開始されると、次のステップS15以降の具体的な制御ステップが実行される。
【0065】
≪ステップS15≫
ステップS15においては、昇華作用による外気除霜運転を開始しても、圧縮機10の回転数、及び第一室外送風ファン22と第二室外送風ファン23の回転数は、現状のまま維持されている。このように、第一室外送風ファン22と第二室外送風ファン23の回転数を維持するのは、除霜熱交換では昇華による除霜を行うためであり、非除霜熱交換器では吸熱して暖房運転を継続させるためである。また、この時の圧縮機10の回転数は、予め定めた所定値よりも小さい状態にある。そして、この状態を維持したままステップS16に移行する。
【0066】
≪ステップS16≫
ステップS16においては、除霜対象である第一室外熱交換器(除霜熱交換器)20に対応する第一室外膨張弁15を全閉に向けて閉じる。また、除霜対象でない第二室外熱交換器(非除霜熱交換器)21に対応する第二室外膨張弁16は、圧縮機10の吐出ガス温度等を指標とした開度に制御されるように動作される。
【0067】
そして、第一室外膨張弁15が閉じた分だけ、第二室外熱交換器21へ流れる冷媒量は増加し、第二室外膨張弁16で冷媒ガスが減圧される冷媒量が増える。従って圧縮機の吸込み冷媒圧力(Ps)が低下する。これによって暖房能力が低下するので、以下に示すステップS17に移行する。
【0068】
≪ステップS17≫
ステップS17にいては、先ずは第一室外送風ファン22と第二室外送風ファン23の回転数が増やせるかどうかを判断する。現在の第一室外送風ファン22と第二室外送風ファン23の回転数が増やせるようであれば、ステップS18に移行し、回転数が増やせないのであれば、ステップ20に移行する。
【0069】
≪ステップS18≫
ステップS18においては、第一室外送風ファン22と第二室外送風ファン23の回転数を増やして、第一室外熱交換器20と第二室外熱交換器21での冷媒の蒸発圧力を向上させるようにする。ここで、第一室外送風ファン22の回転数の増加は、第一室外熱交換器20の昇華作用による外気除霜の終了を早めることができ、また、第二室外送風ファン21の回転数の増加は、第二室外熱交換器21内部の冷媒の蒸発を向上することにつながる。第一室外送風ファン22と第二室外送風ファン23の回転数を増やすとステップS19に移行する。
【0070】
≪ステップS19≫
ステップS19においては、暖房能力の状態を判断する制御を実行する。ここでは、まだホットガス調整弁52が開いていないことを前提として、圧縮機10の吸込み圧力(Ps)と圧縮機10の回転数から冷媒循環量を求め、また、圧縮機10の吐出ガスの圧力(Pd)と温度(Td)から室内機へ供給される冷媒の比エンタルピー量を求め、室内熱交換器104の出口の冷媒の過冷却度(SC)から室内熱交換器104の出口の比エンタルピーを求め、これらのパラメータから暖房能力を推定している。
【0071】
推定された暖房能力が、所定の暖房能力閾値を超えていないと判断された場合は、再びステップS17に戻って第一室外送風ファン22と第二室外送風ファン23の回転数を増やす制御を繰り返すことになる。推定された暖房能力が、所定の暖房能力閾値を超えていると判断された場合は、ステップ23移行する。
【0072】
≪ステップS20≫
ステップS17に戻って、第一室外送風ファン22と第二室外送風ファン23の回転数がこれ以上増やせないと判断されると、ホットガスバイパス弁52を開いて暖房能力を増加させる制御を行うことが必要となる。
【0073】
このために、ステップS20においては、圧縮機10の回転数が増やせるかどうかを判断する。現在の圧縮機10の回転数が、増やせるようであればステップS21に移行し、回転数が増やせないのであればステップS24に移行する。
【0074】
尚、この制御ステップで圧縮機10の回転数が増やせないと判断された場合は、ステップS17の判断にある通り、第一室外送風ファン22と第二室外送風ファン23の回転数も増やせない状態であるので、暖房能力の不足を補う方法がないことになる。この場合には、外気除霜を終了して冷媒除霜運転等の別の除霜運転モードを実行する。尚、実際には、ステップS24に移行することは生じ難くいものである。
【0075】
≪ステップS21≫
ステップS21においては、ステップS20で圧縮機10の回転数を増やせると判断されているので、圧縮機10の回転数を増加させながら、ホットガス調整弁52の開度を増加する。これによって、暖房能力の増加を図ることができる。圧縮機10の回転数を増やし、またホットガス調整弁52の開度を増加するとステップS22に移行する。
【0076】
≪ステップS22≫
ステップS22においては、暖房能力の状態を判断する制御を実行する。ステップS19と同様に、圧縮機10の吸込み圧力(Ps)と圧縮機10の回転数から冷媒循環量を求め、また、圧縮機10の吐出ガスの圧力(Pd)と温度(Td)から室内機へ供給される冷媒の比エンタルピー量を求め、室内熱交換器104の出口の冷媒の過冷却度(SC)から室内熱交換器104の出口の比エンタルピーを求め、これらのパラメータから暖房能力を推定している。
