(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】宇宙航行体
(51)【国際特許分類】
B64G 1/50 20060101AFI20230901BHJP
【FI】
B64G1/50 300
(21)【出願番号】P 2023547282
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(86)【国際出願番号】 JP2022031238
【審査請求日】2023-08-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506097081
【氏名又は名称】株式会社QPS研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】北村 広樹
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5806803(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0288928(US,A1)
【文献】特表2010-501383(JP,A)
【文献】実開平06-057800(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの周波数帯域の周波数を含む信号を出力する発振器を含む複数の機器を、内部に搭載する本体と、
該本体の外部に
おいて該本体の1つの外面に対向して配置され、基準方向に対して略平行に延び、相互に対向して設けられた複数の放熱板
であって、該複数の放熱板のうちのいずれかの放熱板に太陽光が照射されるように配置された、複数の放熱板と、
該複数の放熱板
と前記本体の前記1つの外面とにより囲まれ
前記本体の外部に設けられた領域に配置され、該複数の放熱板のうちのいずれかの放熱板に接続され、前記発振器により出力された前記信号を増幅する、ように構成された少なくとも1つの増幅器と、
前記本体の外部に配置され、前記少なくとも1つの増幅器により増幅された前記信号を用いて、前記基準方向に沿って進行する電波を放射する、ように構成されたアンテナユニットと、
を具備することを特徴とする宇宙航行体。
【請求項2】
前記少なくとも1つの増幅器は、前記本体に接触しない位置において、前記複数の放熱板のうちのいずれかの放熱板に固定される、請求項1に記載の宇宙航行体。
【請求項3】
前記複数の放熱板の各々が、該放熱板の側壁及び前記本体の外面の両方に取り付けられる略L字状又は略逆L字状の断面形状を含む少なくとも1つの断熱部材を介して該本体に固定されることにより、該本体との間に距離をおいて設けられる、請求項1に記載の宇宙航行体。
【請求項4】
前記複数の放熱板の各々の側壁が、前記本体の外面の外縁から該外面の中央に向かう方向に距離をおいた位置に配置される、請求項1に記載の宇宙航行体。
【請求項5】
前記複数の放熱板の上方に配置されて該複数の放熱板の各々に熱接続され、該複数の放熱板
及び前記本体の前記1つの外面と協働して前記少なくとも1つの増幅器
及び前記領域を囲む、熱伝導性部材により形成された上板、をさらに具備する、請求項1に記載の宇宙航行体。
【請求項6】
前記上板の下面及び前記複数の放熱板の各々の側壁に当接して、該下面と該側壁とを熱接続する少なくとも1つの第1の熱伝導性部材、をさらに具備する、請求項5に記載の宇宙航行体。
【請求項7】
前記複数の放熱板のうち隣接する2つの放熱板を熱接続する少なくとも1つの第2の熱伝導性部材、をさらに具備する、請求項1に記載の宇宙航行体。
【請求項8】
前記本体の外面に少なくとも1つの断熱部材を挟んで固定され、該外面に交差する方向に延び、前記少なくとも1つの増幅器の各々を支持する、ように設けられた少なくとも1つの支持フレーム、をさらに具備する、請求項1に記載の宇宙航行体。
【請求項9】
前記少なくとも1つの断熱部材が、0.2W/m・K以下の熱伝導率を有する、請求項
3又は請求項8に記載の宇宙航行体。
【請求項10】
前記アンテナユニットの全体が、前記本体の前記1つの外面との間に前記複数の放熱板を挟む位置に配置される、請求項1に記載の宇宙航行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願に開示された技術は、合成開口レーダー(Synthethic Aperture Radar;SAR)を備えた衛星が、SAR観測中に増幅器から発生した熱を放熱する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
地球を観測する衛星は、大まかにいえば、光学衛星とSARを備えた衛星(SAR衛星)とに分けられ得る。
【0003】
光学衛星は、地表面を通常のカメラで観測することにより、地表面を写したカラー画像を生成することができる。これにより、可視化されたカラー画像から多くの情報を得ることができる。しかし、光学衛星には、太陽の光が地表面で反射しない夜間、及び、地表面に雲がかかった悪天候といった環境下では、地球を観測することができないという欠点がある。これに対して、SAR衛星には、夜間及び悪天候といった環境下においても、地球を観測することができるという利点がある。
【0004】
一方、SAR衛星には、レーダーを稼働するために大きな電力が必要である。さらに、入力された信号の電力をそのような大きな電力に変換してレーダーに供給する増幅器の変換効率は、通常、30~40%程度であるので、残りの損失分は、熱として発生する。そのため、SAR衛星は、長時間の撮影を行う場合には、適切な排熱設計を必要とする。
【0005】
例えば、SAR衛星が、30%の変換効率を有する増幅器を用いて300Wの平均電力で観測を行う場合には、供給電力は1kWとなり、その損失分である700W(=J/sec)は、熱として、SAR衛星の内部に蓄積する。SAR衛星が、このような観測を1分間継続した場合に発生する熱量は42000Jである。この熱量は、100gのアルミニウムを例にとれば、このアルミニウムの温度を摂氏400度以上に上昇させる熱量である。このような熱量がSAR衛星の内部に搭載される機器に蓄積した場合には、このような機器の温度が、この機器を破壊し得る破壊温度に達する。
【0006】
地球を観測するSAR衛星にあっては、連続した撮影時間の長さが観測範囲の広さに直結するので、熱源となる素子からどのようにして排熱を行うかが重要である。
【0007】
一般的に、衛星内での排熱技術としては、大まかにいえば、ヒートパイプ及びサーマルルーバ等のように、電力を使用して排熱対象機器から熱をアクティブに逃がす技術、並びに、熱伝導及び輻射等を利用して排熱対象機器から熱をパッシブに逃がす技術が、存在する。
【0008】
前者の技術は、ヒートパイプ等に電力を供給する給電装置を必要とし、さらに、そのような給電装置を設けることによって衛星の質量を増加させる。したがって、前者の技術には、電力及び質量という2つの点において制約が生ずる。したがって、衛星、特に小型の衛星では、後者の技術のように、排熱対象機器からパッシブに熱を逃がすことが好ましい。
【0009】
特許第3979325号公報(特許文献1)は、スラスターの熱をパッシブに逃がすためのヒートシンクを開示する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、本文献に開示された技術では、ヒートシンクが衛星の内部に設置されるので、熱が衛星の内部に蓄積される。したがって、かかる技術では、衛星の外部に熱を放出する効果は非常に低い。
【0012】