【0077】
ただ、ホットガス調整弁52が開かれている状態では、圧縮機10の吸込み圧力(Ps)と圧縮機10の回転数から予測した冷媒循環量から、圧縮機10の吐出圧力(Pd)と圧縮機10の吸込み側圧力(Ps)の差分に、ホットガス調整弁52の開度に応じた係数をかけて求めたホットガスバイパス冷媒循環量を差し引いて、室内機へ流れる冷媒循環量を推定している。
【0078】
尚、圧縮機10の吸込み圧力(Ps)は、室内機103内の熱交換器104での冷媒蒸発温度から、その飽和圧力を求めることもでき、同様に圧縮機の吐出圧力(Pd)は、室内機103内の室内熱交換器104での冷媒の凝縮温度から求めることもできる。
【0079】
推定された暖房能力が、所定の暖房能力閾値を超えていないと判断された場合は、再びステップS20に戻って圧縮機10の回転数を増やす制御を繰り返すことになる。推定された暖房能力が、所定の暖房能力閾値を超えていると判断された場合は、ステップ23移行する。
【0080】
≪ステップS23≫
ステップ19、及びステップS22で暖房能力が足りていると判断された場合には、このステップS23で昇華作用による外気除霜運転の終了判断を行う。この外気除霜の終了判断は、先に述べたように、除霜熱交喚器の側の室外送風ファンの電力量が、予め定めた除霜電力閾値を超えると除霜が完了したと判断する(推定する)ことができる。
【0081】
尚、室外送風ファンの電力量を使用しないでも判断することができる。例えば除霜対象が第一室外熱交換器20であったならば、第一熱交換器温度センサ17の温度を指標とすれば良い。
【0082】
つまり、第一熱交換器温度センサ17の温度は、霜が昇華しきっていない場合には、昇華によって室外熱交換器が冷やされるため、送風される室外空気の温度より低くなる。したがって、この第一熱交換器温度センサ17での温度が、外気温度センサ19での温度と同程度となった場合に除霜終了と判断すればよい。
【0083】
尚、各温度センサ17、19の測定温度のばらつきを加味して、外気除霜の終了判断の閾値を決定する必要がある。外気除霜の終了判断が出たならば、ステップ24に移行する。
【0084】
≪ステップS24≫
ステップS24においては、昇華作用による外気除霜運転が終了され、除霜室外熱交換器側の室外膨張弁15とホットガス調整弁52の制御は、通常暖房時の制御へと移行される。
【0085】
このようにして、昇華作用による除霜が実行されて室外空気の温度が氷点より低い条件においても、暖房運転を継続しながら室外空気を利用した除霜が可能となる。
【0086】
図5には、丸管の伝熱管を使用した室外熱交換器の構造を示している。図に示すように室外熱交換器20、21は、U字形状に曲げられた伝熱管34と、板状の熱交換フィン35によって構成されている。本実施形態では、室外熱交換器は3列としており、空気の流れに対して風上側を1列目とし、最も風下列を3列目とする。
図5に示すように熱交換フィン35は、一定の間隔で密に配置されており、その間隔であるフィンピッチは2mm以下であることが多い。このようにフィンピッチを詰めると、フィン表面の空気への熱伝達率は向上する。この熱伝達率は昇華のような物質伝達と相関があり、熱伝達率が高いほど昇華もしやすくなり、外気除霜にかかる時間を短縮することができる。
【0087】
図6には、本実施形態で使用した室外熱交換器のうち一部の冷媒の流れを示している。
図6中の横方向を列方向とし、左から1列目、2列目、3列目と数える。また
図6中の縦方向を段方向とし、伝熱管の数で1段、2段と数える。
図6に示す構成では、本実施形態で使用する室外熱交換器の一部であり12段分を示している。
【0088】
図6中の黒い矢印は冷媒の流れを示し、暖房運転時に室外膨張弁30を出た2相流は、液分配器31で分配され、キャピラリー32を通って室外熱交換器の各冷媒パスに流される。尚、冷媒パスは冷媒の流路を意味している。その後、冷媒は矢印の方向に沿って室外熱交換器の3列目からガスヘッダ33に流入する。ガスヘッダ33で合流した冷媒は、四方弁へ流れる。
【0089】
熱交換器温度センサ17(18)は、本実施形態では、例えば
図6のキャピラリー32の途中に設けられている。この部分は暖房運転時においては、まだ外気によって加熱されていないので2相流のままであり、蒸発温度に近い温度を示すことが可能である。
【0090】
また、液分配器31からキャピラリー32を介して接続される室外熱交換器20(21)の液冷媒出入口は、室外熱交換器20(21)の最も風上列であることが多い。これは、冷房運転時に凝縮器として使用した際に、最も液側である液分配器近傍の冷媒を、温度低が低い空気で冷却し、冷媒のサブクール度を十分にとって冷房性能を向上させることができるからである。
【0091】
霜は、特に室外熱交換器20、21の風上側の一列目で多く成長する。これは、暖房運転時に最も湿度が高い空気が、冷却された熱交換フィン35に最初に接触するためである。従って室外熱交換器20、21の送風性能の低下に最も影響を与えるのが1列目である。
【0092】
先に述べたようにキャピラリー32は、最も着霜量の多い1列目と接続されることが多い。従って除霜時に霜が融けたことを検知するにも、最も霜の多い部分に近い温度が測れるほうが望ましい。このため、熱交換器温度センサ17、18は、キャピラリー32の途中に設けられている。
【0093】
図7には本実施形態で採用した熱交換フィン35の詳細な形状を示している。本実施形態では、
図7に示すように、伝熱管34が貫通するフィンカラー42の間の表面に切り起こしされたオフセット部43やリブ部41を有するフィンを室外熱交換器に用いた。
【0094】
オフセット部43は、通常の熱交換時にはフィン表面にできる温度境界層を分断し熱交換性能を向上させる。例えば冷房時には、室外熱交換器20、21は凝縮器として用いられ、冷媒の熱を外気に放熱する。このとき、フィンの風上から来た冷たい空気は、フィンによって暖められるが、当然この現象はフィン表面近傍で顕著となり、より風下のフィン近傍の空気温度は、フィンから離れた空気と比べて温度が高くなる。
【0095】
従ってフィン表面だけでみると、フィンとの温度差が小さくなるため、熱交換量が小さくなる。しかしながら、オフセット部43は、風上のフィン表面位置からは、離れた位置にあり、空気の温度上昇が高くない部分を使えることとなる。従ってオフセット部43は、オフセットさせない場合に比べて熱交換がし易くなる。
【0096】
これと同様に、外気除霜運転時、特に室外空気の温度が氷点より低い状態で昇華作用による除霜を行うときには、フィン表面にできる湿度分布の境界層を分断することが昇華を促進する。つまり、風上から一定の湿度で流入した空気は、フィン表面で霜が昇華した分の湿度を含み湿度が上昇する。この湿度の上昇は先ほどの温度と同じくフィン表面で顕著であり、これが風下のフィン表面の霜の昇華作用を抑制することとなる。
【0097】
これに対して、オフセット部43があるフィンでは、風上のフィン表面から離れているところの空気と接触するため、湿度上昇の低い空気で霜を昇華することができる。このため、オフセット部43のないフィンと比べると、昇華できる霜を増やすことができる。
【0098】
この現象をマクロでみると、熱伝達率が高いフィンほど、昇華性能も高いことにつながる。本実施形態のフィンに設けたリブ部は、フィンの強度を向上させると同時に熱伝達率の向上にも寄与している。従って、このリブ部41も昇華を促進し、室外送空気の温度が氷点より低い条件での外気除霜時間を短縮するのに寄与する。
【0099】
また実施形態においては、フィンのピッチは1.7mmのものを使用している。これは、オフセット部43があるフィンを使用して熱伝達率を高めているためである。一方、オフセットの無いフィンで置き換えるのであれば、フィンピッチはより小さい1.3mm程度のフィンが望ましい。
【0100】
また本実施形態で除霜対象となる除霜熱交換器には、室外送風ファンによって前面風速が1.0m/sを超える風を供給するようにしている。これは、風量を増やすことで、常に相対湿度の低い空気を除霜熱交換器に供給するためであり、また熱伝達率を向上させることで、昇華の速度を向上させるためでもある。
【0101】
加えて、本実施形態の第一室外熱交換器20と、第二室外熱交換器21は横並びに配置している。これは、例えば室外熱交換器を高さ方向に上下に分割する方法があるが、これでは上部の室外熱交換器を除霜し、下部で暖房運転するさいに、上部の室外熱交換器で融解した霜が下部の室外熱交換器で凍結し、下部の室外熱交換器の送風性能低下を加速させてしまうことを避けるためである。
【0102】
本実施形態のように横並びに配置すれば、室外空気の温度が氷点より高い場合の外気除霜に関しても、除霜対象の室外熱交換器の融解した水が、もう一方の暖房運転を続ける室外熱交換器に流れて熱交換性能が下がるのを抑制することができる。
【0103】
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0104】
10…圧縮機、11…冷媒配管、12…四方弁、13…ガス側阻止弁、14…液側阻止弁、15…第一室外膨張弁、16…第二室外膨張弁、17…第一熱交換器温度センサ、18…第二熱交換器温度センサ、19…外気温度センサ、20…第一室外熱交換器、21…第二室外熱交換器、22…第一室外送風ファン、23…第二室外送風ファン、24…アキュムレータ、25…ベルマウス、26…制御盤、27…底部設置板、28…冷媒タンク、29…前面パネル、30…室外膨張弁、31…液側分配器、32…キャピラリー、33…ガスヘッダ、34…伝熱管、35…フィン、37…熱交換器温度センサ、41…リブ部、42…フィンカラー、43…オフセット部、51…ホットガスバイパス、52…ホットガス調整弁、100…室外機、101…ガス側接続管、102…液側接続管、103…室内機、104…室内熱交換器、105…室内ファン、106…室内膨張弁、107…居室。