そこで、本件出願に開示された技術は、排熱能力を向上させた宇宙航行体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様に係る宇宙航行体は、「少なくとも1つの周波数帯域の周波数を含む信号を出力する発振器を含む複数の機器を、内部に搭載する本体と、該本体の外部に配置され、基準方向に対して略平行に延び、相互に対向して設けられた複数の放熱板と、該複数の放熱板により囲まれた領域に配置され、該複数の放熱板のうちのいずれかの放熱板に接続され、前記発振器により出力された前記信号を増幅する、ように構成された少なくとも1つの増幅器と、前記本体の外部に配置され、前記少なくとも1つの増幅器により増幅された前記信号を用いて、前記基準方向に沿って進行する電波を放射する、ように構成されたアンテナユニットと、を具備する」ことができる。
【発明の効果】
【0014】
本件出願に開示された技術によれば、排熱能力を向上させた宇宙航行体を提供することができる。
【0015】
なお、上述した効果は、説明の便宜上に例示した効果に過ぎず、本件出願に係る発明を限定するものではない。本件出願に開示された技術によれば、上記効果に加えて、又は、上記効果に代えて、本明細書に記載されたいずれかの効果を奏することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る宇宙航行体の構成の一例を模式的に示す側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した宇宙航行体の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した送信器110の機能の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図1に示した宇宙航行体1の一部の構成を、この宇宙航行体1の中心部分を通る切断面からみて模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示した宇宙航行体1の一部の構成を矢印Aに示す方向からみて模式的に示す上面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示した宇宙航行体1に含まれる放熱板の延設方向を説明する模式図である。
【
図7】
図7は、
図1に示した宇宙航行体1の放熱ユニット400に含まれ得る支持フレームの構成の一例を模式的に示す側面図である。
【
図8】
図8は、
図1に示した宇宙航行体1の別の構成例の一部分を模式的に示す斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8に示した第1の熱伝導性部材500及びその周辺のみを拡大して示す斜視図である。
【
図10】
図10は、
図4に示した宇宙航行体1の一部の構成を矢印Aに示す方向からみて模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の様々な実施形態を説明する。なお、図面において共通した構成要素には同一の参照符号が付されている。また、或る図面に表現された構成要素が、説明の便宜上、別の図面においては省略されていることがある点に留意されたい。さらにまた、添付した図面が必ずしも正確な縮尺で記載されている訳ではないということに注意されたい。
【0018】
1.宇宙航行体の構成
図1は、一実施形態に係る宇宙航行体の構成の一例を模式的に示す側面図である。なお、説明の便宜上、
図1において、リブ136及び面状体137等を含む一部の構成が部分的に省略されている。
図1に示すように、宇宙航行体1は、大まかにいえば、通信ユニット100と、電源ユニット200と、本体300と、放熱ユニット400と、を含むことができる。
【0019】
電源ユニット200は、簡潔にいえば、宇宙空間において制御ユニット(図示しない)及び通信ユニット100等を含む様々な機器を駆動するための電力を供給することができる。なお、上記制御ユニットは、宇宙空間において宇宙航行体1自体の航行の制御、並びに、宇宙航行体1の動作及び姿勢の制御を行う、ように構成されたユニットであり得る。
【0020】
本体300は、簡潔にいえば、電源ユニット200及び制御ユニット(図示しない)等を含む様々な機器を内部に搭載することができる。
【0021】
通信ユニット100は、簡潔にいえば、宇宙空間(特に地球)に向けて電波を放射し、宇宙空間(特に地球)から電波を受信する、ように構成されたユニットであり得る。
【0022】
放熱ユニット400は、図示しない増幅器により発生した熱を放熱する、ように構成されたユニットであり得る。
【0023】
本実施形態では、宇宙航行体1は、一例として、合成開口レーダー(Synthethic Aperture Radar;SAR)を搭載した小型衛星(小型SAR衛星)として利用され得る。このような小型SAR衛星は、マイクロ波、ミリ波又はサブミリ波帯域の電波を観測対象物(例えば地球)に向けて放射し、その観測対象物からの反射波を受信することにより、観測対象物の観測及び/又は分析等を行うために、用いられ得る。
【0024】
ここで、観測対象物からの反射波を受信するSAR衛星は、高出力の電力を必要とするので、電力を増幅する増幅器を搭載する必要がある。この増幅器は、高出力の電力を生成するために非常に重要な熱源となり得る。したがって、特に、小型SAR衛星として宇宙航行体1を利用する場合には、このような増幅器に発生する熱をいかに効率よく放熱するかが非常に重要である。他方、小型SAR衛星では、増幅器を含む電子部品を限られた収納スペースに配置する必要があるので、放熱効果を考慮した上で、効率よく電子部品を配置することが重要である。
【0025】
なお、以下、
図1に示す宇宙航行体1を小型SAR衛星として利用する場合について説明する。しかし、本件出願に開示された技術は、他の用途又は他の形態(例えば大型衛星)についても適用することが可能である。
【0026】
(1)本体300
本体300は、内部に様々な電子機器及び機構部品等を収容するための収容空間(図示しない)を含むことができる。本体300は、一例として、上面視において略六角形の形状を有する八面体により形成され、収容空間をその内部に構成すべく中空状に形成され得る。但し、本体300の形状は、本体300の内部に収容空間を形成可能である限りにおいて、他の多面体及び球体等を含む任意の形状を呈することができる。なお、以下、一例として、本体300が、上面視において略六角形の形状を有する八面体を呈するように構成される場合について説明する。
【0027】
本体300の内部に形成された収容空間(図示せず)には、
図2を参照して後述する、コンピュータ301、センサ330、アクチュエータ340、電源制御回路210、バッテリ220及び通信制御回路170等を含む、様々な電子機器並びにこれらを電気的に接続する配線類が、収容され得る。
【0028】
(2)電源ユニット200
電源ユニット200は、電源制御回路210及びバッテリ220(後述する
図2参照)に加えて、一実施形態では、ソーラーパネル230を含むことができる。電源制御回路210及びバッテリ220は、本体300の内部に形成された収容空間に収容され得る。ソーラーパネル230は、一例として、本体300の外面を被覆するように、本体300の壁面(外面)に配置され得る。このようにソーラーパネル230を配置することにより、本体300の壁面を有効活用することができる。
【0029】
(4)放熱ユニット400
放熱ユニット400は、本体300の外部かつ上方において、本体300に接触しない位置に配置され得る。放熱ユニット400は、大まかにいえば、相互に対向して設けられた複数の放熱板402と、複数の放熱板402により囲まれた領域に配置され、複数の放熱板402のうちのいずれかの放熱板402に固定された、少なくとも1つの増幅器112(後述する
図3、
図4及び
図7等参照)と、を含むことができる。
【0030】
ここでは、本体300が上面視において略六角形の形状を有する八面体を呈するように形成されることに伴って、複数の放熱板402は、上面視において全体として略六角形を呈するように、相互に対向する6つの放熱板402を含むことができる。
【0031】
なお、このような放熱ユニット400の詳細な構成については後述する。
【0032】
(3)通信ユニット100
通信ユニット100は、送信器110(後述する
図2参照)と、輻射器120(後述する
図2及び
図4参照)と、輻射器120に対して所定の(予め定められた)角度を成して対向するように配置され、輻射器120から放射される電波を主リフレクタ132に反射させる副リフレクタ(副反射鏡)131と、副リフレクタ131の鏡面に対向するように配置され、副リフレクタ131により反射された電波をさらに反射させて外部に放射する主リフレクタ132と(主反射鏡)、副リフレクタ131を支持する支持ロッド135と、を含むことができる。
【0033】
主リフレクタ132は、ハブ139、複数のリブ136、及び、面状体137等を含むことができる。ハブ139は、放熱ユニット400(の後述する上板404)に固定され得る。ハブ139は、全体として略環状を呈するように構成され得る。
【0034】
複数のリブ136に含まれる各リブ136の一端がハブ139の外周面に固定され得る。隣接する2つのリブの間に延びるように面状体137が設けられ得る。各リブ136及び面状体137は、宇宙航行体1が搬送される局面及び打ち上げられる局面では、ハブ139に巻き付くようにコンパクトに折り畳まれ、宇宙航行体1が宇宙空間に到達した局面では、展開することができる。
【0035】
主リフレクタ132は、(宇宙航行体1が宇宙空間に存在する場合等には)上記のとおり主反射器として機能するために、パラボラ(放物)形状の反射面を呈するように形成され得る。主リフレクタ132は、輻射器120から放射され、副リフレクタ131により反射された電波を、この反射面を用いて反射させて、基準方向Dに沿って進行する電波を放射することができる。基準方向Dは、宇宙航行体1と地球(図示せず)とを結ぶ仮想的な線に沿って延び得る。
【0036】
なお、副リフレクタ131、主リフレクタ132、及び、支持ロッド135、のうちの少なくとも1つ以上が、「アンテナユニット」を構成するということができる。或いはまた、輻射器120、副リフレクタ131、主リフレクタ132、及び、支持ロッド135、のうちの少なくとも1つ以上が、「アンテナユニット」を構成するということもできる。さらには、送信器110、輻射器120、副リフレクタ131、主リフレクタ132、及び、支持ロッド135、のうちの少なくとも1つ以上が、「アンテナユニット」を構成するということもできる。
【0037】
このようなアンテナユニットは、一例では、
図1に示されるように、本体300との間に放熱ユニット400を挟む位置に、すなわち、放熱ユニット400の上方に配置され得る。別の例では、このようなアンテナユニットは、
図1には示された例とは異なり、本体300が有する面のうち、放熱ユニット400が取り付けられていないいずれかの面、例えば、
図1に示す本体300の下面に配置され得る。いずれにしても、アンテナユニットに含まれる主リフレクタ132は、上述したように、基準方向Dに沿って進行する電波を放射することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、宇宙航行体1が、主リフレクタ132がパラボラ形状に形成されたカセグレンアンテナを有する小型SAR衛星として用いられる場合について説明する。しかし、宇宙航行体1は、グレゴリアンアンテナ等を含む他のパラボラアンテナ、又は、平面アンテナを有する衛星であってもよい。
【0039】
2.宇宙航行体1の機能
図2は、
図1に示した宇宙航行体1の機能の一例を示すブロック図である。なお、宇宙航行体1は、
図2に示す構成要素の全てを備える必要はなく、一部を省略した構成を採ることも可能であるし、他の構成要素を含むことも可能である。例えば、宇宙航行体1は、複数の電源ユニット200及び/又は複数の通信ユニット100を搭載することも可能である。
【0040】
図2に示すように、宇宙航行体1は、大まかにいえば、制御ユニット350と、電源ユニット200と、通信ユニット100と、を含むことができる。これら構成要素は、制御ライン及びデータラインを介して相互に電気的に接続され得る。
【0041】
(1)制御ユニット350
制御ユニット350は、メモリ310、プロセッサ320及びセンサ330を含むことができる。メモリ310は、RAM、ROM、不揮発性メモリ及び/又はHDD等により構成され、記憶部として機能することができる。
【0042】
メモリ310は、宇宙航行体1の様々な制御のための命令をコンピュータプログラムとして記憶することができる。メモリ310は、以下に例示する情報のうちの少なくとも1つを記憶することができる。
・カメラ(図示しない)により撮像された宇宙航行体1の外部(例えば地表面)の画像
・通信ユニット100をレーダーとして用いて得られた観測値
・地上局から通信ユニット100を介して受信した情報
・地上局に通信ユニット100を介して送信される情報
・宇宙航行体1の姿勢及び/又は進行方向を制御するために必要な、センサ330等により検出された情報等
【0043】
プロセッサ320は、メモリ310に記憶されたコンピュータプログラムに基づいて宇宙航行体1を制御する制御部として機能することができる。具体的には、プロセッサ320は、メモリ310に記憶されたコンピュータプログラムを実行して、電源ユニット200、通信ユニット100、センサ330等を制御することができる。
【0044】
一例として、プロセッサ320は、以下に例示する動作のうちの少なくとも1つを実行することができる。
・通信ユニット100を介して地上局及び/又は他の宇宙航行体に送信するための情報の生成
・通信ユニット100をレーダーとして用いて観測対象に電波を放射しその反射波を受信することにより行う観測に関する制御
【0045】
センサ330は、例えば、以下に例示するセンサのうちの少なくとも1つを含むことができる。
・宇宙航行体1の進行及び/又は姿勢を制御するのに用いられる、ジャイロセンサ、加速度センサ、位置センサ、速度センサ及び/又は恒星センサ等
・宇宙航行体1の外部環境を観測するために用いられる、温度センサ、照度センサ及び/又は赤外線センサ等
・宇宙航行体1の内部環境を計測するために用いられる、温度センサ及び/又は照度センサ等
【0046】
センサ330により検出された情報及び/又はデータは、メモリ310に記憶され、プロセッサ320による制御に用いられ、通信ユニット100を介して地上の基地に送信され得る。
【0047】
アクチュエータ340は、一例として、磁気トルカ、リアクションホイール及び/又はCMG(コントロール・モーメント・ジャイロ)等を含むことができる。アクチュエータ340は、プロセッサ320からの命令を受けて、宇宙航行体1の姿勢を制御するためのトルク及び/又は推力を得るために利用され、推進部として機能することができる。
【0048】
(2)電源ユニット200
電源ユニット200は、電源制御回路210、バッテリ220及びソーラーパネル230を含むことができ、電源部として機能することができる。
【0049】
電源制御回路210は、バッテリ220に接続され、バッテリ220からの電力の充放電を制御することができる。バッテリ220は、電源制御回路210からの制御を受けて、ソーラーパネル230で生成された電力を充電し、本体300内のコンピュータ301及び/又は通信ユニット100等の各駆動系に対して供給する電力を蓄積することができる。
【0050】
(3)通信ユニット100
通信ユニット100は、通信制御回路170、送信器110、受信器140、輻射器120及び反射器130を含むことができ、通信部として機能することができる。
【0051】
通信制御回路170は、接続された輻射器120を介して、地上局及び/又は他の宇宙航行体との間において情報を送受信するために、情報・信号の符号化・復号化等を含む処理を行うことができる。
【0052】
送信器110は、発振器及び増幅器等を含むことができる。増幅器は、発振器により生成された所定の(予め定められた)周波数帯域の周波数を有する信号(電波)を増幅することができる。輻射器120は、増幅器により増幅された信号(電波)を反射器130の反射面に放射することができる。
【0053】
一実施形態では、観測対象に電波を放射してその反射波を用いて観測するために通信ユニット100が用いられ得る。したがって、輻射器120から放射された電波は、反射器130を構成する副リフレクタ131により一旦反射された後、主リフレクタ132により外部(例えば地表面)に向けて放射される。主リフレクタ132により放射された電波は、基準方向D(
図1参照)に沿って進行し、地表面に到達することができる。一方、外部から(主リフレクタ132により)受信された反射波は、逆の経路を通じて受信器140により受信され得る。
【0054】
本実施形態では、通信ユニット100が、一対の副リフレクタ131及び主リフレクタ132を有する場合について説明する。通信ユニット100は、以下に例示する帯域のうちの少なくとも1つの帯域の周波数を用いるように、調整することが可能である。
・8GHz以下の周波数帯域、8GHz-12GHz帯域(いわゆるXバンド帯域)、及び/又は、12GHz-18GHz帯域(いわゆるKuバンド帯域)等を含む、マイクロ波帯域
・30GHz以上のミリ波帯域
・300GHz以上のサブミリ波帯域等
【0055】
(4)通信ユニット100に含まれる送信器110
図3は、
図2に示した送信器110の機能の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、送信器110は、発振器111と、増幅器112と、合成器113と、ローパスフィルタ114と、を含むことができる。
【0056】
発振器111は、一例として、本体300(
図1参照)の内部に配置され得る。発振器111は、信号等を搬送するための電波となる高周波信号を出力することができる。本実施形態では、発振器111は、以下に例示する周波帯域のうちの少なくとも1つの周波数帯域の周波数を含む信号(電波)を出力することができる。
・8GHz以下の周波数帯域、8GHz-12GHz帯域(いわゆるXバンド帯域)、及び/又は、12GHz-18GHz帯域(いわゆるKuバンド帯域)等、を含むマイクロ波帯域
・30GHz以上のミリ波帯域
・300GHz以上のサブミリ波帯域
【0057】
増幅器112は、発振器111に電気的に接続され、発振器111により出力された電波(信号)の電力を増幅することができる。本実施形態では、一例として、外部の観測対象に向けて電波を放射し、その観測対象に反射した反射波を受信することによって、観測対象のデータの観測を行うことができる。したがって、非常に高い送信電力が必要とされる。
【0058】
本実施形態では、増幅器112は、発振器111により出力された信号(電波)の合計電力が、100W-5000Wの電力、好ましくは1000W-3000Wの送信電力になるように、発振器111により出力された信号(電波)を増幅することができる。増幅器112は、その出力に応じて、1又はそれ以上の増幅器を組み合わせて構成することができる。その増幅器112の具体的な構成については後述する。なお、増幅器112の出力は飽くまで一例である。例えば、上述した各範囲の上限及び下限は、現時点で必要とされる電力を規定しているにすぎず、その上限を超える出力であっても、又は、下限を下回る出力であっても、本件出願に開示された構成を適用することで、放熱効果等の効果を得ることが可能である。
【0059】
合成器113は、複数の増幅器を組み合わせて増幅器112を構成した場合に、増幅器112に電気的に接続され、各増幅器から出力される信号(電波)を合成して1つの搬送波を生成することができる。ローパスフィルタ114は、合成器113に電気的に接続され、合成器113により出力される信号(電波)から低周波成分のみを取り出して(通過させて)輻射器120に出力することができる。このようなローパスフィルタ114は、例えば電波法等によって使用が制限される周波数帯域の信号(電波)を除去するために用いられ得る。ローパスフィルタ114を通過した信号(電波)は、
図2に示した輻射器120に出力され、輻射器120及び反射器130等を介して外部(地球等)に向けて放射される。
【0060】
ここで、送信器110に含まれる増幅器112は、上記のとおり、高出力の電力増幅器が用いられ得る。したがって、増幅器112は、動作することによって放熱し、周囲の電子機器に対して悪影響を及ぼし得る。さらに、増幅器112が高温になると、増幅器112を構成する素子自体においても故障等のリスクが高まる。増幅器112の構成に関しては後で詳しく述べる。
【0061】
なお、送信器110に含まれる増幅器112は、後述するように、本体300の外部(放熱ユニット400の内部)に配置され得る。一方、送信器110に含まれる、発振器111、合成器113及びローパスフィルタ114の各々は、本体300の内部に配置されてもよいし、本体300の外部(放熱ユニット400の内部等)に配置されてもよい。
【0062】
3.放熱ユニット400の構成、及び、放熱ユニット400に関連する構成
図4は、
図1に示した宇宙航行体1の構成を、この宇宙航行体1の中心部分を通る切断面からみて模式的に示す断面図である。
図5は、
図4に示した宇宙航行体1の一部の構成を矢印Aに示す方向からみて模式的に示す上面図である。
【0063】
なお、
図4及び
図5には、一実施形態では、アンテナユニット及び放熱ユニット400の両方が、本体300の同一の面(ここでは一例として上面302)に関連付けて設けられる例が示されている。しかし、別の実施形態では、アンテナユニット及び放熱ユニット400は、本体300のうちの相互に異なる面に関連付けて設けられ得る。例えば、アンテナユニットが本体300の上面302に関連付けて(上面302の上に)設けられ、放熱ユニット400が本体300の下面304に関連付けて(下面304の下方に)設けられ得る。
【0064】
(1)アンテナユニットの配置
放熱ユニット400を説明する前に、アンテナユニットの配置について簡単に説明する。
図4に示すように、一実施形態では、アンテナユニットは、本体300の上面302の上方に配置され得る。すなわち、アンテナユニットは、本体300の上面302との間に放熱ユニット400を挟んで配置され得る。
【0065】
具体的には、輻射器120は、上面302の上に固定され、副リフレクタ131を支持する支持ロッド135、及び、ハブ139は、放熱ユニットの後述する上板404の上に固定され得る。なお、支持ロッド135は、別の例では、後述する上板404に形成される開口部404aを通って、上面302の上に固定され得る。
【0066】
輻射器120は、一例としてホーン型輻射器により構成され得る。また、副リフレクタ131は、支持ロッド135により、輻射器120から所定の(予め定められた)距離をおいて配置され得る。
【0067】
(2)放熱ユニット400の具体的な構成
図4及び
図5を参照すると、放熱ユニット400は、本体300の外部に配置され、相互に対向して設けられた、複数の放熱板(ヒートシンク)402と、複数の放熱板402により囲まれた領域に配置され、複数の放熱板402のうちのいずれかの放熱板402に固定(熱的に接続)された、少なくとも1つの増幅器112と、複数の放熱板402に取り付けられ、複数の放熱板402と協働して、増幅器112を囲む、熱伝導性部材により形成された上板(トッププレート)404と、複数の放熱板402の各々に対応付けて設けられ、該放熱板402を本体300に固定する少なくとも1つの断熱部材406と、を含むことができる。
【0068】
(2A)放熱板(ヒートシンク)402及び断熱部材406
図5には、複数の放熱板402は、上面視において全体として略六角形を呈するように、相互に対向する6つの放熱板402を含む例が示されている。しかし、複数の放熱板402は、例えば、上面視において全体として略四角形(又は略八角形)を呈するように、4つの放熱板402(又は8つの放熱板402)を含むこともできる。
【0069】
各放熱板402は、基準方向Dに対して略平行に延びるように設けられ得る。具体的には、各放熱板402は、その外側表面が基準方向Dに対して略平行に延びるように設けられ得る。その理由は以下のとおりである。
【0070】
図6は、
図1に示した宇宙航行体1に含まれる放熱板の延設方向を説明する模式図である。
図6において、基準方向Dは、宇宙航行体1により放射される電波が進行する方向(地球に向かう方向)であり、方向Xは、宇宙航行体1の進行方向である。太陽光・アルベド・赤外放射による熱入力、及び、輻射放熱は、計算により求めることが可能である。
【0071】
放射板402の外側表面が基準方向D(地球に向かう方向)に対して直角となるように、放射板402を設置することにより、放射板402の外側表面に対する太陽光による熱入力を抑えることができることも想定される。
【0072】
しかし、実際に計算を進めると、基準方向Dにある地球の地表面の温度は、一般に255K(摂氏-18度)といわれており、宇宙の温度である3K(摂氏-270度)と比較すると、非常に高い。したがって、放射板402の外側表面が基準方向D(地球に向かう方向)に対して直角となるように、放射板402を設置した場合には、放熱板402が地球に向けた輻射により放熱可能な熱量には限界がある。よって、宇宙航行体1による撮像の時間を伸ばすことは困難である。
【0073】
ここで、宇宙の温度は、上記のとおり、非常に低く、3K(摂氏-270度)である。そこで、放射板402の外側表面が、太陽からの熱入力を避けるのではなく、多少太陽からの熱入力があったとしても、主に宇宙に対向する方向を向くように、すなわち、基準方向Dに対して略平行に延びるように、放熱板402を設置することが好ましい。
【0074】
このような理由から、各放熱板402は、その外側表面が基準方向Dに対して略平行に延びるように設けられることが好ましい。なお、このように各放熱板402を設置した場合、例えば日陰と日照とが切り替わるタイミング等において、いずれかの放射板402に対して太陽光が照射され得る。したがって、このような事態に対処すべく、後述する構成をオプションとして採用してもよい。
【0075】
また、放射板402(少なくともその外側表面402a)は、太陽光吸収率αが低く、かつ、輻射放射率εが大きい材料により形成され得る。この材料は、0.2以下の太陽光吸収率αを有し、かつ、0.7以上の輻射放射率εを有することが好ましい。さらに、この材料は、0.1以下の太陽光吸収率αを有し、かつ、0.8以上の輻射放射率εを有することがさらに好ましい。この材料はα/ε比が小さい程好ましい。なお、このような材料は、例えば、銀蒸着テフロン、アルミ蒸着テフロン、インジウム酸化物、インジウム鈴酸化物、白色塗料、黒色塗料又はそれらの組み合わせを、これらに限定することなく、含み得る。
【0076】
これにより、増幅器112及び放熱板402から宇宙空間に向けて効率的に放熱を行うことができるので、宇宙航行体1が地球を周回する間に、1回以上又は複数回以上の(より多い回数の)連続的な撮像を行うことができる。
【0077】
さらに、放射板402(少なくともその外側表面402a)の少なくとも一部は、より放熱効果を高めるために、銀蒸着テフロン、アルミニウム蒸着テフロン、インジウム酸化物、インジウム鈴酸化物、白色塗料、黒色塗料等、及び/又は、これらの組み合わせにより(より好ましくは銀蒸着テフロン又はアルミニウム蒸着テフロンにより)、被覆され得る。このような被覆は、シート状に形成したコート材を張り付けること、及び/又は、液状に形成されたコート材を吹き付けること等、を含み得る。また、このような被覆は、放射板402の外側表面402aに加えて又は代えて、放射板402の他の任意の面にも施すことが可能である。
【0078】
図4に戻り、各放熱板402は、少なくとも1つの断熱部材406を介して、本体300の上面302に固定され得る。具体的には、一例として、断熱部材406は、略L字状又は略逆L字状の断面形状を含むことができる。このような断面形状を含む断熱部材406は、一方の面406aを放熱板402の外側表面(側壁)402aに当接させてネジ、ボルト又はリベット等により固定し、面406aに略直角に延びる他方の面406bを本体300の上面302に当接させてネジ、ボルト又はリベット等により固定することにより、放熱板402を本体300の上面302の上方に配置することができる。
【0079】
ここで、断熱部材406は、
図4に例示されるように、本体300の上面302との間に距離をおいて、すなわち、本体300に接触しないように、放熱板402を配置することができる。これにより、放熱板402(及びこれに取り付けられる増幅器112)と本体300とが熱的に接続されることを抑えることができる。
【0080】
図4には、断熱部材406は、本体300の上面302と、放熱板402の上面302に対向する面との間の領域に、空隙を確保するように、設けられる例が示されている。しかし、別の例では、断熱部材406は、上記空隙を埋めるような形状、すなわち、上記領域を充填するような形状を有することも可能である。すなわち、断熱部材406は、例えば略ト字状の断面形状を有することもできる。これにより、断熱部材406は、上面302の上方において放熱板402をより強固に支持することができる。
【0081】
このような断熱部材406は、例えば、0.2W/m・K以下の熱伝導率を有する材料により形成され得る。このような材料は、例えば、樹脂及び/又はセラミック等により形成され得る。具体的には、このような材料は、ポリイミド、積層断熱材料、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)、ガラスエポキシ樹脂、及び/又は、多層断熱材(Multi Layer Insulation;MLI)等を、これらに限定することなく含むことができる。
【0082】
このように、放熱板402(増幅器112)と本体300とを熱的に接続しないようにすることにより、放熱板402(増幅器112)と、本体300の内部の収容空間に収容される他の電子機器(例えばプロセッサ320等)とを、相互に隔離することができるので、放熱板402(増幅器112)の温度、及び/又は、当該他の電子機器の温度を、可能な限り、低下させることができる。さらに、これにより、本体300に設置されるバッテリ220等を適切な温度に保つことができるので、当該他の電子機器に対する熱的な悪影響を軽減することも可能である。
【0083】
なお、各放熱板402に対して複数の(好ましくはより多くの)断熱部材406を設けることにより、各放熱板をより強固に支持することが好ましい。
【0084】
また、オプションとして、複数の放熱板402の各々は、その側壁(外側表面)402aが、本体300の外面(ここでは上面)302の外縁からこの外面302の中央に向かう方向に距離をおいた位置に配置され得る。これにより、例えば、放熱板402に対して、
図4に示すように、その下方から斜め方向S
1に沿って進行する太陽光が入射するタイミングにおいては、放射板402は、本体300の上面302の外縁から上面302の中心部に向かう方向に引っ込んだ位置に配置されていることにより、そのような太陽光の一部は、本体300に遮られて、放射板402(ひいてはこれに接続された増幅器112)には入射しない。これにより、太陽光によって増幅器112の温度が上昇する事態を少なくとも部分的には抑えることができる。この意味において、放熱板402の側壁(外側表面)402と本体300の外面(上面)302の外縁との間に設けられる距離は、より大きい程、好ましい。
【0085】
(2B)増幅器112
上述した複数の放熱板402のうち、少なくともいずれか1つの放熱板402の内側表面402bに対して、少なくとも1つの増幅器112が固定され得る。一例では、複数の放熱板402のうちの複数の放熱板402の内側表面402bに対して、それぞれ1つの増幅器112が固定され得る。
図4及び
図5に示した例では、例えば、複数の放熱板402に含まれる各放熱板402の内側表面402bに対して、それぞれ1つの増幅器112(合計6つの増幅器112)が固定され得る。
【0086】
このような増幅器112は、複数の放熱板402、上板404、及び、本体300の上面302により囲まれた領域の内部に、位置することができる。
【0087】
各増幅器112は、上述したように、高出力の電力増幅器が用いられ得る。よって、各増幅器112は、動作することによって放熱するので、何らかの対策を施さなければ、周囲の電子機器に対して悪影響を及ぼし得る。さらに、各増幅器112が高温になると、その増幅器112を構成する素子自体も故障する可能性がある。そこで、各増幅器112は、本体300の内部ではなく、本体300の外部に設けられた放熱ユニット400に設置される。具体的には、各増幅器111は、上述したように、複数の放熱板402、上板404、及び、本体300の上面302により囲まれた領域の内部に、配置されている。この領域は、
図4に例示されるように、密閉された空間ではなく、上板404に形成された開口部404aを介して、宇宙空間に連通した領域である。したがって、各増幅器112は、宇宙空間に曝露された状態にある。これにより、各増幅器112は、本体300の内部の収容空間に収容される他の電子機器(例えばプロセッサ320等)から隔離されることにより、各増幅器112が他の電子機器に対して悪影響を及ぼすという事態を抑えることができる。
【0088】
また、一般的に、増幅器112により増幅された信号(電波)は、電気的に接続された様々な電子部品を介して輻射器120に到達するまで、同軸ケーブル及び/又は導波管を介して、電気的に搬送される。この搬送過程において、信号が各電子部品及び/又は各同軸ケーブル(図示せず)を通過する際に電力を損失する結果、信号の送信効率が低下する傾向にある。したがって、各増幅器112(すなわち、この増幅器112に接続される放熱板402)は、輻射器120により近い位置に配置されることが好ましい。これにより、必要とされる同軸ケーブル及び/又は導波管の長さを短縮することにより、電力の損失を低減することができる。
【0089】
なお、
図4等に示した例では、増幅器112と放熱板402とが別々の構成要素であるものとして説明したが、1つの増幅器112と1又はそれ以上の放熱板402との1セットが1つの増幅器112を構成する(例えば、1つの増幅器112の外側表面が1又はそれ以上の放熱板402として構成される)と捉えることも可能である。
【0090】
なお、繰り返しになるが、複数の放熱板402のうちのいずれか少なくとも1つの放熱板402(2つ以上又はすべての放熱板402であってもよい)に対して、少なくとも1つの増幅器112が固定され得る。ここでいう「少なくとも1つの増幅器112」は、例えば、1つの増幅器112又は2つの増幅器112であり得るが、3つ以上又はすべての増幅器112を含み得る。また、本件出願に開示される技術では、放熱ユニット400に含まれる少なくとも1つの増幅器112は、相互にどのように(例えば、直列、並列及び/又はこれらの組み合わせにより)接続されてもよい。
【0091】
(2C)上板404
上板404は、各放熱板402の上部(例えば、各放熱板402の上面又は内側面等)に固定され、各放熱板402と協働して各増幅器112を囲む部材であり得る。上板404は、複数の放熱板402の総数に応じた形状を有し得る。例えば、複数の放熱板402が6つ設けられる(上面視において六角形を呈する)場合には、上板もまた六角形状に設けられ得るし、複数の放熱板402が4つ設けられる(上面視において四角形を呈する)場合には、上板もまた四角形状に設けられ得る。
【0092】
上板404は、輻射器120を通過させるために、その中心部において開口部404aを有することができる。
図5には、開口部404aが円形状を呈する例が示されているが、開口部404aは、任意の形状を呈するように形成され得る。
【0093】
また、上板404は、宇宙空間に連通することにより、各増幅器112を宇宙空間に曝露させることができる。さらに、上板404は、開口部404aに支持ロッド135を通過させ、支持ロッド135が本体300の上面302に固定されることを許容することもできる。
【0094】
さらに、上板404は、上述した放熱板402と同様の材料(同様の太陽光吸収率α及び/又は輻射放射率εを有する材料)により形成され得る。さらにまた、上板404(の例えば外側表面)には、上述した放熱板402に施されるものと同様の被覆が施され得る。
【0095】
(2D)支持フレーム
放熱ユニット400は、さらに、オプションとして、各増幅器112を支持する支持フレームを含むことができる。この支持フレームについて、さらに
図7を参照して説明する。
【0096】
図7は、
図1に示した宇宙航行体1の放熱ユニット400に含まれ得る支持フレームの構成の一例を模式的に示す側面図である。
図7には、説明の便宜上、放熱ユニット400に含まれる各放熱板402が省略されている。
【0097】
用いられる増幅器112の総数に応じて、少なくとも1つの支持フレーム420が、本体300の上面302(
図4参照)に取り付けられる。
図7には、隣接する2つの増幅器112の間に1つの支持フレーム420が設けられる例が示されている。6つ(又は4つ)の増幅器112が用いられる場合には、相互に距離をおいて配置され、相互に略平行に延びる、合計6つ(又は4つ)の支持フレームが、本体300の上面302に取り付けられ得る。
【0098】
各支持フレーム420は、例えば、アルミニウム、ジュラルミン、鉄及び鋼等を含む、任意の材料により形成され得る。
【0099】
各支持フレーム420は、この支持フレーム420の端面から横方向に延びる複数の固定板422を含むことができる。各支持フレーム420は、その固定板422に形成された孔を通るボルト、ネジ又はリベット等を、増幅器112に固定することにより、その増幅器112を支持することができる。
【0100】
図7には、放熱板402が省略されているが、各増幅器112の外面112a(
図7には一例として2つの増幅器112の外面112aが示されている)を覆うように、放熱板402が固定(熱的に接続)され得る。
【0101】
さらに、
図7には示されていないが、各支持フレーム420と本体300(の上面302)とが熱接続されることを抑えるために、各支持フレーム420は、本体300の上面302との間に、少なくとも1つの断熱部材(例えば少なくとも1つの断熱板)を挟んで、上面302に固定され得る。これにより、各支持フレーム420(放熱ユニット400)と本体300との間において、一方に発生した熱が他方に伝搬することを防止することができる。
【0102】
このような断熱部材は、例えば、0.2W/m・K以下の熱伝導率を有する材料により形成され得る。このような材料は、例えば、樹脂及び/又はセラミック等により形成され得る。具体的には、このような材料は、ポリイミド、積層断熱材料、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)、ガラスエポキシ樹脂、及び/又は、多層断熱材(Multi Layer Insulation;MLI)等を、これらに限定することなく含むことができる。
【0103】
なお、各支持フレーム420と本体300の上面302とを、任意の方法により固定することが可能である。例えば、
図7には示されていないが、支持フレーム420と本体300の上面302との間に断熱部材を挟んだ状態において、支持フレーム420の側壁と上面302とに当接し、略L字状又は略逆L字状の断面形状を有する固定部材を、ネジ、ボルト又はリベット等の締結部材により、支持フレーム420及び上面302に固定することにより、支持フレーム420を上面302に固定することができる。
【0104】
4.変形例
(1)熱伝導性部材の利用
図5に示すように、放熱ユニット400に対して、その横方向(例えば
図4に示した基準方向Dに垂直な方向)S
2に沿って進行する太陽光が入射するタイミングにおいては、その太陽光により照射される放熱板402に固定された第1の増幅器112(例えば
図5において右側に配置された増幅器112)の温度が、この増幅器112とは反対側に配置された、太陽光により照射されにくい第2の増幅器112(例えば
図5において左側に配置された増幅器112)の温度よりも高くなり得る。
【0105】
この場合、温度が高くなった第1の増幅器112により増幅され出力される信号の電力は、第2の増幅器112により増幅され出力される信号の電力よりも小さくなり得る。この結果、合成器113(
図3参照)により合成され出力される信号の電力もまた、当初意図されていた電力よりも小さくなり得る。
【0106】
さらに、時間の経過とともに、第1の増幅器112により増幅され出力される信号の電力は、第2の増幅器112により増幅され出力される信号の電力に比べて、変動し易くなり得る。この結果、合成器113により合成され出力される信号の電力もまた、時間の経過とともに変動し得る。
【0107】
かかる事態の発生を抑えるために、放熱ユニット400に含まれるすべての増幅器112の温度を均一化することが好ましい。これを実現するために、以下に説明する構成を採用することができる。
【0108】
図8は、
図1に示した宇宙航行体1の別の構成例の一部分を模式的に示す斜視図である。なお、
図8には、放熱ユニット400及び本体300の上面30等のみが示されているが、その他の構成は
図1に示したものと同様である。
【0109】
図8に示すように、放熱ユニット400は、上板404の下面404b及び各放熱板402の側壁402aの両方に当接して、下面404bと側壁402aとを熱接続する、少なくとも1つ(
図8には一例として2つ)の第1の熱伝導性部材500を、さらに含むことができる。
【0110】
図9は、
図8に示した第1の熱伝導性部材500及びその周辺のみを拡大して示す斜視図である。
図9に示すように、第1の熱伝導性部材500は、全体として略直方体状の形状を有し得る。第1の熱伝導性部材500は、例えば、1つの面(例えば上面)を上板404の下面404bに当接させ、もう1つの面(例えば側面)を放熱板402の側壁402aに当接させた状態において、第1の熱伝導性部材500及び下面404bに係合する、ボルト、ネジ又はリベット等の締結部材を用いて、下面404bに固定され得る。別の例では、第1の熱伝導性部材500は、上板404(の下面404b)及び放熱板402(の側壁402a)のうちの、一方の要素と一体成型され、他方の要素に対して上記締結部材を用いて固定され得る。さらに別の例では、第1の熱伝導性部材500は、上板404(の下面404b)及び放熱板402(の側壁402a)のうちの両方の要素に対して上記締結部材を用いて固定され得る。
【0111】
このような第1の熱伝導性部材500は、アルミニウム、ジュラルミン、銅、鉄及び/又は鋼等を含む任意の材料により形成され得る。
【0112】
なお、
図8には、1つの放熱板402に対して2つの第1の熱伝導性部材500が設けられる例が示されている。しかし、1つの放熱板402に対して設けられる第1の熱伝導性部材500の個数は、1又はそれ以上であり得る。
【0113】
図5に模式的に示されているように、方向S
2に沿って進行する太陽光が、放射板402に入射した場合を考える。この場合、この放射板402(及びこれに熱接続された増幅器112)に生じた熱は、この放射板402に設けられた第1の熱伝導性部材500を介して上板404に伝達され(矢印F
1)、上板404の全体に伝搬することができる(矢印F
2)。これにより、上板404の全体に伝搬した熱は、上板404に対して第1の熱伝導性部材500を介して熱接続されたその他の放射板402を介して、各増幅器112にも伝達され得る。この結果、すべての増幅器112の温度が均一化され得る。
【0114】
なお、第1の熱伝導性部材500は、上板404(若しくは放熱板404)と一体的に成形された部分であってもよいし、又は、上板404(若しくは放熱板404)に溶接若しくは溶着された部分であってもよい。
【0115】
図8に戻り、上述した第1の熱伝導性部材500に加えて又は代えて、第2の熱伝導性部材510を採用することも可能である。具体的には、放熱ユニット400は、第1の熱伝導性部材500に加えて又は代えて、複数の放熱板402のうち隣接する2つの放熱板402を熱接続する、少なくとも1つの第2の熱伝導性部材510を、さらに含むことができる。
【0116】
このような第2の熱伝導性部材510は、全体として略へ字状に延びる形状を有することができる。この第2の熱伝導性部材510は、一方の面(内面)を、隣接する2つの放射板402の各々の側壁402aに当接させた状態において、各々の側壁402aに係合する、ボルト、ネジ又はリベット等の締結部材を用いて、各々の側壁402aに固定され得る。これにより、この第2の熱伝導性部材510は、これら隣接する2つの放熱板402同士を熱接続することができる。
【0117】
このような第2の熱伝導性部材510は、アルミニウム、ジュラルミン、銅、鉄及び/又は鋼等を含む任意の材料により形成され得る。
【0118】
なお、
図8には、隣接する2つの放熱板402に対して4つの第2の熱伝導性部材510が設けられる例が示されている。しかし、隣接する2つの放熱板402に対して設けられる第2の熱伝導性部材510の個数は、1又はそれ以上であり得る。
【0119】
図10に模式的に示されているように、方向S
2に沿って進行する太陽光が、放射板402に入射した場合を考える。この場合、この放射板402(及びこれに熱接続された増幅器112)に生じた熱は、この放射板402に設けられた第2の熱伝導性部材510を介して、この放射板402に隣接する別の放射板402に伝達され(矢印F
3)、さらに、当該別の放射板402に設けられた第2の熱伝導性部材510を介して、当該別の放射板402に隣接するさらに別の放射板402に伝搬することができる(矢印F
4)。これにより、太陽光に照射された放射板402に熱接続された増幅器112に生じた熱は、他の各増幅器112にも伝達され得る。この結果、すべての増幅器112の温度が均一化され得る。
【0120】
(2)その他
上述した様々な実施形態では、アンテナユニット及び放熱ユニット400の両方が、本体300の同一の面(ここでは一例として上面302)に関連付けて設けられる例について説明した。しかし、別の実施形態では、アンテナユニット及び放熱ユニット400は、本体300のうちの相互に異なる面に関連付けて設けられ得る。例えば、アンテナユニットが本体300の上面302に関連付けて(上面302の上に)設けられ、放熱ユニット400が本体300の下面304に関連付けて(下面304の下方に)設けられ得る。この場合においても、放熱ユニット400に含まれる各放熱板402は、基準方向Dに対して略平行に延びるように設けられ得るし、各放熱板402は、本体300の下面304に対して、熱接続しないように上述したものと同様の方法により、配置され得る。
【0121】
また、万が一、増幅器112が熱破壊することを想定し、このように増幅器112が熱破壊する前に観測を中断する保護機構を設けることも可能である。例えば、発熱する素子が収容されている素子(例えば増幅器112)が収容されている領域(例えば、放熱ユニット400のいずれかの部分)に、温度センサ(図示しない)を設置することが好ましい。この温度センサにより測定された温度が閾値を超えた場合に、この温度センサに接続されたプロセッサ320は、所定の(予め定められた)コマンドプログラムを実行することにより、観測を安全に中断することができる。
【0122】
さらに、上述した様々な実施形態では、各放熱板402が基準方向Dに対して略平行に延びるように設けられる構成を前提として説明したが、この構成は、必須の構成ではなく、オプションとして用いられ得る。すなわち、この構成を用いることなく、以下に例示する構成のうちの少なくとも1つを用いることによっても、宇宙航行体1における効果的な放熱を行うことが可能である。
・各放熱板402と本体300との間に少なくとも1つの断熱部材406を設ける構成(
図4等参照)
・上板404と各放熱板402との間に少なくとも1つの第1の熱伝導性部材500を設ける構成(
図8及び
図9等参照)
・隣接する2つの放熱板402の間に少なくとも1つの第2の熱伝導性部材510を設ける構成(
図8等参照)
【0123】
また、各放熱板402が基準方向Dに対して略平行に延びるように設けられる構成については、最も好ましい例として、すべての放熱板402が基準方向Dに対して略平行に延びるように設けられる例を挙げて説明した。しかしながら、用いられる放熱板402のうちの少なくとも1つの放熱板402が基準方向Dに対して略平行に延びるように設けられることによっても、宇宙航行体1における効果的な放熱を行うことが可能である。
【0124】
本開示の利益を有する当業者により容易に理解されるように、上述した様々な例は、矛盾の生じさせない限りにおいて、相互に様々なパターンで適切に組み合わせて用いられ得る。
【0125】
本明細書に開示された発明の原理が適用され得る多くの考えられる実施形態を考慮すれば、例示された様々な実施形態は好ましい様々な例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明の技術的範囲をこれらの好ましい様々な例に限定すると考えるべきではない、と理解されたい。実際には、特許請求の範囲に係る発明の技術的範囲は、添付した特許請求の範囲により定められる。したがって、特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲に属するすべてについて、本発明者らの発明として、特許の付与を請求する。
【0126】
5.様々な態様
第1の態様に係る宇宙航行体は、「少なくとも1つの周波数帯域の周波数を含む信号を出力する発振器を含む複数の機器を、内部に搭載する本体と、該本体の外部に配置され、基準方向に対して略平行に延び、相互に対向して設けられた複数の放熱板と、複数の放熱板により囲まれた領域に配置され、該複数の放熱板のうちのいずれかの放熱板に接続され、前記発振器により出力された前記信号を増幅する、ように構成された少なくとも1つの増幅器と、前記本体の外部に配置され、前記少なくとも1つの増幅器により増幅された前記信号を用いて、前記基準方向に沿って進行する電波を放射する、ように構成されたアンテナユニットと、を具備する」ことができる。
【0127】
第2の態様に係る宇宙航行体にあっては、上記第1の態様において「前記少なくとも1つの増幅器は、前記本体に接触しない位置において、前記複数の放熱板のうちのいずれかの放熱板に固定される」構成を採用することができる。
【0128】
第3の態様に係る宇宙航行体にあっては、上記第1の態様において「前記複数の放熱板の各々が、該放熱板の側壁及び前記本体の外面の両方に取り付けられる略L字状又は略逆L字状の断面形状を含む少なくとも1つの断熱部材を介して該本体に固定されることにより、該本体との間に距離をおいて設けられる」構成を採用することができる。
【0129】
第4の態様に係る宇宙航行体にあっては、上記第1の態様において「前記複数の放熱板の各々の側壁が、前記本体の外面の外縁から該外面の中央に向かう方向に距離をおいた位置に配置される」構成を採用することができる。
【0130】
第5の態様に係る宇宙航行体にあっては、上記第1の態様において「前記複数の放熱板の上方に配置されて該複数の放熱板の各々に熱接続され、該複数の放熱板と協働して前記少なくとも1つの増幅器を囲む、熱伝導性部材により形成された上板、をさらに具備する」構成を採用することができる。
【0131】
第6の態様に係る宇宙航行体にあっては、上記第5の態様において「前記上板の下面及び前記複数の放熱板の各々の側壁に当接して、該下面と該側壁とを熱接続する少なくとも1つの第1の熱伝導性部材、をさらに具備する」構成を採用することができる。
【0132】
第7の態様に係る宇宙航行体にあっては、上記第1の態様において「前記複数の放熱板のうち隣接する2つの放熱板を熱接続する少なくとも1つの第2の熱伝導性部材、をさらに具備する」構成を採用することができる。
【0133】
第8の態様に係る宇宙航行体にあっては、上記第1の態様において「前記本体の外面に少なくとも1つの断熱部材を挟んで固定され、該外面に交差する方向に延び、前記少なくとも1つの増幅器の各々を支持する、ように設けられた少なくとも1つの支持フレーム、をさらに具備する」構成を採用することができる。
【0134】
第9の態様に係る宇宙航行体にあっては、上記第3の態様又は上記第8の態様において「前記少なくとも1つの断熱部材が、0.2W/m・K以下の熱伝導率を有する」構成を採用することができる。
【0135】
以上のように、本件出願に開示された技術によれば、排熱能力を向上させた宇宙航行体を提供することができる。また、本件出願に開示された技術によれば、搭載された高出力機器の熱を効率的に排熱することが可能な宇宙航行体を提供することができる。さらに、本件出願に開示された技術によれば、このように搭載された半導体デバイスを含む高出力機器の熱を効率的に排熱して、かかる高出力機器の温度を下げることにより、このような高出力機器の性能(出力性能等)及び/又は効率を高めることが可能な宇宙航行体を提供することができる。このような宇宙航行体は、例えば、半導体デバイスを含む高出力機器の動作開始時の初期温度を下げることにより、当該高出力機器の効率を高めることができる。さらにまた、本件出願に開示された技術によれば、地球周回中において、搭載された高出力機器の熱を排熱するために必要とされる時間を短縮することにより、当該高出力機器の連続動作時間を確保することが可能な宇宙航行体を提供することができる。
【符号の説明】
【0136】
1 宇宙航行体
D 基準方向
100 通信ユニット
112 増幅器
300 本体
302 上面
304 下面
400 放熱ユニット
402 放熱板
402a 外側表面
402b 内側表面
404 上板
404a 開口部
406 断熱部材
500 第1の熱伝導性部材
510 第2の熱伝導性部材
【要約】
【課題】 排熱能力を向上させた宇宙航行体を提供すること。
【解決手段】 一実施形態に係る宇宙航行体(1)は、少なくとも1つの周波数帯域の周波数を含む信号を出力する発振器(111)を含む複数の機器を、内部に搭載する本体(300)と、この本体の外部に配置され、基準方向(D)に対して略平行に延び、相互に対向して設けられた複数の放熱板(402)と、複数の放熱板(402)により囲まれた領域に配置され、複数の放熱板(402)のうちのいずれかの放熱板に接続され、発振器(111)により出力された信号を増幅する、ように構成された少なくとも1つの増幅器(112)と、本体(300)の外部に配置され、少なくとも1つの増幅器(112)により増幅された信号を用いて、基準方向(D)に沿って進行する電波を放射する、ように構成されたアンテナユニット(131, 132)と、を具備する。
【選択図】
図4